571 名前:ガンダムさんちの音楽隊・アルフレッド編?投稿日:2008/06/11(水) 02:45:01 ID:???
ぷち議論中の流れを読まずに投下開始!
今回は何時にもましてベタな話となります。途中でオチが読める方も多いでしょう。w
おまけに、今時クリスマスの話です。長いです。
でもやりたかったんだよぅ…
572 名前:ガンダムさんちの音楽隊・アルフレッド編?投稿日:2008/06/11(水) 02:46:50 ID:???
パラレルパラレルルルルルルー
それは、寒い季節のことだったと言う。
クリス「こんばんは」
バーニィ「………クリス!?」
クリス「なぁに? 夜道でお化けにあいました、みたいな顔して」
バーニィ「あ、いや、その、こ、ここで合えるとは思ってなかったから…」
クリス「そうね、すっごい偶然。
せっかくだし、ボディガードお願いしちゃっていいかしら?」
バーニィ「うん、任せてくれよ…(って、家まで送れってことか?)
(いや、そうだよな、こんな夜道でクリス一人にできるわけ無いだろ)
(って言うか、クリスに言われる前に切り出せなくてどうする!)」
クリス「じーーーーーーー」
バーニィ「はっ!」
クリス「どーしたのー?」クスクス
バーニィ「な、なんでもないよ、何でも…」
クリス「そう? じゃ、行きましょうか」
他愛も無い会話をしながら歩く二人を、突然の寒風が襲う。
バーニィ「っぷ! うーーーさみっ!
やっぱりコート欲しいなぁ…いやいや!」
クリス「またMSパーツ貯金?」
バーニィ「えっと、まあ…」
視線を逸らして、空を見上げるバーニィ。
夕餉には早い時刻だが、既に日は落ち、空には星がきらめいている。
クリス「いい天気。 明日も冷えそうねー」
バーニィ「ん、そうだね」
クリス「あら?」
バーニィ「ん?」
クリス「あれ、アルじゃない?」
バーニィ「…ホントだ、あんなところで何をしてるんだ?」
クリス「楽器屋さん?」
それは、商店街の外れにある、小さな楽器屋だった。
そのショーウィンドウに張り付いている小さな影。
バーニィ「おーい、アルー!」
アル「あ、バーニィ! クリスも!」
クリス「こんばんは、アル」
アル「こんばんは。 お邪魔しちゃった?」ヒソヒソ
クリス「子供はそんなこと気にしなくていいのよ」
バーニィ「何見てたんだ? 随分熱心だったけど…」
ショーウィンドウを覗き込むと、そこには黄金色のトランペットが飾ってある。
それは、ライトを受けて、誇らしげに輝いていた。
クリス「トランペット?」
バーニィ「へー…って、高っ!」
クリス「そう?新品ならこんなものよ?」
バーニィ「いやいや!これだけあったらホシオカのROMユニットが…」
アル「あはは、そうだねー」
クリス「なぁに?トランペットが欲しくなったの?」
アル「えっと、欲しいって訳じゃなくて…キラキラしてて、かっこいいなーって」
クリス「そうねー、ライトのせいもあるんだけど…
私はてっきりアルも音楽に目覚めたのかって思っちゃったわ」
573 名前:ガンダムさんちの音楽隊・アルフレッド編?投稿日:2008/06/11(水) 02:48:23 ID:???
