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ジャブローに散る!その3

「全機、回避しろッ!」
スザクがブラックサンに飛びかかりながら叫んだ。何機かの暁はすぐさま跳びはねてビームを避けたが、一機が直撃をくらって大破した。さらに追いすがるビームがもう一機を破壊する。
「ウラベとセンバがやられた!」
スザクがゼロに言うが、ゼロは引き下がらない。彼の視界には、銀色の機体、シャドームーンに走り寄る一人の男が映っていた。マスクの中で、彼の口元がニヤリと曲がった。
「全機、目標を敵の撃破に切り替えろ!シャドームーンはすでに我が手中に落ちた!」
ゼロの意味深な命令に、スザクは一瞬眉をひそめた。銀色の機体はまだしっかりと格納庫に収まっている。黒の騎士団の手には落ちていない。「我が手中に落ちた」とは、どういう意味なんだ?
とにかくスザクはブラックサンとの戦闘を続けた。カレンのおかげで、こいつは今片腕で戦っている。それでも十分手強いが、勝機はある!他のMSは遮蔽物に隠れつつ、BlackCatとマスタースパークの射撃を翻弄していた。アームストロング砲が暁を仕留めようとした瞬間、蜃気楼がバリアを張って割り込んできた。ルルーシュにしては積極的な戦い方だと思いつつ、スザクはもう一度銀色の機体に目をやった。やはり沈黙している。ルルーシュはあの機体の奪取をあきらめたのだろうか。と、次の瞬間、銀色の機体が突如として動き始めた。目が碧色に光り、ゲージを外れて一歩を踏み出す。格納庫内の敵味方の動きが一瞬すべて止まった。全員がこの機体に目を奪われている。さらにもう一歩踏み出す。カシャッ、カシャッと言う足音が不気味に響く。
「その機体、パイロットは誰か?!」
ナガモンが通信を開いた。
「へへっ、アリー・アル・サーシェス様だよナガモン中尉。味方で安心したか?」
「アリー?なぜその機体に?」
「上からの特命でなぁ。そしてここからは…」
銀色の機体が腕を伸ばすと、突然そこからビームがほとばしった。
「ああああああッ!」
ビームはBlackCatを直撃し、ナガモンが悲鳴をあげた。
「俺の独断だ。あばよ、ブラックハウスのみなさんによろしく!」
「ナガモン大丈夫?!アリー、一体なにを言って…にゃあッ!?」
黒猫がBlackCatに駆け寄るが、その背後からランスロットが斬りかかった。ブラックサンも損傷し、BlackCatの横に倒れこむ。

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06/21 09:00 W51S(e) [264]エルザス
「ナガモン!猫さん!この野郎ッ!」
魔理沙が銀色の機体にマスパを向けたが、アリーはすでに肉迫してきていた。
「大人しくしとけば、命まではとらねぇよ!」
アリーがそう叫ぶと、銀色の機体の肘から短い刀身が飛び出し、マスパの砲身を切り落とした。アリー続いてマスパを蹴り倒す。
「きゃあッ!」
魔理沙も倒れ、残ったのはナンジのホーバークラフトだけになった。必死でトリガーを引くが、やはりロケット弾は発射されない。
「チクショウ!なんでだ!!」
ナンジが叫ぶ目の前を、銀色の機体と黒の騎士団が一緒に退却していく。
「クソッ!!逃げるなぁ!」
ホーバークラフトが追跡しようとするが、ナガモンが止めた。
「待て、ナンジ!」
「ナガモン中尉?!」
モニターの中のナガモンは頭から血を流していた。
「ホーバークラフトは無理だ!下がれ!」
その時、去っていく黒の騎士団とすれ違って、新たな敵がやって来た。
「…ようやくめぐり逢えた…この時を待っていたぞ、ガンダム!」
新たな敵とは、ガンダムとの再会に猛るグラハム・エーカーであった。だが蜃気楼の足を止めたゼロが彼を止めた。
「グラハム、退却するぞ!目的は果たした。」
しかしグラハムはゼロの言葉を一笑に付した。
「まさか!私の使命はガンダムを捕獲すること、それができなければガンダムを倒すことだ!」
「間違っているぞ、グラハム!」
「フェイト、私に続け!」
「待てっ!」
フラッグが攻撃を開始し、格納庫の入口から猛烈な射撃がナガモン達を襲う。BlackCatがブラックサンとマスタースパークの盾になるが、それに耐えるだけで精一杯だ。ブラックサンは沈黙し、主砲を壊されたマスタースパークは反撃の術をもたない。腕を×字にクロスして耐えるBlackCatだが、次々に飛んでくる弾丸が機体を激しく揺さぶり、ナガモンの頭部の傷口から血の飛沫が飛び散った。苦痛に歪む彼女を見たナンジは、覚悟を決めた。彼のホーバークラフトにはロケット弾が一発も撃たれないまま搭載されている。大切な仲間が窮地に立たされている。できることは一つしかなかった。

