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金の獅子の背に乗って
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金の獅子の背に乗って

第7話

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「折れた剣」(完)


「それでは、定例の会議を始めたいと思います。残念ながら、商会長はインドへ出征中の為今回の参加は叶いませんでしたが私へ委任状を託されております。」
セビリアのとある講堂の一室にライラの声が定例会議の開始を告げた。
各員はそれぞれの活動報告を済ませている。アンレーデもそれに漏れず今までの活動を報告している。
その雰囲気は先にアンレーデが参加した学会発表のそれと比べて全く逆の軽い雰囲気の元に進められているように見えた。しかし、その場に居るエンタとランゼはその雰囲気に対して馴染めていない風にも落ち着きがないとも見える、妙によそよそしく座っていた。
会議参加者すべての報告の後、今後の商会運営方針をライラが再確認する。
「商会長からの委任状にも書かれているのですが、今後の運営方針は前回と同じく当商会への新規参加者を増やすという方向で各員の活動をお願いいたします。」
「最近は未所属で活動している人が激減していますね。」
「うんうん、正直。新規より移籍を待つ状況かと思いますね。」
「ウチん所はかなり緩やかな方だから一度味わってしまうと抜けれないんだが、いかんせん体験入会も無いな」
「こればっかりはね。タイミングが全てだからね。」
「需要と供給のバランスがそれほどまでに成り立つ事でもないし。」
「まぁまぁ、今日、明日中にという事ではないし、皆の継続的活動をお願いしますということで。」
「今まで通りって事ですね。」
「そうですね。」
新規獲得と言えどもかなりその状況が厳しいのはその場に居る全ての参加者が感じていた。
「では、運営方針も決定したので他に動議が無ければ閉会といたしますが。」
ライラがその周囲を見渡して、閉会をしようと口を開きかけたときエンタがその手を上げた。
「最後にひとつだけ、お願いがあるのですが。」
エンタの顔は妙に青白く、この会議には不必要なほどに額に汗をにじませている。
「全くもって、申し上げにくいのですが…」
「エンタ殿、遠慮することは無いよ。」
「私エンタとランゼ両名を退会させてもらえないでしょうか?」
会議後の宴会へと心を移し変えかけていたエンタ、ランゼ両名以外の全ての参加者全て水を打ったような静かさに支配される。
「トーレス商会長はもとより全ての方がそろった場が良かったのですが…」
打ち黙る周囲の雰囲気を感じながらもエンタは続ける。
「無論、突然の申し出として失礼なのは承知しています。しかし、聞き届けていただけないでしょうか?」
沈黙はなおもその部屋を支配している。瞬きすることさえ躊躇するような雰囲気が刹那を千の夏と思わせるようなゆっくりとした時間を体感させていた。
「差し支えなければ、退会する理由を聞かせてもらえないだろうか?」
議長としてライラは口を開いた。
「…」
「言えぬ事情なら仕方ない。」
「…陸に上がります。」
わずかな動揺とどよめきが起こる。
「私たちにはどうしても継がなければならない物があるのです。皆さんを騙すような形になってしまってしまいましたが。遅かれ早かれこのような形を迎える体だったのです。」
唇を噛み締めるように一言一句を選びながらエンタとランゼは発言している。そして、会議は再び永遠の凍土に包まれたように静まり返ってしまった。

