ファントムマンチ
A long time ago in a galaxy far, far away...
<<遠い昔、遥か彼方のダンゲ界でーー>>
エピソード1
ファントム・マンチ
末法の世。
評議会を異変が襲った。
貪欲な万痴連合<マンチ・グループ>は巧みにガイドラインの手薄な箇所を攻撃、着々と同一タイプの能力者<クローン>を量産していた。
評議会が、綱領の一部分が参加者を陥れているという批判により集中砲火を受けて身動きが取れなくなっている間、元老院は別の一手を打つ。
「ガイドラインの使徒」凱道家の姉弟が希望崎に向かうのだった・・・
ガイドラインウォーズ(1)
マンチと戦うには自らもマンチの思考に通じなければならない。
周囲に散らばる死骸の側に立ちながら、螺印の脳裏に浮かぶのは記憶だった。
弟よりもかなり早い段階でこの仕事をこなしていた彼女に、当時の師は「これから凱道雷が戦列に加わる」と伝えた。
「血中検査の結果、高濃度のマンチ菌……そして、それを完全に抑え込むほどの莫大な自重力(フォース)が確認された。
これほどの自重力――過去の戦士の中でも三本の指に入るだろう」
ガイドラインを司る者にとっての宿敵、マンチキン。
彼らと渡り合うには自らもマンチに通じ、かつそれに溺れないだけの自重の力が必要となる。
雷はそのどちらにおいても非凡な才を持つ。つまりはそういうことだった。
――しかし、弟はやや感受性に敏な面があります。はたしてやっていけるかどうか……
「うむ。感情が昂ぶりやすいということ……それは自重力が負の方へ振りやすいということの顕れでもある」
――心なき参加者からのリアル精神削り……弟にはそれを受け流すだけのメンタルがまだないでしょう。
「それゆえ、お前が正しい方向に導くのだ。私の感覚が正しければ……彼こそが、流転するガイドラインにバランスをもたらす――」
「終わりましたよ」
「……御苦労様」
物思いから現実へ引き戻される。
片手に凱道の名を示す腕章を巻いた目の前の彼こそが螺印の弟――「選ばれし者」凱道雷。
役目を終えたガイドセーバーはすでにホルスターへと収まっていた。
制圧に時間はかからなかった。そして二人とも傷らしい傷も負っていない。
しかしそれはイコール楽勝という意味にはならない。世界には一撃で致命傷を負わせてくる手合いが無数にいるのだ。
周囲に散らばる死骸の正体――完全変態昆虫「クワガタ」もその例に当てはまる存在だった。
万痴連合によって人為的に培養され、人間の1/3ほどの巨大さを持つに至ったこの人工の虫の編隊。
2つのタイプの特殊能力の恐るべきコンビネーションは、周囲一帯の存在を根こそぎ薙ぎ払う威力を秘めていた。
あらかじめ持ち込んだ「殺虫剤」がなければ、いかに凱道家選りすぐりの戦士である二人とて、無事では済まなかっただろう。
「先行しすぎよ、雷。あなたの技量はすでに完成の域にあるとはいえ……だからこそ、自重力の導きを忘れてはならない」
「それがどうやら遅すぎたくらいのようですよ」
雷は後方を指す。
「すでにこのダンジョンは打ち棄てられたようです。慌てて退避したようですが」
「……なら、完全に痕跡は消し去られていない可能性があるわね」
数時間の後、二人は施設にあるコンピュータ端末の中にあるファイルを発見する。
万痴連合に対して、評議会を弾劾し、参加者に評議会に対する不信を抱かせるように指示した文書。
扇動の証拠となる文書であった。
その直後。
警報が鳴り響き、施設は凄まじい大爆発に見舞われた。