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06/21 18:31 W51S(e) [265]エルザス
264
「発射できないなら…ッ!!」
ホーバークラフトは急に加速してグラハムとフェイトのフラッグに向かってゆく。

『勝つか負けるかはわからない。』

「冗談ではない!」
グラハムのソードが一閃するが、ナンジは不意にホーバークラフトの機首を上げて、この斬撃をかわした。

『だが、肝心なのは名誉だ。』

この時ナンジは、涙を流しながら、しかし晴れ晴れと笑っている自分に気がついた。機体はさらに加速して、岩盤の天井が目の前に迫ってくる。

『ならば、お前の決断は名誉にかなっているのか?』

「うおおおおおおおお!!!!」
「ナンジ!よせッ!!」
ナガモンの叫びも虚しく、ナンジのホーバークラフトが洞窟の天井に激突し、搭載されていたロケット弾が瞬時に爆発した。強烈な衝撃にすべての芯管が作動し、爆薬はその威力を余すところなく発揮した。砕かれた巨大な岩石が落下してくる。ナンジの特攻を予期したグラハムはいち早く機体を後退させていたが、フェイトはその場に取り残された。
「ッ!?」
フェイトがハッと息を呑み、岩石が彼女のフラッグのすぐ図上に迫る。それが機体を直撃するかと思われた瞬間、蜃気楼とランスロットがフラッグをぐいと引き倒し、岩石の落下からフェイトを守った。
「退却する!スザクとグラハムは先頭を行け!」
ゼロがその語気に怒りを滲ませながら叫んだ。グラハムはガンダムの方を一瞥したが、岩盤の崩落は止まず、ついには通路を塞いでしまっていた。
「なぜ私を受け入れないのだ、ガンダム…」
グラハムはフラッグを駆り、退却する混成任務部隊の先頭に立った。ゼロはそれを見届けると、ようやく立ち上がったフェイトのフラッグを振り返った。
「フェイト、大丈夫か?」
先の口調とは一転して、甘く優しい声色だった。
「だ、大丈夫です。」
「そうか…君が無事でよかった。行こうか。」
蜃気楼がフラッグをエスコートするようにゆっくりと移動を始めた。フェイトの心臓がトクンと一際大きく脈打った。彼女のフラッグが蜃気楼の後についてゆく。
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06/21 18:32 W51S(e) [266]エルザス
265
落盤の反対側では傷だらけになったBlackCatが呆然と立ち尽くしていた。ナガモンの頬を血の滴がしたたり落ちるが、彼女は目の前の岩石を見つめたまま微動だにしない。
「ナガモン、ナンジは…?」
ようやく起き上がった黒猫がきくが、ナガモンは答えない。代わりに魔理沙が答えたが、嗚咽で聞き取りづらい。
「私たちを…守るために、…岩盤に…つ、突っ込んで…ああああ…」
魔理沙は両手に顔を埋めて泣きだした。
「なんでだよ…なんでこんな…」
ナガモンが呆然自失の状態で呟いた。瞳には涙が溢れていたが、その光には怒りの色が見てとれた。
「許さない…絶対に許すもんか…ジオン…!!」
唸るような声でナガモンが絞り出した。黒猫にはナガモンが違う生き物になってしまうような気がして、怖かった。ひとたび憎しみに染まってしまえば、その連鎖はとどまることを知らない。そんな破滅の道に、ナガモンは引き込まれそうになっている。黒猫にはそれが怖かった。だが、声をかけようにも、言葉が見つからない。ナンジが死んだ。その事実を受け入れることができず、思考が止まってしまったみたいだった。いや、もう一つある。アリーの裏切りだ。よりにもよって連邦の新型MSを奪って寝返るとは。今思えば、アリーの裏切りさえなければ、ナンジは死なずに済んだのかもしれない…。
戦いの無常がそこにはあった。信じて裏切られ、殺して殺される。その血塗られた道の先に、ジオンが求めた正義があるのだろうか。連邦が守るという自由があるのだろうか。答えは見つからない。ただ黒猫は、わんわん泣く魔理沙と、ぐっと嗚咽を堪えているナガモンの声に耳を傾けていた。
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06/22 08:00 W51S(e) [267]エルザス
266

