フェイト・テスタロッサ&ランサー ◆lHaWUMA7LM
「……」
「……」
無言。
音と呼べるものは、カチャリ、とナイフとフォークが食器に触れる音ぐらいなものだ。
少し年嵩のいった女は感情の読めない表情を貼り付けたまま、小さく切り分けた料理を口に運ぶ。
金色の髪を側頭部で二つに縛った童女は、隠し切れない動揺と喜色を努めて隠そうとしている。
カチャリ、カチャリ、と。
音だけが響く中で、しかし、童女は現状を受け入れている。
女が童女に激情をぶつけてこない日は珍しい。
ましてや、食事を共にするなど、それ以上だ。
「……どうかしら」
「え?」
年嵩のいった女『プレシア・テスタロッサ』は、やはり感情の見えない言葉を発する。
童女『
フェイト・テスタロッサ』は、その意図が読み取れずに
「味は……料理なんて久しぶりにしたから」
「その……」
「昔は、よく作ってあげていたけど……美味しい?」
言葉とは裏腹に、ひどく興味の薄い様子だった。
それでもフェイトにとっては稀な、大げさに言ってしまえば、夢の様なことであった。
何が正解なのかを考えつつ、言葉を探る。
しかし、このような出来事に『慣れて』いないフェイトにとっては最適解の経験がない。
ゆっくりと考えたフェイトは、怯えるように声を出した。
「美味、しい」
「そう」
「また、作って欲し――――」
フェイトが言い切る直前、半ば被せるようにプレシアは言葉を紡いだ。
やはり、興味のなさそうにカチャカチャと、小さな音を立てながら。
「昔は苦手だったのにね」
「……え?」
プレシアは、やはり興味のなさそうに、ナプキンで口を拭う。
フェイトはプレシアの言葉を理解できず、口をつむぐ。
そんなフェイトの様子にすら気を取られず、プレシアは言葉を続けた。
フェイトに言葉を与えながら、その感情はフェイトに向かっていなかった。
「根菜が苦手なのね……体質的な問題なら考えたけど、単なる好き嫌いで。
だから、調理の仕方について色々と考えては見たけど、ダメなものはダメだったわ」
「……」
プレシアは自身の言葉がどんな意味を持っているのか理解しながら、しかし、何の躊躇いもなくフェイトへと告げる。
フェイトはその言葉の意味を理解できずも、脳に宿った記憶情報の曖昧な部分が痛みを発し、口を鎖す。
それは言葉を発することを辞めただけでなく、食事を摂ることも止める行動だった。
プレシアはもう一度尋ねた。
「美味しい?」
「……」
「ゆっくり食べなさい」
カチャリカチャリ、と。
音だけが響いた。
◆
フェイト・テスタロッサは、プレシア・テスタロッサの実の娘ではない。
プレシア・テスタロッサが腹を痛めて、自然出産によって産んだ娘ではない。
アリシア・テスタロッサこそが、プレシア・テスタロッサの実の娘である。
「今から、貴女には聖杯戦争に参加してもらうわ」
「えっ……?」
プレシアの言葉にフェイトは虚をつかれた。
ジュエルシードの回収を命じられ、未だジュエルシードは揃っていない。
その最中に出会った少女との関係も、未だ曖昧なまま。
何も成し遂げておらず、心には自身も理解できない歪な想いだけが残されている。
「あの、ジュエルシードは……?」
「……貴女が考える必要のないことよ、フェイト」
プレシアは決してフェイトに本心を伝えようとしない。
フェイトもそれを知っている。
ジュエルシードは重要なものなのだろう。
それでも、ジュエルシード以上の物を見つけた、と言ったところか。
あるいは、ジュエルシードの索敵こそが時空管理局の目眩ましなのか。
目眩まし、といえば、全てが目眩ましなのだろうか。
本当の目的は聖杯戦争であり、万が一にでも時空管理局の介入を避けるために、ジュエルシードを用いた。
超のつくロストロギアであるジュエルシードならば、これ以上とない目眩ましだ。
先ほどの時空跳躍という大魔法の行使によって、大きな動きは当分ないと思っているはずだ。
正しく、機会は今なのかもしれない。
フェイトに様々な疑問がよぎるが、その疑問を口にすることは出来なかった。
「媒体は用意してあるわ。貴女は儀式を行えばいいだけ」
そう言って、プレシアはフェイトに手渡す。
触れ合った際に感じた手の温度は、ぞっとするほどに冷たかった。
