パーティーで - Todarodes pacificus

パーティーで

●●（志波くん……。
　　　あんな端っこで
　　　どうしたんだろう。）
●●「志波くん！
志波「●●。
●●「どうしたの？
志波「……ここ、空気、薄いだろ？
　　　壁際だったらまだマシかと
　　　思ったんだけど……
志波「あまり変わんねぇ。
●●「そうかも知れないね。
　　　志波くん、座ったら？
志波「……ああ。

志波「ふー………………。
●●「大丈夫？
志波「……なんとか。
志波「やっぱり……
　　　こういう場所は慣れないな。
　　　場違いな気がする。
●●「うん。
　　　パーティーなんて、なかなか
　　　出席する機会もないもんね。
志波「……３年前だったら
　　　こんなパーティー、
　　　学校行事でも出なかった。
●●「３年前……
　　　中学３年間だったら、ってこと？
志波「ああ。
　　　実際、文化祭もほかの行事も
　　　参加しなかったしな。
●●「そうだったんだ……
　　　でも、どうして？
志波「中学最後の試合……
志波「野球部の……特に３年のヤツらの、
　　　大会で優勝するって夢を
　　　オレは奪った。
志波「……相手チームの
　　　ピッチャーにかました、
　　　一発のパンチで。
●●「えっ……
志波「悪いのはピッチャーだってことは
　　　明らかだって言って、
　　　誰もオレを責めなかったけど……
志波「アイツらの、無理した笑顔を
　　　見るのがツラくて逃げたんだ。
●●「………………。

志波「……最近、あの頃一緒に
　　　野球やってたヤツらと
　　　時々、会うようになった。
志波「あの時の話は、やっぱり
　　　誰も話そうとしないけど、
志波「笑いながら野球の話して、
　　　バカな突っ込み入れたりして
　　　背中を叩かれる。
志波「そんなくだらないやり取りが、
　　　オレには心地いい。
志波「……サンキュ、●●。
●●「えっ……？
志波「おまえには、いろいろ
　　　思い出させてもらったから。
志波「笑い方も……人との接し方も。
志波「おまえがいなきゃ、
　　　こんなパーティーに出ようなんて
　　　思わなかった。
●●「志波くん……。
志波「……しゃべりすぎたな。
　　　疲れた。
●●「飲み物、持って来ようか？
志波「……いや。
　　　一緒に行こう。
志波「……●●。
●●「ん？
志波「……高校最後のクリスマス、
　　　一緒に居られてよかった。
志波「メリークリスマス。
●●「……メリークリスマス、
　　　志波くん。