401-500
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gundam_dollda
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401 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/04(金) 23:14:24 ID:???
>>400
ガンダムマルス把握です。
>>276の昔ドルダの存在を脅威に感じていた存在が開発していた、ドルダの地下遺跡を調査及びドルダの回収、破壊を目的とした機体
その為探索能力に長け、狙撃・離脱戦法を得意とする。
この設定で考えてみます。
今更ですがこういう企画めっちゃ好きです。楽しいですw
402 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/04(金) 23:15:07 ID:???
>>398
うーん
ドルデーはダサい……かな……
ドルダはかっこいいけど
403 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/04(金) 23:54:12 ID:???
>>401のおかげで盛り上がって参りましたw
>>402
そう?俺は好きだけど
404 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/05(土) 22:51:53 ID:???
こんばんわ401です。
>>402
ふむ、やっぱりもっと兵器っぽさを押し出した方がいいですかね。
個人的にはモノアイよりもF91やVの狐目みたいな感じが好きなので
モノアイにはしたくなかったもんで…
ドルダだけが奇抜なのか、全体的に奇抜なのか…
どっちなんでしょう?
405 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/06(日) 00:59:41 ID:???
>>404
個人的には全部奇抜なつもり、他の人がどうかは知らないが
406 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/06(日) 03:37:08 ID:???
保守
407 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/06(日) 04:45:59 ID:???
http://wktk.vip2ch.com/vipper85781.jpg
ドルダ描き直して見ました。
ヒロイックな感じになったかな。
408 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/06(日) 18:51:39 ID:???
>>407
通りすがりだが、かっこいいなw
ちょっとエルガイムっぽいというかガンダムMk.Ⅲっぽいね
だからって文句つけてるわけじゃないからね(´∀`)
409 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/06(日) 22:45:51 ID:???
再び過疎
410 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/07(月) 20:37:51 ID:???
そして浮上
411 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/08(火) 01:04:45 ID:???
age
412 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/08(火) 02:02:14 ID:???
より良いものを考えるのって難しいですよね。あんまり考えすぎると熱が覚めてしまうし。それでもこのスレ好きだから伸びて欲しいし難しいですね
413 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/08(火) 15:04:39 ID:???
age
414 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/08(火) 20:42:29 ID:???
>>407
ttp://wktk.vip2ch.com/vipper86193.jpg
ttp://wktk.vip2ch.com/vipper86194.jpg
描いてみた
415 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/08(火) 21:45:42 ID:???
>>414
UMEEEEEEEEEEE
416 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/09(水) 03:35:10 ID:???
>>414といい>>407といいこのスレには(誉め言葉的な意味で)馬鹿がおるな
いいぞ、もっとやれ!いや、やってくださいm(_ _)m
417 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/09(水) 03:56:15 ID:MlwKNTxg
>>160
> >>159
>
> ちょ、RX-78w
>
> 本編に出てたキャラを補完してみた。
>
> http://imepita.jp/20080618/672170
>
> 名前 宗谷陽光
> 年齢 39
> 生年月日 7月26日
> 血液型 A型
> 身長/体重 176cm/67kg
>
> http://imepita.jp/20080618/672680
>
> 名前 ブルックリン・ハミルトン
> 年齢 47
> 生年月日 1月31日
> 血液型 O型
> 身長/体重 187cm/122kg
>
418 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/09(水) 04:00:05 ID:???
ごめん……ageた上にミスって>>417書いちゃった…
419 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/09(水) 11:39:14 ID:???
マジレスすると、Zだろう。
420 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/09(水) 21:34:00 ID:???
>>419
Zってどの辺が奇抜かな
あのスイカバーは確かに奇抜だけど
421 :通常の名無しさんの三倍:2008/07/10(木) 00:00:31 ID:PYofEuNh
∀だろ
422 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/10(木) 02:46:57 ID:???
スペック的にビーム弾くような機能無いはずなのに何かオカルティックなオーラ出してビーム弾いたり
死人の魂呼び寄せて相手に幻影まで見せるようなMSは怖すぎます
423 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/10(木) 07:48:02 ID:???
age
424 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/10(木) 07:53:08 ID:GXp6A83z
http://ggundam.biz/0000004757.jpg
マンダラガンダムだろ
425 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/10(木) 19:46:02 ID:???
ttp://www.fanboy.com/images/russian-gundam-cosplay.jpg
426 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/10(木) 19:50:03 ID:???
ttp://i79.photobucket.com/albums/j133/zeta5/Non%20Franken/Cosplay/untitled3.jpg
427 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/11(金) 02:32:23 ID:???
良い意味で酷い画像w
428 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/11(金) 12:26:24 ID:???
ストフリもある意味奇抜だと思うが。
適当に何でもくっつけりゃいいってもんじゃないを
敢えて実際に形にしちゃう辺りが。
429 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/11(金) 17:54:24 ID:???
定期age
にしてもすっかり職人が消えちまったな
430 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/11(金) 18:09:10 ID:???
イージス、ブリッツ、フォビドゥン、レイダー、ジャスティス、プロヴィデンス
431 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/11(金) 20:17:17 ID:???
ttp://bonesmoses.org/images/anime_iowa/2004/costume4.jpg
432 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/12(土) 01:24:19 ID:???
誰か職人おいで
433 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/12(土) 02:33:14 ID:???
http://wktk.vip2ch.com/vipper86721.jpg
http://wktk.vip2ch.com/vipper86722.jpg
お久しぶりー。
ガンダムマルス案です。ネロEWAC+デュナメスのイメージです。
ライフルはZプラスCのパクリとかじゃないです。決して・・・!!
批評お願いします。
今日はHCM-Proのサンドロックの発売日でしたね。
ずっとコレで遊んでてアップ遅れました。
僕はサンドロックが2番目に好きなガンダムです。
1番は誰がなんと言おうとガンダムXです。異論は受け付けません。
http://wktk.vip2ch.com/vipper86723.jpg
あぁ、カッコイイ…よ、僕のサンドロック…
434 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/12(土) 02:36:35 ID:???
追記です。
マジレスすると僕はゼータ全般です。
ティターンズのメカデザは奇抜だと思います。
バイアランとかパラスアテネとか。あーいうの大好きです。
435 :DAYC:2008/07/12(土) 15:18:13 ID:???
>>433
なんか顔が凸機みたいでかっこいいね
436 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/12(土) 16:22:06 ID:???
リジェネレイト
437 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/12(土) 21:25:31 ID:???
/| , ,
|/__ ',
ヽ| l l│<一番奇抜なのはサイコロガンダム
┷┷┷
438 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 02:58:53 ID:???
1Doll-Device Archive No.03 デブリ
第1火星コロニー、自治区代表官邸。
陽光の元にも、ドルダの情報は届いていた。
相次いで掃討されるドール部隊。
交戦した2部隊の内、1部隊は壊滅。交戦とも呼べない一瞬の出来事だった。
そしてもう1つのニコラスの部隊では、残存したのは2機のみ。1機は中破している。
ドルダと戦うまで、火星コロニー義勇軍は無敵に近い状態だった。
か弱い小鳥を猟銃で撃ち殺す人間。
だがそんな人間を、慈悲もなく焼き尽くす破滅の天使。
正に、そういった形容が相応しいヒエラルキーが完成しつつあった。
「スウィフト君、報告を感謝する。デボン君も無事で何よりだ」
『いや、こっちも機体を損失してすまねぇ……パイロットもな』
『ダン・デボン。この身、火星コロニーが独立するその日まで捧げるつもりです!』
モニターに映るニコラスとダン。
軌道エレベータ宇宙ステーションから最も近い第26火星コロニーよりの通信である。
火星圏のコロニーはほとんどが義勇軍によって制圧された。
今現在、一部の駐留軍が小規模な抵抗を行っている。
439 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 03:02:45 ID:???
それも、鎮圧されるのは時間の問題だろう。
だが、軽視はできない。
地球からの増援。そして、いずれは地球に向けての侵攻を行う。
火星から出払った後に、再び息を吹き返されるのだけは避けなければならない。
「そのアンノウンMS。奴が妨げにならなければいいが」
『あの戦闘力は尋常じゃねぇ。ビーム兵器じゃ歯が立たん』
悔しそうに、ニコラスの声が震えた。
ドルダとの圧倒的な力の差。それを思い知る一戦であった。
「ビームが効かない、か。厄介な存在だな。実弾兵器の製造を進めなければか」
『MSが使うならそれなりのデカさにもなるか。俺達の規模の小ささを踏まえると……頭が下がるぜ』
『ビーム兵器はエネルギーを消費するだけですからね。作るのが楽な兵器ですよ』
「接収したイーグルクロウの武装を改修し、騙し騙し使っていくしかあるまい」
そう言うと、陽光は短く息を吐いた。
そんな彼をモニター越し見て、ニコラスは苦笑する。
陽光とニコラスに、大した面識はない。
火星コロニーの独立の中心的人物と、その支持者。それだけの関係である。
この独立戦争が始まる以前、まだ大規模な武力衝突もなく独立運動で抗議がなされていた頃、
独立戦争の開始に向け義勇軍発足の活動が水面下で進む中、陽光とニコラスは出会った。
その時の陽光は毅然とした態度で、指導者としての立場から弱みは決して見せなかった。
だが、今モニターに映るのは、時より疲れた表情を見せる、紛れもない人の子だった。
440 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 03:05:21 ID:???
安心すると同時、少しばかり心配になる。
一人張り詰めて、壊れてしまわないか。
今後、また大きなアクシデントがあった時、どうなるか。
一瞬だけ、ニコラスは眉を顰めた。
『で、あれは、アンノウンMSだっけか? チッ、言いづれぇ……』
『ガンダムじゃ!』
通信に割り込んで、老人の声が響いた。
モニター全体を占める皺だらけの顔。
「プロフェッサー・ティモールか。盗み聞きとは感心しないが」
『コールウェイティングはしたわい。ロストテクノロジーのアーカイブからログが見つかったぞ』
モニターに静止画の映像が現れる。
そこには、ドルダに似た顔の造形のモビルスーツが映し出されていた。
『似てるな……あれに。だがなんだ? ロストテクノロジーがなんとかって』
ロストテクノロジー。過去の超技術。
義勇軍でも、陽光と近しい者、そしてティモールしか知らない最重要機密。
地球の者達が運用するMAをいとも簡単に打ち負かしたMSの開発技術他、
様々な情報を引き出すことができる火星の衛星ダイモスにある遺跡。
それはかつて、現在の文明が発達するそれ以前に、
別の超高度文明が存在していたことの証だった。
その事実が陽光の口から語られる。
『マジかよ。なんだよそれは……』
『…………』
唖然となるニコラスと、絶句するダン。
441 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 03:09:43 ID:???
現在の地球人類の技術では、MSの開発は到底不可能に近い。
人型ロボットの構想が考え出されても、それを実現させるまでには至らなかった。
『それがこの、独立戦争を勝つための策だってわけか』
「そうだ。君達になら話せると思って明かしたが、このことは内密にしてもらいたい」
『あぁ。いや、言っても理解できんだろ。俺もまだあんた等が冗談言ってると思ってる』
苦笑いで、その笑みもぎこちない。
しかし、陽光達の顔を見れば、それが冗談などではないとわかる。
『あ、あの、地球圏圏にも、そのような遺跡はないのでしょうか』
そんな中、気になった疑問を、ダンが口にした。
『無いから、この世界なんだろうが』
「いや、意図して隠蔽している可能性もある。例えば月の国、とか」
机上の空論。
真偽は、この会話に参加している全員が知らない。
「プロフェッサー。この映像について、説明を頼む」
『ガンダム。数ある歴史の中の戦争で、常にその中心に立ち、勝利に導いてきた存在じゃ』
『……勝ち目ねーじゃん』
ニコラスの一言に、静まり返る室内。
『わ、儂は、ロストテクノロジーの情報をただ読んだだけじゃぞ!』
ティモールが狼狽えた。
別の歴史でも、圧倒的な強さを誇っていたということは変わらないらしい。
「だが、これは教訓となる。その、ガンダムを倒すな」
過去の超技術の流用がきくのなら、こちらも相応の兵器を創り出せばいい。
相応。否、凌駕する兵器を。
442 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 03:13:04 ID:???
「あれを持っているのが民間だというのも好都合だ」
火星に降りた後、火星の地でダイモスと同じような遺跡を見つけたのだろう。
そこで、ガンダムを発見した。
「だが調査には期限がある。遺跡を完全に把握する時間まではなかった」
ガンダム。それしか持ち帰れなかったのだろう。
「それに加えあの大火力。いずれは持て余す」
追っ手を振り払うためとはいえ、一般人がそうそう戦闘を続けられるはずもない。
人の心があるのなら、殺すことに躊躇いもあるだろう。
やむを得ず。それは何度も続かない。陽光はそう結論を出した。
自信に満ちた顔をしている陽光を見て、ニコラスは安心して小さく笑みを浮かべた。
『で、追撃隊の編成はいつだ? もちろん、俺は参加させてもらうがな』
『自分も、粉骨砕身で任務に当たりたいと思っています!』
「頼もしい。現在、マイケル・ミッチェル隊が先行している。それに合流してくれ」
隊の名を聞いて、ニコラスはあからさまに嫌な顔をする。
それには陽光も気付き、堅い表情を少し崩した。
「何か気になることでも。スウィフト君」
『いや、奴が好かねぇだけさ。子供でも必要とならば兵として使うべし』
『武装蜂起の直前に隊長格のパイロット達が集まった際の発言ですね』
ダンが言うように、そういったミーティングが過去に開かれたことがある。
数で劣る勢力にとって、少年兵を起用することは珍しくないことだ。
マイケル・ミッチェルという男は、そうパイロットの増強を訴え、波紋を呼んだ。
倫理観が違うパイロット達の中には、このことに明らかな嫌悪を示す者もいた。
443 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 03:46:22 ID:???
「私もその考えを、全肯定したわけではない」
現にマイケル・ミッチェルの隊には、10代のパイロットが数名所属している。
他にも、マイケルの意見に賛同した隊長格のパイロットの中には、
志願した子供をパイロットとして採用した者もいるという。
「独立した後の火星圏の未来・
444 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 03:47:36 ID:???
>>443訂正
「私もその考えを、全肯定したわけではない」
現にマイケル・ミッチェルの隊には、10代のパイロットが数名所属している。
他にも、マイケルの意見に賛同した隊長格のパイロットの中には、
志願した子供をパイロットとして採用した者もいるという。
「独立した後の火星圏の未来を創るのは、私達ではない」
キッとした、真剣な瞳で、ニコラスを見る。
「我々は多くの者を殺す。だがその荷を、子供達にまで背負わせる必要はないのだ」
『ヘッ……馬鹿だぜ、あんた』
同じような志の瞳が、陽光を見つめ返す。
『出来る限りはしてみせるさ。それがガキ共の押し付けになろうともな』
『自分も、お供いたしますっ!』
「すまない。任せた」
『任された! 通信終了ッ!!』
モニターから、ニコラスとダンの顔が消える。
部下達の中から、涙を堪える声が聞こえた。
「プロフェッサー・ティモール。貴殿にまで火星独立の理想を押し付けるつもりはないが」
『わかっておるわい。儂は儂の造りたい物を造るだけじゃて。実弾兵器の件も引き受けても良いぞ』
「助かる」
一言に感謝を込めて、陽光は言った。
ティモールは「ゲゲッ」と気味悪く笑い、通信を切った。
445 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 03:49:28 ID:???
静かになった室内で、陽光はまた息を吐いた。
だが、それは疲れからくる溜息などではない。
決意を新たにするための、区切りだった。
輸送船のハッチが開き、ドルダが収容される。
格納庫では、クランとモモがシンシアの帰りを待っていた。
ドルダが停止し、・f
446 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 03:50:50 ID:???
>>445訂正
静かになった室内で、陽光はまた息を吐いた。
だが、それは疲れからくる溜息などではない。
決意を新たにするための、区切りだった。
輸送船のハッチが開き、ドルダが収容される。
格納庫では、クランとモモがシンシアの帰りを待っていた。
ドルダが停止し、解放されたコックピットからシンシアが出てくる。
「シンシアっ!」
シンシアが降りてきた途端、クランは飛び出していた。
シンシアを抱き締めると、存在していることを確かめるように顔に触れる。
「な、なに? お姉ちゃん、くすぐったいよ」
「ごめんなさい。でも、心配で。無事で良かったわ」
困っているシンシアに、クランは安堵した笑みを見せる。
「クランさん、あれに乗って飛び出そうとしたんですよぉ。
自分が閉所、暗所、その中で揺れを感じることの恐怖症だって忘れて」
「モモちゃん! 恥ずかしいんだからやめてっ!」
ニヤニヤして言うモモに、クランは顔を紅潮させて抗議した。
そんなクランの腕の中で、シンシアが疑問に思う。
「あれ?」
最初は、グワライダーのことだと思った。
しかし、庫内を見回してみると、それが間違いだということに気付く。
447 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 03:52:36 ID:???
格納庫には、グワライダーだけではなく、3機のローズもあったのだ。
先程まで交戦していたのと同一の機種だけに、一瞬身震いするシンシア。
それを腕の中で感じ、クランは「大丈夫よ」と背中をさすった。
「シンシア君は無事のようだな」
操縦室にいたギデオン達がやってくる。
「操縦は?」
「オートパイロットに切り替えた。デブリ宙域に近付いたら知らせが入る」
「デブリ宙域?」
「そこを突き切れば、距離的には公社の支部がある29コロニーが近い」
「デブリ宙域での航行経験はおありで?」
「これで3回目だ」
迷いなく、ギデオンは頼もしげに言ってみせた。
それに対して、反論せずに、クランは笑う。
二人の間には、信頼が生まれていた。
そんな二人を、むすっとした顔で睨む男が一人。
「ヴァイスさん、どうかされました?」
「なんでもねーよ」
ミランダの心配も、虫の居所が悪いのか素っ気ない。
「それよりもこの人型だ。独立派がこさえた機体だよな」
話の流れを変えるように、大きめ声でヴァイスが言う。
皆が、ローズに目を向けた。
448 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 04:59:57 ID:???
人が乗る戦闘兵器といえばMAが普通だと思っていたクラン達にとっては、
この人型の機体、即ちMSは大変に珍しく、興味深い代物であった。
技師のヴァイスだけだけではなく、ギデオンも厳しい視線をローズに送っている。
「気に入らんな」
そして、重い口調でそう吐き捨てた。
ギデオンの表情は、とても穏やかとは言えなかった。
「ど、どうしたんスか?」
女性陣から押され、恐る恐るヴァイスが尋ねる。
ギラッとした目がヴァイスを見た。
「この機体にはロマンがない!!」
「ロ、ロマン?」
「人型の魅せる脚線美は認めよう! だがこの機体はなっとらん!」
拳を握り、そして震わせ、ギデオンは叫んだ。
「だから私はこの機体を見た時ピンときた。改造してしまおうと! ナギサカ君!」
「はい!?」
「船外活動の許可を!」
「きょ、許可します」
凄まれて、思わず言われた通りに許可してしまった。
3機のローズに対して不気味な笑い声を上げるギデオンに、
他の5人はどうすることもできず一歩退いて傍観するしかない。
「ぬはははは! そうだな。私が改造を施した暁には、機体名をグワッシュとしよう!」
449 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 05:01:13 ID:???
