776 名前:生真面目な二人のクリスマス 1/3 :2012/12/24(月) 09:59:19.27 ID:???
462の続き。あとがきとおまけ含めて5コマ予定
クリスマス当日。マイとの関係は変わらず、レンダの意図も結局わからずじまい。ネガティブな想像だけがどんどん増幅されていき
完全に12月24日=破局の日と思い込んでいるモニクは陰鬱な表情で弟に聞いた。
「エルヴィン…クリスマスにフラれるって、どういう気分なんだろうな。…エルヴィン?」
見回すと、弟の姿がない。そういえば、今日は友達に呼ばれて泊まり込みでクリスマスパーティをすると言っていたのだった。
「薄情者め…」
恨めし気に声をあげるが、あげてどうなるということもなく。気付けば時間となっていた。
ふらふらとした足取りで家を出て、待ち合わせの場所へと向かった。
待ち合わせの場所にはすでにマイがいた。
「…こんばんは。マイ」
「こんばんは。モニクさん。…あの、どこか体の調子でも悪いんですか?」
「特に体調に問題はない。それで、今日はどうしたんだ?」
心配そうにこちらを覗き込むマイにこたえた。よほどひどい顔をしていたらしい。
「ええと、ですね。あまりこういうのには慣れていないのですが…」
そう前置きすると、マイはカバンから箱を取り出して、モニクに手渡した。
「これは?」
予想を裏切る展開。嬉しさと驚きに戸惑いながらモニクが聞いた。
「クリスマスプレゼントです。…クリスマスに、大事な人に対して渡すもの、と聞きましたので」
「あ、ありがとう。開けてみてもいいか?」
「いいですよ。こういうのは初めてなので…喜んでいただけるかどうか」
開けてみると、中には。
777 名前:生真面目な二人のクリスマス 2/3 :2012/12/24(月) 10:00:24.52 ID:???
「花…?」
初めに見つけたのは、一本の花。綺麗な赤色をしている。
「これはなんと言うんだ?」
「ポインセチアと言うんだそうです」
「ほほう」
「クリスマスに贈るならこれしかない、と言われたのですが…どうでしょう」
「私は花にはそれほど詳しくないが…お前がくれたものだ。それだけでも嬉しい。それにこれは、ワイングラスか?」
紙に包まれて花のそばにあったグラスを取り出した。口の部分がややすぼまった形をしている。
飾り気のないシンプルなものだが、それだけに形の美しさが際立つ。あまり派手なものを好まないモニクには嬉しいものだった。
「はい。どこかおかしなところはありませんか?」
「見事なものだと思うが…なぜだ?」
「自分で作ったものですから、やはり気になりまして」
「作っただと? 自分でか」
「はい。昔から手先は器用でしたから。お店にちょっと無理を言って、作らせてもらったんです」
「器用といったって…ワイングラスなんてそう簡単に作れるものじゃないだろう」
子供の工作とはわけが違うのだ。見たところ特に問題と呼べるようなところはなく、商品として立派に通用するだろう。
「そうですね…だいぶ時間がかかってしまいましたが、間に合ってよかったです」
そういうことか。最近付き合いが悪かったのは。クリスマスに恋人にクリスマスプレゼントを渡す。そういえばそんな風習があった気もする。
マイと出会うまで恋愛に興味などなかったから、すっかり記憶から抜け落ちていた。
手に包帯を巻いていたのはグラスを作る工程で火傷でもしたのだろう。それを気取られないために距離を置いていたわけだ。
「…はぁ」
レンダやエルヴィンたちが微妙な顔をしていた理由がようやく納得できた。同時に今まで全く気付かずオタオタしていた自分に呆れて
思わずため息がこぼれた。
「な、何かお気に召さないところでもありましたか?」
心配そうにマイが聞いてきた。まったく、今日は心配させっぱなしだな――思いながら、モニクは首を横に振った。
「違うよ。自分の馬鹿さ加減に呆れていただけだ」
「それで、なんですが…」
778 名前:生真面目な二人のクリスマス 3/3 :2012/12/24(月) 10:01:42.05 ID:???
