292オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2019/09/09(月) 01:18:00.29ID:/sTqYSna0
日登町北区
ヨナ「それで、ベルリは北区に飛んでいったんだな?」
バナージ『そうです! 一年戦争のシャアが乗ってるザクと一緒に』

 通信機からは心配そうなバナージの声が聞こえる。
 西区でのMAとの戦闘の後、バナージたちは、
 突然現れたMS──シャア・アズナブルの駆るザクII──に襲撃された。
 いち早く気づいたベルリは人々を守るため、シャアに特攻を仕掛けたのだ。

ヨナ「こっちはもう北区に着いたところだ。今、キオが先行してベルリを探してくれている」
キラ「そっちはもうカミーユたちと合流できたの?」
バナージ『いや、まだだ。だけどハリソンさんたちがずっと子供たちの護衛に付いてるから安心だよ』
キラ「うん、それはそれで別の意味で不安だけどね」
ヨナ「ともかく、ベルリのことは心配するな。今は無事みんなを避難させることだけに集中してくれ」
キラ「大丈夫だよ。ベルリは影は薄いけど、腕だけは確かだから」

 その時、先行偵察していたキオから連絡が入る。

キオ『見つけたよヨナ兄ちゃん! 赤いザクだ。近くにはガンダムタイプもいる!』
ヨナ「わかった。じゃあバナージ、また後で連絡する」
バナージ『お願いします、ヨナ兄さん』
ヨナ「よし、行くぞキラ」

日登町北区:河岸
キオ「ね、いたでしょシャアザクとガンダム」
ヨナ「あ、ああ。確かにいたけど……」
キラ「うん、確かに間違いではないね間違いでは」

 立ち尽くす3人の目の前、川の向こう岸には
 シャア専用ザクIIとガンダムタイプのMSの姿があった。
 どうやら相討ちになったらしく、二機とも酷くボロボロだ。
 そして肝心のパイロットはというと

実写シャア「ふっ、まさか相討ちとは。やるなマーク・カラン
マーク「お前こそ。あそこまで追い詰められたのは初めてだぜ」

 二人は河原に寝ころびながら、お互いの健闘を称えあっていた。
 その姿はさながら昔の少年マンガのワンシーンのようだ。

マーク「ところで、なんで全裸なんだアンタ?」
実写シャア「わからない。気が付いたらこうだった。だがそのせいか、今は妙に晴れやかな気分だよ」
マーク「晴れやかな気分は俺も一緒さ。どうだい? これから二人で呑みに行くっていうのは」
実写シャア「いいだろう。なら私にご馳走させてくれ。旨いピザとビールを出す店があるんだ」
マーク「HAHAHA、そいつはゴキゲンだな!」

キオ「なんか友情を深めあってるね」
ヨナ「よし! ここは見なかったことにして次行くぞ次!」
キラ「こうしてる間にやられてないといいけどベルリ」

293オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2019/09/09(月) 01:19:50.55ID:/sTqYSna0
日登町北区:工業地帯

 ヨナたちが実写シャアと遭遇していたころ、
 ベルリとシャア(一年戦争)の戦闘は本格化していた。

シャア(一年戦争)「見せてもらおうか、ガンダム兄弟とやらの力を」
ベルリ「言われなくたって見せてやる!」

 赤と青、二機のMSはさながら流星のように
 地上、そして空中で激しく交差する。

シャア「ほう、やるな。私と互角とは」
ベルリ「ウソでしょ! あんな昔の機体でG-セルフと互角なんて!?」

 感心したように呟くシャアと対照的に、
 ベルリの額には冷や汗が浮かぶ。

シャア「だが機体に助けられ、パイロットの腕はまだまだと見た。ならば」

 シャアはコクピットの中でにやりと笑った。 

シャア「MSの性能の違いが戦力の決定的差ではないということを……教えてやる!」
ベルリ「突撃してきた!? 正面からやろうっていうの?」

 ベルリは不安や焦りを振り払うかのように自らを奮い立たせた。

ベルリ「ええい、赤い彗星がどうした。飛び級の天才なんだ、僕だってえ!」

 再び激突する二機!
 だが通常の3倍のスピードで縦横無尽に攻撃を仕掛けるシャアに、
 ベルリは対応するのがやっとだ。
 なんとか足を止めさせようとビームライフルを乱射するが