その後、火星圏駐留軍にも一般化するMS。
そのMSの原型となる機体グワッシュ。
そのグワッシュを私用に何体も所有し、各地のジャンク屋からパーツを選りすぐり、
カスタムしたものが注目され、ギデオンは後にマスターグワッシュという異名を持つようになる。
しかしこれは、本筋より逸脱した別の物語だが。
「ねぇ、お姉ちゃん」
「なぁに?」
騒いでいるギデオンから離れて、シンシアはクランに声をかけた。
「わたし、何も思い出せないでしょう?」
「え、えぇ。そうね……」
「わたしは何と戦ってるの? わたし何も知らないから。世界のこととか」
「何もわからず、戦わせてごめんなさい。貴女にも、知る権利はあるわね」
クランは膝をつき、シンシアと目線を同じにする。
そして、柔らかい表情で、微笑みかけた。
だがその表情もすぐに、険しいものに変わる。
「貴女がドルダで戦ったのは、恐らくは火星コロニーの独立派。
此処、火星圏では、厳しい食料自給制限から独立運動が盛んだった」
その結果が、現在の状況である。
武装蜂起。MSによる戦闘行為。
コロニー、軌道エレベータ宇宙ステーションなどの施設占拠。
火星圏は戦渦の中であった。
450 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 05:03:23 ID:???
「私達は軍人じゃないわ。火星の調査に来ていたの。そこで、ドルダを見つけて」
「それでわたしが、乗った?」
「……そう」
「そうなんだ……何も思い出せないや」
当然である。
クランが少女に与えたシンシアという名前は、偽り。
少女はクランの妹ではないし、調査隊の一員でもない。
火星の地下施設で眠っていた、正体不明の存在だ。
(けれど、この子には知る権利がある。この子を連れてきたのは、私なのだから)
心の中でそう呟いて、クランは話を続けた。
「地球圏では地球圏連合加盟各国が中心となって世界を引っ張っているわ」
だが、一枚岩ではない。
「ロシアでは連邦の再編成に伴って、離脱対象の地域と内戦状態。
イギリスと中央・南アメリカ連邦は、旧カナダとの国境を巡って
運動家達が火星コロニーの独立派のように暴動を起こしているわ。
中東では宗教関係で過激な原理主義者達のテロ行為が激化している」
並べられる数々の不穏な事柄に、シンシアの顔が曇った。
そんなシンシアに、クランは先程の柔らかい、暖かな笑みを見せて、安心させる。
「でも悪いことばかりじゃないわ。ESEANU(エセアヌ)や月の国、コロニーなんかは割と治安が良いのよ」
火星圏のコロニーとは違ってね。と、苦笑しつつクランはそう付け足した。
451 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 05:05:39 ID:???
「おい。国名ずらずら並べただけじゃ、この子なんもわかんねぇだろ」
クランの説明を聞いていたヴァイスがきつい口調で指摘する。
「コロニーなんかはテロリズム・イヤーのせいでピリピリしてやがるし」
「そうね……」
左腕を押さえながら、クランは小さな声を吐いた。
「ちょっとぉ! ヴァイスさん少しは考えてくださいよぉ!」
「いいのよ。モモちゃん」
「よくないです。クランさんはトラウマを抱えるんです! 少しは気を使ってください!」
珍しく、モモが真剣な表情で怒声を上げた。
医療担当としての行動か、はたまた仲間を想ってか。或いはそのどちらもなのか。
モモはこう見えて、職務には真っ当な人間である。
クランや他の者は、初めて顔を合わせたその日に、モモのカウンセリングを受けた。
元々は怪我などの治療が専門で、世界情勢が不安定なこの時世、
様々な分野に対応すべく精神面のケアも力を入れるのだと語った。
彼女の不思議と明るく、前向きな雰囲気に、クランは自身の過去を話したのかも知れない。
「もう平気よ。ありがとう」
クランはそう微笑んで、立ち上がる。
「シンシアもごめんね。わからない話しちゃって」
「うぅん」
クランのことは心配であったが、クランが笑いかけるので、シンシアも笑い返す。
「ミランダさん、悪いんだけど地球圏の最近の状況をもっと詳しく説明してあげて」
話を振られて、びくっとミランダが反応した。
452 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 05:08:04 ID:???
その顔は、少々強張り、困惑している。
「すみません。私、地理は余り詳しくなくて……」
こめかみから頬にかけて、汗が垂れる。
いつも尖った口調のミランダだったが、この時だけは緊張したような、声に張りがなかった。
「そう。じゃあ仕方ないわ。おいおい、ね」
%
453 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 05:09:13 ID:???
>>452訂正
その顔は、少々強張り、困惑している。
「すみません。私、地理は余り詳しくなくて……」
こめかみから頬にかけて、汗が垂れる。
いつも尖った口調のミランダだったが、この時だけは緊張したような、声に張りがなかった。
「そう。じゃあ仕方ないわ。おいおい、ね」
「うん。いつでもいいよ。だってわたしとお姉ちゃんは姉妹なんだから、いつでも一緒でしょ?」
無邪気に、笑う。
そんな笑みに、クランは胸が痛んだ。
だが、それを隠して、シンシアの頭を撫でた。
こうして、この話題は終了した。
何か煮え切らないまま、未だにローズの前で不気味に笑っているギデオンの姿があった。
しばらくして、アラートが鳴る。
デブリ宙域への侵入を示すサインだ。
ギデオン、ヴァイス、ミランダが操縦席に向かう。
「隊長、熱源です」
ミランダが報告する。
「熱源? 熱を持ったものでもあるのか……まさか、独立派か?」
「いや、そうじゃないっぽいスよ」
振り向いたギデオンに向けて、ヴァイスが指をさした。
目視できる距離に、小型の作業艇が見える。
「一般用の作業艇に見えるが、独立派ではないのか?」
「ジャンク屋全般が使ってるデブリ回収用の作業艇っスね」
自信を持って、ヴァイスが言う。
ジャンク屋が独立派ではないという確信はなかったが、
ジャンク屋が攻撃してくる可能性は低いとヴァイスは判断した。
454 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 05:11:26 ID:???
ジャンク屋は人類の生活圏のどこにでも存在し、
人種や民族を越えて互いに協力し合い活動している。
時には利益に目が眩み小競り合いを起こすこともあるが、
基本的にジャンク屋は皆、争いを好まないのである。
「俺も昔はジャンク屋だったからわかるんスよ。奴等とは今も交流ありますからね」
だから、自信があった。
「そうか。なら、私もそれを信じてみよう」
力強く、ギデオンが頷く。
「……それに、上手くすればグワッシュへ改造できるパーツが手に入るかも知れないしな」
「そ、そこっスか……」
「ぬはははは……トロニクス君、ついてきたまえ。ウォン君、後は任せた!」
「え? あ、はい。了解しました」
呆然とギデオンを見送るミランダ。
ヴァイスはトボトボとギデオンについていくしかなかった。
船内にあったノーマルスーツを着て、二人は作業艇へと向かう。
反対するかと思われたクランも、ギデオンの豹変ぶりに半ば諦めて何も言わず送り出した。
ギデオンとヴァイスが、作業艇に接近する。
救難信号は出されていなかった。もしや搭乗者はもう生存していないのか。
ハッチを開けようと、ギデオンが合図を送る。
それにヴァイスが了解したと返し、ハッチのロック解除を試みる。
455 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 05:14:35 ID:???
しかし次の瞬間、作業艇が二人を振り払うかのように動き始めた。
間一髪、二人は巻き込まれずに済む。
「なんなんだよ! お前等は!?」
「お兄ちゃん……」
突然動いた作業艇。
その中には、少年と少女の二人がいた。
456 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 05:17:03 ID:???
お久しぶりの本編の人です
なにやら通信状態が悪く、文が途中で切れる異常事態が発生してしまいました
無駄にレスを消費してしまいすいません
例のごとく前半のみです
最近SSを書いてる時間がなくだいぶ遅れてしまいました
では後半は、また後日
457 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 14:42:24 ID:???
ageといてageよう
458 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 18:18:38 ID:pJJGwR9U
age
459 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/14(月) 22:57:18 ID:???
☆ゅ
460 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/14(月) 23:46:32 ID:RHM63AOC
あえて言おう、ageであると!
奇抜なデザインって言ったら種系MS、特に無駄に羽が生えてるMSとか(特に自由、運命)
461 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/15(火) 00:40:56 ID:???
>>433、本編の人
久しぶり!GJ
462 :アナザードルダ 1/10:2008/07/15(火) 19:32:21 ID:???
ドーム・テーレマコスは、マリネリス峡谷中央に位置している。マリネリス峡谷というのは長さ四千キロメートルにも及ぶ火星最大の峡谷である。
マリネリス峡谷の西側から北へ登って行くと、火山地帯のタルシス地方に至る。
そこには太陽系最大の火山オリンポス山をはじめとした多くの死火山が分布しており、調査団のカナリヤが手始めに降りた地域はこのタルシス地方であった。
火星のテラフォーミングは完全ではなく、日中の空は薄い大気に浮かぶ塵によって黄昏時のように赤々と染まっている。
赤い日に照らされて、一機のMSが錆色の地面を掘り返し、慎重な動作でもって土の塊を傍らのコンテナに納めていた。
そのMSはコンテナの蓋を閉じると、体を解すように肩を一回転させて、上空にメインカメラを向けながら手に持ったスコップを地面に突き立てた。
「しかしまあ、辛気臭くなる空だな。火星人どもが陰気なのも頷ける」
『無意味な動作です。真面目に作業を行って下さい。次は深度二十メートル』
間髪入れず通信が帰ってきた。デイヴィッドは「はい、はい」と答えつつスコップの先を引っ掛けて空のコンテナを近くに寄せた。
『先ほども言いましたが、コンテナを乱暴に扱わないで下さい。不純物が混入します』
冷淡な女の声を聞き流して再び掘り始めたが、ある深度まで来ると、浅い所の土が崩れ落ちて新しく掘った部分が埋まってしまった。
『初めからやり直しです。そこから移動して、指定する別のポイントを掘ってください』
「だーもー、めんどくせぇ! 別にこのくらい構わんだろうが」
『駄目です。いいですか、正確な調査結果を得るためには――』
「はいはいはいはい! 調査結果云々調査結果云々ですね。わかったよ、やり直せばいいんだろやり直せば! ……畜生、かったりぃ」
グワッシュが乱暴にスラスターを吹かして穴から飛び出ると、その付近には同じように失敗した穴ぼこが幾つも空いていた。
指定されたポイントに着いたとき、出し抜けに三機のMSが轟音を立ててグワッシュの頭上を掠めて行った。
低空飛行の反動で塵が舞い上がり、グワッシュのメインカメラに張り付いた。
塵が収まるのを待ってカメラ脇の洗浄装置を起動し、視界が元に戻ると、もはや例の三機は豆粒ほどの大きさである。
463 :アナザードルダ 2/10:2008/07/15(火) 19:35:17 ID:???
カメラを最大望遠にして見ると、ガンダムムウシコスを先頭に、フライトユニットを装備した二機のドグッシュが追い縋っている様子であった。
高い旋回性能を持つムウシコスの滑らかな機動に付いて行くために、二機のグワッシュは右へ左へと忙しく大回りに飛んでいる。
「いい気なもんだ。こっちは健気に土を耕してるっていうのによ。……ところでヴァニナ嬢」
『気安くファーストネームで呼ばないで下さい。不愉快です』
「失敬、ヴァニナ・ヴァニニ女史。なあ、俺たち調査団の主な任務は、火星の地質やら何やらを調べることだろう」
『そうですが、何か?』
「だったらどうしてあの連中は優雅にお空を飛び回っているんだ? 新型の性能テストなんぞ後でいくらでも出来る。下っ端の俺一人に任せるよりか効率がいいと思うんだがな」
ヴァニナからの返答は無かった。
「フィリアも、スメッグヘッドとかいう偉い爺さんも向こうに付きっ切りだ。火星くんだりまでやってきてMS弄りたぁどういう了見だ?
やたらにいる研究員連中だってそうだ。こうして糞真面目に頑張ってるのは、あんたのほかに十人も居ないだろうが」
『機密事項です』
「そんなところは軍も民間も変わらんな。俺は堅気の職にありつきたいってのに……」
『口ばかり動かしていないで、手も動かして下さい。これ以上無駄口を叩いているなら、人事の方に報告させていただきますよ』
デイヴィッドはわざとらしいため息を吐いて作業を再開した。
いくらか掘り進んだとき、頭上にMSが静止しているのをセンサーが感知した。
ガンダムムウシコスであった。僚機のドグッシュを振り切ってしまったのか一機きりである。
ムウシコスは、グワッシュが頭を上げたことに気が付くと、ビームライフルの銃口をグワッシュに向けて、数回ほど打ち抜くような動作をした。
それから軽やかに宙返りをして見せ、遅れてやって来たドグッシュ二機から逃げるように飛び去って行った。
デイヴィッドはグワッシュの足元に荒々しくスコップを突き刺した。
「あの糞餓鬼、挑発してやがる」
『今ので土が崩れました。やり直しです。もっと慎重に行って下さい』
結局、作業を終えたのは空が青ばんでくる時刻であった。
464 :アナザードルダ 2/10:2008/07/15(火) 19:37:50 ID:???
パイロット用のミーティングルームで、フィリアがネルネとゲイリーを相手に今後の打ち合わせをしていると、自動扉が開いて、憔悴し切った様子のデイヴィッドが入って来た。
パイロットスーツから着替えもしないで、片手にヘルメットをぶら下げている。おそらくはつい先ほどまで働かされていたのであろう。
フィリアは真っ先に労いの言葉をかけた。
「デイヴ、おつかれさま」
デイヴィッドは長いすにどっかと腰を下ろして、持っていたヘルメットを叩きつけんばかりにテーブルに投げた。
「おい、フィリア。あの堅物、どうにかならんのか」
心底憎たらしげに吐き出された言葉に、フィリアは力ない笑いを浮かべた。
「ヴァニニ女史はなんというか、完璧主義者みたいなところがあるからね。ところで、グワッシュの具合はどうだった? 一応、マニピュレータの精度を調整し直してみたんだけれど」
「殴り合い仕様のブッシュのほうがまだマシだ。調査用ってんなら、卵摘める程度にはしてくれよ。そうでもないとあの女の御注文にはとても付いていけん」
ブッシュというのは現在の連邦軍主力MSの名である。
「無茶言わないでよ……」
「こっちの方が無茶なんだよ。三十六箇所だぜ、三十六箇所も穴堀やらされたんだぜ。賽の河原の赤ん坊じゃあるまいし」
「いやはや、それは災難でしたね」とゲイリーが言った。彼は、上がタンクトップで下がジャージという軽装であったが、汗が止まらないのか引切り無しに首筋や脇下をタオルで拭っている。
その姿はお世辞にも清涼味があるとはいえない。けれども長袖の三人は、数日間彼と顔をつき合わせているうちにそれに慣れてしまい、不快を感じることも無くなっていた。
「けっ、ぶんぶん飛んでただけの野郎がぬけぬけ言いやがる」
「なにカリカリしてるんだ? ポテチ食べるか?」
ネルネがそう言いながら、先ほどから食べていたポテトチップスの袋をデイヴィッドに差し出した。
手を汚さないためか、袋を持っていないほうの手には箸が握られている。
「いらん」
「なんだと! 木星圏産の一等品だぞ!」
「同情するなら機体をくれ。こちらとしてはあんたのドグッシュの寄贈をお勧めする」
「断る! あれは私専用のMSだ!」
やいのやいのと騒ぎ始めたデイヴィッドとネルネを横目に、フィリアは額を手で覆ったが、彼の内心は悪くない心地であった。
465 :アナザードルダ 4/10:2008/07/15(火) 19:41:05 ID:???
この調査団に集められたパイロットはデイヴィッドを含めて、皆灰汁の強い性格をしている。加えて、軍隊ではなく民間企業のMS隊である。
専門のカウンセラーも、実戦経験のある監督者もいない。階級も存在せず、支給される機体など待遇差もある。
本来ならば連邦軍にオブザーバーの派遣を要請するのであるが、とある特殊な事情のためにそれも出来ない。
名目上の指揮官はいるとはいえ、パイロット間の人間関係が険悪になることは容易に予想できた。
それが思いのほか上手くやってくれている。軽口を叩き合うこの三人なら戦闘で命を預けあう段となっても大丈夫であろう。
フィリア個人としては、少々妬ましく感じる点もあるが、一乗組員からしてみれば好ましい傾向であった。しかし、一つだけ懸念が残っていた。
「どこのどいつが痴話喧嘩してると思えば、Dランのおっさんじゃないか」
ガンダムパイロットのディック・オメコスキーである。名目上の指揮官である彼は、ミーティングルームに入るなり挑発的に口を切った。
いきり立っていたネルネも、彼女を宥めていたゲイリーも、途端に静かになってしまう。
「おっさんじゃない。お兄さんだ」
「二十六にもなりゃ、十分立派なおっさんだ。もうじきビール腹の仲間入りだぜ。健康のためにスカッシュをやる老いぼれの一人になるんだぜ。
アンタもそのうち、ミネラルウォーターを飲んでカロリーに詳しくなるんだろ? あと四年で、ほとんどジジイだ。三十だ。
もし俺だったら、あんまりにも気が滅入って首を吊るね」
「首吊りの足を引っ張るような御意見、ありがとさん」
デイヴィッドはディックと視線を合わせずにひらひらと手を振り、怒る様子を見せなかった。
かえって彼ではなくゲイリーのほうが恐縮して、止め処なく流れる汗を忙しく拭いている。
ディックの言ったことに関して思い当たるどころではない。ことごとく図星であったろう。
見かねたフィリアは、彼を嗜めようかと思ったが、彼の身分を省みてそれを断念した。ガンダムパイロットは『特別』である。
彼はある意味で、一部門の責任者でしかないフィリアよりも、第七次調査団総司令であり火星開発公社重役でもあるアルフ・スメッグヘッド博士に近い地位にいる。
自分の今後のキャリアと、いずれデイヴィッドに与えるポストのために、フィリアは当たり障りのない苦笑を浮かべるばかりであった。
466 :アナザードルダ 5/10:2008/07/15(火) 19:43:33 ID:???
「ところで、微笑みデイヴさんよ。昼間、アンタが無様に地べた這いずり回ってるとき、ロックオンしてやったのがわかったか? 十回だ。あれが戦場なら、アンタは十回撃墜されてる」
「さすがはガンダムとAランクのエリートさんだ。その調子で実戦でも活躍してくれると助かる」
「三八式でも弾除けにはなるね。いざってときはアンタを盾にさせてもらう。心の準備を忘れんな、Dラン。……シュード主任、コイツはアルフの爺さんからだ」
ディックはひとしきりデイヴィッドを挑発すると、首だけをフィリアに振り向けて、テーブルの上にメモリースティックを放り投げた。
「こいつは、俺のガンダム、のテスト結果だ。明日までに整理しておけって、爺さんが言ってたぜ」
俺のガンダム、という言葉を強調して言った。そうしてディックは三人のパイロット仲間たちを見回し、はんっ、と見下すように鼻を鳴らしてからミーティングルームを出て行った。
乱暴に扱われたメモリースティックを携帯端末に差して、その中のデータを確認すると、フィリアの顔がさっと青ざめた。
「うそ。これ、ぜんぶ今晩中にやるの? みんなごめん! ちょっと時間がなくなっちゃったから、君たちの機体の件については明日にさせてもらうよ!」
デイヴィッドたちが返事をする間もなく、フィリアはスリッパをぱたぱたと鳴らして立って行った。
立て続けに中心人物に去られてしまったパイロット三人は、やるべき事も特に無いので、食堂が開く時間が来るまで、下らない四方山話をして過ごした。
彼らの話題はグワッシュとドグッシュの性能差の話に始まり、ディックの悪口、さらには火星の食べ物の美味しさについての話へと転がり、
ディックの悪口に行き、さらにはムウシコスのデザインの酷評、それからディックの悪口と、ひどく盛り上がった。
主に気炎を揚げていたのは、意外にもゲイリーであった。
デイヴィッドとネルネが言うのを憚る事柄でさえも、彼はにこやかに、回りくどい言葉を用いてすらすらと吐き出した。相当な鬱憤がたまっていたのであろう。
467 :アナザードルダ 6/10:2008/07/15(火) 19:46:50 ID:???
