367 名前:カテキョ! 1/4 :2008/08/02(土) 15:20:46 ID:???
-カテキョ-
ガンダム家の初夏。
夜、いつもより早く仕事から帰ってきた長兄アムロは思わぬ難問を前に頭を痛めていた。
アムロ「むぅ~………」
ロラン「どうしたんです、アムロ兄さん 何か悩み事でも?」
ロランは食卓で難しい顔をしてうなり声を上げていた長兄に声を掛ける。
アムロ「ん?ロランか…いやコレなんだけどな」
アムロがロランに指し示したのは兄弟の中の学生陣の通知表だった。
ロラン「ああ…それですか」
学生達の終業式の日はアムロの苦悩の日でもあった。
ガンダム家の学生陣は全部で13人…そのうち大学生であるコウと小学生のアル、シュウトはまぁ良しとして、残り10人。
大まかに四段階に分けるとしたらこうなる。
優…ロラン、キラ、ウッソ
良…カミーユ、シーブック、シン、ヒイロ
可…ガロード、ジュドー
此処までは良い…アムロはそれ程成績については五月蠅く言う方ではなく、勉強も個人の自主性に任せていた。
何より自分も仕事が忙しく、つい放任気味にしてしまいがちだった。
しかし…それ故に此処に一つの大問題が発生してしまっていた。
不可…刹那
ロラン「う…コレは…」
刹那の通知表を見たロランはその中で乱舞する電柱(1)とアヒル(2)の大軍に軽い目眩を覚えてしまう。
ロラン「兄さん…これは勿論五段階評価で、ですよね?」
アムロ「ロラン…保険体育と技術家庭科の評価を見てみろ…」
技術家庭……(10)保険体育(9)
アムロ・ロラン「はぁ~~~~~~…」
がっくりと肩を落とす二人。
ロラン「ま、まぁ…保険体育と技術家庭科が良いのは我が家の血筋ですけどねぇ…けど流石にコレは」
アムロ「ロラン…確かに俺は今まで弟達の成績に対してあまり細かい口出しはしなかった。
世の中には他に大切なことが沢山あるし、学校の成績だけで人間の価値は決められない」
ロランは神妙な顔で頷く。
アムロ「でも流石にコレは拙い。これじゃ卒業どころか進級すら難しくなってしまう。
ウチの家系に留年させるような余裕はどこにもないんだ」
この家の家計を預かるロランにもそのことは痛いほどよく判る。
ロラン「でも、どうします?刹那を塾に通わせるお金はありませんし…僕たちが勉強を教えると言ってもみんな忙しくてそれどころじゃ…」
確かに兄弟の中で刹那に勉強を教えられそうな者達は皆多忙でとても余裕は無いだろう。
しばらく難しい顔で黙り込んでいたアムロはふとある一つの名案を思いついた。
アムロ「…そうだよ…居るじゃないか!格安の料金で、時間に余裕があって、勉強が教えられる程頭が良くて、
何よりあの刹那と相性ぴったりの人が!なんで今まで考えつかなかったんだろう」
ロラン「そんなあり得ない程都合のいい人なんて…いますか?」
アムロ「ああ、今から早速話を付けに行ってくるよ。後、その人の協力を得るにはロランの力も必要だからな、頼むぞ!」
アムロはそういうと慌てて家から飛び出していった。
368 名前:カテキョ! 2/4 :2008/08/02(土) 15:22:54 ID:???
