866オールアムロVSシャア軍団VS
ガンダム兄弟2020/09/22(火) 03:20:20.78ID:7LT8zGEQ0
AM 06:07
ネオジオン社:近辺の森
アセム「これでIIネオ・ジオングは倒した! ヘリウム3の臨界は?」
コウ「ダメだ、まだ止まってない!!」
ガロード「せっかくゾルタンを止めたってのに。遅すぎたのかよ!?」
IIネオ・ジオングを倒してもアセムたちの戦いはまだ終わっていない。
ゾルタンがサイコシャードによって引き起こした、ヘリウム3の同時臨界。
それを阻止しなければ、
日登町は地上から消滅してしまう!
アセム「なにかあるはずだ……臨界を止める手が!」
コウ「そうだガロード! サテライトキャノンだ! サテライトキャノンでヘリウム3を吹っ飛ばすんだ!」
ガロード「サテライトキャノンで……? そんなことして大丈夫なの」
コウ「臨界に達しなければヘリウム3もただのガスなんだ。それでも多少の被害は出てしまうだろうけど」
ガロード「
日登町全部が消えてなくなるよりマシってことか。わかった!」
ガロードは覚悟を決めると、コウに指示された狙撃ポイントに向かった。
そしてサテライトシステムを再起動し、キャノンのチャージを行う。
地面の振動がますます大きくなる中、ガロードは未だ気を失っている隣のティファを見た。
ガロード「見ててくれよティファ。この町は、俺が必ず守るから。……サテライトキャノン、発射!」
二門の大砲から放たれたビームは一直線に
ネオジオン社に向かう。
コロニーすら一撃で破壊する威力の前に、社屋は跡形もなく消し飛んだ……かに見えた。
アセム「
ネオジオン社の消滅を確認。やったのか、ガロード!?」
ガロード「……ダメだ」
アセム「え?」
ガロード「ダメだった。地上部分は吹っ飛ばしたけど、地下にシェルターがあったんだ!」
アセム「なんだって!?」
知っての通り、つい昨日の晩まで
ネオジオン社は周辺住民が避難するシェルターとして使われていた。
それもただのシェルターではない。
いつシャアがトチ狂ってアクシズ落としを行ってもいいように、
ナナイが設計した小惑星の衝突にも耐えられる規模のシェルターだ。
コウ「なんてことだ。ヘリウム3の反応はシェルターのさらに地下……今のサテライトキャノンじゃ全然効いてない!」
ガロード「くそっ! ならもう一発だ!」
ガロードは冷却もそこそこに、再びサテライトキャノンの発射体勢に入った。
だが、同時にモニターに表示されたアラートに、彼は目を大きく見開く。
そこには、『サテライトキャノン使用不可』という警告がハッキリと書かれていた。
867オールアムロVSシャア軍団VS
ガンダム兄弟2020/09/22(火) 03:21:53.29ID:7LT8zGEQ0
アセム「サテライトキャノンが……もう使えない?!」
コウ「多分、IIネオ・ジオングとの戦いのせいだ。武装を自壊させるサイコフィールドが、サテライトシステムに悪影響を与えたのかもしれない」
アセム「冷静に言ってる場合じゃないだろ! もう臨界まで時間が無いんだ! なにか……なにか他に方法は……!」
ガロード「クソッ!! 諦めるもんかよ! こうなったらビームサーベルで壁を掘ってでも……!」
雄叫びと共にシェルターに突撃を仕掛けるガロード。
だがその手を、隣から誰かが優しく止めた。
ティファ「待って、ガロード」
ガロード「ティファ! 目が覚めたのかい!?」
ティファ「お願い、聞いてガロード。今すぐここから離れて。コウさんたちも」
ガロード「どういうことだよ? なんとかしなきゃ、もうすぐ爆発が起きて
日登町が……!」
ティファ「それなら大丈夫」
そういってティファは静かに首を振る。
ティファ「わたしたちにできることは、もうないから」
ガロード「それってどういう……」
謎めいたティファの言葉に、ガロードが意味を問おうとした時だった。
突如、周辺の森の木々が大きく揺らぎ、地下から巨大な『何か』が顔を覗かせる。
コウ「あれは……」
アセム「
デビルガンダムヘッド!? それにしちゃデカい、デカすぎる! 戦艦クラスはあるぞ!」
突如地下から現れたモノの正体。それは異常成長を遂げた
