299 名前:通常の名無しさんの3倍 :2014/04/06(日) 15:12:04.63 ID:???
セイ「僕と一緒のクラスの人じゃない?」
セイ、キオ、ウッソは今年から中等部に入る。授業はまだ始まっていないし
クラスメイトともほとんど顔を合わせていないが名簿は配られていた。
キオ「ああ、どこかで見たと思ったら!」
ウッソ「一緒のクラスだったんだ」
セイ「学校でもよろしくね、二人とも!」

アル「アルフレッド・イズルハ・ガンダムだよ。僕は兄ちゃんたちと違ってザク派なんだけど、セイ兄ちゃんはどう?」
シュウト「僕はシュウト・ガンダム! セイ兄ちゃんSDガンダムは好き?」
セイ「うん、ザクもSDも大好きだよ! 趣味の合う兄弟がこんなにいるなんて…こんなに嬉しいことはない…!」
カミーユ(顔の造形が1stのアムロ兄さんみたいになってる…)
シーブック(普通に育ったはずなのに変な癖があるあたり、やっぱりウチの子か…)
妙に濃い顔になって感涙するセイを遠目で見ながら、カミーユとシーブックは小声で会話を交わしていた。
アムロ「さて、これで全員か。…みんな、セイに何か質問はあるか?」
ガロード「あ、俺から一つ」

300 名前:通常の名無しさんの3倍 :2014/04/06(日) 15:13:13.87 ID:???
アムロ「なんだ?」
ガロード「さっきイオリ・セイって言ってたけどさ、本当の名前はどっちなのよ?」
アムロ「ああ、そのことか」
セイ「僕の両親は二人ともネオジャパンの出身ですから…」
ドモン「なるほど」
ガロード「何がわかったんだ?」
セレーネ「ネオジャパンでは苗字の後に名前が来るのが伝統なのよ。
     最近は国際化だなんだって他国に倣った形式にしてるところも多いんだけどね」
ガロード「へぇ…」
セイ「さすが姉さん、博識だ…!」
キラ(早い! 落とすの早いよ姉さん!)
カミーユ(美人な見た目で崩して、特に意味もなくカリスマ出して落とす。高等テクニックだな)
ウッソ(それを全部無意識でやっちゃってるところが恐ろしいですよね…)
アムロ「驚いたことに、セイはミドルネームもイオリなんだよ」
アル「へー…」
当のセイもつい最近教えられたことである。預け先のことを考えて名付けたのかはわからないが、便利ではあった。

301 名前:通常の名無しさんの3倍 :2014/04/06(日) 15:14:22.91 ID:???
グエン「たまには趣向を変えて夜に参上! ローラ! 今日こそは君を愛のネバーランドに連れていく!」
シャア「弟が増えたそうだな。ジオン派かね? それなら青い巨星に連れて行きた――」
アムロ「ガンダムハンマーッ!」
グエン「うわ」
シャア「らば」
シャアの台詞が終わらぬうちにハンマーで一網打尽にされ、シャアとグエンはミンチになった。
かつて人だったものが目の前に散乱し、一部はセイの体へと降りかかった。

アル「うわあミンチよりひどいや」
もはや何度あったかわからない光景を見て、アルが一応とでもいうように棒読み気味で言った。
アムロ「まったく…せっかく平和に終われると思ったのに。騒がしくしてしまってすまないな、セイ。…セイ?」
ミンチの前で微動だにしないセイに声をかけるが、返事がない。
セイ「………」

302 名前:通常の名無しさんの3倍 :2014/04/06(日) 15:15:25.58 ID:???
アムロ「おい、どうした?」
アムロが触れると、セイはそのままゆっくりと倒れた。
キオ「気絶してる!」
カミーユ「…考えてみれば、慣れてなきゃ相当きっついよな。この光景」
シーブック「慣れるほどミンチを見てるってのも、問題だと思うけど…」
アル「こんなのどうってことないと思うけどなー」
シュウト「ちょっと髪の毛とか骨が混じってる以外、ほとんどハンバーグのタネと同じだもんね」
シロー「ここまでミンチ慣れしてる子供がいるっていうのも相当問題ですよね、兄さん…」
強烈な光景を前にしてなお無邪気に話す少年たちを見て、シローが青い顔でぼやいた。
アムロ「………」
セレーネ「ああ、そうだ。そこの失礼なガキども。さっきの会話、聞こえてないと思ったら大間違いだからね」
嫌な沈黙を破ったのは、セレーネの思い出したような声だった。
キラ「迂闊な発言は死につながるよね、ウッソ」
ウッソ「でも僕らはまだ自分を敗者と認めたわけではありませんよ。すなわち!」
キラ「逃走あるのみだね!」
セレーネ「待てええええええい!」
気絶したセイ。そして強くなりすぎた弟たちを見て、アムロは思った。もう少し普通に生きよう。
しかしそれを彼の知人たちが聞けば笑って(あるいは驚いた顔で)こう答えるだろう。
『不可能だ』と。