シャア「いかにビームライフルといえど、当たらなければどうということはない!」

 射撃を軽々と躱したザクは、逆に腰をひねり、
 Gーセルフに向けてバズーカを発射する。
 ベルリは咄嗟にライフルで弾頭を撃ち落とした。

シャア「そうだ。手練れのパイロットならば当然そう対応する」

 だが撃ち落とした射線の先にザクの姿はもうない。

ベルリ「がは……あっ!」

 突如やってくる衝撃。
 まったく警戒していなかった横から撃たれたのだ。
 なぜ? いつのまに?
 ベルリは機体を揺さぶる衝撃とアラートの中で必死に考える。

294オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2019/09/09(月) 01:20:27.28ID:/sTqYSna0
ベルリ「そうか、バズーカはエサだったんだ」

 発射直後、ザクはすぐさま移動していた。
 そして敵がバズーカの弾頭に向け、照準を合わせているわずかなスキを突き、
 本命の対艦ライフルを発射したのだ!
 ビームライフルに比べ、速度の遅いバズーカだからこそできることだ。
 しかし、だからといって他に誰がこんな芸当をできるというのだ?

シャア「わかったところでもう遅い!」

 ザクはバーニアを吹かし、一気に距離を詰めた。
 そしてヒート・ホークを振りかざし、G-セルフの首を狙う。

シャア「取ったぞガンダム!」
ベルリ「スコードォォォ!!」

 ベルリは胸の前で両手を交差させ、チャントを唱えた。
 するとG-セルフが眩く発光し、全身からエネルギーが放出されザクを吹き飛ばす。

シャア「自爆? いや、苦し紛れの目くらましか」

 実際、今のエネルギーはザクの装甲に何らダメージを与えていない。
 ただGーセルフが間合いを取るわずかな時間を生み出しただけだ。

ベルリ「これが……『赤い彗星』。シャア・アズナブルの全盛期だっていうの!」

 そんなGーセルフの姿を見て、シャアは小ばかにしたように鼻を鳴らした。

シャア「やれやれ困ったな。わたしには君と遊んでいる時間はないというのに。まだ引き延ばすか」
ベルリ「あなたは! あなた方はなにやってんですか! そんな『ヅダエール』なんて薬に正気を失わされて! 人の迷惑も顧みずアムロ兄さんとケンカして!」
シャア「『ヅダエール』? アムロと喧嘩?」

 シャアは首を傾げた。

シャア「どうやら君はひどい思い違いをしているようだ。残念だがそんな薬品、私のスーツには含まれていないよ」
ベルリ「なんじゃとて!?」

 ベルリはすっとんきょうな声をあげた。
 だが実際その通り、ザクのコクピットに座るシャアの赤いジオン軍服。
 その生地は実写シャアらと異なり、一切『ヅダエール』による腐食を受けていない。

シャア「確かにフル・フロンタルは私のスーツにもその薬品を仕込もうとしたがね。直前で気づいて、丁重にお断りさせていただいたよ」
ベルリ「あなた、気づいてたんですかフル・フロンタルが黒幕だって」

 シャアは当然だ、とばかりに頷いた。

シャア「それともう一つ、間違えていることがある。私は他の『私』と違い、アムロ・レイとの決着など望んでいないよ」
ベルリ「目的が違う……? じゃあ、あなたは何のために戦ってるっていうんですか」

 ベルリは口に出してからハッと気づいた。
 そんなこと、もうわかっているじゃないか。あの海岸での出来事を思い返せば
 この目の前にいる『赤い彗星』シャア・アズナブル。彼の目的は……。

シャア「私の目的は一つ。ザビ家の復讐だ」

295オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2019/09/09(月) 02:43:40.08ID:/sTqYSna0
ベルリ「ザビ家への……復讐」

 ベルリは思い出していた。日登町西区でのシャアの襲撃。
 あの時彼はその場にいたベルリやバナージたちには目もくれず、
 ただひたすら沖合に不時着していたドロスに向かっていったのだ。

ベルリ「あの時、ドロスのブリッジには、ザビ家の人たちが全員揃っていた……!」
シャア「そう。まさに千載一遇だったのだぞ? それをまさか君に邪魔されるとは」

 それはつまり、シャアはデギンやギレンのみならず、
 ゼナやミネバといった女子供までターゲットにしていたということだ。
 シャアのその恨みの深さに、ベルリは思わず声をあげる。