バーニィ「アル、“も”?」
クリス「あら、知らない? ガンダムさんのご兄弟は、評判の音楽一家でもあるのよ?」
バーニィ「えっと…ドモンさんも?」
クリス「もちろん」
アル「ドモン兄さん、太鼓がすっごくかっこいいんだ」
バーニィ「ドモンさんが、太鼓…」
ねじり鉢巻に諸肌脱いで、和太鼓を叩くドモンの図。
クリス「…まあ、あながち間違っちゃいないけど」クスクス
普段、暇を見つけては叩いているのはボンゴというラテン楽器の太鼓だった。
かつて、拳を交えたファイターから送られたものだという。
アル「あとね、カミーユ兄さんもかっこいいんだよ! ぎゅいんぎゅいーんって」
バーニィ「ああ、カミーユ、そう言うの似合いそうだよな。
………アムロさんって、どんな楽器を?」
アル「…あれ?」
クリス「アムロさんはピアノが得意よ。 お家じゃあんまり弾かないみたいだけどね」
バーニィ「ピアノ…」
アル「へ~、そうなんだ…でも、ピアノって女の人がやる楽器じゃないの?」
クリス「何言ってるの、男性のピアニストっていっぱいいるわよ。
ピアノの鍵盤って意外と重いから、実は男性の方が向いてるの」
アル「ええ~」
クリス「今度アムロさんに聞かせてもらいなさい。すっごくカッコイイから」
バーニィ「ああ、やっぱり、かっこいいんだ…」
クリス「(あ、いけない…でも、自分で振っといて落ち込んでちゃ、世話無いわねぇ…)」
アル「バーニィ?」
クリス「さ、(イジケ虫はほっといて)帰りましょ、アル」
アル「うん!」
クリス「…もう、手がこんなに冷えてる!手袋くらいしなさい」
アル「は~い」
バーニィ「…ほら、手、繋いでやるよ」
アル「うん!」
右手をクリスに、左手をバーニィに繋いでもらってご満悦のアル。
そして…
バーニィ「(俺もなんか楽器始めようかなぁ…)」
クリス「(……なんて考えてるんでしょうねぇ…)」
青年の悩みは尽きぬようである。
574 名前:ガンダムさんちの音楽隊・アルフレッド編?投稿日:2008/06/11(水) 02:49:28 ID:???
翌日。
バーニィ「お疲れさんでーす!」
シュタイナー「おう、お疲れ! 風邪を引くなよ!」
昨夜のクリスが言ったとおり、その日はさらに底冷えの厳しい日となった。
バーニィ「うおーーーっ!さみーーーっ!!」
軍手をして、マフラーをジャンパーの襟にたくし込み、背中を丸めて歩き出す。
バーニィ「冬は寒いし、夏は暑いし…地球ってのは大変だなぁ…」
それなりに季節は『設定』されているものの、地上に比べればずっとすごし易かった
コロニーでの生活を思い出す。
バーニィ「でも、向こうにはクリスがいないしな…ん?」
街灯も少なく、すっかり薄暗くなった通りに、ぽつんと輝くショーウィンドウ。
そして、その前にたたずむ小さな影。
バーニィ「アル?」
アル「あ、バーニィ、お帰りなさい!」
バーニィ「アル…また、こいつ見てたのか?」
アル「うん、きらきら」
バーニィ「そんなに金ピカが気に入ったのか?
俺のザクも金色にしろなんて言い出さないでくれよ」
アル「そんな趣味の悪いこと言わないよー」
シャア&ムウ「「なんだとっ!」」
バーニィ「………」
アル「………なんか言った?」
バーニィ「空耳だろ…さ、帰るぞ」
アル「うん!」
バーニィ「う~ん…」
ささやかな蓄えを示す預金通帳を前に、青年は唸っていた。
バーニィ「あのブースターを諦めれば、手が届かないわけじゃないんだよな…
でも、もう生産してない型だから、今を逃すと…いや、でも、アルが…」
ごろりと、万年床にひっくり返る。
バーニィ「そもそも、あれでアルんちって、けっこういいトコだしなぁ…
アルがあんなに欲しがってるんなら、買ってやるだろ…」
何しろ気鋭のIT企業で役員級の幹部社員を始め、GFの世界チャンプと番付に名前が出ても
おかしくない高額所得者がいるのだ。
バーニィ「とてもそうは見えないけど…」
築ン十年は固い日本家屋には、菜園まであり、タイムセールを狙って走るロランの姿も
何度と無く見ている。
バーニィ「ザクの修理費も、何度も出してもらってるもんなぁ…
あれって、本当ならこっちの過失十割だろ?」
やがて、バーニィは勢いをつけて、起き上がる。
バーニィ「恩は、返さないとな」
決意のまなざしで、携帯電話を取り出す。
バーニィ「あ、店長ですか?ちょっと、相談したいことが…」
575 名前:ガンダムさんちの音楽隊・アルフレッド編?投稿日:2008/06/11(水) 02:50:31 ID:???