ゲイリーの正しい人付き合いに関しての演説が終わり、三人の間にお開きのけはいが感じられるころになって、デイヴィッドは降って沸いたように切り出してみた。
「俺たちはいつまで建前の調査なんかやらされるんだろうな。わざわざ火星に来たのは、土を耕すためじゃないってのによ」
「お前はなにを言っているんだ? 私たちの任務は、火星の調査とMSの性能テストだぞ?」
ネルネが首を傾げた様子を見るに、彼女もデイヴィッドと同じく何も知らされていないようである。
「はぁ? まさか知らなかったのか? ろくに働きもしない研究員連中を見れば、本当の目的が別にあるってことぐらいわかるだろうに」
ネルネはばかにされたと思ったのか、むっとして、デイヴィッドではなくゲイリーに食って掛かった。
「ゲイリー! もしや前も知っているというのか!」
「わ、わたくしは何も知らされておりませんよ」
ゲイリーは途方に暮れたような目つきでデイヴィッドを見やった。
その慌てた様子から、彼もネルネと同様であるとも思われたが、嘘を付けない性根のネルネとは違ってゲイリーの心中は見かけでは判断出来ない。
「教えろ、デイヴィッド! お前が知っているのに私が知らないなんて、不公平だ!」
「不公平も何も、知らんなら知らんでいい。一応守秘義務ってもんがあるからな。まあ、どっちにしろ近いうちにあんたたちも解るさ。
開発公社がガンダムなんて代物を持ち出したくらいだ。MSパイロットにも無関係な話じゃない」
そうは言ったものの、ネルネの追求は止まなかった。デイヴィッドの部屋にまで押しかけてくる勢いである。
彼は無い袖を振るわけにもいかず、相手をするたびに辟易していたが、ネルネが自室にやって来た際には、下宿にあった黴から培養したアルバート二世が役立った。
デイヴィッドが黒い塊を突きつけると、彼女は悲鳴を上げて逃げ出して行ったのである。
案の定、それから数日過ぎた晩、パイロットたちは調査団の派遣された本当の目的を知る事が出来た。
468 :アナザードルダ 7/10:2008/07/15(火) 19:49:23 ID:???
タルシス地方での調査を終えたカナリヤは真っ直ぐ北へ向かってテンペ地方で調査を行い、それからまた北上して、北極周辺の地域であるヴァスティアス・ボレアリスでの調査を開始した。
太古には海であったと考えられているその地域であるが、調査もそこそこに、アルフ博士の指示で各機体の整備・改修が行われ、これまで研究室に篭って音沙汰の無かった研究員たちが、慌しく艦内を駆け回り始めた。
ビームライフル一挺しか装備していなかったガンダムムウシコスには、もう一挺のビームライフルに、二振りのビームサーベル、大型のロングレンジビームキャノン、
二基のビームディフェンスロッド、それから有線式オールレンジ攻撃兵装「キュイエール」が四基と、完全武装を施された。
二機のドグッシュもパイロットの適正に合わせて、砲戦仕様と中距離戦仕様に換装され、それぞれ脚部に陸戦用ホバーユニット「ズック」が装備された。
グワッシュはといえば、追加装甲が施され、その肥満と脆弱な機動性能を補うためか、高出力スラスターと追加バッテリーを兼ねた大型バックパックを背負わされている。
各部ハードポイントには、長短二本の高周波スコップと、各種グレネードに、ドグッシュの予備パーツを流用した対人バルカン砲二門、これまたドグッシュから拝借したシールドが接続されている。
「こいつは酷え……」
変わり果てたグワッシュを見て、デイヴィッドは思わず歎息を漏らした。重装備のうえ、近接戦仕様である。
ただでさえ性能で劣るというのに、彼に死ねと言っているとしか思えない。
「おい、フィリア。お前は俺にカミカゼでもさせるつもりか。まさか自爆装置なんて仕込んでないだろうな」
「僕が君の機体にそんなことするわけないでしょ。このグワッシュの装備は、他の機体と違って戦闘を想定してないんだよ。耐久性と可動時間を追及した結果、こんなになっちゃったんだ」
「何のために」
「そのことについては、これからスメッグヘッド博士が説明してくれるよ」
フィリアと別れてミーティングルームに向かうと、同じように呼び出されたネルネとゲイリーが坐って待っていた。
ゲイリーは相変わらず気味悪い笑みを浮かべ、ネルネはわけも無く得意そうな視線をデイヴィッドに送っている。
ディックが来る様子もなく、平パイロット三人だけがアルフ博士の話を聞くようであった。
469 :アナザードルダ 8/10:2008/07/15(火) 19:51:14 ID:???
「カナリヤはこれより北極冠のドーム・オデュッセイア跡地へと赴く。デイヴィッド・リマー、貴様は単独でオデュッセイア内へ進入してもらう。
ネルネ・ルネールネとゲイリー・ターレルの二名は、カナリヤ護衛のため付近で待機せよ。任務の詳細は現場で知らせる。質問は受け付けん。以上である」
アルフ博士は唐突に現れて、デイヴィッドの敬礼も待たずにすぐさま命令を述べると、言うべきことは言ったぞといわんばかりに、そそくさとミーティングルームを出て行ってしまった。説明にもならない説明である。
ネルネなどはしたりげに思案顔で幾度も頷いて見せていたが、実際のところ、博士の言葉はまったくといって理解していない。
しばらく経って、ゲイリーがいつもより余分に汗を搾り出しながら言った。
「考えてみれば、これは、妙なことになりましたね。はっきりと説明していただけなかったのが、せめてもの救いでしょうか……」
「あの爺さんは老い先が短いぶん、時間に吝嗇だってのもあるんだろうさ」
「なんだ? 二人とも、変な顔だぞ?」
ネルネの能天気な言葉に、デイヴィッドとゲイリーは頭を抱えた。
「ネルネ、ドーム・オデュッセイアがどういうところなのか知ってるか?」
「知らない」
「火星で一番初めに建造されたドームですよ。今からちょうど五百年前に、テラフォーミングの基点となったドームでもございます。学校で習いませんでしたか?」
「習っても覚えていない。何せ私は歴史科目で2以上の成績をとったことがないからな」
とネルネは薄い胸を張って言った。
「威張るな、ばか」
「なんだと! 私はばかじゃない! 勉強が出来ても頭が良いとは限らないって、母さんが言ってた! ばかって言うやつこそばかだ! このばーか!」
デイヴィッドは「この女、張り倒してやろうか」と思ったが、どうせ碌なことにならないと考えて、説明を続けてくれとゲイリーに目配せした。
「それでですね、ドーム・オデュッセイアは建造されてから百年後、つまりは四百年前にですね、事故を起こして閉鎖されたんですよ。
わたくしたちがこれから調査に向かうということが、どういう意味を持つのかお分かりになっていただけたでしょうか?」
「なるほど、遺跡探検ということか? ハニワとか、ドグウとか、大昔のビデオディスクに映っているみたいに、みんなで掘り出すんだな?」
わくわくと浮き足立った様子である。男二人は、深い深いため息を吐いた。
470 :アナザードルダ 9/10:2008/07/15(火) 19:53:54 ID:???
「あのな、お嬢ちゃん。ここは火星だ。石斧を持って駈けずり回っていた時代の地球人が飛んで来れたと思うか?」
「なら、グワッシュの初期型でも捜すのか?」
「時代を飛ばしすぎだ。四百年前ってのは、宇宙戦国時代、いわゆる『黒い時代』のまっただ中だ。『ブラックテクノロジー』――曲がりなりにも現代人なら、この単語に聞き覚えくらいあるはずだ」
「あ! それなら知ってる。よいこになろうブラックテクノロジー規制法だ。旧宇宙暦415年に制定された法律」
ブラックテクノロジーについては、ネルネも良く覚えていた。
宇宙史の授業はその時代になると、途端に習う事柄が少なくなり、試験に出るのはブラックテクノロジー規制法に関する問題しかない。
学生時代のネルネは、及第するためにその短い試験範囲を必死になって暗記したのであった。
旧宇宙暦415年、前述の通り地球を滅ぼすまでに争い、戦争上手になりすぎて疲弊した人類は、同じ失敗を繰り返さぬために、極端な技術進歩を抑制する技術規制法を制定した。
原子力、遺伝子操作、完全自律型人工知能、一部の精神医学、再生医学、青少年へ悪影響を及ぼす娯楽媒体等、一つ一つを挙げていけば優に万を超えるほど多岐に亘る技術研究及び所持が規制された。
研究所は閉鎖され、データや造られたものなども全て破棄された。つまりは宇宙時代の焚書である。
人類という種の永存を理念として掲げられたこれら宇宙連邦憲法は、ひとくくりに『ブラックテクノロジー規制法』と呼ばれている。
ブラックテクノロジーという呼び名は、その技術が用いられていた『黒い時代』に由来している。
たとえ絶え間なしに続いた戦争が無かったとしても、その時代は人類にとってあまり思い出したくない時代であろう。
471 :アナザードルダ 10/10:2008/07/15(火) 19:56:31 ID:???
旧時代の駄菓子のような毛色の人間が闊歩し、臓器製造施設では豚と人間の合いの子が生産され、愛玩用の人造人間が人権を叫び、めいめい勝手に自らこそ優良種であると主張した。
そればかりでなく、ある日の午後、たまたま職場から早く帰宅した夫は、彼の曾々々お祖父さんが裸の妻の上に乗っている現場を目撃した。
夥しい延命治療と冷凍睡眠によって、彼の御先祖さまは二百歳近くになっても二十代の若さを保っていた。
寝取られた夫の辛さ遣る瀬無さは相当のものであったろう。おぞましいというよりも、情けない時代である。
羞恥は嫌悪に勝る。それゆえに、一般に出回る歴史書からはその時代の記述が除かれている。
世を挙げてのきちがい騒ぎであり、誰しも忘れ去りたい事実であるから、捏造だと叫んで口から泡を飛ばす者は少ない。
「つまり、ドーム・オデュッセイアには、ブラックテクノロジーが眠っているってことか?」
「ああ」
「私たちは、そこの調査に行くのか?」
「そうです」
「いけないこと、なんだよな?」
「当たり前だ」
「連邦法に照らし合わせれば、銃殺刑は免れませんね」
「だったら!」
と言って、ネルネは両手でテーブルを叩いた。彼女の目は早くも涙ぐんでいる。
「別に連邦に見つかっても俺たちが銃殺されるってわけじゃない。せいぜい職を失う程度さ」
「ふぇ?」
「わたくしたちは、何も知らないんですよ。アルフ博士も仰ったでしょう? 質問は受付けないと。
わたくしたちはただ、お上の命令にしたがってMSを動かしているにすぎません」
「責任は全てあの偉い爺さんが被るってわけだ」
どうせ見つかりっこねえがな、とデイヴィッドは続けようとしたが、止した。
連邦からの至れり尽くせりの援助や、現在の火星の情勢など、確信するに足る理由が幾つか挙げられるが、滅多なことは口に出すものではない。
ネルネは少々元気を取り戻して、合間合間で空元気に転びつつも、生まれ変わったドグッシュの自慢話をぺちゃくちゃと続けている。
ゲイリーは相変わらず脂ぎった顔を拭っている。デイヴィッドは、ゲイリーと目が合ったときに、彼が自分と同じような意味のことを考えているのがわかった。
それから数秒後に、ゲイリーと目と目で分かり合ってしまった自分という人間がとことん嫌いになった。
472 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/16(水) 09:03:41 ID:???
保守
473 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/17(木) 01:36:27 ID:???
age
474 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/17(木) 22:11:44 ID:???
>>471
GJ!人物描写が読んでておもしろいな。
475 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/18(金) 00:52:39 ID:???
保守
476 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/19(土) 18:17:28 ID:???
保守
477 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/20(日) 20:32:28 ID:???
保守
478 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/21(月) 05:36:35 ID:???
保守
479 :アナザードルダ1/13:2008/07/21(月) 18:18:58 ID:???
錆色の大地から一転して、火星の北極冠は地球のそれと同じく辺り一面が万年雪で覆われている。
異なるのは表層がドライアイスであるということと、あちこちに塵や氷や砂などの混合物の層からなる深さ五百メートルほどの断崖があるということである。
ぐるりを見渡せば、その断崖は渦巻き状に広がっているのがわかる。
渦巻きの中心に一見して人の手によるものと判るすり鉢状の窪みがあった。直径百キロメートル、深さ二千メートルほどの窪みである。
いかなる作用によるものか、その窪みはドライアイスの層に覆われていない。
底の方は地面が剥きだしで、黒い土の上に薄い円筒型の建造物がちょこんと顔を出している。
調査団のカナリヤはその建造物に寄り添うように船体を横たえていた。
空は分厚い雲で灰色く染まり、昼間にもかかわらず辺りはほの暗かった。灰のような雪が音も無く降っている。
デイヴィッドは雪というものを実際に見るのは初めてであった。耳鳴りがするほど静かである。
静寂は不思議にも白い綿が淡々と舞い落ちる光景と調和し、あたかも時が静止しているような感覚を抱かせる。
その感覚は神秘的ともいえるが、デイヴィッドはどちらかといえば薄気味の悪さを感じていた。
途中まで随伴していたガンダムムウシコスは、入り口を塞いでいた瓦礫をビームであらかた一掃すると憎まれ口を叩いてカナリヤに戻ってしまった。
その帰り際に、ムウシコスは自身から伸びた細いケーブルをグワッシュに繋いだ。
カナリヤからの通信用ケーブルは既にぶら下げているので、どうもただの命綱とは違うようである。
今回の作戦でオペレーターを務めるフィリアに尋ねても、小難しい単語ではぐらかされるばかりで埒が明かない。
デイヴィッドはドーム・オデュッセイア内部へグワッシュを進ませながら、皮肉を込めて投げやりな口調で言った。
「カナリヤ一号、行きまーす」
『デイヴ、真面目にやってよ。スメッグヘッド博士だってモニターなさっていらっしゃるんだよ』
フィリアの声に続いて新たにウインドウが開いて、しかめ面のアルフ博士の顔が現れた。
「失礼致しました」デイヴィッドは反射的に謝った。博士はデイヴィッドの顔を睨みつけているきりで何も言わなかったが、デイヴィッドはことさら真剣な顔をしてみせた。
480 :アナザードルダ 2/13:2008/07/21(月) 18:21:22 ID:???
通路は広く、MSが楽々通れるゆとりがあった。MSは四百年前にも存在したのであろう。
ところどころに細かい瓦礫が散らばっているが、時代を感じさせるようなものは見あたらず、壁の構造も、旧式コロニーで見られるものと同種であると思われた。
通路は緩やかな下り坂であるので、先へ進むほど暗くなって行く。数百メートルほど進むと壁が途切れて、ちょっとした広間と思わしき空間に出た。
「磁気が強いみたいだ。レーダーが利かない」
『ちょっと待っててね』
機体パラメータ画面上に、毛色の違うウインドウが目まぐるしく重なったり消えたりを繰り返した後、インストール完了の文字が出る。
『ライトを最大にして、ぐるっと、辺りを見回してみて』
新たなサブウインドウが開かれて、光を当てた部分から順におそろしく精巧な三次元マップが表示されて行く。
気温やら気圧やら、やたらと事細かな情報も各地点に書いてある。そのサブウインドウの枠にあるG-MOUSIKOSという文字が目に留まった。
「オートマッピングか」
『凄いでしょ? えっと……ここから、ここのポイントに向かってちょうだい』
「まるで餓鬼の遊びだな」
デイヴィッドは三次元マップに表示された最適な進行ルートと目的地点のマーカーを見て思わず呟いた。
親切なのは結構であるけれども、グワッシュの劣悪なマッピング性能に慣れていた彼としては妙な気分であった。
暗闇の中へ恐る恐るグワッシュの足を運びながら、デイヴィッドはふと思いついた疑問を口にした。
「なあ、今のグワッシュならビーム使えるんじゃないか?」
『阿呆な事を抜かしておらんで、さっさと進め』
冗談の判らない上官である。デイヴィッドは後ろ髪を引かれる思いで口を閉じた。
481 :アナザードルダ 3/13:2008/07/21(月) 18:22:56 ID:???
目標ポイントにたどり着いて、指示されるままにその場所の瓦礫をスコップで取り除けると、瓦礫の下から見たこともない種類の大型端末が姿を現した。
『デイヴ、次はムウシコスのケーブルのソケットをその端末に接続して』
ほとんど遺跡とも呼べる端末であるが、端子の規格は同じようであった。開発公社が周到に準備を行っていたことが窺える。
デイヴィッドは言われるがままグワッシュのバックパックに繋がれたケーブルを外して、ソケットを端末に差し込んだ。
三次元マップが消えて、いつもの粗悪なマップが表示される。
『第一解除コード入力までしばらくかかるから、そこでじっと待機していてね』
フィリアが迂闊なことを口走るのと同時にアルフ博士の顔が強張った。デイヴィッドはまるで聞いていないというふうに目を瞑った。
482 :アナザードルダ 4/13:2008/07/21(月) 18:25:44 ID:???
白い部屋であった。壁も、天井も、照明も、唯一の家具である寝台も、ことごとく白で揃えられていた。
窓は無かった。音も無かった。人もいなかった。十二ある寝台の主が戻って来なくなって久しかった。
十三番目の、のけ者にされたような配置にある寝台に自分は坐っていた。
不意に肩を叩かれた。それで、部屋に人が入っていたのがわかった。入室者は背が高く、ひょろひょろと痩せた男であった。
男はおもむろにこちらの側頭部に両手を伸ばした。何かが外された。すうとした清涼味のある開放感が目の奥を駆け巡った。
まるでその感じは、つるりと窄み抜けていくようなものであった。冴え渡る快味は小止みもなく広がり続けた。ついには寒気を帯びて来た。
冷気をついて一抹のざらざらした心地を感じた。目の前に立っていた男が、はぁっはぁっ、とすさまじく荒い呼吸をしながら少女を組み敷いていた。
少女の首から上は霞んで見えなかった。しかしそれが自分であるということは知っていた。
背中から首の後ろにかけて生ぬるいものが無理に差し込まれる感触があった。込み上がるものが堪えられなくなる直前で、さっと雲散霧消した。
頭がぼんやりになっていた。外されたものが元のところに戻されていたのがわかった。
服は乱れていなかった。目の前の男は髭だらけの口元を歪めているにすぎなかった。
いつもならばここで男は立ち去るのであったが、今回は少し様子が違っていた。
「今日はね。キミに名前をあげようと思うんだ」
自分には名前というものがないので、その申し出は大変ありがたかった。十三号というのは名前であるとはいえないと男からも聞かされていた。
いつのことか、自分は誰かに名前を呼ばれていたことがあったような気がしていた。
今まで蒸し返し味わってみていた何ともいえぬその心地よさが現実に得られるとなれば、先ほどの不愉快な思いも苦ではなかった。
男に手を引かれてたどり着いた先では、大きな人形が寝そべっていた。背の高い男より、何倍も何倍も大きい白い人形であった。
「Doll DA――今日からキミは、ドルダだ」
ようやく、自分は欲しかったものを手に入れることが出来た。しかしそれでまず味わったのは、想像していたほどの幸せでないどころか、途方もない空しさであった。
483 :アナザードルダ 5/13:2008/07/21(月) 18:29:00 ID:???