ベルリ「どうして……どうしてそんなことをするんだ!」
シャア「私の父、ジオン・ズム・ダイクンはザビ家によって謀殺された」
ベルリ「!?」
シャア「父が死に、母も十年近い軟禁生活の末、衰弱して死んだ。私と妹は本当の名前を捨て、隠れるようにして生きていかなければならなくなった」

 どこか他人事のように、シャアは淡々と語る。

シャア「そして当のザビ家はというと、そんな過去も忘れ、この町でのうのうと家族ごっこをやっている。それを笑って見過ごせるほど、私は聖人ではない」
ベルリ「だ、だからって。ミネバちゃんまで巻き込むことはないでしょ! あんな小さな子供に何の罪があるっていうんだ」
シャア「人には逃れきれない血の宿命というものがある。ミネバも今は何も知らない無邪気な子供のままでいられるかもしれない。
    だが近い将来、彼女の身体に流れる血を利用しようとして、大人たちは必ず争いを始める。
    それに翻弄され傷つくくらいなら、今の内に家族と生涯を終えた方が幸せではないか?」
ベルリ「そ、そんな無茶苦茶な理屈はないでしょ!!」

 ベルリが反論すると、シャアはあっさりとそれを認める。

シャア「すまない。確かに今のは我ながら苦しかった。だがそれともかく、親を殺された子が仇の一族郎党に復讐する。これはそれほどおかしな話かな?」
ベルリ「それは……!」
シャア「自分の身に置き換えて考えてみて欲しい。もしも君の両親や家族、故郷が理不尽に奪われたとき、君は復讐せずにいられるのかね?」

 そう問われたとき、ベルリの脳裏に浮かんだのは一人の女性の姿だった。
 アイーダ・スルガン。ベルリにとって初恋の女性。
 だが本当の名前はスルガンではなく、レイハントンという。

ベルリ「(アイーダさんは……昔、月で起こったクーデターで本当の家族や名前を奪われたんだ)」

 実行したのは当時、政治的に対立していた一派だという。
 今、普段接するアイーダに、その過去をことさら恨みに思う様子は見えない。
 だが心の奥底で彼女が何を考えているか、それは所詮彼氏でも弟でもないベルリにはわからない。

ベルリ「(でも、もし僕がアイーダさんの本当の弟で、同じように家族を奪われていたら……)」

 その時、果たして自分は、目の前にいるシャアと同じような行動を選択しないと言えるだろうか?

296オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2019/09/09(月) 02:45:12.23ID:/sTqYSna0
ベルリ「どうして僕にそんな話をしたんだ!」
シャア「さあ、なぜかな? 心なしか、君は私に似ている気がしてね。まあただの戯言だ。気にしないでくれ」
ベルリ「(気にしないはずないでしょ!!)」
シャア「それでどうだろうか? そろそろ私を見逃してくれる気になったかな?」
ベルリ「…………」
シャア「その気はない、か。やれやれ」

 シャアは仮面の下で、一つため息をついた。

シャア「ならば仕方ない。……堕とさせてもらう」

 再び、シャア専用ザクが急加速をかける。

ベルリ「来る……! シャアが来る!!」

 ベルリは勿論避けようとした。だが、意に反して身体は言うことを聞いてくれない。
 棒立ちのまま、G-セルフはザクのキックの直撃を受ける!

ベルリ「くっそおおおおおおお……!」

 そのままG-セルフは近くにあった工場の壁に叩きつけられた。
 衝撃と共に、モニターには緊急事態を告げる真っ赤なアラートが表示される。

ベルリ「今ので左足のフォトンバッテリーをやられた!? 機体がパワーダウンする!」

 元々G-セルフは兄弟の所有するMSの中でも燃費はいい方だ。
 だが今日、ELS、MA、そしてシャアと強敵との連戦を無補給で戦ったツケが回ってきていた。
 トドメに脚部にあるメインバッテリーが使い物にならなくなったとなれば、
 今のG-セルフの性能は通常の半分、いや4分の一以下だろう。