クリス「アル!!」
アル「あ、クリ…ス?」
クリス「こんな時間まで何やってるの!」
アル「え?こんなって…あれ?携帯の電池切れてる…」
クリス「もう……ロランが心配してあっちこっちに電話してるわよ?」
アル「ありゃあ…兄さん怒ってるかなぁ…」
クリス「もうカンカンね。 しばらくはピーマンずくしを覚悟なさい?」
アル「うへぇ…っぷ!」ムギュ
クリス「ホントに、心配したんだから…」ギュウウゥ
アル「うん……ごめんなさい…」
クリス『ってことがあったのよ』
バーニィ「そっか…ごめん、ガレージで作業やってると、携帯の呼び出しとかほとんど
聞こえないんだ…事務所の方に電話くれたらわかるようにはなってるんだけど…」
クリス『あっ、そっか、仕事場に連絡するって手もあったのよね…
うーん、私もテンパってたんだなぁ…』
バーニィ「まあ、アルも無事だったんだし、いいじゃない」
クリス『それはそうだけど…これでも一応、テストパイロットなのよ?
緊急時の対応能力が問われちゃうわよ』
バーニィ「誰だって、いつも完璧って訳にはいかないさ。 要は…」
クリス『要は失敗を如何に次へ生かすか、でしょ? はいはい
………あなたにこうやって励まされるのも久しぶりね』
バーニィ「そりゃ、クリスがめったに失敗しない、優秀なパイロットだからさ。
今日のことだって、俺が残業で遅くならなきゃ、楽器屋の前は通ったんだから…
こんな大騒ぎになることもなかったんだし」
クリス『そうね、私がこんなに心配したのも、ロランが泣き止まなくて大騒ぎになったのも、
アルのご飯がピーマンずくしになるのも、ティファちゃんがガロードとらぶらぶなのも
ぜーんぶバーニィの責任ねっ!』
バーニィ「ちょ、いや、それは無いよ! 特に最後のナニっ!?」
クリス『この貸しの取立ては厳しく行くからね?
あいにくと年末はこっちも忙しいから、しばらくは待ってあげるけど、
年が明けたら覚悟なさい?』
バーニィ「へいへい、お手柔らかに…」
クリス『それじゃ、お休みなさい、バーニィ』
バーニィ「うん、お休み、クリス」
577 名前:ガンダムさんちの音楽隊・アルフレッド編?投稿日:2008/06/11(水) 03:02:41 ID:???
バーニィ「売れちゃったぁ?!」
店員「はぁ…つい、先ほど…」
バーニィ「他には! 在庫とかないんですか!」
店員「基本的に、ああいった楽器はご注文頂いてから、メーカーに発注するんです。
特にウチのような小さい店ですと…」
バーニィ「じゃあ、取り寄せにどれくらいかかるんですかっ」
店員「メーカー在庫が豊富なモデルですと、早ければ三日ほどで…」
バーニィ「クリスマスは明日ですよ…」
店員「まことに申し訳ありません…」
バーニィは落ち込んでいた。
残業と休日出勤を増やし、費用をむりやり捻出したせいで、肝心のプレゼントを
買う時間がとれなかったのだ。
クリスに頼んで買っておいてもらおうかとも思ったが、『年末は忙しい』と言う言葉と、
できれば一人でアルを喜ばせてやりたいという色気もあった。
結局、暇が出来たのはクリスマス・イブの当日になってから。
そして、アルが眺めていたトランペットを手に入れようと件の楽器屋を訪れたところ、
僅かな差で買われてしまったと言うのだ。
電話で予約を入れておくなり、思い立った時に一時金を入れるなり、
あらかじめ確保しておけばと後悔ばかり立つが、そうしている暇も無い。
バーニィ「ええい! 悩んでたってサンタが来るわけじゃないんだ!」
かくしてバーニィは
日登町、のみならず、磐梯市の楽器屋と言う楽器屋を駆け回った。
だが…
楽器屋B「そのご予算では、当店の商品は…」
楽器屋C「ウチはギター専門なんで」
楽器屋D「あいにくと在庫切れで…」
578 名前:ガンダムさんちの音楽隊・アルフレッド編?投稿日:2008/06/11(水) 03:03:31 ID:???
バーニィ「なんで、こんだけ店があって、トランペットの一つも置いて
ないんだよ…」
安いものではないだけに、どこの店も在庫は置かないのだという。
特に、需要の少ない管楽器は、注文販売がほとんどなのだ。
事前に確認しておかなかったことが、とことん悔やまれる。
バーニィ「くそ、雨まで降ってきやがった…」
長距離の移動にはMS-06FZを使うが、それでもまったく濡れずというわけにはいかなった。
やがて夜も更け開いている店そのものが無くなってゆく。
バーニィ「………何やってるんだろ、俺…」
クリスマス・イブと言うことで、街は鮮やかなイルミネーションにあふれている。
公園に止めたザクの…最後に訪れた店には駐機場が無かった…足元で、バーニィは一人ごちた。
ずぶぬれになって、たまたま知り合っただけの少年のために駆け回って…
バーニィ「まったく、何やってんだ…」
クリス「それは、こっちの台詞よっ!」
すかーーん!
