350 名前:怪盗キンケドゥ・クリスマス決戦編 十八の一投稿日:2006/12/23(土) 14:31:17 ID:???
『キンケドゥです! 怪盗キンケドゥが現れました!』
「ええい、予告状なしで出るなんて、ルール違反だぞ!」
叫びながら、自分はつくづく甘いと思う。
怪盗と言っても犯罪者。予告状を出してからでなければ犯行をしない、などとは誰も言っていない。
アイナとのデートを泣く泣く中断し、急いで08署を召集し、陸ガン部隊を出す。
「キンケドゥ、とうとう本性を出しましたかね」
サンダースがぽつりと呟く。
「かもな…! エレドア、サーチ急げよ!」
「了解!」
「今回は狙いがどこか分からん! カレン、サンダース、フォーメーションCで展開!」
『了解!』
Ez-8に乗りながら、シローはどこか裏切られたような気持ちになっていることに気付いた。
(何が『裏に疲れた』だ!)
そう思っているなら、さっさと自首なり何なりすればいいものを…!
と考え、それでも納得いかない自分に気付く。
(何故だ? 自首してくれれば、あいつが罪を悔い改めたって証拠に…)
だが、そうなれば自分が奴を捕まえるチャンスがなくなったことになる。
(何を考えている、俺は!)
俺は奴を好敵手と思ってしまっているのか? 奴を捕まえることこそ自分の使命と?
「馬鹿を言うな、物語の中の刑事役なんて御免だ!」
『ど、どうしたんですか、警部!?』
ミケルの声だ。いきなり叫んだせいで不安になったのだろう。
「いや、なんでもない。早く配置につけ」
『来ました、警部! 九時の方向です!』
「よし、全軍撃ち方構…え…?」

シローは…いや、警察はほぼ全員、口をぽっかり開けて、その二機を見ていた。
そうならなかったのは、耳に全神経を集中させているエレドアくらいのものである。

夕月をバックにプリティでキュアキュアなポーズをとった二機のガンダムは、どちらも赤白に塗られていた。


351 名前:怪盗キンケドゥ・クリスマス決戦編 十八の二投稿日:2006/12/23(土) 14:33:05 ID:???
『メッリィィィィ・クリスマァァァァス!!』

キンケドゥの声が日昇町に響き渡る。

『本日はクリスマスイヴでございますねぇブラックさん!』
『ですねですね~ホワイトさん!』
『イヴといえばなんでしょうかねブラックさん』
『やっぱりクリスマスケーキでございましょうホワイトさん』
『ほほう、サンタともプレゼントとも恋人とも言わぬその心はなんざんすかブラックさん』
『いやいや先日大メーワクかけたじゃないですかホワイトさん』
『おお~確かに確かに? それでは日昇町パン連盟のみなさまへ』
『そして日昇町の特に罪もない人々へ』

『『怪盗キンケドゥ=ナウからの! 大・大・大プレゼントォ~ッ!!』』


パーン、と間抜けな爆発が起こった。
と同時にガンダム二機の姿は消え、代わりに雪に混じって降って来るのは、パラシュート付きのプレゼント箱だ。

シローのEz-8の目の前にも一箱降ってきた。
ぎょっとしながら、一応熱源探知をしてみるが…中にケーキ状の物体が入っているとしか分からない。
というかケーキが入っているのだろう。間違いなく。

352 名前:怪盗キンケドゥ・クリスマス決戦編 十八の三投稿日:2006/12/23(土) 14:34:03 ID:???
『ちなみにこれらのケーキは』
『各店各パン職人へ注文して我々が購入したもので』
『盗んだものでは決してありません!』
『安心して、お子様からお年寄りまで食べていただけま~す!』
『それでは皆様、08署の方々、敬愛するアマダ警部』
『またお会いいたしましょう』
『『さよ~なら~!』』

どこからともなく声が響く。


シローは頭を抱えた。
素顔のキンケドゥが頭に浮かぶ。あいつがこんなふざけたことをするとは…
しかし職務は職務である。
「おい、エレドア、今の声どこから来たか分かるか?」
『日昇町の拡声器全般です!』
「はぁ!?」
『奴等、電波ジャックしたんですよ! プリベンターと同じです!』

353 名前:怪盗キンケドゥ・クリスマス決戦編 十八の四投稿日:2006/12/23(土) 14:35:00 ID:???
「トビア」
『なんですか、キンケドゥさん』
「こういうことやったら、後にどうなるか分かるか?」
『どうって… 今回で割を食ったパン連盟は収入が出来て、在庫処分も出来て、みんなは喜ぶ…ですか?』
「回収されなかったケーキはどうなる?」
『……あ』
「この季節なら外気は天然冷凍庫だ。明日の朝まで待つ。日が昇ると同時に回収と掃除だ。いいな」
『はい…』
「お前はなぁ… 少しは後先を考えろよ…」
『すみません…』
とはいえ、止めなかった自分も自分である。
抜ける前に一回くらい完全な愉快犯でやってみたい、と思ったのだが、元来の自分の性格はそれを許さなかったらしい。
(ダメだ、俺が引退したらどうなるか分からん)
プッツン癖のあるトビア、どこか抜けているウモン、魔改造キッド、発掘マニアのシド、クール時々壊れのザビーネ。
自分がいなくなったら、誰がこの面子をまとめるというのだ。
(なんとなくアムロ兄さんやシロー兄さんの気持ちが分かるな…)
いつも苦労かけてます、と心の中で呟く。