ガイドラインウォーズ(2)
「我が居城に忍び込むネズミがいると聞いたが……誰かと思えば君たちか」
果実四天王。
凱道家の戦士によってその一員であるフィリピンバナナが打ち倒された際、そのマンチの実態が明るみに出たため、
彼らは表舞台からの撤退を余儀なくされた。
現在、彼らに代わってマンゴスチンやドリアンが四天王の座についている。
雷と螺印、二人に前に現れたその男こそ、追放されたはずの旧果実四天王の一人。
「旧果実四天王――ドラゴンフルーツ! ここまでだ!」
「ふ……私の警備兵をずいぶん壊してくれたようだが、君らにはわかっているのかな」
あの大爆発の後。
辛くも脱出した二人だったが、証拠ファイルの持ち出しは叶わなかった。
しかし雷と螺印はその内容から、万痴連合を陰で操る黒幕の存在をつきとめることができた。
「君たちがいずれここに来るだろうことは予測していた。まあ思ったよりも早かったことは認めるが」
「…………誘い出された、ということか」
どうやっても証拠書類が持ち出せないということはドラゴンフルーツにはわかっていたのだろう。
証拠がなければ堂々と正面から踏み込んで捕らえに来ることはありえない。
ならば残る手はひとつ。潜入し、身柄を拘束したうえでアジトを捜索する。
「君たちにはそれしか選択肢がなかった。それゆえ備えるのは容易い」
ドラゴンフルーツはガイドセーバーを抜いた。
その色は彼の名が示す通りの紫。放逐されたとはいえ、その剣の噂は轟いていた。
二人に緊張が走る。雷がガイドセーバーを構える。
その時。
「今だ!」
ドラゴンフルーツが空いている手をさっと掲げると同時。螺印の体が吹っ飛ばされた。
雷が思わず振り返る。
高速で体当たりし、螺印を吹き飛ばした生物がそのままの勢いで通り過ぎていくところだった。
――――野生の龍!
「おっと。よそ見はいけないな」
反射的に構え直したガイドセーバーに衝撃が走る。
ドラゴンフルーツの指先からほとばしった不気味な電撃を雷はセーバーで受け止めた。
「なかなかやりおる。それでは私も本気でいくとしよう」
「……」
雷の額にうっすらと汗が滲む。
着地した螺印に龍の吐き出した火炎が浴びせられる。
吹き飛ばされたエネルギーを利用して転がって避け、龍のほうに銃口を向ける螺印。
しかし。
直前で彼女はあらぬ方向へ銃を向け、そのまま発砲した。
「ぐえっ……!」
ドスンと音を立て、壁の隙間から何かが落下した。
自重力の乱れから、近くにマンチキンが潜んでいることを彼女は察知したのだ。驚異的な感覚の鋭さだった。
その感覚が告げる。今の攻撃ではそいつは死んでいない。
土埃が晴れたとき、そいつは起き上がっていた。
体表の8割以上が金属で覆われている。
「サイボーグ……ね」
「名乗らせていただこう。我こそが万知将軍……私の能力はかのレジェンドと同じ」
レジェンド――まだガイドラインが整備されていなかった時代。
本当に当時の能力と同等だとすれば、侮れない相手である。
口上が終わるのを待たず再び射撃を行う彼女の前に、さきほどの龍が立ち塞がる。弾丸が防がれる。
そして。
「『新説・無我の万知』……発動。私の力は――コピー能力だ。」
コピー能力。
それを聞いて螺印が予想した攻撃パターン。
自らの銃撃能力を利用される。
龍の火炎放射、嵐を呼ぶ天候操作能力が放たれる。
そのどちらでもなかった。
突如、流星群が彼女を襲った。
「な……今のは誰の」
「ククククク……驚いたか?」
得意げにそいつは解説を始めるが、その内容は耳を疑うものだった。
.....
