473 名前:1 :2013/05/25(土) 11:34:48.25 ID:???
 居酒屋『青い巨星
 「内装工事のため臨時休業いたします。ランバ・ラル
アムロ「休みか……しばらく来ていなかったから分からなかったな」
シャア「私もだ」
アムロ「どうする?他にいいところって言ったら……」
シャア「私の知ってる店で良ければ案内しよう。私から誘った義務もある」
アムロ「本当か?助かるよ」

シャア「ここだ」
アムロ「バー『Spoiled Brat』?知らない店だ」
シャア「宣伝などしていないからな」
アムロ「だけど食べログにも載っていないぜ」
シャア「会員制バーともなればそうなるさ。では、入ろうか」

アムロ「中は意外に明るいな」
シャア「普段はもっと暗いさ。
    だが青い巨星で飲む筈だったとなれば、この方が合っている」
アムロ「普段はって、まるでシャアの好みでどうとでも出来るみたいな言い方だな」
シャア「元々私のプライベート・バーとして作ったとなれば、そうもなるさ」
アムロ「おいおい、こんなもの作ってたら株主総会で突き上げを食らうぜ?」
シャア「だから私の懐から金が出ているのだ」
アムロ「凄いな、店名通り子供じみた金の使い方だ」
シャア「男というのは、金を持つと碌な使い方をしないものさ。
    ……そろそろ飲もうか。私は貴様と素面で話す為に誘ったのではないのだからな」

474 名前:2 :2013/05/25(土) 11:35:18.28 ID:???
アムロ「ネオジオンが学校に納入しているザクが変わったんだってな」
シャア「ああ、変えたな」
アムロ「オートバランサーの性能が良すぎて不評らしいぜ」
シャア「教師にか?」
アムロ「いや、ガロード達が言ってた」
シャア「貴様の弟を一般論にしては困る。そもそも変えたのは初期訓練用だけだ。
    ガロード達が授業で触る事はまず無い筈だ」
アムロ「そうだと思ったよ……で、シャアは実際どう思ってるんだ?」
シャア「過保護だな」
アムロ「言い切るな」
シャア「MSとは転びながら覚えるものだ。尤も、私は宇宙で覚えたが」
アムロ「転ぶ地面が無いぜ」
シャア「ならば溺れながら覚える、か」
アムロ「そう言われると急に危なく聞こえてくるよ」
シャア「実際危ないだろう、機体の気密性に不備が出れば窒息する」
アムロ「ノーマルスーツの気密性も忘れちゃ困るぜ?」
シャア「貴様ならそう返してくれると思っていた」
アムロ「そう思ったならその返しまで考えておくんだな、シャア」
シャア「先に言っておかねば道化だ」
アムロ「だけど今言ってしまうから、会話を続ける機会を失うんだ」
シャア「いつ言うか?今でしょ」
アムロ「……寒いな」
シャア「ああ。慣れない言葉は口にするものではない」

アムロ「そう言えば、この前ノリスが相談に来たな」
シャア「アイナとシローの件でか?」
アムロ「ああ。2人を信じてはいるが、やっぱり不安に思うところはあるらしい」
シャア「それはそうだろうな。相手は決まっていながら何時という話が全く無い。
    送る身としては堪えるさ」
アムロ「随分感情のこもった言葉だな」
シャア「実体験だ」
アムロ「シャアの?」
シャア「社員の深い交友関係は大体把握しているからな。今月も何件か電報を送った」
アムロ「意外とアットホームなんだな」
シャア「そうでなくては組織は回らんさ」
アムロ「だったら丁度いい。一度シローにそれとなく聞いてくれないか?
    俺が聞いても『俺が結婚してから』ではぐらかされるんだよ」
シャア「それは貴様に問題がある」
アムロ「その先はもう聞き飽きたぜ」
シャア「私も言い飽きた……分かった、今度青い巨星にでも誘ってみる」
アムロ「すまないな」
シャア「構わんよ」

475 名前:3 :2013/05/25(土) 11:35:50.00 ID:???
シャア「この前カミーユ君の進路の相談に乗っていた」
アムロ「それは俺に言っても良い内容なのか?」
シャア「本人がいいと言っていたのだから構わないさ」
アムロ「そうか。俺が知るにしたって、又聞きの方が良い事もあるよな」
シャア「MS工学と医学で悩んでいるらしいな」
アムロ「ああ、俺も聞いているよ」
シャア「ネオジオン大なら両方出来ると伝えておいた」
アムロ「人の弟を勧誘するなよ」
シャア「更にネオジオン系列企業の入社で学費還付も可能だ」
アムロ「酷い営業だな。学費から攻めようなんて」
シャア「将を射るにはまず馬という言葉がある」
アムロ「俺は馬か?」
シャア「昔は木馬にいたのだから構わないだろう。いや、それでは将か」
アムロ「将だな」
シャア「……そうだな、の言い間違いではないのだな。とは言わんぞ」
アムロ「貴様は店内に核の冬を引き起こすつもりか?」
シャア「貴様も三十路を過ぎれば分かる」
アムロ「だけどラルさんは一度だって言ったことはないぜ」
シャア「ええい、完全な作戦にならんとは」