デビルガンダムヘッドだった。
コウたちも
デビルガンダムとは何度も戦ってきたが、これほどの大きさのDGヘッドは見たことがない。
それが一度に十数本も、
ネオジオン社を囲むように生えてきたのだ。
デビルガンダムヘッド「…………」
ガロード「こいつら、俺たちのことに気づいてない? 一体何をしに来たんだ?」
その時、地面の振動がこれまでにないほど激しくなった。
遂にヘリウム3の同時臨界が始まったのだ。
だがそれと同時に、DGヘッドは信じられない行動を取った。
コウ「あれって……」
ガロード「ウソだろ、おい」
アセム「DGヘッドが、ヘリウム3を喰ってる……!」
巨大DGヘッドたちはシェルターに頭を突っ込み、我先にと臨界したヘリウム3を食らい始めたのだ。
そしてあっという間に喰いつくすと、何事もなかったかのように地下に戻っていく。
868オールアムロVSシャア軍団VS
ガンダム兄弟2020/09/22(火) 03:23:04.53ID:7LT8zGEQ0
コウ「……ヘリウム3の反応なし」
アセム「振動も収まった……」
ガロード「この町は
デビルガンダムに救われたってコト? 冗談キツイぜ……」
ガロードたちは複雑な表情でDGヘッドが消えた穴を見つめていた。
時折不気味な声が聞こえるその穴は奥が見えないほどに深く、さながら地獄に続いているようだ。
アセム「これからアイツと戦うんだな、シロー兄さんたちは」
コウ「本当に勝てるのかな、あんな化け物相手に……」
ガロード「何言ってんの! 勝つさ! ぜったい!」
少しの沈黙。
アセム「そうだな。信じよう。シロー兄さんたちなら絶対に勝てる」
コウ「うん、そうだね。ガロードの言う通りだ」
漠然とした不安とかき消すように、努めて明るく振舞うガロード。
その気遣いを察して、兄たちもそれに同調する。
ガロード「ならもうここには用はないな。早く学校に戻ってヨナ兄たちに合流しようぜ」
アセム「ああ、そうしよう。……って、アレ? なんか忘れてるような」
ガロード「忘れてること?」
コウ「そもそも二人って、なんのために
ネオジオン社まで来たんだっけ?」
アセム「なんのためって、そりゃフル・フロンタルを倒して、それから……」
ティファ「あの、ガロード」
ガロード「ん?」
ティファ「セレーネさん、忘れてます……」
アセム・ガロード・コウ「「「ハッ!!!?」」」
ティファのその指摘に、三人は一斉に顔を青ざめた。
アセム「や、ヤバイ……完全に忘れてたセレーネ姉さんのこと……!!」
コウ「バカ! バカ! なんで忘れるんだよ! 一番大事だろソレ!」
ガロード「ていうか俺サテキャで
ネオジオン社吹っ飛ばしちゃったんだけど……まさかまとめて
ミンチにしちゃった?」
コウ「探そう! 今すぐ探そう!!」
アセム「そ、そうだね! 今すぐ見つけて復活させたら
輪切り三日の刑くらいで済むかもしれないし!!」
ガロード「ティファ! 俺たちに力を貸してくれ!!」
これまでに無いほどの必死さで懇願するガロード。
だがティファはすぐに首を振った。
869オールアムロVSシャア軍団VS
ガンダム兄弟2020/09/22(火) 03:24:27.23ID:7LT8zGEQ0
ティファ「ダメです。近くにセレーネさんの気配はありません」
ガロード「なんだって!?」
アセム「ティファの感知が届かないほど遠くに吹き飛ばされたのか?」
コウ「いや、もしかしたらさっきのDGヘッドにヘリウム3ごと食べられちゃったのかも……!」
ガロード「じゃあ今姉さんは
デビルガンダムの腹の中ってこと?!」
アセム「そんな! ならウ○コになって出てくるまで待つしかないのか!?」
ガロード「ああーーっ!! しくじった!! セレ姉をウ○コにするなんて、復活したらどんだけ酷いお仕置きされるんだ……!」
コウ「ていうかウ○コからって、いくらこの町でも復活できるのかな……?」
まさかの事態にビビリまくる3人。だがそこへ一機のMSが音もなく接近する。
???「それなら大丈夫だ。セレーネは
ミンチでもなければウ○コにもなっていない」
ガロード「誰だ!」
アセム「落ち着けガロード。あれは敵じゃない」