バーニィ「いてっ!」
投げつけられた空き缶が乾いた音を立てる。
シーブック「ク、クリス、落ち着いて!」
クリス「うるさいっ!放しなさいシーブック! このバカちんぶん殴ってやる!」
シーブック「暴力反対! とにかくおちついて!」
クリス「はーなーせー! セシリーに変なトコ触られたって言いつけるわよ!」
シーブック「なんとぉー!」
バーニィ「………なんなんだよ」
ロラン「それはこちらが伺いたいところなんですが…」
シーブック「ロラン!いい所にきた!」
クリス「そこのバカ殴りなさい!」
シーブック「ちがーう!」
ぎゃーぎゃー
ロラン「えっと、とにかく、一度ウチへ帰りませんか?
バーニィさんも、ぜひ」
バーニィ「い、いや、俺は…」
クリス「逃げたら酷いわよっ!」シャギャー!!
ロラン「…酷いそうですよ?」
ガロード「うわ、そりゃひでぇ…んで、何が?」
バーニィ「ガロードまで…」
そう言っている視界の隅に、ゴッドガンダムが舞い降りる。
バーニィ「わかった、わかりました。
大人しく殴られないと、
ガンダム全機けしかけられそうだ…」
579 名前:ガンダムさんちの音楽隊・アルフレッド編?投稿日:2008/06/11(水) 03:05:00 ID:???
真冬の雨は、思った以上に冷たかったらしい。
熱いシャワーを浴びて、バーニィは初めて気付いた。
ロラン『しっかり温まってくださいね!
コロニー育ちって、こう言う時に油断する方が多いですから』
バーニィ「ああ、わかった」
ロラン『着替え、置いておきます。 コウ兄さんのですから、入るはずです』
バーニィ「ありがとう」
簡単な作りのシャワールームは、格納庫の片隅にあった。
人数の多い兄弟たちは入浴時間もまた戦争らしく、それを嫌ったジュドーと
ガロードが仮設住宅の設備と、MSの洗浄用施設を流用して作ったという。
バーニィ「ほんと、たいした兄弟だよな…」
バーニィ「シャワー、ありがとう御座いました」
アムロ「ああ。 まあそんな所で畏まってないで、座ってくれ」
経済新聞から顔を上げたアムロの頭には、飾りの付いた三角帽子が乗っている。
見回せば、広い居間にはクリスマス・パーティの飾り付けが賑やかにしてあるが、
家人はほとんど寝てしまったのか、表の雨音が聞き取れるほど静かだった。
ロラン「どうぞ」
バーニィ「あ、ありがとう」
ちゃぶ台に付いたバーニィの前に、ホットミルクを満たしたマグカップが置かれた。
アムロ「なんにせよ、無事でよかった…」
バーニィ「え? 俺、そんなにご心配おかけするようなこと、やりましたか?
クリスはなんでかカンカンですし…」
アムロ「はは、やっぱり気付いてなかったか…」
ロラン「大変だったんですよ?」
アムロ「今日の夕方に、マフ…」
クリス「バーニィ!!」
バーニィ「はいっ!」
クリスの、正しく怒声に蹴り上げられるように、バーニィが直立不動で立ち上がる。
ツカツカと…と言うよりは、ノシノシと…歩み寄ったクリスが、右腕を振り上げる。
バーニィ「(ビンタがくる!)」
歯を食いしばるバーニィ。
三つ編みに纏めたクリスの髪が跳ね上がる。
どすっ!
バーニィ「ぐふっ…」
ドモン「ほう、いいショートフックだ」
ガンダム・オブ・ガンダムお墨付きの拳が、バーニィのボディに突き刺さる。
予想外の打撃に、バーニィの膝がおちた。
ロラン「うわぁ…」
バーニィ「こいつは…想定外…」
青くなったバーニィの顔が、不意に柔らかくて温かくていいにおいのする物に埋まる。
クリス「ほんとに、心配したんだから」ギュゥ
アムロ「おやおや…」
ガロード「いいシーンだねぇ」カメラカメラ
バーニィ「………」
クリス「心配、したんだから…」ヒック
バーニィ「…!…!…!!」ジタバタ
ロラン「あの、バーニィさん、息ができてないんじゃ…」
580 名前:ガンダムさんちの音楽隊・アルフレッド編?投稿日:2008/06/11(水) 03:05:56 ID:???
