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51-75 - (2009/05/13 (水) 19:26:31) のソース
51 :エルト ◆hy2QfErrtc :2008/12/20(土) 00:50:13 (ほらね、デイヴ) 再び笑う全ての元凶。 (あなたは、逃れられないの。だから今アレスに向けてそんなことを言っても無駄なのよ) [[エリス]]はそう思いながら、デイヴに気づかれないようにロングレンジビームライフルを最大出力で、撃つ準備をする。 (イタチの最後っ屁ってヤツね。あんまり好きじゃないんだけど) ドルチェが発射体勢に入る。 「「「「!」」」」 エリス以外の全員が、目を見張る。 「チャージ完了!それでは皆様、良い夢を♪」 ドォォォォォォォ! 光の渦が、全てを飲み込んでいく… 「何て、ことだ…!」 目の前の情景に、絶望するフィリア。 「そん…な…」 肩の力を抜かし、崩れ落ちるミランダ。 驚愕の表情を浮かべたまま、固まるヴァイス。 体の震えが止まらず泣き出すモモ。 ギデオンは、その拳をふるふると震わせている。 綺麗な景色だった。 まるで、夢の中でしか見ることのできないような、それは綺麗な。 綺麗なものに絶望することが、ある。 すべてを奪われた[[カナリヤ]]の面々は、静かに涙を流すしかなかったのだった。 深い深いまどろみの底で、見た夢。 それは、決して開けてはならない、パンドラの箱… 一人の少女が、悠久の時を眠る。 初雪のように白い肌に咲き誇るは、薔薇のように美しい唇。 少女には恐らく感情というものはない。眠ってはいるのだが、目を覚ましたとて、美の権化がただ在るだけだという印象を与える。 あまりの美しさに、そっと触れようと手を伸ばす。 決して遠くはない距離にいる少女に触れるには、少しの時があれば十分だろう。 しかし、あまりにも遠い。あまりにも永い。 その時間さえ愛おしく思えるほどの美しさ… そして、指先が少女の面を捉えた刹那… 世界が、崩壊した。 ……… 以上で、運命の序曲における役者達の邂逅は、ひとまず区切りをつけることとする。 これからは、「夢のあと」に聞こえる「世界の声」に、耳を傾けていくことにしよう。 七話 終 八話に続く 52 :エルト ◆hy2QfErrtc :2008/12/20(土) 00:51:53 長かったマンネリ駄文からもようやく抜け出せそうw 次から新章の予定。けれどコピペは使うかも… そんなわけでサヨウナラ 53 :通常の名無しさんの3倍:2008/12/20(土) 15:51:11 エルト氏GJ!! 複雑な人間関係と[[ガンダム]]関係。 ここからどう発展していくのか!? 新章、楽しみにしてます!! 54 :本家ドルダの人:2008/12/20(土) 22:24:39 >>バルドさん いつもお早いまとめありがとうございます キャラクターもwktkです >>エルトさん あぁもうキャラクターの絡みが良すぎです……! 新章も期待してます! (CM終わり。アイキャッチは銃を構えた少年ことディラン) 55 :本家ドルダ:2008/12/20(土) 22:29:07 施設に侵入するのは簡単だった。 ディランに与えられた任務は2つ。 収容所にいる火星コロニー義勇軍のパイロット達の救出と、ガンダムの破壊。 休戦協定の会談は好機だった。 会談で地球圏連合軍の注意をそらし、定刻後一斉に行動を開始する。 ディランはパイロット達の救出ルートを確保すると、ガンダム破壊のため公社の所有するドッグに向かった。 潜入工作は、昔取った杵柄というのだろうか、体に染み込んでいた。 (民間施設だけあって、警備は手薄だな……) 天井の通気口が外れて、通路にディランが降り立つ。 物静かな通路。人の気配を感じない。 誰もいないのは好都合だが、逆にこのドッグが存在する意図も気になってくる。 (データによれば、もうすぐのはずだが) 頭の中には、このドッグの見取り図が全て記憶してある。 これもまた、彼の経験で得た特技だった。 人の気配がして、ディランは立ち止まる。 壁に背をつけ、角から通路の先を見た。 「迷っちゃった……」 きょろきょろと辺りを見回している少女。 「探検するとか言ってお兄ちゃんはどっかに行っちゃうし。もうっ……」 どうしたものかと、溜め息をつく。 56 :本家ドルダ:2008/12/20(土) 22:32:57 ディランは疑問に思った。