その翌日、朝食後から刹那は正座させられアムロの説教を喰らっていた。
他の兄弟は遠巻きにその様子を伺っている。
コウ「アムロ兄さんがあんなに長々と説教するの久し振りに見たよ…」
ドモン「成績がかなり悪かったそうじゃないか まぁ自業自得だ」
キラ「たかが学校のテスト位も出来ないなんて情けないね、刹那もさ」
シン「じゃあアンタが教えてやればいいだろうが」
キラ「めんどくさいし、ボクは無駄な努力って奴が嫌いなんだよね」
シン「アンタって人は!」
キラは欠伸をしながら自分の部屋へと戻っていく。
シーブック「そういやガロードやジュドーはあんまり成績悪くないんだよな…意外に」
ガロード「意外ってナンだよ意外って…シーブック兄も失礼だよなぁ」
ジュドー「学校のテストなんて頭の良さより要領の良さの方が重要なんだぜ」
ガロード「そうそう、そういうこと。それに判らないところはティファが教えてくれるさ」
ピンポーン
アムロは時計を見てロランに声を掛ける
「ロラン。家庭教師をお願いした人がお見えになった。悪いがこちらにお通ししてくれ」
ロランは頷くと玄関へと向かう。
ウッソ「家庭教師!?ウチによくそんな余裕がありましたね」
キャプテン「この家の家計は危機的状況を脱したとはいえまだまだ火の車です。
論理的に考えて平均的な授業料を取る家庭教師を雇える状態にはありません」
アムロはそれを聞いて苦虫を噛み潰したような顔をする。
ロラン「どうぞこちらへ」
???「…はい」
ロランが連れてきた人物は…意外な人物だった。
「「「「マリナさん?」」」」
意外な人物の登場にアムロを除いた兄弟達は驚きの声を上げる。
刹那「
マリナ・イスマイール…」
マリナは刹那の呟きに小さく微笑むと、アムロに向かって深々と頭を下げる。
マリナ「この度は家庭教師の職を斡旋して頂き有り難うございます、アムロさん」
アムロ「あ、いえ こちらこそいきなり無理を言って申し訳ない」
アムロは慌てて立ち上がるとマリナに頭を下げる。
マリナ「私は、私の全身全霊を賭して刹那君の成績向上に努める事を此処に誓います」
マリナは整った眉をキリリとさせ高らかに宣言する。
そして跪くと呆然と座ったままの刹那の両手を取りキュと握りしめ刹那の目を覗き込む。マリナ「頑張りましょうね、刹那君」
刹那「ガ…
ガンダムだ」
刹那は浅黒い頬をチョット赤くして目をそらしながら照れくさそうに頷く。
マリナ「そうよガンダムよ!二人でガンダムになりましょう!」
マリナは握った刹那の手をぶんぶん振りながら気合いの入った声でガンダムガンダムと繰り返す
ウッソ「そっか、家庭教師はマリナさんかぁ…盲点だったね」
シン「?」
ウッソ「マリナさんってああ見えても某一流大の教育学部卒で教員免許も持ってるんだよね。
刹那兄さんの家庭教師としては実にうってつけの人材だと思うよ」
シーブック「何故お前がそんなにマリナさんの事に関して詳しいのかは怖いから聞かないが…意外だな」
ガロード「でも、マリナさんって元はお嬢なんだろ?そう考えればおかしくないんじゃね?」
ジュドー「んだね。今はあんなだけど」
ヒイロ「適材適所か流石アムロ兄さんだ…しかし肝心なのは雇用条件だ」
コウ「確かに…マリナさんやたらと張り切ってるみたいだしアムロ兄さんもかなり奮発したのかな?」
369 名前:カテキョ! 3/4 :2008/08/02(土) 15:25:51 ID:???