304 名前:通常の名無しさんの3倍 :2014/04/06(日) 16:36:11.73 ID:???
そして、翌朝。

レイジ「うまい! お代わり!」
ロラン「はいはい」

アムロ「おかしいな。見慣れない奴が一人増えてる気がするんだが…仕事のしすぎだな。目が疲れているんだ」
シロー「俺もそう思いましたけど、現実ですよ兄さん」
セイ「レイジ!? 何してるのそんなところで!」
アムロ「セイ。お前の知り合いか?」
セイ「は、はい…レイジっていう僕の友達で、ガンプラバトルの相方…なんですけど…」
アムロ「相方?」
セイ「はい。僕は作る方が得意で、動かすのは苦手なんですけど。レイジは動かすのがすごく上手いんです」
アムロ「なるほど。セイが作ってあの少年が動かすわけだ」
さしずめ、優秀なメカニックとパイロットといったところか。ガンプラなら人数も必要ない。
レイジ「ひょうははいほうほうはへへもはう」

305 名前:通常の名無しさんの3倍 :2014/04/06(日) 16:36:42.01 ID:???
ロラン「食べてから喋りなさい。みっともないですよ」
レイジ「ん。むぐむぐ…ごくん。今日から居候させてもらう。よろしくな」
セイ「え?」
アムロ「なに?」
レイジ「ロラン姉貴の許可は取ったぞ」
ロラン「僕は男です! ――聞けば身寄りがないということで。セイとも仲がいいと聞きましたし」
この時、ロランの目がわずかに泳いでいたことをアムロは見逃さなかった。
アムロ「そうか。本当の理由はなんだ?」
ロラン「………」
アムロ「わかった。言わなくていい。その代わりジャンプしてみろ」
ロラン「失礼ですね! いくらなんでも賄賂なんか受け取るわけ」バサバサバサ「あああああ!」
憤慨して勢いよく立ち上がったロランのポケットから大量の写真のようなものが落ちた。アムロとセイがそれを拾う。
ロラン「あっ」
アムロ「…ディアナ様の写真じゃないか」
セイ「これ、月のガンプラバトル大会で優勝した時の賞品だ」

306 名前:通常の名無しさんの3倍 :2014/04/06(日) 16:37:12.60 ID:???
アムロ「賞品?」
セイ「月の女王さまの限定ブロマイドなんですけど、いらないからレイジにあげたんです」
ロラン「ディアナ様のブロマイドがいらないなんてどんな神経してるんですか!」
アムロ「ロラン落ち着け。――とにかく、事情はよくわかった」
ロラン「ごめんなさい…」
アムロ「しかし、お前が持ってないグッズがあったなんて驚きだな。いつも必死に集めてるじゃないか」
ロラン「ガンプラバトルは専門外ですから…持っていそうな人には当たったんですけど、キエルお嬢様はふっかけてくるし
    ハリー大尉は譲ってくれないし、ギンガナムは持ってるわけないし…もう手に入らないと思ってたんですよぅ」
アムロ「わかったわかった。だから泣きそうな顔をするな。
    特に問題を起こさないなら別に居候として引き取っても問題はないが…」
ロラン「いいんですか!?」
アムロ「財布と家事を握ってるお前が許可して、家長の俺には反対する理由がない。そういうことだ」
レイジ「よっしゃあ!」
ロラン「良かったですね」
セイ「…あの、よかったんですか?」
アムロ「今更一人居候が増えたところで気にならないさ。ただ…」

307 名前:通常の名無しさんの3倍 :2014/04/06(日) 16:41:04.12 ID:???
セイ「ただ?」
アムロ「セイの部屋は確保できそうなんだが、居候用の部屋が無いんだよ」
レイジ「そんなことか。俺は別に押入れでもどこでもいいぞ」
アムロ「いいのか? よし、セレーネの部屋の押入れが一人分空いてるからそこを使ってくれ」
ロラン「兄さん!?」
アムロ「仕方ないだろ。使ってない押入れはそこしかないんだから」
ドモン「使ってないのか?」
アムロ「セレーネは二人用の部屋を一人で使ってるからな」
ロラン「だ、だからって姉さんの部屋は…」
セイ「そうですよ! 押入れとはいえあの綺麗なお姉さんとレイジが一緒になんて…
   絶対にトラブルになるし、セレーネ姉さんだって男と一緒の部屋は嫌でしょ!?」
別の意味で反対しようとしたロランを押しのけセイが言ったが、セレーネは顔色一つ変えずにこう言い放った。
セレーネ「別に」
アムロ「せ、セレーネが綺麗なお姉さん…」