シャン、シャン、シャン…

クリスマスの鈴が町中に響き渡る――

354 名前:怪盗キンケドゥ・クリスマス決戦編 十八の五投稿日:2006/12/23(土) 14:37:02 ID:???
二機は少し離れた土手に着陸した。
赤白X1からキンケドゥが降りると、隣ではトビアが既に赤白X3から降りていて、ベルナデットに盛んに話しかけていた。
下心の見える会話ではなく、本当に興奮しているようで、ベルナデットも一つ一つにうなずいている。
微笑ましく思えて、キンケドゥは少し距離を置いた。X1の足によりかかる。
そこに現れたのは、車椅子の老人と、付き添っている片眼鏡の壮年。
気付いたキンケドゥは、慌てて気をつけの姿勢になり、一礼した。老人が笑う。
何故ここに、と言いたげなキンケドゥに、片眼鏡の壮年が近寄ってそっと耳打ちをした。
驚いてベルナデットを見る。彼女は未だにトビアとの話に花を咲かせている。
そのうちに気付いたベルナデット。老人に駆け寄ると、わあっと泣き崩れてしまった。
なだめようとするトビア。それを抑えるキンケドゥ。
何故、と見上げてくるトビアに、見てみろ、と目で彼女を指す。
少女は老人の膝にすがって泣きじゃくる。老人は、そんな彼女を優しくなでている。
ああそうか、と納得して、トビアは鼻の下をこすった。

シドの骨董屋地下、アジトではX2が修理中。
ザビーネが貴族趣味全開で注文をつけ、シドが困り果てている。
ウモンはサンタコスチュームが気に入ったらしく、個人的にソリのアポジモーターを改造中。
キッドと共に驚異的な改造をすると意気込んだが、数分後ソリが爆発。
トナカイを逃がしていたために被害は老人と子供だけで済んだ。

セシリーは本日のためにケーキを製作中。シーブック用に別ケーキも製作中。
ふと考えを巡らしてはケーキを焦がしてしまっている。
カロッゾはいつものように豪快に笑っている。
今日のハロ:『フハハハハ!メリークリスマス!

355 名前:怪盗キンケドゥ・クリスマス決戦編 十八の六投稿日:2006/12/23(土) 14:39:01 ID:???
ハリソンは休日出勤でヴァイエイトの残骸を回収した。
やっと気付かれたトロワは惜しげもなく涙した。
デュオはしっかり彼女の元に行けた…かと思いきやジャンクの整備を押し付けられ、ぶーたれながらも仕事中。
それでもそのうちヒルデの方から訪ねてきたためにかなりのご満悦となった。
モーゼス邸では一同が集まってパーティーを開いている。
ニムバスが翼の生えたマリオンの上半身の彫刻を自作してマリオンにプレゼント、
フィリップにエロいだの何だのとからかわれて怒り心頭、イフリート改を持ち出す。
仕方なしにユウも出撃、とりあえずフィリップを最優先でミンチにした後でEXAM発動。
そんなMS戦闘をバックにパーティーはつつましく行われた。

キャプテンはALICEとデート…したかったが家が無防備になってしまうので、
ALICEがやってきて兄弟家で夜を過ごすことに。またもやMSが消えてリョウは頭を抱えている。
アルとシュウトは友達と一緒に広場で雪合戦をしている。
勢い余って滑ってごろごろと転がり、笑いながら起き上がる。
それを買い物帰りのロランはニコニコと見つめている。しっかり両手にはケーキの箱を確保だ。
ウッソとシャクティは温室で植物の世話をしながら、窓の外の雪を眺めている。
終わったあとは二人で拾ってきたケーキを山分けするつもりらしい。
ヒイロはいつものようにリリーナのところへ。
ケーキを拾うが、リリーナに対し悪いと思い直して道端の子犬にあげた。
ジュドーはファラを恐れる余りハマーンへの警戒を解いてしまい、一対一で補習授業を受けている。
ガロードはさっさと学校自体を抜け出し、マクダニエルの彼女の元へ一直線だ。

356 名前:怪盗キンケドゥ・クリスマス決戦編 十八の七投稿日:2006/12/23(土) 14:40:24 ID:???
シンはようやく退院したステラの手を握り、ゆっくりと道を先導していた。
何しろ雪に混じってケーキが落ちているのだ、野放しにしたら危ないことになる。
マユは声をかけようとしたが、先日までのステラの容態を知るルナマリアに止められる。
ルナマリアもシンに手を出すのをやめ、代わりにメイリンと共にアスランを襲撃する。
逃げるアスラン、追うルナマリアとメイリンとカガリとミーア。
事情を飲み込めずに応援するキラ、しかしフレイの視線を感じ取り、急いで女装のため走り去る。
そんな彼らを窓の外に見ながら、カミーユは静かに微笑む。
まさか壊れてしまったのかとファが声をかけると、カミーユはそちらを向いて…

「ぷはぁっ!」

大きく、大きく息をついた。

「ったく! 嫌になるよ、あんな巨大な悪意! 繊細な俺の身にもなってくれ!」
「か、カミーユ!? 大丈夫なの!?」
「ああ、心配かけた、ファ。もう大丈夫」
「ほ、本当に?」
「カミーユ…!」
「よかった、お兄ちゃん!」
「きゃっ!? フォウにロザミィ、いつの間に」
「さっきからいたじゃないか。さあ、クリスマスを楽しもう! 三人とも、今夜は寝かせないからな!」
「そ、そういうこと面と向かって言う!?」


コウは大方の予想通りシーマに拉致され、ドモンはファイトに夢中、シローはデートの続きと洒落込んだ。
アムロは…全女性を一日で周るべく組んだスケジュールの通りに行動したらしいが、詳細も見事に達成したかも不明。


そして、シーブックは…



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最終更新:2019年03月22日 22:22