どうしてこんな場所に少女がいるのだろうかと。 (ガンダムのパイロットは、確か10代ほどの少女……) 情報通りなら、今そこにいる少女の可能性もある。 ディランは、ゆっくりと銃を抜いた。 ガンダムのあるドッグは、この先。 いずれにしろ、鉢合わせするのは必至。 なら。 (苦しませず、一撃で) ディランが、駆け出す。 足音に気付いた少女が振り返る。 その目は驚愕し、一気に見開く。 「い、いや……」 恐怖に歪む少女の顔。 トリガーを引くディランの指が、止まる。 薄暗い室内。 血と硝煙の臭いが充満する。 『隣の家で物音がした』 数人の男達の中に、場違いな少年が一人。 手には彼等と同じ銃が握られていた。 『なんだと。見られたか?』 『耳がいいお前を連れてきといて正解だったな。行くぞ』 男達は、隣家へ向かう。 それに続く少年。 『シュテフィとヘルガは奥に隠れていなさい。私は警察に連絡を』 『あなた……』 『大丈夫だ』 父親らしき男は優しく笑って、母親と娘らしき二人を置いて、部屋を出て行った。 母親は娘を抱き締める。強く強く、娘が痛いと感じるほどに。 57 :本家ドルダ:2008/12/20(土) 22:35:52 『な、なんだお前達は……!』 部屋の外から、父親の声が聞こえた。 その直後に、銃声。 恐怖に震える母親と娘。 信じられない、信じたくはない現実。 勢い良くドアが開かれた。 『ひぃっ』 母親の声が、耳元で聞こえた。 自分を抱き締める母親の腕の力が、緩む。 『お、母さ、ん?』 母親が、床に倒れた。 顔を向ける娘の顔が、驚きと絶望に揺れた。 そして、ドアの方へと顔を向ける。 そこには、自分と年も背丈も変わらない少年がいた。 少年の手には、煙を立たせた銃が。 娘は何が起こっているかもわからず、目の前の銃からは再び弾が、発射された。 「い、いや、いやぁぁ」 力が抜け、床に崩れる少女。 ディランは蘇る自分の記憶に、混惑する。 (この少女は、あの時の少女だ……) だが、何故。 どうしてこの場所にいるのか。 少女は地球に、ドイツにいたはずなのに。 そもそもあの時、この手で殺したはずである。 ディランは、考えを振り払う。 何年も前のことだ。運良く助かり、火星に移住したということもあるだろう。 あの少女は、助かったのだ。 (助かったことが、俺は嬉しいのか……?) 58 :本家ドルダ:2008/12/20(土) 22:45:16 トリガーを引かない自分。 無関心だった自分に芽生える、人間的な感情に戸惑う。 「いやああああああ!!」 ディランが躊躇する中、少女が叫び声が通路に反響する。 そして、少女は事切れたように気を失ってしまった。 「くっ!」 ディランは少女を横目に、ドックに向けて走りだした。 今は目的を果たすだけ。 ガンダムを破壊すれば、もしあの少女がパイロットだったとしても、戦闘で殺さずに済む。 ディランはドックのドアを開けた。 走りながら、4機のモビルスーツを確認し、一気に迫った。 目の前には3人の男女。 もう迷ってはいられない。 ディランは、トリガーを引いた。 「危ないッ!」 一人の少女が飛び出してくる。 発射された弾丸は、その少女に命中し、少女は床に倒れた。 構わず突進してくるディラン。 そんなディランに、青年が咄嗟に床に置いてあった工具を投げ付けた。 「ぐぅっ!」 それが、ディランの手首に上手く当たり、持っていた銃が転がり落ちる。 (タイムアウト……!!) 脳内で刻んでいた時間が、超過を告げた。 銃を拾うこともせず、ディランは踵を返して、デッキを出る。 59 :本家ドルダ:2008/12/20(土) 22:48:42 通路には、未だ気絶し床に横たわっている少女がいた。 気になったが、ディランは自分の意思を振り払い、その場から走り去る。 「こちら[[ディラン・クロス]]。ガンダムの破壊に失敗」 携帯端末を取り出し、マイケルに連絡を取る。 『ご苦労様! 仲間の救出ルートを作ってくれただけで及第点だ。 僕達も今シャトルに向かってるから、さっさと合流しちゃおう』 「了解」 今まで心に浮かぶことのなかった感情。 これが一体何を意味するのか、彼はまだ知らない。 嵐のように過ぎ去った出来事。 謎の少年、そしてその少年の発砲。 少年は逃げていったが、事態はまだ終わってはいない。 ディランは携帯端末を取り出し、ギデオンと連絡を取る。 「俺です! ドックに侵入者、[[シンシア]]が……撃たれました」 スピーカーの向こうで、驚きの声が聞こえる。 