『馬鹿者! アンカーを打てと言ったろうが!』
デイヴィッドは老人の怒鳴り声でようやく我に返った。見れば幾重もの巨大なシャッターが開放され、内部の空気が気圧差でどっと押し寄せて来ている。
グワッシュはその重量にもかかわらず紙切れの如くひらひらと吹き飛んで、同じく舞い上がる瓦礫にもみくちゃにされていた。
『デイヴ! 応答してデイヴ!』
目じりに大粒の涙を溜めたフィリアが必死の様子で叫んでいる。機体パラメータ画面には所狭くエラーが表示され、AMBACもままならない。
やっとのことで壁の出っ張りにしがみ付くが、飛んで来る瓦礫が左腕のチョバムアーマーを爆発させる。
僥倖にもその後すぐに吹き付ける風は収まり始めたので、MS本体に目立った損傷は生じなかった。
『なに、やってるのさ! ばか! 甲斐性なし!』
「なあに、かえって動きやすくなった」
追加装甲の剥がれた左腕を回して強がってはみたけれども、明らかに失態である。査定に響くであろう。
『いったい君は、こんなことでなにしてんです!』
白昼夢を見ていたなどとは、言い訳にもならない。プロ意識云々以前に、夢の内容からして条例に触れてしまう。
デイヴィッドは柄にも無く平謝りしつつ、絡まったケーブルやらなにやらを直し始めた。
隔壁を抜けるとそこは市街地であった。街路灯のものと思われる明かりが見えた。
新たに構築された三次元マップには、高さ五十メートルほどの天井の下に直方体の建物が碁盤割りで広がっている。
大まかな構造はこの間まで暮らしていた居住小惑星と似たようなものである。
デイヴィッドは拍子抜けした。四百年もの年月を経た遺跡の姿は想像していたほど奇怪なものではなく、見慣れたコロニーの夜景とほとんど変わりない。
すこしばかりの騒音を立てれば、寝ていて起こされた住人が今に怒鳴り込んで来るように思えたが、計器に表示される気圧や気温はそこに生きている人間が存在しないことを示している。
解除コード入力のおかげか電源はそれなりに生き返ったが、太陽光入射機能は停止しているので辺りは暗い。
建物の壁や道路の舗装をライトで照らすと、そこにおびただしい霜がこびり付いているのがわかった。
もし今ここでドームの機能が完全に息を吹き返したのなら、内部は惨憺たる様相を呈すであろう。電源を抜いた冷凍庫の中身は悲惨である
484 :アナザードルダ 6/13:2008/07/21(月) 18:34:06 ID:???
「あー、文化財を一体発見。指示を求む。状態は……FDAに抗議文を送ってくれ。屠殺業者の忘れ物らしい」
霜に覆われた赤黒い塊が道路の真ん中に落ちていた。宇宙空間でのそれと異なり保存状態は芳しくない。
茶色く染まった合成繊維の切れ端の下に、黄ばんだ白い部分があちこち露出しているのと、そこだけ色あせていない蛍光色の毛髪が目に障った。
ドームの温度調節機能が停止するまでに数ヶ月の猶予があったことが察せられる。
『そんなものに用はない。先へ進め』
青ざめた顔で口元を覆っているフィリアに代わってアルフ博士が淡々と指示を出した。いかにも眼中に無いといった感じである。
デイヴィッドは連邦軍に居た頃にこうしたものを見慣れていたのであったが、思わず口を滑らせた。
「墓暴きの身としましては、呪いやら何やらが恐ろしくて堪らないんですがね。フィリア、この機体のシールは万全か? えたいの知れんウイルスに感染するくらいなら疝気のほうがよっぽど粋だぜ」
『デイヴィッド・リマー、我々に無駄口を叩いている時間はない』
「言うべきことも言わんあなた様がそう仰いますか? 小賢しい仕方で片棒担がせようって魂胆はとっくにわかってんだ。ことごとくが空々しいんだよ、あんた達の言うことはな」
『デイヴ!』
デイヴィッドはフィリアの慌てた声を聞いて口を噤んだ。モニターのアルフ博士は眉間に皺を寄せて、不遜なパイロットを睨みつけている。
デイヴィッドは暫しの間睨み合いを続けると、チッ、とこれ見よがしに舌打ちをしてから白々しく謝罪した。
デイヴィッドは不愉快であった。気が苛立っている理由は自身でもはっきりわかっていた。先ほどの白昼夢である。
考えまいとするほどに夢の内容はくっきりと輪郭を帯びて行き、グワッシュを進ませていながらも、不意にその光景が脳裏を掠めることが幾度と無くあった。
道中、赤黒い塊をしばしば目にしたが、何ら感慨は湧かなかった。そんなものよりも目標地点へ近づくにつれて増して行く、言い知れぬ気持悪さに吐き気を催した。
グワッシュは市街地を真っ直ぐ進んで、コントロールタワーにたどり着いた。以前と同じ要領でMS用ゲートを開き、下の階層に向かうエレベーターを予備電源で起動させた。
ケーブルは既に十キロメートルほど引き出されている。それなりに細くて軽いケーブルであるが、グワッシュの馬力で引き摺るにはそろそろ限界である。
485 :アナザードルダ 7/13:2008/07/21(月) 18:41:43 ID:???
調査の終りを思うと一息付きたくなるが、中枢ユニットへの扉を前にしてデイヴィッドは今にも泣き言を吐いてしまいたい心地であった。
目玉の裏側にざらついた引っ掛かりが生じている。瞽女声(ごぜごえ)を偲ばすような耳鳴りがしていた。気分はよりいっそう酷いことになっている。
ムウシコスからの解除コード入力が済んでシャッターが開くと、隙間から白いガスが噴出してグワッシュの視界を覆った。
ガスが晴れる間際、白昼夢の最後の場面が瞬間的に再生され、その一瞬間、ぶれるように現実の光景と重なった。
『これは、MS……』
目を向けると、巨大な中枢ユニットの前に一機のMSらしきものがぽつねんと立っていた。
純白の機体である。女性を思わせる、すらりとした形状のMSである。各部の構造はこれまで見たどのMSにも当てはまらない。
武器の類は一切装備していないようである。腕の先にあるのはレンズのようなものの付いた手の甲だけで、マニピュレータは見えない。
顔を覆う大型バイザーの上には、ガンダムタイプに似たV字型アンテナが生えている。
「どうだ爺さん、これで満足か? あんたのご希望通りオーパーツが見つかったぜ。畜生が。新品同然の小奇麗なお人形さんだ。この――」
ドルダ、と続けようとしているのに気付いて、デイヴィッドは愕然とした。
なぜ自分は目の前に立つ初対面のMSの名前を知っていて、さも当たり前のように口に出そうとしたのかわからなかった。
デジャビュの類にしては行きすぎている。加えて、そのMSの姿は白昼夢の最後の場面に登場するMSと瓜二つである。
デイヴィッドは咄嗟にこの既知感を解明しようと頭をめぐらせた。贋の追想と心理学で呼ばれている現象であるとも考えられた。
それは極端な疲労や虚脱などの状態に置かれた人間に起こりうる現象で、記憶だけが自動的に意識より先に出るために云々という原理からなっている。
けれどもその場合、既知感だけがあって、決してその原因を想起出来ないのが特徴である。残念ながら、先から白昼夢の内容に悩まされていたデイヴィッドには当てはまらない。
あの奇妙な白昼夢の記憶それ自体も、自身が瞬間的に行った妄想の産物であるかもしれないが、そうとなればいよいよ自分の脳味噌は酒の毒に蝕まれ切ったことになる。
486 :アナザードルダ 8/13:2008/07/21(月) 18:44:42 ID:???
『こいつ、動くぞ』
老人の声にデイヴィッドは引きつった顔を上げた。純白のMSは勝手に起動を始めて、あたかも痙攣する人間のようにその肢体を小刻みに震わせていた。
不可解にも光のラインが装甲の継ぎ目に走っている。エメラルドの輝きを連想させる緑色の光は、これと言った理由も無しに嫌悪感をかきたてた。
デイヴィッドは自然とグワッシュに高周波スコップを構えさせた。失われた超科学の産物に勝てるとは露も思わないが、妙な真似を見せたらば即刻飛び掛る心積もりでいた。
バイザーが引き上がり、ツインアイが露出した。いよいよガンダムに類似している。グワッシュの腰を落とし、いつでも突撃出来る体勢を整えた。
フィリアやアルフ博士が何やら喚いているのを聞き流す。
目の前のガンダムもどきを今のうちに破壊しておかなければ、何か取り返しの付かないことになるかもしれない。そうデイヴィッドは感じたのである。
所有の許されないブラックテクノロジーであるばかりでなく、もっと禍々しい何かがあの機体に秘められているという予感があった。
デイヴィッドがスラスターにエナジーを送り込まんとした折りも折り、矢庭に純白のMSに走る光のラインが消え去った。
そうして途端に失神するようにがっくりとくず折れて、痛々しい体勢で床に身体を預けてしまった。
487 :アナザードルダ 9/13:2008/07/21(月) 18:48:47 ID:???
スコップの切っ先を向けたまま油断無く距離を詰めて行くと、純白のMSの腹部装甲がゆっくりと開いて、大人二人ぶんほどの大きさのカプセルが現れた。
胴体が横を向いた無理な体勢であったので、重力に従ってそのカプセルは音を立てて転げ落ちる。
デイヴィッドは慌ててグワッシュの手を伸ばしてそれを受け止めた。
カプセルの表側は透明な材質で作られているが、カメラの解像度を上げても中は曇っていて見えなかった。
「博士、この玉っころは何なんだ?」
『おそらくは冷凍睡眠カプセルであろう。当時の文献にも記載されておる』
そうこうしているうちに段々とその曇りも晴れて行って、カプセルの中身があらわになる。
飾り気の一切見当たらない白い服を着た少女が、死んだような表情で眠っていた。年のころ十四五と思われ、顔の作りは現代の人間のものと変わりない。
ただ、腰まで伸びるエメラルド色の髪が、当時行われていた遺伝子操作の名残をとどめていた。
「よりにもよって、生ものかよ」
苦々しくそう呟くのと同時に、少女の目がぱちりと開いた。カメラ越しに視線が重なったとき、デイヴィッドは目の奥にざらざらしたものが通り抜けるのを感じた。
488 :アナザードルダ 10/13:2008/07/21(月) 20:02:16 ID:???
大気中に漂う粉塵の多い日であった。ドーム・テーレマコス脇の連邦軍駐屯地の空は赤々として、まるで血で染め上げられたように見えた。
空の色よりもさらに鮮やかな赤で彩られた一機のMSが、基地の上空に静止していた。
肥大化した異形の頭部を持つ真紅の機体は両腕で大型ライフルを構えて、その長大な砲身の矛先を連邦軍基地の一郭へ向けていた。
見下ろされる基地の方では、上空の真紅の機体を取り囲むように配置された幾十もの数のMSがそれぞれ狙撃用ライフルで狙いをつけている。それらのMSはMSU-13ブッシュである。
基地に破壊の形跡は無かった。連邦軍基地のブッシュ隊に敵対しているのは、真紅のMSのみであると思われた。
『ベイト大佐、どういうつもりだ』
「故郷に錦を飾りたくなりましてね、少将閣下殿。ガンダムマルスの力は我らマーズノイドのためにこそ用いられるべきでしょう」
『火星の重力に中てられて先祖返りしたか、マスター・ベイト。だが、いかにガンダムといえども単機ではどうにもなるまい』
真紅の機体のコックピットに坐る男は唇の端を歪めるに過ぎなかった。
通信の相手に対するものとは別に表示されたウインドウには、三重冠を被って白い法衣を着た老人が、巨大な十字架の前に立って演説する場面が映し出されている。
この映像は火星の全ドームと火星圏の全コロニーに向けて放送されていた。
演説の主な内容は、マーズノイドの独立宣言と宇宙連邦政府への宣戦布告である。
「門は開かれました。去勢された人類が目覚めねばならぬ時がきたのです」
『狂信者が世迷い事を』
「水に落ちた犬を打たぬは人の子弟を誤る。狆はことに水中に打ち落としてさらに追い打たねばならぬ――古代の俚諺です。閣下を捕虜には致しません。
革命成就のために敢えて汚名を、この私、トマス金鍔次兵衛が!」
ビームスマートガンのレドームが回転を始める。ブッシュ隊がライフルの引き金に手をかけた。
『撃てば、貴様も死ぬぞ』
「我らが天主(デウス)
さんたくるすの御しるしをもて
我らが敵をのがしめ給え
天主ぱあてれ
ひいりよ すぴりつさんとの
御名をもて あめん」
男が奇妙な祈祷文を詠い終えたのと同時にウインドウに映る老人の演説も終了し、一拍置いてビームスマートガンからひとすじの赤い光が放たれた。
489 :アナザードルダ 11/13:2008/07/21(月) 20:06:46 ID:???
司令部のある建物の外壁が爆発した途端、ブッシュ隊の約半数の機体が、残る半数の味方に銃口を向けて引き金を引いた。彼らは示し合わせていたのである。
連邦軍のブッシュ隊は不意の裏切りになす術も無く破壊されて、同士討ちにもならなかった。
『ベイト大佐――いえ、トマス金鍔次兵衛枢機卿猊下。連邦軍施設の制圧および軌道上監視衛星の破壊は滞りなく進んでおります。あと数時間もすれば完了するでしょう。
火星連合加盟に同意を表明したドームは、現在のところ全体の約七割。異教徒の多いアルカディア地域などの新興ドーム郡は中立を主張しておりますが、それも時間の問題です』
「報告ご苦労、アンデレ権八郎」
アンデレ権八郎という青年の報告が済むと、ベイトは先ほど砲撃した建物にガンダムマルスのメインカメラを向けた。
派手な爆発とは裏腹に、建物の損傷自体は大したものではなかった。
外壁から内部の司令室にかけて、整った円形の穴が開き、そこから見える床のタイルに軽い焦げ付きがあるきりである。穴を塞ぐだけで司令室は機能を取り戻すであろう。
出力、照準ともにおそろしく精密なその射撃は、ガンダムマルスの性能の為せる業であった。
有無を言わせず連邦軍が徴用した火星の技術者たちが、たえ難きをたえしのび難きをしのんだ末に完成した好ましくない生い立ちの機体ではあるが、それがマーズノイドのものとなったならある種の英雄的色彩を帯びてくる。
裏切ったブッシュの中にはガンダムマルスを向いて祈るように両手を組んで跪いている機体や、大げさに十字を切る仕草をして見せる機体があった。
建物に空いた穴の横に、端末や内装の残骸、それから生身の人間が放り出されていた。気圧差で外に吸い出されたのである。
ベイトが少将閣下と呼んだ老人もそこに混じっている。彼らの直接の死因はマルスのビームによるものではなく、主に野外活動服を着ていないことによるものであった。
最期に顔を歪める余地があったのは、火星の半端なテラフォーミングが理由であろう。ベイトは胸に下げた十字架に手を触れて、
「いんぴいあんぱあしすゥ
えっぽろすぺりたちすゥ
じりがつなうすゥ
おむにぽてんす……」
という古代語の呪文を唱えた。スペースノイドの元同僚たちを弔う意味があったかはわからない。彼の表情は小揺るぎもしていなかった。
490 :アナザードルダ 12/13:2008/07/21(月) 20:10:26 ID:???
遡って老人の演説が行われる少し前、火星の成層圏を一機の大型輸送艦が飛行していた。ずんぐりとしたその赤色の輸送艦は、カナリヤの同型艦『テレウス』である。
無駄な区画の多いカナリヤとは違って多数のMSを搭載でき、現在、その広い格納庫には三十機ものMSが鎮座していた。
どれも同じ機種で、五機の内に一機の割合で重装備が施されている。
後頭部にある二本の垂直アンテナと前に突き出した額が印象的なそれらの機体はMAS-66ガーランドというMSである。
スマートな体躯と各所スラスターによって高い機動性と運動性を誇り、加えて整備性や操作性にも優れている総合的に見て非常に優秀なMSではあるが、火星ドーム郡のMS部隊でしか用いられていなかった。
ガーランドは本来、連邦軍の主力MSとなるべく開発された機体で、ドーム・テーレマコスの軍需企業を中心とした火星ドーム郡の軍産学複合体が開発元である。
けれども、ガーランドが同時期に開発されたMSの中でも抜きん出たスペックを持ち、模擬戦で全勝という成果を収めたにもかかわらず、新宇宙暦066年の次期主力MSトライアルの結果、MSU-13の座はブッシュのものとなった。
ブッシュは月の企業が開発したのである。
491 :アナザードルダ 13/13:2008/07/21(月) 20:14:42 ID:???
三十機のガーランドの中に一機だけ全身を黒く塗装した機体があった。頭部の形状も少し異なっている。
黒いガーランドのコックピットには、赤毛の男が瞑想するような面持ちで佇んでいた。
『レオ五郎右衛門隊長、玉音放送が始まったみたいです』
通信でレオ五郎右衛門と呼ばれて、赤毛の男は微かに目じりを震わした。レオ五郎右衛門というのは洗礼名である。
スペースノイドの彼がコンパニヤというマーズノイドの宗教に入信してから一年の月日が過ぎている。しかし珍妙な洗礼名には未だに慣れることが出来ないでいた。
部下にはなるべく元の名前で呼んでもらいたかったが、彼らは火星の独立にかこつけて、今では公然と互いの洗礼名を呼び合うようになっている。そこに悪意が感じられないだけに赤毛の男としては決まりが悪い。
『ああ! 教皇ペトロ四郎猊下はなんと神々しいお方なのでしょう。満ち満ちた霊(アニマ)が目に見えるようです』
画面にいるペトロ四郎の姿に部下は感極まる様子であったが、赤毛の男からしてみれば、その老人は柔和な顔立ちという以外には別に取りたてて言うべきこともない老人である。
赤毛の男は恍惚とする部下たちを窘めて、あらためて作戦内容を確認させた。作戦開始は演説が終るのと同時である。
船体下部のハッチが幾つも開いて、下半身を固定された逆さ吊りのガーランドが姿を現した。
『ゼスス・キリシテ、サンタ・マリヤ、サンチャゴ』
全パイロットの合唱が聞える。赤毛の男も控えめに祈りの文句を唱えた。
『ゼスス・キリシテ、サンタ・マリヤ、サンチャゴ』
下半身の固定装置が外された。重力に引かれたガーランドが順々に滑り落ち、下に広がる雲の中へと消えて行った。降下目標は北極冠遺跡である。
492 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/21(月) 21:25:58 ID:???
アナザードルダの人、乙!
地球、火星の二項対立に宗教を絡めてくるとは。
十三の寝台と少女ってのが気になるな。
今後ドルダやムウシコス、マルスがどう動いていくのか、ドルチェの扱いも気になる
493 :492:2008/07/21(月) 21:30:54 ID:???
ちょっと今眠くてなんか日本語変でスマソ
あと追記だがマルスが出てきたのは嬉しいな。役者が揃ったって感じで
それとムウシコスってネーミングの由来は何か気になった
494 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/22(火) 02:32:05 ID:???
age
495 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/22(火) 05:05:56 ID:???
???
いつからSSスレになったw
少し産む…のかな
一番奇抜なのはレイダーでそ
496 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/22(火) 06:43:20 ID:???
>>495
いつからもなにも、ここは最初からガンダムドルダについてのスレだが。
パッと見蓑虫なのに装甲をパージすると>>407みたいな手足の曲線が美しい本体が露出、はがれた装甲は独立した支援メカになるという奇抜っぷりらしいぞ。
マジレスしちゃうとエクシアもなかなか奇抜だと思う。今でこそプラモや本編とあいまってかっこいいと感じるけど、デザイン発表当時は阿鼻叫喚だったからな。
497 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/23(水) 00:37:46 ID:???
00のガンダムはカトキやガワラじゃなかったからな
そこが好きだ00は
498 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/23(水) 02:42:25 ID:???
俺はヴァーチェ、ナドレが奇抜というかありそうでなかった感じと思ってた
それはそうと、人減ったな…
499 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/23(水) 17:39:51 ID:???
age
500 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/23(水) 20:53:47 ID:???