マリナはひとしきり刹那とガンダム会話をした後、アムロへと向き直る。
そしてもじもじと言いにくそうにアムロに尋ねる。
マリナ「あの…昨日お話しいただけた条件で本当にいいんでしょうか?なんだか申し訳なくて…」
アムロ「勿論ですとも。」
マリナ「嗚呼…コレでこの夏はひもじさともおさらばです。シーリンもとても喜んでくれています」
それを遠巻きに見ていた兄弟達は慌てて頭を寄せ合い話し合いを始めた。
コウ「兄さん…一体どんだけの給料を約束したんだろ?」
シン「う~んマリナさんの尋常じゃない喜び様を見るとかなり奮発したんじゃないか?」
シーブック「そういえば、セシリーが家庭教師雇ってるんだけど時給2500円もかかるってカロッゾさん嘆いてたっけ」
ガロード「ええ~?家庭教師ってそんなに高いのかよ?!」
ジュドー「まさか俺たちの小遣いカットとか?」
アル・シュウト「「ええ~そんなぁ~」」
兄弟達がプチパニックを起こしかけたところにマリナの喜びに弾む声が響く。
マリナ「まさか…時給500円も頂けるなんて」
コウ「え゛?」
シン「…今500円って聞こえなかったか?」
マリナ「しかも三時のおやつに夕飯までご一緒させていただけるなんて…あぁ神様、マリナは幸せ者です」
その話を聞いて今まで黙っていたカミーユがポツンと呟く
カミーユ「俺…
マクダニエルのバイトで時給950円貰ってるんだが…」
ヒイロ「流石アムロ兄さん完璧な作戦計画だ…だが何故なんだ?この胸の痛みは…」
ガロード「俺なんだか目から変な汗が…」
ジュドー「畜生…オレもだよ…」
アル「ロラン兄ちゃん…僕お小遣い値上げしてなんて贅沢言ってゴメンなさい!」
シュウト「僕ももう毎日お肉が食べないなんて贅沢言わないよ!」
ロラン「あははは…」
涙目の
アルとシュウトに抱きつかれたロランは乾いた笑声をあげる
ロラン『アムロ兄さんが僕の協力が必要だっていったのはマリナさんのおやつと夕食の事だったんですね。
これは彼女の為にも腕によりをかけて頑張らないと…』
ドモン「俺は今猛烈に感動している…今の世の中にこんな清貧な女性がいようとは」
ドモンは漢泣きをかくそうともしない。
アムロ「マリナさん…じゃあ早速今日からお願いして良いかな?」
マリナ「はい、お任せ下さい。でも…」
マリナは持ってきた大きめのボストンバックを掲げてアムロに見せる。
マリナ「ちょっと準備があるのでちょっと一部屋お借りしてよろしいでしょうか?」
アムロ「もちろん…ロラン案内してあげて」
ロランがマリナを案内して隣の和室に入ったのを見て兄弟達は刹那の周りに集まって来る。
コウ「刹那…マリナさんの好意を無駄にするなよ!」
シーブック「そうだぞ。今時あんな(都合の)いい人笛や鐘を叩いても見つからないぞ」
カミーユ「此で成績が上がらなかったらマリナさんの親切を土足で踏みにじることになるんだからな」
ガロード「ガンダムなら当然やりとげられるよな?」
ジュドー「そうだ、ガンダムならできる」
兄弟の激励に刹那は顔を紅潮させて拳を握りしめる
刹那「俺は…ガンダムだ。任務は必ず達成させて見せる!」
ドモン「そうだ!その意気だぞ刹那!」
刹那を中心に兄弟で変に盛り上がってるところへマリナが戻ってくる。
370 名前:カテキョ! 4/4 :2008/08/02(土) 15:30:10 ID:???
