301-400
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gundam_dollda
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301 :278:2008/06/25(水) 00:02:45 ID:???
とりあえずプロローグ部分書いたんで投下します。
一部の機体名と火星少女云々以外はほぼオリジナルです。
302 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/25(水) 00:06:30 ID:???
新宇宙暦073年、地球の軌道エレベータ周辺に位置するコロニーの一つ、『エルゴン』の管制が一つの機影を捉えた。
望遠カメラで一段ずつ拡大されたモニターが映し出したのは、宇宙空間に浮かぶMA(モビルアーマー)らしき灰色の機体である。
左右非対称の形をした本体の後部には、長距離航行用と思わしき大型ブースターが接続されている。
角張って歪な本体と洗練されて丸みのある追加パーツとの形状の不釣合いは、いかにも取って付けたという観があった。
ここエルゴンは旧式の田舎コロニーである。日ごろ寄航するのは輸送船くらいのもので、戦闘用のMAが、それもわざわざ追加ブースターを背負ってまで立ち寄るのは珍しい。
管制官は物見高くなりつつも、給料を貰っている手前、真面目に職務を遂行するべくポテトチップスまみれの手でマイクを握った。
「えー、こちらエルゴン管制室。そちらの機体名と所属を述べよ。しかるべき手続きが終わり次第、スペースポートへ誘導する。……ところでアンタの機体さ、まるでミノムシみてえな見た目だな?」
そうおどけた調子で付け足してみたせいか、灰色のMAから通信は返ってこなかった。
冗談を無視された管制官は気を悪くして、荒げた声で怒鳴りつけた。
「おいコラ、ミノムシ野郎、返事しろ。それ以上近づけば問答無用で不法入港と見なすぜ」
ようやく、灰色のMAから返答が帰ってくる。しかしそれは音声ではなく文字情報であった。
――DOLLDA――
「……どるだ? なんだそりゃ」
DOLL(人形)のことかとも思われたが、わざわざDAをつけて自己主張する理由が解せない。
管制官がなにかのアナグラムだろうと一人合点してあれこれ頭を悩ませ始めたのと同時に、モニターに映る灰色のMAの機首が割れ、それから数瞬間遅れて彼は光に包まれた。
303 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/25(水) 00:10:15 ID:???
シヴォーフにはまだ耳の横で、エマージェンシーのブザーがやかましく鳴り響いている気がした。
彼の意識はほとんど薄らいだ状態であったが、気の遠くなるほど訓練を繰り返した肉体は、滞りなくMS(モビルスーツ)起動の動作を行い、今や発進を待つのみとなっていた。
狭いコックピットに計器の音が響くと、ようやく五月蝿い耳鳴りが治まってくれた。しかしそれと同時に、引きつった心臓が烈しく鼓動し始めた。
シヴォーフにとって初めての実戦である。いくら演習で負けなし、コロニーのトップエースと認められ最新鋭機を任されたとはいえ、戦場で殺し殺される段となればその精神状態は新兵と何ら変わりない。
シヴォーフは逃げてしまいたかった。出世も月へ移住するという夢も、全てをかなぐり捨ててでも助かりたかった。
全天周囲モニターが起動し、自分の体とコンソールを除いた全てが消え去った。手を伸ばせばすぐ届くところに格納庫の壁があるのと同じく、自分の死も目前に迫っている心地であった。
足が震えた。操縦桿を握る手も緩み始めた。
『中尉? ラーグ中尉? 応答願います』
と彼の耳に馴染みのある声が響いた。見れば開かれた正面ウインドウにオペレーターの女性が映っている。
気遣う表情で窺う彼女を眺めていると、シヴォーフの震えが止まった。
「……大丈夫、いけます」
『シヴォーフ……気を付けて』
「ああ」
シヴォーフは恋人のためにもこのコロニーを守らなければならないのである。
半球形の頭部のモノアイが彼の意志に呼応するかのように輝き、人間でいう肩甲骨の部分に位置するスラスターと、股間が盛り上がって後ろへ突き出された形の可変式メインスラスターに膨大なエナジーが送られる。
「シヴォーフ・ラーグ、ドグッシュいきます!」
未だに慣れない最新鋭機ドグッシュの強烈な加速に顔を歪ませながらも、シヴォーフは瞳に決意を宿していた。
304 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/25(水) 00:13:01 ID:???
管制官にミノムシと形容された灰色の機体は、コロニー・エルゴンの管制室を破壊してから、それ以上の砲撃を加えるでもなく、コロニーから距離を取って宇宙空間に静止していた。
外観の調和を損ねる追加ブースターは先ほどの砲撃の後に切り離されていたが、目を引くそれがなくなったためによりいっそう本体の異質さが際立っている。
よくよく注意して見ると、ごつごつしたブロック状の各パーツに混じって、流線形の滑らかな箇所が覗いて見える。
その部分だけおそろしく色が白く、灰色の中にぼんやり浮かび上がって、喪服を着た女性のあの艶かしさと同種のそれをかもし出している。
機体の背後には、もはや前時代の遺物となった軌道エレベータが見え、嘗て栄華を極めたバベルの塔を下へたどって行くと分厚い灰色の雲の中へ消えている。
この雲の姿を言い表すには、木星のガスを灰色に染め直しただけと言ったほうがわかり易い。
人類発祥の地である地球は、年号が新宇宙暦と改められたと時を同じくして完全に見捨てられた。
気候変動、生態系云々以前に、純粋な汚染が地球の自浄作用を上回ったのである。
宇宙移民はそれ以前より行われていたが、それがかえって環境悪化を助長する原因となった。
コロニー国家と地球連邦との対立である。その後の展開はわざわざ語るに及ばない。慢性的に頻発する紛争、発展して全面戦争、そしてまた紛争に戻る。
どちら側も自分たちの住居であらざる所を攻めるので手段を選ばない。先に根を上げたのが地球の大地であっただけのことである。
黒い雨が降り注ぎ、細菌兵器の変質した未知の病原菌が蔓延る大地に、もうそれ以上人間は生きて行くことが出来なかった。
地下に潜っていた熱心な地球崇拝者たちでさえ、新宇宙暦001年には一人残らず宇宙へ上がって行った。
全人類共有の財産といわれ、地上にエネルギーを供給し続けていた軌道エレベータは、今はもはやソーラーパネルを剥ぎ取られて情けない有様を見せ付けるに留まっている。
その周辺に残るのは、貧乏人か、さもなければ地球の姿を見ていたいという物好きだけが住む旧式のコロニーばかりである。
305 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/25(水) 00:16:12 ID:???
シヴォーフの守るコロニー・エルゴンも、そうした最下等コロニーの一つである。
配備される兵器も中古や型落ちばかりなので、各コロニーからかき集められて合流した数十機のMSのうち、殆どが旧式であった。
一応は現行機として活躍しているグワッシュなどまだいい方で、中には作業用ポッドに銃座を取り付けただけの代物もちらほらある。
この程度の軍備でさえ宇宙連邦政府は過剰と考え、予算削減を迫っている。
こんな何の利点もない辺境コロニー郡に攻撃を仕掛けるテロリストなんぞあるわけないというのが彼らの言い分であった。実際、今の今まではそれで良かった。
『エルゴン管制塔を砲撃した機体の周辺に他の機体の反応は在りません。敵機は一機のみと思われます』
シヴォーフの恋人の通信に続いて、あちこちのMSから安堵の息を付く声が聞えた。
中には調子に乗って、「戦いは数だぜ」なんて威勢の良い台詞を吐くお調子者もあった。
『ですが、機体ブロックの構造を解析した結果と、砲撃の際の記録映像より、敵機は可変MS――それもガンダムタイプである推測されます』
通信機から息を呑む声が聞えた。すぐさまどっとざわめきが起こり、「嫌だ、死にたくねえ」と呆然と掠れ声で呟く者もいた。先ほどのお調子者の声であった。
ガンダムタイプとは、主にビーム兵器を搭載したMSの総称である。
どのような装甲でさえも一撃で破壊しその材質自体を崩壊・爆発させるビーム兵器は、特殊な粒子を制御するために大掛かりな演算装置を用いるので、通常は戦艦や要塞にしか搭載されないといわれている。
小型化も可能ではあるが、それには通常の三倍以上の費用と時間とが必要で、必然、ビーム兵器を搭載したMSは莫大なコストをかけたワンオフ機とならざるを得ないと一般では知られている。
「しかしガンダムタイプは兵器としては欠陥品だ」とシヴォーフは考えた。
ガンダムはその過剰な攻撃力に比べて、装甲や機動性そのものは普通のMSと大差なく、通常兵器の最高水準に見合った性能でしかない。
その上ビーム兵器に莫大なエナジーを食われるので持久戦も得意で無い。
シヴォーフの乗るドグッシュの基本性能なら、戦略次第でガンダムを撃墜することも無理な話では無いのである。
306 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/25(水) 00:18:12 ID:???
『砲撃以来、敵機は文字情報の送信を続けたまま動きを見せていません。
敵機から送られる文字情報より、以後敵機を一時的に「ドルダ」と呼称します。フォーメーションを整え次第、各機はドルダへの攻撃を開始して下さい』
射線をコロニーに重ねないよう後続の機体を静止衛星軌道に配置し、シヴォーフのドグッシュを中心に六機のグワッシュで編成された切込み部隊は、不規則な機動をとりながらドルダとの距離を詰めて行く。
全戦力のうち三分の二は防衛のためコロニーに周辺で待機させているので、ガンダムを直接相手にするのはシヴォーフの率いる部隊に任されている。
「しかし妙だ。コロニーを襲撃するテロリストにしては、やぶ蛇を突っつくような仕方だ」
渇いた唇を舐めて、シヴォーフは視認出来る距離に入った敵機をにらみつけた。ドルダはビームを一発放ったきり悠然と灰色の惑星の上にまどろんでいる。
「何かをおびき出す……いや、待っているのか?」
そう考えた瞬間、ドルダの機首で小さな光が瞬き、
「各機散開!」
と叫び終わるのと同時にシヴォーフのドグッシュとすれすれの位置を真紅の光芒が流れて行った。
股間のメインスラスターを小刻みに前後させ、その機動で目まぐるしく変わる視点の中、
『畜生! 腕がやられ――』
と通信が聞え、先ほどと程近い座標にビームの第二射が通り過ぎる。
「カマッセ! 応答しろ!」
飛び散った破片が視界の隅にちらと見え、ウインドウのレーダーに「LOST」と表示される。
「各機垂直軌道をとりつつ敵機に取り付け! ビームといえども直線だ! 変形する前に仕留めるぞ!」
シヴォーフは右腕に装備した100㎜リニアライフルでけん制しつつ、スラスターの推力を全開にした。
エナジーと推進剤の残量が見る見る減って行き、コックピットにアラートが鳴り響く。敵機の後方へと回り込んだときにはエナジーのゲージが半分を切っていた。
シヴォーフたちが必死に射線から逃げ回っている間、ドルダは旋回を繰り返すばかりで、こちらを嘲笑っているかのようであった。
「舐めやがって……!」
リニアライフルを高出力モードに切り替える。チャージ開始で射程距離の数値を増やし始めると同時に相対距離を真っ直ぐ詰めて行く。
いつ撃たれるかもしれない、二つの照準が重なるまでの時間がシヴォーフには永遠にも感じられた。
307 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/25(水) 00:21:59 ID:???
機首が下がり始めた。照準はまだ離れている。後部ブロックが分割され、その上部を構成していた箇所が、折りたたまれた状態から本来の形へと戻り始めた。照準はようやく端同士が重なったところである。
シヴォーフが焦りと恐怖からトリガーを引いた時には、ドルダは既に人の形態を取って、右腕と化した機首のビーム砲をドグッシュへと向けていた。
ドルダの放ったビームはリニアライフルの弾丸を苦もなく蒸発させ、リニアライフルごとドグッシュの右腕を抉り取った。
真紅の光が収まっても、シヴォーフは生きているのやら死んでいるのやら解らない心地のまま、ぼんやりと「ガンダム」の姿を見つめていた。
教本で見たどの「ガンダム」にも似ていない。
辛うじて共通な部分は、鶏の頭のような輪郭のヘルメットから覗くツインアイと、ただもうくっつけただけといった感じで鶏冠の脇にちょこなんと着けている左右対称のアンテナだけであった。
巨大な右腕にはマニピュレータはなく、MA形態での機首に当たるビーム砲が折れ曲がって腕の形を繕っている。
両足は左右不均等の形をして、踵、脛、膝、腿、それぞれの裏表にこれでもかといわんばかりのスラスターが乱雑に取り付けられ、そのためか、まともに歩けるか疑わしいほど肥大化している。
そうして、何よりも目に付くのは、胸の左半分と、そこから伸びる左腕にかけての箇所である。
スモウレスラーを連想する灰色で不細工な他の部分から一転して、純白のそこは、女性の肉体のように流麗で丸みを帯び、すっきりした感じを与えている。
左腕は恐ろしく細かった。そして、右腕より短かった。クロールをするような体勢でMAの姿をとっていたことも納得できた。
片輪のMS――シヴォーフはガンダムドルダについてそのような印象を抱いた。子供のころに絵本で見たノートルダムの怪物のことを思い出した。
『よくもラーグを!』
通信に続いて一機のグワッシュが高周波ブレードでドルダに切りかかった。
ドルダは全身のスラスターを駆使してその巨体に似合わぬ軽やかな機動で攻撃をかわし、同時に背中から、長い柄と、柄の先端に取り付けられたスプーン状の幅広の刃からなる武器を取り出した。
純白の細腕が手にしているのは、一見したところ白兵戦用円匙であるらしかった。
308 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/25(水) 00:26:09 ID:???
『高周波スコップだと? アステロイドならともかく、オープンスペースならこっちのほうが!』
「止せ、デッド!」
グワッシュのブレードとドルダのスコップが切り結んだ瞬間、スコップの尖端から赤い光が伸び、そのまま抵抗なくブレードをすり抜けてグワッシュの胴体へ吸い込まれた。
「ビームスコップ……」
そうして、ひぃと気の抜けた声を上げて袈裟斬りにされたグワッシュの半身を、ドルダが流れる動作でシヴォーフのドグッシュへと蹴り飛ばす。
凍った血のこびり付いたコンソールの残骸がドグッシュのメインカメラに当たった。
シヴォーフがOSを再起動し、抱きつくように片腕で絡みついたグワッシュをやっとのことで振りほどくと、既に彼の仲間は一機しか残っていなかった。
彼がシールドを捨てて高周波ブレードを構えたときには、その一機のグワッシュもコックピットをビームスコップで串刺されていた。
ドルダは細腕を一振りしてはやにえを放り投げると、横合いから来るドグッシュの捨て身の突進を何でもないように回避した。
そうしてそのまま止めも刺さずMA形態に変形して、コロニーへ向けて飛び去って行った。
片腕を失ったドグッシュがたどり着いたとき、コロニー防衛隊は惨憺たる有様であった。
数多のMSの残骸が漂い、死に切れなかった幾人かのパイロットの声がオープン回線で聞えてくる。
ゆっくりとして、のん気にも感じられる断末魔は、コロニーエース・シヴォーフ・ラーグ中尉の精神を無力感と絶望とでいよいよ追い詰めていった。
青ざめた彼が黙々と指令室との通信を試みていると、オートにしてあったドグッシュの高性能カメラが最望遠でガンダムドルダの姿を映し出した。
ちょうど、装甲に傷一つないドルダが、防衛隊の最後の生き残りと思わしき作業用ポッドをスコップで殴り飛ばす場面である。
エナジー節約のためか、ビーム刃は生やしていなかった。音も無く装甲がひしゃげ、作業ポッドは運動エネルギー保存の法則に従ってコロニー・エルゴンの外壁へ叩きつけられた。その姿はコミカルで小気味良くさえあった。
しかしシヴォーフは笑ってばかりもいられなかった。ドルダが右腕の銃口を、コロニー・エルゴンに向けたのである。
「やめろ」
展開された砲口に、真紅の光が収束する。
「おい、やめろよ」
声が、震えていた。
「冗談は止せって」
309 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/25(水) 00:28:59 ID:???
光の帯がコロニーを貫き、線を描くように、二度三度と念入りに往復した。指令室のあるブロックは二回も塗りつぶされた様子であった。
か弱い女性などひとたまりもないであろう。一拍遅れて、ドルダがなぞった跡にそって連鎖的に爆発が起こり、継ぎ接ぎの外装ごと各ブロックがばらばらに崩れ始めた。
コロニー・エルゴンの崩壊の仕方は予想したより緩やかであった。ソーラーパネルが全部飛んで行ってしまうまでに十分もの時間を要していた。
シヴォーフは早くも退屈を感じ始めた。そんなとき、最後までメインシャフトにしがみ付いていた廃棄ブロックの一つから、真紅の光芒が閃いた。
そうしてそこから、何かが光の尾を引いて一直線にガンダムドルダへと向かって行った。
「なんだろう、あれ。流れ星かな? ううん、流れ星はもっと、ばぁーっとするもんな」
だらしなく口を半開いてその光景を眺めていると、突如指令用回線が繋がって、野太い男の声が耳に入った。
『こちらコロニー・プロネーシス指令室、ただ今コロニー・エルゴンより発進した機体は友軍機である。機体コードはGEY-002ガンダムドルチェである。繰り返す……』
「なんだよそりゃ、エルゴンはもう無いんだぜ。ふざけすぎだよ。いまさら出てきて、なにがガンダムドルチェだよ」
望遠レンズで捉えたガンダムドルチェは、ドルダの半身と同様に純白の機体であった。
ドルダが片輪の醜い怪物女だとすれば、全身が純白に包まれているドルチェは、穢れを知らぬ美しい乙女と形容できると、少しばかり頭が可笑しいことになり始めたシヴォーフは考えた。
人体の外観を損ねるスラスターは、かかとから生えた薄く広い翼型のそれと、肩より垂れる長いショールに似たそれに集中している。
肥え太ったドルダとは正反対で、痩せすぎの観があるほど繊細に本体が作られている。
蟷螂型の頭部は、あるべきところに収まっていると感じられるが、それには顔と呼べるものは無い。
人間の耳に当たる箇所から伸びた二つのアンテナと、絶え間なく点滅する大型のバイザーのみが表情を与えている。
武装は、左右の手のひらに仕込まれたビームサーベルを兼ねるビーム砲と、スカート状に腰へ接続されている八枚の有線式オールレンジ攻撃用兵器である。
310 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/25(水) 00:32:31 ID:???
