地下区画の日常
記憶
俺には記憶がない。確か10年くらい前、いや12年くらい前か。俺は俺はカプセルの中で目が覚めたんだ。機械まみれで、周りにもカプセルがあったと思う。言葉は話せるし、ある程度の教養はある。俺の名前がプロアリックであることも知っている。しかし、なぜ俺がここにいるのか、そして何者なのかはわからなかった。いや、今もわからないままだ。訳も分からないまま、ほかの人に服を着替えさせられ、地下に送られた。薄暗い通路を歩いた。緑は一切なく、鉄だけに囲まれていて、靴の音がコツコツと響いた。途中小汚い奴らとすれ違った。今となっては俺も同じか。
連れられた先で、狭い部屋に押し込められた。物はほとんどなく、キッチンとシャワールームは共同だという。俺はわけがわからなかった。その日はわけのわからないまま、寝たんだが、それから地獄の毎日を送ることとなると知ったのは翌日だ。目覚めた次の日の朝、俺は部屋にある放送で目が覚めた。音楽だ。単調で大変退屈な曲調である。「ドンドン」とドアを叩く音がする。うるさいなと思いながらドアを開けたら、作業着を着た男が立っていた。
「来い。」
やけにぶっきらぼうだ。俺は反射的に「え?どういうことですか?」と返した。俺の声が居住スペースの並ぶ薄暗い通路に反響する。彼は「いいから来るんだ」と俺がついてくるのを確認する前に行こうとした。ついていくしかなかった。ここはわけがわからない。
「初日だろ。混乱しているだろう。」
背中を向けたまま、気を使っているのか?俺は警戒を解かないでいた。解けるはずがないのだ。再び鉄板の上を歩んだ。こんこんと音が響く。しばらく歩いて、鉄の扉をギィっと開けると、そこは広々とした区画になっていた。とんでもない熱気が襲ってくる。肩にタオルをかけた労働者たちの汗臭い匂いが俺を取り巻く。
「新人だ。よろしくやってくれ。」
男はそういうと、俺の腰を押して突き出した。熱気が近くなる。ここから俺の労働生活が始まったのだ。