コウ「黒いストライクガンダム……スウェンさんか」
スウェン「そうだ」
黒いストライクガンダム――ストライクノワールのコクピットで、
スウェン・カル・バヤンはいつもどおり言葉少なに頷いた。
コウ「それでスウェンさん。あなたはどうしてここに?」
スウェン「キョウジに頼まれて、俺はフロンタルに攫われたセレーネの行方を追っていた」
アセム「キョウジさんが……」
淡々と話すスウェンの言葉に、アセムは少しだけ驚いた。
キョウジとスウェンといえば、密かにセレーネを巡って恋のライバル関係にあると言われている二人だ。
だが周囲が勝手に思っているほど、その関係は悪いものではないらしい。
ガロード「で、でさ! さっきセレ姉は
ミンチにもウ○コにもなってないって言ったよな? てことは」
スウェン「ああ。彼女は無事だ。
ネオジオン社から少し離れた倉庫で軟禁されているのをさっき見つけた」
スウェンが手招きすると、背後からは
スターゲイザーがゆっくりと歩み出てくる。
アセム「姉さん! セレーネ姉さん! よかった、無事だったんだね」
スウェン「声をかけても無駄だ。俺が発見した時、彼女は薬で眠らされていた。今もな」
セレーネ「んがっ! ぐごごごごごご………」
コウ「この豪快ないびき、間違いなくセレーネ姉さんだね」
ガロード「じゃあ今機体を動かしてんのは
スターゲイザー自身か」
アセム「それにお前もよく無事だったな。ありがとな、
スターゲイザー。姉さんを守ってくれて」
アセムのAGE-2が頭部を撫でると、
スターゲイザーは子供のようにぴょんぴょんと跳ねた。
不思議なことに、兄弟家の戦闘で受けたはずの傷は、今はその多くが何者かによって修理されていた。
スウェン「ざっと調べてみたが、機体に何かを仕掛けられている様子はない。セレーネも、すぐに目覚めるだろう」
コウ「じゃあ、とりあえずこれで僕らの仕事はひと段落ってことかな」
ガロード「そうだね。じゃあすぐに学校へ戻ろう。アッチも心配だし」
アセム「ガロード。フロスト兄弟は放っておいていいのか?」
コウ「そういえば僕も気になってたんだ。あいつら、突然戦闘を放棄したように見えたけど」
ガロード「ああ、あいつらか……」
聞かれて、ガロードはどこか面白くなさそうな顔をした。
ガロード「あいつらなら、もう気にしなくて大丈夫だと思うぜ」
アセム「???」
ガロード「まったく、こんな時まで人をおちょくって……ホントめんどくさいよあいつらって」
コウ「???」
ガロードの謎の言い回しに首を傾げつつ、兄弟たち一行はセレーネを引き連れて
ネオジオン社を後にした。
870オールアムロVSシャア軍団VS
ガンダム兄弟2020/09/22(火) 03:33:26.44ID:7LT8zGEQ0
AM 06:10
ネオジオン社近郊:戦場跡
ゾルタン「くそっ! くそっ! 俺が、俺があんな只の人間に負けるなんて!!」
破壊されたIIネオ・ジオングの残骸の側。
大破したシナンジュ・スタインのコクピットでゾルタンは嗚咽を漏らしていた。
オルバ「ああ、これは随分手酷くやられたものだね、兄さん」
シャギア「まったくだ、これは言い訳の仕様がない敗北だな、オルバよ」
ゾルタン「フロスト兄弟……!」
そこへやってきたのはフロスト兄弟の
ガンダムだ。
ふてぶてしい顔の彼らを、ゾルタンは噛みつきそうな目で睨みつける。
ゾルタン「てめえら……やっぱり裏切りやがったな!」
シャギア「裏切る、とは心外だなオルバよ」
オルバ「そうだね兄さん。元々僕らは、フル・フロンタルの計画を探るために彼に近づいたんだから」
ゾルタン「なんだと!?」
シャギア「こう見えて我々は普段探偵をやっていてね。依頼を受けたわけさ、フロンタルの企みを止めて欲しいと」
オルバ「調査費も全額前払いでくれたし、万年金欠の僕らにとっちゃいい仕事だったよね」
ゾルタン「誰だ! 誰がフロンタルの計画を邪魔してる!?」
シャギア「本当は守秘義務があるのだが、まあ薄々検討もついているだろうから答えよう」
オルバ「僕らの依頼主はね、ギルバート・デュランダルだよ」
ゾルタン「ギルバート・デュランダル、あいつか……!」
ギルバート・デュランダル。彼のことはゾルタンも知っていた。
