560 名前:ハリーの災難1・鉄拳制裁やっちゃった投稿日:03/03/08 03:00 ID:???
私の名は
ハリー・オード。ディアナ様の親衛隊長である。今日はディアナ様がお忍び
で市井の暮らしを拝見なさりたいとおっしゃられたので、その唯一のお供としてガンダ
ム兄弟の家にやってきた。私だけがお供を許されたということの、なんと光栄なことか。
ユニバース、ユニバース。と、兄弟の長兄
アムロ君が近づいてきた。
アムロ「ようこそ、キエル・ハイムさん。ハリーさんも。」
ディアナ「お邪魔いたします、アムロさん。」
お忍びの行動ということで、ディアナ様はキエル嬢になられている。私も制服は着てい
ない。私も
アムロ君に返事を返そうとしたその時、
ジュドー「へへ、キエルさんっていいお尻してるね。」
あろうことかジュドーとやらはディアナ様に暴言を吐き、挙句の果てには軽くだがディ
アナ様の、その、お腰の下あたりを触ったのだ。それを認めたとたん、私は叫びとともに
不届きものに制裁を加えていた。
ハリー「ディアナ様の尻といったかぁーー!」
気付けばジュドーとやらが私の鉄拳を受け吹き飛んでいた。ん、すぐ隣から何者かが
飛び出してくる。
カミーユ「尻を尻といって何が悪い!すぐ殴るなんて、そんな大人、修正してやる!」
いきなり殴りかかられた私は反射的に手を出してしまった。私の拳が少年のみぞおちに
綺麗にはいったようだ。
カミーユ「ぼ、暴力はいけない……。」
自分を棚に上げる言葉はともかく、その響きは私の背中に嫌な予感を滑らせた。
ディアナ「ハリー……あなたはなんということをするのです……」
許されざる不敬行為だったといっても、言い訳はきいてもらえないだろう。
続く……
561 名前:ハリーの災難2・ちょっとした冗談ですよ投稿日:03/03/08 04:19 ID:???
ロランです。ハリーさんに殴られて気絶してしまったカミーユを介抱していると、ディアナ
様とハリーさん、お二人の会話が僕の耳にも入ってきました。
ディアナ「いきなり殴りつけるなど、あれではギンガナムと同じ、いいえ、それ以下です。
そのようなものに親衛隊を預けて置くことはできません。暇を差し上げます。」
ハリー「そ、そんな……それでは御身に何かあられたときには……」
ディアナ「そのときのために今日はロランに守ってもらいます。よろしいでしょう、ロラ
ン。」
すこし怖い微笑みを浮かべたディアナ様に急に話を向けられて、僕は黙って微笑み返すこ
としかできませんでした。なにかとんでもないことになってきています。
ディアナ「さぁ、ハリー、これであなたが私のそばに居る理由は無くなりました。」
おぼつかない足取りでふらふらと家を出て行くハリーさんは、ディアナ様の最後の命令
にあくまでも忠実でした。
それから1時間後、リビングに残ったのが一日親衛隊に任命された僕とディアナ様だけに
なったとき、ディアナ様はふふっと微笑まれ、僕に話しかけられたのです。
ディアナ「さっきのは冗談ですよ、ロラン。すこしハリーを困らせてやりたかったのです。
ハリーときたらこの頃はキエルさんと仲良くしたり、女装したロランに胸をと
きめかせたりで、私の警護をなんだと思っているのでしょう。そう思ってすこし
お灸をすえることにしたのです。私は別にハリーに女性としての愛情を感じ
ているわけではありませんよ、でも今まで私を守ることばかり考えていたあのハリーが……」
ようはすこしおふざけになられただけということのようで、夜には戻ってきて謝るでし
ょうね、そうしたらなんていってやりましょうか、とディアナ様がおっしゃるのを聞きな
がら、僕はディアナ様に臣下としてでも嫉妬してもらえるだろうか、と考えていました。
しかし、事態はディアナ様のお考えになられたとうりには進みませんでした。その日の
夜になっても、ハリーさんがディアナ様のもとに帰ってこなかったからです。
続く……
562 名前:ハリーの災難3・わが世の春が来た投稿日:03/03/08 05:14 ID:???
小生、
ギム・ギンガナムである。今日
ガンダム一家で起こったこと、小生は直接知って
いるのである。暇だったのであの一家に遊びに行くとなにやら騒がしい。そう思って窓の
外から覗いていると、ハリーが首になったではないか。これはチャンスである。ハリーの
MS操縦技術は素晴らしい。何よりディアナを陰に陽にサポートしていた。そんな男を
我がギンガナム隊に引き抜ければ、ディアナと小生のパワーバランスは逆転、小生が月を
支配し、闘争の世を築くのだ。ハリーが小生の申し出を受けるとは思えんが、上手く酒に
酔わせて入隊書にサインさせてしまえばよい。その後はだんだん後戻り出来ないところま
で追い詰めていく。ふ、ふははははぁ、我が世の春が来たぁーー!!