ブラックハウスのいる戦艦ドックでは、まだ戦いは終わってはいなかった。敵の二個小隊がそれぞれ異なる入口からブラックハウスを破壊しようと攻撃してきたのである。正面ゲートにグフ三機、そして右翼の連絡ゲートに先程から取りついているザクが三機。
味方には61式7輌が増援にきたが、すでに3輌が破壊されていた。
「いいかげん諦めればいいのに!もう地上の戦いは済んだんでしょ?!」
ザクにマシンガンを浴びせながら乃人が叫んだ。
「地上だけじゃない。見たところ洞窟に残ってるのはほとんどこいつらだけと言っていい。」
阿部さんもマシンガンで乃人を援護する。二人はブラックハウス右翼の連絡ゲートを守っていた。対峙するザクはもっていたバズーカの弾を撃ち尽くしたらしく、今はヒートホークを持って突撃のタイミングを待っていた。
一方正面ゲートのグフはシールドに装備されているバルカンをこれでもかというほど撃ちかけてきた。ブラックハウスとそれを守るレイジングハートはこの程度で撃破されはしない。しかし、不用意に反撃すれば重大な損傷を負ってしまうことも明らかだった。にも関わらず、ナノハは一歩も引き下がらなかった。
「トレインさん!援護をお願い!私が突っ込みます!」
「了解した!」
ブラックハウスのレールガンが弾幕を張り、ナノハがその下を突進した。正面ゲートの施設は既にスクラップにされていたが、さらなる砲撃がいよいよ人口のゲートを跡形もなく消し飛ばし、天然の岩盤が露になった。その陰に隠れるグフは、接近してくるレイジングハートを認めるとヒートロッドを振るった。ナノハは間一髪これをよけ、そのグフにスナイパーライフルを撃ち込んだ。その途端ほかのグフ二機がヒートサーベルで斬りかかってきた。
「くっ!!」
片方の斬撃は避けたが、もう片方にスナイパーライフルを真っ二つにされてしまった。やはり接近戦では分が悪いか。
その時、不意に強烈なビームが二機のグフを瞬時に吹き飛ばした。
「なに?」
グフの爆発からシールドで身を守りつつ、背後を振り返った。
暗闇の洞窟に、真っ黒なMSが立っていた。ナノハにはそれが一瞬悪魔のように見えたが、よく見るとそれは傷だらけになったBlackCatだった。
「ナガモンさん、なの?」
BlackCatは黙って歩み寄ってくるとビームサーベルを抜いた。それが高く振り上げられる。
「ッ?!」

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06/23 10:05 W51S(e) [268]エルザス
267
ナノハは息をのんだ。ナガモンは私を…?!
だが、振り下ろされたビームサーベルが貫いたのは、グフの残骸だった。BlackCatは黙ったままグフを繰り返し斬りつけた。異様な雰囲気が、明らかな狂気が、その機体から流れでていた。
「ナガモン!返事して!ナガモン!!」
黒猫のブラックサンが現れた。その右腕は肘から先を粉砕されていた。黒猫は尚もBlackCatに呼びかける。
「ナガモン!それ以上はダメだよ!!戻ってこれなくなる!」
その時、ナノハははっきりと見た。さらにグフをバラバラにしてゆくBlackCatの背中に、憎しみの影がゆっくりと立ち上がるのを。
「ナガモンさん、もう止めて!!どうしてこんなこと?!」
ナノハも叫ぶが、ナガモンの応答はない。レイジングハートはBlackCatを止めようとその胴に腕を回した。
「離せ!」
それでもナガモンはやめようとしなかった。もう一度ビームサーベルをふりかぶったところで、ブラックサンも止めに入った。
「こんなことしたってナンジは帰ってこないよ!それくらいわかってるでしょ!」
黒猫が叫んで、ナノハ達はようやく状況を悟った。ブラックハウスの艦橋で、あずにゃんが呆然と呟いた。
「ナンジさんが、戦死した…?」
この一言に、ドックにいたすべての者が動きを止めた。ザクに弾丸を浴びせていた乃人と阿部さんすら、射撃を止めた。その隙に、ザク三機は退却していった。
BlackCatももう動かなかった。憑き物が落ちたように、BlackCatから憎悪の表情が消えた。かわりに、とめどない哀しみの感情が現れた。不気味なほどに、洞窟が静まりかえっていた。その中に聞こえる唯一の音は、ナガモンが漏らす嗚咽だけだ

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最終更新:2010年11月02日 22:32
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