500
>>400
ガンダムマルス把握です。
>>276の昔ドルダの存在を脅威に感じていた存在が開発していた、ドルダの地下遺跡を調査及びドルダの回収、破壊を目的とした機体
その為探索能力に長け、狙撃・離脱戦法を得意とする。
この設定で考えてみます。
今更ですがこういう企画めっちゃ好きです。楽しいですw
402 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/04(金) 23:15:07 ID:???
>>398
うーん
ドルデーはダサい……かな……
ドルダはかっこいいけど
403 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/04(金) 23:54:12 ID:???
>>401のおかげで盛り上がって参りましたw
>>402
そう?俺は好きだけど
404 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/05(土) 22:51:53 ID:???
こんばんわ401です。
>>402
ふむ、やっぱりもっと兵器っぽさを押し出した方がいいですかね。
個人的にはモノアイよりもF91やVの狐目みたいな感じが好きなので
モノアイにはしたくなかったもんで…
ドルダだけが奇抜なのか、全体的に奇抜なのか…
どっちなんでしょう?
405 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/06(日) 00:59:41 ID:???
>>404
個人的には全部奇抜なつもり、他の人がどうかは知らないが
406 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/06(日) 03:37:08 ID:???
保守
407 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/06(日) 04:45:59 ID:???
http://wktk.vip2ch.com/vipper85781.jpg
ドルダ描き直して見ました。
ヒロイックな感じになったかな。
408 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/06(日) 18:51:39 ID:???
>>407
通りすがりだが、かっこいいなw
ちょっとエルガイムっぽいというかガンダムMk.Ⅲっぽいね
だからって文句つけてるわけじゃないからね(´∀`)
409 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/06(日) 22:45:51 ID:???
再び過疎
410 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/07(月) 20:37:51 ID:???
そして浮上
411 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/08(火) 01:04:45 ID:???
age
412 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/08(火) 02:02:14 ID:???
より良いものを考えるのって難しいですよね。あんまり考えすぎると熱が覚めてしまうし。それでもこのスレ好きだから伸びて欲しいし難しいですね
413 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/08(火) 15:04:39 ID:???
age
414 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/08(火) 20:42:29 ID:???
>>407
ttp://wktk.vip2ch.com/vipper86193.jpg
ttp://wktk.vip2ch.com/vipper86194.jpg
描いてみた
415 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/08(火) 21:45:42 ID:???
>>414
UMEEEEEEEEEEE
416 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/09(水) 03:35:10 ID:???
>>414といい>>407といいこのスレには(誉め言葉的な意味で)馬鹿がおるな
いいぞ、もっとやれ!いや、やってくださいm(_ _)m
417 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/09(水) 03:56:15 ID:MlwKNTxg
>>160
> >>159
>
> ちょ、RX-78w
>
> 本編に出てたキャラを補完してみた。
>
> http://imepita.jp/20080618/672170
>
> 名前 宗谷陽光
> 年齢 39
> 生年月日 7月26日
> 血液型 A型
> 身長/体重 176cm/67kg
>
> http://imepita.jp/20080618/672680
>
> 名前 ブルックリン・ハミルトン
> 年齢 47
> 生年月日 1月31日
> 血液型 O型
> 身長/体重 187cm/122kg
>
418 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/09(水) 04:00:05 ID:???
ごめん……ageた上にミスって>>417書いちゃった…
419 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/09(水) 11:39:14 ID:???
マジレスすると、Zだろう。
420 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/09(水) 21:34:00 ID:???
>>419
Zってどの辺が奇抜かな
あのスイカバーは確かに奇抜だけど
421 :通常の名無しさんの三倍:2008/07/10(木) 00:00:31 ID:PYofEuNh
∀だろ
422 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/10(木) 02:46:57 ID:???
スペック的にビーム弾くような機能無いはずなのに何かオカルティックなオーラ出してビーム弾いたり
死人の魂呼び寄せて相手に幻影まで見せるようなMSは怖すぎます
423 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/10(木) 07:48:02 ID:???
age
424 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/10(木) 07:53:08 ID:GXp6A83z
http://ggundam.biz/0000004757.jpg
マンダラガンダムだろ
425 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/10(木) 19:46:02 ID:???
ttp://www.fanboy.com/images/russian-gundam-cosplay.jpg
426 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/10(木) 19:50:03 ID:???
ttp://i79.photobucket.com/albums/j133/zeta5/Non%20Franken/Cosplay/untitled3.jpg
427 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/11(金) 02:32:23 ID:???
良い意味で酷い画像w
428 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/11(金) 12:26:24 ID:???
ストフリもある意味奇抜だと思うが。
適当に何でもくっつけりゃいいってもんじゃないを
敢えて実際に形にしちゃう辺りが。
429 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/11(金) 17:54:24 ID:???
定期age
にしてもすっかり職人が消えちまったな
430 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/11(金) 18:09:10 ID:???
イージス、ブリッツ、フォビドゥン、レイダー、ジャスティス、プロヴィデンス
431 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/11(金) 20:17:17 ID:???
ttp://bonesmoses.org/images/anime_iowa/2004/costume4.jpg
432 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/12(土) 01:24:19 ID:???
誰か職人おいで
433 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/12(土) 02:33:14 ID:???
http://wktk.vip2ch.com/vipper86721.jpg
http://wktk.vip2ch.com/vipper86722.jpg
お久しぶりー。
ガンダムマルス案です。ネロEWAC+デュナメスのイメージです。
ライフルはZプラスCのパクリとかじゃないです。決して・・・!!
批評お願いします。
今日はHCM-Proのサンドロックの発売日でしたね。
ずっとコレで遊んでてアップ遅れました。
僕はサンドロックが2番目に好きなガンダムです。
1番は誰がなんと言おうとガンダムXです。異論は受け付けません。
http://wktk.vip2ch.com/vipper86723.jpg
あぁ、カッコイイ…よ、僕のサンドロック…
434 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/12(土) 02:36:35 ID:???
追記です。
マジレスすると僕はゼータ全般です。
ティターンズのメカデザは奇抜だと思います。
バイアランとかパラスアテネとか。あーいうの大好きです。
435 :DAYC:2008/07/12(土) 15:18:13 ID:???
>>433
なんか顔が凸機みたいでかっこいいね
436 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/12(土) 16:22:06 ID:???
リジェネレイト
437 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/12(土) 21:25:31 ID:???
/| , ,
|/__ ',
ヽ| l l│<一番奇抜なのはサイコロガンダム
┷┷┷
438 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 02:58:53 ID:???
1Doll-Device Archive No.03 デブリ
第1火星コロニー、自治区代表官邸。
陽光の元にも、ドルダの情報は届いていた。
相次いで掃討されるドール部隊。
交戦した2部隊の内、1部隊は壊滅。交戦とも呼べない一瞬の出来事だった。
そしてもう1つのニコラスの部隊では、残存したのは2機のみ。1機は中破している。
ドルダと戦うまで、火星コロニー義勇軍は無敵に近い状態だった。
か弱い小鳥を猟銃で撃ち殺す人間。
だがそんな人間を、慈悲もなく焼き尽くす破滅の天使。
正に、そういった形容が相応しいヒエラルキーが完成しつつあった。
「スウィフト君、報告を感謝する。デボン君も無事で何よりだ」
『いや、こっちも機体を損失してすまねぇ……パイロットもな』
『ダン・デボン。この身、火星コロニーが独立するその日まで捧げるつもりです!』
モニターに映るニコラスとダン。
軌道エレベータ宇宙ステーションから最も近い第26火星コロニーよりの通信である。
火星圏のコロニーはほとんどが義勇軍によって制圧された。
今現在、一部の駐留軍が小規模な抵抗を行っている。
439 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 03:02:45 ID:???
それも、鎮圧されるのは時間の問題だろう。
だが、軽視はできない。
地球からの増援。そして、いずれは地球に向けての侵攻を行う。
火星から出払った後に、再び息を吹き返されるのだけは避けなければならない。
「そのアンノウンMS。奴が妨げにならなければいいが」
『あの戦闘力は尋常じゃねぇ。ビーム兵器じゃ歯が立たん』
悔しそうに、ニコラスの声が震えた。
ドルダとの圧倒的な力の差。それを思い知る一戦であった。
「ビームが効かない、か。厄介な存在だな。実弾兵器の製造を進めなければか」
『MSが使うならそれなりのデカさにもなるか。俺達の規模の小ささを踏まえると……頭が下がるぜ』
『ビーム兵器はエネルギーを消費するだけですからね。作るのが楽な兵器ですよ』
「接収したイーグルクロウの武装を改修し、騙し騙し使っていくしかあるまい」
そう言うと、陽光は短く息を吐いた。
そんな彼をモニター越し見て、ニコラスは苦笑する。
陽光とニコラスに、大した面識はない。
火星コロニーの独立の中心的人物と、その支持者。それだけの関係である。
この独立戦争が始まる以前、まだ大規模な武力衝突もなく独立運動で抗議がなされていた頃、
独立戦争の開始に向け義勇軍発足の活動が水面下で進む中、陽光とニコラスは出会った。
その時の陽光は毅然とした態度で、指導者としての立場から弱みは決して見せなかった。
だが、今モニターに映るのは、時より疲れた表情を見せる、紛れもない人の子だった。
440 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 03:05:21 ID:???
安心すると同時、少しばかり心配になる。
一人張り詰めて、壊れてしまわないか。
今後、また大きなアクシデントがあった時、どうなるか。
一瞬だけ、ニコラスは眉を顰めた。
『で、あれは、アンノウンMSだっけか? チッ、言いづれぇ……』
『ガンダムじゃ!』
通信に割り込んで、老人の声が響いた。
モニター全体を占める皺だらけの顔。
「プロフェッサー・ティモールか。盗み聞きとは感心しないが」
『コールウェイティングはしたわい。ロストテクノロジーのアーカイブからログが見つかったぞ』
モニターに静止画の映像が現れる。
そこには、ドルダに似た顔の造形のモビルスーツが映し出されていた。
『似てるな……あれに。だがなんだ? ロストテクノロジーがなんとかって』
ロストテクノロジー。過去の超技術。
義勇軍でも、陽光と近しい者、そしてティモールしか知らない最重要機密。
地球の者達が運用するMAをいとも簡単に打ち負かしたMSの開発技術他、
様々な情報を引き出すことができる火星の衛星ダイモスにある遺跡。
それはかつて、現在の文明が発達するそれ以前に、
別の超高度文明が存在していたことの証だった。
その事実が陽光の口から語られる。
『マジかよ。なんだよそれは……』
『…………』
唖然となるニコラスと、絶句するダン。
441 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 03:09:43 ID:???
現在の地球人類の技術では、MSの開発は到底不可能に近い。
人型ロボットの構想が考え出されても、それを実現させるまでには至らなかった。
『それがこの、独立戦争を勝つための策だってわけか』
「そうだ。君達になら話せると思って明かしたが、このことは内密にしてもらいたい」
『あぁ。いや、言っても理解できんだろ。俺もまだあんた等が冗談言ってると思ってる』
苦笑いで、その笑みもぎこちない。
しかし、陽光達の顔を見れば、それが冗談などではないとわかる。
『あ、あの、地球圏圏にも、そのような遺跡はないのでしょうか』
そんな中、気になった疑問を、ダンが口にした。
『無いから、この世界なんだろうが』
「いや、意図して隠蔽している可能性もある。例えば月の国、とか」
机上の空論。
真偽は、この会話に参加している全員が知らない。
「プロフェッサー。この映像について、説明を頼む」
『ガンダム。数ある歴史の中の戦争で、常にその中心に立ち、勝利に導いてきた存在じゃ』
『……勝ち目ねーじゃん』
ニコラスの一言に、静まり返る室内。
『わ、儂は、ロストテクノロジーの情報をただ読んだだけじゃぞ!』
ティモールが狼狽えた。
別の歴史でも、圧倒的な強さを誇っていたということは変わらないらしい。
「だが、これは教訓となる。その、ガンダムを倒すな」
過去の超技術の流用がきくのなら、こちらも相応の兵器を創り出せばいい。
相応。否、凌駕する兵器を。
442 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 03:13:04 ID:???
「あれを持っているのが民間だというのも好都合だ」
火星に降りた後、火星の地でダイモスと同じような遺跡を見つけたのだろう。
そこで、ガンダムを発見した。
「だが調査には期限がある。遺跡を完全に把握する時間まではなかった」
ガンダム。それしか持ち帰れなかったのだろう。
「それに加えあの大火力。いずれは持て余す」
追っ手を振り払うためとはいえ、一般人がそうそう戦闘を続けられるはずもない。
人の心があるのなら、殺すことに躊躇いもあるだろう。
やむを得ず。それは何度も続かない。陽光はそう結論を出した。
自信に満ちた顔をしている陽光を見て、ニコラスは安心して小さく笑みを浮かべた。
『で、追撃隊の編成はいつだ? もちろん、俺は参加させてもらうがな』
『自分も、粉骨砕身で任務に当たりたいと思っています!』
「頼もしい。現在、マイケル・ミッチェル隊が先行している。それに合流してくれ」
隊の名を聞いて、ニコラスはあからさまに嫌な顔をする。
それには陽光も気付き、堅い表情を少し崩した。
「何か気になることでも。スウィフト君」
『いや、奴が好かねぇだけさ。子供でも必要とならば兵として使うべし』
『武装蜂起の直前に隊長格のパイロット達が集まった際の発言ですね』
ダンが言うように、そういったミーティングが過去に開かれたことがある。
数で劣る勢力にとって、少年兵を起用することは珍しくないことだ。
マイケル・ミッチェルという男は、そうパイロットの増強を訴え、波紋を呼んだ。
倫理観が違うパイロット達の中には、このことに明らかな嫌悪を示す者もいた。
443 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 03:46:22 ID:???
「私もその考えを、全肯定したわけではない」
現にマイケル・ミッチェルの隊には、10代のパイロットが数名所属している。
他にも、マイケルの意見に賛同した隊長格のパイロットの中には、
志願した子供をパイロットとして採用した者もいるという。
「独立した後の火星圏の未来・
444 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 03:47:36 ID:???
>>443訂正
「私もその考えを、全肯定したわけではない」
現にマイケル・ミッチェルの隊には、10代のパイロットが数名所属している。
他にも、マイケルの意見に賛同した隊長格のパイロットの中には、
志願した子供をパイロットとして採用した者もいるという。
「独立した後の火星圏の未来を創るのは、私達ではない」
キッとした、真剣な瞳で、ニコラスを見る。
「我々は多くの者を殺す。だがその荷を、子供達にまで背負わせる必要はないのだ」
『ヘッ……馬鹿だぜ、あんた』
同じような志の瞳が、陽光を見つめ返す。
『出来る限りはしてみせるさ。それがガキ共の押し付けになろうともな』
『自分も、お供いたしますっ!』
「すまない。任せた」
『任された! 通信終了ッ!!』
モニターから、ニコラスとダンの顔が消える。
部下達の中から、涙を堪える声が聞こえた。
「プロフェッサー・ティモール。貴殿にまで火星独立の理想を押し付けるつもりはないが」
『わかっておるわい。儂は儂の造りたい物を造るだけじゃて。実弾兵器の件も引き受けても良いぞ』
「助かる」
一言に感謝を込めて、陽光は言った。
ティモールは「ゲゲッ」と気味悪く笑い、通信を切った。
445 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 03:49:28 ID:???
静かになった室内で、陽光はまた息を吐いた。
だが、それは疲れからくる溜息などではない。
決意を新たにするための、区切りだった。
輸送船のハッチが開き、ドルダが収容される。
格納庫では、クランとモモがシンシアの帰りを待っていた。
ドルダが停止し、・f
446 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 03:50:50 ID:???
>>445訂正
静かになった室内で、陽光はまた息を吐いた。
だが、それは疲れからくる溜息などではない。
決意を新たにするための、区切りだった。
輸送船のハッチが開き、ドルダが収容される。
格納庫では、クランとモモがシンシアの帰りを待っていた。
ドルダが停止し、解放されたコックピットからシンシアが出てくる。
「シンシアっ!」
シンシアが降りてきた途端、クランは飛び出していた。
シンシアを抱き締めると、存在していることを確かめるように顔に触れる。
「な、なに? お姉ちゃん、くすぐったいよ」
「ごめんなさい。でも、心配で。無事で良かったわ」
困っているシンシアに、クランは安堵した笑みを見せる。
「クランさん、あれに乗って飛び出そうとしたんですよぉ。
自分が閉所、暗所、その中で揺れを感じることの恐怖症だって忘れて」
「モモちゃん! 恥ずかしいんだからやめてっ!」
ニヤニヤして言うモモに、クランは顔を紅潮させて抗議した。
そんなクランの腕の中で、シンシアが疑問に思う。
「あれ?」
最初は、グワライダーのことだと思った。
しかし、庫内を見回してみると、それが間違いだということに気付く。
447 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 03:52:36 ID:???
格納庫には、グワライダーだけではなく、3機のローズもあったのだ。
先程まで交戦していたのと同一の機種だけに、一瞬身震いするシンシア。
それを腕の中で感じ、クランは「大丈夫よ」と背中をさすった。
「シンシア君は無事のようだな」
操縦室にいたギデオン達がやってくる。
「操縦は?」
「オートパイロットに切り替えた。デブリ宙域に近付いたら知らせが入る」
「デブリ宙域?」
「そこを突き切れば、距離的には公社の支部がある29コロニーが近い」
「デブリ宙域での航行経験はおありで?」
「これで3回目だ」
迷いなく、ギデオンは頼もしげに言ってみせた。
それに対して、反論せずに、クランは笑う。
二人の間には、信頼が生まれていた。
そんな二人を、むすっとした顔で睨む男が一人。
「ヴァイスさん、どうかされました?」
「なんでもねーよ」
ミランダの心配も、虫の居所が悪いのか素っ気ない。
「それよりもこの人型だ。独立派がこさえた機体だよな」
話の流れを変えるように、大きめ声でヴァイスが言う。
皆が、ローズに目を向けた。
448 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 04:59:57 ID:???
人が乗る戦闘兵器といえばMAが普通だと思っていたクラン達にとっては、
この人型の機体、即ちMSは大変に珍しく、興味深い代物であった。
技師のヴァイスだけだけではなく、ギデオンも厳しい視線をローズに送っている。
「気に入らんな」
そして、重い口調でそう吐き捨てた。
ギデオンの表情は、とても穏やかとは言えなかった。
「ど、どうしたんスか?」
女性陣から押され、恐る恐るヴァイスが尋ねる。
ギラッとした目がヴァイスを見た。
「この機体にはロマンがない!!」
「ロ、ロマン?」
「人型の魅せる脚線美は認めよう! だがこの機体はなっとらん!」
拳を握り、そして震わせ、ギデオンは叫んだ。
「だから私はこの機体を見た時ピンときた。改造してしまおうと! ナギサカ君!」
「はい!?」
「船外活動の許可を!」
「きょ、許可します」
凄まれて、思わず言われた通りに許可してしまった。
3機のローズに対して不気味な笑い声を上げるギデオンに、
他の5人はどうすることもできず一歩退いて傍観するしかない。
「ぬはははは! そうだな。私が改造を施した暁には、機体名をグワッシュとしよう!」
449 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 05:01:13 ID:???