手渡されたものは、次元固定された胎児のような形をした何か。
ジュエルシードとは異なる聖遺物であった。
遺失された世界――――あるいは書き換えられた世界に残されたもの、ロストロギア。
その聖遺物の名は白き月、『第一使徒アダム』である。
「始まり、あるいは、終わりを求めれば、誰もがその部屋に辿り着く」
「……?」
「ガフの部屋、そこに至るまでの道……今はまだ……」
すべての魂が生まれ、すべての魂が還るとされている空間の例え。
なぜ、今、その単語を口にしたのか。
フェイトは訝しみながらも、その意図を尋ねることは出来なかった。
フェイトはプレシアを愛している。
しかし、同時にフェイトはプレシアを恐れていた。
心の壁がフェイトとプレシアを確かに隔てている。
◆
「素に少女と杯。礎に使徒と契約の大公。祖には光の始祖アダム。
そびえ立つ十字には白雪を。四翼の天使は堕ち、白より出で、黒に染めし星を収束せよ」
「閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を補完する」
「―――――Anfang<<セット>>」
「――――――告げる」
「――――告げる。
汝の身は我が剣に、我が命運は汝の仮面に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
「誓いを此処に。
我は生命の実を摂る者、
我は知恵の実を捕る者。
されど汝はその貌を獣に覆いて侍るべし。汝、衝撃に囚われし者。我は汝を祖とする愛し子――。
汝、死海を導く始祖、黒き月へと至れ、白き罪人よ―――!」
◆
「至らなければいけない……」
聖杯戦争におけるサーヴァント召喚の痕跡を眺めながら、プレシアはふらふらと歩き始めた。
プレシアの目的は、真に『魔に至る法』。
現在プレシアやフェイトたちが行っている魔法は、『魔を展開する法』。
この二つには大きな違いがある。
法を土台にして扱う術である後者に対して、前者は法そのものを扱う。
科学が物理法則を塗り替えることが出来ないように、後者は法を覆すことは出来ない。
言ってしまえば、後者の魔法は奇跡ではない。
前者は、まさしく法を塗り替えるものだ。
「……ッ!」
瞬間、プレシアの身体が震える。
喉を震わせ、口内から血が吹き出る。
時間がなかった。
崩壊に近づいているプレシアの身体。
それでもなお、ジュエルシードを放棄し、フェイトを聖杯戦争へと向かわせた。
己の目的のために、己の悲願のために。
『人類補完計画』
『天の杯』
『プロジェクト・F.A.T.E』
そのどれでもあって、そのどれでもないもの。
あるいは、流転する魂からの乖離。
あるいは、喪失した魂のサルベージ。
神をも否定する、始まりの魔法――それは彼女が求めた運命の夜。
『第一の魔法―――<<魂のルフラン>>』
◆
「……」
少女を精製し、少女性を確立し、少女を聖杯へと至らせる聖杯戦争。
フェイトは聖杯戦争参加の正しき手順を踏み、その正しさ故にこの聖杯戦争では異端となる参加者へと至った。
「……貴女が、私のマスター?」
そこに居たのは、白雪のような少女だった。
白い肌は雪原のようで、薄い青に染まった髪は青空のようで。
だからこそ、真っ赤な真っ赤な、血に染まったような槍が目を引いた。
感知の類に秀でているわけでもないフェイトでもわかる、超級の神秘を保持した槍だ。
「貴女が、私のサーヴァント?」
「……ランサーのクラス」
フェイトの問いに、少女、ランサーのサーヴァントは短く応えた。
ステータスは、低い。
ひょっとすると、対人戦闘においてはフェイトの方が秀でている可能性もある。
それでも、絶望や失望に似た感情を抱かないのは、やはり槍の存在。
その槍は、絶えずフェイトの目を惹く。
神秘とは、まさにその槍のことを言うのだろう。
「貴女の願いは、なに?」
儀礼めいた問い。
フェイトも感情の表現に長けた存在ではないが、ランサーはその比ではない。
心と呼べるものはないのではないかと、勘違いしてしまうほどだ。
「……願いは」
ふと、その答えを口にしなければいけないことに躊躇いを覚えた。
それでも、フェイトは一度だけ喉を震わせただけで、その願いを口にした。
