273オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2021/08/16(月) 01:32:56.40ID:3KfH35zO0
  AM08:12

 『ヅダエール』による月光蝶の汚染――つまり全人類が全日全裸になるまで、あと一分。
 機体各部が砂になり、落ちていくアハヴァ・アジールを蹴って、ガンダムは飛翔した。

アル「行け! アムロ兄ちゃん!」(全裸
シュウト「飛べ! ガンダム!」(全裸
アムロ「ああ任せろ! 服という名の尊厳は、俺が必ず守る!」
アルレット「頼んだわよ! 帰ってきたら姉さんお気に入りブランドのスーツ仕立ててあげるからね。すっごい肩パッド入ったヤツ!」(全裸
アムロ「それはいらん!」

 全裸となって落ちていく兄弟の応援を背中に受け、ガンダムは∀に向けて一直線に進撃する!

ロラン「驚きましたよ兄さん。そんな古いMS、どこにあったんです?」
アムロ「俺も驚きだよ。どうやら家からマイたちが持ち出していたらしいな!」

 このガンダムは、もともと分裂したアムロのうち、コウと戦ったアムロ(一年戦争)が乗っていたものだ。
 それを昨日、ゾルタンがガンダム兄弟家を襲撃した時、マイが持ち出していたのだ。

アムロ「νとは違うが手になじむこの感覚、懐かしいな」
ロラン「ならノスタルジーに浸ったまま、全裸になってくださいよ!」

 ガンダム目掛けて∀ガンダムはビームライフルを撃った。
 それを時に盾で受け流し、時に紙一重で回避しながら、アムロはこちらへ迫ってくる。

ロラン「そんな骨董品なんかに、∀が!」
アムロ「骨董品なのは∀も一緒だろロラン!」

 ガンダムはスラスターを噴かし、さらに上昇。まだ、∀は見上げる位置にある。

アムロ「自分がフル・フロンタルの野心にいいように使われているとなぜ気づかない!」
ロラン「フロンタルさんはいい人だしいい体です! 貧弱クソもやしの兄さんと違ってね!」
アムロ「この! 頭の中まで全裸に染まったか!」
ロラン「それに、フロンタルさんにいいように使われたのは兄さんも一緒でしょう!」
アムロ「だからこうして埋め合わせをやっている!」

 そして遂に、∀に手を伸ばせば指先が届く位置まで、ガンダムは到達した。

ロラン「っ! まさか本当にここまで来るなんて!」
アムロ「捕まえたぞ、ロラン! さあ、月光蝶を解除しろ!」
ロラン「お断りします!」

 拒絶の言葉と共に、彼はスラスターベーンを噴射した。
 ガンダムとは比べ物にならない推力をもって逃げていく∀ガンダム。
 そして空中で45度回転すると背中を晒し、
 ガンダムに向けて超至近距離から月光蝶を浴びせかけた。

アムロ「ぐわああああああ!」
ロラン「いい加減、僕の前から消えてください!」

 高密度のナノマシンの群れに飲み込まれ、ガンダムの装甲は一瞬のうちに分解されていく。
 だが、それでアムロが諦めるはずもない。 

アムロ「まだだ!」

 アムロは咄嗟にAパーツとBパーツを分離、装甲が全て分解される前に、コアファイターで月光蝶の渦から脱出した。
 そして、そのまま上昇を続け、ついに∀ガンダムと同じ高さまで到達する!

274オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2021/08/16(月) 01:33:16.07ID:3KfH35zO0
マイ『月光蝶の汚染まで、あと30秒!』

 通信機からはマイの焦燥した声が聞こえる。
 だがアムロは、その焦りに引きずられることなく、冷静にシートベルトを外した。
 そしてキャノピーを開けると、シートの上に立ち、ヘルメットを外した。

ロラン「」

 アムロを見て、ロランが何かを言っている。だが風の音のせいで今は何も聞こえない。

アムロ「行くぞロラン。これで……この一球で、全てにケリをつけてやる!」

 アムロは手の中に握ったものの感触を確かめた。そして∀ガンダムのコクピットを見据え、
 大きく振りかぶり……『それ』を投擲した!