その後、火星圏駐留軍にも一般化するMS。
そのMSの原型となる機体グワッシュ。
そのグワッシュを私用に何体も所有し、各地のジャンク屋からパーツを選りすぐり、
カスタムしたものが注目され、ギデオンは後にマスターグワッシュという異名を持つようになる。
しかしこれは、本筋より逸脱した別の物語だが。
「ねぇ、お姉ちゃん」
「なぁに?」
騒いでいるギデオンから離れて、シンシアはクランに声をかけた。
「わたし、何も思い出せないでしょう?」
「え、えぇ。そうね……」
「わたしは何と戦ってるの? わたし何も知らないから。世界のこととか」
「何もわからず、戦わせてごめんなさい。貴女にも、知る権利はあるわね」
クランは膝をつき、シンシアと目線を同じにする。
そして、柔らかい表情で、微笑みかけた。
だがその表情もすぐに、険しいものに変わる。
「貴女がドルダで戦ったのは、恐らくは火星コロニーの独立派。
此処、火星圏では、厳しい食料自給制限から独立運動が盛んだった」
その結果が、現在の状況である。
武装蜂起。MSによる戦闘行為。
コロニー、軌道エレベータ宇宙ステーションなどの施設占拠。
火星圏は戦渦の中であった。
450 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 05:03:23 ID:???
「私達は軍人じゃないわ。火星の調査に来ていたの。そこで、ドルダを見つけて」
「それでわたしが、乗った?」
「……そう」
「そうなんだ……何も思い出せないや」
当然である。
クランが少女に与えたシンシアという名前は、偽り。
少女はクランの妹ではないし、調査隊の一員でもない。
火星の地下施設で眠っていた、正体不明の存在だ。
(けれど、この子には知る権利がある。この子を連れてきたのは、私なのだから)
心の中でそう呟いて、クランは話を続けた。
「地球圏では地球圏連合加盟各国が中心となって世界を引っ張っているわ」
だが、一枚岩ではない。
「ロシアでは連邦の再編成に伴って、離脱対象の地域と内戦状態。
イギリスと中央・南アメリカ連邦は、旧カナダとの国境を巡って
運動家達が火星コロニーの独立派のように暴動を起こしているわ。
中東では宗教関係で過激な原理主義者達のテロ行為が激化している」
並べられる数々の不穏な事柄に、シンシアの顔が曇った。
そんなシンシアに、クランは先程の柔らかい、暖かな笑みを見せて、安心させる。
「でも悪いことばかりじゃないわ。ESEANU(エセアヌ)や月の国、コロニーなんかは割と治安が良いのよ」
火星圏のコロニーとは違ってね。と、苦笑しつつクランはそう付け足した。
451 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 05:05:39 ID:???
「おい。国名ずらずら並べただけじゃ、この子なんもわかんねぇだろ」
クランの説明を聞いていたヴァイスがきつい口調で指摘する。
「コロニーなんかはテロリズム・イヤーのせいでピリピリしてやがるし」
「そうね……」
左腕を押さえながら、クランは小さな声を吐いた。
「ちょっとぉ! ヴァイスさん少しは考えてくださいよぉ!」
「いいのよ。モモちゃん」
「よくないです。クランさんはトラウマを抱えるんです! 少しは気を使ってください!」
珍しく、モモが真剣な表情で怒声を上げた。
医療担当としての行動か、はたまた仲間を想ってか。或いはそのどちらもなのか。
モモはこう見えて、職務には真っ当な人間である。
クランや他の者は、初めて顔を合わせたその日に、モモのカウンセリングを受けた。
元々は怪我などの治療が専門で、世界情勢が不安定なこの時世、
様々な分野に対応すべく精神面のケアも力を入れるのだと語った。
彼女の不思議と明るく、前向きな雰囲気に、クランは自身の過去を話したのかも知れない。
「もう平気よ。ありがとう」
クランはそう微笑んで、立ち上がる。
「シンシアもごめんね。わからない話しちゃって」
「うぅん」
クランのことは心配であったが、クランが笑いかけるので、シンシアも笑い返す。
「ミランダさん、悪いんだけど地球圏の最近の状況をもっと詳しく説明してあげて」
話を振られて、びくっとミランダが反応した。
452 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 05:08:04 ID:???
その顔は、少々強張り、困惑している。
「すみません。私、地理は余り詳しくなくて……」
こめかみから頬にかけて、汗が垂れる。
いつも尖った口調のミランダだったが、この時だけは緊張したような、声に張りがなかった。
「そう。じゃあ仕方ないわ。おいおい、ね」
%
453 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 05:09:13 ID:???
>>452訂正
その顔は、少々強張り、困惑している。
「すみません。私、地理は余り詳しくなくて……」
こめかみから頬にかけて、汗が垂れる。
いつも尖った口調のミランダだったが、この時だけは緊張したような、声に張りがなかった。
「そう。じゃあ仕方ないわ。おいおい、ね」
「うん。いつでもいいよ。だってわたしとお姉ちゃんは姉妹なんだから、いつでも一緒でしょ?」
無邪気に、笑う。
そんな笑みに、クランは胸が痛んだ。
だが、それを隠して、シンシアの頭を撫でた。
こうして、この話題は終了した。
何か煮え切らないまま、未だにローズの前で不気味に笑っているギデオンの姿があった。
しばらくして、アラートが鳴る。
デブリ宙域への侵入を示すサインだ。
ギデオン、ヴァイス、ミランダが操縦席に向かう。
「隊長、熱源です」
ミランダが報告する。
「熱源? 熱を持ったものでもあるのか……まさか、独立派か?」
「いや、そうじゃないっぽいスよ」
振り向いたギデオンに向けて、ヴァイスが指をさした。
目視できる距離に、小型の作業艇が見える。
「一般用の作業艇に見えるが、独立派ではないのか?」
「ジャンク屋全般が使ってるデブリ回収用の作業艇っスね」
自信を持って、ヴァイスが言う。
ジャンク屋が独立派ではないという確信はなかったが、
ジャンク屋が攻撃してくる可能性は低いとヴァイスは判断した。
454 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 05:11:26 ID:???
ジャンク屋は人類の生活圏のどこにでも存在し、
人種や民族を越えて互いに協力し合い活動している。
時には利益に目が眩み小競り合いを起こすこともあるが、
基本的にジャンク屋は皆、争いを好まないのである。
「俺も昔はジャンク屋だったからわかるんスよ。奴等とは今も交流ありますからね」
だから、自信があった。
「そうか。なら、私もそれを信じてみよう」
力強く、ギデオンが頷く。
「……それに、上手くすればグワッシュへ改造できるパーツが手に入るかも知れないしな」
「そ、そこっスか……」
「ぬはははは……トロニクス君、ついてきたまえ。ウォン君、後は任せた!」
「え? あ、はい。了解しました」
呆然とギデオンを見送るミランダ。
ヴァイスはトボトボとギデオンについていくしかなかった。
船内にあったノーマルスーツを着て、二人は作業艇へと向かう。
反対するかと思われたクランも、ギデオンの豹変ぶりに半ば諦めて何も言わず送り出した。
ギデオンとヴァイスが、作業艇に接近する。
救難信号は出されていなかった。もしや搭乗者はもう生存していないのか。
ハッチを開けようと、ギデオンが合図を送る。
それにヴァイスが了解したと返し、ハッチのロック解除を試みる。
455 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 05:14:35 ID:???
しかし次の瞬間、作業艇が二人を振り払うかのように動き始めた。
間一髪、二人は巻き込まれずに済む。
「なんなんだよ! お前等は!?」
「お兄ちゃん……」
突然動いた作業艇。
その中には、少年と少女の二人がいた。
456 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 05:17:03 ID:???
お久しぶりの本編の人です
なにやら通信状態が悪く、文が途中で切れる異常事態が発生してしまいました
無駄にレスを消費してしまいすいません
例のごとく前半のみです
最近SSを書いてる時間がなくだいぶ遅れてしまいました
では後半は、また後日
457 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 14:42:24 ID:???
ageといてageよう
458 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/13(日) 18:18:38 ID:pJJGwR9U
age
459 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/14(月) 22:57:18 ID:???
☆ゅ
460 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/14(月) 23:46:32 ID:RHM63AOC
あえて言おう、ageであると!
奇抜なデザインって言ったら種系MS、特に無駄に羽が生えてるMSとか(特に自由、運命)
461 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/15(火) 00:40:56 ID:???
>>433、本編の人
久しぶり!GJ
462 :アナザードルダ 1/10:2008/07/15(火) 19:32:21 ID:???
ドーム・テーレマコスは、マリネリス峡谷中央に位置している。マリネリス峡谷というのは長さ四千キロメートルにも及ぶ火星最大の峡谷である。
マリネリス峡谷の西側から北へ登って行くと、火山地帯のタルシス地方に至る。
そこには太陽系最大の火山オリンポス山をはじめとした多くの死火山が分布しており、調査団のカナリヤが手始めに降りた地域はこのタルシス地方であった。
火星のテラフォーミングは完全ではなく、日中の空は薄い大気に浮かぶ塵によって黄昏時のように赤々と染まっている。
赤い日に照らされて、一機のMSが錆色の地面を掘り返し、慎重な動作でもって土の塊を傍らのコンテナに納めていた。
そのMSはコンテナの蓋を閉じると、体を解すように肩を一回転させて、上空にメインカメラを向けながら手に持ったスコップを地面に突き立てた。
「しかしまあ、辛気臭くなる空だな。火星人どもが陰気なのも頷ける」
『無意味な動作です。真面目に作業を行って下さい。次は深度二十メートル』
間髪入れず通信が帰ってきた。デイヴィッドは「はい、はい」と答えつつスコップの先を引っ掛けて空のコンテナを近くに寄せた。
『先ほども言いましたが、コンテナを乱暴に扱わないで下さい。不純物が混入します』
冷淡な女の声を聞き流して再び掘り始めたが、ある深度まで来ると、浅い所の土が崩れ落ちて新しく掘った部分が埋まってしまった。
『初めからやり直しです。そこから移動して、指定する別のポイントを掘ってください』
「だーもー、めんどくせぇ! 別にこのくらい構わんだろうが」
『駄目です。いいですか、正確な調査結果を得るためには――』
「はいはいはいはい! 調査結果云々調査結果云々ですね。わかったよ、やり直せばいいんだろやり直せば! ……畜生、かったりぃ」
グワッシュが乱暴にスラスターを吹かして穴から飛び出ると、その付近には同じように失敗した穴ぼこが幾つも空いていた。
指定されたポイントに着いたとき、出し抜けに三機のMSが轟音を立ててグワッシュの頭上を掠めて行った。
低空飛行の反動で塵が舞い上がり、グワッシュのメインカメラに張り付いた。
塵が収まるのを待ってカメラ脇の洗浄装置を起動し、視界が元に戻ると、もはや例の三機は豆粒ほどの大きさである。
463 :アナザードルダ 2/10:2008/07/15(火) 19:35:17 ID:???
カメラを最大望遠にして見ると、ガンダムムウシコスを先頭に、フライトユニットを装備した二機のドグッシュが追い縋っている様子であった。
高い旋回性能を持つムウシコスの滑らかな機動に付いて行くために、二機のグワッシュは右へ左へと忙しく大回りに飛んでいる。
「いい気なもんだ。こっちは健気に土を耕してるっていうのによ。……ところでヴァニナ嬢」
『気安くファーストネームで呼ばないで下さい。不愉快です』
「失敬、ヴァニナ・ヴァニニ女史。なあ、俺たち調査団の主な任務は、火星の地質やら何やらを調べることだろう」
『そうですが、何か?』
「だったらどうしてあの連中は優雅にお空を飛び回っているんだ? 新型の性能テストなんぞ後でいくらでも出来る。下っ端の俺一人に任せるよりか効率がいいと思うんだがな」
ヴァニナからの返答は無かった。
「フィリアも、スメッグヘッドとかいう偉い爺さんも向こうに付きっ切りだ。火星くんだりまでやってきてMS弄りたぁどういう了見だ?
やたらにいる研究員連中だってそうだ。こうして糞真面目に頑張ってるのは、あんたのほかに十人も居ないだろうが」
『機密事項です』
「そんなところは軍も民間も変わらんな。俺は堅気の職にありつきたいってのに……」
『口ばかり動かしていないで、手も動かして下さい。これ以上無駄口を叩いているなら、人事の方に報告させていただきますよ』
デイヴィッドはわざとらしいため息を吐いて作業を再開した。
いくらか掘り進んだとき、頭上にMSが静止しているのをセンサーが感知した。
ガンダムムウシコスであった。僚機のドグッシュを振り切ってしまったのか一機きりである。
ムウシコスは、グワッシュが頭を上げたことに気が付くと、ビームライフルの銃口をグワッシュに向けて、数回ほど打ち抜くような動作をした。
それから軽やかに宙返りをして見せ、遅れてやって来たドグッシュ二機から逃げるように飛び去って行った。
デイヴィッドはグワッシュの足元に荒々しくスコップを突き刺した。
「あの糞餓鬼、挑発してやがる」
『今ので土が崩れました。やり直しです。もっと慎重に行って下さい』
結局、作業を終えたのは空が青ばんでくる時刻であった。
464 :アナザードルダ 2/10:2008/07/15(火) 19:37:50 ID:???
パイロット用のミーティングルームで、フィリアがネルネとゲイリーを相手に今後の打ち合わせをしていると、自動扉が開いて、憔悴し切った様子のデイヴィッドが入って来た。
パイロットスーツから着替えもしないで、片手にヘルメットをぶら下げている。おそらくはつい先ほどまで働かされていたのであろう。
フィリアは真っ先に労いの言葉をかけた。
「デイヴ、おつかれさま」
デイヴィッドは長いすにどっかと腰を下ろして、持っていたヘルメットを叩きつけんばかりにテーブルに投げた。
「おい、フィリア。あの堅物、どうにかならんのか」
心底憎たらしげに吐き出された言葉に、フィリアは力ない笑いを浮かべた。
「ヴァニニ女史はなんというか、完璧主義者みたいなところがあるからね。ところで、グワッシュの具合はどうだった? 一応、マニピュレータの精度を調整し直してみたんだけれど」
「殴り合い仕様のブッシュのほうがまだマシだ。調査用ってんなら、卵摘める程度にはしてくれよ。そうでもないとあの女の御注文にはとても付いていけん」
ブッシュというのは現在の連邦軍主力MSの名である。
「無茶言わないでよ……」
「こっちの方が無茶なんだよ。三十六箇所だぜ、三十六箇所も穴堀やらされたんだぜ。賽の河原の赤ん坊じゃあるまいし」
「いやはや、それは災難でしたね」とゲイリーが言った。彼は、上がタンクトップで下がジャージという軽装であったが、汗が止まらないのか引切り無しに首筋や脇下をタオルで拭っている。
その姿はお世辞にも清涼味があるとはいえない。けれども長袖の三人は、数日間彼と顔をつき合わせているうちにそれに慣れてしまい、不快を感じることも無くなっていた。
「けっ、ぶんぶん飛んでただけの野郎がぬけぬけ言いやがる」
「なにカリカリしてるんだ? ポテチ食べるか?」
ネルネがそう言いながら、先ほどから食べていたポテトチップスの袋をデイヴィッドに差し出した。
手を汚さないためか、袋を持っていないほうの手には箸が握られている。
「いらん」
「なんだと! 木星圏産の一等品だぞ!」
「同情するなら機体をくれ。こちらとしてはあんたのドグッシュの寄贈をお勧めする」
「断る! あれは私専用のMSだ!」
やいのやいのと騒ぎ始めたデイヴィッドとネルネを横目に、フィリアは額を手で覆ったが、彼の内心は悪くない心地であった。
465 :アナザードルダ 4/10:2008/07/15(火) 19:41:05 ID:???
この調査団に集められたパイロットはデイヴィッドを含めて、皆灰汁の強い性格をしている。加えて、軍隊ではなく民間企業のMS隊である。
専門のカウンセラーも、実戦経験のある監督者もいない。階級も存在せず、支給される機体など待遇差もある。
本来ならば連邦軍にオブザーバーの派遣を要請するのであるが、とある特殊な事情のためにそれも出来ない。
名目上の指揮官はいるとはいえ、パイロット間の人間関係が険悪になることは容易に予想できた。
それが思いのほか上手くやってくれている。軽口を叩き合うこの三人なら戦闘で命を預けあう段となっても大丈夫であろう。
フィリア個人としては、少々妬ましく感じる点もあるが、一乗組員からしてみれば好ましい傾向であった。しかし、一つだけ懸念が残っていた。
「どこのどいつが痴話喧嘩してると思えば、Dランのおっさんじゃないか」
ガンダムパイロットのディック・オメコスキーである。名目上の指揮官である彼は、ミーティングルームに入るなり挑発的に口を切った。
いきり立っていたネルネも、彼女を宥めていたゲイリーも、途端に静かになってしまう。
「おっさんじゃない。お兄さんだ」
「二十六にもなりゃ、十分立派なおっさんだ。もうじきビール腹の仲間入りだぜ。健康のためにスカッシュをやる老いぼれの一人になるんだぜ。
アンタもそのうち、ミネラルウォーターを飲んでカロリーに詳しくなるんだろ? あと四年で、ほとんどジジイだ。三十だ。
もし俺だったら、あんまりにも気が滅入って首を吊るね」
「首吊りの足を引っ張るような御意見、ありがとさん」
デイヴィッドはディックと視線を合わせずにひらひらと手を振り、怒る様子を見せなかった。
かえって彼ではなくゲイリーのほうが恐縮して、止め処なく流れる汗を忙しく拭いている。
ディックの言ったことに関して思い当たるどころではない。ことごとく図星であったろう。
見かねたフィリアは、彼を嗜めようかと思ったが、彼の身分を省みてそれを断念した。ガンダムパイロットは『特別』である。
彼はある意味で、一部門の責任者でしかないフィリアよりも、第七次調査団総司令であり火星開発公社重役でもあるアルフ・スメッグヘッド博士に近い地位にいる。
自分の今後のキャリアと、いずれデイヴィッドに与えるポストのために、フィリアは当たり障りのない苦笑を浮かべるばかりであった。
466 :アナザードルダ 5/10:2008/07/15(火) 19:43:33 ID:???
「ところで、微笑みデイヴさんよ。昼間、アンタが無様に地べた這いずり回ってるとき、ロックオンしてやったのがわかったか? 十回だ。あれが戦場なら、アンタは十回撃墜されてる」
「さすがはガンダムとAランクのエリートさんだ。その調子で実戦でも活躍してくれると助かる」
「三八式でも弾除けにはなるね。いざってときはアンタを盾にさせてもらう。心の準備を忘れんな、Dラン。……シュード主任、コイツはアルフの爺さんからだ」
ディックはひとしきりデイヴィッドを挑発すると、首だけをフィリアに振り向けて、テーブルの上にメモリースティックを放り投げた。
「こいつは、俺のガンダム、のテスト結果だ。明日までに整理しておけって、爺さんが言ってたぜ」
俺のガンダム、という言葉を強調して言った。そうしてディックは三人のパイロット仲間たちを見回し、はんっ、と見下すように鼻を鳴らしてからミーティングルームを出て行った。
乱暴に扱われたメモリースティックを携帯端末に差して、その中のデータを確認すると、フィリアの顔がさっと青ざめた。
「うそ。これ、ぜんぶ今晩中にやるの? みんなごめん! ちょっと時間がなくなっちゃったから、君たちの機体の件については明日にさせてもらうよ!」
デイヴィッドたちが返事をする間もなく、フィリアはスリッパをぱたぱたと鳴らして立って行った。
立て続けに中心人物に去られてしまったパイロット三人は、やるべき事も特に無いので、食堂が開く時間が来るまで、下らない四方山話をして過ごした。
彼らの話題はグワッシュとドグッシュの性能差の話に始まり、ディックの悪口、さらには火星の食べ物の美味しさについての話へと転がり、
ディックの悪口に行き、さらにはムウシコスのデザインの酷評、それからディックの悪口と、ひどく盛り上がった。
主に気炎を揚げていたのは、意外にもゲイリーであった。
デイヴィッドとネルネが言うのを憚る事柄でさえも、彼はにこやかに、回りくどい言葉を用いてすらすらと吐き出した。相当な鬱憤がたまっていたのであろう。
467 :アナザードルダ 6/10:2008/07/15(火) 19:46:50 ID:???