シャア「ここまでだな。見逃してもいいが……ちゃんと仕留めるのが礼儀だろう」

 シャア専用ザクがバズーカを構える。やられた。ベルリはそう思った。
 だが、しかし

「ベルリ・ゼナム!」

 ふと、外で誰かが自分を呼ぶ声。
 振り返ってみると、そこには意外な人物が立っていた。

ゼハート「…………」
ベルリ「ゼハート……さん?」

 窮地の戦場に現れた男。それはベルリの兄アセムのライバル、
 ゼハート・ガレットであった。

297オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2019/09/10(火) 01:48:43.43ID:ieOxlnjS0
ベルリ「ゼハートさん? なんでここに。危ないから早く逃げt」
ゼハート「そんなことは今はどうでもいい!」
ベルリ「!?」
ゼハート「なんだベルリ、その無様な戦いは!」

 ゼハートは腕組みしたまま、ベルリに向かってひたすら怒号を飛ばす。

シャア「誰かな、彼は。君の知り合いかね」

 突然の闖入者に、さすがのシャアも困惑している様子だ。

ベルリ「ええと、彼はゼハート・ガレットさん。僕の兄さんの友達で、僕にとっては」
ゼハート「同志だ(断言」
ベルリ「ええぇ……?」
マオ「ちなみにワイもいますけどね」

 腕組みするゼハートの後ろから、帽子を被ったキツネ目の少年がひょっこり顔を出す。

ベルリ「マオくんまで!?」
マオ「どーもーベルリはん。お元気そうで何より」
ベルリ「いやどう見たってそんな悠長に挨拶してる状況じゃないでしょコレ! ていうか二人でいたってことはもしかして」
ゼハート「そうだ。今まで日課の壁を叩いていた」
ベルリ「やっぱり! てかそんなこと日課にするんじゃないよ!」
マオ「この辺の工業地帯の壁、叩くとい~い音が出るんですわ」
シャア「壁を叩く? 何かの宗教的儀式か?」
ベルリ「ただの喪男の八つ当たりです。どうか気にしないで上げてください」
マオ「で、壁を叩いてる最中、戦闘が始まった気配がしたんで様子を見に来てみたらお二人がいたと」
ゼハート「すっと見ていたが、なんだあの戦いは! 一方的にやられっぱなしではないか!」

 そのあんまりな言いように、ベルリも思わず眉間に皺を作る。

ベルリ「ム! そんな言い方ないでしょ! 僕だって必死で頑張ってるんだ!」
ゼハート「チッ、どうやら口で言ってもわからないようだな」

 そう吐き捨てると、ゼハートは腕の裾をまくり上げ、壁の前に立った。
 目を瞑り、大きく深呼吸を行うことで、精神を集中する。

シャア「彼は何をするつもりだ?」
ベルリ「さ、さあ……?」

298オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2019/09/10(火) 01:54:05.19ID:ieOxlnjS0
ゼハート「ベルリ・ゼナムのオオォ~~勝~~利を祈ってエエェェェ……」

 ゼハートの目が、カッと開いた。そして、渾身の力を込めて壁を叩きはじめる!!

<ダンダンダンッ!

マオ「ハイッ!」

<ダンダンダンッ!

マオ「ハイッ!」

<ダンダンダンダンダンダンダンッッ!!

マオ「もいっちょ!」

<ダンダンダンッ!

マオ「ハイッ!」

<ダンダンダンッ!

マオ「ハイッ!」

<ダンダンダンダンダンダンダンッッッ!!!

シャア「なんだ、今のは……」
ベルリ「壁叩き三三七拍子……?」

ゼハート「いいか、ベルリ。貴様らの間に何があったのか、どういう理由で戦っているのか私は知らないし、知る気もない!」

 壁を叩き終え、上気した顔でゼハートが語り掛ける。

ゼハート「だがその男、シャア・アズナブルは本編中、何人もの女性と浮名を流したモテ男だ!」
マオ「つまり、ワイらの敵ですわ」
ゼハート「だからベルリ。例えいかなる理由があろうと、貴様はそんな男に負けてはいけない。絶対にだ!」
ベルリ「いや単なる嫉妬でしょそれぇ!」
ゼハート「嫉妬ではない! これは持たざる者の正当なる怒りだ!」
マオ「そうや!」
ゼハート「この残酷なる世界に対し、我々は断固として意思を見せつけていかなければならない! そのためにも、勝つんだベルリ!」
マイ「喪男の意地、見せてやってくださいベルリはん!」
ゼハート「我々の応援を背に、いけええ! ベルリ・ゼナムッ!!」