二機のガンダムは互いにビームを撃ち合い、赤い光芒でコロニーの残骸に追い討ちを食らわせながら、螺旋の軌道を描いて徐々にドグッシュの目の届かぬところへ消えて行った。
「やられちゃえよ、ガンダム。どっちも、やられちゃえよ。この、ふざけやがって……」
シヴォーフはコンソールを操作して、エナジーの残量を確認した。
救助隊が来るまで酸素を維持するだけのエナジーは、ぎりぎり残っていた。
シヴォーフは二機のガンダムが消えた方角へ機体を向けて、殆どのエナジーをスラスターに送った。数十秒加速してからあとは慣性にまかせた。
ドグッシュがたどりついたのは、初めに仲間を殺されたのと同じ宙域であった。
軌道エレベータと地球を背にして、それぞれ満身創痍のガンダム二機が斬り合っている。
ドルダは右腕と左足、それから右足の膝から下が欠けていた。ドルチェには両足が残っていたが、どちらの翼も焼き切られ、そうして左肩から先がばっさりと無くなっていた。
ビームの刃は実体剣のそれとは違って鍔迫り合うことがない。
傍からは空振りばかりで不毛な殺陣を演じ続けているだけに見えるが、ドルダがスコップを振り回すたびにドルチェの身体は欠け、ドルチェがサーベルを一閃するごとにドルダの装甲は抉られて行く。
決着は近かった。そうして、傍観者の望み通りそれはすぐに訪れた。
サーベルをすり抜けて、ビームスコップがドルチェの腰の中心を貫いた。スコップを素通りして、ビームサーベルがドルダの左胸に突き刺さった。
二体のガンダムは同時に身震いして、ぐったりと互いの身体に垂れかかった。相打ちである。
311 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/25(水) 00:58:19 ID:???
まさにOOの後といった感じ
GJですよ。
312 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/25(水) 01:04:05 ID:???
ドグッシュの通信機がノイズを捉えた。
覗き見の愉悦に身を震わせていたシヴォーフは周波数をでたらめに弄くりまわし、ひとつこの人非人どもの声を傾聴してやろうと神経を高ぶらせた。
『……に……で……かったの?』
若い、女の声である。舌足らずの調子が、少女であるとも感じられた。
『……ああ、そ……いい……これで、いいんだ』
そのしゃがれた男の声を聞いて、シヴォーフは全ての事情――殆どが彼の身勝手な憶測であるが、大筋としては間違っていない――を了解した。
「ふざけんな、みんな死んだんだぞ。お前らのせいで、お前らが殺したんだぞ。悲劇の主役気取りで悦に浸ってんじゃねえ!
なんだよオイ、くだらねえ戦場のロマンスかよ。そんな二束三文の感傷のためにおれは、おれたちは殺されたってわけかよ!」
機能を停止した二機のガンダムが、引力に囚われて灰色の惑星の中へと溶け込んでいく映像を最後に、ドグッシュのコックピットの電源が落ちた。
同時に酸素の供給が途切れて、シヴォーフの意識も薄らいで行った。
――死者一万七千六百二十三名、行方不明者四万八千十六名、負傷者三百五十六名の犠牲を出したコロニー・エルゴン襲撃事件の公式記録はこれで全てである。
しかし、この事件の発端を探って行くならば、これより一年前に遡らなければならない。
新宇宙暦072年の火星における、アルフ・スメッグヘッド博士率いる火星開発公社の調査団とマスター・ベイト大佐率いる反宇宙連邦組織との間に発生した武力衝突の時期である。
313 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/25(水) 01:07:51 ID:???
規制でレスが開きましたが、以上です。
314 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/25(水) 16:01:33 ID:???
相変わらずの過疎w
>>313
GJ
ただ気になるとしたら、中尉ほどになったらそれなりに精神訓練受けてるはずだから主人公(?)の階級はもうちょい低くてもいいのでは?と思った
315 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/25(水) 20:06:16 ID:???
>>76の本編の人の設定で地球軍でオーバーテクノロジー=ガンダムの技術を解明・研究している組織の外伝を考えてみたがどうだろう?
316 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/25(水) 21:22:55 ID:???
http://imepita.jp/20080625/757740
ドグッシュ
股間部大型スラスターで高機動を誇るが、エナジー消費が激しい。
武装はシンプルで、高周波ブレードとカントーン・リニアライフルの二つ。
カントーン・リニアライフルは高出力モード時に銃身が延長する。
317 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/25(水) 22:41:38 ID:???
振動している高周波ブレードをカントーンの銃身に当てると威力増大ですね、わかります
318 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/26(木) 00:20:49 ID:???
www
319 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/26(木) 01:19:40 ID:???
モモの「わかりませーん」の破壊力は異常
320 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/26(木) 13:12:15 ID:???
hage
321 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/26(木) 15:00:23 ID:???
今スレに足りないのはキャラのメカの絵と設定だ
322 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/26(木) 15:29:00 ID:???
設定だけ増えても仕方なくない?
それを反映するストーリーがないと
323 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/26(木) 16:44:11 ID:???
ストーリーに活用されるためのネタ提供だよ
324 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/26(木) 16:55:58 ID:???
書き手以外の人が「設定だけ」すると足かせになる場合もあるし難しい所だねぇ。
ネタ提供、と言っても書いたからには何か反応欲しくなるのが人間のさがだから…。
325 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/26(木) 17:31:08 ID:BzYu+W6X
ここまでホワイトドール無し
326 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/26(木) 17:58:03 ID:???
なんだこのスレ崩壊したか。
327 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/26(木) 18:21:17 ID:???
>>324
言えてる。
一時期の過疎の打開になればとメカの設定を投下した者だが、結局絵描けないw
やっぱ自重したままにしとけばwwwよかったw
本編の人やらキャラデザメカデザの人がいないとこのスレは成り立たないな。
328 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/26(木) 19:29:11 ID:???
このスレは奇抜なガンダムの話をしつつ新作ガンダムドルダの話をするスレなんだ
329 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/26(木) 19:40:52 ID:???
じゃあそんな感じでいこう
330 :DAYC:2008/06/26(木) 20:28:30 ID:???
http://mcom.gree.jp/community/look/topic/4232022?gree_mobile=32467e10ccc24d8522aa30249ba44320
ちょい投下
本編の人こないかな?
331 :DAYC:2008/06/26(木) 20:29:29 ID:???
ごめんミスった
http://imepita.jp/20080626/736680
332 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/26(木) 21:15:31 ID:???
>>331
これは何?ドルチェかい?
333 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/27(金) 21:30:42 ID:???
もうこのスレは俺の物www
334 :雲呼丸:2008/06/27(金) 22:37:30 ID:???
いやいや、俺の物
335 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/28(土) 00:59:10 ID:???
銃を構える者達、独立派の一団。そして、対峙する調査隊。
一触即発。ただ、触れて暴発するのは、片方のみ。
クラン達は丸腰で、じりじりと近付いてくる者達に、ただ苦い顔をするしかなかった。
火星に降りる前は、随分と丁寧な対応をしてくれたことを、調査隊の皆が思い出す。
やはり独立を前には、地球側の人間には容赦はないのか。
「クラン……?」
緊迫する中、どこからか聞こえた、幼い声。
名を呼ばれたクランは、ゆっくりとドアの方に顔を向ける。
そこには、あの少女がいた。
「来ちゃ駄目! 逃げてッ!!」
クランが叫ぶ。
その時、銃を構えた一人の男が、引き金を引こうとしていた。
少女が、それに気付く。
「クラァァンッ!!」
危険を察したのか、顔を強張らせて声を上げる。
その時、それは起こった。
鳴り響く銃声を掻き消すように、床が激しく音を鳴らす。
クランの目の前を、何かが覆った。
「…………手?」
薄目を開いて見ると、そこには巨大な手があった。
あの人型の機体の手だ。
「助けたの? 私を……」
少女が声を上げたから、反応したのか。
少女が、クランを守ろうとしたのか。
クランは少女との距離をはかる。
336 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/28(土) 01:00:46 ID:???
独立派の者達は、突然のことに混乱している。
今ならいける。クランは確信した。
「シンシア、来なさい!」
クランの声に、少女はびくんと反応する。
少女は、すぐさま走り出した。
それに気付き、独立派の者達が一生に少女に向く。
しかし間一髪、少女はクランの胸に飛び込んだ。
「クラぁン……」
「よく頑張ったわ。シンシア」
少女を強く抱き締め、クランは言う。
怯えた表情をして、少女は顔を上げる。
「シンシアって、わたしの名前?」
「そう。貴女はシンシア……私の妹よ」
言うべきではなかったのかもしれない。
それは記憶が戻った時、彼女を傷付ける可能性もある。
否、それはただの都合のいい言い訳だと、クランは自嘲した。
(ただのエゴね。自分の妹を、この子に重ねて)
寂しそうに、少女を見つめるクラン。
そんなクランに向くて、少女は微笑みを浮かべた。
「お姉ちゃん」
「!!」
クランの目尻に、じわっと涙が滲む。
黙ったまま、クランは再び、少女を、シンシアを抱き締めた。
337 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/28(土) 01:05:15 ID:???
しかし、ずっと抱き合っているわけにはいかない。
クランはシンシアを離すと、迷いを振り払って、向き合う。
「シンシア、貴女はこれを、ドルダを動かせる?」
「ド、ル、ダ?」
「そう。この人の形をした、機械を」
先刻、シンシアに呼応するように自分を守ったこの機体。
記憶がないままでも、シンシアの意思があれば動くのではないか。
チラッと、先程の騒動で後方のグワライダーの陰に避難したギデオン達を見た。
クランに何か策があるのか察したのか、目があうとギデオンはしっかりと頷く。
クランは、決意を固める。
この状況を打破するには、これしかなかった。
「ステーションのスタッフだった方達に告げます!」
クランは声を上げる。
「今から私達はこの機体、ドルダを使ってエアロックを破壊します!!」
とんでもない発言に、独立派の者達は騒然となった。
それを確認し、クランは更に続ける。
「我々はこの機体と後方のMWを使って脱出します! 投げ出されたくないなら待避しなさい!」
怒鳴るようにそう言えば、独立派の者達は一目散に格納庫を出ていく。
格納庫のドアが閉まり、ロックがかかった。
これでしばらくは独立派の者達は入ってこない。
クランは大きく息を吐いて、胸を撫で下ろした。
「はったりがきいて良かった……」
「だが、そのはったりを真実にしなければ、我々は助からんぞ」
クランとシンシアの元に近寄ってきたギデオンが言った。
他の三人も一緒である。
338 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/28(土) 01:12:32 ID:???
「このグワライダーじゃ宇宙には出られねぇぞ」
気まずそうに、ヴァイスがそう告げる。
「ドルダに全員を乗せるのは……無理よね」
残念そうにクランは肩を落とした。
「ナギサカ君、そのドルダというのは?」
「この機体の通称です。いつまでも名無しのままでは呼び難いでしょう?」
ドルダという言葉の響きに違和感があるのか、ギデオンは首を傾げている。
「ほら。胸部にところどころ掠れている文字がありますよね。
掠れていない部分を繋げて読むと、ドルダになるんですよ」
クランは当たり前のことのように、そう説明した。
だがギデオンは、依然として納得のいかない表情のままま。
見解の相違か。また二人の意見が衝突してしまうのか。
「ネーミングセンスは別として、呼び名があることには賛成です」
助け舟を出したのは、ミランダだった。
「呼び名をどうするかは後回しにして、今はここを脱出することを考えませんか?」
的確な指摘に、クランとギデオンはしゅんとして黙る。
「隣の格納庫に輸送船があります。私なら、ゲートのロックを解除できます」
ミランダのその言葉には、自信が表れていた。
何かあるのだろうと、状況を理解していないシンシア以外の皆がミランダを注目する。
これで、ドルダもグワライダーも運べるだろう。
「ミランダちゃん、すごい!」
「マレーンさん、一応私の方が年上なんですが……」
「あははっ! でもこうなったら怖いものなしですよ!」
まるで自分の手柄のようにモモは強気だ。
339 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/28(土) 01:18:37 ID:???
高揚しているのか、モモはシンシアの手を握る。
「私モモ・マレーン。シンシアちゃん、よろしくね!」
「え。う、うん」
「モモちゃん、なんでシンシアの名前を?」
「だってさっきクランさんが大きな声で呼んでたじゃないですかぁ」
モモが、張り詰めていた空気を壊す。
呆れるギデオン達と、きょとんとするシンシア。
そして、暖かな眼差しを送るクラン。
調査隊として組まれたこの5人で任務をしたのは、これが初だ。
クランと面識があるのはヴァイス一人ぐらいで、
他の者とは、一回打ち合わせをしたきりだった。
時にはギデオンとクランのように考えが違うこともあるが、
それは互いに正しいと思った衝突であり、最終的には理解し合える。
ヴァイスの技師としての意見も、ミランダの分析も、頼りになる。
勿論、モモのムードメーカーと存在も欠かせない。
この隊で良かったと、クランは思った。
「他の人は後で紹介するわね。みんな、この子は私の妹のシンシアです」
クランは、そうギデオン達に目配せする。
4人は小さく頷き、理解を示した。
「ウォン、隣の格納庫へのゲートを早く開けてくれ。輸送機の操縦は俺がやる」
「ファーストネームで呼んで頂いて構いませんよ。ヴァイスさん」
ミランダはキツく見える表情を、優しく微笑ませる。
(この二人、良い雰囲気ね……)
ヴァイスの心を知ってか知らずか、クランはそんなことを思っていた。
340 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/28(土) 01:20:10 ID:???
そんなクランの服の袖を、シンシアが引っ張った。
気付いたクランが、顔を向ける。
「シンシア? どうかしたの?」
「頭、痛いの。何かが、近付いてきてる気がする……」
「なんですって……まさか」
クランは、シンシアが名もわからない少女だった時のことを思い出した。
人形のような冷たい目をして、遠く離れたローズの存在を感じ取った。
記憶を失っても、それは変わらないというのか。
「わたし、ドルダに乗らなきゃいけない気がする……」
「シンシア、でも貴女は、記憶を」
「何も覚えてないけど、でも体が反応するの」
あれに乗れ、と。
冷たい目になりかけている。
このままではまた、人形のような少女に戻ってしまう。
クランは、少女を抱き締めた。
「お願い。絶対に無理はしないで」
「クラン……?」
「貴女に何かあったら、私が絶対に助けに行く。例え生身で宇宙に出ることになっても」
もう二度と、“妹”を亡くしたくはなかった。
それが、正体もわからない、見ず知らずの少女でも。
エゴでも構わなかった。彼女の中では、それほどシンシアに愛おしさを感じていた。
「うんっ!」
シンシアは明るい声で、クランを元気付ける。
341 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/28(土) 01:24:21 ID:???
クランから離れると、シンシアはドルダの元へ走っていく。
「ドルダ……」
乗りたいと念じれば、コックピットハッチが開く。
ドルダに乗り込むシンシアを、クランは見つめ続けていた。
「ゲートが開いた。ナギサカ君、急ごう」
「……はい」
調査隊のメンバーは、足早に隣の格納へと向かう。
起動するドルダ。
「うぅっ……」
頭痛が走る。
痛みに耐えながら、シンシアはドルダを立ち上がらせた。
「ドルダ、クランと話がしたいの」
そう願えば、通信が開く。
「クラン……聞こえる?」
『この声、シンシアなの?』
「うん。これ、クラン達が乗ってる船の中でしょ? 話したいって願ったら、通じたの」
スピーカーから聴こえるクランの声に、シンシアは嬉しそうに笑った。
クラン達は輸送船に乗り込み、出発の準備を進めていた。
ミランダがゲートの時のように、エアロックにアクセスし、ハッチを開いた。
気圧が変わり、空気が宇宙に向けて吹き上げる。
ドルダも、宇宙へ飛び出した。
頭痛は治まりつつある。これなら操縦に問題はない。
(何も覚えてないはずなのに……なんでわかるの)
問題があるのは、機体ではなくシンシア自身なのか。
342 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/28(土) 01:27:56 ID:???
頭痛に代わり頭の中に浮かぶモヤモヤを振り払って、シンシアは前を向く。
シンシアの感じた気配は、すでにドルダも感知していた。
ステーションに接近する5機のモビルスーツ。
ニコラスの隊だった。
『スウィフトさん、ステーションから緊急通信です』
「こっちも受信した。未確認のMSか。まさか地球側も有してたとはな」
『ですが、MSの開発技術はまだ地球側にはないはず……』
「あのジジイ教授とは別の技術者かも知れねぇだろ。1機しかいねぇとこを見るとな」
だが気になるのは、それが駐留軍ではなく火星開発公社の火星調査隊、
つまり民間の者達がそのような機体を有しているということだった。
別のローズ部隊を一瞬にして消し去ったというビーム兵器。
疑問は深まる。
(だが、完全に破壊すれば、そんな疑問は些細なことだ)
例え威力が圧倒的だとしても、自分達の操縦技術が上回れば。
火星コロニー義勇軍が結成された際、MSパイロットには優れた操縦技術を持つ者が選ばれた。
先の駐留軍との戦闘でもそれは証明されている。
「各機、細心の注意を払えよ。敵の一挙一動を見逃すな」
それが、攻撃の合図だった。
それぞれが別方向に移動を開始する。
343 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/28(土) 01:31:57 ID:???
「散らばった?」
シンシアが呟く。
操縦の仕方は体が理解した。だが、戦うことに関してはどうなのだろう。
(わからない……!!)
思い出そうとしても、何も浮かばない。
そうこうしている間に、ローズとの距離は刻々と縮まっている。
射程圏内に到達し、ローズがライフルを発射した。
5つの方向からビームが襲い来る。
逃げ場所は、なかった。
「…………ヴェールよ、守れぇ!!」
咄嗟に、シンシアが叫ぶ。
そうすれば、肩部に発光が起こり、両翼のシールドが前部に展開した。
機体全体の表面に光を纏うドルダ。
5つのビームは、纏う光に打ち消される。
「なんだ、ビームを弾いた……!?」
ニコラスが驚きの声を上げる。
「ダン、どうなってる!?」
『機体表面に、こちらのビームと同等のエネルギーを展開。無効化されました!』
「無効化……? 駐留軍のカトンボを一撃で爆砕するビームを!?」
火星コロニー義勇軍にとって、ビーム兵器は絶対的な攻撃方法である。
MAはいとも簡単に墜とせても、目の前の存在には効かない。
自信が、打ち砕かれる。
「各機、レイピアを使え!」
344 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/28(土) 01:34:44 ID:???
装備されている剣が抜かれた。
ローズレイピアは、切断することも可能ではあるが、基本的に刺突する剣である。
主武装であるビームが効かないとなれば、ビームでない武器で戦うしかない。
ビームを防ぐメカニズムがわかっていれば、容易い。
「まさか剣まで防ぐわけじゃねぇよなァ!?」
叫び上げながら、ニコラスはレイピアを構えた。
「1機、凄い動く!」
それに反応するシンシア。
躱すにしても、5つの方向から来る攻撃に、対処しきれない。
ニコラスのローズが、前部に展開したままのシールドを突いた。
しかし、貫くことはできず、剣先が零れる。
「硬いな……ならァ!!」
「速いッ!」
即座に背後に回り込み、ローズが左腕を突く。
左腕が貫かれ、剣が抜かれた。
損傷箇所から電光が迸る。
「一時使用不能!? チィッ!」
対応できない苛立ちを露わにするシンシア。
『我々も突撃します!』
『3機でなら!』
『このシールドをも!』
3機のローズが、一斉にドルダに近付いた。
「馬鹿が! まとまるな!!」
ニコラスが声を荒げる。
345 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/28(土) 01:38:20 ID:???