時間にして数分が経過した。若い2人の動議が支配する講堂の一室の静寂を破るようにアンレーデが口を開いた。
「エンタ、ランゼ両提督。よく言ってくれた。この件に関して皆の反対はあるだろうか?」
先ほどまでとは意味の異なる沈黙が辺りを占める。
「ならば、ここは両提督を気持ちよく送り出すのが同じ商会員としての責務と思う。両提督、陸に上がるという日は近いのかな?」
「はい、半月後にはリスボンから…」
「ふむ。この件に関してはゴールデン・ルーヴェは了承する決議ね。皆異論はないでしょう。」
「異論なし。」
「エンタ、ランゼ両提督。短い間だったけど楽しかったよ。ありがとう。」
「新しい環境でもがんばれよ。」
「今生の別れではないし。いずれ会える日はまた一緒しましょう。」
「皆さん、ありがとうございます。」
どっと拍手が湧き起こる。
「では、半月後時間がある人はリスボンへ集合の事。これは商会発足メンバーとして皆へのお願いね。」
それぞれが了承の旨を口にする。
「ライラ、これで良いかしら。」
「そうね。私からも一言。エンタ、ランゼ両提督、短い間だったけどすごく楽しかったわ。仲間という絆は共にした時間の長短だけじゃないわ、貴方達はゴールデン・ルーヴェの商会員として立派にその責務を果たしたと思ってる。海を離れても決して切れることの無い何かを私達は共有している事を忘れないでね。貴方達なら新しい環境でもきっと上手くいくでしょうね、酒場で貴方達の噂が聞けることを楽しみに待ってるわ。」
「はい、ありがとうございます。」
「さて、他に動議もなさそうだし。これで定例は閉会します。皆、時間はあるかしら?エンタ、ランゼ両提督の新しい門出を祝して盛大に飲りましょうっか?」
ライラの口調は勤めて明るく部屋中に響き、一行は2人を囲みながらセビリアの大きな空の元を祝福の為に歩き始めた。

アンレーデはセビリアの郊外にある一本杉を目指して一人歩いていた。そうする事となった1通の手紙を懐へと収めて目的地へと近づいてゆく。名だたる軍人を多く輩出した国の首都でもあるがその郊外は軍人くずれが賊まがいの行為を働く治安でもありさほど離れていない目的地にもかかわらず彼女は一応の用心として帯刀していた。

「私もつい先月までバルト海へと足を伸ばしていまして…」
商会内にわずかな動揺をもたらす事となった定例会議より1ヶ月前、バルト海から満身創痍になりながらも戻ってくる理由だったセビリアでの生物学学会の発表は彼女にとって急ぎ足で戻るに十分以上の価値をもたらす内容だった。無論、彼女が嫌う側の人種も数多く居並ぶ会場でもあったが、いまだ彼女にとって未踏の地に関する論文や発見等の報告はまるで危険な薬のように彼女の奥に潜むそれに火をともしたともいえるほどに彼女を高揚させていた。そして、学会の発表からしばらく経過したその日、彼女はその学会での顔見知りそれは言うまでも無くあちら側とは袂を分かつ側の人物と近況を報告しあっていた。
「えぇ、かなりの準備不足な所はありましたが。先達の偉業を辿ることがこれほどまでに我が身にとって心血の糧となることとは思いもよりませんでした。」
あの生命の危機さえ感じた日々を語るにも今は過日の報として笑みさえ浮かべながら語れるのも船員のお陰だとその学者に告げている。もっとも彼女にとってはもう暫くの間、そんなことはご免蒙りたい気持ちでいっぱいであった。
「なるほど、アフリカ方面へ…はぁ、それは興味深いお話ですわね。」
地中海と北海を抜けきれない彼女にとってアルギン以南の土地話はもっとも興味引く話題でもあった。
「先日の学会でも喜望峰以東の発表が数件見られたですね。えぇ、私もいずれはと思っていますが…」
「アンレーデさん?」
学者同士の会話を割って入るようにアンレーデは背後からの声に言葉を中断させた。
「託を預かってますよ。えぇ、依頼は…エンタって方からです。」
彼女はその手紙を受け取るとチップを渡しながらその差出人を確認する。まさしくエンタからの手紙と確認すると、その手紙を懐へと仕舞い込んだ。
「はい、いずれご一緒できればと思います。えぇ、それではまたお会いできます事を…」
形式通りの挨拶を済ませその知己と別れた後、彼女は自らの船へ戻りその中身を確認した。