ベルリ「ゼハートさん、マオくん……」

 ゼハートたち喪男の声援を受け、ベルリは少しの間俯いて黙り込んでいた。
 だが、やがてこらえきれなくなったようにくつくつと笑い声をあげる。

ベルリ「……くく、くくく! はは、ハハハハハハ!」

 ベルリはヘルメットを外し、笑い過ぎて思わず出てしまった涙を拭いた。
 それから頭頂部で髪をまとめていたゴムを取り、バサバサと頭を振る。

299オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2019/09/10(火) 02:00:25.54ID:ieOxlnjS0
ベルリ「ハハ……あ~バカバカし」
ゼハート「なんだと!? おい貴様、せっかくの我らの応援を」
ベルリ「違いますよ。バカバカしいっていったのは、グズグズと考えてこんでいた僕自身のことで……」
マオ「なんじゃとて?」
ベルリ「そうだ。シャアさんの境遇とか、僕自身が復讐を選ぶかなんてどうだっていいんだ。今、僕がやらなきゃいけないことは……!」

 ベルリはスッキリした顔で頬を一つ叩いた。
 それからコクピットの計器類を見渡し、現状を再確認する。

ベルリ「右足のフォトン・バッテリーはまだいける。武装はコレとコレ。残り稼働時間は……全開だと1分!? 全然足りないでしょ!」

 苦笑いを浮かべつつ、ベルリはG-セルフを立ち上がらせた。

ベルリ「まあいいか。足りないなら、足りるようにするだけだ!」
シャア「あれだけやられてまだ立ち上がるか」
ベルリ「ハイ! ご心配おかけしました。でももう大丈夫、覚悟はできましたから。今度は……あなたを倒します!」

 シャアは意外そうにホウ、と呟いた。

ベルリ「ゼハートさんたちも応援ありがとね。難しいかもしれないけど、あとは安全なトコまでさがって」
ゼハート「信じているぞ、ベルリ」

 ベルリは答えず、代わりにG-セルフが少しだけ頷いて見せた。


 再び対峙するG-セルフとシャア専用ザク。
 初めに動いたのはG-セルフだった。

ベルリ「先手は、もらった!」

 G-セルフは敵に向けて盾を投げつけた。
 だが当然、ザクはこれを軽々と回避。

シャア「やぶれかぶれか? いや」

 G-セルフは既にビーム・ライフルを構えている。
 そして残りの弾数分、ありったけをザクに向けて乱射する。
 シャアはこれも回避したが、外れたビームは先ほど投げた盾に当たり、
 またザクに向かって反射する!

シャア「こちらが本命か。だが、読めていたぞ」

 ザクは踊るような軽やかな動きでこれも回避。
 最初の読み合いはシャアに軍配が上がったかに見えた。
 しかし。

ベルリ「パーフェクトパック、リフレクター展開!」

 G-セルフは変形したスラスターで、ザクが避けたビームを受け止めた。
 するとビームは吸収され、そのままG-セルフのエネルギーに転用される。

ベルリ「今ので限界稼働時間は1分30秒まで伸びた。これなら十分。僕ならいける!」
シャア「なるほど。無意味に見えた最初の攻撃も、二手三手先を読んだ布石だったか。やるな、ガンダム兄弟」
ベルリ「僕はベルリ・ゼナムです! いい加減名前で呼んでくださいよ!」

300オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2019/09/10(火) 02:08:16.35ID:ieOxlnjS0
 G-セルフは空になったライフルを投げ捨てた。
 そしてバックパックから遠隔操作端末であるトラックフィンを射出。
 トラックフィンはザクに向かって飛び、トラクタービームで金縛りにしようとする。
 対してザクはSマインを発射。小型鉄球の雨がトラックフィンを破壊した。

シャア「名前を呼ばれたいか、ならば私を負かしてみろ!」
ベルリ「言われなくても!」

 爆風から逃れつつ、バズーカを構えるシャア専用ザク。
 だがG-セルフは既に先んじて動いていた。
 ザクを超える高速移動で懐に潜り込むと、抉るようなアッパーをその胴体に打ち込む!