3機のローズがレイピアを引く。
それと同時、ドルダもシールドを開いた。
「こォォォのォォェォ!!」
シンシアがありったけの声を、コックピットに撒き散らした。
腹部の発射口内で、光が収束する。
そして、放たれた。
眩しいばかりの光景。
静まれば、そこに3機のローズの姿はない。
「これが……クソがッ!!」
ドルダを睨む。
ニコラスのローズは再び、レイピアを構えた。
「2回も、やらせない!」
ガタガタと鈍く動く左腕。
マニピュレーターや関節は使用不能ではあるが、棒のように直立した腕がローズを薙ぐ。
「ぐうううう!!」
左腕の直撃を受け、ニコラスのローズが吹き飛ばされた。
『スウィフトさん!!』
「ダン、寄るな! 奴は!!」
忠告は、遅かった。
ドルダの右手が発光し、光の線が伸びた。
それが、ローズの両脚を分断する。
「ビームを固定した!? ダァンッ!!」
『だ、大丈夫です!』
「動けるか!?」
『脚部機能停止。制御系に不具合が……』
「救いようのねぇ馬鹿が……連れて帰る!」
ニコラスのローズはライフルを放ち、ドルダを牽制する。
そのまま損傷したドルダを抱えると、一気に宙域を離脱した。
346 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/28(土) 02:10:52 ID:???
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
荒く呼吸を繰り返す。
滲む汗。
シンシアは、頭痛の痛みに、頭を押さえた。
「わたしは……こんなことをしていたの?」
こんなに苦しくなることを。
自分はなんなのか。
苦痛の中で、浮かぶのはそれだけだった。
To Be Continued...
347 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/28(土) 02:18:43 ID:???
さるさん死ね
というわけで第2話はこれにて終了です
日を空けてしまってすいません
パラレル?ストーリーを書かれてる方お疲れ様です
ガンダムマルスの人、絵の投下楽しみです
バルド氏、DAYC氏、他絵師の方々の投下も楽しみにしています
SSももうちょっと増えればいいなぁw
本編にまた突っ込みどころがあれば、じゃんじゃん指摘してくださいませ
348 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/28(土) 02:23:18 ID:???
あとなんか一部シーンとかセリフ回しがエヴァっぽいのも謝っときますサーセンw
349 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/28(土) 13:15:14 ID:???
本編の人来てたw
GJです。
350 :設定考証:2008/06/28(土) 22:36:11 ID:eiJm5yXg
しばらく来れなかったけど外伝の人達も本編の人もGJ!
2つめの外伝は本当に奇抜だなあ。意匠もそうだけど、武器とか。
地球が滅んで人類は宇宙に逃げた設定もいい。
この手のは何故か他の惑星を探す話になってしまって、コロニーがでてこないんだよな。
こういう設定は自分も考えたことがある。ストーリーが思いつかなかったけどw
この設定は面倒な火星のテラフォーミングの理由付けにもなるしね。
静止軌道上のコロニーが田舎コロニーなのも適切だと思う。
大抵、コロニーはラグランジュ点にあるのがお約束なのに対して、
静止軌道上ってのはいかにも急ごしらえで低所得層向けに作りましたって感じがでてる。
シヴォーフの夢が月への移住だけど、宙に浮いてるコロニーに対して
地面のある月はやっぱり高級住宅地なのかな。とりあえず資源はある。
話の感じはいかにも外伝って感じがしてちょうどいいな。
本編がテレビアニメで子供もターゲットに入ってるのに対して、
小説版の外伝はもう少し年齢が高めの層をねらってるみたいな。
本編は主人公が乗らないという意外な展開に。
後で主人公が乗るようになるのか、はたまた他に主人公機が登場するのか。
351 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/29(日) 01:57:03 ID:???
個人的には乗り換え予想
別の主人公機きたらそれこそ主人公側最強になっちゃうからなあ
でもまあ希望じゃないから本編の人に任せますw
352 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/29(日) 12:40:31 ID:???
ttp://www.phoenix-ent.co.jp/works/img/AokiO.jpg
【ストーリー】
時に西暦2199年、太陽系内の惑星間ネットワークを築き繁栄を極めたかに見えた人類の前に、恐るべき地球外の
知的生体=アポカリプスが戦闘を仕掛けてきた。敗北につぐ敗北、地球人類の各惑星基地、コロニーが次々と破壊
されていく中、若き士官候補生たちも過酷な戦闘へと駆り出されていく。 特殊な能力を秘めた仕官候補生の
ジョナサンは、厳しい訓練を経て、冥王星の最前線へと送られる。そこは、明日なき機動兵士たちの愛憎渦巻く
世界でもあった。 アポカリプスの真の目的は何か、謎をはらんだまま、火星で太古に存在した太陽系第5惑星人の
遺跡が発見される…。壮大なスケールと意表をついたハードなSF設定。かつてないアクションとスペクタクルの
宇宙戦闘。 その裏側で繰り広げられる男たちの熱きドラマ。空前の描写で贈るボーイズラブアニメの決定版。
そこには未知の映像体験があなたを待ってます。
【スタッフ】
□ 企画総合プロデューサー:山木泰人
□ 監督:浦田保則
□ メカニックデザイン:小林 誠
□ 音楽:天野正道
□ 主題歌:石原慎一
□ 製作・提供:フェニックス・エンタテインメント
□ 発売:デジタルワークス株式会社
353 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/29(日) 13:20:25 ID:???
森川と子安の濃厚BLロボアニメですね
354 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/29(日) 21:54:48 ID:???
BLウニメでもロボのデザインはカコイイ
355 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/29(日) 23:22:39 ID:???
設定の被りが言いたいならナデシコだって被ってるぞ
356 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/30(月) 07:51:25 ID:???
つ『犬ガンダム』
357 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/30(月) 13:34:11 ID:???
age
358 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/30(月) 14:07:04 ID:???
>>356
あれはもう・・・w
359 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/30(月) 18:44:39 ID:???
「シャア猫のこと (全1巻)」
360 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/01(火) 09:53:24 ID:sHa3duJI
age
361 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/01(火) 13:56:10 ID:???
wiki全然更新されないな
俺は携帯だから編集できないが
362 :DAYC:2008/07/01(火) 22:19:17 ID:???
人いネーナ
俺がドルダを最初に描いたときが一番活気立ってた気がする
363 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/01(火) 23:34:12 ID:???
何このスレwwwwwwwwwwww
ネーデルガンダムとか鬚とかで埋め尽くされてると思いきやwwwwwwwwwww
364 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/02(水) 00:01:40 ID:???
おめーだって顔大して出してねーだろ
365 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/02(水) 16:46:27 ID:???
火星と地球って通信届くんだっけ?
366 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/02(水) 19:50:09 ID:???
>>365
たぶん
367 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/02(水) 21:55:54 ID:???
投下します。さるさん対策で前後編に分けます。
368 :アナザードルダ 1/6:2008/07/02(水) 21:58:03 ID:???
ランチの自動扉が開いたときフィリア・シュードの気に止まったのは、区画内に悪臭が充満していることであった。
火星軌道と木星軌道の間には小惑星帯が存在し、そこには岩石をくりぬいて作られた安価な居住小惑星が無数にひしめき合っている。
軌道が不安定で行き来も不便であるから、これら簡易居住小惑星の地価は地球・火星間の小惑星やコロニーに比べて数千分の一である。
フィリアが訪れたのも、何々番小惑星と呼ばれる名も無き居住小惑星の一つであった。
農業区画から垂れ流されるリンと流れの停滞とで富栄養化現象が発生し、居住区画の川は緑色に濁っている。
鼻にさわる臭気は、そこと、天井の大型空調機から発せられるかび臭い空気が原因であると思われた。
路肩にぽつぽつ坐っている乞食も月の大都市で見られるそれが上品に思えるほど薄汚く、立ち並んだ粗末な作りの建物からは、酔っ払いの怒鳴り声や夫婦喧嘩と思われる金きり声が響いてくる。
フィリアは自分が通行人にじろじろ見られているのを感じた。
染みが無く糊の利いた服を着ているのがフィリアだけであったこともあるが、路地の物売りの中年女性たちはフィリアを見てひそひそ囁き合い、軽蔑の言葉を漏らしている。
労働者ふうの男が馴れ馴れしくフィリアの肩を抱いて、卑猥なことをささやきながら皺だらけの紙幣をフィリアの手に押し付けた。
見当違いも甚だしい。フィリアは男の手を払って歩き出した。
後ろから怒鳴り声が聞こえたが、フィリアがある事実を告げてしまうとすぐ静かになり、少し遅れて、先ほど囁き合っていた中年女性たちが大笑いするのが聞こえた。
フィリアは小さな下宿屋の前で立ち止まった。携帯端末を操作して住所が間違っていないのを確認し、それからインターフォンを押した。
しばらく経つと、中年と熟年の中間ほどの年齢と思わしき女主人が出てきて、胡散臭そうな目つきでフィリアを眺めた。
フィリアは女主人に事情を話しながら携帯端末に映る顔写真を見せたが、彼女はのらりくらりとフィリアの質問をはぐらかし、相変わらず疑りの目でフィリアを見ていた。
369 :アナザードルダ 2/6:2008/07/02(水) 21:59:46 ID:???
フィリアはこのままでは埒があかないと考えて、女主人の手に幾枚か紙幣を握らせた。
その途端に彼女は打ち解けたと見え、フィリアを家の中に通し、「デイヴィッド・リマー」と表札に書かれた部屋に案内した。
部屋の主は居なかったが、どんな人物がここに暮らしているのかは容易に想像できる有様であった。
寝台にはシーツもなく、あちこち綿のはみ出たマットが剥きだしになっている。作業着と黄ばんだ下着を一緒くたに丸めたのが枕代わりであるらしかった。
床には空き瓶と空き缶が散乱し、部屋に据付と思わしき冷蔵庫は開け放しで、乱暴に放り込まれたビール缶と、なぜかバスケットシューズが覗いて見えた。
その上、この居住区の劣悪な空気にようやく慣れ始めたフィリアでさえも顔をしかめる悪臭が部屋に篭っている。
諸悪の根源は冷蔵庫脇にぽつんと置かれている物体であった。緑色の黴に覆われたその物体をよく観察すると、フィリアも量販店でよく見かける乳製品のパッケージの切れ端が見えた。
雪の結晶を模したロゴの横に「アルバート」と書きなぐられ、その下のペンで乱暴に塗りつぶされた箇所の端に「祝! 生後六ヶ月!」と同じ筆跡で書いてある。フィリアは口元を押さえて部屋を出た。
女主人の話によれば、デイヴィッド・リマーはここ数ヶ月ずっと働いていないらしかった。
朝から晩まで酒場や賭場へ通い、そうでなければ部屋で何もせずに飲んだくれているそうである。
部屋の使い方が汚いやら家賃の支払いが三ヶ月も滞っているやらと、女主人がいらぬことまで愚痴り始めたので、フィリアは暇を告げて逃げるように下宿屋を立ち去った。
デイヴィッドが入り浸る界隈を訪ね歩いて、そのたびにいやらしい言葉を浴びせられながらもフィリアは根気強く彼を捜し続けた。
一見して余所者と判るフィリアがからかわれないでいるためには、会話を交わすごとに財布を軽くしなければならなかった。
フィリアは自分の風貌が相手を付け上がらせるのに一役買っていることも知っていた。
最下層のゴミ溜めでなく小奇麗な月都市でもそれは同様であり、金で解決できるだけここのほうがかえって円滑に進むくらいであった。
370 :アナザードルダ 3/6:2008/07/02(水) 22:01:17 ID:???
半月分の給料と四時間の時間を浪費してからようやくフィリアは目的の人物を見つけることが出来た。
薄汚い建物の前で、デイヴィッドは頬を押さえて蹲り、彼を殴ったと思わしき大男に向かって何やら懇願を繰り返していた。
時折、「ひひっ」と卑屈な笑い声を口の端から漏らしつつ、金銭上の問題について相手に慈悲を乞っていた。
デイヴィッドがあまりにもしつこくむしゃぶりつくせいか、大男は「いい加減にしろ」と怒鳴りながら彼の顔を蹴っ飛ばし、それきりすたすたと建物の中へ入って行った。
デイヴィッドは大男が居なくなったのを見ると、たどたどしい口調で扉を罵った。
「ここここの、おおれは知ってんだぞ。ててめえがカードでイカサマしてんのも、きゃ客に出すウォトカに水混ぜてんのも、ちちち畜生、う訴えてやる。おおれはうったえるぞ。ひひっ……」
フィリアは二年ぶりに再会した親友の姿から目を背けたくなった。
受ける印象の上ではすっかり様変わりして、以前のからりとした明るさが卑しさにすり返られている。
無精ひげに覆われた口元から発せられる声は、二年前と比べて相当に嗄れている。おそらく酒の中毒が原因であろう。
服装はみすぼらしく、染みと元の色とが区別できないほど汚れている。このまま帰ってしまおうかという考えがわき上がった。
しかしそのときには既にデイヴィッドが黄色く濁った目をフィリアに向けていた。
「ひひっ、ああんた、どっかで見たことあるような顔だな。まあ、いいさ。ととにかく、ちょっとばかし金貸してくんねえか。なあ、お嬢さん、いい、いいだろ。ほほんのちょっとでいいんだ」
デイヴィッドがそんなことを言いながら立ち上がり、千鳥足でフィリアに近づいてきたと思えば、彼はフィリアの肩に手を置いた途端いきなりその場にくずおれてしまった。
フィリアがあわてて抱き起こして声をかけてみたけれども、デイヴィッドは目を瞑ったまま青ざめた口をもごもごと動かすに過ぎなかった。
彼は酔いつぶれたらしかった。
371 :アナザードルダ 4/6:2008/07/02(水) 22:02:46 ID:???
デイヴィッド・リマーはシャワーの音で目を覚ました。
ここ一年ほど見ていない小奇麗な天井と、清潔な枕の滑らかな感触があるのを知り、すぐさまばっと音を立てて羽毛蒲団を捲った。
残念なことに、服は着ていた。代わり映えの無い着たきり雀である。
デイヴィッドはため息を吐き、醒めた頭で昨日の出来事を順々に思い出して行った。
いつもどおり正午に起き、大家の催促を逃れてパチンコ屋へ出かけた。
負けも勝ちもせず夜になって、行きつけのバーでカードに興じ、負けが込んできて、店主に追加の酒を頼んだら店から追い出された。
その後の記憶はぼやけて、なにやら悪態を付いていたかもしれず、通行人に絡んでいたかもしれない。
酔いが回りすぎて、デイヴィッドは自分が何を言ったのかさえ覚えていなかった。
シャワーの音が止んで一分ほど経つと、バスローブ姿の人間が、肩口ほどまでの長さのある髪をタオルで拭きながら浴室から出てきた。
白い肌とバスローブに包まれた細い腰が見えたとき、デイヴィッドは思わず足を組んでその人間の胸元に視線を集中させた。
「あ、起きたんだね」
その人物が聞き覚えのある声を発した途端にデイヴィッドの淡い期待は崩れ去った。
デイヴィッドは頭を抱えて、投げやりな口調で言った。
「お前だったのかよ、フィリア」
「どうしたのデイヴ? なんで怒ってるの?」
「うっせ、紛らわしい顔しやがって……」
女性と見まがうばかりの容貌であるけれども、フィリア・シュードは正真正銘の男性である。昔、実際にひん剥いて確認したこともある。
彼と言葉を交わすのは二年前に連邦軍を抜けて以来のことであったが、デイヴィッドは蒲団を被って目を瞑った。
期待していただけに幻滅も大きかったのである。
「お変わり無いようで何より。じゃ、お休み」
「ちょっと! 用件を聞くとかはしないの?」
「俺は疲れてるんだ。ほら、仕事とかでいろいろ」
「ニートが何言ってるんです! 親友がはるばる訪ねてきたというのに、その態度はどうかと思うよ!」
372 :アナザードルダ 5/6:2008/07/02(水) 22:03:46 ID:???
一時間ほど押し問答した後、眠気も醒めてしまったデイヴィッドは仕方なしにフィリアの用件に耳を傾けていた。
「火星へ?」
「うん。第七次調査団として派遣されるんだけれど、MSパイロットの枠が一つ空いているんだ」
「テラフォーミングが終了するのはまだ何百年も先だろ? 何でわざわざ調査団なんか送るんだよ?」
パイロット枠の件には触れず、デイヴィッドは思いついた疑問を口にする。
「途中経過報告が火星開発公社(ウチ)の名目だからね。そのために連邦から資金援助も受けてるし。まあ、ほかにも色々と事情がね。だからさ――」
「先回の調査は何年前なんだ?」
「……五十年前。ちょうど五十年周期だよ」
「で、フィリアはメカニックチーフで参加するわけか。しかしまあ、なんだ。お前も相当に出世したな。たしか引き抜かれたんだろう? 連邦にいたころより給料だって――」
「デイヴ! 四方山はもう止めようよ。僕は、君を誘いに来たんだ」
デイヴィッドは口を噤んだ。フィリアの様子が思いのほか真剣味を帯び始めてきたからである。
「君は、今のままの境遇で本当にいいの! 軍を抜けて、こんな辺境で夢も希望もない人生を続けるの! ここは空気も悪いし、人間だってみんな性根が薄汚い。
こんな、食べるために生きるのか生きるために食べるのか定まらないところにいれば、いつかきっと、デイヴは駄目になる!」
「もう充分駄目人間さ」
「だったら、これから立ち直ろうよ! 飲酒と放蕩と伊達気取りなんてすっぱり止めて、もっと、地に足付けて将来を考えることにしよう!」
「今の時代、地球は立ち入り禁止だぜ」
「だから、火星に行こうと言ってるんだよ! 火星には大地があるし、安定した職だってある!
調査団が解散した後のポストは僕が用意するし、君の借金だって、僕が立て替えるから、昔みたいに、僕と一緒にがんばろうよ!」
373 :アナザードルダ 6/6:2008/07/02(水) 22:05:13 ID:???
お前はなぜそうまでするんだ、という藪蛇を突っつくような言葉は飲み込んだ。デイヴィッドにはその理由を三つも四つも挙げることが出来るのである。
彼は他人の性情に深く立ち入りたくなかった。
真実であるとか、理想であるとかはぜいたく品で、物事を深く考えずにだらだらと上辺だけの人付き合いをしながら、残りの人生を死ぬほど退屈に暮らしたいと願っていた。
「返事は、早めにしないと駄目か?」
「出来れば、今日中にして。早くしないと、火星の位置が変わってシャトルじゃ行けなくなっちゃうから」
「わかったよ。行くよ。行けばいいんだろ。ったく、お前にはかなわねえよ、フィリア」
デイヴィッドは観念した。どのみち、下宿にも財布にも金が無い一文無しの彼には、強情を張るという選択肢は無いのである。
「デイヴ、ありがとう!」
フィリアはぱっと咲くような笑顔を見せて、心底嬉しげに今後の計画をあれこれと語り始めた。
374 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/02(水) 22:05:41 ID:???
