そっと目を開ける
今回の移動は脳天直下じゃないし、到着は音量大きいハクタクの膝枕でもない
第二の世界
周りをキョロキョロと見回して、この世界での上司が近場にいないかを確かめる
「あーいたいた」
「あのね…」
まるでそこに来る事、居る事がわかっていたようで嬉しい
「四季様、あたいちょっくら魔王さんとお話しに行ってきますね?」
「小町…貴女まだ寝ているの?
冗談にしてはつまらないわよ?」
冗談にしてはつまらないわよ?」
厳しいお言葉
まぁ起き抜けに言われたとわかっているんだからその反応が当然か
まぁ起き抜けに言われたとわかっているんだからその反応が当然か
「あたいにはもう一人のあたいがいます」
「…?」
「簡単に言いますと、世界が二個あって、向こうの世界に存在するあたい
んで、その世界のあたいがちょっとした厄介事を抱えまして」
んで、その世界のあたいがちょっとした厄介事を抱えまして」
「おサボりの言い訳にしては苦しいわね、小町?」
「…あー、やっぱりそう取られますか」
この前のハクタクは蓬莱の薬剤師が額に三本矢を放って直撃した結果、
両方の世界の記憶を持つに至ったのだが、まさか四季様にそんな事はできない
両方の世界の記憶を持つに至ったのだが、まさか四季様にそんな事はできない
「うーん…」
…顔は真剣だとわかった
いつもちゃらんぽらんな小町のこんな顔なんか滅多に見られるものじゃない
ただいきなり言われてそれを信じろだなんて無理な話
いつもちゃらんぽらんな小町のこんな顔なんか滅多に見られるものじゃない
ただいきなり言われてそれを信じろだなんて無理な話
世界が二個あって?
小町じゃない小町が存在する?
小町じゃない小町が存在する?
空想話にも程がある
「小町…貴女、暇が必要なの?」
「ええ、必要ではあります」
ニヤッともしない…
サボり癖のあるこの子には渡りに船のはずのこの話に、さっきからの真剣な顔を崩さず答える
サボり癖のあるこの子には渡りに船のはずのこの話に、さっきからの真剣な顔を崩さず答える
「もしかしたら」
「え、ええ」
「四季様とはしばらく逢えないかもしれません」
真顔…本気の目
いくらこの話が空想事にしか聞こえなくても、本人は至って真面目に言っている
いくらこの話が空想事にしか聞こえなくても、本人は至って真面目に言っている
「そ、それはどのくらいの時間を要しますか?」
「わかりません、早く済めばすぐ帰りますが、長引けばいつまでも」
「こ、困ります…そんなに休まれては」
出てくるのは上司としての言葉だけなのが我ながら情けない
引き止めなければ小町がいなくなってしまうかもしれない…でも引き止めたってこの子は…
引き止めなければ小町がいなくなってしまうかもしれない…でも引き止めたってこの子は…
ならば
「条件が…あります」
「条件?」
「事が済んだら必ず私の元に帰ってきて…報告をしなさい」
繋ぎとめる
この子との関係を
この子との関係を
多少強引でも、白黒付けるのが私の生きざまじゃないか
「良いのですね…四季様」
「ええ…『向こうの世界』という場所で…私がどんな姿をしていたか、その報告も忘れずになさい」
「ありがとうございます…四季様」
ようやく見せてくれた…人懐っこい笑顔
私は…
向こうの私は…
貴女とどんな関係を築いてますか…
向こうの私は…
貴女とどんな関係を築いてますか…
「おっと、忘れるところでした」
遠くなりかけた小町がクルッと振り替えって来て
「あたいのいない間に浮気なんかしないように」
優しい抱擁
「馬鹿…小町」
愛しい部下に身を委ね、その体温を感じていた