シャア「他の兄弟はどうなのだ?誰がネオジオンに入りそうだとか」
アムロ「そこまでして俺の弟を入れたいのか?」
シャア「優秀な人材は誰だって欲しいさ。私の次の代という事もある」
アムロ「ギュネイがいるじゃないか」
シャア「あれは野心もあって優秀だが、ライバルへの対抗心で育つタイプだ。1人では行き詰まるよ」
アムロ「なら、マイでも呼び寄せるか?」
シャア「本機か冗談かはともかく、名案かもしれんな。
    あの謙虚も出世コースに乗せる事で取れるかもしれん」
アムロ「そうしたらモニクさんと結婚するって言い出すかもな。よし、やろうぜ」
シャア「そうだな。酒の戯言として検討しておく」

477 名前:4 :2013/05/25(土) 11:36:48.98 ID:???
シャア「仕事の合間を縫って就職活動の1次面接やグループワークの担当に私が行く事があった」
アムロ「そりゃ凄いな。学生だって思い出になるはずだぜ」
シャア「『シャア・アズナブルという人の事を知っているかね?』」
アムロ「貴様自身だw」
シャア「ほぼ凍り付くな」
アムロ「そりゃそうだろ。それで、良さそうな奴はいたのか?」
シャア「私に出会った不幸を呪うがいい」
アムロ「酷いぜ」
シャア「貴様や弟達なら、どうするかな?」
アムロ「少なくとも凍り付きはしないだろうな。別の理由で落ちそうだけど」
シャア「初対面だとしてもか?」
アムロ「多分な。あいつらはそういう感じじゃないぜ」
シャア「そうだろうな。
    私が欲しいのは彼らの様に個人的な感情を吐き出して、事態を突破する若さを持った人々だ」
アムロ「結局そこに行くんだな。だけど、なかなか見つかるものじゃないぜ」
シャア「ああ。貴様の家族を見ているから、普通の若者はああいうものだと思ってしまっている」
アムロ「だいたい歳だって違う」
シャア「ならば年齢を引き下げるか」
アムロ「明日の朝刊のトップは間違い無いな」
シャア「『ロリコンという噂は真実だった』か」
アムロ「自分で言うなよ」
シャア「そして私は、カミーユ君に粛清されるであろう」
アムロ「……シャア、言い辛いが酔ってないか?」
シャア「俗人は、こういう時に酔っていないと言いたくなってしまう嫌な癖があるのさ」
アムロ「本当に嫌な癖だな。しかもまだ飲むんだろう?」
シャア「ああ。私はまだ酔っていないからな」

478 名前:5(終) :2013/05/25(土) 11:37:21.77 ID:???
シャア「もうこんな時間か。飲んだな」
アムロ「ああ、飲んだな。そろそろ終わりにするか?」
シャア「そんな決定権が貴様にあるのか?」
アムロ「そう返されたら言葉も無いぜ」
シャア「冗談だよ。いや、楽しかった」
アムロ「俺もさ。こうやって落ち着いたところで2人で飲むのは久しぶりだものな」
シャア「その割には、貴様はあまり喋らなかったな」
アムロ「ネオジオンの店なら警戒もするさ」
シャア「ここでの会話は全て秘密さ。マスターも分かっている」
アムロ「そうだったのか、悪かったな」
シャア「今度は貴様にも話してもらうぞ」
アムロ「また招待してくれるのか?」
シャア「勿論だ。青い巨星の代わりではない、この店の正式なゲストとしてな」
アムロ「そりゃ助かるよ」
シャア「では、出ようか。アムロ、ここは全て私の奢りだ」
アムロ「いいのか?俺だって少し位は……」
シャア「私の店だし、まともに払えばその財布では足りんよ」
アムロ「恐ろしいな。そんな所で俺は飲み食いしていたのか」
シャア「世の中には知らない方が良い事もあるという事さ」
アムロ「次は値段の高いものから順に持ってきてもらうか……」
シャア「恐ろしいな。世の中には教えない方が良い事もあるという事か」

アムロ「車まで呼んであるのか」
シャア「マスターの心遣いさ。私がやった事は一度も無い」
アムロ「信頼しているんだな」
シャア「そうでなくては任せられんよ」
アムロ「じゃあ、俺は日が変わらない内に帰るよ。またな」
シャア「ああ」

ぐだっておわり

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2016年01月10日 11:04