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山田なぎさ&アサシン ◆E6eHDQp34U


「――天才っていうのは孤独らしいんだ。あたしみたいな凡人にはわからないけれどさ、その有り様は脆くて儚いらしい」
「まあ、その通りかな」
「否定しないの?」
「嘘を言っても仕方ないじゃない」
「そんで、結局何が言いたい訳よ? 自分は天才だって言いたいの?」
「別に。それに、私は天才じゃないから」

透き通った青の空に手を伸ばす。
華奢な右手。誰かの手を引くことすら叶わない右手。大切なモノを手放してしまった右手。
それが、山田なぎさの右手。

「はぁ、こんなとこでも学校に行かなくちゃいけないなんて」
「戦争が始まれば学校に通う余裕なんてなくなるし、今の内だけだよ」
「通った所で意味なんて無いのに。真面目なんだね、アサシンは」
「マスターがそうあるべきだと思ったことを言っただけ」
「……そのマスター呼ばわりむず痒くてなんか落ち着かないんだけど。ちゃんと名前で呼んでくれない?」

そんな右手を天高く伸ばし、ぎゅっと握りしめる。
手を伸ばせば、どこまでも吸い込まれていきそうな錯覚さえ覚えてしまう程に、気持ちのいい青だった。
そんな青い空が見える屋上で、山田なぎさと従者であるアサシンは空を見上げていた。
今にも落ちてきそうな青空に、焦がれていた。

「その必要性は見受けられないと思うけど。第一、私達も利害が一致しているから協力しているだけ」

さくり、と袋に詰められたクッキーを齧るアサシンの双眸に、なぎさは映っていない。
黒のセーラー服に身を包んだ小柄な少女。セミロングの黒髪に可愛らしい顔つき。
けれど、纏う雰囲気は退廃的で何処か危なっかしい。
アサシンとして現界した少女――クロメにとって、山田なぎさの価値など、お菓子より少し下なぐらいだ。

「それ以上でもそれ以下でもない。仲良く話そうだなんて、求めてはいないでしょ」

なぎさ達がいる殺風景な屋上のように、クロメの心象風景は乾いている。
斬るか斬られるか。言ってしまえば、マスターとの関係だって令呪がなければ何の意味を成さない。

「……マスターの御機嫌を取ろうだなんて考えてないんだね」
「そんなつまらないことに拘る人だと思ってないから」

空の上に在る太陽はあんなにも熱を発しているというのに。
滾る橙色の球体と比較して、クロメの表情には熱がない。
どうにでもなれといった風で、覇気が欠けている。
口元からは揺蕩った息は失望か。
傍から見ても何の感情も示していない顔つきは冷たく、なぎさを強張らせる。

「やっぱり、不思議でならない。マスター、貴方は戦いには全く向いていないよ。
 至って普通の人間だし、面白みもないし、何よりも――血の匂いがしない」

ずけずけと気にしていることをツッコんでくるクロメは、なぎさからしてみると、ムカつく以外の感情が湧き上がらなかった。
思ったことはそのまま口に出してイライラさせ、こちらの思惑など知ったことではない。

「だからなんだって」
「はっきり言おうか? 戦い、やめなよ。このまま続けた所で後悔するのが関の山。
 もう、どうしようもないぐらいに堕ちた私ならともかく、マスターが立っている場所はまだ戻れる境界線の上」

なぎさの意志はにべもなく斬り捨てられる。
舌打ちをして、憮然とした表情を作っても全く気圧されていない。
このサーヴァントはいつだって自分に対してストレートに物を言ってくる。
主従の間柄なんて欠片も考えてないし、敬意なんてものはどっかに置いてきてしまったようだ。

「――戻りなよ、甘い甘い世界に。日常は貴方を歓迎してくれるよ?」

だけど。知ったことかよ。
その言葉はなぎさを怒りで滾らせるには十分だった。

「断る、あたしは望んでここに立っているんだ」

小馬鹿にした顔つで自分を見つめてくるクロメに対して、なぎさは口汚い言葉で否定する。
当然だ、クソッタレだ、ボケ野郎だ。
なぎさは皮肉げに口を歪めて嘲笑うポーズを取りながら、言葉の弾丸を撃ち続ける。

「今更だ、今更なんだ。何が日常だ、いるかそんなもん。あたしの日常はとっくに粉々に砕かれてるんだ。
 奇跡が舞い込んでこない限り、もうどうしようもないぐらい……!」

テンプレートをなぞった日常は、もういらない。
空想的弾丸を込めて、撃ち放て。
眼前の現実を否定する為にも、なぎさは言い返さなくてはならない。

「だから、願うしかないんだ」
「そこまでして願う価値があるの?」
「あるから、ここにいる。そうでないと、あたしは一歩も進めない」

なぎさの中に今も残る弾丸を放った海野藻屑は、言ってしまえば友人――気色悪い言葉ではあるがそのようなカテゴリーに入れられてもおかしくはないだろう。
何てことはないほんの数ヶ月程度の関係だった。
学校で同じクラスだった。たまたま近くの席にいた。
何故か自分に纏わり付いて来て、帰り道が途中まで一緒だった。
そこに、御伽話のような運命なんてものはなく、ただの偶然が重なりあった結果でしかない。
熱い友情。そんなものは百パーセントありえない、鳥肌が立つ。