「それまでに発動された特殊能力をパクって発動させることができる……今までの永きダンゲロス史全ての能力を私は使えるのだ!!」
「…………」
これほどまでのマンチキンがいるだろうか。いや。それこそ有史以来初めてであることは間違いがない。
螺印は驚きを通り越して呆れ果てて物も言えなかった。
「さらに!」
万知将軍のボディからさらに金属の触手が生える。数は合計4本。
その触手の先にあるものは、それは。
「ガイドセーバー!?」
「いままで倒したガイドラインの使徒から奪ったセーバーだ! この多角攻撃に加え、コピー能力の多彩さ! 貴様に凌ぐことができるかな!?」
龍と、史上最強のマンチキン。
二つの脅威が螺印に迫る――。
ガイドラインウォーズ(3)
雷とドラゴンフルーツの戦いは熾烈を極めた。
速度、技、パワー。
全てにおいてドラゴンフルーツの力は抜きんでている……雷は自重力の流れから敵の剣撃を読むことで、かろうじてその動きに食らいついていた。
「やるではないか! さすがは凱道家一の戦士! その才能、散らすには惜しい!」
ドラゴンフルーツにはまだ余裕がある。
雷の実力も申し分ないとはいえ、鍛錬の積み重ねと戦闘経験ではドラゴンフルーツに一日の長があった。
何度目かの鍔迫り合いの後、雷は後方に跳躍し、間合いを取った。
緩やかに滑るような動きで徐々に距離を詰めながら、ドラゴンフルーツは語りかける。
「貴様の力は掛け値なしに一級だ……本当に惜しいな」
「チッ。さっきから惜しい惜しいと……先生かテメーは!」
姉がいなくなった途端、雷の口調から丁寧さは削ぎ落とされていた。
これが彼の地の性格らしい。
「俺を殺すのが惜しいってのか? 随分上から目線で言ってくれるじゃねえか」
「いやいやいや。誤解してもらっては困る。こう見えても貴様には最大限の敬意を表しているのだよ」
ぴたり、とドラゴンフルーツは歩みを止めた。
そこは二人の間合いのぎりぎり外の位置だった。
どちらかがあと半歩でも踏み出せば、再び斬り結びが繰り広げられるだろう。
「貴様には力がある。だがしかし、それに見合った評価もされていない。そして――貴様が護ろうとしているものにも、それだけの価値がない」
「何だと……?」
「怒るか? いや、貴様にも本当はわかっているはずだ。ガイドラインの守護が報われぬ役割であることを」
「はっ。悪りィが別に見返りが欲しくてやってるわけじゃねーんだよ!」
気合とともに雷のほうから仕掛けた。
横薙ぎの一閃は当然のごとくドラゴンフルーツに受け止められる。
「高潔だな。それは美徳だ。翻って現状はどうだ?
万痴連合のごとき小人どもに唆された程度で評議会を混乱に陥れる愚か者ども……
しかも彼奴等は自分たちが善意によって動いていると考えている」
――この制約は参加者を陥れる罠だ
――この能力付属はダメだ、ないほうがマシだ
「不満を騒ぎ立てるだけで自らが生みの苦しみを味わおうとはしない。
所詮は義務を果たさず権利だけを主張する愚民共よ。貴様の真価はそんな者どものためにあるわけではなかろう」
「ぐ……」
絡みついてくるような言葉を振り払うように、雷はセーバーを振るうが、ドラゴンフルーツの鉄壁の守りを突き崩せない。
「貴様の力を真に活かす方法……ガイドラインに安定をもたらす解は、実のところ一つしかない」
「黙れ…………」
「簡単だ。能力交渉などさせてやらなければいいのだ。愚か者共にはな」
「……何だと?」
「考えもしなかったか? 貴様らが信奉するガイドライン――それにそぐわぬ連中など全て粛清すれば良い、と」
「馬鹿な……」
さすがに雷も唖然とする。
「てめえ……何を考えてやがる」
「考えていることはそのまま言ったわけだが」
「万痴連合を陰で操る黒幕が何を言ってやがる! そんなこと、連合の奴らは反発するに決まってるだろうが!」
「――もちろんだ。奴らは真っ先に始末する」
ドラゴンフルーツは。
感情が喪失した声で、あっさりと告げた。
「そもそもマンチキンなど本来組むにも値しないクズどもの寄せ集めだ。私の理想には程遠い。対極であるとさえ言えるだろう」
「…………」
「話を戻すか。なんの報いもなく会議、メール返信、質問への返答を行うGK――そのGKが作ったガイドラインに楯突く馬鹿共は全て排除すればいいのだ。