「何かあるのか?」
「今更と思われるかもしれませんが…今なら言えそうなので」
「何を?」
「私は、あなたが好きです。結婚を前提に交際してくれませんか」
「な、なななななな!?」
「思えば、私の方からは言っていませんでしたから…って、モニクさん? 大丈夫ですか?」
「だ、だだ、大丈夫…大丈夫…そう、大丈夫だ。そ、そうか。そうか…ふふふ…!」
「あの、返事は」
自信なさげに聞いてくるマイに、モニクは微笑みかけた。
「OKに決まっているだろう」
言いながら、モニクは右手を差し出した。
「これからもよろしく頼むぞ。マイ」
「こちらこそお願いします。モニクさん」
マイはその手を握り、微笑みながらそう言った。
「ところでマイ。これから用事はあるか?」
「いえ、特にありませんが」
「情けないことにプレゼントのことをすっかり忘れていて用意していなくてな。
代わりと言ってはなんだが、私の家に料理でも食べにこないか」
「いいんですか?」
「ああ。といっても、あまり人に自慢できるものでもないが」
「いえ、ありがとうございます。ごちそうになります」
「よし、そうと決まれば買い物をして帰るぞ!」
「はい」
モニクは満足げに頷いて、マイを引き連れて歩き出した。
779 名前:おまけ :2012/12/24(月) 10:04:02.71 ID:???
プレゼントを片手に歩き出したマイとモニクの姿を遠目から見張る、二つの影があった。
「これで任務完了だね、兄さん」
「そのようだ、オルバよ」
そう言って、シャギアとオルバは望遠鏡を鞄にしまった。
「僕らが他人の恋愛のサポートとは、甘く見られたもんだと思わない?」
「手段など選ぶ必要はない。これでしばらくは食事に不自由せずに済むのだからな」
ガンダム家の長兄――アムロの依頼を受けて、モニクとマイの見張りと、邪魔者の排除を行っていたのだ。
「それで、家までついていくの?」
「近づきすぎて気付かれでもすれば報酬が消える。それに、無粋はここまでにしておくべきだろう」
「そうだね、兄さん…ところで、あのゼハートとかいう男の件だけど」
充実している人間を見ると途端に壁を叩き出す変人のことだ。雰囲気が台無しになるということでアムロから排除命令が出ていたので
とりあえず捕縛しておいたのだ。
「奴は昨日、解放した」
「昨日? 肝心なのは今日だったんじゃないの」
「とある男からの頼みでな。そちらの都合にあわせて移動させるから解放してくれと」
「それ、信じたんだ。最近ちょっと丸くなったよね、兄さん」
オルバの言葉に、シャギアは薄笑みを浮かべた。
「そうかな」
「でも、せっかくのクリスマスをこんなつまらない任務で潰すことになるなんてね」
「仕方がない。我らが恋人たちには近づくこともできんのだからな」
「僕らでもあの空間には耐えきれないか。まだまだ訓練しないといけないね、兄さん」
「そうだな、オルバよ」
「あ、シャギアじゃない!」
聞き覚えのある声を耳にして、シャギアとオルバはそちらに振り返ると、両手に買い物袋を下げた少女――プルがやってきた。
「ちょっと、姉さん。一人で勝手に…」
プルの後を追う形でやってきたのは、彼女の妹の
プルツー。こちらも両手に買い物袋を提げている。
「やあ。相変わらず元気そうで何よりだね」
「この後、うちでクリスマスパーティやるんだ!
せっかくだからシャギア達も
来ない?」
「へえ。どうしようか、兄さん」
「たまには酔狂も悪くないと思わないか、オルバよ」
「そうだね、兄さん」
「ちょっと姉さん、勝手に誘って…」
「いいじゃない。ていうか、『あいつらもどうせ暇だろうから呼んでやるか』って言ったのはプルツーでしょ?」
「うぐ…」
笑いをかみ殺すオルバを真っ赤になってにらむプルツーを無視して、プルはシャギアの片手に荷物を押し付けた。
「よし、決まり! じゃあ一緒に行こ!」
空いた手でシャギアを引っ張っていくプル、それを追う形でオルバとプルツーが続く。クリスマスの夜は、まだ長い。
780 名前:あとがき :2012/12/24(月) 10:06:15.53 ID:???