ひとまず以上です。
375 :設定考証:2008/07/03(木) 00:07:45 ID:???
>>374
GJ!!
しっかし小惑星か。話の舞台ががんがん広がってくな。
鉱山できつい仕事を安い給料でやらされてる人々がいそうだとか、
いろいろ妄想が広がるぜ!
問題なのは自分が未だに面白そうな話を思いつかないことだw
>>365
通信は余裕でできる。
ただし電波が届くのに分単位で時間がかかるのが問題だな。
電話なら会話にならない。電子メールを使えば問題ないが。
インターネットで地球のサーバにアクセスするのとかも大変だろう。
376 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/03(木) 00:13:32 ID:???
後編投下します。
377 :アナザードルダ 1/7:2008/07/03(木) 00:16:15 ID:???
新宇宙暦072年現在では、火星のテラフォーミングが始められてから五百年が過ぎている。
それ用の機能遺伝子を持つ微生物や藻類を大量に放し、千年前後もの時間をかけて火星全体を地球と同じ生態系へ作り変えるという気の長い事業である。
しかし人間というものはせっかちな生き物であるから、千年後に約束された地上の楽園なんて悠長に待ってはいられない。
テラフォーミング開始から二百年後、微生物・藻類循環の安定と地球環境悪化に伴って、パラテラフォーミング、すなわち地表でのコロニー開発が始まった。
末期の地球における都市計画を流用して建造されたこれらのコロニーは、タワーとケーブルからなるフレームに透明な外壁パネルを被せて、その形状が三次元アーチを為していることからドームと呼ばれている。
脆弱な構造のため、ドームの寿命は居住小惑星とどっこいどっこいであるが、短時間で安価に作れて、それに加えてほとんど完全な自給自足が可能であるため、火星の各地には大小様々な規模のドームが点在している。
ドーム・テーレマコスは、火星で最も規模の大きいドームであり、また、マスドライバー施設を保有する唯一のドームでもある。
したがって、火星と宇宙を繋ぐスペースポートはこのドームにしか存在せず、絶えず観光客で賑わっている。
観光客の団体に混じって、男装した妙齢の女性と、浅黒い肌をした短髪の男がターミナルを歩いていた。
男が立ち止まって窓を眺めながら何かを喚いたり、火星の現地人を指差して何かを言ったりするたびに、女性のほうは男の手を引っ張ったり、あわてて男の口を塞いだりしている。
見るからにおのぼりさんである二人組は、ひとしきり周囲の冷ややかな視線を集めると、団体客と別れて、ドーム行きではなく連邦軍駐屯地行きのランチへと乗り込んだ。
同乗する軍人たちに詮索の目で見られているこの二人組は、フィリアと、人間らしい身なりになったデイヴィッドであった。
378 :アナザードルダ 2/7:2008/07/03(木) 00:17:56 ID:???
第七次調査団が使用する空中艦「カナリヤ」は、鯨に羽を付けたような恰好で、ずんぐりとしている。全幅が全長より二倍近い大きさである。
この艦は、元々ドーム・テーレマコスの所有であった大型輸送機を火星開発公社が買い取って、調査用に改造したものである。
ペイロードの約半分が研究室区画で占められているので、格納庫は狭く、護衛のMSは六機までしか搭載できない。
武装も貧弱で、黄色い船体に対空機銃がちらほら見える程度である。
カナリヤという名前は、旧時代、炭鉱において発生する毒ガスを検知するために、同名の鳥が坑道におろされたことに由来していた。
名付け親の人柄がしのばれる。
あわただしく、作業員が走り回り、物資の運搬作業が行われている中、デイヴィッドはフィリアに連れられて、カナリヤ内のMS格納庫を歩いていた。
「MSU-14ドグッシュ、まだ量産ラインが整っていない最新鋭機なんだけど、地上での性能試験用に二機提供してもらえたんだ。今の火星駐屯軍はほら、あれだからね……」
デイヴィッドはドグッシュの真新しい艶やかな塗装を眺めながら、説明しているフィリアを横目に、頭に浮かんだことをそのまま口に出した。
「あのリニアの銃口、催情的な粘膜部位を思わせる造形だな」
「ちょっと! 聞こえているんだぞ!」
と、開け放たれているドグッシュのコックピットから、鈴を転がすような声が聞こえた。それから間を置かずにパイロットスーツ姿の女が飛び出てくる。
「お前! いま何て言った!」
長い黒髪を後ろに纏めた女は、髪のしっぽをゆらゆら振りながら、赤い顔をして、吊り上がった目でデイヴィッドとフィリアを睨みつけていた。
あまりかかり合いたくない手合いである。デイヴィッドが返事をしないで黙っていると、
「私のドグッシュのカントーンを、あろうことか、あ、あろうことか……、……だなんて……」
言葉は尻窄まりになって、女は顔をいっそう赤らめて口を噤んでしまった。
けれども視線はより険しくなり、呪い殺さんばかりに二人を射抜いている。
狼狽するフィリアがひそひそ声で「謝ろうよ」とデイヴィッドに忠告するが、見たままを言って何が悪いというのがデイヴィッドの言い分である。
彼は腕を組み、あらぬところを向いて口笛を吹かし始めた。当然、例の女は立腹する。
そんなときである。もう一機のドグッシュから、ワイヤーを伝って、例の女と同じくパイロットスーツ姿の中年男が降りてきた。
379 :アナザードルダ 3/7:2008/07/03(木) 00:22:43 ID:???
「どうもどうも、お久しぶりでございますシュード主任。いやはや、火星の重力というものは、なかなかどうして、思いのほか強うございますね。
わたくしなんかこう、ふんわりしておるものですから、ふう、疲れて疲れて、無闇やたらと汗ばかり垂れ流しております。ええ」
でっぷりと太った中年男は、薄気味の悪いほどにこやかな表情で、しきりに汗を拭きながらフィリアにぺこぺこと頭を下げた。
年のころ四十前後と思われる。彼の脂ぎった団子鼻の上には、ちょんと乗せるような具合に小さな眼鏡がかかっている。
「おや? 貴方はもしや、以前シュード主任の仰った、デイヴィッド・リマー氏でいらっしゃいますか?
どうもはじめまして。わたくし、このドグッシュの専属パイロットを勤めさせていただきます、ゲイリー・ターレルと申します」
言いながら名刺を差し出される。デイヴィッドはゲイリー・ターレルの慇懃な物腰にまごついた。
名刺には、写真、生年月日、現在の職業から、学歴、離婚経験があることに至るまで、こと細かに個人情報が印刷されている。
デイヴィッドが名刺から目を離すと、ゲイリーは腰をかがめた恰好で右手を差し出していた。
にこにこ笑いで細まった目と視線がぶつかり、デイヴィッドはえたいの知れない寒気を覚えて思わず目を瞬いた。
ゲイリーはますます笑みを深めて、「さあ!」と言わんばかりに右手をデイヴィッドに差し出した。
「で、デイヴィッド・リマーだ。これからよろしくな。デイヴでいい」
握手のために右手と右手を触れ合わせた瞬間、遊んでいたゲイリーの左手が凄まじい速度でもって伸びてきてデイヴィッドの右手を包み込んだ。
そうして、ゲイリーは握った両手を上下に強く揺さぶり、過剰ともいえる親愛の情を表した。
「ええ、ええ! 末永くよろしくお願い申し上げます、デイヴさん」
握られた右手は、ぬめっていた。外気にさらすとひんやりして、たいへん不快であった。しかし本人の居る前で拭うわけにもいかない。
すると、いつの間にかドグッシュから降りていた先ほどの女がてくてくと歩み寄って来て、
「よろしく。ネルネ・ルネールネだ。さっきのけしからん言葉は、この私の寛大な心に免じて許してやろう……だが、次はないぞ」
と言って左手を素早く差し出した。「嫌な女だ」とデイヴィッドは思った。彼は右手で握手したかったのである。
380 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/03(木) 00:23:51 ID:???
アナザー乙!
全体的に荒廃した世界観が伝わってくるな
フィリアは女子視聴層をハァハァさせるためですね
381 :アナザードルダ 4/7:2008/07/03(木) 00:24:39 ID:???
二人の同僚への自己紹介を終えたデイヴィッドが次に案内されたのは、格納庫の一番奥に位置するハンガーであった。
遠目でも、その周囲に大掛かりな端末が幾つも据付けられているのが見えた。
最新鋭機ドグッシュと比較して、そこに格納されている機体は相当な特別待遇を受けていることがわかる。
「これは……」
デイヴィッドは覚えず感嘆の息を漏らした。その機体は、白を基調として、各部に黒と青と赤とで鮮やかに塗装が施されていた。
機体の形状においては、流線形のしなやかさと鋭角の強靭さがそれぞれ適切な箇所に配置されて、男女両性をそなえた調和をもたらしている。
肩アーマーから腕にかけては主に鋭角である。
胴体は、胸から腹の中心にかけての流線形部分と、ブロック状のわき腹部分と、入り組んでいる腰及びスカート部分で構成され、それぞれ色が分けられている。
下半身部分については、いい加減面倒臭いと感じたデイヴィッドはあまりよく観察しなかった。
装甲や間接部品の合いを見ても、大金を惜しみなく注ぎ込んでいることが判るからである。
二対のアンテナは、それぞれ鋭角と鈍角を形成し、その下に見えるのは、この種の機体に共通する鋭いツインアイであった。
「ガンダム?」
「そう。火星開発公社(ウチ)が独自に開発したガンダムタイプMS第一号機、GEY-001ガンダムムウシコス。
機体性能もさることながら、内蔵コンピュータの情報処理能力は、現存するガンダムタイプMS四十六機の中でもトップクラスで、最大九基のビーム兵装を同時に制御可能。
……今回の調査の要となる機体だよ。ところで、デイヴ。これから君には――」
「待てよ!」
デイヴィッドはフィリアの言葉を遮った。淡々と説明を続けている目の前の親友がたちまち憎らしくなり、気が苛立つのに任せて胸倉を掴み上げた。
382 :アナザードルダ 5/7:2008/07/03(木) 00:26:52 ID:???
デイヴィッドにとって、ガンダムというMSは好ましくない過去の出来事を思い起こさせる存在である。
守秘義務だのなんだの言って、今の今まで何も知らせずにいたフィリアに向かって、裏切り者めと叫んでやりたかった。
絶えず湧き上がる怒りを抑えながら、デイヴィッドは咽喉の奥から搾り出すように言った。
「お前は、俺に、こいつへ乗れというのか」
「……へ?」
持ち上げられて宙ぶらりんの状態にあるフィリアが素っ頓狂な声を上げた。その表情は悪意でも恐怖でもなく、鳩に豆鉄砲である。
フィリアが首を傾げるのに続いて、
「凡庸パイロットが何を勘違いしておる」
というしわがれ声が聞こえて、大型端末の陰から白衣姿の老人が現れた。
「デイヴィッド・リマー。連邦軍退役時の階級は中尉であるが、先日行った能力査定シミュレーションの結果は、
近接D、射撃D-、回避D+、状況判断C-、空間認識以下技能オールD、総合成績D、加えて軽度のアルコール中毒あり。
一般平均に産毛の生えた程度の技量しか持たん貴様なんぞに、わが社のムウシコスを任せるはずなかろうが」
いきなり出てきた初対面の年寄りに自分のパイロット適性を立て板に水のように空で語られて、デイヴィッドは羞恥を感ずる暇もなく、ぼんやり口を開けて立ち竦んだ。
握力が抜けたことで戒めから開放されたフィリアが、デイヴィッドの腹を肘で小突きながら、「この人、偉い人。偉い人だよ」と小さな声で言った。
デイヴィッドはそれでようやく我に返り、すかさず直立不動の体勢を取った。
「このたび、火星開発公社調査団MS隊に配属になりましたデイヴィッド・リマーであります! 本日はお日柄も良く、閣下におきましては――」
「ああ。いい、いい。邪魔にならんよう、向こうに行っとくれ」
デイヴィッドは、しっしっと手を払う御老人に敬礼すると、きびきびした動作で回れ右をし、元来た道を引き返した。
彼は長いものに巻かれたがる性質の人間であった。
383 :アナザードルダ 6/7:2008/07/03(木) 00:28:03 ID:???
ムウシコスの特待ハンガーから離れて、二機のドグッシュの整備風景を手持ち無沙汰にただ眺めながら煙草を吹かしていると、誰か声をかけてくる者がいた。
フィリアは先ほどの失態を弁解するために、今頃は例の偉い人に頭を上げ下げしているはずである。
デイヴィッドは壁に寄りかかったまま、声のした方向に顔を向けた。
パイロットスーツの胸元を肌蹴た金髪の青年が、にやにや笑いをしながら彼に近づいてくる。その丹精な顔つきは随分と若々しく、十代の少年とも思われた。
「アンタ、デイヴィッド・リマーだろ?」
「そうだが」
年下のくせに不躾である。デイヴィッドは先ほどのこともあって気を悪くした。
「俺がガンダムムウシコスの専属パイロット、ディック・オメコスキーだ。アンタはこれから、俺の指揮下に入るってわけ」
ガンダムパイロットを名乗る青年はデイヴィッドの肩にぽんと手を置いて続ける。
「仲良くしようぜ、微笑みデイヴ。それとも、ガンダムキラーか?」
昔の、恥しい通り名を持ち出されてデイヴィッドは眉を顰めた。
「アンタのことはなんでも知ってる。二年前にガンダムを落としたことも、ついこないだまでニートやってたことも。
データベースを閲覧させてもらったんだ。この調査団に参加できたのは、アンタがシュード主任の愛人だからなんだって?」
デイヴィッドは、こういう友達になりたくない輩に対してだんまりを決め込んだ。
これは彼自身がされて一番いやなことで、こうされると暖簾に腕押しを繰り返すうちに、段々と自分が言い負かされているような気持ちになるのである。
けれども、ディック・オメコスキーは怯むわけでもなく、自分で自分の言う皮肉に酔っている様子で、ますます機嫌を良くして喋り続けている。
384 :アナザードルダ 7/7:2008/07/03(木) 00:29:22 ID:???
「ガンダムキラーさん、どうやらアンタの機体が届いたみたいだぜ」
ディックが顎をしゃくって指した先では、シートに包まれたMSが運搬用リフトに乗ってハンガーへと運ばれていた。
「おやおや、こいつはまた……」
シートが剥ぎ取られたとき、デイヴィッドの口があんぐり開いて、咥えていた煙草が床に落ちた。
「三八式かよ。Dランのアンタにゃぴったりだな」
格納庫の明かりに照らされて、頼りない饅頭型の頭部と、太くて逞しいというよりも成人男性のビール太りを思わせる体躯があらわになる。
国防色の塗装が所々剥がれ落ちているその機体は、MSU-06グワッシュであった。
新宇宙暦038年に生産が開始されたことが、三八(さんぱち)式と愛称で呼ばれる所以である。
旧式の代名詞ともいえるMSで、新宇宙暦072年現在、コロニー外壁の清掃、鉱物資源の採掘、スペースデブリ除去作業、耕作、それから自爆テロ及び郊外コロニーの警備と、幅広い分野において現役で活躍している名機である。
そこに、「待った? デイヴ」なんて明るい調子で言いながら、フィリアがぱたぱたと小走りで戻ってくる。
デイヴィッドはさっそく掴みかかった。
「フィリア! この、おまっ、三八式って、どうして俺だけこんな棺桶なんだよ! しかもこいつは、払い下げじゃねえか!」
「だ、だって予算が下りなかったんだもの。な、なんなら、ドグッシュの予備パーツでカスタム化したげるから。だ、だから、は、はなし、くく、くび、し、しまってるって」
この日、火星開発公社第七次調査団には、デイヴィッド・リマーと、彼の専用機であるグワッシュが新たに加わった。
それから数日後に、空中艦カナリヤは総員百八名と四機のMSとを乗せて、ドーム・テーレマコス脇の駐屯地から火星の空へと飛び立って行ったのである。
385 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/03(木) 00:31:32 ID:???
以上です。
386 :DAYC:2008/07/03(木) 02:39:30 ID:???
>>385
乙
387 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/03(木) 17:27:12 ID:???
名前が面白いw
富野や00キャラに匹敵するネーミングだ
388 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/04(金) 00:01:53 ID:???
中尉好きだねw
389 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/04(金) 01:08:41 ID:???
オメコスキーage
390 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/04(金) 02:45:52 ID:WyByZWrF
今のところドルダのデザインって>>190しかない?
391 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/04(金) 05:21:08 ID:???
初投下
寝れなかったからボーっと好き勝手描いてみた。
ドルダの中身
http://wktk.vip2ch.com/vipper85430.jpg
ドルダ(可変だって設定完全無視してもうた)
http://wktk.vip2ch.com/vipper85432.jpg
ガーランド
http://wktk.vip2ch.com/vipper85433.jpg
ローズ
http://wktk.vip2ch.com/vipper85434.jpg
グワッシュ
http://wktk.vip2ch.com/vipper85435.jpg
設定完全無視でごめん。
392 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/04(金) 14:58:46 ID:???
>>391
確かドルダは可変機じゃなかったような気がする
大丈夫だろ
393 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/04(金) 14:59:13 ID:???
UMEEEEEEEEEEEEEE
394 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/04(金) 15:07:05 ID:???
>>391
何この公式設定画集並の絵
ドルダの中途半端な羽のあたりがグリープっぽく見える
395 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/04(金) 15:55:04 ID:???
もう>>391がメカデザでよくね?
396 :DAYC:2008/07/04(金) 16:16:06 ID:???
>>391
俺よりumeeeeeeeeee!!
397 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/04(金) 16:43:00 ID:???
GDボード
http://imepita.jp/20080704/596510
ドルダシステム発動時にガンダムドルダからはがれた“GDアーマー”が組み合わさった状態
ドルダはこれの上に乗ることでドル・デー並のスピードを得る
武装はコクピット部ビームキャノン
ちなみにドルダシステム解放時は地上を滑走できない(通常時はできる)為、空中戦はこれに乗っておこなう
コクピットが一応あるが通常無人で動く
398 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/04(金) 22:59:18 ID:???
ドルダ顔アップ
http://wktk.vip2ch.com/vipper85512.jpg
ドル・デー
http://wktk.vip2ch.com/vipper85513.jpg
思いついた感じで描いてみました。
みんなの設定が良すぎて描きやすいです。
あと敵メカがジオニックジオニックしてるのもなんだなーっと思って
ドルデーは自分なりに考えてみました。批判お願いします。
>>392
外伝とごっちゃになってました。安心しました。
>>394
そうですね、ちょっと羽が中途半端ですよね。
もう少し練り直してみます。
あと前描いたヤツももう一回描きたいと思ってます。
「ここをこうしたら」みたいなのがあったらご指摘お願いします。
たくさん描きたいです。
399 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/04(金) 23:03:05 ID:???
追記
>>397
これは斬新ですね!
パージした装甲が合体…燃えますな…
ちょっと描いてくる!!!
400 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/04(金) 23:04:40 ID:???