バーニィ「マフティー? って、あの、テロリストの?」
アムロ「そうだ。 夕方頃に爆弾テロを起こしてね。
例によって人的被害はほとんどなかったんだが…
その時に改型のザクが破壊されたと言う情報があったんだ」
バーニィ「へぇ…」
アムロ「念のため、君に連絡を取ろうとしてもつかまらない。
ひょっとしたら、とクリスが心配を始めてね」
バーニィ「連絡? …あ!俺の携帯!!」
ガロード「もちろん、雨に濡れてアウトー」
バーニィ「おいおい…機種変したばっかなのに…」
ガロード「ま、ちゃんと乾けば使えるようになるかもしれないし、
最悪データのサルベージくらいはできるだろうし」
バーニィ「やれやれ…」
アムロ「まあ、充分に不運だったみたいだな。 とは言え、クリスも心配しすぎだ」
ガロード「想われてるねぇ」ウリウリ
バーニィ「い、いや、あはは…」
アムロ「ふむ…兄代わりとしては、少々寂しくもあるな」
クリス「不覚………」
洗面所で何度も顔を洗い、タオルで拭いながらクリスはつぶやいた。
いくらテロ事件発生直後だったとは言え、少々連絡が付かないからと取り乱し、
挙句、無事な姿を見たとたん逆上、握りこぶしでボディブロー。
そして、トドメに………。
クリス「うああああっ!
クリスチーナ・マッケンジー一生の不覚だわっ!」
ロラン「良い物を拝見させていただきました」クスクス
クリス「うくく…しばらくはこのネタで弄られそうね…」
ロラン「だいぶ調子が出てきたみたいですね」
クリス「ええ、もうすっきりしちゃったわよ」
ロラン「僕から言わせてもらえば、クリスは『お姉さん』しすぎです。
もっと色々甘えていいと思いますよ」
クリス「『弟』がこんなにいっぱい居ればねぇ…。
でも、みんないつの間にか頼りがいのあるオトコノコになっちゃったわね」
ロラン「どーんと頼ってください。 みんなで力を合わせれば、何だってできます!」エッヘン!
クリス「そうね。 とりあえずはお腹がすいちゃった!
ロラン~、ごはんー」
ロラン「はいはい」
581 名前:ガンダムさんちの音楽隊・アルフレッド編?投稿日:2008/06/11(水) 03:07:26 ID:???
バーニィ「そういえば、アルは?」モグモグ
ロラン「クリスに負けず劣らず心配してたんですけどね。
無事だってわかったら安心して、ばたんきゅーです」
クリス「もう、日付が変わっちゃう時間よ?」パクパク
バーニィ「うわ、ほとんど半日走り回ってたのか、俺…
…このスープ旨いな…」ゴキュゴキュ
クリス「そりゃ、ロランの愛情たっぷりスープよ?
…ほんとに美味しいわね…おかわり」
アムロ「それで、なんで半日も走り回ってたんだい?」
クリス「(アムロ兄さん、あのトンガリ帽子が気に入ったのかしら…)」ムグムグ
バーニィ「えっと、その…アルにクリスマス・プレゼントを買ってやりたかったんですけど、
どこにも売ってなくて…」
クリス「やっぱり…」
アムロ「そいつはありがたいが…ザクのプラモとかで充分だろう?
それなら何処ででも手に入ったんじゃないか?」
バーニィ「その…トランペットを…」
ロラン「トラン…ペット…?」
アムロ「………なるほど、そういうことか…」
クリス「はぁぁぁぁぁぁ………」タメイキ
バーニィ「あの…どうかしましたか?