シャア「ぐ……うっ!」

 その衝撃は凄まじく、ザクは空中に吹っ飛ばされた。
 しかしG-セルフの攻撃はまだ終わらない。

ベルリ「このパーフェクトパックなら、高トルクの芸当だって!」

 G-セルフが薄緑色に変色すると、全身がIフィールドのエネルギーに包まれる。
 高トルクモードのG-セルフは空中を吹っ飛ぶザクに追いつくと、さらにもう一撃殴りつけた!
 無防備な状態での二撃目は、ザクに大ダメージを与える。

シャア「どういうことだ。このパイロット、先ほどより格段に動きが良くなっている。ニュータイプへの覚醒か? いや!」

 シャアは敵から距離を取りながら、
 バチバチと火花を上げるコクピットの中で一人考える。

シャア「無意識に手加減していたというのか、この私相手に!!」

 導き出された結論に、シャアは思わず咆哮した。
 実際、その分析は概ね当たっていた。
 パーフェクトパックを装備したG-セルフの戦闘能力は、もはやMSの域を超える。
 ベルリの腕をもってしても……いや、天才と呼ばれるベルリだからこそ、その力は手に余る。
 ゆえにこれまで、無意識的にベルリはG-セルフの能力を制限していたのだ。
 だが今、徹底的に追い詰められた状況で、そのリミッターは完全に外れていた。
 覚悟を決めたベルリは、パーフェクトパックの全ての力を使ってシャアを追い詰める!

ベルリ「アサルト!」

 スラスターを砲撃モードにした長距離射撃が、ザクを狙い撃ってきた。
 シャアは間一髪、これを回避。
 しかし続けてきたIフィールドの干渉波はよけきれず、機体は一時的に機能不全に陥ってしまう。

シャア「ええい、ガンダム兄弟のMSは化け物か!」
ベルリ「限界稼働時間まであと20秒! 一気にケリをつける!」

 中距離まで接近してきたG-セルフは急停止し、全身のフォトン装甲から全方位にビームをばら撒いた。
 破壊された工場から粉塵が巻き上げられ、周囲の視界は殆どゼロに近くなる。

シャア「視界を奪われただと!?」
ベルリ「トリッキーモード作動!」

 どこからか聞こえるベルリの声。すると粉塵の霧の中に、いくつものG-セルフらしき影が映し出される。
 投影された影はザクを囲むように、グルグルと回転を始めた。


301オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2019/09/10(火) 02:16:34.35ID:ieOxlnjS0
シャア「落ち着け、これはただの目くらまし。実体は一つだ」

 シャアは目を瞑り、意識を集中させた。

シャア「必ず敵は見える。私も、ニュータイプの筈だ!」

 G-セルフの限界稼働時間まで、あと15秒を切った。
 その時、粉塵の霧の中から何かが飛び出してくる。

シャア「来たか」

 シャアは慌てず、冷静に対艦ライフルを構えた。
 だが、そんな彼にニュータイプの直感が告げた。これは“違う”と。

シャア「そうだ、これは囮か!」

 その読み通り、霧の中から飛び出してきたのは分離したG-セルフのバックパックだった。
 シャアは対艦ライフルを地面に落とすと、代わりに腰にマウントしたヒート・ホークに手を伸ばす。

シャア「見えた!」

 振り向きざま、ザクのカメラが捉えたのは、
 両手にビームサーベルを持ち、背後から襲い掛かってくるG-セルフの姿だった。
 シャアはにい、と笑うと、ガンダムに向かってザクを一歩踏み込ませた。
 そして手にしたヒート・ホークで、G-セルフの胸を逆袈裟に切り上げる!
 勝った。シャアはそう思った。だがすぐに違和感に気づく。

シャア「手ごたえが……無いだと!?」

 切り裂いたはずのG-セルフの胸はからっぽだった。
 仮面の奥で、シャアの目が大きく見開かれた次の瞬間!

ベルリ「行けええ! コア・ファイター!」

 ベルリの叫びと共に飛び出してきたのは、一機の小型戦闘機だった。
 小型戦闘機はザクの股の間をすり抜け、
 G-セルフの背後に回り、本体と合体する!