ゲイリーの正しい人付き合いに関しての演説が終わり、三人の間にお開きのけはいが感じられるころになって、デイヴィッドは降って沸いたように切り出してみた。
「俺たちはいつまで建前の調査なんかやらされるんだろうな。わざわざ火星に来たのは、土を耕すためじゃないってのによ」
「お前はなにを言っているんだ? 私たちの任務は、火星の調査とMSの性能テストだぞ?」
ネルネが首を傾げた様子を見るに、彼女もデイヴィッドと同じく何も知らされていないようである。
「はぁ? まさか知らなかったのか? ろくに働きもしない研究員連中を見れば、本当の目的が別にあるってことぐらいわかるだろうに」
ネルネはばかにされたと思ったのか、むっとして、デイヴィッドではなくゲイリーに食って掛かった。
「ゲイリー! もしや前も知っているというのか!」
「わ、わたくしは何も知らされておりませんよ」
ゲイリーは途方に暮れたような目つきでデイヴィッドを見やった。
その慌てた様子から、彼もネルネと同様であるとも思われたが、嘘を付けない性根のネルネとは違ってゲイリーの心中は見かけでは判断出来ない。
「教えろ、デイヴィッド! お前が知っているのに私が知らないなんて、不公平だ!」
「不公平も何も、知らんなら知らんでいい。一応守秘義務ってもんがあるからな。まあ、どっちにしろ近いうちにあんたたちも解るさ。
開発公社がガンダムなんて代物を持ち出したくらいだ。MSパイロットにも無関係な話じゃない」
そうは言ったものの、ネルネの追求は止まなかった。デイヴィッドの部屋にまで押しかけてくる勢いである。
彼は無い袖を振るわけにもいかず、相手をするたびに辟易していたが、ネルネが自室にやって来た際には、下宿にあった黴から培養したアルバート二世が役立った。
デイヴィッドが黒い塊を突きつけると、彼女は悲鳴を上げて逃げ出して行ったのである。
案の定、それから数日過ぎた晩、パイロットたちは調査団の派遣された本当の目的を知る事が出来た。
468 :アナザードルダ 7/10:2008/07/15(火) 19:49:23 ID:???
タルシス地方での調査を終えたカナリヤは真っ直ぐ北へ向かってテンペ地方で調査を行い、それからまた北上して、北極周辺の地域であるヴァスティアス・ボレアリスでの調査を開始した。
太古には海であったと考えられているその地域であるが、調査もそこそこに、アルフ博士の指示で各機体の整備・改修が行われ、これまで研究室に篭って音沙汰の無かった研究員たちが、慌しく艦内を駆け回り始めた。
ビームライフル一挺しか装備していなかったガンダムムウシコスには、もう一挺のビームライフルに、二振りのビームサーベル、大型のロングレンジビームキャノン、
二基のビームディフェンスロッド、それから有線式オールレンジ攻撃兵装「キュイエール」が四基と、完全武装を施された。
二機のドグッシュもパイロットの適正に合わせて、砲戦仕様と中距離戦仕様に換装され、それぞれ脚部に陸戦用ホバーユニット「ズック」が装備された。
グワッシュはといえば、追加装甲が施され、その肥満と脆弱な機動性能を補うためか、高出力スラスターと追加バッテリーを兼ねた大型バックパックを背負わされている。
各部ハードポイントには、長短二本の高周波スコップと、各種グレネードに、ドグッシュの予備パーツを流用した対人バルカン砲二門、これまたドグッシュから拝借したシールドが接続されている。
「こいつは酷え……」
変わり果てたグワッシュを見て、デイヴィッドは思わず歎息を漏らした。重装備のうえ、近接戦仕様である。
ただでさえ性能で劣るというのに、彼に死ねと言っているとしか思えない。
「おい、フィリア。お前は俺にカミカゼでもさせるつもりか。まさか自爆装置なんて仕込んでないだろうな」
「僕が君の機体にそんなことするわけないでしょ。このグワッシュの装備は、他の機体と違って戦闘を想定してないんだよ。耐久性と可動時間を追及した結果、こんなになっちゃったんだ」
「何のために」
「そのことについては、これからスメッグヘッド博士が説明してくれるよ」
フィリアと別れてミーティングルームに向かうと、同じように呼び出されたネルネとゲイリーが坐って待っていた。
ゲイリーは相変わらず気味悪い笑みを浮かべ、ネルネはわけも無く得意そうな視線をデイヴィッドに送っている。
ディックが来る様子もなく、平パイロット三人だけがアルフ博士の話を聞くようであった。
469 :アナザードルダ 8/10:2008/07/15(火) 19:51:14 ID:???
「カナリヤはこれより北極冠のドーム・オデュッセイア跡地へと赴く。デイヴィッド・リマー、貴様は単独でオデュッセイア内へ進入してもらう。
ネルネ・ルネールネとゲイリー・ターレルの二名は、カナリヤ護衛のため付近で待機せよ。任務の詳細は現場で知らせる。質問は受け付けん。以上である」
アルフ博士は唐突に現れて、デイヴィッドの敬礼も待たずにすぐさま命令を述べると、言うべきことは言ったぞといわんばかりに、そそくさとミーティングルームを出て行ってしまった。説明にもならない説明である。
ネルネなどはしたりげに思案顔で幾度も頷いて見せていたが、実際のところ、博士の言葉はまったくといって理解していない。
しばらく経って、ゲイリーがいつもより余分に汗を搾り出しながら言った。
「考えてみれば、これは、妙なことになりましたね。はっきりと説明していただけなかったのが、せめてもの救いでしょうか……」
「あの爺さんは老い先が短いぶん、時間に吝嗇だってのもあるんだろうさ」
「なんだ? 二人とも、変な顔だぞ?」
ネルネの能天気な言葉に、デイヴィッドとゲイリーは頭を抱えた。
「ネルネ、ドーム・オデュッセイアがどういうところなのか知ってるか?」
「知らない」
「火星で一番初めに建造されたドームですよ。今からちょうど五百年前に、テラフォーミングの基点となったドームでもございます。学校で習いませんでしたか?」
「習っても覚えていない。何せ私は歴史科目で2以上の成績をとったことがないからな」
とネルネは薄い胸を張って言った。
「威張るな、ばか」
「なんだと! 私はばかじゃない! 勉強が出来ても頭が良いとは限らないって、母さんが言ってた! ばかって言うやつこそばかだ! このばーか!」
デイヴィッドは「この女、張り倒してやろうか」と思ったが、どうせ碌なことにならないと考えて、説明を続けてくれとゲイリーに目配せした。
「それでですね、ドーム・オデュッセイアは建造されてから百年後、つまりは四百年前にですね、事故を起こして閉鎖されたんですよ。
わたくしたちがこれから調査に向かうということが、どういう意味を持つのかお分かりになっていただけたでしょうか?」
「なるほど、遺跡探検ということか? ハニワとか、ドグウとか、大昔のビデオディスクに映っているみたいに、みんなで掘り出すんだな?」
わくわくと浮き足立った様子である。男二人は、深い深いため息を吐いた。
470 :アナザードルダ 9/10:2008/07/15(火) 19:53:54 ID:???
「あのな、お嬢ちゃん。ここは火星だ。石斧を持って駈けずり回っていた時代の地球人が飛んで来れたと思うか?」
「なら、グワッシュの初期型でも捜すのか?」
「時代を飛ばしすぎだ。四百年前ってのは、宇宙戦国時代、いわゆる『黒い時代』のまっただ中だ。『ブラックテクノロジー』――曲がりなりにも現代人なら、この単語に聞き覚えくらいあるはずだ」
「あ! それなら知ってる。よいこになろうブラックテクノロジー規制法だ。旧宇宙暦415年に制定された法律」
ブラックテクノロジーについては、ネルネも良く覚えていた。
宇宙史の授業はその時代になると、途端に習う事柄が少なくなり、試験に出るのはブラックテクノロジー規制法に関する問題しかない。
学生時代のネルネは、及第するためにその短い試験範囲を必死になって暗記したのであった。
旧宇宙暦415年、前述の通り地球を滅ぼすまでに争い、戦争上手になりすぎて疲弊した人類は、同じ失敗を繰り返さぬために、極端な技術進歩を抑制する技術規制法を制定した。
原子力、遺伝子操作、完全自律型人工知能、一部の精神医学、再生医学、青少年へ悪影響を及ぼす娯楽媒体等、一つ一つを挙げていけば優に万を超えるほど多岐に亘る技術研究及び所持が規制された。
研究所は閉鎖され、データや造られたものなども全て破棄された。つまりは宇宙時代の焚書である。
人類という種の永存を理念として掲げられたこれら宇宙連邦憲法は、ひとくくりに『ブラックテクノロジー規制法』と呼ばれている。
ブラックテクノロジーという呼び名は、その技術が用いられていた『黒い時代』に由来している。
たとえ絶え間なしに続いた戦争が無かったとしても、その時代は人類にとってあまり思い出したくない時代であろう。
471 :アナザードルダ 10/10:2008/07/15(火) 19:56:31 ID:???
旧時代の駄菓子のような毛色の人間が闊歩し、臓器製造施設では豚と人間の合いの子が生産され、愛玩用の人造人間が人権を叫び、めいめい勝手に自らこそ優良種であると主張した。
そればかりでなく、ある日の午後、たまたま職場から早く帰宅した夫は、彼の曾々々お祖父さんが裸の妻の上に乗っている現場を目撃した。
夥しい延命治療と冷凍睡眠によって、彼の御先祖さまは二百歳近くになっても二十代の若さを保っていた。
寝取られた夫の辛さ遣る瀬無さは相当のものであったろう。おぞましいというよりも、情けない時代である。
羞恥は嫌悪に勝る。それゆえに、一般に出回る歴史書からはその時代の記述が除かれている。
世を挙げてのきちがい騒ぎであり、誰しも忘れ去りたい事実であるから、捏造だと叫んで口から泡を飛ばす者は少ない。
「つまり、ドーム・オデュッセイアには、ブラックテクノロジーが眠っているってことか?」
「ああ」
「私たちは、そこの調査に行くのか?」
「そうです」
「いけないこと、なんだよな?」
「当たり前だ」
「連邦法に照らし合わせれば、銃殺刑は免れませんね」
「だったら!」
と言って、ネルネは両手でテーブルを叩いた。彼女の目は早くも涙ぐんでいる。
「別に連邦に見つかっても俺たちが銃殺されるってわけじゃない。せいぜい職を失う程度さ」
「ふぇ?」
「わたくしたちは、何も知らないんですよ。アルフ博士も仰ったでしょう? 質問は受付けないと。
わたくしたちはただ、お上の命令にしたがってMSを動かしているにすぎません」
「責任は全てあの偉い爺さんが被るってわけだ」
どうせ見つかりっこねえがな、とデイヴィッドは続けようとしたが、止した。
連邦からの至れり尽くせりの援助や、現在の火星の情勢など、確信するに足る理由が幾つか挙げられるが、滅多なことは口に出すものではない。
ネルネは少々元気を取り戻して、合間合間で空元気に転びつつも、生まれ変わったドグッシュの自慢話をぺちゃくちゃと続けている。
ゲイリーは相変わらず脂ぎった顔を拭っている。デイヴィッドは、ゲイリーと目が合ったときに、彼が自分と同じような意味のことを考えているのがわかった。
それから数秒後に、ゲイリーと目と目で分かり合ってしまった自分という人間がとことん嫌いになった。
472 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/16(水) 09:03:41 ID:???
保守
473 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/17(木) 01:36:27 ID:???
age
474 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/17(木) 22:11:44 ID:???
>>471
GJ!人物描写が読んでておもしろいな。
475 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/18(金) 00:52:39 ID:???
保守
476 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/19(土) 18:17:28 ID:???
保守
477 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/20(日) 20:32:28 ID:???
保守
478 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/21(月) 05:36:35 ID:???
保守
479 :アナザードルダ1/13:2008/07/21(月) 18:18:58 ID:???
錆色の大地から一転して、火星の北極冠は地球のそれと同じく辺り一面が万年雪で覆われている。
異なるのは表層がドライアイスであるということと、あちこちに塵や氷や砂などの混合物の層からなる深さ五百メートルほどの断崖があるということである。
ぐるりを見渡せば、その断崖は渦巻き状に広がっているのがわかる。
渦巻きの中心に一見して人の手によるものと判るすり鉢状の窪みがあった。直径百キロメートル、深さ二千メートルほどの窪みである。
いかなる作用によるものか、その窪みはドライアイスの層に覆われていない。
底の方は地面が剥きだしで、黒い土の上に薄い円筒型の建造物がちょこんと顔を出している。
調査団のカナリヤはその建造物に寄り添うように船体を横たえていた。
空は分厚い雲で灰色く染まり、昼間にもかかわらず辺りはほの暗かった。灰のような雪が音も無く降っている。
デイヴィッドは雪というものを実際に見るのは初めてであった。耳鳴りがするほど静かである。
静寂は不思議にも白い綿が淡々と舞い落ちる光景と調和し、あたかも時が静止しているような感覚を抱かせる。
その感覚は神秘的ともいえるが、デイヴィッドはどちらかといえば薄気味の悪さを感じていた。
途中まで随伴していたガンダムムウシコスは、入り口を塞いでいた瓦礫をビームであらかた一掃すると憎まれ口を叩いてカナリヤに戻ってしまった。
その帰り際に、ムウシコスは自身から伸びた細いケーブルをグワッシュに繋いだ。
カナリヤからの通信用ケーブルは既にぶら下げているので、どうもただの命綱とは違うようである。
今回の作戦でオペレーターを務めるフィリアに尋ねても、小難しい単語ではぐらかされるばかりで埒が明かない。
デイヴィッドはドーム・オデュッセイア内部へグワッシュを進ませながら、皮肉を込めて投げやりな口調で言った。
「カナリヤ一号、行きまーす」
『デイヴ、真面目にやってよ。スメッグヘッド博士だってモニターなさっていらっしゃるんだよ』
フィリアの声に続いて新たにウインドウが開いて、しかめ面のアルフ博士の顔が現れた。
「失礼致しました」デイヴィッドは反射的に謝った。博士はデイヴィッドの顔を睨みつけているきりで何も言わなかったが、デイヴィッドはことさら真剣な顔をしてみせた。
480 :アナザードルダ 2/13:2008/07/21(月) 18:21:22 ID:???
通路は広く、MSが楽々通れるゆとりがあった。MSは四百年前にも存在したのであろう。
ところどころに細かい瓦礫が散らばっているが、時代を感じさせるようなものは見あたらず、壁の構造も、旧式コロニーで見られるものと同種であると思われた。
通路は緩やかな下り坂であるので、先へ進むほど暗くなって行く。数百メートルほど進むと壁が途切れて、ちょっとした広間と思わしき空間に出た。
「磁気が強いみたいだ。レーダーが利かない」
『ちょっと待っててね』
機体パラメータ画面上に、毛色の違うウインドウが目まぐるしく重なったり消えたりを繰り返した後、インストール完了の文字が出る。
『ライトを最大にして、ぐるっと、辺りを見回してみて』
新たなサブウインドウが開かれて、光を当てた部分から順におそろしく精巧な三次元マップが表示されて行く。
気温やら気圧やら、やたらと事細かな情報も各地点に書いてある。そのサブウインドウの枠にあるG-MOUSIKOSという文字が目に留まった。
「オートマッピングか」
『凄いでしょ? えっと……ここから、ここのポイントに向かってちょうだい』
「まるで餓鬼の遊びだな」
デイヴィッドは三次元マップに表示された最適な進行ルートと目的地点のマーカーを見て思わず呟いた。
親切なのは結構であるけれども、グワッシュの劣悪なマッピング性能に慣れていた彼としては妙な気分であった。
暗闇の中へ恐る恐るグワッシュの足を運びながら、デイヴィッドはふと思いついた疑問を口にした。
「なあ、今のグワッシュならビーム使えるんじゃないか?」
『阿呆な事を抜かしておらんで、さっさと進め』
冗談の判らない上官である。デイヴィッドは後ろ髪を引かれる思いで口を閉じた。
481 :アナザードルダ 3/13:2008/07/21(月) 18:22:56 ID:???
目標ポイントにたどり着いて、指示されるままにその場所の瓦礫をスコップで取り除けると、瓦礫の下から見たこともない種類の大型端末が姿を現した。
『デイヴ、次はムウシコスのケーブルのソケットをその端末に接続して』
ほとんど遺跡とも呼べる端末であるが、端子の規格は同じようであった。開発公社が周到に準備を行っていたことが窺える。
デイヴィッドは言われるがままグワッシュのバックパックに繋がれたケーブルを外して、ソケットを端末に差し込んだ。
三次元マップが消えて、いつもの粗悪なマップが表示される。
『第一解除コード入力までしばらくかかるから、そこでじっと待機していてね』
フィリアが迂闊なことを口走るのと同時にアルフ博士の顔が強張った。デイヴィッドはまるで聞いていないというふうに目を瞑った。
482 :アナザードルダ 4/13:2008/07/21(月) 18:25:44 ID:???
白い部屋であった。壁も、天井も、照明も、唯一の家具である寝台も、ことごとく白で揃えられていた。
窓は無かった。音も無かった。人もいなかった。十二ある寝台の主が戻って来なくなって久しかった。
十三番目の、のけ者にされたような配置にある寝台に自分は坐っていた。
不意に肩を叩かれた。それで、部屋に人が入っていたのがわかった。入室者は背が高く、ひょろひょろと痩せた男であった。
男はおもむろにこちらの側頭部に両手を伸ばした。何かが外された。すうとした清涼味のある開放感が目の奥を駆け巡った。
まるでその感じは、つるりと窄み抜けていくようなものであった。冴え渡る快味は小止みもなく広がり続けた。ついには寒気を帯びて来た。
冷気をついて一抹のざらざらした心地を感じた。目の前に立っていた男が、はぁっはぁっ、とすさまじく荒い呼吸をしながら少女を組み敷いていた。
少女の首から上は霞んで見えなかった。しかしそれが自分であるということは知っていた。
背中から首の後ろにかけて生ぬるいものが無理に差し込まれる感触があった。込み上がるものが堪えられなくなる直前で、さっと雲散霧消した。
頭がぼんやりになっていた。外されたものが元のところに戻されていたのがわかった。
服は乱れていなかった。目の前の男は髭だらけの口元を歪めているにすぎなかった。
いつもならばここで男は立ち去るのであったが、今回は少し様子が違っていた。
「今日はね。キミに名前をあげようと思うんだ」
自分には名前というものがないので、その申し出は大変ありがたかった。十三号というのは名前であるとはいえないと男からも聞かされていた。
いつのことか、自分は誰かに名前を呼ばれていたことがあったような気がしていた。
今まで蒸し返し味わってみていた何ともいえぬその心地よさが現実に得られるとなれば、先ほどの不愉快な思いも苦ではなかった。
男に手を引かれてたどり着いた先では、大きな人形が寝そべっていた。背の高い男より、何倍も何倍も大きい白い人形であった。
「Doll DA――今日からキミは、ドルダだ」
ようやく、自分は欲しかったものを手に入れることが出来た。しかしそれでまず味わったのは、想像していたほどの幸せでないどころか、途方もない空しさであった。
483 :アナザードルダ 5/13:2008/07/21(月) 18:29:00 ID:???