最初こそ愚民どもは戸惑うかもしれんが、なに、奴等はすぐに慣れる。結局キャラメイクしたいだけだからな。
そして理想のガイドラインに従わないクズ共――少しでもゲームバランスを乱そうとする者は容赦なく粛清し、晒し者にする」
「…………」
「そして、その理想の世界で、貴様一人だけは圧倒的な力を振るうが良い。ガイドラインという理に縛られぬ者――『
転校生』として」
黙り込んだ雷に、ドラゴンフルーツはダメ押しのように続ける。
「私と共に行くのだ、凱道雷。貴様にはその資格があり、力があり、理由がある」
ガイドラインウォーズ(4)
「どうしてだ……どうしてだ」
そこはドラゴンフルーツの居城、吹き抜けのような空間だった。
どろどろに溶解した龍の死骸と、爆弾により四散した万知将軍のボディ。
そして、無傷でそこに立つ螺印の姿があった。
力なく疑問を口にしているのは肩から下が吹き飛ばされた万知将軍だったが、その声もかき消されそうな程に細い。
「どうしてか? そりゃあ、貴方達が馬鹿だからでしょうよ」
螺印はガイドブラスターを向けると、躊躇なく引き金を引いた。
「マンチ死すべし」
「――――」
すでに叫ぶだけの力も万知将軍には残されていない。
頭脳を撃ち抜かれ、焼かれて、彼の精神は完全に消失した。
龍と万知将軍、明らかに有利だったはずの彼らが敗北したのは、螺印に先制攻撃を許したのが大きい。
メルティングバレット……対象の防御を役立たずにしてしまうその銃弾を、戦闘の開始と同時に食らっていたこと。
体の外殻がどろどろに溶かされると、攻撃の回避が覚束なくなる。
そして、苦し紛れに特殊能力無効バリアを発動した万知将軍に、螺印はとどめの榴弾を撃ち込んだ。
それは、如何なる攻撃をも防ぐはずの障壁を容易く貫通し、万知将軍を粉々に吹き飛ばした。
もしも万知将軍に少しでも謙虚さがあったなら、最初の一撃を食らった後、接近戦は龍に任せて遠距離から螺印を攻撃していただろう。
敗因というなら、彼らは敵のことを甘く見過ぎていたというだけの話だった。
「ずいぶん時間を食った――雷は無事かな」
螺印は自重力の流れを読む。
その顔が曇った。
先ほどの場所に駆けつけた螺印を待っていたのは、袈裟切りにされたドラゴンフルーツだった。
その瞳に光はない。
「…………」
自重力の流れを読んで、ドラゴンフルーツが絶命したということはわかっていた。
しかし、凱道雷の姿はどこにもなかった。
GKは、感情を制御しなければならない――
スケジュールに合わせなければという焦りは怒りを生み、怒りは憎しみを、憎しみは暗黒を招く――
雷の高すぎる自重力が負の方向に振れたとき、それは自重が足りないものを断罪する苛烈な裁きの刃となる。
ドラゴンフルーツを倒せたのはその力によるものだろう。
だが、その代償として、彼はガイドラインの暗黒面に落ちてしまったのだ。
「雷……」
螺印の前から、雷は姿を消した。
再び彼らが出会うのは血腥い闘争の場でのことである。
<おしまい>
のんべえが女子高生に絡んで来た!
「ねぇえぇ、そこ、きみ、そう、そこのきみお嬢ちゃんちん。ちーとこっち来て、ね、お願ぁいおじちゃんの一生のおねあいだからさぁ、ね。そう、いい子いい子。かわいいねー。ねえ、どこ高に、いってんのぉ? ここ? ははぁ、きみみたいなキャワイイ子が魔人。あ、違うの。へえ。えへへ。まいいや。それ、制服、いいねぇ、若いねえ。ふとももがまぶしいね。
え、あ、急いでる? なんで? ハゲ丸ウドン?ん? 戦争? ははぁ、戦争。え、そうだねぇ、戦争ねぇ、大変だねえ。うん、分かる分かるよ。戦争は大変だの。わしも戦争に行ったわな。赤紙が来てな、第一陸上部隊陸軍歩兵、右召集ヲ命母セラル依テ左記日時到着地ニ参着シ……。あ? なんで憶えてるかって? そりゃあ、忘れられないよ。あの時、ぼくには妻がいたんだ。お腹には子供が居てね。そう。辛かったよ。妻と母とお婆に見送られ勝ってくるぞと勇ましく、御国のためなら命の一つ、咲かせて見せよう桃の花と来てね。
おう、思い出しちった、酔いも醒めちまわぁ。あの頃は大変だったよう、うん、大変だい。なんせ、酒、なんてないからね。わはは。今じゃ、ほら、少しマシで、ろれつ、回ってきたでしょ? すると、これ、ほら、腕、震えちゃうもんね。わはははは。アル中アル中じゃ、わははは――おおっとケイレンが。ごめんごめん、ぼくちゃんアル中だから、わざとじゃないんなよ、酒、酒がないとね、頭かフットーしちゃうよぉ。