マリナ「すいません…お待たせしました~」
「!?」
ロランを除いた兄弟全員が戻ってきたマリナの姿を見て一瞬固まってしまう。
アムロ「マリナさん…その…格好は?」
マリナ「家庭教師って事でそれらしい格好の方が良いと思って…おかしいですか?」
腰まである艶やかな黒髪を後ろで高くまとめ上げ、楕円形の伊達眼鏡をかけたマリナは自分の姿を見下ろす。
マリナ「シーリンに刹那君に勉強を教えるバイトだっていったら用意してくれた服なんですけど…」
ブバッ
アル「コウ兄ちゃんが鼻血吹いた!」
ウッソ「か…カメラカメラ!」
ウッソは慌て自分の部屋へと階段を駆け上がっていく。
マリナは胸元が深く抉れ襟元にギャザーの入った薄手の白ブラウスと黒レザーで超ミニのタイトスカートに網タイツを身に纏っていた。
普段殆ど露出しない民族衣装かくたびれた作業着ばかり着てるマリナしかしらないガンダム兄弟にとってこのギャップは破壊力満点だろう。
しかも極めつけに露出された細いうなじと形のよい唇を包む真紅のつやつやリップ、そして白ブラウスからうっすらと透けて見える黒いブラ線…。
ドモン「むぅ…胸はともかくあの豊かな腰回りはレインに勝るとも劣らん…大したものだ」
シーブック「いや、その台詞をさらりと言えるドモン兄さんも大したもんだよ…つか兄さんもちゃんと見てるところは見てるんだね」
ガロード「マリナさんってチョッと身綺麗にするだけでめちゃめちゃ変わんだなぁ…」
シン「ああ、女は魔物とは彼女のためにある言葉なのかもな…」
ジュドー「俺はあんな魔物になら喰われても良いかもだぜ…」
ロランはそんな華麗なる変身を遂げたマリナに見とれてしまっていた長兄のお尻を抓る。
アムロはその刺激で我に返ると咳払いをしながら場の空気を替えようとパンパンと手を叩いて大声を上げる。
アムロ「はい、それじゃあ刹那はこれからマリナ先生と勉強を始めるんで関係ない人はでていくんだぞ」
アル「マリナ先生、僕も夏休みの宿題教えて貰っても良いですか?」
シュウト「あ、僕もお願いします!」
マリナは二人に向き直るとニッコリ微笑む
マリナ「勿論いいですよ。先生はやる気のある子が大好きです♪」
ウッソ「あ、じゃあ僕もおn…」
そういってどさくさ紛れに入ってきたウッソをドモンが摘み上げる。
ドモン「お前には俺が教えてやろう…たっぷりとな」
ウッソ「ちょ…憧れのカテキョが~透けブラがぁ~」
そういいながらドモンはウッソを捕まえて部屋から出て行く。
それを合図に他の兄弟達もゾロゾロと部屋から出て行く。
刹那が卓袱台に座って勉強道具を広げるとマリナはその隣にピッタリとくっついて座り教科書を覗き込む。
刹那「マリナ…その姿はガンダム過ぎる…」
刹那は思いも寄らないマリナの変貌振りと鼻孔を擽る甘い匂いに我知らずうろたえてしまいそういうのが精一杯だった。
マリナ「んふふ…刹那君」
そういいながらマリナは刹那にずいっ顔を寄せると人差し指で彼のおでこをちょんと突っついて嫣然と微笑む。
「授業中、私のことはマリナ先生と呼ばないと ダ メ だ ぞ ☆」
マリナのなりきり家庭教師レッスンは夏休みが終わるまで続けられ、
二学期始めの学力テストで刹那は学年総合で50位以内にランクインするという驚異的な成績を叩きだしたという。
刹那「俺が…俺たちがガンダムだ」
マリナ「そうね私たちがガンダムだね、刹那君」
刹那の驚異的な成績の伸びに驚いた刹那の通う高校の校長が
マリナを正式教諭として迎え入れるべく調査を始めたのはまた別の話…。
END
373 名前:通常の名無しさんの3倍 :2008/08/02(土) 16:35:18 ID:???
クリス「カテキョのアルバイトはどうです?」
マリナ「はい!楽しいです」
クリス「あの兄弟じゃ大変でしょ?」
マリナ「いいえ、ちっとも・・・
ロランさんはご飯を作ってくれるとても素敵な方ですし
シーブックさんはパンを
お土産に持たせてくれるほどお優しい方ですし
カミーユさんはチーズバーガーを食べさせてくれる親切な方ですし
ドモンさんはこないだ猪を一頭くださった素晴らしい人です
そんな凄い兄上達をお持ちの刹那もやっぱり凄いです。ガンダムです」
クリス「・・・えーと、アムロさんは?」
マリナ「はい!先日、遅くなった時に家までおくって下さったのですが
途中、バーでカクテルを一杯おごってくださいました。
頑張ってるから特別手当だと。アムロさんていい人ですね」
クリス「(アームーローさーんー!!!)」
最終更新:2013年09月18日 19:11