308 名前:通常の名無しさんの3倍 :2014/04/06(日) 16:41:35.65 ID:???
ロラン「間違っちゃいませんよ…姉さんはとてもきれいな人ですから、間違っちゃいないんですけど…
    なんでしょうね、この拭いようのないモヤモヤ感」
シロー「まずい、鳥肌が…」
セレーネ「そこの三人は後で格納庫に来るように。…私としては別に構わないわよ。私の物に触らなければ」
アムロ「…勧めておいてなんではあるが。無理はするなよ」
レイジ「ああ」
シロー「気休めかもしれないが、この無線機を持っていくといい。色んな場所で使える優れものだ。
    危なくなったらいつでも呼ぶんだ。いいな?」
魔窟やら異界やらと呼ばれるセレーネの部屋でこの世界の無線機が通じるかは甚だ疑問だったが。
そんな事情など知らないレイジはいぶかしげな顔をしながらも一応受け取った。
レイジ「くれるってんならもらっとくけど…」
ロラン「遭難した時のことも考えて、部屋に入る前にそれなりの準備をしておいた方がいいですね…」
レイジ「はあ?」
この手の話題では絶対に出ないであろうワードが出てきて、レイジはセイとともに首をかしげた。


310 名前:通常の名無しさんの3倍 :2014/04/06(日) 19:27:16.64 ID:???
セレーネ「あんたたち、私の部屋をなんだと思ってるのよ!」
あんまりな扱いにセレーネが文句を言ったが、アムロ達は聞かずに話をどんどん進めていた。
レイジ「なんなんだ?」
セイ「さあ…」
完全に話に置いて行かれた当事者とその相棒は、意味も分からずその場に立ち尽くすのみだった。

ちなみにレイジはこの日、予定通りセレーネの部屋の押入れで一夜を過ごしたのだが。
翌日になり急遽、部屋が確保できるまで庭にドモンのテントに張って住むことになった。
理由は本人の必死の懇願によるものだという。
しかし部屋の中で何があったのかは語ろうとせず、セイは身勝手な友人に少しばかり腹を立てていた。

311 名前:通常の名無しさんの3倍 :2014/04/06(日) 19:28:08.36 ID:???
その後。一般人的な感性の持ち主であるセイにとっては驚きの日々が続いているが

ギンガナム「今日も今日とてローラの飯は美味であるな!」
キラ「だから僕のを取らないでよ!」
シン「そういうあんたはなんでいつも俺の飯を取るんだ!」
キラ「やめてよね、このスレ始まって以来の伝統にケチを…あれ、ない?」
レイジ「取っただけで油断するなんてまだまだだな。食卓は戦場だぜ」モグモグ
キラ「兄さん、レイジが僕のご飯取った!」
アムロ「俺は関与しない」
シン「それは俺のだろうがぁぁぁぁぁ!」
レイジ「俺から飯を奪いたいなら…力ずくで来な、キラ兄貴」
キラ「やめてよね! 他人から兄貴なんて呼ばれたら悪い気がしないじゃないか!」
シン「本音漏れてんぞー」
レイジ「で、どーすんだ?」
キラ「大事な朝食のためなら――やるしかないじゃないか! お兄ちゃんの威厳を見せてやる!」

312 名前:通常の名無しさんの3倍 :2014/04/06(日) 19:29:26.02 ID:???
レイジ「いよっし、やるか! カミーユの兄貴、Mk-2借りるぜ!」
カミーユ「おい、お前免許持ってないだろ!」
レイジ「ガンプラバトルで慣れてるから問題ない!」
カミーユ「そういう問題じゃない!」
シャア「この隙に!」
グエン「ローラはいただく!」
シャア「グエン卿、チームワークでェ!」
グエン「ろぉぉぉぉらぁぁぁぁぁぁぁ!」
アムロ「見た目に優しいマイ謹製ヅダッザムリーダー!」
シャア・グエン「あばばばばばばば」
マイ「ヅダッザムリーダーとは、対人間用の小型アッザムリーダー。人を捕縛して電撃攻撃を行って気絶させます。しかし」
セイ「しかし?」
マイ「一分で捕えた人ごと空中分解してしまうという欠点が…」
言うが早いか。シャアたちが檻ごと爆散し、間近でそれを目にしたセイはあっさりと気絶した。
アムロ「やはりミンチはまだ慣れないか。先は長いな…」
カミーユ「慣れさせちゃっていいんですか…?」
ちょっとした苦難はあるものの、たびたび姿を消す居候のレイジともども割と馴染んでいるようである。

313 名前:通常の名無しさんの3倍 :2014/04/06(日) 19:43:34.61 ID:???
深夜。アムロは部屋で一人考えていた。
新しく加わった居候――レイジのことだ。
アムロ(あの感覚は一体なんだったんだ…?)
レイジと出会った時。どこか不思議な――身近なような、身近でないような。そんな感覚に見舞われたのだ。
レイジは自身の家族についてほとんど話さない。こちらから聞いてもふざけたような返事ばかりだ。
アムロ(もしかして…あいつも俺の弟なのか?)
とにかく何でもありの父親なので、その可能性も0ではないが。
アムロ「ないな」
我ながら馬鹿らしいその考えを自ら一蹴した。いくらなんでもばかげている。
やはり、家人が増えて疲れているのだろう。アムロは考えるのをやめベッドの中に入る。
しっかり体を休め、明日以降に訪れるであろう大騒動の日々に備えることにした。

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最終更新:2016年03月13日 20:18