>>398
このノリでガンダムマルスのデザインをお願いしますw
とりあえずプロローグ部分書いたんで投下します。
一部の機体名と火星少女云々以外はほぼオリジナルです。
302 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/25(水) 00:06:30 ID:???
新宇宙暦073年、地球の軌道エレベータ周辺に位置するコロニーの一つ、『エルゴン』の管制が一つの機影を捉えた。
望遠カメラで一段ずつ拡大されたモニターが映し出したのは、宇宙空間に浮かぶMA(モビルアーマー)らしき灰色の機体である。
左右非対称の形をした本体の後部には、長距離航行用と思わしき大型ブースターが接続されている。
角張って歪な本体と洗練されて丸みのある追加パーツとの形状の不釣合いは、いかにも取って付けたという観があった。
ここエルゴンは旧式の田舎コロニーである。日ごろ寄航するのは輸送船くらいのもので、戦闘用のMAが、それもわざわざ追加ブースターを背負ってまで立ち寄るのは珍しい。
管制官は物見高くなりつつも、給料を貰っている手前、真面目に職務を遂行するべくポテトチップスまみれの手でマイクを握った。
「えー、こちらエルゴン管制室。そちらの機体名と所属を述べよ。しかるべき手続きが終わり次第、スペースポートへ誘導する。……ところでアンタの機体さ、まるでミノムシみてえな見た目だな?」
そうおどけた調子で付け足してみたせいか、灰色のMAから通信は返ってこなかった。
冗談を無視された管制官は気を悪くして、荒げた声で怒鳴りつけた。
「おいコラ、ミノムシ野郎、返事しろ。それ以上近づけば問答無用で不法入港と見なすぜ」
ようやく、灰色のMAから返答が帰ってくる。しかしそれは音声ではなく文字情報であった。
――DOLLDA――
「……どるだ? なんだそりゃ」
DOLL(人形)のことかとも思われたが、わざわざDAをつけて自己主張する理由が解せない。
管制官がなにかのアナグラムだろうと一人合点してあれこれ頭を悩ませ始めたのと同時に、モニターに映る灰色のMAの機首が割れ、それから数瞬間遅れて彼は光に包まれた。
303 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/25(水) 00:10:15 ID:???
シヴォーフにはまだ耳の横で、エマージェンシーのブザーがやかましく鳴り響いている気がした。
彼の意識はほとんど薄らいだ状態であったが、気の遠くなるほど訓練を繰り返した肉体は、滞りなくMS(モビルスーツ)起動の動作を行い、今や発進を待つのみとなっていた。
狭いコックピットに計器の音が響くと、ようやく五月蝿い耳鳴りが治まってくれた。しかしそれと同時に、引きつった心臓が烈しく鼓動し始めた。
シヴォーフにとって初めての実戦である。いくら演習で負けなし、コロニーのトップエースと認められ最新鋭機を任されたとはいえ、戦場で殺し殺される段となればその精神状態は新兵と何ら変わりない。
シヴォーフは逃げてしまいたかった。出世も月へ移住するという夢も、全てをかなぐり捨ててでも助かりたかった。
全天周囲モニターが起動し、自分の体とコンソールを除いた全てが消え去った。手を伸ばせばすぐ届くところに格納庫の壁があるのと同じく、自分の死も目前に迫っている心地であった。
足が震えた。操縦桿を握る手も緩み始めた。
『中尉? ラーグ中尉? 応答願います』
と彼の耳に馴染みのある声が響いた。見れば開かれた正面ウインドウにオペレーターの女性が映っている。
気遣う表情で窺う彼女を眺めていると、シヴォーフの震えが止まった。
「……大丈夫、いけます」
『シヴォーフ……気を付けて』
「ああ」
シヴォーフは恋人のためにもこのコロニーを守らなければならないのである。
半球形の頭部のモノアイが彼の意志に呼応するかのように輝き、人間でいう肩甲骨の部分に位置するスラスターと、股間が盛り上がって後ろへ突き出された形の可変式メインスラスターに膨大なエナジーが送られる。
「シヴォーフ・ラーグ、ドグッシュいきます!」
未だに慣れない最新鋭機ドグッシュの強烈な加速に顔を歪ませながらも、シヴォーフは瞳に決意を宿していた。
304 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/25(水) 00:13:01 ID:???
管制官にミノムシと形容された灰色の機体は、コロニー・エルゴンの管制室を破壊してから、それ以上の砲撃を加えるでもなく、コロニーから距離を取って宇宙空間に静止していた。
外観の調和を損ねる追加ブースターは先ほどの砲撃の後に切り離されていたが、目を引くそれがなくなったためによりいっそう本体の異質さが際立っている。
よくよく注意して見ると、ごつごつしたブロック状の各パーツに混じって、流線形の滑らかな箇所が覗いて見える。
その部分だけおそろしく色が白く、灰色の中にぼんやり浮かび上がって、喪服を着た女性のあの艶かしさと同種のそれをかもし出している。
機体の背後には、もはや前時代の遺物となった軌道エレベータが見え、嘗て栄華を極めたバベルの塔を下へたどって行くと分厚い灰色の雲の中へ消えている。
この雲の姿を言い表すには、木星のガスを灰色に染め直しただけと言ったほうがわかり易い。
人類発祥の地である地球は、年号が新宇宙暦と改められたと時を同じくして完全に見捨てられた。
気候変動、生態系云々以前に、純粋な汚染が地球の自浄作用を上回ったのである。
宇宙移民はそれ以前より行われていたが、それがかえって環境悪化を助長する原因となった。
コロニー国家と地球連邦との対立である。その後の展開はわざわざ語るに及ばない。慢性的に頻発する紛争、発展して全面戦争、そしてまた紛争に戻る。
どちら側も自分たちの住居であらざる所を攻めるので手段を選ばない。先に根を上げたのが地球の大地であっただけのことである。
黒い雨が降り注ぎ、細菌兵器の変質した未知の病原菌が蔓延る大地に、もうそれ以上人間は生きて行くことが出来なかった。
地下に潜っていた熱心な地球崇拝者たちでさえ、新宇宙暦001年には一人残らず宇宙へ上がって行った。
全人類共有の財産といわれ、地上にエネルギーを供給し続けていた軌道エレベータは、今はもはやソーラーパネルを剥ぎ取られて情けない有様を見せ付けるに留まっている。
その周辺に残るのは、貧乏人か、さもなければ地球の姿を見ていたいという物好きだけが住む旧式のコロニーばかりである。
305 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/25(水) 00:16:12 ID:???
シヴォーフの守るコロニー・エルゴンも、そうした最下等コロニーの一つである。
配備される兵器も中古や型落ちばかりなので、各コロニーからかき集められて合流した数十機のMSのうち、殆どが旧式であった。
一応は現行機として活躍しているグワッシュなどまだいい方で、中には作業用ポッドに銃座を取り付けただけの代物もちらほらある。
この程度の軍備でさえ宇宙連邦政府は過剰と考え、予算削減を迫っている。
こんな何の利点もない辺境コロニー郡に攻撃を仕掛けるテロリストなんぞあるわけないというのが彼らの言い分であった。実際、今の今まではそれで良かった。
『エルゴン管制塔を砲撃した機体の周辺に他の機体の反応は在りません。敵機は一機のみと思われます』
シヴォーフの恋人の通信に続いて、あちこちのMSから安堵の息を付く声が聞えた。
中には調子に乗って、「戦いは数だぜ」なんて威勢の良い台詞を吐くお調子者もあった。
『ですが、機体ブロックの構造を解析した結果と、砲撃の際の記録映像より、敵機は可変MS――それもガンダムタイプである推測されます』
通信機から息を呑む声が聞えた。すぐさまどっとざわめきが起こり、「嫌だ、死にたくねえ」と呆然と掠れ声で呟く者もいた。先ほどのお調子者の声であった。
ガンダムタイプとは、主にビーム兵器を搭載したMSの総称である。
どのような装甲でさえも一撃で破壊しその材質自体を崩壊・爆発させるビーム兵器は、特殊な粒子を制御するために大掛かりな演算装置を用いるので、通常は戦艦や要塞にしか搭載されないといわれている。
小型化も可能ではあるが、それには通常の三倍以上の費用と時間とが必要で、必然、ビーム兵器を搭載したMSは莫大なコストをかけたワンオフ機とならざるを得ないと一般では知られている。
「しかしガンダムタイプは兵器としては欠陥品だ」とシヴォーフは考えた。
ガンダムはその過剰な攻撃力に比べて、装甲や機動性そのものは普通のMSと大差なく、通常兵器の最高水準に見合った性能でしかない。
その上ビーム兵器に莫大なエナジーを食われるので持久戦も得意で無い。
シヴォーフの乗るドグッシュの基本性能なら、戦略次第でガンダムを撃墜することも無理な話では無いのである。
306 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/25(水) 00:18:12 ID:???
『砲撃以来、敵機は文字情報の送信を続けたまま動きを見せていません。
敵機から送られる文字情報より、以後敵機を一時的に「ドルダ」と呼称します。フォーメーションを整え次第、各機はドルダへの攻撃を開始して下さい』
射線をコロニーに重ねないよう後続の機体を静止衛星軌道に配置し、シヴォーフのドグッシュを中心に六機のグワッシュで編成された切込み部隊は、不規則な機動をとりながらドルダとの距離を詰めて行く。
全戦力のうち三分の二は防衛のためコロニーに周辺で待機させているので、ガンダムを直接相手にするのはシヴォーフの率いる部隊に任されている。
「しかし妙だ。コロニーを襲撃するテロリストにしては、やぶ蛇を突っつくような仕方だ」
渇いた唇を舐めて、シヴォーフは視認出来る距離に入った敵機をにらみつけた。ドルダはビームを一発放ったきり悠然と灰色の惑星の上にまどろんでいる。
「何かをおびき出す……いや、待っているのか?」
そう考えた瞬間、ドルダの機首で小さな光が瞬き、
「各機散開!」
と叫び終わるのと同時にシヴォーフのドグッシュとすれすれの位置を真紅の光芒が流れて行った。
股間のメインスラスターを小刻みに前後させ、その機動で目まぐるしく変わる視点の中、
『畜生! 腕がやられ――』
と通信が聞え、先ほどと程近い座標にビームの第二射が通り過ぎる。
「カマッセ! 応答しろ!」
飛び散った破片が視界の隅にちらと見え、ウインドウのレーダーに「LOST」と表示される。
「各機垂直軌道をとりつつ敵機に取り付け! ビームといえども直線だ! 変形する前に仕留めるぞ!」
シヴォーフは右腕に装備した100㎜リニアライフルでけん制しつつ、スラスターの推力を全開にした。
エナジーと推進剤の残量が見る見る減って行き、コックピットにアラートが鳴り響く。敵機の後方へと回り込んだときにはエナジーのゲージが半分を切っていた。
シヴォーフたちが必死に射線から逃げ回っている間、ドルダは旋回を繰り返すばかりで、こちらを嘲笑っているかのようであった。
「舐めやがって……!」
リニアライフルを高出力モードに切り替える。チャージ開始で射程距離の数値を増やし始めると同時に相対距離を真っ直ぐ詰めて行く。
いつ撃たれるかもしれない、二つの照準が重なるまでの時間がシヴォーフには永遠にも感じられた。
307 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/25(水) 00:21:59 ID:???
機首が下がり始めた。照準はまだ離れている。後部ブロックが分割され、その上部を構成していた箇所が、折りたたまれた状態から本来の形へと戻り始めた。照準はようやく端同士が重なったところである。
シヴォーフが焦りと恐怖からトリガーを引いた時には、ドルダは既に人の形態を取って、右腕と化した機首のビーム砲をドグッシュへと向けていた。
ドルダの放ったビームはリニアライフルの弾丸を苦もなく蒸発させ、リニアライフルごとドグッシュの右腕を抉り取った。
真紅の光が収まっても、シヴォーフは生きているのやら死んでいるのやら解らない心地のまま、ぼんやりと「ガンダム」の姿を見つめていた。
教本で見たどの「ガンダム」にも似ていない。
辛うじて共通な部分は、鶏の頭のような輪郭のヘルメットから覗くツインアイと、ただもうくっつけただけといった感じで鶏冠の脇にちょこなんと着けている左右対称のアンテナだけであった。
巨大な右腕にはマニピュレータはなく、MA形態での機首に当たるビーム砲が折れ曲がって腕の形を繕っている。
両足は左右不均等の形をして、踵、脛、膝、腿、それぞれの裏表にこれでもかといわんばかりのスラスターが乱雑に取り付けられ、そのためか、まともに歩けるか疑わしいほど肥大化している。
そうして、何よりも目に付くのは、胸の左半分と、そこから伸びる左腕にかけての箇所である。
スモウレスラーを連想する灰色で不細工な他の部分から一転して、純白のそこは、女性の肉体のように流麗で丸みを帯び、すっきりした感じを与えている。
左腕は恐ろしく細かった。そして、右腕より短かった。クロールをするような体勢でMAの姿をとっていたことも納得できた。
片輪のMS――シヴォーフはガンダムドルダについてそのような印象を抱いた。子供のころに絵本で見たノートルダムの怪物のことを思い出した。
『よくもラーグを!』
通信に続いて一機のグワッシュが高周波ブレードでドルダに切りかかった。
ドルダは全身のスラスターを駆使してその巨体に似合わぬ軽やかな機動で攻撃をかわし、同時に背中から、長い柄と、柄の先端に取り付けられたスプーン状の幅広の刃からなる武器を取り出した。
純白の細腕が手にしているのは、一見したところ白兵戦用円匙であるらしかった。
308 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/25(水) 00:26:09 ID:???
『高周波スコップだと? アステロイドならともかく、オープンスペースならこっちのほうが!』
「止せ、デッド!」
グワッシュのブレードとドルダのスコップが切り結んだ瞬間、スコップの尖端から赤い光が伸び、そのまま抵抗なくブレードをすり抜けてグワッシュの胴体へ吸い込まれた。
「ビームスコップ……」
そうして、ひぃと気の抜けた声を上げて袈裟斬りにされたグワッシュの半身を、ドルダが流れる動作でシヴォーフのドグッシュへと蹴り飛ばす。
凍った血のこびり付いたコンソールの残骸がドグッシュのメインカメラに当たった。
シヴォーフがOSを再起動し、抱きつくように片腕で絡みついたグワッシュをやっとのことで振りほどくと、既に彼の仲間は一機しか残っていなかった。
彼がシールドを捨てて高周波ブレードを構えたときには、その一機のグワッシュもコックピットをビームスコップで串刺されていた。
ドルダは細腕を一振りしてはやにえを放り投げると、横合いから来るドグッシュの捨て身の突進を何でもないように回避した。
そうしてそのまま止めも刺さずMA形態に変形して、コロニーへ向けて飛び去って行った。
片腕を失ったドグッシュがたどり着いたとき、コロニー防衛隊は惨憺たる有様であった。
数多のMSの残骸が漂い、死に切れなかった幾人かのパイロットの声がオープン回線で聞えてくる。
ゆっくりとして、のん気にも感じられる断末魔は、コロニーエース・シヴォーフ・ラーグ中尉の精神を無力感と絶望とでいよいよ追い詰めていった。
青ざめた彼が黙々と指令室との通信を試みていると、オートにしてあったドグッシュの高性能カメラが最望遠でガンダムドルダの姿を映し出した。
ちょうど、装甲に傷一つないドルダが、防衛隊の最後の生き残りと思わしき作業用ポッドをスコップで殴り飛ばす場面である。
エナジー節約のためか、ビーム刃は生やしていなかった。音も無く装甲がひしゃげ、作業ポッドは運動エネルギー保存の法則に従ってコロニー・エルゴンの外壁へ叩きつけられた。その姿はコミカルで小気味良くさえあった。
しかしシヴォーフは笑ってばかりもいられなかった。ドルダが右腕の銃口を、コロニー・エルゴンに向けたのである。
「やめろ」
展開された砲口に、真紅の光が収束する。
「おい、やめろよ」
声が、震えていた。
「冗談は止せって」
309 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/25(水) 00:28:59 ID:???
光の帯がコロニーを貫き、線を描くように、二度三度と念入りに往復した。指令室のあるブロックは二回も塗りつぶされた様子であった。
か弱い女性などひとたまりもないであろう。一拍遅れて、ドルダがなぞった跡にそって連鎖的に爆発が起こり、継ぎ接ぎの外装ごと各ブロックがばらばらに崩れ始めた。
コロニー・エルゴンの崩壊の仕方は予想したより緩やかであった。ソーラーパネルが全部飛んで行ってしまうまでに十分もの時間を要していた。
シヴォーフは早くも退屈を感じ始めた。そんなとき、最後までメインシャフトにしがみ付いていた廃棄ブロックの一つから、真紅の光芒が閃いた。
そうしてそこから、何かが光の尾を引いて一直線にガンダムドルダへと向かって行った。
「なんだろう、あれ。流れ星かな? ううん、流れ星はもっと、ばぁーっとするもんな」
だらしなく口を半開いてその光景を眺めていると、突如指令用回線が繋がって、野太い男の声が耳に入った。
『こちらコロニー・プロネーシス指令室、ただ今コロニー・エルゴンより発進した機体は友軍機である。機体コードはGEY-002ガンダムドルチェである。繰り返す……』
「なんだよそりゃ、エルゴンはもう無いんだぜ。ふざけすぎだよ。いまさら出てきて、なにがガンダムドルチェだよ」
望遠レンズで捉えたガンダムドルチェは、ドルダの半身と同様に純白の機体であった。
ドルダが片輪の醜い怪物女だとすれば、全身が純白に包まれているドルチェは、穢れを知らぬ美しい乙女と形容できると、少しばかり頭が可笑しいことになり始めたシヴォーフは考えた。
人体の外観を損ねるスラスターは、かかとから生えた薄く広い翼型のそれと、肩より垂れる長いショールに似たそれに集中している。
肥え太ったドルダとは正反対で、痩せすぎの観があるほど繊細に本体が作られている。
蟷螂型の頭部は、あるべきところに収まっていると感じられるが、それには顔と呼べるものは無い。
人間の耳に当たる箇所から伸びた二つのアンテナと、絶え間なく点滅する大型のバイザーのみが表情を与えている。
武装は、左右の手のひらに仕込まれたビームサーベルを兼ねるビーム砲と、スカート状に腰へ接続されている八枚の有線式オールレンジ攻撃用兵器である。
310 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/25(水) 00:32:31 ID:???
