遅い朝◆2lsK9hNTNE
知世が目を覚ました時刻はいつもより少し遅かった。
普段なら目覚ましを掛けるまでもなく、同じ時間に置きられるのだが、最近は生活のリズムが崩れ気味だ。
身だしなみを整え、ベッドのある寝室から、ソファーやテレビが置いてある自室に出る。
アサシンの姿はなかった。彼はこの時間、外の様子を見ていることが多い。
テレビをつけると、小学一年生の女の子が刺されて死亡した事件について報道していた。
知世はこの事件を知っている。女の子の死体を最初に発見したのが知世だったのだ。
ある日の登校中に女の子が落としたキーホルダーを手渡し、その日の放課後、死体になったその子を見つけた。
テレビでは被害者の写真を写している。笑顔でピースをしているその写真を見て、血だまりに倒れていた人形のように生気のない顔が浮かんだ。
「顔色が悪いですよ」
不意に男の子の声が聞こえ、テレビが消えた。
いつの間にかアサシンが片手にリモコンを持って立っていた。
「ニュースで情報収集も結構ですが、自分の精神状態には気を使ってください。心が疲労すれば肉体にも影響が出ます」
「ごめんなさい、アサシンくん。気をつけますわ」
「自己管理くらいは言われなくてもして欲しいですね。あなたに何かあれば私にも迷惑です」
こんな風にアサシンに注意されるのは何度目だろうか。
彼は毎回「私にも迷惑」と付け足す。まるで心配をする言い訳のように。
いつも大人びているのに、そんなところは見た目相応に子供らしくて知世は少し可笑しくなる。
へこたれていても仕方がない。今は自分にできることをしよう。
そのときドアをノックする音が響いた。
「お嬢様、朝食をお持ちしました」
とりあえず、まずすべきことは朝食のようだ。
アサシンが姿を消した。知世はメイドを部屋に招き入れ、料理を並べてもらった。アサシンの分も合わせて二人分だ。
本来、サーヴァントは食事を必要としないが、食べれば多少は魔力の足しになるらしい。
空腹を感じるスキルも気になり、アサシンにはなるべく食事をとってもらうようにしていた。
今日の朝食は納豆ご飯に焼き魚、味噌汁といった、いかにも日本の朝といった感じのメニューだった。
アサシンは箸を使って器用に食べている。
彼が暮らしていた場所の食文化は洋食に近く、箸も存在しなかったらしいが、その使い方に拙さは見られない。
聖杯から与えられた知識の影響だろうか。それともアサシンが器用なのだろうか。それくらいなら聞けば答えてくれるかもしれない。
アサシンは自分のことを話したがらない。
好きな食べ物や音楽くらいなら教えてくれるが、普段の生活や家族の話になると口を閉じてしまう。
何か言いたくない事情あるんだろうとは思う。しかし壁があるようでは少しさびしい気もした。
食事が終わり、メイドに食器を片付けてもらった。
知世は突然アサシンに携帯を投げられ、慌てて受け止めた。
「聖杯戦争に動きがありました。メールを見てください」
言われて通りにメールを確認する。
ルーラーからの伝達と書かれたメールを見つけ、息を呑んだ。
文面にはあまり趣味の良くない祝いの言葉と、フェイトというマスターを捕まえる強力を求める趣が書かれている。
「そのメールはルーラーからの開戦宣言です。
マスターの捕獲依頼はおそらく争いを引き起こすための火種の意味もあるでしょう」
「開戦……」
聖杯戦争の始まり。殺し合いの始まり。
喉が酷く乾いた気がして、知世は唾を飲んだ。
「それで、我々はどうしますか?」
「え?」
「参加者は今まで以上に敵を警戒するでしょう。
いくら私が気配遮断を持っているとはいえ、Dランクではいつ見つかってもおかしくありません。
待ちに徹していては何れやられるでしょう。そんな中であなたはどう動きます。マスター?」
アサシンは知世のことを普段、名前で読んでいる。知世自身がマスターという呼び方を嫌ったからだ。