フロンタルらシャア軍団のメンバーでありながら、
同時に
ネオジオン社の商売敵であるクライン社の現CEOである彼は、シャア軍団の中でも独特の立ち位置だ。
シャギア「もっとも彼も、
ネオジオン社の情報を探っているうちに偶然フロンタルの企みに気づいたというがな」
オルバ「それで計画の全容解明のため、僕らに依頼を出してきたってワケ」
シャギア「他にも東方不敗や海賊部隊のような、どこの組織にも属さない人間を味方に引き入れつつな」
オルバ「潜り込むのは実際苦労したよ。フル・フロンタルは見た目と違って予想以上に用心深い男だったからね」
シャギア「
ガンダム兄弟に恩を売ってからのセレーネ誘拐を成功させたお陰で、ようやくここまでこれたという訳だ」
白々しい台詞を億面もなくフロスト兄弟。
彼らを前にして、ゾルタンは泣き笑いと怒りの混じった複雑な表情を浮かべる。
871オールアムロVSシャア軍団VS
ガンダム兄弟2020/09/22(火) 03:37:11.30ID:7LT8zGEQ0
ゾルタン「ハ、ハハッ、はじめから全部ウソだったってワケか! 自分たちを認めなかった世界に復讐したいってのも、俺に同情してるってのも! 全部!」
シャギア「いや、残念だが、それは本当だ」
ゾルタン「!!?」
意外な答えに、ゾルタンは一瞬答えに詰まった。
オルバ「正直言って、初めの頃は君のことなんてなんとも思ってなかったんだけどね」
シャギア「だが君のことを知るにつれ、どんどん君が昔の我々の姿に被ってきてな。有体に言えば、情が湧いたというとこだ」
ゾルタン「…………」
オルバ「そして、同時にこうも思ったんだよ。昔の僕らにそっくりな君を、“あいつら”とぶつけてみたらどうなるだろうって」
ゾルタン「“あいつら”だと?」
オルバ「君もたった今、痛い目に遭っただろう?」
シャギア「ニュータイプでもなんでもない只の人間の癖に、時折ニュータイプを遥かに上回る力を発揮する、あの三人のことだよ」
ゾルタン「あの
ガンダム兄弟か……!」
オルバ「ほんと頭に来るよね、あいつらって。恋だの夢だの目標だの、いつも青臭いことばっかり言ってこっちの気持ちなんて全然理解しようとしない」
シャギア「本当にそうだ。彼らのせいで、私たちの計画も何度邪魔されたかわからない」
オルバ「だから僕らは決めたのさ。僕たちを認めなかった世界に復讐する前に、まずは彼らをぎゃふんと言わせてやろうってね」
ゾルタン「ぎゃふん……」
シャギア「普段、我々が彼らと馴れ合っているよう見えるのも、まずは懐に潜り込んで情報を集めているのだ。
……まあ、ロランくんの作る朝食が旨いのは否定しないがな」
オルバ「そうしていずれは、油断したところをまとめて寝首を掻いてやるのさ。
……まあ、ロラン・セアックが朝食を作って待っていてくれるのも、別に悪い気はしないけどね」
それから二人は振り返ってゾルタンを見た。
オルバ「それで、君はどうだったゾルタン? 戦ってみて、綺麗ごとばかりいう彼らにムカつかなかった?」
シャギア「きっと頭にきただろう。次、戦う時は必ず仕返しする。そう思ったんじゃないか?」
ゾルタン「……当たり前だ! 俺が、この俺があんなクソ雑魚どもに負けたままで終われるか!
ガロード・ランにアセム・アスノ、それから、あの影の薄いスーパー・コウ・ニイサン!!
あいつらの名前は覚えたぞ。次戦るときは……必ず俺が叩き潰す!!」
オルバ「なんか一人間違った名前で憶えてるけど、ふふっ、その意気だよゾルタン」
シャギア「ならば次は、一緒に
ガンダム兄弟家の朝食時に襲うとするか」
オルバ「そうだね。あいつらを倒すにも、まずは栄養補給は大事だからね」
シャギア「フッ、寝ぼけ眼の彼らからかっさらう卵焼きの味は格別だぞ」
フロスト兄弟の甘言にまんまと乗せられ、ガロードたちへの復讐に燃えるゾルタン。
だがその瞳からは、先ほどまでの
我が身を滅ぼしてでも世界を焼き尽くそうとする憎悪の炎は、いつの間にか消え去っていた。
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最終更新:2023年05月01日 13:48