二機のガンダムは互いにビームを撃ち合い、赤い光芒でコロニーの残骸に追い討ちを食らわせながら、螺旋の軌道を描いて徐々にドグッシュの目の届かぬところへ消えて行った。
「やられちゃえよ、ガンダム。どっちも、やられちゃえよ。この、ふざけやがって……」
シヴォーフはコンソールを操作して、エナジーの残量を確認した。
救助隊が来るまで酸素を維持するだけのエナジーは、ぎりぎり残っていた。
シヴォーフは二機のガンダムが消えた方角へ機体を向けて、殆どのエナジーをスラスターに送った。数十秒加速してからあとは慣性にまかせた。
ドグッシュがたどりついたのは、初めに仲間を殺されたのと同じ宙域であった。
軌道エレベータと地球を背にして、それぞれ満身創痍のガンダム二機が斬り合っている。
ドルダは右腕と左足、それから右足の膝から下が欠けていた。ドルチェには両足が残っていたが、どちらの翼も焼き切られ、そうして左肩から先がばっさりと無くなっていた。
ビームの刃は実体剣のそれとは違って鍔迫り合うことがない。
傍からは空振りばかりで不毛な殺陣を演じ続けているだけに見えるが、ドルダがスコップを振り回すたびにドルチェの身体は欠け、ドルチェがサーベルを一閃するごとにドルダの装甲は抉られて行く。
決着は近かった。そうして、傍観者の望み通りそれはすぐに訪れた。
サーベルをすり抜けて、ビームスコップがドルチェの腰の中心を貫いた。スコップを素通りして、ビームサーベルがドルダの左胸に突き刺さった。
二体のガンダムは同時に身震いして、ぐったりと互いの身体に垂れかかった。相打ちである。
311 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/25(水) 00:58:19 ID:???
まさにOOの後といった感じ
GJですよ。
312 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/25(水) 01:04:05 ID:???
ドグッシュの通信機がノイズを捉えた。
覗き見の愉悦に身を震わせていたシヴォーフは周波数をでたらめに弄くりまわし、ひとつこの人非人どもの声を傾聴してやろうと神経を高ぶらせた。
『……に……で……かったの?』
若い、女の声である。舌足らずの調子が、少女であるとも感じられた。
『……ああ、そ……いい……これで、いいんだ』
そのしゃがれた男の声を聞いて、シヴォーフは全ての事情――殆どが彼の身勝手な憶測であるが、大筋としては間違っていない――を了解した。
「ふざけんな、みんな死んだんだぞ。お前らのせいで、お前らが殺したんだぞ。悲劇の主役気取りで悦に浸ってんじゃねえ!
なんだよオイ、くだらねえ戦場のロマンスかよ。そんな二束三文の感傷のためにおれは、おれたちは殺されたってわけかよ!」
機能を停止した二機のガンダムが、引力に囚われて灰色の惑星の中へと溶け込んでいく映像を最後に、ドグッシュのコックピットの電源が落ちた。
同時に酸素の供給が途切れて、シヴォーフの意識も薄らいで行った。
――死者一万七千六百二十三名、行方不明者四万八千十六名、負傷者三百五十六名の犠牲を出したコロニー・エルゴン襲撃事件の公式記録はこれで全てである。
しかし、この事件の発端を探って行くならば、これより一年前に遡らなければならない。
新宇宙暦072年の火星における、アルフ・スメッグヘッド博士率いる火星開発公社の調査団とマスター・ベイト大佐率いる反宇宙連邦組織との間に発生した武力衝突の時期である。
313 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/25(水) 01:07:51 ID:???
規制でレスが開きましたが、以上です。
314 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/25(水) 16:01:33 ID:???
相変わらずの過疎w
>>313
GJ
ただ気になるとしたら、中尉ほどになったらそれなりに精神訓練受けてるはずだから主人公(?)の階級はもうちょい低くてもいいのでは?と思った
315 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/25(水) 20:06:16 ID:???
>>76の本編の人の設定で地球軍でオーバーテクノロジー=ガンダムの技術を解明・研究している組織の外伝を考えてみたがどうだろう?
316 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/25(水) 21:22:55 ID:???
http://imepita.jp/20080625/757740
ドグッシュ
股間部大型スラスターで高機動を誇るが、エナジー消費が激しい。
武装はシンプルで、高周波ブレードとカントーン・リニアライフルの二つ。
カントーン・リニアライフルは高出力モード時に銃身が延長する。
317 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/25(水) 22:41:38 ID:???
振動している高周波ブレードをカントーンの銃身に当てると威力増大ですね、わかります
318 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/26(木) 00:20:49 ID:???
www
319 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/26(木) 01:19:40 ID:???
モモの「わかりませーん」の破壊力は異常
320 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/26(木) 13:12:15 ID:???
hage
321 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/26(木) 15:00:23 ID:???
今スレに足りないのはキャラのメカの絵と設定だ
322 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/26(木) 15:29:00 ID:???
設定だけ増えても仕方なくない?
それを反映するストーリーがないと
323 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/26(木) 16:44:11 ID:???
ストーリーに活用されるためのネタ提供だよ
324 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/26(木) 16:55:58 ID:???
書き手以外の人が「設定だけ」すると足かせになる場合もあるし難しい所だねぇ。
ネタ提供、と言っても書いたからには何か反応欲しくなるのが人間のさがだから…。
325 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/26(木) 17:31:08 ID:BzYu+W6X
ここまでホワイトドール無し
326 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/26(木) 17:58:03 ID:???
なんだこのスレ崩壊したか。
327 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/26(木) 18:21:17 ID:???
>>324
言えてる。
一時期の過疎の打開になればとメカの設定を投下した者だが、結局絵描けないw
やっぱ自重したままにしとけばwwwよかったw
本編の人やらキャラデザメカデザの人がいないとこのスレは成り立たないな。
328 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/26(木) 19:29:11 ID:???
このスレは奇抜なガンダムの話をしつつ新作ガンダムドルダの話をするスレなんだ
329 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/26(木) 19:40:52 ID:???
じゃあそんな感じでいこう
330 :DAYC:2008/06/26(木) 20:28:30 ID:???
http://mcom.gree.jp/community/look/topic/4232022?gree_mobile=32467e10ccc24d8522aa30249ba44320
ちょい投下
本編の人こないかな?
331 :DAYC:2008/06/26(木) 20:29:29 ID:???
ごめんミスった
http://imepita.jp/20080626/736680
332 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/26(木) 21:15:31 ID:???
>>331
これは何?ドルチェかい?
333 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/27(金) 21:30:42 ID:???
もうこのスレは俺の物www
334 :雲呼丸:2008/06/27(金) 22:37:30 ID:???
いやいや、俺の物
335 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/28(土) 00:59:10 ID:???
銃を構える者達、独立派の一団。そして、対峙する調査隊。
一触即発。ただ、触れて暴発するのは、片方のみ。
クラン達は丸腰で、じりじりと近付いてくる者達に、ただ苦い顔をするしかなかった。
火星に降りる前は、随分と丁寧な対応をしてくれたことを、調査隊の皆が思い出す。
やはり独立を前には、地球側の人間には容赦はないのか。
「クラン……?」
緊迫する中、どこからか聞こえた、幼い声。
名を呼ばれたクランは、ゆっくりとドアの方に顔を向ける。
そこには、あの少女がいた。
「来ちゃ駄目! 逃げてッ!!」
クランが叫ぶ。
その時、銃を構えた一人の男が、引き金を引こうとしていた。
少女が、それに気付く。
「クラァァンッ!!」
危険を察したのか、顔を強張らせて声を上げる。
その時、それは起こった。
鳴り響く銃声を掻き消すように、床が激しく音を鳴らす。
クランの目の前を、何かが覆った。
「…………手?」
薄目を開いて見ると、そこには巨大な手があった。
あの人型の機体の手だ。
「助けたの? 私を……」
少女が声を上げたから、反応したのか。
少女が、クランを守ろうとしたのか。
クランは少女との距離をはかる。
336 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/28(土) 01:00:46 ID:???
独立派の者達は、突然のことに混乱している。
今ならいける。クランは確信した。
「シンシア、来なさい!」
クランの声に、少女はびくんと反応する。
少女は、すぐさま走り出した。
それに気付き、独立派の者達が一生に少女に向く。
しかし間一髪、少女はクランの胸に飛び込んだ。
「クラぁン……」
「よく頑張ったわ。シンシア」
少女を強く抱き締め、クランは言う。
怯えた表情をして、少女は顔を上げる。
「シンシアって、わたしの名前?」
「そう。貴女はシンシア……私の妹よ」
言うべきではなかったのかもしれない。
それは記憶が戻った時、彼女を傷付ける可能性もある。
否、それはただの都合のいい言い訳だと、クランは自嘲した。
(ただのエゴね。自分の妹を、この子に重ねて)
寂しそうに、少女を見つめるクラン。
そんなクランに向くて、少女は微笑みを浮かべた。
「お姉ちゃん」
「!!」
クランの目尻に、じわっと涙が滲む。
黙ったまま、クランは再び、少女を、シンシアを抱き締めた。
337 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/28(土) 01:05:15 ID:???
しかし、ずっと抱き合っているわけにはいかない。
クランはシンシアを離すと、迷いを振り払って、向き合う。
「シンシア、貴女はこれを、ドルダを動かせる?」
「ド、ル、ダ?」
「そう。この人の形をした、機械を」
先刻、シンシアに呼応するように自分を守ったこの機体。
記憶がないままでも、シンシアの意思があれば動くのではないか。
チラッと、先程の騒動で後方のグワライダーの陰に避難したギデオン達を見た。
クランに何か策があるのか察したのか、目があうとギデオンはしっかりと頷く。
クランは、決意を固める。
この状況を打破するには、これしかなかった。
「ステーションのスタッフだった方達に告げます!」
クランは声を上げる。
「今から私達はこの機体、ドルダを使ってエアロックを破壊します!!」
とんでもない発言に、独立派の者達は騒然となった。
それを確認し、クランは更に続ける。
「我々はこの機体と後方のMWを使って脱出します! 投げ出されたくないなら待避しなさい!」
怒鳴るようにそう言えば、独立派の者達は一目散に格納庫を出ていく。
格納庫のドアが閉まり、ロックがかかった。
これでしばらくは独立派の者達は入ってこない。
クランは大きく息を吐いて、胸を撫で下ろした。
「はったりがきいて良かった……」
「だが、そのはったりを真実にしなければ、我々は助からんぞ」
クランとシンシアの元に近寄ってきたギデオンが言った。
他の三人も一緒である。
338 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/28(土) 01:12:32 ID:???
「このグワライダーじゃ宇宙には出られねぇぞ」
気まずそうに、ヴァイスがそう告げる。
「ドルダに全員を乗せるのは……無理よね」
残念そうにクランは肩を落とした。
「ナギサカ君、そのドルダというのは?」
「この機体の通称です。いつまでも名無しのままでは呼び難いでしょう?」
ドルダという言葉の響きに違和感があるのか、ギデオンは首を傾げている。
「ほら。胸部にところどころ掠れている文字がありますよね。
掠れていない部分を繋げて読むと、ドルダになるんですよ」
クランは当たり前のことのように、そう説明した。
だがギデオンは、依然として納得のいかない表情のままま。
見解の相違か。また二人の意見が衝突してしまうのか。
「ネーミングセンスは別として、呼び名があることには賛成です」
助け舟を出したのは、ミランダだった。
「呼び名をどうするかは後回しにして、今はここを脱出することを考えませんか?」
的確な指摘に、クランとギデオンはしゅんとして黙る。
「隣の格納庫に輸送船があります。私なら、ゲートのロックを解除できます」
ミランダのその言葉には、自信が表れていた。
何かあるのだろうと、状況を理解していないシンシア以外の皆がミランダを注目する。
これで、ドルダもグワライダーも運べるだろう。
「ミランダちゃん、すごい!」
「マレーンさん、一応私の方が年上なんですが……」
「あははっ! でもこうなったら怖いものなしですよ!」
まるで自分の手柄のようにモモは強気だ。
339 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/28(土) 01:18:37 ID:???
高揚しているのか、モモはシンシアの手を握る。
「私モモ・マレーン。シンシアちゃん、よろしくね!」
「え。う、うん」
「モモちゃん、なんでシンシアの名前を?」
「だってさっきクランさんが大きな声で呼んでたじゃないですかぁ」
モモが、張り詰めていた空気を壊す。
呆れるギデオン達と、きょとんとするシンシア。
そして、暖かな眼差しを送るクラン。
調査隊として組まれたこの5人で任務をしたのは、これが初だ。
クランと面識があるのはヴァイス一人ぐらいで、
他の者とは、一回打ち合わせをしたきりだった。
時にはギデオンとクランのように考えが違うこともあるが、
それは互いに正しいと思った衝突であり、最終的には理解し合える。
ヴァイスの技師としての意見も、ミランダの分析も、頼りになる。
勿論、モモのムードメーカーと存在も欠かせない。
この隊で良かったと、クランは思った。
「他の人は後で紹介するわね。みんな、この子は私の妹のシンシアです」
クランは、そうギデオン達に目配せする。
4人は小さく頷き、理解を示した。
「ウォン、隣の格納庫へのゲートを早く開けてくれ。輸送機の操縦は俺がやる」
「ファーストネームで呼んで頂いて構いませんよ。ヴァイスさん」
ミランダはキツく見える表情を、優しく微笑ませる。
(この二人、良い雰囲気ね……)
ヴァイスの心を知ってか知らずか、クランはそんなことを思っていた。
340 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/28(土) 01:20:10 ID:???
そんなクランの服の袖を、シンシアが引っ張った。
気付いたクランが、顔を向ける。
「シンシア? どうかしたの?」
「頭、痛いの。何かが、近付いてきてる気がする……」
「なんですって……まさか」
クランは、シンシアが名もわからない少女だった時のことを思い出した。
人形のような冷たい目をして、遠く離れたローズの存在を感じ取った。
記憶を失っても、それは変わらないというのか。
「わたし、ドルダに乗らなきゃいけない気がする……」
「シンシア、でも貴女は、記憶を」
「何も覚えてないけど、でも体が反応するの」
あれに乗れ、と。
冷たい目になりかけている。
このままではまた、人形のような少女に戻ってしまう。
クランは、少女を抱き締めた。
「お願い。絶対に無理はしないで」
「クラン……?」
「貴女に何かあったら、私が絶対に助けに行く。例え生身で宇宙に出ることになっても」
もう二度と、“妹”を亡くしたくはなかった。
それが、正体もわからない、見ず知らずの少女でも。
エゴでも構わなかった。彼女の中では、それほどシンシアに愛おしさを感じていた。
「うんっ!」
シンシアは明るい声で、クランを元気付ける。
341 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/28(土) 01:24:21 ID:???
クランから離れると、シンシアはドルダの元へ走っていく。
「ドルダ……」
乗りたいと念じれば、コックピットハッチが開く。
ドルダに乗り込むシンシアを、クランは見つめ続けていた。
「ゲートが開いた。ナギサカ君、急ごう」
「……はい」
調査隊のメンバーは、足早に隣の格納へと向かう。
起動するドルダ。
「うぅっ……」
頭痛が走る。
痛みに耐えながら、シンシアはドルダを立ち上がらせた。
「ドルダ、クランと話がしたいの」
そう願えば、通信が開く。
「クラン……聞こえる?」
『この声、シンシアなの?』
「うん。これ、クラン達が乗ってる船の中でしょ? 話したいって願ったら、通じたの」
スピーカーから聴こえるクランの声に、シンシアは嬉しそうに笑った。
クラン達は輸送船に乗り込み、出発の準備を進めていた。
ミランダがゲートの時のように、エアロックにアクセスし、ハッチを開いた。
気圧が変わり、空気が宇宙に向けて吹き上げる。
ドルダも、宇宙へ飛び出した。
頭痛は治まりつつある。これなら操縦に問題はない。
(何も覚えてないはずなのに……なんでわかるの)
問題があるのは、機体ではなくシンシア自身なのか。
342 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/28(土) 01:27:56 ID:???
頭痛に代わり頭の中に浮かぶモヤモヤを振り払って、シンシアは前を向く。
シンシアの感じた気配は、すでにドルダも感知していた。
ステーションに接近する5機のモビルスーツ。
ニコラスの隊だった。
『スウィフトさん、ステーションから緊急通信です』
「こっちも受信した。未確認のMSか。まさか地球側も有してたとはな」
『ですが、MSの開発技術はまだ地球側にはないはず……』
「あのジジイ教授とは別の技術者かも知れねぇだろ。1機しかいねぇとこを見るとな」
だが気になるのは、それが駐留軍ではなく火星開発公社の火星調査隊、
つまり民間の者達がそのような機体を有しているということだった。
別のローズ部隊を一瞬にして消し去ったというビーム兵器。
疑問は深まる。
(だが、完全に破壊すれば、そんな疑問は些細なことだ)
例え威力が圧倒的だとしても、自分達の操縦技術が上回れば。
火星コロニー義勇軍が結成された際、MSパイロットには優れた操縦技術を持つ者が選ばれた。
先の駐留軍との戦闘でもそれは証明されている。
「各機、細心の注意を払えよ。敵の一挙一動を見逃すな」
それが、攻撃の合図だった。
それぞれが別方向に移動を開始する。
343 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/28(土) 01:31:57 ID:???
「散らばった?」
シンシアが呟く。
操縦の仕方は体が理解した。だが、戦うことに関してはどうなのだろう。
(わからない……!!)
思い出そうとしても、何も浮かばない。
そうこうしている間に、ローズとの距離は刻々と縮まっている。
射程圏内に到達し、ローズがライフルを発射した。
5つの方向からビームが襲い来る。
逃げ場所は、なかった。
「…………ヴェールよ、守れぇ!!」
咄嗟に、シンシアが叫ぶ。
そうすれば、肩部に発光が起こり、両翼のシールドが前部に展開した。
機体全体の表面に光を纏うドルダ。
5つのビームは、纏う光に打ち消される。
「なんだ、ビームを弾いた……!?」
ニコラスが驚きの声を上げる。
「ダン、どうなってる!?」
『機体表面に、こちらのビームと同等のエネルギーを展開。無効化されました!』
「無効化……? 駐留軍のカトンボを一撃で爆砕するビームを!?」
火星コロニー義勇軍にとって、ビーム兵器は絶対的な攻撃方法である。
MAはいとも簡単に墜とせても、目の前の存在には効かない。
自信が、打ち砕かれる。
「各機、レイピアを使え!」
344 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/28(土) 01:34:44 ID:???
装備されている剣が抜かれた。
ローズレイピアは、切断することも可能ではあるが、基本的に刺突する剣である。
主武装であるビームが効かないとなれば、ビームでない武器で戦うしかない。
ビームを防ぐメカニズムがわかっていれば、容易い。
「まさか剣まで防ぐわけじゃねぇよなァ!?」
叫び上げながら、ニコラスはレイピアを構えた。
「1機、凄い動く!」
それに反応するシンシア。
躱すにしても、5つの方向から来る攻撃に、対処しきれない。
ニコラスのローズが、前部に展開したままのシールドを突いた。
しかし、貫くことはできず、剣先が零れる。
「硬いな……ならァ!!」
「速いッ!」
即座に背後に回り込み、ローズが左腕を突く。
左腕が貫かれ、剣が抜かれた。
損傷箇所から電光が迸る。
「一時使用不能!? チィッ!」
対応できない苛立ちを露わにするシンシア。
『我々も突撃します!』
『3機でなら!』
『このシールドをも!』
3機のローズが、一斉にドルダに近付いた。
「馬鹿が! まとまるな!!」
ニコラスが声を荒げる。
345 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/28(土) 01:38:20 ID:???