なのに今はマスターと呼んだ。知世は努めて強い口調で答える。
「私は死神様の調査を続けたいと思いますわ」
死神様。願えば殺したい人を殺してくれるという怪談のような噂。小学生にまつわる一連の事件の原因の一つ。
おそらく成り立ちにはサーヴァントが関与している。知世とアサシンはこの噂についてずっと調べてきた。
もっとも実際に調べているのはほとんどアサシンだけだ。知世は世間話程度に話を聞くだけ。それ以上の調査は止められている。
深入りし過ぎて自分に危険が及べば、アサシンにも迷惑が掛かるとわかってはいる。
それでも彼に任せきりの状況を心苦しく思っていた。だから――
「それは今までと何も変えないということですか?」
「いいえ、今までのように安全を最優先にしたものではなく、危険な調査もしたいと思っています。必要なら私自身の手でも」
「私は敵の警戒が強まると言いました。その意味をわかった上で言っているんですね?」
「ええ」
知世はあの女の子をことを思い出す。落し物を渡すと彼女は恥ずかしそうにお礼を言って走っていった。
今日自分が死ぬなんて考えてもいなかっただろう。もうあんな事件は絶対に起こってほしくない。
アサシンは知世の目をまっすぐ見つめ、やがて溜息をついた。
「まあ、薄々そう言うような気はしていましたよ。あなたも見た目のわりには肝が座っていますね」
「そんなことはありませんわ。ただ私にはアサシンくんが一緒にいてくれますから」
聖杯戦争のことは誰にも話すことはできない。自分一人だけだったらきっと耐えられなかったと思う。
それは知世にとって当然のことだったが、アサシンは呆気に取られたような顔をしていた。
「なぜ私をそこまで信用するんです……」
ポツリと吐露するように。
知世は言葉の意味がよくわからなかった。アサシンは訂正するように言う
「いえ、あってまだ日も浅いですし、普通ならもっと疑ってかかるものではないかと思ったもので」
「それは、だってアサシンくんは優しい人ですから」
アサシンは優しさをはっきりと示す人ではない。
それでも言動の端々から漏れる思いやりの気持ちを知世は確かに感じていた。
アサシンは少し間を開けて、「携帯を貸してください」と無感情に言った。
「掲示板に情報を求める書き込みをしておきます。
まとも倫理観を持っているマスターなら情報提供くらいはしてくれるでしょう
危険な捜査をするかどうかは様子を様子を見てからです」
知世は笑って頷いた。アサシンに携帯を手渡し、ふと思う。
そういえばメールの内容を知っていたということは、無断で携帯の中身を見ていたということだろうか。
特に見られて困るものがあるわけでもないし、知世は眠っていたのだから仕方ないが、できれば一声掛けて欲しかったな、と。
【D-5/自宅二階にある自室/1日目 早朝】
【
大道寺知世@カードキャプターさくら(漫画)】
[状態] 健康
[令呪]残り三画
[装備] なし
[道具] なし
[所持金] たくさん
[思考・状況]
基本行動方針: 街の人達を守る
1. 死神様について調べる
[備考]
※死神様について調べていますが、あまり成果は出ていません
【アサシン(プライド(セリム・ブラッドレイ))@鋼の錬金術師】
[状態] 健康
[装備] なし
[道具] なし
[所持金] なし
[思考・状況]
基本行動方針: とりあえずマスターに合わせる
1. 死神様について調べる
[備考]
※死神様について調べていますが、あまり成果は出ていません
※掲示板に以下の書き込みがされました。
スレッドタイトル:小学生の死亡事件に関して
『私は最近起こっている小学生に関する一連の事件を聖杯戦争に関係するものと思い調べています
何か知っている情報がありましたらここに書き込んでください』
死神様やアサシン達が得た情報については、身元がバレることを警戒して書いていません
最終更新:2020年06月28日 00:01