大道寺知世&アサシン◆2lsK9hNTNE
部屋の中にミシンの音が響く。マスターは夜中の二時を過ぎても、まだ服の制作を続けていた。
いつもは遅くても十時半には寝ていることを考えると、だいぶ遅い。
いくら服を作るのに慣れているとはいえ、小学生の体力では結構な疲労になるだろう。
「そろそろ眠ったらどうですか、知世」
「いえ、どうしても朝までに完成させたいんです」
さっきからこの調子だ。疲れているのはアサシンから見てもわかりきっているのに、休もうとしない。
「あなたに体調を崩されたら、私が迷惑するんですが」
「心配してくださってありがとうございます、アサシンくん。でも大丈夫ですわ」
「人の話を聞いているんですが?」
そう言っても知世はニッコリと笑みを返すだけだった。なんとなく目をそらす。やりにくい娘だ。
アサシンは表向き子供として生活していたので、知世と同じくらいの歳の少女と接することも多かったが、こんな相手は初めてだった。
思えば初めてあったときから変わった娘だった。
突然、本来の記憶を取り度戻し、人を超えた力を持つサーヴァントと相対する。
大人でも混乱するだろう状況で、最初に彼女が口にした疑問は「聖杯戦争が終わったら街の人達はどうなるのか」だった。
理不尽に戦いの渦中へ引き込まれたことへの怒りでもなく、今までの日常が偽物だったことへの悲しみでもない。聖杯に作られただけの存在であるNPCの心配。
元いた場所に帰らず、ここでの生活を続けたいのならその気持もわかる。
しかし彼女は本来の居場所への帰還を望んでいる。NPCの心配をしたのは純粋の彼らの身を案じてだ。
そして今もNPCの友達のためにプレゼントを作っている。明日――もう今日だが――の誕生日に合わせるために寝る間を惜しんで。
「そこまで尽くす必要があるのですか?」
思わず漏れた疑問だった。
作業に集中しているのか知世からの返事はない。それでも無視するような娘でないのはわかっている。
「あなたがNPCに情を持ち、本物と同様に扱っているはわかっています。
しかし所詮は聖杯戦争が終わるまでの関係ですよ」
聖杯戦争が終わったときNPCがどうなるかはアサシンにもわからない。
だが知世が元いた場所に帰るのなら、どっちにせよそういうことになる。
「だからこそですわ。会えなくなるから、ちゃんと渡したいんです」
悲しそうに――しかし力強くそう言った。
やはり変わっている。NPCとは無理でも、元になった本物とはいつでも会えるだろうに。
知世は表情を明るくし、「それに」と続けた。
「尽くしてるわけではありませんわ。わたしはただ好きな人が喜んでくれれば、それだけで嬉しいんです」
優しい声だ。本当に心の底から相手の喜びを、幸せを願っているのだろう。
「羨ましいですね」
静かに呟く。その音はミシンの騒音に消えた。
アサシンにも喜ばせたい相手がいる。しかしその相手が喜んでも、今の自分が嬉しいかはわからない。
かつてアサシンには二つの名前があった。
一つは『プライド』。自分を生み出した『父』の望みを叶えるため、忠実に動く人造人間(ホムンクルス)
もう一つは『セリム・ブラッドレイ』。親思いで心優しいただの少年。
昔はプライドこそが本来の自分であり、セリム・ブラッドレイはただの仮面に過ぎなかった。
『父』の喜びが自分の喜びであり、『父』に尽くすことが生きる理由。『父』ために数えきれないほどの人間を殺し、欺き、利用して、そのことになんの疑問を反感も抱かなかった。
しかしエドワード・エルリックとの戦いでホムンクルスとしての力と記憶を失い、セリム・ブラッドレイとして育てられた。
人間の子供と同じように道徳を学び、愛情を学び、命の重さを学んだ。
『セリム・ブラッドレイ』はたとえ聖杯戦争の最中だろうと人を殺したくない。相手が巻き込まれただけの一般人ならなおさらだ
だが『セリム・ブラッドレイ』はサーヴァントとなったことで、『プライド』としての記憶と力を全て取り戻した。
『プライド』にとっては『父』こそが他の全てに勝る絶対の存在だ。
何を犠牲にしてでも聖杯を手に入れて、『父』を蘇らせることを望んでいる。