3機のローズがレイピアを引く。
それと同時、ドルダもシールドを開いた。
「こォォォのォォェォ!!」
シンシアがありったけの声を、コックピットに撒き散らした。
腹部の発射口内で、光が収束する。
そして、放たれた。
眩しいばかりの光景。
静まれば、そこに3機のローズの姿はない。
「これが……クソがッ!!」
ドルダを睨む。
ニコラスのローズは再び、レイピアを構えた。
「2回も、やらせない!」
ガタガタと鈍く動く左腕。
マニピュレーターや関節は使用不能ではあるが、棒のように直立した腕がローズを薙ぐ。
「ぐうううう!!」
左腕の直撃を受け、ニコラスのローズが吹き飛ばされた。
『スウィフトさん!!』
「ダン、寄るな! 奴は!!」
忠告は、遅かった。
ドルダの右手が発光し、光の線が伸びた。
それが、ローズの両脚を分断する。
「ビームを固定した!? ダァンッ!!」
『だ、大丈夫です!』
「動けるか!?」
『脚部機能停止。制御系に不具合が……』
「救いようのねぇ馬鹿が……連れて帰る!」
ニコラスのローズはライフルを放ち、ドルダを牽制する。
そのまま損傷したドルダを抱えると、一気に宙域を離脱した。
346 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/28(土) 02:10:52 ID:???
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
荒く呼吸を繰り返す。
滲む汗。
シンシアは、頭痛の痛みに、頭を押さえた。
「わたしは……こんなことをしていたの?」
こんなに苦しくなることを。
自分はなんなのか。
苦痛の中で、浮かぶのはそれだけだった。
To Be Continued...
347 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/28(土) 02:18:43 ID:???
さるさん死ね
というわけで第2話はこれにて終了です
日を空けてしまってすいません
パラレル?ストーリーを書かれてる方お疲れ様です
ガンダムマルスの人、絵の投下楽しみです
バルド氏、DAYC氏、他絵師の方々の投下も楽しみにしています
SSももうちょっと増えればいいなぁw
本編にまた突っ込みどころがあれば、じゃんじゃん指摘してくださいませ
348 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/28(土) 02:23:18 ID:???
あとなんか一部シーンとかセリフ回しがエヴァっぽいのも謝っときますサーセンw
349 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/28(土) 13:15:14 ID:???
本編の人来てたw
GJです。
350 :設定考証:2008/06/28(土) 22:36:11 ID:eiJm5yXg
しばらく来れなかったけど外伝の人達も本編の人もGJ!
2つめの外伝は本当に奇抜だなあ。意匠もそうだけど、武器とか。
地球が滅んで人類は宇宙に逃げた設定もいい。
この手のは何故か他の惑星を探す話になってしまって、コロニーがでてこないんだよな。
こういう設定は自分も考えたことがある。ストーリーが思いつかなかったけどw
この設定は面倒な火星のテラフォーミングの理由付けにもなるしね。
静止軌道上のコロニーが田舎コロニーなのも適切だと思う。
大抵、コロニーはラグランジュ点にあるのがお約束なのに対して、
静止軌道上ってのはいかにも急ごしらえで低所得層向けに作りましたって感じがでてる。
シヴォーフの夢が月への移住だけど、宙に浮いてるコロニーに対して
地面のある月はやっぱり高級住宅地なのかな。とりあえず資源はある。
話の感じはいかにも外伝って感じがしてちょうどいいな。
本編がテレビアニメで子供もターゲットに入ってるのに対して、
小説版の外伝はもう少し年齢が高めの層をねらってるみたいな。
本編は主人公が乗らないという意外な展開に。
後で主人公が乗るようになるのか、はたまた他に主人公機が登場するのか。
351 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/29(日) 01:57:03 ID:???
個人的には乗り換え予想
別の主人公機きたらそれこそ主人公側最強になっちゃうからなあ
でもまあ希望じゃないから本編の人に任せますw
352 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/29(日) 12:40:31 ID:???
ttp://www.phoenix-ent.co.jp/works/img/AokiO.jpg
【ストーリー】
時に西暦2199年、太陽系内の惑星間ネットワークを築き繁栄を極めたかに見えた人類の前に、恐るべき地球外の
知的生体=アポカリプスが戦闘を仕掛けてきた。敗北につぐ敗北、地球人類の各惑星基地、コロニーが次々と破壊
されていく中、若き士官候補生たちも過酷な戦闘へと駆り出されていく。 特殊な能力を秘めた仕官候補生の
ジョナサンは、厳しい訓練を経て、冥王星の最前線へと送られる。そこは、明日なき機動兵士たちの愛憎渦巻く
世界でもあった。 アポカリプスの真の目的は何か、謎をはらんだまま、火星で太古に存在した太陽系第5惑星人の
遺跡が発見される…。壮大なスケールと意表をついたハードなSF設定。かつてないアクションとスペクタクルの
宇宙戦闘。 その裏側で繰り広げられる男たちの熱きドラマ。空前の描写で贈るボーイズラブアニメの決定版。
そこには未知の映像体験があなたを待ってます。
【スタッフ】
□ 企画総合プロデューサー:山木泰人
□ 監督:浦田保則
□ メカニックデザイン:小林 誠
□ 音楽:天野正道
□ 主題歌:石原慎一
□ 製作・提供:フェニックス・エンタテインメント
□ 発売:デジタルワークス株式会社
353 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/29(日) 13:20:25 ID:???
森川と子安の濃厚BLロボアニメですね
354 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/29(日) 21:54:48 ID:???
BLウニメでもロボのデザインはカコイイ
355 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/29(日) 23:22:39 ID:???
設定の被りが言いたいならナデシコだって被ってるぞ
356 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/30(月) 07:51:25 ID:???
つ『犬ガンダム』
357 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/30(月) 13:34:11 ID:???
age
358 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/30(月) 14:07:04 ID:???
>>356
あれはもう・・・w
359 :通常の名無しさんの3倍:2008/06/30(月) 18:44:39 ID:???
「シャア猫のこと (全1巻)」
360 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/01(火) 09:53:24 ID:sHa3duJI
age
361 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/01(火) 13:56:10 ID:???
wiki全然更新されないな
俺は携帯だから編集できないが
362 :DAYC:2008/07/01(火) 22:19:17 ID:???
人いネーナ
俺がドルダを最初に描いたときが一番活気立ってた気がする
363 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/01(火) 23:34:12 ID:???
何このスレwwwwwwwwwwww
ネーデルガンダムとか鬚とかで埋め尽くされてると思いきやwwwwwwwwwww
364 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/02(水) 00:01:40 ID:???
おめーだって顔大して出してねーだろ
365 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/02(水) 16:46:27 ID:???
火星と地球って通信届くんだっけ?
366 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/02(水) 19:50:09 ID:???
>>365
たぶん
367 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/02(水) 21:55:54 ID:???
投下します。さるさん対策で前後編に分けます。
368 :アナザードルダ 1/6:2008/07/02(水) 21:58:03 ID:???
ランチの自動扉が開いたときフィリア・シュードの気に止まったのは、区画内に悪臭が充満していることであった。
火星軌道と木星軌道の間には小惑星帯が存在し、そこには岩石をくりぬいて作られた安価な居住小惑星が無数にひしめき合っている。
軌道が不安定で行き来も不便であるから、これら簡易居住小惑星の地価は地球・火星間の小惑星やコロニーに比べて数千分の一である。
フィリアが訪れたのも、何々番小惑星と呼ばれる名も無き居住小惑星の一つであった。
農業区画から垂れ流されるリンと流れの停滞とで富栄養化現象が発生し、居住区画の川は緑色に濁っている。
鼻にさわる臭気は、そこと、天井の大型空調機から発せられるかび臭い空気が原因であると思われた。
路肩にぽつぽつ坐っている乞食も月の大都市で見られるそれが上品に思えるほど薄汚く、立ち並んだ粗末な作りの建物からは、酔っ払いの怒鳴り声や夫婦喧嘩と思われる金きり声が響いてくる。
フィリアは自分が通行人にじろじろ見られているのを感じた。
染みが無く糊の利いた服を着ているのがフィリアだけであったこともあるが、路地の物売りの中年女性たちはフィリアを見てひそひそ囁き合い、軽蔑の言葉を漏らしている。
労働者ふうの男が馴れ馴れしくフィリアの肩を抱いて、卑猥なことをささやきながら皺だらけの紙幣をフィリアの手に押し付けた。
見当違いも甚だしい。フィリアは男の手を払って歩き出した。
後ろから怒鳴り声が聞こえたが、フィリアがある事実を告げてしまうとすぐ静かになり、少し遅れて、先ほど囁き合っていた中年女性たちが大笑いするのが聞こえた。
フィリアは小さな下宿屋の前で立ち止まった。携帯端末を操作して住所が間違っていないのを確認し、それからインターフォンを押した。
しばらく経つと、中年と熟年の中間ほどの年齢と思わしき女主人が出てきて、胡散臭そうな目つきでフィリアを眺めた。
フィリアは女主人に事情を話しながら携帯端末に映る顔写真を見せたが、彼女はのらりくらりとフィリアの質問をはぐらかし、相変わらず疑りの目でフィリアを見ていた。
369 :アナザードルダ 2/6:2008/07/02(水) 21:59:46 ID:???
フィリアはこのままでは埒があかないと考えて、女主人の手に幾枚か紙幣を握らせた。
その途端に彼女は打ち解けたと見え、フィリアを家の中に通し、「デイヴィッド・リマー」と表札に書かれた部屋に案内した。
部屋の主は居なかったが、どんな人物がここに暮らしているのかは容易に想像できる有様であった。
寝台にはシーツもなく、あちこち綿のはみ出たマットが剥きだしになっている。作業着と黄ばんだ下着を一緒くたに丸めたのが枕代わりであるらしかった。
床には空き瓶と空き缶が散乱し、部屋に据付と思わしき冷蔵庫は開け放しで、乱暴に放り込まれたビール缶と、なぜかバスケットシューズが覗いて見えた。
その上、この居住区の劣悪な空気にようやく慣れ始めたフィリアでさえも顔をしかめる悪臭が部屋に篭っている。
諸悪の根源は冷蔵庫脇にぽつんと置かれている物体であった。緑色の黴に覆われたその物体をよく観察すると、フィリアも量販店でよく見かける乳製品のパッケージの切れ端が見えた。
雪の結晶を模したロゴの横に「アルバート」と書きなぐられ、その下のペンで乱暴に塗りつぶされた箇所の端に「祝! 生後六ヶ月!」と同じ筆跡で書いてある。フィリアは口元を押さえて部屋を出た。
女主人の話によれば、デイヴィッド・リマーはここ数ヶ月ずっと働いていないらしかった。
朝から晩まで酒場や賭場へ通い、そうでなければ部屋で何もせずに飲んだくれているそうである。
部屋の使い方が汚いやら家賃の支払いが三ヶ月も滞っているやらと、女主人がいらぬことまで愚痴り始めたので、フィリアは暇を告げて逃げるように下宿屋を立ち去った。
デイヴィッドが入り浸る界隈を訪ね歩いて、そのたびにいやらしい言葉を浴びせられながらもフィリアは根気強く彼を捜し続けた。
一見して余所者と判るフィリアがからかわれないでいるためには、会話を交わすごとに財布を軽くしなければならなかった。
フィリアは自分の風貌が相手を付け上がらせるのに一役買っていることも知っていた。
最下層のゴミ溜めでなく小奇麗な月都市でもそれは同様であり、金で解決できるだけここのほうがかえって円滑に進むくらいであった。
370 :アナザードルダ 3/6:2008/07/02(水) 22:01:17 ID:???
半月分の給料と四時間の時間を浪費してからようやくフィリアは目的の人物を見つけることが出来た。
薄汚い建物の前で、デイヴィッドは頬を押さえて蹲り、彼を殴ったと思わしき大男に向かって何やら懇願を繰り返していた。
時折、「ひひっ」と卑屈な笑い声を口の端から漏らしつつ、金銭上の問題について相手に慈悲を乞っていた。
デイヴィッドがあまりにもしつこくむしゃぶりつくせいか、大男は「いい加減にしろ」と怒鳴りながら彼の顔を蹴っ飛ばし、それきりすたすたと建物の中へ入って行った。
デイヴィッドは大男が居なくなったのを見ると、たどたどしい口調で扉を罵った。
「ここここの、おおれは知ってんだぞ。ててめえがカードでイカサマしてんのも、きゃ客に出すウォトカに水混ぜてんのも、ちちち畜生、う訴えてやる。おおれはうったえるぞ。ひひっ……」
フィリアは二年ぶりに再会した親友の姿から目を背けたくなった。
受ける印象の上ではすっかり様変わりして、以前のからりとした明るさが卑しさにすり返られている。
無精ひげに覆われた口元から発せられる声は、二年前と比べて相当に嗄れている。おそらく酒の中毒が原因であろう。
服装はみすぼらしく、染みと元の色とが区別できないほど汚れている。このまま帰ってしまおうかという考えがわき上がった。
しかしそのときには既にデイヴィッドが黄色く濁った目をフィリアに向けていた。
「ひひっ、ああんた、どっかで見たことあるような顔だな。まあ、いいさ。ととにかく、ちょっとばかし金貸してくんねえか。なあ、お嬢さん、いい、いいだろ。ほほんのちょっとでいいんだ」
デイヴィッドがそんなことを言いながら立ち上がり、千鳥足でフィリアに近づいてきたと思えば、彼はフィリアの肩に手を置いた途端いきなりその場にくずおれてしまった。
フィリアがあわてて抱き起こして声をかけてみたけれども、デイヴィッドは目を瞑ったまま青ざめた口をもごもごと動かすに過ぎなかった。
彼は酔いつぶれたらしかった。
371 :アナザードルダ 4/6:2008/07/02(水) 22:02:46 ID:???
デイヴィッド・リマーはシャワーの音で目を覚ました。
ここ一年ほど見ていない小奇麗な天井と、清潔な枕の滑らかな感触があるのを知り、すぐさまばっと音を立てて羽毛蒲団を捲った。
残念なことに、服は着ていた。代わり映えの無い着たきり雀である。
デイヴィッドはため息を吐き、醒めた頭で昨日の出来事を順々に思い出して行った。
いつもどおり正午に起き、大家の催促を逃れてパチンコ屋へ出かけた。
負けも勝ちもせず夜になって、行きつけのバーでカードに興じ、負けが込んできて、店主に追加の酒を頼んだら店から追い出された。
その後の記憶はぼやけて、なにやら悪態を付いていたかもしれず、通行人に絡んでいたかもしれない。
酔いが回りすぎて、デイヴィッドは自分が何を言ったのかさえ覚えていなかった。
シャワーの音が止んで一分ほど経つと、バスローブ姿の人間が、肩口ほどまでの長さのある髪をタオルで拭きながら浴室から出てきた。
白い肌とバスローブに包まれた細い腰が見えたとき、デイヴィッドは思わず足を組んでその人間の胸元に視線を集中させた。
「あ、起きたんだね」
その人物が聞き覚えのある声を発した途端にデイヴィッドの淡い期待は崩れ去った。
デイヴィッドは頭を抱えて、投げやりな口調で言った。
「お前だったのかよ、フィリア」
「どうしたのデイヴ? なんで怒ってるの?」
「うっせ、紛らわしい顔しやがって……」
女性と見まがうばかりの容貌であるけれども、フィリア・シュードは正真正銘の男性である。昔、実際にひん剥いて確認したこともある。
彼と言葉を交わすのは二年前に連邦軍を抜けて以来のことであったが、デイヴィッドは蒲団を被って目を瞑った。
期待していただけに幻滅も大きかったのである。
「お変わり無いようで何より。じゃ、お休み」
「ちょっと! 用件を聞くとかはしないの?」
「俺は疲れてるんだ。ほら、仕事とかでいろいろ」
「ニートが何言ってるんです! 親友がはるばる訪ねてきたというのに、その態度はどうかと思うよ!」
372 :アナザードルダ 5/6:2008/07/02(水) 22:03:46 ID:???
一時間ほど押し問答した後、眠気も醒めてしまったデイヴィッドは仕方なしにフィリアの用件に耳を傾けていた。
「火星へ?」
「うん。第七次調査団として派遣されるんだけれど、MSパイロットの枠が一つ空いているんだ」
「テラフォーミングが終了するのはまだ何百年も先だろ? 何でわざわざ調査団なんか送るんだよ?」
パイロット枠の件には触れず、デイヴィッドは思いついた疑問を口にする。
「途中経過報告が火星開発公社(ウチ)の名目だからね。そのために連邦から資金援助も受けてるし。まあ、ほかにも色々と事情がね。だからさ――」
「先回の調査は何年前なんだ?」
「……五十年前。ちょうど五十年周期だよ」
「で、フィリアはメカニックチーフで参加するわけか。しかしまあ、なんだ。お前も相当に出世したな。たしか引き抜かれたんだろう? 連邦にいたころより給料だって――」
「デイヴ! 四方山はもう止めようよ。僕は、君を誘いに来たんだ」
デイヴィッドは口を噤んだ。フィリアの様子が思いのほか真剣味を帯び始めてきたからである。
「君は、今のままの境遇で本当にいいの! 軍を抜けて、こんな辺境で夢も希望もない人生を続けるの! ここは空気も悪いし、人間だってみんな性根が薄汚い。
こんな、食べるために生きるのか生きるために食べるのか定まらないところにいれば、いつかきっと、デイヴは駄目になる!」
「もう充分駄目人間さ」
「だったら、これから立ち直ろうよ! 飲酒と放蕩と伊達気取りなんてすっぱり止めて、もっと、地に足付けて将来を考えることにしよう!」
「今の時代、地球は立ち入り禁止だぜ」
「だから、火星に行こうと言ってるんだよ! 火星には大地があるし、安定した職だってある!
調査団が解散した後のポストは僕が用意するし、君の借金だって、僕が立て替えるから、昔みたいに、僕と一緒にがんばろうよ!」
373 :アナザードルダ 6/6:2008/07/02(水) 22:05:13 ID:???
お前はなぜそうまでするんだ、という藪蛇を突っつくような言葉は飲み込んだ。デイヴィッドにはその理由を三つも四つも挙げることが出来るのである。
彼は他人の性情に深く立ち入りたくなかった。
真実であるとか、理想であるとかはぜいたく品で、物事を深く考えずにだらだらと上辺だけの人付き合いをしながら、残りの人生を死ぬほど退屈に暮らしたいと願っていた。
「返事は、早めにしないと駄目か?」
「出来れば、今日中にして。早くしないと、火星の位置が変わってシャトルじゃ行けなくなっちゃうから」
「わかったよ。行くよ。行けばいいんだろ。ったく、お前にはかなわねえよ、フィリア」
デイヴィッドは観念した。どのみち、下宿にも財布にも金が無い一文無しの彼には、強情を張るという選択肢は無いのである。
「デイヴ、ありがとう!」
フィリアはぱっと咲くような笑顔を見せて、心底嬉しげに今後の計画をあれこれと語り始めた。
374 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/02(水) 22:05:41 ID:???