ある意味ではフェイトの願いであり、フェイト自身の望みではないもの。
「母さんの、幸せ」
「……」
ランサーはその白さをそのままフェイトへと向ける。
あらゆる色を感じさせない、白さだった。
「その答えが、貴女の願い?」
「……」
「もう一度、きっと尋ねる時が来る。
貴女が、聖杯<<???>>に願いを託すとき」
そのまま、ランサーと視線がぶつかった。
白雪のような、ある種の不気味なものを感じさせるランサー。
奥底の見えない言葉を紡いでいく。
フェイト自身も咀嚼できない、曖昧な記憶の答えを、真実を知っているのではないか。
そう思わせるような、不思議な少女だった。
「私<<??>>は、貴女にもう一度、願いを尋ねるわ」
ランサーのサーヴァント『
綾波レイ』の不可思議な瞳に。
フェイトは視線を逸らすことが出来なかった。
【クラス】
ランサー
【真名】
綾波レイ@新世紀エヴァンゲリオン(漫画)
【パラメーター】
筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:B 幸運:D 宝具:EX
【属性】
秩序・中庸
【クラススキル】
対魔力:EX
心の壁であるA.T.フィールドによって隔絶されている。
A.T.フィールドを中和しない限り、綾波レイに対して攻的な魔術で干渉することが出来ない。
【保有スキル】
A.T.フィールド:-
誰もが所有している心の壁を物理的な障壁として現界させたもの。
A.T.フィールドは中和されない限り、あらゆる攻撃を隔絶する。
一定の衝撃を超えることで貫くことも可能ではある。
誰もが持つものであるため、このスキルに神秘としてのランクは存在しない。
【宝具】
『残酷な天使の運命(ロンギヌス・オリジナル)』
ランク:A++ 種別:対使徒宝具 レンジ:2-5 最大捕捉:5人
人の魂と生命に干渉して『卵』、すなわち、『ガフの部屋』あるいは『英霊の座』へと強制的に還す力を持つ槍。
地球の生命体の始祖である第一使徒アダムと第二使徒リリスを拘束した槍、それ自体が生命である神造兵装。
他の宝具と同様に、真名を解放しない限りは能力は発揮されない。
『心よ、原始に戻れ(サード・インパクト)』
ランク:EX 種別:補完宝具 レンジ:1.083 207×1012 km3 最大捕捉:3,500,000,000
アダムとリリスが融合することで、自身の系譜である地球上の生命体の心の壁を破壊させる。
レイの魂であるリリスが持つ、A.T.フィールドを消滅させるアンチA.T.フィールドの力である。
心の壁を融解させることは人と人の垣根である、魂の入れ物である身体を喪失させることである。
すなわち、自身の心と他人の心を区切るための身体を消滅させ、『現代の多様な人類』を『原初の海』の形にする。
A.T.フィールドが隔てている心を持っている限り、この宝具からはどのような存在であろうとも逃れることが出来ない。
【weapon】
『ロンギヌスの槍』
A.T.フィールドを貫くアンチA.T.フィールドとしての特性を持ち、転じて、あらゆる魔術障壁を貫く神秘を持っている。
【人物背景】
汎用人型決戦兵器人造人間エヴァンゲリオン『EVA零号機』のパイロット、ファーストチルドレン。
ほとんど感情を表に出さず、寡黙で常に無表情だが、感情の表現の仕方を知らないだけである。
当初は育ての親とも言える『碇ゲンドウ』にのみ心を開いていた。
が、『碇シンジ』と出会ったことで彼とも絆を深めていき、次第に様々な感情を見せ、自我といえるものが芽生えていく。
あらゆることに対しての『経験』がなく、浮世離れしたところもある。
その正体はシンジの母親でありゲンドウの妻でもある『碇ユイ』と『第一使徒アダム』のハイブリットクローン。
何らかの原因でレイが死んだ場合、魂を多数のクローン体の新しい肉体に移し変えることで復活する。
その際に記憶はリセットされ、また、学んできた感情も白紙に戻る。
魂は『第二使徒リリス』のものである。
また、レイが心の奥深くにいるリリスと会話したり、地下の磔にされている肉体だけのリリスと会話する場面も存在する。