「はい、はい。交渉は決裂っスか……」 近くで、シンシアの様子をしきりに尋ねるクランの声が聞こえる。 「クランには気にすんなって伝えてください。この会談、どっちも成功させる気がなかったと思うっス」 「ヴァ、ヴァイスさん!」 助けを求めるような震えた声で、ミランダがヴァイスを呼んだ。 「じゃあ、こっちは俺達が」 60 :本家ドルダ:2008/12/20(土) 22:50:24 クランのことも気になるが、手早く通話を終わらせる。 「ミランダ! どうかしたのか!?」 駆け寄りヴァイスが訊く。 「あの、それが……」 シンシアを抱き上げたミランダは、複雑な顔をしてヴァイスを見た。 上着は脱がされ、傷口が見えるようにされている。 服にも血が広がっている。しかし、少し様子が違った。 「なんだ……これ……」 傷口は、細かな光に覆われていた。 その光の現象に、ヴァイスとミランダは同時に、あることを思い出す。 「ドルダの……」 「ナノマシンによる修復……」 それと同じことが、シンシアにも起こっているのか。 医療分野において、ナノマシンは実績を上げてきた。 今まで不治の病とされてきたいくつもの難病を治療、完治させている。 だが、これはそれとは一線を引いた、異常な光景だった。 モモを呼ぶ間もなく、二人がただ呆然としている内に、傷口は塞がってしまった。 そして、シンシアがパチリと目を覚ます。 「敵が来る……」 目覚めて最初に発したのは、いつもの明るいシンシアとは思えない、冷静すぎる一言。 ミランダの手から離れて、起き上がるシンシア。 61 :本家ドルダ:2008/12/20(土) 22:54:18 それと連動するように、ドルダのコックピットが開く。 ドルダに向かって、シンシアは歩き出した。 ミランダはシンシアの体を支えていた態勢のまま、震えている。 (火星の地下に眠っていたモビルスーツと、それに乗っていた謎の少女……) それは、恐怖する感情。 (………………不気味だわ) 火星コロニー義勇軍のシャトルが停まる民間ポート。 マイケル、ターニャ、ニコラス。そして、収容所から逃げてきたパイロット達が集まる。 パイロット達をシャトルに乗せ、三人も中でディランを待った。 ディランが先か。地球圏連合軍の追っ手が先か。 「賭けるかな」 「じゃあアタシはディランが来るに5000」 「じゃあ俺もそっちに2000」 「おいおい、それじゃ賭けにならないじゃないの」 そんな談笑をしていると、エプロンに人影が見えた。 三人は、賭けにならない賭けに、勝ったのだ。 「すまない。4分16秒の遅れだ」 「誤差範囲内だよ。さぁ、さっさと操縦席についた」 乗り込んできたディランを迎入れ、背中を押す。 顔の端しか見えないが、ディランがふっと笑った気がした。 ディランは操縦席につき、発進準備を進める。 62 :本家ドルダ:2008/12/20(土) 23:25:11 しばらくして、シャトルは第29コロニーを飛び立った。 『後は我々に!』 10機の[[ローズ]]がシャトルと擦れ違うように第29コロニーに向かっていく。 「頼む。シャトルは宙域の離脱に専念する」 通信を送り、ディランはより強く操縦桿を握った。 ディランは思う。昔の自分と今の自分の違いを。 昔の自分にも仲間がいた。しかし、仲間という存在をどう認識していたかは、よく覚えていない。 自分のしていること、人を殺すことに、疑問など感じたことはなかった。 身を置いている組織に、ただ戦うためだけの存在として利用されていた。 テロリズム・イヤー。その年が終わり、騒乱が終息に向かっていく。 ディランは、格安を謳う旅行会社の惑星間航行用宇宙船に乗って、火星圏に向かっていた。 元いた組織から、マイケルに引き取られたからだ。 戦う必要のなくなった自分は、新たなる地へ旅立った。 そして、その地で、戦うことになる。 (今は、昔とは違う。俺は、俺の意思で、戦っている) ディランは、変わっていく。 人間らしい感情が、少しずつ芽生えていく。 まだ少年といえど、人としては、あまりにも遅いのかもしれない。 63 :本家ドルダ:2008/12/20(土) 23:30:11 しかしディランは、今そこにあるものを、掴もうとしていた。 それが、彼に迷いという感情を生じさせるとしても。 第29コロニーの3番から5番までの軍事ドックには、 ハーフムーンより退避してきた艦隊が収容されている。 