『親愛なるアンレーデ様
先日は大変お世話になりました。新たなる道を進まざるを得ない私達の心情をお察しいただき感謝しております。つきましては、リスボンへ向かわれる前にもう一度お話したいことがあります。お手数ですが、○日昼過ぎにセビリア郊外にある一本杉までお越し願えないでしょうか?ランゼと共にお待ちしております。』

一本杉までの道程で彼女はその手紙が届いた経緯を思い起こしていた。サクサクと乾いた畦道に足音を鳴らしながら目的地は近づいてくる。街を出て小一時間ほど歩いた小高い丘の上にその一本杉はまっすぐに天を向いて伸びている。
「ランゼっ、アンレさん来てくれたよ。」
その一本杉に寄りかかるように座って目を閉じている彼女にこちらへ向かってくるアンレーデを見つけてエンタは優しく言った。木陰のそよ風に少しうとうととしていた彼女は彼の声にゆっくりと目を開けた。
「あ、ホントだ。」
眠そうな目をこすりながら小さなアンレーデを見て安心した表情を浮かべている。
「アンレさん、怒らないかな?」
「どうだろうね。怒るかも知れないね。なんとも言えないや。」
「あっと言う間の航海者だったね。」
「うん…でも仕方ないさ。ランゼ…名残惜しい気持ちってある?」
「どうかな。上手く表現できないけど、今日までを短く感じたのは充実していたからかな。」
「そうかもな…」
アンレーデの影は順に大きくなっている。そして朧気ながらに見えていた彼女の姿はようやくはっきりとその足音が聞こえそうなぐらいまで近づいてきた。
エンタとランゼは並び立って彼女を迎えた。
「さて、今日はどんな事かしら?お別れするにはまだ猶予があるわよね。」
アンレーデはその日差しにも似た軽い声で彼女を呼び出した2人に微笑んだ。
「どうしても、アンレさんにお願いがありまして…」
「どんなことかしら。もっとも私にできる事なんて多寡が知れてるわよ。」
「仕合って貰いたいのです。」
その言葉に彼女の肩がピクリと反応する。
「ケンさんに聞きました。アンレさんは捌きの天才とか、それで是非にと思いまして。」
「仕合うって言葉の意味をわかってる?」
「はい、そのつもりです。」
「私は商会長やケンのように寸止めできるほどの腕はないし、帯びているコレも刃引きしてない物よ…」
「はい。十分に理解しています。」
そう言うとエンタとランゼはその腰に提げている剣を抜いた。アンレーデにとってそれは見覚えのある2振りだった。
「アンレさんに頂いたものです。今日の今まで私達を守ってきてくれました。」
「私は貴方達と仕合う理由がないわ。組み手ほどなら相手になるでしょうけど」
「アンレさんには無くても、私達にはあるのです。これを最後の我侭としてお聞きください。」
「待ちなさい。そんな事をして何になるのっ!」
「いいえ聞けません。…では行きます。」
そう言うなり2人はアンレーデに向かって走り出した。そしてその間合いに入るなりまだ剣に手もかけていない彼女に向かって剣を振り下ろす。まだ事態を完全に把握しきれないアンレーデはバックステップでそれを回避する。
「納得する説明が欲しいわねっ!」
まだアンレーデは剣を抜いていない。
「理由はこの後にあるのです。お願いです抜いてくださいっ。」
2人は執拗に彼女へ向かって振り続けている。