そして、魂が移され綾波レイになったことで、リリスだった頃の記憶はほぼ持っていない。
綾波レイとしての肉体が長く保てないのは、本来の自分の肉体ではないからとされている。
レイはリリスとしての己を取り戻し、アダムと結びつくことで『人類補完計画』を発動させた。
A.T.フィールドが喪失し、あらゆる心と心が一つになった。
その世界の中でシンジに願いを問いかけた。
その後、補完世界は再生され、人類は元に戻った。
ただ、地面に量産型EVAが十字架のように突き刺さり、
綾波レイは人としての形を喪失させ、ただ、降り積もる白雪としてシンジたちを包んでいる。
ちなみに、A.T.フィールドは超電磁スピンで壊せる。
【サーヴァントとしての願い】
綾波レイはある種の願望器の一つであり、碇シンジの願望器としての役目を果たしている。
そのため、明確な自身の願望を持たない。
【基本戦術、方針、運用法】
ロンギヌスの槍は強力な宝具だが、レイ自身の基本的にスペックが低いために直接戦闘には向かない。
サード・インパクトさえ発動してしまえば、その際にはマスターであるフェイト自身の意識も飲み込まれてしまう可能性が高い。
【マスター】
フェイト・テスタロッサ@魔法少女リリカルなのは
【参加方法】
コーディングされた第一使徒アダムを媒体とした儀式。
【マスターとしての願い】
母の願いを叶えるために、聖杯を持ち帰る。
【weapon】
『バルディッシュ』
「闇を貫く雷神の槍、夜を切り裂く閃光の戦斧」
インテリジェント・デバイス。
魔法の行使を補助する、発動の手助けとなる処理装置、状況判断を行える人工知能も有している。
意志を持つ為、その場の状況判断をして魔法を自動起動させたり、主の性質によって自らを調整したりする。
その上、人工知能を有しているためかインテリジェントデバイスは会話・質疑応答もこなせる。
待機状態におけるペンダント状のスタンバイフォーム、中距離状態における戦斧型のデバイスフォーム 、
近接戦闘特化した鎌状のサイズフォーム、ある一つの魔法に魔力を向ける槍型のシーリングフォームがある。
【能力・技能】
『魔導師』
魔導師として高い適正を持ち、一桁の年齢でありながら上位階級であるAAAクラスに匹敵する才能を持つ。
高い機動力を生かした中~近距離戦、射撃と近接攻撃を得意としている。
特にスピードは現時点でも本作登場の全キャラクター中で最速と言えるレベル。
また、彼女の攻撃魔法には雷を伴うものが多い。
回避力に優れる一方、防御にはやや難ありで、バリア出力はあまり高くない。
本人曰く、「速く動くこと、動かすこと」「鋭く研ぎ澄ますこと」は得意だが同時発動や遠隔操作は苦手とのこと。
『魔力変換資質』
魔法によるプロセスを踏まず、魔力を別のエネルギーに変換する事が出来る能力。
本来魔力によるエネルギーの発生には魔法というプログラムによる組み替えが必要とされるが、この資質を持つ者は魔法を介さずにエネルギーを発生させる事が出来る。
その代償なのか、この資質を持つ魔導師は純粋な魔力攻撃は不得意になる傾向があるようだ。
フェイトは魔力を電気に変換する資質を持っている。
【人物背景】
ジュエルシードの探索を続けていたなのはの前に現れた魔導師の少女、9歳相当。
「魔法少女リリカルなのは」のもう一人のヒロイン。
長い金髪をツーテールにまとめているのが印象的。
また、バリアジャケットはもとより、普段着も黒を基調としていることが多い。
母親のプレシアに言われるままにジュエルシードを集めるために地球へ現れる。
同じくジュエルシードを集めていた
高町なのはとは幾度も戦いを繰り返した。
その正体は、母であるプレシア・テスタロッサが娘のアリシア・テスタロッサを失った哀しみから創りだしたクローン。
記憶も転写されており、アリシアそのものとなるはずが、実際は利き腕も魔導師としての資質も人格も異なっている。
そのため、プレシアからは失敗作と心中で憎まれている。
高町なのはとの戦闘を重ねて、意識していなかった記憶の曖昧な部分となのはの真摯な想いで動揺が積み重ねっている。
一期9話後からの参戦。
【方針】
聖杯戦争を優勝する。
最終更新:2015年08月22日 07:29