私、キエル・ハイム。先ほどのロランからの電話で、状況はある程度飲み込めたわ。今
ハリー殿は人生の全てを失ってしまったと錯覚しているはず。行き場をなくしたなら私の
ところに来てくださればいいのに。でも、ここであの方を私が支えてあげれば、ハリー殿
は私のことを一番に考えてくれるようになるかもしれない、いいえ、きっとそうなるでしょ
う。急いであの方を探し出し、この胸に抱きしめてあげなければ……
ソシエ「なに笑ってるのよ、お姉さま。なんか、怖い微笑みね。」
キエル「そう、ソシエ。そうね、もしかしたら我が世の春が来たのかもしれないのよ。ふふ。」
ロラン「え、ウッソもハリーさんを探すのを手伝ってくれるんですか。」
ウッソ「うん、ディアナ様とロラン兄さんが困ってるんなら、力になりたいんだ。」
ディアナ「ありがとう。ウッソ君。ハリーや私は兄弟の皆さんに迷惑を掛けたというのに…。」
うつむいてしまって…ディアナ様、綺麗なひとだなぁ。僕、ウッソは思う。ここでディアナ様
やハリーさんに恩を売り、将来ディアナ様の親衛隊に入るのも悪くないんじゃないかって。自慢
じゃないけど僕のMS操縦は完璧だし、機転だって利くほうだ。何より年上のお姉さんには好か
れる傾向あり!上手くいけばディアナ様とちょっとした仲に……なんとしてもここで活躍しなきゃ。
あぁ、ディアナ様ぁ。頑張れば、我が世の
春が来る!!
567 名前:ハリーの災難4・御大将、叫ぶ投稿日:03/03/08 21:36 ID:???
小生、
ギム・ギンガナムである。ハリーを尾行させていたスエッソンによるとハリーは
はこの街の中心の公園に居るはずなのだが、おお、居たのである。む、ハリーは不良少年
とやらに絡まれているではないか。彼奴らは2人、ハリーの敵ではなさそうだが……何を
しているのだ!ハリーのヤツ胸ぐらをつかまれても無抵抗のまま呆けている。ええぃ、も
う我慢がならん、小生が割って入り、餓鬼どもをぶちのめしてやるのである!
ギム「きさまらぁ、その男から手を離せぃ!」
ビーチャ「なんだよ、おじさん。こいつがぶつかってきても謝らないからいけないんだよ。」
ギム「ほおぉ、この
ギム・ギンガナムによくも言ってくれるものだなぁ。小童どもがぁ、手打ちにしてくれん!!」
モンド「ビーチャ、相手が悪いよ、さっさと逃げようよ~」
ふん、くだらん連中だ。が、ハリー貴様、そんな連中に好き放題やらせるとは、
ギム「何をしているのだ、
ハリー・オード!それでも小生と命がけでやりあった男かぁ!」
ハリー「
ギム・ギンガナムか……。私なんかになんの用だ。私はもうディアナ様に仕える
身ではない。だからお前と戦う理由は無い。それどころか、私には何も無いのだ。」
なんと完全な腑抜けになっているではないか。なんだ、小生の胸に熱いものが込み上げ
てくる。……小生にはハリーの気持ちが分かるのだ。あのディアナがディアナカウンター
などという市民軍を創立し、二千年間ムーンレィスの武を守り続けた我がギンガナム家を
否定したとき、小生もまた、ディアナによって与えられた誇りを、ディアナによって奪わ
れたからだ。それでもまだ小生には武門の男として生きるため、闘争の世を築くという野
望だけは残った。だが、ハリーにはそれすらないのだ。己の全てをディアナに捧げていた
がために。おのれ、ディアナまたもや己の勝手で一人の男の人生を奪うのか、貴様はぁ!
だがなハリー、立つのだ、男は生きている限り立たねばならんのだ!ハリー・オードォ!
ギム「悲しみを、怒りに変えて立てよ、ハリィイイ!男が腐ってしまえば、女の腐ったの
より酷くなるだけなのだ!わかっているのか、ハリィイ・オードォオオ!!」
続く……
568 名前:ハリーの災難5・立ち上がれ、ハリー投稿日:03/03/09 00:00 ID:???