さすがにエンタは軍職にあるだけに鋭い踏み込みを見せている。ランゼも上手くアンレーデの進路を塞ぎながらバックアップしつつ様子を伺っている。
「どうしてもなの?」
「お願いです!」
これ以上は無理だろうと感じた彼女は一気に距離をとって握りなれた細身の柄に手をかけた。
「どうなっても知らないわよ…」
「覚悟の上です。」
その距離をゆっくりと縮めながら3人の間合いは詰まっていく。先に間合いに入ったのはエンタだった。
「シッ!」
エンタの剣が丘の上に光る。それに続くランゼ。
アンレーデはそれらを悉く受け流し、かわしてゆく。
エンタとランゼが攻め、彼女が受けるという攻防が十数合続き一本杉のある丘にはその場に似合わない金属音が響いている。
「はぁはぁ、さすがアンレさんだ…。」
「ホントだね。」
肩で息をしながら2人は今は距離をとっているアンレーデの様子を伺っている。
彼女も肩で息をしている。
「でも、そろそろだ…。いぁ、コレで決まる。」
「だと良いね。」
ランゼは少なくなってきた握力を感じながら必死に柄を握っている。
「準備良い?」
「うん。これで最後かな」
「よし、行こう!」
エンタは雄たけびを上げながら直線的に走り出す。ランゼはそのすぐ後ろに続く。
再び間合いに入ったエンタは両手に握った剣を振り下ろす。それと同時にランゼはアンレーデの側面へと位置を取って剣を突き出す。
アンレーデはランゼの動きを見ながら、エンタの剣を前に出るように受け流すとそのまま交錯するように体を入れ替える。
「ここだっ!」
並ぶように立ったエンタとランゼは間近に捕らえた彼女めがけて2人同時に剣を振り下ろす。
「(これはっ…)」
さすがに間近での攻撃に対し受け止めるしかない選択肢に危険を感じながらアンレーデその2振りの剣を受け止めた。しかし、振り下ろされた剣は受け止めた彼女の剣の反発に負けたように破壊音を伴ってその切っ先が空中に投げ出された。
「なっ」
まさかの事態にアンレーデの動きが止まる。
エンタとランゼはその折れた刀身を確かめて腰の鞘に納める。
「先日、街の鍛冶屋にお願いして細工しておきました。意外と時間がかかってしまいましたね。」
「うん、疲れたよ。」
「不思議そうな顔をしてますね。無理もありません…この剣は海へ出る時、アンレさんに頂いた剣です、陸に上がって海での役目を終えるこの身となってアンレさんの手で最後を迎えさせたかったのです。」
「最後まで我侭言ってごめんなさい。」
「不器用なけじめのつけ方だと思われるでしょう、でも海へ戻らぬ決意として治めてください。」
そう言って2人は彼女の前にその剣を並べ置いた。
黙って2人の話を聞いていた彼女はその顔を紅潮させている、口元からはその歯軋りする音が聞こえそうなほどに力が入っている。ゆっくりと右手に握る物を鞘へ収めると差し出された2振りを手に取った。
「馬鹿馬鹿しい…」
2人に聞こえるほどの声でそう吐き捨てるなりアンレーデは荒々しく踵を返すと大幅な歩調でセビリアの街へ向けて歩き出した。
「やっぱり、怒っちゃったね…」
「そうだね。リスボンに来てくれないかもしれないな。」
「そうね、ちょっと寂しいかもね」
「うん、寂しいかも」
小さくなってゆくアンレーデの後姿を見つめながら、一本杉に寄りかかるような格好で2人は決して戻れない数ヶ月の生活を思い出していた。