旗艦のドードー級レユニオンが1隻、そして僚艦であるドードー級ロドリゲスが5隻。 そのレユニオンには、あるシステムを操作するコントロールルームが設置されている。 「イーグルクロウ、全機射出」 第29コロニーの付近宙域に、5機のイーグルクロウが配置される。 パイロットは搭乗していない、無人状態での出撃である。 「ビットシステム起動。戦術データリンク、正常に受信中」 ビット(Battle-target Identification Total-control=B.I.T.)システム。 [[メリリヴェイル・ルシェッタ]]によって考案、開発されたものであり、 無人機を遠隔制御することによって半自動化させて戦闘を行う。 「経過はどうか」 ドアが開き、メリリヴェイルとその部下達が入ってきた。 「ハッ。正常に作動中であります。ですが……」 敬礼もそこそこに、コントロールルームに詰める士官の一人が心配そうに言った。 64 :本家ドルダ:2008/12/20(土) 23:34:53 「気負うな。初陣だが、撃墜されても貴官等が死ぬわけではない」 強い口調でメリリヴェイルが返す。 そんな言葉が後押しになり、堅い表情で士官は作業に戻った。 (だが、よもや人型機動兵器……モビルスーツに対して使用することになろうとはな) 兵士は命令に絶対であるが、人間であるパイロットがそれに従う可能性は、決して100%ではない。 例え命令に従ったとしても、指揮官の指示を完全には把握できない場合もある。 メリリヴェイルは他人を信用せず、自身の考えを貫く性格故か、部下にも厳しい。 一部の部下からは“鉄の女”と陰口を叩かれることもあった。 そんなメリリヴェイルが行き着いた先は、無人機による戦闘だった。 命令に忠実で、決して裏切ることのない兵器。 (そうだ。それがあれば) ビットシステムを搭載したイーグルクロウならば、ローズの機動性にも対抗できる。 無人機ならパイロットの肉体の限界を考慮しなくとも済み、 それ以上の性能を発揮させることも可能になるのだ。 (司令代理の地位も悪くはないがな。だが私はこのシステムと戦果をもって、地球圏に舞い戻る) これは好機なのだと、メリリヴェイルは思った。 65 :本家ドルダ:2008/12/20(土) 23:41:35 「索敵範囲内に敵機進入。ローズ、数10」 「小隊クラスが2、か。シャトルの離脱支援が目的だな。各機、臨戦態勢」 「了解! ビットシステム、戦闘モードに移行します」 現在はコントロールルームからの遠隔制御を必要とするが、 戦闘データが蓄積されていけばいずれは完全に自動の無人戦闘機となる。 そんな無人イーグルクロウの群が、レーダーに入った標的に向けて移動を開始する。 ローズの部隊も気付いたのだろう。 ビームライフルを構え、イーグルクロウに接近していく。 「虫けらがぁー!」 発射されるビーム。 通常ならば当たるはずのそれが、躱される。 「何ッ!?」 『隊長、敵の動きが!』 イーグルクロウが散開した。 今までのイーグルクロウとは思えない速度で、部隊を翻弄する。 「包囲。攻撃を回避しつつ、火力を集中」 メリリヴェイルが指示を出す。 3機のイーグルクロウは補足した1機を取り囲むように展開した。 放たれる2連装キャノン。ローズの装甲にはかすり傷程度にしかならない。 3機が引き、その後方にいた2機が畳みかけるミサイルを発射する。 「くぅっ!」 ローズはビームで応戦する。 66 :本家ドルダ:2008/12/20(土) 23:46:18 しかし、全基撃破することはできず、ローズにミサイルが命中した。 腹部下方から脚部にかけて爆発が起こるローズ。撃墜には至らなかったが、大破し、行動不能に陥った。 「や、やりました!」 「我々のイーグルクロウが、奴等を……」 歓声に包まれるコントロールルーム。 「気を抜くな!! 戦闘はまだ継続中だ、馬鹿者!」 メリリヴェイルが喝を入れる。 慌ててモニターに向き直った士官達。 (やはり、戦争としての感覚が薄くなるか……) 遠隔での制御を必要とする内は、その制御を担当する士官に対して危惧することも多い。 まだ残す課題は多いかと、メリリヴェイルは懸念する。 「クッ! なんだこのモビルアーマーは!」 隊長格であるローズパイロットが焦りを滲ませる。 1機は大破させられ、回収のために2機を向かわせた。 イーグルクロウの2連装キャノンは脅威ではない。ミサイルも同様だ。 