お? これ? 瓶、からっぽだねぇ。酒ないねえ。ぼくはねえ、酒がないとね、頭、ほんとおかしくなってねぇ――わはははは。ごめんなちい。
わっ! ぼうりぃくはイカン。イカン、イカン。暴力はイカン。そうそう。しかし、きみ、なかなか、いいからだしてるねぇ。最近の若い子はグラマーだかポリマーだか、そんな、バカだよね。うん。これ、褒めてるんだよ。そうそう、怒っちゃダメダメ。褒めてるんだよ、きみ。小柄ぐれいと。でも髪が長いのはいただけんの。ちびっこいんだから、おかっぱとか、ね。幼さ素敵だよ。ほら。まあポニーテール、及第点、うなじも最高。ちょっと撫でて、舐めて――
あ、腕痛い。痛い痛い、折れた折れた。ああダメだ、病院に行かないと。薬。きみ、薬持ってきたまへ。百薬の長。え、分かんない? きみ、仕方ないな。あれを出したまへ。きみが出せる薬。母乳。……あれ、怒らないの? わはは。
そうだ、ちゅっちゅしよう、だえき、あれも薬だよ。あれ、その壁登ってどーすん? ぱんちゅ見えてるよ、おぱんちゅ。おーい。……きみ、登るの上手いねえ速いねえ――あ、危ない! 落ちる! あぶない、ってあぶないのは僕――」
衝突!
空飛ぶバンチョウ・パイソン オープニング
~撮影地:希望崎学園特撮部所有の採石場~
(遠くからボロボロの服を着た老人が走ってくる)
チュドーン!(特撮おなじみの爆発)
チュドーン!(特撮おなじみの爆発)
チュドーン!(特撮おなじみの大爆発)
(息も絶え絶えで走ってきてカメラの前までやってきた老人が一言)
桃爺「It's!」(意訳:はじまるよ!)
(オープニングアニメーションに切り替わり)
ナレーション「Bancho Python's Flying Circus!」(日本語訳:空飛ぶバンチョウ・パイソン!)
空飛ぶバンチョウ・パイソン 「ある本の悲劇」
~ある昼下がりの番長小屋~
(金色が入ってくる)
金色「……あれ、珍しいですね。番長小屋に誰も居ないなんて。」
(辺りを見回し、何気なく置かれた一冊の本を見つける)
金色「ん、何でしょうこの本……」
(本を手に取り、パラパラと読み始め)
金色「!?」
(数ページめくった直後、バターンと倒れる金色。
そこに佐藤が入ってくる)
佐藤「あれ、金色さん? 床で寝てるとカゼひきますよ。
……? 何だろう、この本……」
(倒れた金色のそばに落ちていた本を読み始める佐藤)
佐藤「!?」
(金色と同じページを見た瞬間、バターンと倒れる佐藤。
そこに今度は錆山が入ってくる)
錆山「金色君に佐藤君、なんで二人とも床で寝っ転がってるんだろ……
ん、これ何?」
(例の本を拾い上げ、読む錆山)
錆山「!?」(バフッ)
(例のページを見た途端、口から酸を噴いてバターンと卒倒する。
そこに、小野町とカッタールキが現れる)
小野町「……これは何事だ……?」
カッタールキ「美しくない光景ね……あらぁ?」
(件の本を見つけて、二人で見てみる)
小野町「!?」
カッタールキ「!?」
(二人揃ってバターン。)
(しばしの静寂の後、羽犬塚が慌てて走ってくる)
羽犬塚「いけないいけない、忘れるところだったわ……」
(倒れている五人は特に気にせず、本を拾い上げる)
羽犬塚「無理言って友達に描いて貰ったのよね、この金色×佐藤本。
ちょっと刺激強めで、ってお願いしたら凄くハードになっちゃったけど……
これはこれでいいわね、こういう展開もアリって思えるし。
あ、でも萌木原ちゃんとかに見せないようにしないとね。変なトラウマになっちゃったらいけないし……」
(本をパラパラ読みながら、番長小屋を後にする)
空飛ぶバンチョウ・パイソン ~スパム?~
ある日の夕方。
ダンゲロス子が番長小屋の扉を開けると、そこにはいつもと趣の違う風景が広がっていた。
「ん、なんか良い匂いすると思ったらメシ作ってんのか。」
珍しく整理された机と椅子、そしてそこに座る面々。
その前には美味しそうな料理が並べられていた。
そして部屋の一角では、どこから準備してきたのか流し台とコンロが設置され
真野孝三がせわしなく、コンロと俎板の前を往復しているところだった。
「ああ、ダンゲロス子さんこんばんは。宜しければ夕食でも食べていきませんか?もちろん、無料で。」