エンタとランゼがリスボンを出立する日の朝、アンレーデはリスボンの港に停泊している船の自室で海を眺めていた。
「提督、おはようございます。今日はエンタ提督とランゼ提督とのお別れの日ですね。」
全く部屋から出てくる気配のない彼女を心配して古参の船員は部屋の外から呼びかける。
「お見送りに行かなくても良いんですかい?」
いくら呼びかけても部屋の中から返事は返ってこない。
「覚えてます?お見送りは正午前って言ってましたよ」
そう言うと古参の船員は自らの担当する場へと戻っていった。
呆けるように海を眺めていた彼女は急に思い立ったように部屋を出た。
「ちょっと書庫へ行ってくる。」
近くに居る船員へそう告げるとそれ以外は無言のまま艀を降りて行った。

「両提督とも元気でね。」
リスボン広場に集合したのは、ライラ、イザナミ、マッテンだった。
「やっぱりアンレさん来てないね…」
「そうだね。」
2人は想像通りの結果になってしまったことを小声で話している。
集まった3人はそれぞれに2人の新しい門出に対し祝福の言葉をかけている。
「ちょっと寂しい見送りになっちゃったけど、ごめんね。」
「いぇ、皆さん忙しいのは承知の上です。私達の為に貴重な時間を割いていただいて光栄です。」
「どんなに離れていようとも、住む世界が異なろうとも互いに共有した時間がある事を忘れちゃだめよ。」
ライラはいつもどおりに優しい笑顔で若い2人と握手している。
「しかし、アンレはどこ行ったのかしら…港に船はあるのに…」
「いぁ、こんなに集まってくださって十分です。」
彼女が来ない理由を知っている2人にとっては彼女をそう庇うことで精一杯だった。
そして、彼らが予定している時間まであと半時ほどになった。
段々と掛ける言葉も少なくなり、時間の進む雰囲気が妙に長く感じるほどに5人はその時を待っていた。
「…あら?アンレが来たようね。」
ライラが何気に見渡した広場の反対側から彼女はゆっくりと向かってくる。
「え?」
エンタとランゼは声をそろえてライラが見ている側へと振り向いた。
確かにアンレーデである。
「エンタ、ランゼ両提督。新たなる旅立ちね。」
アルバに身を包み、学者としての最高の正装で現れた彼女は両名の前へ来ると微笑んでそう告げた。
「来て下さって光栄です。」
「何を畏まる必要があるの。もっと胸を張りなさい、祝福される側は主役なのよ。」
「そんな…」
「新たなる旅立ちに際し、私からささやかな贈り物をさせて頂くわ。」
アンレーデはそう言うと手に持ってきた長い包みを2人に手渡した。
「これは…」
「いくら環境が変わろうとも身に降りかかる火の粉を自らの手で振り払わなければならならない時は必ず来るわ。」
「はい」
「あの2振りは私が貰っておく。そして、貴方達2人の籍は私が責任を持って預かっておくわ。海が恋しくなったときには気楽に『ただいま』って言いながら戻ってきなさい。歓迎するわ。」
「…ありがとうございます。」
「何を下向いてるの、前を向きなさい。そして自らが選んだ道を堂々と進むのよ。」
「はい。ありがとうございます…名残惜しいですが時間が来たようです。皆さん本当にありがとうございました。」
2人は深々と頭を下げた。
「さてさて、何はともあれ。これが無いと話が始まらないわ。」
ライラが用意していたボトルとグラスを取り出した。
「用意が良いわね。」
「当たり前じゃない。」
ライラは人数分に酒を酌みながら笑っている。
「2人の新しい門出を祝し乾杯っ!」
「乾杯!」
それぞれの声がリスボンの石畳に高く遠く響いた。

2人が去った広場に4人は佇んでいた。
「行ってしまったわね。」
寂しくライラが口を開いた。
「寂しいが仕方無いわね。」
アンレーデが同調する。
「会える日もあるわ。」
イザナミもいつもより落ち着いた声で呟く。
「出会いこそ別れの始まりとは良く言うが、やっぱり寂しいもんだ。」
2人が消えた先を見つめてマッテンも口を開く。
「さてと、船に戻ろうかしら…」
その言葉を境に4人はそれぞれに街中へと消えていく。
自室に戻ったアンレーデはアルバから浅黄色のブラウスへと着替える。
そのアルバをしまう先には見覚えのある剣が2振り見えている。
「いつか返す日が来るのかしらね…叶わぬ夢としても希望を持ち続ける事は罪にならないでしょう。」
自室のクローゼット前で寂しさを紛らわせるように言葉を口に出し続ける提督を心をよそにリスボンの港に停泊している船は陽気をその身いっぱいに浴びて緩やかな風に船体をゆっくりと揺らしていた。

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