時間も忘れて見入ってるみたいでしたから…よっぽど欲しがってたんだなって…」
ロラン「………」
クリス「………」
バーニィ「???」
アムロ「バーニィ、ちょっと手伝って欲しいことがあるんだが、いいかい?」
バーニィ「え? そりゃ、俺で出来ることでしたらなんでも…」
アムロ「アルの枕元に、プレゼントを置いてきて欲しいんだ」
バーニィ「そんなことですか?別に良いですけど」
ロラン「これがそのプレゼントです…」
バーニィ「けっこう大きいですね…」
クリス「…そりゃあ、トランペット一式ですもの…」
バーニィ「へぇ………え?」
アムロ「クリスから話を聞いてな。 それならと思ったんだが…」
バーニィ「ひょっとして…」
クリス「そう、あの楽器屋さんで買ったの…」
バーニィ「ええええ~~~~~っ!!」
582 名前:ガンダムさんちの音楽隊・アルフレッド編?投稿日:2008/06/11(水) 03:16:09 ID:???
バーニィ「はあああああぁぁぁぁ~~」
クリス「うわ、すごいため息ね…」
バーニィ「いや、だってさ…」
クリス「まぁ、今日のがんばりが、まったく、完全に、パーフェクトにムダ!
…だった訳だもんねぇ」
バーニィ「そもそも走り回る必要すら無かったわけだからさ…
俺の、あの苦労はなんだったわけ? …ってな気分にはなるさ…
…クリスには殴られるし」
クリス「う、それは…ほんとに、ごめん」
バーニィ「…実は、そんなに心配してもらったんだと思うと…ちょっと嬉しかったり…」
クリス「………ばか(////)」
バーニィ「(////)…あれ?」
クリス「ん?」
バーニィ「雪…だ」
クリス「えっ?」
空を見上げるクリスに合わせて、バーニィが傘を下ろす。
二人の周りに、静かに、雪が舞い降りた。
クリス「ホワイト・クリスマスになったわね…」
バーニィ「積もるかな?」
クリス「どうかしら? 今の時期はそんなに積もらないんだけど…」
バーニィ「そっか…積もればアルが喜ぶんだろうけどなぁ」
クリス「そうね…これは、今日一日がんばった誰かさんへのご褒美なんじゃない?」
バーニィ「うわぁ、微妙なご褒美…」
クリス「もう、ここは『だったらいいな』とか言って爽やかに笑うところよ!」
バーニィ「無理! それ無理だから!」
クリス「…ほんっと、子供なんだから…ちょっと待ってなさい」
クリスは小走りにマッケンジー邸へ駆け込み…程なくリボンをかけた紙包みを抱いて戻ってきた。
クリス「これなら、素直に喜べる?」
バーニィ「これ…俺に?」
クリス「いらないなら捨てちゃうわよ」
バーニィ「いりますいります、是非とも頂戴させていただきます! …開けていい?」wkwk
クリス「ええ!(…ほんっっとに、子供ねー…)」
瞳を輝かせながら包みを解くバーニィ。
バーニィ「マフラー!手袋も!」
クリス「…もうちょっと時間があったら、セーター編めたんだけど」
バーニィ「これ、手編み? すげー!」
喜色満面でマフラーを巻くバーニィ。
バーニィ「うわ~あったけー…ありがとうクリス! 大事にするよ!」
クリス「風邪でもひかれたらたまんないからね。
今日は帰ったらもう一度お風呂に入ってしっかり温まること! いい?」
バーニィ「うん、わかってるよ。 マフラーありがと! 手袋も!」
雪に浮かれる子犬のように駆け出すバーニィ。
クリス「転ばなきゃいいけど」
遠くのバーニィ「うわぁっ!」
クリス「…もう……」
ちなみに、バーニィがクリスへのプレゼントを買い忘れていることに気が付いたのは、
その後布団に入ってからだったと言う……
バーニィ「しまったーーーーー!!」
583 名前:ガンダムさんちの音楽隊・アルフレッド編?投稿日:2008/06/11(水) 03:18:41 ID:???