だがこうまでローズの攻撃が当たらないとなると、パイロットとしての資質を問われかねない。 「[[マイケル・ミッチェル]]と[[ニコラス・スウィフト]]に笑われてたまるかぁぁぁ!」 ミサイルを撃ち落とし、接近する。 レイピアを抜き、一気に至近距離まで。 「これなら避けられまい!!」 67 :本家ドルダ:2008/12/20(土) 23:49:41 串刺しになるイーグルクロウ。 レイピアを引き抜きローズが下がる。 やっとのことで、イーグルクロウを倒すことができた。 残りの4機。それに目を向ける。 攻撃を開始しようとしたその瞬間、アラートが鳴った。 「高出力ビーム……奴か!」 コロニー下方から一筋の光芒が、ローズとイーグルクロウの群を襲う。 「あれが、例のドルダか……!」 メリリヴェイルが息を呑んだ。 「イーグルクロウ、広範囲ビームにより全機壊滅!」 「ですがローズも4機の撃墜を確認!」 「奴は公社の機体だ。味方の識別信号を送れ」 イーグルクロウが壊滅した今、それも無駄なことではあるが。 (それともドルダ、見境無しか……) 休戦協定が無になったといって、武力で両軍に戦闘停止を訴えるわけでもあるまい。 メリリヴェイルはそう考えるが、果たして。 「私は、倒す…………敵を、危険を及ぼす者を……」 ドルダの中で、シンシアは低く呟いた。 To Be Continued... 68 :バルド ◆lqbqZrNVoQ :2008/12/21(日) 13:20:35 本家ドルダGJ! ヘルガの家族を殺したのはディランだったんですね! そしてA.S.D.世界もついにビットシステム登場! とにかく乙です! 69 :エルト ◆hy2QfErrtc :2008/12/21(日) 16:46:14 こんにちは、00放送前に投下します。 なんだか叩かれる要素満載な八話ですが、とりあえず投下 70 :エルト ◆hy2QfErrtc :2008/12/21(日) 16:47:09 新説[[ガンダムドルダ]] [[第八話 世界の声]] さあ、耳をすましてごらん。 聴こえる、聴こえる。世界の声が。 知っているものは、いつでもそのままの姿であるとは限らないんだよ。 宇宙要塞ハーフムーン。 月を割った、半月のようなボウル型の小惑星。 火星圏における地球連邦軍火星方面駐留軍…つまり、「火星コロニー軍」の最重要拠点… その付近を、一機の大型輸送艦が飛行していた。ずんぐりとしたその赤色の輸送艦は、カナリヤの同型艦『テレウス』である。 無駄な区画の多いカナリヤとは違って多数のMSを搭載でき、現在、その広い格納庫には三十機ものMSが鎮座していた。 三十機近くのローズの中に一機だけ全身を黒く塗装した機体があった。頭部の形状も少し異なっている。 黒い機体、[[ドル・デー]]のコックピットには、赤毛の男が瞑想するような面持ちで佇んでいた。 『レオ五郎右衛門隊長、玉音放送が始まったみたいです』 通信でレオ五郎右衛門と呼ばれて、赤毛の男は微かに目じりを震わした。レオ五郎右衛門というのは洗礼名である。 スペースノイドの彼がコンパニヤというマーズノイドの宗教に入信してから一年の月日が過ぎている。しかし珍妙な洗礼名には未だに慣れることが出来ないでいた。 部下にはなるべく元の名前で呼んでもらいたかったが、彼らは火星の独立にかこつけて、今では公然と互いの洗礼名を呼び合うようになっている。そこに悪意が感じられないだけに赤毛の男としては決まりが悪い。 『ああ! 教皇ペトロ四郎猊下はなんと神々しいお方なのでしょう。満ち満ちた霊(アニマ)が目に見えるようです』 画面にいるペトロ四郎の姿に部下は感極まる様子であったが、赤毛の男からしてみれば、その老人は柔和な顔立ちという以外には別に取りたてて言うべきこともない老人である。 赤毛の男は恍惚とする部下たちを窘めて、あらためて作戦内容を確認させた。作戦開始は演説が終るのと同時である。 船体下部のハッチが幾つも開いて、下半身を固定された逆さ吊りのローズが姿を現した。 『ゼスス・キリシテ、サンタ・マリヤ、サンチャゴ』 全パイロットの合唱が聞える。赤毛の男も控えめに祈りの文句を唱えた。 『ゼスス・キリシテ、サンタ・マリヤ、サンチャゴ』 下半身の固定装置が外された。重力に引かれたローズが順々に降下していく。 71 :エルト ◆hy2QfErrtc :2008/12/21(日) 16:48:09 やがて「火星コロニー義勇軍・ダイモス」所属のMS、ローズが手にしたビームライフルを構える。 