『馬鹿者! アンカーを打てと言ったろうが!』
デイヴィッドは老人の怒鳴り声でようやく我に返った。見れば幾重もの巨大なシャッターが開放され、内部の空気が気圧差でどっと押し寄せて来ている。
グワッシュはその重量にもかかわらず紙切れの如くひらひらと吹き飛んで、同じく舞い上がる瓦礫にもみくちゃにされていた。
『デイヴ! 応答してデイヴ!』
目じりに大粒の涙を溜めたフィリアが必死の様子で叫んでいる。機体パラメータ画面には所狭くエラーが表示され、AMBACもままならない。
やっとのことで壁の出っ張りにしがみ付くが、飛んで来る瓦礫が左腕のチョバムアーマーを爆発させる。
僥倖にもその後すぐに吹き付ける風は収まり始めたので、MS本体に目立った損傷は生じなかった。
『なに、やってるのさ! ばか! 甲斐性なし!』
「なあに、かえって動きやすくなった」
追加装甲の剥がれた左腕を回して強がってはみたけれども、明らかに失態である。査定に響くであろう。
『いったい君は、こんなことでなにしてんです!』
白昼夢を見ていたなどとは、言い訳にもならない。プロ意識云々以前に、夢の内容からして条例に触れてしまう。
デイヴィッドは柄にも無く平謝りしつつ、絡まったケーブルやらなにやらを直し始めた。
隔壁を抜けるとそこは市街地であった。街路灯のものと思われる明かりが見えた。
新たに構築された三次元マップには、高さ五十メートルほどの天井の下に直方体の建物が碁盤割りで広がっている。
大まかな構造はこの間まで暮らしていた居住小惑星と似たようなものである。
デイヴィッドは拍子抜けした。四百年もの年月を経た遺跡の姿は想像していたほど奇怪なものではなく、見慣れたコロニーの夜景とほとんど変わりない。
すこしばかりの騒音を立てれば、寝ていて起こされた住人が今に怒鳴り込んで来るように思えたが、計器に表示される気圧や気温はそこに生きている人間が存在しないことを示している。
解除コード入力のおかげか電源はそれなりに生き返ったが、太陽光入射機能は停止しているので辺りは暗い。
建物の壁や道路の舗装をライトで照らすと、そこにおびただしい霜がこびり付いているのがわかった。
もし今ここでドームの機能が完全に息を吹き返したのなら、内部は惨憺たる様相を呈すであろう。電源を抜いた冷凍庫の中身は悲惨である
484 :アナザードルダ 6/13:2008/07/21(月) 18:34:06 ID:???
「あー、文化財を一体発見。指示を求む。状態は……FDAに抗議文を送ってくれ。屠殺業者の忘れ物らしい」
霜に覆われた赤黒い塊が道路の真ん中に落ちていた。宇宙空間でのそれと異なり保存状態は芳しくない。
茶色く染まった合成繊維の切れ端の下に、黄ばんだ白い部分があちこち露出しているのと、そこだけ色あせていない蛍光色の毛髪が目に障った。
ドームの温度調節機能が停止するまでに数ヶ月の猶予があったことが察せられる。
『そんなものに用はない。先へ進め』
青ざめた顔で口元を覆っているフィリアに代わってアルフ博士が淡々と指示を出した。いかにも眼中に無いといった感じである。
デイヴィッドは連邦軍に居た頃にこうしたものを見慣れていたのであったが、思わず口を滑らせた。
「墓暴きの身としましては、呪いやら何やらが恐ろしくて堪らないんですがね。フィリア、この機体のシールは万全か? えたいの知れんウイルスに感染するくらいなら疝気のほうがよっぽど粋だぜ」
『デイヴィッド・リマー、我々に無駄口を叩いている時間はない』
「言うべきことも言わんあなた様がそう仰いますか? 小賢しい仕方で片棒担がせようって魂胆はとっくにわかってんだ。ことごとくが空々しいんだよ、あんた達の言うことはな」
『デイヴ!』
デイヴィッドはフィリアの慌てた声を聞いて口を噤んだ。モニターのアルフ博士は眉間に皺を寄せて、不遜なパイロットを睨みつけている。
デイヴィッドは暫しの間睨み合いを続けると、チッ、とこれ見よがしに舌打ちをしてから白々しく謝罪した。
デイヴィッドは不愉快であった。気が苛立っている理由は自身でもはっきりわかっていた。先ほどの白昼夢である。
考えまいとするほどに夢の内容はくっきりと輪郭を帯びて行き、グワッシュを進ませていながらも、不意にその光景が脳裏を掠めることが幾度と無くあった。
道中、赤黒い塊をしばしば目にしたが、何ら感慨は湧かなかった。そんなものよりも目標地点へ近づくにつれて増して行く、言い知れぬ気持悪さに吐き気を催した。
グワッシュは市街地を真っ直ぐ進んで、コントロールタワーにたどり着いた。以前と同じ要領でMS用ゲートを開き、下の階層に向かうエレベーターを予備電源で起動させた。
ケーブルは既に十キロメートルほど引き出されている。それなりに細くて軽いケーブルであるが、グワッシュの馬力で引き摺るにはそろそろ限界である。
485 :アナザードルダ 7/13:2008/07/21(月) 18:41:43 ID:???
調査の終りを思うと一息付きたくなるが、中枢ユニットへの扉を前にしてデイヴィッドは今にも泣き言を吐いてしまいたい心地であった。
目玉の裏側にざらついた引っ掛かりが生じている。瞽女声(ごぜごえ)を偲ばすような耳鳴りがしていた。気分はよりいっそう酷いことになっている。
ムウシコスからの解除コード入力が済んでシャッターが開くと、隙間から白いガスが噴出してグワッシュの視界を覆った。
ガスが晴れる間際、白昼夢の最後の場面が瞬間的に再生され、その一瞬間、ぶれるように現実の光景と重なった。
『これは、MS……』
目を向けると、巨大な中枢ユニットの前に一機のMSらしきものがぽつねんと立っていた。
純白の機体である。女性を思わせる、すらりとした形状のMSである。各部の構造はこれまで見たどのMSにも当てはまらない。
武器の類は一切装備していないようである。腕の先にあるのはレンズのようなものの付いた手の甲だけで、マニピュレータは見えない。
顔を覆う大型バイザーの上には、ガンダムタイプに似たV字型アンテナが生えている。
「どうだ爺さん、これで満足か? あんたのご希望通りオーパーツが見つかったぜ。畜生が。新品同然の小奇麗なお人形さんだ。この――」
ドルダ、と続けようとしているのに気付いて、デイヴィッドは愕然とした。
なぜ自分は目の前に立つ初対面のMSの名前を知っていて、さも当たり前のように口に出そうとしたのかわからなかった。
デジャビュの類にしては行きすぎている。加えて、そのMSの姿は白昼夢の最後の場面に登場するMSと瓜二つである。
デイヴィッドは咄嗟にこの既知感を解明しようと頭をめぐらせた。贋の追想と心理学で呼ばれている現象であるとも考えられた。
それは極端な疲労や虚脱などの状態に置かれた人間に起こりうる現象で、記憶だけが自動的に意識より先に出るために云々という原理からなっている。
けれどもその場合、既知感だけがあって、決してその原因を想起出来ないのが特徴である。残念ながら、先から白昼夢の内容に悩まされていたデイヴィッドには当てはまらない。
あの奇妙な白昼夢の記憶それ自体も、自身が瞬間的に行った妄想の産物であるかもしれないが、そうとなればいよいよ自分の脳味噌は酒の毒に蝕まれ切ったことになる。
486 :アナザードルダ 8/13:2008/07/21(月) 18:44:42 ID:???
『こいつ、動くぞ』
老人の声にデイヴィッドは引きつった顔を上げた。純白のMSは勝手に起動を始めて、あたかも痙攣する人間のようにその肢体を小刻みに震わせていた。
不可解にも光のラインが装甲の継ぎ目に走っている。エメラルドの輝きを連想させる緑色の光は、これと言った理由も無しに嫌悪感をかきたてた。
デイヴィッドは自然とグワッシュに高周波スコップを構えさせた。失われた超科学の産物に勝てるとは露も思わないが、妙な真似を見せたらば即刻飛び掛る心積もりでいた。
バイザーが引き上がり、ツインアイが露出した。いよいよガンダムに類似している。グワッシュの腰を落とし、いつでも突撃出来る体勢を整えた。
フィリアやアルフ博士が何やら喚いているのを聞き流す。
目の前のガンダムもどきを今のうちに破壊しておかなければ、何か取り返しの付かないことになるかもしれない。そうデイヴィッドは感じたのである。
所有の許されないブラックテクノロジーであるばかりでなく、もっと禍々しい何かがあの機体に秘められているという予感があった。
デイヴィッドがスラスターにエナジーを送り込まんとした折りも折り、矢庭に純白のMSに走る光のラインが消え去った。
そうして途端に失神するようにがっくりとくず折れて、痛々しい体勢で床に身体を預けてしまった。
487 :アナザードルダ 9/13:2008/07/21(月) 18:48:47 ID:???
スコップの切っ先を向けたまま油断無く距離を詰めて行くと、純白のMSの腹部装甲がゆっくりと開いて、大人二人ぶんほどの大きさのカプセルが現れた。
胴体が横を向いた無理な体勢であったので、重力に従ってそのカプセルは音を立てて転げ落ちる。
デイヴィッドは慌ててグワッシュの手を伸ばしてそれを受け止めた。
カプセルの表側は透明な材質で作られているが、カメラの解像度を上げても中は曇っていて見えなかった。
「博士、この玉っころは何なんだ?」
『おそらくは冷凍睡眠カプセルであろう。当時の文献にも記載されておる』
そうこうしているうちに段々とその曇りも晴れて行って、カプセルの中身があらわになる。
飾り気の一切見当たらない白い服を着た少女が、死んだような表情で眠っていた。年のころ十四五と思われ、顔の作りは現代の人間のものと変わりない。
ただ、腰まで伸びるエメラルド色の髪が、当時行われていた遺伝子操作の名残をとどめていた。
「よりにもよって、生ものかよ」
苦々しくそう呟くのと同時に、少女の目がぱちりと開いた。カメラ越しに視線が重なったとき、デイヴィッドは目の奥にざらざらしたものが通り抜けるのを感じた。
488 :アナザードルダ 10/13:2008/07/21(月) 20:02:16 ID:???
大気中に漂う粉塵の多い日であった。ドーム・テーレマコス脇の連邦軍駐屯地の空は赤々として、まるで血で染め上げられたように見えた。
空の色よりもさらに鮮やかな赤で彩られた一機のMSが、基地の上空に静止していた。
肥大化した異形の頭部を持つ真紅の機体は両腕で大型ライフルを構えて、その長大な砲身の矛先を連邦軍基地の一郭へ向けていた。
見下ろされる基地の方では、上空の真紅の機体を取り囲むように配置された幾十もの数のMSがそれぞれ狙撃用ライフルで狙いをつけている。それらのMSはMSU-13ブッシュである。
基地に破壊の形跡は無かった。連邦軍基地のブッシュ隊に敵対しているのは、真紅のMSのみであると思われた。
『ベイト大佐、どういうつもりだ』
「故郷に錦を飾りたくなりましてね、少将閣下殿。ガンダムマルスの力は我らマーズノイドのためにこそ用いられるべきでしょう」
『火星の重力に中てられて先祖返りしたか、マスター・ベイト。だが、いかにガンダムといえども単機ではどうにもなるまい』
真紅の機体のコックピットに坐る男は唇の端を歪めるに過ぎなかった。
通信の相手に対するものとは別に表示されたウインドウには、三重冠を被って白い法衣を着た老人が、巨大な十字架の前に立って演説する場面が映し出されている。
この映像は火星の全ドームと火星圏の全コロニーに向けて放送されていた。
演説の主な内容は、マーズノイドの独立宣言と宇宙連邦政府への宣戦布告である。
「門は開かれました。去勢された人類が目覚めねばならぬ時がきたのです」
『狂信者が世迷い事を』
「水に落ちた犬を打たぬは人の子弟を誤る。狆はことに水中に打ち落としてさらに追い打たねばならぬ――古代の俚諺です。閣下を捕虜には致しません。
革命成就のために敢えて汚名を、この私、トマス金鍔次兵衛が!」
ビームスマートガンのレドームが回転を始める。ブッシュ隊がライフルの引き金に手をかけた。
『撃てば、貴様も死ぬぞ』
「我らが天主(デウス)
さんたくるすの御しるしをもて
我らが敵をのがしめ給え
天主ぱあてれ
ひいりよ すぴりつさんとの
御名をもて あめん」
男が奇妙な祈祷文を詠い終えたのと同時にウインドウに映る老人の演説も終了し、一拍置いてビームスマートガンからひとすじの赤い光が放たれた。
489 :アナザードルダ 11/13:2008/07/21(月) 20:06:46 ID:???
司令部のある建物の外壁が爆発した途端、ブッシュ隊の約半数の機体が、残る半数の味方に銃口を向けて引き金を引いた。彼らは示し合わせていたのである。
連邦軍のブッシュ隊は不意の裏切りになす術も無く破壊されて、同士討ちにもならなかった。
『ベイト大佐――いえ、トマス金鍔次兵衛枢機卿猊下。連邦軍施設の制圧および軌道上監視衛星の破壊は滞りなく進んでおります。あと数時間もすれば完了するでしょう。
火星連合加盟に同意を表明したドームは、現在のところ全体の約七割。異教徒の多いアルカディア地域などの新興ドーム郡は中立を主張しておりますが、それも時間の問題です』
「報告ご苦労、アンデレ権八郎」
アンデレ権八郎という青年の報告が済むと、ベイトは先ほど砲撃した建物にガンダムマルスのメインカメラを向けた。
派手な爆発とは裏腹に、建物の損傷自体は大したものではなかった。
外壁から内部の司令室にかけて、整った円形の穴が開き、そこから見える床のタイルに軽い焦げ付きがあるきりである。穴を塞ぐだけで司令室は機能を取り戻すであろう。
出力、照準ともにおそろしく精密なその射撃は、ガンダムマルスの性能の為せる業であった。
有無を言わせず連邦軍が徴用した火星の技術者たちが、たえ難きをたえしのび難きをしのんだ末に完成した好ましくない生い立ちの機体ではあるが、それがマーズノイドのものとなったならある種の英雄的色彩を帯びてくる。
裏切ったブッシュの中にはガンダムマルスを向いて祈るように両手を組んで跪いている機体や、大げさに十字を切る仕草をして見せる機体があった。
建物に空いた穴の横に、端末や内装の残骸、それから生身の人間が放り出されていた。気圧差で外に吸い出されたのである。
ベイトが少将閣下と呼んだ老人もそこに混じっている。彼らの直接の死因はマルスのビームによるものではなく、主に野外活動服を着ていないことによるものであった。
最期に顔を歪める余地があったのは、火星の半端なテラフォーミングが理由であろう。ベイトは胸に下げた十字架に手を触れて、
「いんぴいあんぱあしすゥ
えっぽろすぺりたちすゥ
じりがつなうすゥ
おむにぽてんす……」
という古代語の呪文を唱えた。スペースノイドの元同僚たちを弔う意味があったかはわからない。彼の表情は小揺るぎもしていなかった。
490 :アナザードルダ 12/13:2008/07/21(月) 20:10:26 ID:???
遡って老人の演説が行われる少し前、火星の成層圏を一機の大型輸送艦が飛行していた。ずんぐりとしたその赤色の輸送艦は、カナリヤの同型艦『テレウス』である。
無駄な区画の多いカナリヤとは違って多数のMSを搭載でき、現在、その広い格納庫には三十機ものMSが鎮座していた。
どれも同じ機種で、五機の内に一機の割合で重装備が施されている。
後頭部にある二本の垂直アンテナと前に突き出した額が印象的なそれらの機体はMAS-66ガーランドというMSである。
スマートな体躯と各所スラスターによって高い機動性と運動性を誇り、加えて整備性や操作性にも優れている総合的に見て非常に優秀なMSではあるが、火星ドーム郡のMS部隊でしか用いられていなかった。
ガーランドは本来、連邦軍の主力MSとなるべく開発された機体で、ドーム・テーレマコスの軍需企業を中心とした火星ドーム郡の軍産学複合体が開発元である。
けれども、ガーランドが同時期に開発されたMSの中でも抜きん出たスペックを持ち、模擬戦で全勝という成果を収めたにもかかわらず、新宇宙暦066年の次期主力MSトライアルの結果、MSU-13の座はブッシュのものとなった。
ブッシュは月の企業が開発したのである。
491 :アナザードルダ 13/13:2008/07/21(月) 20:14:42 ID:???
三十機のガーランドの中に一機だけ全身を黒く塗装した機体があった。頭部の形状も少し異なっている。
黒いガーランドのコックピットには、赤毛の男が瞑想するような面持ちで佇んでいた。
『レオ五郎右衛門隊長、玉音放送が始まったみたいです』
通信でレオ五郎右衛門と呼ばれて、赤毛の男は微かに目じりを震わした。レオ五郎右衛門というのは洗礼名である。
スペースノイドの彼がコンパニヤというマーズノイドの宗教に入信してから一年の月日が過ぎている。しかし珍妙な洗礼名には未だに慣れることが出来ないでいた。
部下にはなるべく元の名前で呼んでもらいたかったが、彼らは火星の独立にかこつけて、今では公然と互いの洗礼名を呼び合うようになっている。そこに悪意が感じられないだけに赤毛の男としては決まりが悪い。
『ああ! 教皇ペトロ四郎猊下はなんと神々しいお方なのでしょう。満ち満ちた霊(アニマ)が目に見えるようです』
画面にいるペトロ四郎の姿に部下は感極まる様子であったが、赤毛の男からしてみれば、その老人は柔和な顔立ちという以外には別に取りたてて言うべきこともない老人である。
赤毛の男は恍惚とする部下たちを窘めて、あらためて作戦内容を確認させた。作戦開始は演説が終るのと同時である。
船体下部のハッチが幾つも開いて、下半身を固定された逆さ吊りのガーランドが姿を現した。
『ゼスス・キリシテ、サンタ・マリヤ、サンチャゴ』
全パイロットの合唱が聞える。赤毛の男も控えめに祈りの文句を唱えた。
『ゼスス・キリシテ、サンタ・マリヤ、サンチャゴ』
下半身の固定装置が外された。重力に引かれたガーランドが順々に滑り落ち、下に広がる雲の中へと消えて行った。降下目標は北極冠遺跡である。
492 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/21(月) 21:25:58 ID:???
アナザードルダの人、乙!
地球、火星の二項対立に宗教を絡めてくるとは。
十三の寝台と少女ってのが気になるな。
今後ドルダやムウシコス、マルスがどう動いていくのか、ドルチェの扱いも気になる
493 :492:2008/07/21(月) 21:30:54 ID:???
ちょっと今眠くてなんか日本語変でスマソ
あと追記だがマルスが出てきたのは嬉しいな。役者が揃ったって感じで
それとムウシコスってネーミングの由来は何か気になった
494 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/22(火) 02:32:05 ID:???
age
495 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/22(火) 05:05:56 ID:???
???
いつからSSスレになったw
少し産む…のかな
一番奇抜なのはレイダーでそ
496 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/22(火) 06:43:20 ID:???
>>495
いつからもなにも、ここは最初からガンダムドルダについてのスレだが。
パッと見蓑虫なのに装甲をパージすると>>407みたいな手足の曲線が美しい本体が露出、はがれた装甲は独立した支援メカになるという奇抜っぷりらしいぞ。
マジレスしちゃうとエクシアもなかなか奇抜だと思う。今でこそプラモや本編とあいまってかっこいいと感じるけど、デザイン発表当時は阿鼻叫喚だったからな。
497 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/23(水) 00:37:46 ID:???
00のガンダムはカトキやガワラじゃなかったからな
そこが好きだ00は
498 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/23(水) 02:42:25 ID:???
俺はヴァーチェ、ナドレが奇抜というかありそうでなかった感じと思ってた
それはそうと、人減ったな…
499 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/23(水) 17:39:51 ID:???
age
500 :通常の名無しさんの3倍:2008/07/23(水) 20:53:47 ID:???
500