シャア「空蝉の術を使ったのか、ベルリ君は!!?」
ベルリ「これがヤーパン忍法だあああ!!」

 コア・ファイターと合体したことで、ガンダムの目に再び光が灯る。
 再起動したG-セルフはビームサーベルを構えなおすと、
 シャア専用ザクの四肢を、一瞬のうちにバラバラに切り裂いた。

シャア「私の……負けか」

 崩れ落ちるシャア専用ザク。同時にG-セルフも限界稼働時間を迎え、機能を停止した。

304オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2019/09/17(火) 01:30:37.45ID:ANfvXbuS0
日登町北区
ヨナ「ベルリ! 無事か!?」
ベルリ「ヨナ兄さん。それにキラとキオも。迎えに来てくれたのね」
キラ「なんだ、もう戦闘終わってるじゃん」
キオ「この騒動が起こってから、僕ら一回も戦闘に間に合ったことないよね」

 ベルリはこうして無事ヨナたちと合流した。
 今は機能停止したG-セルフの簡易的なチェックを受けている。

キラ「うん。左足のフォトンバッテリーだけどね、衝撃で接続部の弁が詰まっただけみたい。これならすぐ直せるよ」
ベルリ「本当に? よかった。てっきり僕はここでリタイアかと思った」
キラ「逆に無茶しすぎたせいで、右足のバッテリーはオシャカだけどね。まあ通常戦闘ならギリギリ大丈夫かな」
ベルリ「それでもいいよ。ところで、シャアさんは?」
キラ「仮面をつけた方の? あの人ならヨナ兄さんが尋問してるよ」
ベルリ「そっか。……僕、ちょっと様子見てくるね」

 ベルリが歩き出そうとしたところへ、ゼハートたちがやってくる。

マオ「いや~見事な大勝利でしたなベルリはん」
ゼハート「喪男の矜持、見せつけたな。やはり私の応援があってこそ……」
ベルリ「ごめんなさい! 話ならまた後で聞きますから!」
ゼハート「おい、おいどこへ行くベルリ!」

ヨナ「なあ。ベルリの話だと、君は『ヅダエール』の影響を受けていないんだろ? 何か知っていることがあれば話してくれないか?」
シャア(一年戦争)「…………」
ヨナ「だんまり、か。ハア」

 そこへ、息を切らせてベルリが走ってきた。

ヨナ「どうしたベルリ? そんなに急いで。俺に何か用か?」
ベルリ「いや、用があるのはヨナ兄さんじゃなくシャアさんの方」
シャア(一年戦争)「私に?」
ベルリ「はい。どうしても言っておきたい事があって」
シャア(一年戦争)「フッ。復讐はよせだとか、そういうお説教なら勘弁してもらいたいのだがな」
ベルリ「まさか。説教なんてしないですよアムロ兄さんやカミーユじゃあるまいし」

 ベルリは手を振って否定した。

ベルリ「復讐だって、したいなら別に止めません。ただ今みたいにみんなが困ってるときじゃなくて、チャンと時間と場所を選んでやってくださいよ」
ヨナ「おいおい」
ベルリ「まあ、ミネバちゃんを狙うのは考え直した方がいいと思いますけど」
シャア(一年戦争)「なぜだね?」
ベルリ「ウチにはバナージっていう筋金入りのロリコンがいますからね。ミネバちゃんを狙ってるって知ったら、きっと全力で邪魔しにきますよ」
シャア(一年戦争)「ほう。覚えておこう」

 シャアは仮面の下で小さく笑った。

305オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2019/09/17(火) 01:34:53.63ID:ANfvXbuS0
シャア(一年戦争)「それで、言っておきたいことというのは今の話かね?」
ベルリ「いえ、違います。僕が言いたいことは……」

 ベルリはそこで言葉を区切り、少し俯いた。
 そしてもう一度、自分の中で「答え」に間違いがないか確認を取る。
 やがてベルリは顔を上げた。

ベルリ「僕は、多分復讐はしないと思います」
シャア(一年戦争)「…………」
ヨナ「復讐? 復讐ってなんのことだベルリ?」

 ヨナが不思議そうに問いかけるが、ベルリは返事を返さない。
 ただ真っ直ぐにシャアを見る。

ベルリ「戦闘中、ううん、戦闘が終わってからもずっと考えてました。で、僕なりに出した結論としては、やっぱり復讐はしない方がいいなって」
シャア(一年戦争)「……君は、私にそれだけを言いに来たのかね?」
ベルリ「ハイ、そうです!」