その数およそ三十。半端な戦力ではない。戦争でも始めるつもりなのだろうか。 対してそれを迎え討とうとするのは火星コロニー軍最新鋭MS、[[ガーランド]]。 その数はおよそ百。ローズの三倍以上はいる。 『どういうことだ!ベイト大佐!』 ハーフムーン司令室より響き渡る男の怒声。 火星コロニー軍・ハーフムーン司令の[[アーロン・キム]]少将の声であった。 「故郷に錦を飾りたくなりましてね、少将閣下殿。[[ガンダムマルス]]の力は我らマーズノイドのためにこそ用いられるべきでしょう」 『火星の重力に中てられて先祖返りしたか、[[マスター・ベイト]]。だが、そう簡単にこのハーフムーンが落とせると思うな!この要塞の強固さは、貴様も知っているはずだ』 しかし、真紅の機体のコックピットに坐る男は唇の端を歪めるに過ぎなかった。 通信の相手に対するものとは別に表示されたウインドウには、三重冠を被って白い法衣を着た老人が、巨大な十字架の前に立って演説する場面が映し出されている。 この映像は地球と火星圏の全コロニーに向けて放送されていた。 演説の主な内容は、マーズノイドの独立宣言と地球連邦政府への宣戦布告である。 先日[[宗谷陽光]]が行ったものとは、随分趣が違う。 「門は開かれました。去勢された人類が目覚めねばならぬ時がきたのです」 『狂信者が世迷い事を』 「水に落ちた犬を打たぬは人の子弟を誤る。狆はことに水中に打ち落としてさらに追い打たねばならぬ――古代の俚諺です。閣下を捕虜には致しません。 革命成就のために敢えて汚名を、この私、トマス金鍔次兵衛が!」 真紅の機体、ドル・デーの持つビームスマートガンのレドームが回転を始める。ガーランド隊がライフルの引き金に手をかけた。 『撃てば、貴様も死ぬぞ』 「我らが天主(デウス) さんたくるすの御しるしをもて 我らが敵をのがしめ給え 天主ぱあてれ ひいりよ すぴりつさんとの 御名をもて あめん」 男が奇妙な祈祷文を詠い終えたのと同時にウインドウに映る老人の演説も終了し、一拍置いてビームスマートガンから一筋の赤い閃光が放たれた。 司令部のある建物の外壁が爆発した途端、ガーランド隊の約半数の機体が、残る半数の味方に銃口を向けて引き金を引いた。彼らは示し合わせていたのである。 連邦軍のガーランド隊は不意の裏切りになす術も無く破壊されて、同士討ちにもならなかった。 72 :エルト ◆hy2QfErrtc :2008/12/21(日) 16:48:55 『ベイト大佐――いえ、トマス金鍔次兵衛枢機卿猊下。連邦軍施設の制圧および軌道上監視衛星の破壊は滞りなく進んでおります。あと数時間もすれば完了するでしょう。 ダイモスに同意を表明したコロニーは、現在のところ全体の約六割。異教徒の多いアルカディア地域などの新興コロニー郡は中立を主張しておりますが、それも時間の問題です』 「報告ご苦労、アンデレ権八郎」 そう、その中には、アレス・ルナーク… そして、彼の駆る真紅の戦神、ガンダムマルスの姿もあった。 但し、その様相は異なる。 機体の全身は重厚なフォルムに覆われ、その存在感を圧倒的なほどに示している。 ガンダムマルスの怒りの姿とも呼べる、「ガンダムマルス ムスペルヘイム」であった。 マルスもその重厚な追加装甲に内蔵されたミサイル類で、ハーフムーンを制圧してゆく。 派手な爆発とは裏腹に、建物の損傷自体は大したものではなかった。 外壁から内部の司令室にかけて、整った円形の穴が開き、そこから見える床のタイルに軽い焦げ付きがあるきりである。穴を塞ぐだけで司令室は機能を取り戻すであろう。 出力、照準ともにおそろしく精密なその射撃は、ガンダムマルスの性能の為せる業であった。 しかし、連邦軍にも意地という名の面子がある。 キム少将の機転により、すぐさま地球本部の軍隊からの増援が送られてくる。 その数、[[ムウシコス]]三十、[[ドグッシュ]]百。 本格的な戦争が、幕を開けようとしていた… 「これで、二十五…!」 呟いた陽光は、機体の持つビーム刀で、向ってくるガーランドを袈裟斬りにしつつ言う。 ローズとは違う機体、少数量産機、ドル・デーに搭乗した彼も、ハーフムーン制圧作戦に参加していたのだった。 「さすが宗谷大尉…!」 ローズパイロット達は、陽光を素直に称える。 「大尉がいれば俺達も大船に乗ったつもりで戦えるな!」 「無駄口を叩くな」 そんなローズパイロット達に向けて、陽光は威厳のある声で静かに言う。 