「お、いいのか?助かるぜ……なにしろ今月パチ負けっぱでピンチなんだよな……
ところでメニューは?」
「色々ありますよ。ベーコンエッグとか、ベーコンエッグ&ソーセージとか」
「や、それ朝食じゃんか。もーちっと腹にたまるモンで頼むわ」
「それでしたら、ベーコンエッグ&スパムとか、ベーコンエッグ&ソーセージ&スパムとか如何でしょうか」
「スパム足しただけかよ! いやさ、もーちっと晩メシに向いたメニューをだな……」
「それでは、ステーキ&スパムやハンバーグ&スパムやチキンソテー&スパムはどうでしょう」
「……や、スパムはいらねえわ。スパム抜きのメニューってなんかないの?」
「でしたら、ステーキ&スパム&スパムとかハンバーグ&スパム&スパムとかチキンソテー&スパム&スパムとか」
「増えてるじゃねえかよ! そんなに肉ばっか食えるか!」
「確かにバランスが悪いですね。白身魚のムニエル&スパム、サーモンフライ&スパムなんかは」
「魚にしろっつったんじゃねえよ! ……聞いてるだけで胃もたれしてきたんだが」
「おや、胃の調子が悪かったのですか……それなら中華粥&スパムやスパムうどん&スパムのような軽いものがいいかもしれませんね」
「スパムが入ってる時点で軽くねえ! てか胃が調子悪いのはテメーのせいだぞ!
……もういいや、とにかく今作れるメニュー一通り言ってくれや」
「かしこまりました。サラダ&スパム、ペペロンチーノ&スパム、海老グラタン&スパム。
海老ドリア&スパム、ビーフカレー&スパム、ポークカレー&スパム、スパム&スパム、スパム&スパム&スパム、」
「待て、スパム&スパムはもう料理って呼べねえだろ。しかもまだ上があんのか」
「スパム&スパム&スパム&ポテト、スパム&スパム&ポテト&スパム&サラダ、
スパム&スパム&スパム&スパム&ポテト、スパム&スパム&タカ&トラ&バッタ、」
「オイ何かコンボが混じったぞ今。 ! さっきから虎見かけねえのは、まさか……」
「スパム&スパム&スパム&愛しさ&切なさ&バッタ」
「心強さじゃねえのかよ! ていうか、愛しさや切なさって食材か?」
「スパム&スパム&スパム&スパム&スパム&……」
「ああもううるせえ! もうメシはいいや、酒だけよこせ!」
「かしこまりましたスパム、焼酎の水スパム割でいいですかスパム」
「……とうとう語尾がスパムになってんぞ……
てか今日のお前絶対ヘンだぞ。そう思わねえか、みんな?」
「そんなことないと思うけどスパム」(←鬼無瀬)
「そうですわよ、いつも通りおいしい料理を作ってくれてるじゃないでスパム」(←松茸)
「確率論的に言って、真野さんに変調がスパム起きている可能性は皆無でスパム」(←湯川)
「まったくだ、仲間をスパムるのはスパム良くなスパム!」(←赤城)
「スパムスパムスパムスパムスパムスパムスパム」(←蝦夷廻)
「…………」
唖然とするダンゲロス子をよそに、他のメンバーが立ち上がり、肩を組み合い。
スパムスパムスパム……と歌い始める。大合唱である。
そして、ダンゲロス子のおつむは―――思考を停止した。早い話が、気絶である。
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後にこの騒ぎの原因は、桃爺が酔っぱらってダンジョンに潜った際にゲットした
『呪いのスパム』の影響であることが発覚したのだが―――それはまた、別の話である。
格闘ゲーム風番長Gアタッカー紹介
“地獄からの追跡者”
荻原 蔵六
動きの速さを生かして戦うスピードファイター。
ゲージ消費技『影解れ』は、ゲージを消費することで相手のゲージ消費技を自分で使用することができるコピー技。
ただし、デメリットもコピーしてしまうため注意が必要。
手芸術による遠距離攻撃、素早い動きと高い攻撃力のそろった、初心者から上級者まで幅広く使うことができるキャラクター。
“阿天翼心流剣術”
阿天小路御影
虎をも超える攻撃力と、竹刀を使ったリーチの広い攻撃が特徴のパワーファイター。
ゲージ消費技『無形刀〝鵆〟』は、相手のサポートキャラを問答無用で退却させる攻撃技。
ただし、使用した後は一定時間攻撃が下がるため、使うタイミングに注意が必要。
攻撃の隙が多く、密着されると不利になるので、攻撃の間合いを掴む必要がある、中、上級者向けのキャラ。