私の名は
ハリー・オード。元ディアナ様の親衛隊長であり、今はもはや何者でもない。
先程からあのギンガナムが座り込んだ私を見下ろして何事か叫んでいるが、こいつは何が
言いたいのだろう。なによりもギンガナム、何故お前がそれほどまでに私にかまうのだ。
向こうから駆けてくる女性がいるが、あれはディアナ様!?いや、違う、キエル嬢だ。
彼女の姿を見ているのが辛く、私は目をそらした。どうしてもディアナ様を思い出してし
まう。彼女は傷つくだろうな、私が
こんなことを考えていると知ったら。
キエル「ハリー殿、いったいどうしたのです。なぜここに
ギム・ギンガナムが。ギンガナ
ム、もしハリー殿に危害を加えようというなら、私が相手です。」
キエル嬢は私をかばうようにしてギンガナムと向き合っている。こんな私にあなたにか
ばってもらう価値などありはしないのだ、キエル・ハイム。
小生、
ギム・ギンガナムは心底複雑な気分である。なんだというのだ、このハリーの情
けなさは。女性にかばってもらうなどと、貴様は武人としての誇りを失ったのか。そして
このディアナの
影武者キエル・ハイムの凛々しさ、女ながら見事である。スエッソンのお
菓子馬鹿にも教えてやりたいほどである。しかもこのキエル、どうやらハリーとただなら
ぬ関係あり、と小生は見た。これを利用するのだ。キエルが傷つけられればハリーの怒り
と闘争本能が蘇り、立ち上がって小生に向かってくるための力となるはず。もはや当初の
目的を失っているが構わん、感情と闘争本能の赴くままに生きるのが小生。小生は今、ハ
リーに立ち直ってほしいのである。また戦いたいのである。
ギム「ディアナの
影武者、そこを退けぃ!小生はディアナの犬、
ハリー・オードを斬ると
決めたのである!」
キエル「それならばなおさらどけません。まず私を斬るがいいでしょう。あなたが無抵抗
の女を斬る様なまねを恥じないのであれば!」
見事な覚悟。しかしハリー、貴様これでも立たない気か。立て、立つんだ、ハリィイイーー!!
ハリー「お待ちなさい、キエル嬢。
ギム・ギンガナム!私が相手だ!!」
やったのである、ハリーが、ハリーが立った、立ったのである!ご先祖さまー、ハリー
が立ったーのである。
続く……
569 名前:ハリーの災難6・おかしいですよ投稿日:03/03/09 00:54 ID:???
僕、ウッソの優れた感覚でハリーさんを捜し当てると、そこではギンガナムさんとハリーさん
の壮絶な殴り合いが展開されていた。すこし離れたところには本物のキエルさんが、ギンガナム
さんの刀を持って二人の闘いを見つめている。
ディアナ「キエルさん、これはいったいどういうことなのでしょうか?二人を止めなければ。」
キエル「ディアナ様、私にもよく分かりませんがこれはハリー殿にとって大切なことのようです。」
ですから、誰にも止めてはならないのではないでしょうか。」
殴り合いは結局、ギンガナムさんの勝利で幕を閉じた。最後に二人は相打ちのような形に
なり、体格に勝るギンガナムさんがハリーさんをKOしたのだ。でも激しい闘いを物語るように
ギンガナムさんの足もガクガクと揺れている。そしてディアナ様を振り返って、
ギム「ディアナ、ハリーは貴様にはもったいない臣下である。せいぜい大事にするのだなぁ!」
そう言って去ってゆくギンガナムさんの背中はなにか、いつもと違ってすがすがしかった。
横たわるハリーさんにはディアナ様とキエルさんが駆け寄り、うらやましい状態になっている。
ディアナ「ハリー、暇を差し上げるといったのは冗談ですよ。私の親衛隊長はあなたしかいません。」
ハリー「ディアナ様、今日の私の失敗をお許しいただけるのですか。ありがとうございます。
……キエル嬢、あなたがいなければ私は……ありがとう。」
キエル「ハリー殿……」
すこし離れたところでその光景を見守っているロラン兄さんと僕に、ありがとう、というように
ディアナ様の微笑みが投げかけられた。ロラン兄さんは感動したようにディアナ様を見つめ返す。
僕も思わず何もかも報われたような気分になった。
でも、おかしいよ。だって今日の騒動の根本の原因はハリーさんだ。なのにその人が二人の綺
麗なお姉さんに囲まれてて、事態の収拾のために頑張った僕は微笑みひとつだけ?ご褒美ってい
うのは、もっと、こうシュラクのお姉さん達みたいに、ねぇ。
ディアナ「これからもよしなにな、ハリー……」
明らかに、間違いなく、どう考えても、おかしいですよ!ディアナ様!!
終わり。 都合の悪い設定があったら無視してください。
最終更新:2018年10月31日 21:06