「は、はっ!」 ローズパイロット達は一斉に静かになり、殲滅戦に集中する。 (!増援か!) 向かってきたドグッシュ隊を鋭い眼光で捉え、陽光は身構える。 「皆、敵機の増援だ!マイケル・ミッチェル隊、先行せよ!」 陽光が言うと同時にすかさず踊り出る数機のローズ。 素早い動きと巧みなフォーメーションで次々とドグッシュを撃墜してゆく。 余程優秀なパイロット達なのだろう。 続いて陽光はドル・デーの持つビーム刀を二刀流に構え、雄叫びをあげる。 「私に続けェ!すべては火星コロニー群の独立の為に!」 おおおおおおおおおお! 生まれついての実質的指導者である宗谷陽光の怒号に続き、ローズ達は統制のとれた動きで次々とドグッシュを破壊していった。 73 :エルト ◆hy2QfErrtc :2008/12/21(日) 16:49:37 「ガンダムマルス ムスペルヘイム、目標を溶解する」 アレスは冷たく呟くと、手にしたビームバズーカのトリガーを引く。 ドオオオォォォォ! ドルダのバスターライフル、ドルチェのロングレンジビームライフルに負けず劣らずの破壊力で、要塞ハーフムーンを撃滅させてゆく。 「炎と熱の世界」の名を冠する火星の神は、存分にその性能を発揮していた。 元々ガンダムドルダの滷獲、それができない場合破壊を目的とし、製造されたこの機体であるが、要塞攻略戦に適した形態でもあるのだった。 「この裏切り者共が!」 向かってくるガーランド。 マルスは落ち着き払った動きで、左手首部追加装甲に収納された捕縛用のグラップルスティンガーを射出する。 「!うああああ!」 ガーランドを挟み、そのまま刃で機体を両断する。 「俺の邪魔を、するな…!」 クランやシンシアに見せた時とは対照的な、それでいてデイヴやエリスに見せた憎しみとは少し異なる類の瞳をしたアレスが、静かに呟く。 裏切ったガーランドの中にはガンダムマルスやドル・デーを向いて祈るように両手を組んで跪いている機体や、大げさに十字を切る仕草をして見せる機体があった。 建物に空いた穴の横に、端末や内装の残骸、それから生身の人間が放り出されていた。気圧差で外に吸い出されたのである。 ベイトが少将閣下と呼んだ老人もそこに混じっている。 彼らの直接の死因はマルスのビームによるものではなく、主に野外活動服を着ていないことによるものであった。 最期に顔を歪める余地があったのは、火星の半端なテラ・フォーミングが理由であろう。ベイトは胸に下げた十字架に手を触れて、 「いんぴいあんぱあしすゥ えっぽろすぺりたちすゥ じりがつなうすゥ おむにぽてんす……」 という古代語の呪文を唱えた。スペースノイドの元同僚たちを弔う意味があったかはわからない。彼の表情は小揺るぎもしていなかった。 (ああ…!) 先程の黒く塗装されたドル・デーに搭乗した男、レオ五郎右衛門、いや、[[ジミー・アン]]元火星コロニー軍大尉は顔をくしゃくしゃに歪めていた。 元々気が優しく、争いごとを好まない性格の為、彼は自らが為したことに相当な後ろめたさを感じていた。 (私は…私は…) 地球連邦政府の圧政のせいで、コロニーに住まう愛する妻と息子を失い、途方にくれていたところを、気の合う同僚である宗谷陽光に誘われたのだった。 ほら、この男も。 どうしようもない、世界の声が物語る。 相応の悲劇を持たぬ人の方が珍しいこの世界。 『ジミー、君の力を借りたい。我々の大いなる過去と未来の為、共に闘おう!』 MSパイロットとして優秀な彼は、元々の大尉という称号もあってか、直ぐに専用のドル・デーを与えられた。 しかし、心根が優しく小心者である彼は、現在の状況をひたすら憂いていた。 (ああ、リンダ、[[ハンス]]…私は…) 亡き妻と息子の名を呼び、赤毛の男は一人、むせび泣いた。 …これが、進宇宙歴102年に起こった、後の歴史に言うところの、「半月崩落事変」である。 死者2万余名、行方不明者3万余名、負傷者二百余名… しかし、これほどの事件も、これから起こる悲劇の序曲に過ぎないのだった… 74 :エルト ◆hy2QfErrtc :2008/12/21(日) 16:50:17 分厚いスーツ越しですら、冴えた空気を感じている。 白銀に光る肌を眺めながら、クランはゆっくりと月の大地に降り立った。 弛んだコードを引き寄せた。ぴん、と張りつめたのを確認して、背部からエアを吐き出しながら彼女は飛んだ。 