ガンダム家の雪だるまは、ハロ型が基本である。
バーニィ「うわぁ…作ったなぁ…」
一番大きい物は直径2mはあろうかという大物だった。
それ以外にも10cmほどの小さいものから、40cmくらいのサイズまで、
数え切れないほどのハロが鎮座している。
アル「あっ! バーニィ!!」
バーニィ「よう、アル。 …お前、持ってるそれ(さりげなく、さりげなく…)」
アル「サンタさんに貰ったんだ!」
バーニィ「そっか、よかったな!」
アル「うん…」
バーニィ「(あれ?なんか反応が…)どうした?あんなに欲しがってたじゃないか」
アル「ええ~?別に欲しいなんて言ってないよー」
バーニィ「えっ!?」
アル「そりゃ、嬉しいけどさ…ホントは、PGのザクが欲しかったんだ…」
バーニィ「(ナンダッテー!!)…PGザクなら、もう持ってるだろ…」
イブの日、通りがかった玩具屋に置いてあった光景がフラッシュバックする。
アル「あれはノーマルの06Fでしょ? 改造して06FZにする分が欲しかったんだ…」
バーニィ「いや、でも、いっつも楽器屋のウィンドウに引っ付いて…」
アル「あそこで待ってれば、バーニィが通るから…」
バーニィ「はあっ!? …お前、いつも、あそこで、俺を待ってたのか?」
アル「そうだよ? だってバーニィお仕事が忙しいからって、
最近ぜんぜん遊んでくれないんだもん」
年末で忙しいと言うこともあるが、特にクリスマス前は、プレゼント費用を捻出するために
残業を増やしたせいで、時間がなかったのだ。
ちなみに、PG(パーフェクト・グレード)のザクは、プラモデルとしては超高価な商品だが、
社会人であるバーニィにとってポンと買えないほどのものでもない。
残業してまでがんばらなくても、手は届く。
バーニィ「(つまり、俺は残業をさっさと切り上げて、アルの相手をしてれば、
そんな誤解をしなくてすんだ? つーか、昨日走り回ったのは、ほんっっとに、
まったく、完全に、パーフェクトにムダ!?)」
クリス「ぷふっ!!」
アル「クリス?」
クリス「くくくっ……ご、ごめん……あはははははっ!」
バーニィ「クリス……」
クリス「あはははははははははははは! ひーー、お腹、お腹イタイ! あっはっはっはっは!」
アル「どうしたの、クリス…」
バーニィ「そんなに笑わなくてもいいじゃないか… ははは…」
クリス「あはははははははははは!」バンバン
バーニィ「痛い、痛いって…へへへへ…」
クリス「……はぁはぁ……ぷぷっ!」
バーニィ「わはははははははは」
クリス「あははははははははははははは!」
バーニィ「わはははははははははははははは!!」
アル「ちょ、ちょっと、二人ともどうしたの? ねえ、大丈夫?」
クリス「あははははははははははははは!」
バーニィ「わはははははははははははははは!!」
584 名前:ガンダムさんちの音楽隊・アルフレッド編?投稿日:2008/06/11(水) 03:19:32 ID:???
時はちょっとだけ流れ…
ギレン『今日、この日を迎えられたことを、私は誇りに思う…
そも、MSのトライアル・マラソンとは我がジオン・カンパニーが初の実用MSたるザクを
開発せんとした折に行われたコンペティションに端を発し…(ry』
ジュドー「お、バーニィさん最前列だぜ」
コウ「今年はクジ運に恵まれたな…スタートダッシュが上手くいけば…」
ガロード「あ、でも、すぐ近くに三連星の…ありゃガイアさんか?」
アムロ「ガイアが強引に出ようとしたら、巻き込まれるポジションだな…」
双眼鏡を覗く兄弟たちの視線の先には、スタートラインにひしめくザク、ザク、ザク…
梅雨時の日登町名物とも言える、『トライアル・マラソン』が、今始まろうとしていた。
ギレン『…奮闘せよ、剣持たぬ戦士諸君!たとえ志半ばに倒れたとて、それを非難するものはない!
諸君の健闘は、必ずや後世に語り継がれ、新たな世界の礎となるであろう!
奮闘せよ!我らが敬愛する戦士諸君!』
ロラン「いよいよ、ですね…」
クリス「アル、大丈夫かしら…」
シン「ずっと練習してたから、大丈夫だよ」
ドモン「いざという時の度胸もある。心配ない」
兄弟たちの見守る中、遠目でもそれとわかる
ドズル・ザビに促されて、アルフレッド・イズルハの
小さい体がスタジアム中央の櫓に駆け上がった。
ロラン「アル、落ち着いて…」
クリス「アル…」
少年は、輝くトランペットを誇らしげに掲げると、大きく息を吸い込んだ。
アル「(バーニィ、がんばって)」
いま高らかに、ファンファーレが響き渡る。
おわり
585 名前:ガンダムさんちの音楽隊・アルフレッド編?投稿日:2008/06/11(水) 03:21:50 ID:???
長々とお目汚し、失礼しました…
今回はこれにて終了。
名前をつけましたので、読みたくない方はスルーでお願いします。
それでは、名無しにもどります。
最終更新:2013年09月16日 23:16