「さっき、あんたは言ったな。まだ、戻れるって」

言うなれば、共犯者か。
醜くも美しい世界から逃げ出そうと手を取り合った――ただそれだけの仲だった。
口を歪ませて、目を鋭く尖らせた自分の表情はきっと、どうしようもなくしみったれたものだろう。
それでいい。自分のエゴで他者を踏み潰すロクデナシの少女にはお似合いだ。
喉に流れる唾を眉を顰めながら後悔と混ぜあわせ、一気に飲み込んだ。
その勢いで手を差し出した。

「お断りだ。あたしにとって、答えがない日常こそが――不純物だ。
 あんたの力を借りてでも、あたしは願いを叶える。もう一度、あいつに会う。
 そんで、そっからは知らない!」
「うわぁ……」

吐き捨てた言葉は自らにも突き刺さる刃となる。
何にも考えてないことがバレバレだ。
ただ一つ、変えたい過去がある。
あの時見た光景を無くす。
綺麗に分割されたあいつ――海野藻屑を蘇らせる。
そうでなくては、藻屑が報われない。

「勝手にあたしの頭を掻き乱しておいて死ぬなんて許さない。責任取ってから死ね!
 あたしを残して死ぬな! あたしが満足してから死ね!」
「清々しいまでに自分勝手だね」
「悪い? 文句なら受け付けないよ。悪いのはあいつを殺した糞親父なんだ。
 あたしも、藻屑も悪くない」

自嘲。苦しみと嘲りがごちゃ混ぜになった笑みを浮かべ、唇を三日月の形に釣り上げる。
くつくつと嗤い声を上げながら、なぎさはクロメに向かって手を伸ばす。

「あんたはヤル気がないかもだけどさ。あたしには譲れない理由がある。だから――」
「いいよ、力を貸してあげても」

伸ばした手は握り返されなかった。
されど、その目は先程よりは幾分か和らいでいる。

「言っておくけど、私にだって願いはあるから」
「……詮索するつもりはないよ」
「一応聞いておいて欲しいんだけどな。別に言って減るものじゃないし、知っておいて損はないでしょ」

思いの外、真面目な返答が返ってきたことに面食らったのか、なぎさはきょとんとした顔をしている。
この年中お菓子を食べてそうな不思議系少女は確固たる願いが在るらしい。

「まあ、貴方と同じ。私にも会いたい人がいる」

その横顔はサーヴァントには似つかわしくない極普通の少女が浮かべるものだった。
ふんわりとした笑顔も、上ずった声も、自分と同じ世界にいるようで。

「大好きだからこそ――もう二度と離れないように、殺さないと」

しかし、二の次に放たれた言葉は致死の弾丸だった。
どうしようもない隔絶。
どんなに取り繕うとも、彼女はサーヴァントであり、自分とは違う。
ニヤニヤと粘ついた笑みを浮かべるクロメとでは立っている場所がずれている。

「ふふ、怖気づいた? こんなこわぁい願いを持ったサーヴァントは信用出来ない?」
「まさか。あたしの変人対応スキルはもうマックスだよ、あんた程度で怯えてちゃ藻屑の相手なんてできないよ」

力の入った身体に汗が籠る。これより先、なぎさは多くのものを置き去りにしていくだろう。
望む望まないに関わらず、なぎさの手には何も残らないのかもしれない。
けれど、それでいい。
どんな理屈をこねくり回した所で、山田なぎさは世界のクソッタレな部分を許容できない女子中学生なのだから。

「嵐が来るよ、クロメ」

砂糖で出来た弾丸では子供は世界と戦えない、と誰かは言った。
ならば、本物の弾丸なら――子供でも戦えるのだろうか。
世界とだって、過去とだって、対峙できるだろうか。

【クラス】

アサシン

【真名】

クロメ@アカメが斬る!

【ステータス】

筋力D 耐久C 敏捷A 魔力E 幸運E 宝具C

【属性】

秩序・悪

【クラススキル】

気配遮断:B
サーヴァントとしての気配を絶つ。完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。

【保有スキル】

心眼(偽):B
直感・第六感による危険回避。
薬で強化されたからか、長距離からの狙撃すらも回避する彼女の勘は異常に研ぎ澄まされたものである。

戦闘続行:B
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
心臓を潰すか、首を切り離すかぐらいはしないと彼女は絶対に止まらない。

薬物中毒:C
身体能力の強化の代償に、彼女は常に薬物入りのお菓子を摂取していないと戦闘ができない。

【宝具】

『死者行軍――八房』

ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:8人

帝具としてクロメが携えている日本刀。
マスター、NPC、サーヴァント問わず斬り殺した者を呪いで骸人形にし操ることが出来る。
骸人形は能力は生前のまま、最大で8体までを自在に操ることができる。八房の能力を解除すると骸人形は只の死体に戻る。

【Weapon】
八房。
特製の薬入りお菓子。

【人物背景】
とある国の暗殺部隊に所属していた少女。アカメとは姉妹。
幼い頃から殺人技術を身に付け、薬物で強化された身体を駆使して国に仇なす敵を斬り殺していた。
後に、イェーガーズという特殊警察に異動し、同僚のウェイブと親しくなっていく。

【サーヴァントとしての願い】
アカメ、ウェイブにもう一度会いたい。そして、二度と離れぬよう自分の手で斬り殺す。

【マスター】
山田なぎさ@砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない

【マスターとしての願い】
海野藻屑にもう一度会う。

【weapon】
なし。

【能力・技能】
なし。

【人物背景】
動物が好きな女子中学生。リアリストを気取っている。可愛い。

【方針】
戦う。

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008:砂糖菓子の朝はほろ苦い

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最終更新:2015年05月30日 22:11