ひとまず以上です。
375 :設定考証:2008/07/03(木) 00:07:45 ID:???
>>374
GJ!!
しっかし小惑星か。話の舞台ががんがん広がってくな。
鉱山できつい仕事を安い給料でやらされてる人々がいそうだとか、
いろいろ妄想が広がるぜ!
問題なのは自分が未だに面白そうな話を思いつかないことだw
>>365
通信は余裕でできる。
ただし電波が届くのに分単位で時間がかかるのが問題だな。
電話なら会話にならない。電子メールを使えば問題ないが。
インターネットで地球のサーバにアクセスするのとかも大変だろう。
376 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/03(木) 00:13:32 ID:???
後編投下します。
377 :アナザードルダ 1/7:2008/07/03(木) 00:16:15 ID:???
新宇宙暦072年現在では、火星のテラフォーミングが始められてから五百年が過ぎている。
それ用の機能遺伝子を持つ微生物や藻類を大量に放し、千年前後もの時間をかけて火星全体を地球と同じ生態系へ作り変えるという気の長い事業である。
しかし人間というものはせっかちな生き物であるから、千年後に約束された地上の楽園なんて悠長に待ってはいられない。
テラフォーミング開始から二百年後、微生物・藻類循環の安定と地球環境悪化に伴って、パラテラフォーミング、すなわち地表でのコロニー開発が始まった。
末期の地球における都市計画を流用して建造されたこれらのコロニーは、タワーとケーブルからなるフレームに透明な外壁パネルを被せて、その形状が三次元アーチを為していることからドームと呼ばれている。
脆弱な構造のため、ドームの寿命は居住小惑星とどっこいどっこいであるが、短時間で安価に作れて、それに加えてほとんど完全な自給自足が可能であるため、火星の各地には大小様々な規模のドームが点在している。
ドーム・テーレマコスは、火星で最も規模の大きいドームであり、また、マスドライバー施設を保有する唯一のドームでもある。
したがって、火星と宇宙を繋ぐスペースポートはこのドームにしか存在せず、絶えず観光客で賑わっている。
観光客の団体に混じって、男装した妙齢の女性と、浅黒い肌をした短髪の男がターミナルを歩いていた。
男が立ち止まって窓を眺めながら何かを喚いたり、火星の現地人を指差して何かを言ったりするたびに、女性のほうは男の手を引っ張ったり、あわてて男の口を塞いだりしている。
見るからにおのぼりさんである二人組は、ひとしきり周囲の冷ややかな視線を集めると、団体客と別れて、ドーム行きではなく連邦軍駐屯地行きのランチへと乗り込んだ。
同乗する軍人たちに詮索の目で見られているこの二人組は、フィリアと、人間らしい身なりになったデイヴィッドであった。
378 :アナザードルダ 2/7:2008/07/03(木) 00:17:56 ID:???
第七次調査団が使用する空中艦「カナリヤ」は、鯨に羽を付けたような恰好で、ずんぐりとしている。全幅が全長より二倍近い大きさである。
この艦は、元々ドーム・テーレマコスの所有であった大型輸送機を火星開発公社が買い取って、調査用に改造したものである。
ペイロードの約半分が研究室区画で占められているので、格納庫は狭く、護衛のMSは六機までしか搭載できない。
武装も貧弱で、黄色い船体に対空機銃がちらほら見える程度である。
カナリヤという名前は、旧時代、炭鉱において発生する毒ガスを検知するために、同名の鳥が坑道におろされたことに由来していた。
名付け親の人柄がしのばれる。
あわただしく、作業員が走り回り、物資の運搬作業が行われている中、デイヴィッドはフィリアに連れられて、カナリヤ内のMS格納庫を歩いていた。
「MSU-14ドグッシュ、まだ量産ラインが整っていない最新鋭機なんだけど、地上での性能試験用に二機提供してもらえたんだ。今の火星駐屯軍はほら、あれだからね……」
デイヴィッドはドグッシュの真新しい艶やかな塗装を眺めながら、説明しているフィリアを横目に、頭に浮かんだことをそのまま口に出した。
「あのリニアの銃口、催情的な粘膜部位を思わせる造形だな」
「ちょっと! 聞こえているんだぞ!」
と、開け放たれているドグッシュのコックピットから、鈴を転がすような声が聞こえた。それから間を置かずにパイロットスーツ姿の女が飛び出てくる。
「お前! いま何て言った!」
長い黒髪を後ろに纏めた女は、髪のしっぽをゆらゆら振りながら、赤い顔をして、吊り上がった目でデイヴィッドとフィリアを睨みつけていた。
あまりかかり合いたくない手合いである。デイヴィッドが返事をしないで黙っていると、
「私のドグッシュのカントーンを、あろうことか、あ、あろうことか……、……だなんて……」
言葉は尻窄まりになって、女は顔をいっそう赤らめて口を噤んでしまった。
けれども視線はより険しくなり、呪い殺さんばかりに二人を射抜いている。
狼狽するフィリアがひそひそ声で「謝ろうよ」とデイヴィッドに忠告するが、見たままを言って何が悪いというのがデイヴィッドの言い分である。
彼は腕を組み、あらぬところを向いて口笛を吹かし始めた。当然、例の女は立腹する。
そんなときである。もう一機のドグッシュから、ワイヤーを伝って、例の女と同じくパイロットスーツ姿の中年男が降りてきた。
379 :アナザードルダ 3/7:2008/07/03(木) 00:22:43 ID:???
「どうもどうも、お久しぶりでございますシュード主任。いやはや、火星の重力というものは、なかなかどうして、思いのほか強うございますね。
わたくしなんかこう、ふんわりしておるものですから、ふう、疲れて疲れて、無闇やたらと汗ばかり垂れ流しております。ええ」
でっぷりと太った中年男は、薄気味の悪いほどにこやかな表情で、しきりに汗を拭きながらフィリアにぺこぺこと頭を下げた。
年のころ四十前後と思われる。彼の脂ぎった団子鼻の上には、ちょんと乗せるような具合に小さな眼鏡がかかっている。
「おや? 貴方はもしや、以前シュード主任の仰った、デイヴィッド・リマー氏でいらっしゃいますか?
どうもはじめまして。わたくし、このドグッシュの専属パイロットを勤めさせていただきます、ゲイリー・ターレルと申します」
言いながら名刺を差し出される。デイヴィッドはゲイリー・ターレルの慇懃な物腰にまごついた。
名刺には、写真、生年月日、現在の職業から、学歴、離婚経験があることに至るまで、こと細かに個人情報が印刷されている。
デイヴィッドが名刺から目を離すと、ゲイリーは腰をかがめた恰好で右手を差し出していた。
にこにこ笑いで細まった目と視線がぶつかり、デイヴィッドはえたいの知れない寒気を覚えて思わず目を瞬いた。
ゲイリーはますます笑みを深めて、「さあ!」と言わんばかりに右手をデイヴィッドに差し出した。
「で、デイヴィッド・リマーだ。これからよろしくな。デイヴでいい」
握手のために右手と右手を触れ合わせた瞬間、遊んでいたゲイリーの左手が凄まじい速度でもって伸びてきてデイヴィッドの右手を包み込んだ。
そうして、ゲイリーは握った両手を上下に強く揺さぶり、過剰ともいえる親愛の情を表した。
「ええ、ええ! 末永くよろしくお願い申し上げます、デイヴさん」
握られた右手は、ぬめっていた。外気にさらすとひんやりして、たいへん不快であった。しかし本人の居る前で拭うわけにもいかない。
すると、いつの間にかドグッシュから降りていた先ほどの女がてくてくと歩み寄って来て、
「よろしく。ネルネ・ルネールネだ。さっきのけしからん言葉は、この私の寛大な心に免じて許してやろう……だが、次はないぞ」
と言って左手を素早く差し出した。「嫌な女だ」とデイヴィッドは思った。彼は右手で握手したかったのである。
380 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/03(木) 00:23:51 ID:???
アナザー乙!
全体的に荒廃した世界観が伝わってくるな
フィリアは女子視聴層をハァハァさせるためですね
381 :アナザードルダ 4/7:2008/07/03(木) 00:24:39 ID:???
二人の同僚への自己紹介を終えたデイヴィッドが次に案内されたのは、格納庫の一番奥に位置するハンガーであった。
遠目でも、その周囲に大掛かりな端末が幾つも据付けられているのが見えた。
最新鋭機ドグッシュと比較して、そこに格納されている機体は相当な特別待遇を受けていることがわかる。
「これは……」
デイヴィッドは覚えず感嘆の息を漏らした。その機体は、白を基調として、各部に黒と青と赤とで鮮やかに塗装が施されていた。
機体の形状においては、流線形のしなやかさと鋭角の強靭さがそれぞれ適切な箇所に配置されて、男女両性をそなえた調和をもたらしている。
肩アーマーから腕にかけては主に鋭角である。
胴体は、胸から腹の中心にかけての流線形部分と、ブロック状のわき腹部分と、入り組んでいる腰及びスカート部分で構成され、それぞれ色が分けられている。
下半身部分については、いい加減面倒臭いと感じたデイヴィッドはあまりよく観察しなかった。
装甲や間接部品の合いを見ても、大金を惜しみなく注ぎ込んでいることが判るからである。
二対のアンテナは、それぞれ鋭角と鈍角を形成し、その下に見えるのは、この種の機体に共通する鋭いツインアイであった。
「ガンダム?」
「そう。火星開発公社(ウチ)が独自に開発したガンダムタイプMS第一号機、GEY-001ガンダムムウシコス。
機体性能もさることながら、内蔵コンピュータの情報処理能力は、現存するガンダムタイプMS四十六機の中でもトップクラスで、最大九基のビーム兵装を同時に制御可能。
……今回の調査の要となる機体だよ。ところで、デイヴ。これから君には――」
「待てよ!」
デイヴィッドはフィリアの言葉を遮った。淡々と説明を続けている目の前の親友がたちまち憎らしくなり、気が苛立つのに任せて胸倉を掴み上げた。
382 :アナザードルダ 5/7:2008/07/03(木) 00:26:52 ID:???
デイヴィッドにとって、ガンダムというMSは好ましくない過去の出来事を思い起こさせる存在である。
守秘義務だのなんだの言って、今の今まで何も知らせずにいたフィリアに向かって、裏切り者めと叫んでやりたかった。
絶えず湧き上がる怒りを抑えながら、デイヴィッドは咽喉の奥から搾り出すように言った。
「お前は、俺に、こいつへ乗れというのか」
「……へ?」
持ち上げられて宙ぶらりんの状態にあるフィリアが素っ頓狂な声を上げた。その表情は悪意でも恐怖でもなく、鳩に豆鉄砲である。
フィリアが首を傾げるのに続いて、
「凡庸パイロットが何を勘違いしておる」
というしわがれ声が聞こえて、大型端末の陰から白衣姿の老人が現れた。
「デイヴィッド・リマー。連邦軍退役時の階級は中尉であるが、先日行った能力査定シミュレーションの結果は、
近接D、射撃D-、回避D+、状況判断C-、空間認識以下技能オールD、総合成績D、加えて軽度のアルコール中毒あり。
一般平均に産毛の生えた程度の技量しか持たん貴様なんぞに、わが社のムウシコスを任せるはずなかろうが」
いきなり出てきた初対面の年寄りに自分のパイロット適性を立て板に水のように空で語られて、デイヴィッドは羞恥を感ずる暇もなく、ぼんやり口を開けて立ち竦んだ。
握力が抜けたことで戒めから開放されたフィリアが、デイヴィッドの腹を肘で小突きながら、「この人、偉い人。偉い人だよ」と小さな声で言った。
デイヴィッドはそれでようやく我に返り、すかさず直立不動の体勢を取った。
「このたび、火星開発公社調査団MS隊に配属になりましたデイヴィッド・リマーであります! 本日はお日柄も良く、閣下におきましては――」
「ああ。いい、いい。邪魔にならんよう、向こうに行っとくれ」
デイヴィッドは、しっしっと手を払う御老人に敬礼すると、きびきびした動作で回れ右をし、元来た道を引き返した。
彼は長いものに巻かれたがる性質の人間であった。
383 :アナザードルダ 6/7:2008/07/03(木) 00:28:03 ID:???
ムウシコスの特待ハンガーから離れて、二機のドグッシュの整備風景を手持ち無沙汰にただ眺めながら煙草を吹かしていると、誰か声をかけてくる者がいた。
フィリアは先ほどの失態を弁解するために、今頃は例の偉い人に頭を上げ下げしているはずである。
デイヴィッドは壁に寄りかかったまま、声のした方向に顔を向けた。
パイロットスーツの胸元を肌蹴た金髪の青年が、にやにや笑いをしながら彼に近づいてくる。その丹精な顔つきは随分と若々しく、十代の少年とも思われた。
「アンタ、デイヴィッド・リマーだろ?」
「そうだが」
年下のくせに不躾である。デイヴィッドは先ほどのこともあって気を悪くした。
「俺がガンダムムウシコスの専属パイロット、ディック・オメコスキーだ。アンタはこれから、俺の指揮下に入るってわけ」
ガンダムパイロットを名乗る青年はデイヴィッドの肩にぽんと手を置いて続ける。
「仲良くしようぜ、微笑みデイヴ。それとも、ガンダムキラーか?」
昔の、恥しい通り名を持ち出されてデイヴィッドは眉を顰めた。
「アンタのことはなんでも知ってる。二年前にガンダムを落としたことも、ついこないだまでニートやってたことも。
データベースを閲覧させてもらったんだ。この調査団に参加できたのは、アンタがシュード主任の愛人だからなんだって?」
デイヴィッドは、こういう友達になりたくない輩に対してだんまりを決め込んだ。
これは彼自身がされて一番いやなことで、こうされると暖簾に腕押しを繰り返すうちに、段々と自分が言い負かされているような気持ちになるのである。
けれども、ディック・オメコスキーは怯むわけでもなく、自分で自分の言う皮肉に酔っている様子で、ますます機嫌を良くして喋り続けている。
384 :アナザードルダ 7/7:2008/07/03(木) 00:29:22 ID:???
「ガンダムキラーさん、どうやらアンタの機体が届いたみたいだぜ」
ディックが顎をしゃくって指した先では、シートに包まれたMSが運搬用リフトに乗ってハンガーへと運ばれていた。
「おやおや、こいつはまた……」
シートが剥ぎ取られたとき、デイヴィッドの口があんぐり開いて、咥えていた煙草が床に落ちた。
「三八式かよ。Dランのアンタにゃぴったりだな」
格納庫の明かりに照らされて、頼りない饅頭型の頭部と、太くて逞しいというよりも成人男性のビール太りを思わせる体躯があらわになる。
国防色の塗装が所々剥がれ落ちているその機体は、MSU-06グワッシュであった。
新宇宙暦038年に生産が開始されたことが、三八(さんぱち)式と愛称で呼ばれる所以である。
旧式の代名詞ともいえるMSで、新宇宙暦072年現在、コロニー外壁の清掃、鉱物資源の採掘、スペースデブリ除去作業、耕作、それから自爆テロ及び郊外コロニーの警備と、幅広い分野において現役で活躍している名機である。
そこに、「待った? デイヴ」なんて明るい調子で言いながら、フィリアがぱたぱたと小走りで戻ってくる。
デイヴィッドはさっそく掴みかかった。
「フィリア! この、おまっ、三八式って、どうして俺だけこんな棺桶なんだよ! しかもこいつは、払い下げじゃねえか!」
「だ、だって予算が下りなかったんだもの。な、なんなら、ドグッシュの予備パーツでカスタム化したげるから。だ、だから、は、はなし、くく、くび、し、しまってるって」
この日、火星開発公社第七次調査団には、デイヴィッド・リマーと、彼の専用機であるグワッシュが新たに加わった。
それから数日後に、空中艦カナリヤは総員百八名と四機のMSとを乗せて、ドーム・テーレマコス脇の駐屯地から火星の空へと飛び立って行ったのである。
385 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/03(木) 00:31:32 ID:???
以上です。
386 :DAYC:2008/07/03(木) 02:39:30 ID:???
>>385
乙
387 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/03(木) 17:27:12 ID:???
名前が面白いw
富野や00キャラに匹敵するネーミングだ
388 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/04(金) 00:01:53 ID:???
中尉好きだねw
389 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/04(金) 01:08:41 ID:???
オメコスキーage
390 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/04(金) 02:45:52 ID:WyByZWrF
今のところドルダのデザインって>>190しかない?
391 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/04(金) 05:21:08 ID:???
初投下
寝れなかったからボーっと好き勝手描いてみた。
ドルダの中身
http://wktk.vip2ch.com/vipper85430.jpg
ドルダ(可変だって設定完全無視してもうた)
http://wktk.vip2ch.com/vipper85432.jpg
ガーランド
http://wktk.vip2ch.com/vipper85433.jpg
ローズ
http://wktk.vip2ch.com/vipper85434.jpg
グワッシュ
http://wktk.vip2ch.com/vipper85435.jpg
設定完全無視でごめん。
392 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/04(金) 14:58:46 ID:???
>>391
確かドルダは可変機じゃなかったような気がする
大丈夫だろ
393 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/04(金) 14:59:13 ID:???
UMEEEEEEEEEEEEEE
394 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/04(金) 15:07:05 ID:???
>>391
何この公式設定画集並の絵
ドルダの中途半端な羽のあたりがグリープっぽく見える
395 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/04(金) 15:55:04 ID:???
もう>>391がメカデザでよくね?
396 :DAYC:2008/07/04(金) 16:16:06 ID:???
>>391
俺よりumeeeeeeeeee!!
397 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/04(金) 16:43:00 ID:???
GDボード
http://imepita.jp/20080704/596510
ドルダシステム発動時にガンダムドルダからはがれた“GDアーマー”が組み合わさった状態
ドルダはこれの上に乗ることでドル・デー並のスピードを得る
武装はコクピット部ビームキャノン
ちなみにドルダシステム解放時は地上を滑走できない(通常時はできる)為、空中戦はこれに乗っておこなう
コクピットが一応あるが通常無人で動く
398 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/04(金) 22:59:18 ID:???
ドルダ顔アップ
http://wktk.vip2ch.com/vipper85512.jpg
ドル・デー
http://wktk.vip2ch.com/vipper85513.jpg
思いついた感じで描いてみました。
みんなの設定が良すぎて描きやすいです。
あと敵メカがジオニックジオニックしてるのもなんだなーっと思って
ドルデーは自分なりに考えてみました。批判お願いします。
>>392
外伝とごっちゃになってました。安心しました。
>>394
そうですね、ちょっと羽が中途半端ですよね。
もう少し練り直してみます。
あと前描いたヤツももう一回描きたいと思ってます。
「ここをこうしたら」みたいなのがあったらご指摘お願いします。
たくさん描きたいです。
399 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/04(金) 23:03:05 ID:???
追記
>>397
これは斬新ですね!
パージした装甲が合体…燃えますな…
ちょっと描いてくる!!!
400 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/04(金) 23:04:40 ID:???
>>398
このノリでガンダムマルスのデザインをお願いしますw