ギンガナム「あとがきと言う名のギンガナム相談室in超時空の時間であるッ! はじめに、投下にあたっての数々の支援感謝する!」
メリーベル「小説形式もこういうあとがきも初めてだったけど、見ている側としてはどうだった? 読みづらかったりしたら教えてね!」
スエッソン「アドバイスだろうがアーモンドだろうが、もらえるもんはもらうぜ」
ギンガナム「ギンガナム相談室in超時空では、本編中に起きた諸々の質問に答えるのだ!」
メリーベル「情報は確実だよ。だってちゃんと艦隊使って確認してるからね。噂とか憶測なんかないから安心してよ!」
スエッソン「これだけのために一艦隊動かすってのもおかしな話だと思うんだがな…」
ギンガナム「なぜか
ハリー・オードと
ディアナ・ソレルに大目玉をくらったが…別に気にしないのである!」
スエッソン「やっぱり怒られたのか」
メリーベル「ギム、さっそくだけど手紙が来てるよ」
ギンガナム「よし、読むのだ!」
メリーベル「ええっと、A.R.Gさんからの質問だね。『うちの弟は無事ゲッコーチョーデアル!を成し遂げたのでしょうか。教えてください』だって」
スエッソン「放送上不適切な表現があったのでカットした、だとよ」
ギンガナム「いきなり放送禁止用語を出されるとは思わなかったぞ! 貴様、
ギンガナム隊の隊員になるか!」
スエッソン「答えろよ」
ギンガナム「回答? 小生が知るわけがないだろう! 次!」
メリーベル「身もふたもないよね…」
ギンガナム「武士は無粋を嫌うものだ! デバガメなどという無粋、誰がするものか!」
スエッソン「あー、次な、次。K.Rから『学生が泊まり込みのクリスマスパーティなんて、不純異性交遊が心配です。
そもそも実際クリスマスパーティでお泊りなんて聞いたことないのですが、どうなんですか?』だとよ」
ギンガナム「そんなことは知らん。だが、その日エルヴィン・キャディラックが家に帰らなかったのは確実だ!」
メリーベル「ほんとにお泊りがあるパーティだったかもしれないし、パーティを口実に友達の家や会社に泊まったかもしれないってことだね」
ギンガナム「自分ができないからと他人を妬むのは感心せんな! 貴様のブログ、月でもなかなかの評判をとっているぞ!」
メリーベル「…ねえ、ギム。今なんか揺れなかった?」
ギンガナム「何を馬鹿な。ターンXのIフィールドで守られているこの施設に衝撃を与えられるわけがないだろう」
スエッソン「おいギンガナム。俺たちもパーティやらねえのか?」
ギンガナム「武士がそんなものを開くか! 次の質問!」
メリーベル「次、O.Fさんから。『関係を勝手に進展させていいのかい?』だって」
ギンガナム「このスレになァ! 確固たる設定などォ、あるわきゃねえだろおぉぉぉぉぉぉ!」
メリーベル「…つまり、この話を踏襲して話を作ろうが、まったくの
パラレルにしようが勝手にしろってことだね」
ギンガナム「しょせんは無限にある可能性の一つにすぎん! 無数の未来があって何が悪いのだ!」
スエッソン「お前らはさっきから何の話をしてるんだよ…」
ギンガナム「わからんのか。この戯けが」
スエッソン「うっせえ! 頭脳労働は俺の領分じゃねーんだよ!」
メリーベル「あ。そろそろ時間だよ、ギム」
ギンガナム「そうか。これよりディアナ・ソレル主催のクリスマスパーティとやらに向かわねばならんのでな。今日はこれで終わるぞ!」
メリーベル「それじゃあまた来週!」
スエッソン「おお、パーティやるのか! さっすが月の女王!」
ギンガナム「ただし貴様の食費は自費だそうだ。破産したくなければせいぜい自重して食うがいい。経費では落ちんからな」
スエッソン「それが月の女王のやることか!」
最終更新:2015年12月02日 21:53