“炎の格闘娘”ダンゲロス子
バリエーション豊富な攻撃技を持つバランスファイター。
フレイムチャージャーやフレイムパンチャー、フレイムウィップなど、ゲージ消費技の数は全キャラ中最多。
通常技も他キャラに比べて多く、コンボ重視や一撃必殺など、様々なスタイルで戦うことができる。
また、一定以上ダメージを与えると数秒間の間通常技に対して無敵になる『フレイムブースターver.2.0』を持っているため、
非常に攻撃的なプレイが可能となっている。
コマンド入力が多いため、中・上級者向けのキャラ。
“呪いの調理人”真野孝三
手数の多い攻撃と、威力の高い飛び道具を多く持ったスピードファイター。
ゲージ技は相手の精神ゲージが低ければ低いほど強力になる飛び道具『ダイイングキッチン』。
強力な飛び道具を持つが耐久力と防御性能が非常に低いので、一つのミスが敗北につながることの多い、中・上級者向けのキャラ。
“高鬼の鬼”
椎木 彗香
攻撃力は低いが、非常に強力なゲージ技を持った、特殊なパワーファイター。
攻撃技はほとんどなく、せいぜい隙を作る程度の技しかないが
ゲージ消費技である『墜鬼』は非常に強力で、ほぼすべての相手を一撃で屠ることができる。
非常に癖の強い、上級者向けキャラ。
“百獣の王”虎
出の速い攻撃技と高い耐久力、そして圧倒的なスピードと、百獣の王の名を冠するにふさわしいパワーファイター。
また、ゲージ消費で一定時間攻撃力と速度を引き上げることができる。
欠点があるとすれば飛び道具がないことだが、動きが速いためそれが問題になることはほとんどない。
初心者から上級者まで、幅広く使うことができるキャラクター。
“兄を探して三千人”
萌木原ジャベリン
近接技をほとんど持たない代わりに威力の高い遠距離技を持つ、特殊なパワーキャラ。
近づかれたらほぼ終わりといっていいほど接近戦が弱く、使いこなせなければ一方的にボコボコにされることもあるが、
飛び道具の数は全キャラ最多。中でも、ゲージ消費技の『サリンジャー』は、隙は多いが当たればほぼ即死という圧倒的な威力を誇る。
他のキャラとは一線を介す、超上級者向けキャラ。
“鬼無瀬時限流門弟”
鬼無瀬 未観
出の速い技と動きの速さが特徴のトリッキーなスピードキャラ。
特殊能力『再度歪印蛇』によって、戦闘開始から一定時間の間、ダメージを与えれば与えるほど動きが速くなるため、
トップスピードは
マーヤ、萩原を超えて全キャラ中トップを誇る。
半面、耐久力は非常に低く、最悪一撃で逆転されてしまうことも…
使い手を選ぶ、中・上級者向けキャラ。
“セクハラじじい”桃爺
癖のある動きと特殊な防御、予備動作の多い攻撃技と、全体的に使いずらいキャラ。
しかし、非常に高い耐久力と異常な射程の長さをもち、一部のキャラを一方的に殴り殺すこともできる。
使いこなしさえすれば強い、上級者向けのキャラ。
“無機質な観察者”
小野町小道
相手の動きを封じる特殊な技を多く持つパワーファイター。
ゲージ消費技は相手の精神ゲージを大きく削る『性体観察』
このほかにも精神ゲージを削る技を数多く持っている。
耐久力の低さをゲージ削りと攻撃力の高さでカバーする、上級者向けキャラ。
“円月殺法”
レミィ・虚子・ロー
攻撃範囲の広さを生かして戦うバランスファイター。
全体的にバランスの取れた、使いやすいキャラクター。
ゲージ消費技の『円月殺法』は自分の周囲を一瞬で薙ぎ払う広範囲攻撃。
癖の少ない、初心者から上級者まで使用できるキャラクター。
“アイヌからの巨人”
ペウレカムイ
とにかくでかい!リーチの広いパワーファイター。
序盤は攻撃速度、移動速度ともに遅いが、
相手のダメージを与えていくにつれて緩やかにスピードアップしていくスロースターター。
また、でかいおかげで攻撃範囲も広いが、あたり判定も大きい。
序盤での立ち回りが難しい、上級者向けキャラ。
“逆境に咲く華”
カッタールキ・オッティソン
一発逆転の可能性を秘めたバランスファイター。
防御、攻撃、速度、すべてにおいて平均より下だが、
自分の体力が20%を下回ると、速度と攻撃力が大幅に上昇する、後半に強いキャラ。
ペウレカムイと同じく、序盤での立ち回りが難しい上級者向けキャラ。
“オレのそばに近寄るなああーッ!”