アサシンの中でずっと相反する二つの感情がせめぎ合っている。
知世に名前を聞かれたとき、アサシンはクラス名しか答えなかった。
真名がマスターから漏れるのを危惧してと言ったが、本当はわからなかったのだ。自分がセリムなのか、プライドなのか。
ふと自分のマスターならどうなのだろうと思った。好きな人の喜びが自分にとって容認し難いものとなったとき、彼女はどうするのだろう。
無論実際に聞くわけにはいかないが、なんとなく視線を向ける。知世はいつの間にか椅子によりかかり眠っていた。服は完成しているようだった。
アサシンは嘆息し、しょうがないからベッドに運んだ。マスターが風を引いたせいで負けたなんてなったら、笑い話にもならない。
【クラス】アサシン
【真名】プライドあるいはセリム・ブラッドレイ@鋼の錬金術師
【属性】中立・中庸
【パラメーター】
筋力:E 耐久:C 敏捷:E 魔力:C 幸運:B 宝具:A
【クラススキル】
気配遮断:D
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
ただし、自らが攻撃態勢に移ると気配遮断は解ける。
【保有スキル】
人造人間(ホムンクルス):-
『賢者の石』を核に作られた人間であることを表す。
錬金術:B
物質を分解し再構築する力。
錬成陣を描き、物質に触れることで、その物質を別の構成や形の物質に変えることができる。
『等価交換の原則』によって一の質量の物からは一の質量の物しか、水の性質の物からは水の性質の物しか作れない。
アサシンの場合、人体と爆発物に関する錬成が得意。
嗅覚:C
人並み外れた嗅覚を持っている。
相手が風上に立っている場合、確率で気配遮断を無効化する。
空腹:E
常に空腹感があるが我慢できないほどではない。
何か食べればしばらく収まる。
【宝具】
『賢者の石』
ランク:A 種別:-宝具 レンジ:-
行きた人間の魂を凝縮して作られた高密度のエネルギー体。アサシンの核。
アサシンの肉体が損壊しても、エネルギーの続く限り無限に再生する。
『完全な物質』とされ、肉体よりも遙かに高い強度を持っている。
石のエネルギーを使い、錬金術を強化することもできる。
ただしアサシンが錬金術を使った場合、石の力を制御しきれず、肉体が形を保つのがやっとのレベルにまで損壊する。
『小人の影(ホムンクルスシャドウ)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:100人
無数の目と口がついた影。
形を自在に変えられ、刃の形にして切り裂いたり、手の形にして掴んだりもできるが、本体から切り離すことはできない。
影で相手を取り込むことで賢者の石のエネルギーを補充でき、さらに相手の知識や能力を得られる。ただしアサシンに使える素質が全くない能力は得られない。
光の強すぎる場所や逆に光の全くない空間では、作り出せない。
アサシンの本体であり、肉体が消滅しても、影と賢者の石を適合する肉体に移せば生存できる。
【人物背景】
心優しい少年、もしくは冷血非道なホムンクルス。
【サーヴァントとしての願い】
迷っている。
【方針】
とりあえず表向きは知世に合わせる。
【マスター】
大道寺知世@カードキャプターさくら(漫画)
【能力・技能】
コーラス部に所属しており、コンクールで何度も優勝するほどの歌唱力を持っている。
他にも料理、裁縫、ビデオ撮影などが得意。特に裁縫は完全にプロレベル。
家がお金持ち。
人の心の機微に敏い。
【マスターとしての願い】
自分の本来の居場所に帰る。
聖杯戦争が終わったときに街の人が消えるのならなんとかしたい。
【人物背景】
友枝小学校に通う小学四年生。
友達の
木之本桜のことが、さくらが知世を好きなのとは違う意味で好き。
クロウカードを集めるさくらに、自作を衣装を着せてビデオ撮影している。
好きな人が自分を好きになってくれなくても、その人が幸せなら幸せという考えを持っている。
【方針】
帰る方法を探す。
最終更新:2015年05月12日 02:33