 ベルリは元気よく答えた。

ベルリ「復讐とかそういう誰かを恨みに思う気持ちって戦いの根っこだと思いますから。僕はそういう根っこを取り除きたいんです。だから、復讐はしません!」
シャア(一年戦争)「…………」

 シャアはしばらく黙ってベルリを見ていた。
 だが、やがて

シャア(一年戦争)「……くく、はは、ははは!」

 突然愉快そうに声をあげて笑い出したシャア(一年戦争)。
 ヨナ、そしてベルリも思わぬ反応に呆気にとられる。

『……ね? 面白い人たちでしょう? ガンダム兄弟って』
シャア(一年戦争)「ああ、まったくだ。だから君は今もここにいるのだな、ララァ』
『ええ。そして、未来の大佐自身も』

 シャア(一年戦争)は見えない誰かと、一言、二言、言葉を交わした。
 それから兜と仮面を外し、素顔でベルリたちと向き合う。

シャア(一年戦争)「フル・フロンタルは強敵だぞ。君に彼を止められるのかベルリ君?」
ベルリ「大丈夫です! だって、戦うのは僕一人じゃありませんから」
ヨナ「そうだ。俺たちガンダム兄弟が……いいや、町の人たち全てが今、この騒動を終わらせようと必死に動いている。だから、絶対に止められる!」
シャア(一年戦争)「そうか。なら、まずはフロンタルの協力者を止めることだな」
ベルリ「誰か知ってるんですか?」
シャア(一年戦争)「一人はな。ゾルタン・アッカネンという義眼の男だ」
ベルリ「ゾルタン……ウチを襲ったってヤツか!」
ヨナ「待ってくれ。今、『一人は』といったな。もしかして、フロンタルの協力者は複数いるのか?」
シャア(一年戦争)「そうだ。フロンタルの協力者――いや、『同志』はもう一人いるらしい」
ヨナ「『同志』……?」
シャア(一年戦争)「フロンタル自身がそう呼んでいたのだ。私の同志たち、とな」
ベルリ「誰なんですかそれ?」
シャア(一年戦争)「詳しくはわからない。ただ、ヤツの口ぶりからして、君たちガンダム兄弟のよく知る人物であることは間違いないようだが」
ヨナ「フロンタルに手を貸す、俺たちがよく知る人間……一体誰なんだ?」

 首をかしげるヨナ。
 その時、ナラティブガンダムの通信機に、突然連絡が入る。

306オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2019/09/17(火) 01:36:43.29ID:ANfvXbuS0
キオ『兄ちゃん! ヨナ兄ちゃん聞こえる!?』
ベルリ「キオ? そういえば見ないけど」
ヨナ「キオには辺りの偵察に出てもらっていたんだ。……キオ、俺だ。何かあったか?」
キオ『大変だよヨナ兄ちゃん! 三日月兄ちゃんが……!』
ヨナ「三日月? 三日月がどうかしたのか?」
キオ『と、とにかく代わるね!』

 通信機の向こうで聞こえる慌ただしい音。
 少しして、キオとは違う若い男の声が通信機から流れた。

『……ガンダム兄弟か?』
ヨナ「ああ、ヨナ・バシュタだ。君は?」
アフランシ『僕はアフランシ・シャア。先ほどまで、三日月君と一緒に町に現れたシドと戦っていた』
ヨナ「シドか。三日月が大変だと言っていたな。まさか、撃墜されたのか?」
アフランシ『いいや違う。だけどもっと酷い。落ち着いて聞いてくれ。三日月くんのバルバトスはシドに乗っ取られた。このままだと、日登町は彼によって破壊されるぞ!』
ベルリ「なんじゃとて!?」


日登町北区での戦闘結果(1)

G-セルフ……機体自体は小破。しかしエネルギー不足のため、戦闘能力は大幅に低下

シャア専用ザクII……戦闘不能

シャア(一年戦争)……捕縛


日登町北区での戦闘結果(2)

Gセイバー……相討ちにより大破

実写シャア専用ザクII……相討ちにより大破

マーク&実写シャア……なぜか男同士の友情が芽生える


日登町北区での戦闘結果(3)

ガイア・ギアα……撃墜

ガンダム・バルバトスルプスレクス……戦闘のさなかにシドに乗っ取られ、現在日登町中央区に向けて移動中

三日月・オーガス……バルバトスがシドに乗っ取られた以降、安否不明


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最終更新:2023年02月27日 12:47