「[[ナルコレプシー]]、こちら01よ」 『オーケー、聞こえてる。デブリには気を付けろよ』 答えるのはヴァイス。先日クランが行方不明になりかけたのを気にしているのか、なんだか優しい声だ。 ナルコレプシー…火星開発公社の小型飛行挺だ。 元々クラン達第一次調査隊が火星に降り立った時に使用されたものだったが、燃料が尽き、第七次調査団のカナリヤによって、燃料の補給を受けていたのだった。 『お姉ちゃん』 か弱い声。ドルダに搭乗していた少女、シンシアのものだ。 「シンシアも。何をそんな声を出すの?」 『違うの。いってらっしゃい』 「…行ってくるわ」 クランはゆっくりと歩き出す。これからどうするか、どうしなければならないのか… 考えた末、月面に存在する人々の町へと、これから踏み出すところだ。 (心配してくれているのかしら) あの子の感じている事は分からないわ……、とクランは声には出さずに呟いた。 火星の地下遺跡でシンシアを発見してから、そして[[ガンダムドルチェ]]の最後の攻撃から、命からがら逃げ出してから… ドルダはカナリヤと合流することに成功したのだった。 フィリアは、共に地球へ向かうことを提案した。 しかし、今の時代、地球は立ち入り禁止だ。 特にコロニー生まれコロニー育ちのギデオンやヴァイス、ミランダなどは。 また同様に、クランとて18の時までは地球で暮らしていたが、一度地球を捨てた身である。 そう簡単に戻れるわけもなく、調査隊の面々は、少しの燃料をカナリヤから分けてもらい、月へと逃げ出して来たのだった。 ここにも、世界の声。コロニーの者は入ってくるな! …クラン達の所属する公社の支部に戻るには、まず月を経由しなければならない、というのもあるのだが。 クランとナルコレプシーが通信を行えるのは、ノーマルスーツの腰から伸びた、緊急時の通信用コードのおかげだった。 命綱の役割も果たすそれが伸びる範囲は約1km以内。艦に搭載されていた月面図では、この近くに施設があるはずだったが――。 (何も無し、か) 地球所属である月ならばそうそう死にはしないだろうが、助けがなければ緩やかな死を待つのみである。 O2だって無限ではない。 クランには、急にメットが息苦しいものに思えてきた。 『クラン、大丈夫か?』 「大丈夫よ。それより、付近の警戒をきちんとしなさい。私ももう大分離れてるのよ」 『分かってるよ。なあ、本当に――』 「行ってくる」 通信を切り、クランは大地を蹴る。彼女の身体が、ゆっくりと旋回しながら宙を舞う。 星空。 蒼い影を残しながら、地球が流れていった。 75 :エルト ◆hy2QfErrtc :2008/12/21(日) 16:51:05 「……感傷に浸る暇は無いのよ」 まず生きる事を考え、次にシンシアをどうするかを考え、それから―― 目には見えないはずの、「やるべき事の山」が高く積もっている様が見えるようで、クランはうんざりした。 だが、それすらも今は許されない。まだ偵察任務は終わってはいないのだ。 星空に目を走らせる。 星々の冷たい光が、身体を突き刺すようだった。 「ウサギもカグヤも居ないのね」 呟きはナルコレプシーには届かない。今は通信を切っていた。 「異常無し。ついでに目標の施設も……」 一周して月面と向き合った身体を星空に向き直す。 感傷に浸る暇はない、と自らに言い聞かせつつも、クランは考えてしまう。 (アレス…) クランの目からこぼれた涙が、白銀の大地を映す… 「それでは皆様、良い夢を♪」 ドォォォォォォォ! ガンダムドルチェによって放たれた最大出力のビームエネルギー。 「させない!」 絶望しかけた三人を余所に、一人シンシアだけが毅然とした表情で立ち向かう。 ドルダが、再び輝く。 やがてドルダの両肩から、虹色の光が輝いたと思うと、そのままビームフィールドが火星全体を包む。 「あああああああああああ!」 シンシアが叫ぶのと同時に、虹色のフィールドが、ドルチェのビームを吸収していく。 ドドドドドドドド! ガンダムドルダは、力強くそのすべてを受けとめる。 しかしドルチェは、そんなことはもうどうでもいいとでも言うように、デイヴを乗せたまま離脱して行った。 ドルチェが去っていくのを見届けた後、シンシアは薄く笑うと、静かに気を失ったのだった。 『シンシア!アレス!』 叫ぶクラン。気を失ったシンシアを心配して。そして、自らの前から去っていくアレスを呼びとめるかのように。 クランは、あの時の光景を忘れることが出来ないのであった…