佐藤頼天
カウンター技を多く持つ特殊なキャラ。
特に、ビッチとレイパーに対してはめっぽう強い。
ダメージソースが殆どカウンター技しかないので、非常に使いづらい超上級者向けキャラ。
“シュヴェスターガルテン”
縞居天
特殊な攻撃技を多く持つパワーファイター。
天自身が攻撃することはほとんどなく、妹である多来が攻撃することが多い。
攻撃力、耐久力ともに高いが防御性能が低めなので、接近戦は苦手。
かといって、遠距離に行き過ぎるとこちらの攻撃手段がなくなってしまうため、
常に中距離を保たなくてはならない。中・上級者向けキャラ。
“廻るサイボーグ”
蝦夷廻ねねか
高い耐久力を持つパワーファイター。
スーパーアーマー効果を持つ技が多いため、強引に攻めていくことができる。
さらに、ゲージ消費技に自分の体力を回復する技もあるので、ダメージを気にせず攻めていくことができる。
初心者から上級者まで使うことができるキャラ。
『本戦開始直前!凱道雷の憂鬱』
一組の男女が住宅地をのんびりと歩いていた。カップルだろうか?
女性の方は落ち着いた物腰で、やや大人びた雰囲気を醸し出している。
男性の方はわんぱくそうな顔つきをしている。
デートというわけではないようだ。二人とも地図を見ながら、少し歩いてはキョロキョロと辺りを見回し、
再び地図に目を落としては歩いてを繰り返していた。どうやら道に迷ってしまったようだ。
困り果てた様子の二人は、ちょうど付近にたむろしていた町の不良達と目が合い、意を決して話しかけた。
「すいません。少し道に迷ってしまったのですが、お尋ねしてもよろしいでしょうか?私立希望崎高校なのですが。」
「き、希望崎学園!?バ、バカやろう! てめえ、そこの看板が見えねえのか!
『この先、DANGEROUS! 命の保証なし』 この先は戦闘破壊学園ダンゲロスなんだよ!」
「ダンゲロス……、それでも僕は行かなければなりません。なぜなら、僕は転校生なのですから。」
またしばらく歩くと、再び道に迷った二人は近くを歩いている魔人公安に話しかけた。
「すいません。少し道に迷ってしまったのですが、お尋ねしてもよろしいでしょうか?私立希望崎高校なのですが。」
「希望崎学園?ああ、あの魔人学園ね。まあ、魔人って言っても普通に銃で撃てば死ぬような連中だけど。」
「それでも僕は行かなければなりません。なぜなら、僕は転校生なのですから。」
またしばらく歩くと、再び道に迷った二人は近くを歩いている歩行者に話しかけた。
「すいません。少し道に迷ってしまったのですが、お尋ねしてもよろしいでしょうか?私立希望崎高校なのですが。」
「希望崎学園?ああ、あのビッチとレイパーと変態しかいないっていう学園ね。」
「そ…それでも僕は行かなければなりません。なぜなら、僕は転校生なのですから。」
またしばらく歩くと、再び道に迷った二人は近くを歩いている歩行者に話しかけた。
「すいません。少し道に迷ってしまったのですが、お尋ねしてもよろしいでしょうか?私立希望崎高校なのですが。」
「希望崎学園?ああ、あの熊と虎が歩き回る無法地帯ね。」
「帰ろう、姉さん。」
最終更新:2011年07月26日 06:32