アムロ「これが! この事件に決着をつける必殺魔球! その名も、ガンダムボール3号だあああああ!!」

 アムロが投げた『それ』は、風を切り、まっすぐに∀ガンダムに向かっていく。
 得体のしれない恐怖を感じたロランは、∀でそれを掴もうとした。
 だが『それ』は、∀の手を動物のように掻い潜り、キャノピーに開いた穴からコクピットの中へ吸い込まれていく。

 アムロは、砂になっていくコアファイターのコクピットから、その光景を満足そうに見つめていた。


ロラン「お、驚いた。一体、兄さんは何を投げてきたんだ?」

 ロランはコクピットの中に投げ込まれた『それ』を何気なく拾った。

ロラン「これは……スマホ? なんで兄さんはこんなものを……」

 訝しげにデバイスを眺めるロラン。すると突然、背後からゾクっとするような冷気を感じた。
 しかし、驚いて慌てて振り向いてみても、当然誰もいない。
 その時

死神『ポチっとな』
ロラン「な、なんだ? 何もしてないのにビデオ通話が……」

 知らぬ間にアプリが起動し、液晶画面に映し出された通話の相手は……

ロラン「ディ、ディ、ディアナ様!?」

 見間違えるはずもない。スマホの小さな画面に現れたのは月の女王ディアナ・ソレル
 優雅に微笑を浮かべながら椅子に座る彼女の隣には、親衛隊長であるハリー・オードの姿もあった。

ディアナ「久方ぶりですね、ロラン」

 1000年変わらぬ穏やかな表情で微笑みかけるディアナ。
 だがロランはパニックのあまり、口をぱくぱくと開け閉めするばかりで何の言葉も出てこない。
 ディアナはそんなロランの顔から胸、腹、そしてさらに下へと視線を移していき、
 股間に目が留まると、手で口元を抑えつつこう言った。

ディアナ「まあ、可愛らしい」
ロラン「ガーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーΣ(゚Д゚|||)ーーーーーーーーーーーーーーーン!!」

275オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2021/08/16(月) 01:48:30.59ID:3KfH35zO0
 AM08:12 地上

サンダース「見ろ、『ヅダエール』のプラントが分解される寸前で」
ミケル「∀ガンダムの、月光蝶の放出が止まった……!」

 正確には、放出が止まったのではなかった。
 もっとも敬愛するディアナ・ソレルに言われた衝撃的な一言は、ロランの心を大きくかき乱した。
 それが月光蝶の制御に悪影響を及ぼし、放出口の途中で固まって栓をしてしまったのだ。
 そして、行き場を失った月光蝶のナノマシンは、内側から機体を腐食していき……

メシェー「見なよソシエ。ホワイトドールが」
ソシエ「崩れてく。砂糖菓子が溶けるみたいに……」

 ∀ガンダムの崩壊と共に、オーロラのように周囲の空にかかっていた
 月光蝶の光やワームホールも消滅し、後には、雲一つない夏の青空が戻ってきた。

セカイ「勝った……のか? あの∀ガンダムに」
セイ「そうだよ! ガンダム兄弟の……いいや、日登町の大勝利だ!!」

 その言葉をきっかけに、町の住人達は一斉に歓声を上げた。
 人々の多くは全裸だったが、もはや誰もそれを恥じることはなく、勝利を喜び合っている。
 そんな中、フル・フロンタルだけが目の前の現実を受け入れられず、呆然と何もない空を見つめていた。

フロンタル「馬鹿な……バカな。こんなはずはない! 私のIMD計画が、こんな形で終わるはずが……!」
クルーゼ「友よ。悔しいのはわかる。だが敗北を素直に認めるのが敗者の礼儀だ」
フロンタル「なぜだ……なぜだ! 私の計画は完璧だったはずだ。
      ロラン君が、∀ガンダムが負ける可能性は限りなくゼロだったはずだ!」

 我を忘れ喚き散らすフロンタルに、シャアは冷静に声をかけた。

シャア「フロンタル。計画が失敗したのは、貴様が人の心を理解していなかったせいだ」
フロンタル「人の心だと?」
シャア「そう、決して消し去ることのできない人間の愚かさ。いくつになってもチ〇コの大きさが気になってしまう男心をな」
スレッガー「悲しいけど、それが男ってものなのよね」
フロンタル「ぐ…ぐおおおおおおおお!」
クルーゼ「今は嘆くがいい友よ。気が済むまで嘆いたら、また新しい道を探せばいい。人が人らしく、全裸でいられる道をな」
レコア「男って、ホント馬鹿……」
ララァ『ほんとにね』

276オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2021/08/16(月) 01:49:18.82ID:3KfH35zO0
アムロ「終わったな」
ヨナ「兄さん! アムロ兄さん!」
アムロ「無事だったかヨナ。他のみんなは?」
シロー「ああ、機体と服は失ったが全員無事だ」
セレーネ「落ちたところがちょうどナノマシンの残骸のたまり場で、クッションになってたのよね」
キラ「姉さん……今は全裸なんだからちょっとは恥じらってよ」
セレーネ「いいじゃない。他のみんなも全員全裸なんだからさ」
ウッソ「セレーネ姉さんの場合、ヅダエールがなくても大抵いつも裸族でしょ!」
マイ「そうだアムロ兄さん、アクシズにあったヅダエールはどうなりました?」
カミーユ「それにロランも。まさか∀ガンダムの崩壊に巻き込まれたんじゃないよな?」
三日月「それは大丈夫。ロランならあそこだよ」

 三日月が指差した先には、人々を月光蝶から守り、塩の柱のように白化したサイコジムの姿があった。
 その両手に載せられているのはヅダエールのプラントと気絶したロラン。
 サイコジムは、それら二つをそっと地上に下ろすと、糸の切れた人形のように大地に座り込んだ。

カミーユ「こいつからは、もう何の力も感じない……」
ジュドー「多分、満足したんじゃないの? こいつの中の人たちもさ」
ベルリ「まあ確かに、昨日から大暴れだったものね」
バナージ「ありがとなサイコジム。ミネバと、町の人たちを守ってくれて。俺たちの未来を認めてくれて」

 バナージが礼を言った瞬間、一陣の風が吹いた。
 すると巨神の身体のパーツは塵のように空へと巻き上げられ、あっという間にそこにはもう何もなくなった。

プル「あ~! サイコジム消えちゃった!」
プルツー「私たちもお礼を言いたかったんだけどな」
ミネバ「まあしかたない。サイコジムにもサイコジムの都合があるのだろうから」
バナージ「オードリー……!」
ジュドー「ミネバ、よかった無事だったんだな」
マクギリス「ああ。子供たちの身体はもちろん、服も無事だよ」
ハリソン「君たちの活躍のたまものだ。警察を代表して礼を言わせてくれ」
バナージ「うん、セリフと裏腹に顔はすごい悔しそうですけど見なかったことにしますね」

 そこへ、ガンダム兄弟の仲間たちをはじめ、町の人たちも続々と集まってくる。
 友と笑い、愛する人と存分に語り合うガンダム兄弟。
 久しぶりに訪れた穏やかな時間がいつまでも続けばいい、誰もがそう思っていた。だが

ティファ「あ、あああ!」
ガロード「ど、どうしたんだいティファ!?」
ティファ「ダメ……防げなかった。もうすぐ、恐ろしいことが起きます……!」
ガロード「な、なんだよ恐ろしいことって」
ウッソ「そうですよ。もう悪役は全員倒したし、事件だって解決したじゃないですか」

 首を傾げるガロードたち。そこへ現れたのは、ハロマスクの眉間に皺を寄せたハロ長官の姿だった。

277オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2021/08/16(月) 01:49:45.54ID:3KfH35zO0
ハロ長官「あ~、盛り上がってるところ悪いんだが今大丈夫かな」
アムロ「ええ、問題ありませんよ」
シャア「どうかしましたか、ハロ長官」
リリ「実は、この事件で発生した被害額の請求書が、今届きましたの」
ハロ長官「見ての通り今回の事件はこれまでにないほど大がかりだった。
     それに巻き添えを喰らった他の町からも賠償請求が届いていてね、
     心苦しいのだが、君たちに何とかしてもらえないと」
アムロ「当然ですよ。この事件の原因は、最初に暴走した俺たちにありますからね」
シャア「黒幕であったフル・フロンタルも私の分身の一人だ。ならここは、本体である私が責任を取るのが筋だろう」
ハロ長官「そう言ってくれると助かるよ」

 ハロ長官が手渡した請求書の束を、軽い気持ちでアムロは受け取った。

アムロ「うん? ずいぶんゼロの数が多いな。ええと、イチ、十、百、千、万……」
シャア「まあこれだけの破壊だ。多少値段が張るのは仕方ないだろう。10万、100万、1000万……」
アムロ「一億、十億、百億……」
シャア「一兆、十兆、百兆……!」
アムロ「京、垓、?……!!」
シャア「穣、溝、澗……!!」

 そこまで数えたところで、二人は紙を持ったまま白目をむいて倒れた。
 そして口からブクブクと泡を吹いて、文字通り真っ白になる!

シロー「兄さん! 大丈夫かアムロ兄さん!」
アルレット「起きて、起きてくださいシャア大佐!」
ドモン「レイン! すぐに来てくれレイン! 兄さんたちが倒れたんだ!!」

 ドモンの呼びかけに、レインはすぐに駆けつけてきた。
 そして脈を取り、まぶたを開いて瞳孔を確かめるも……黙って首を振った。

ヨナ「そんな……アムロ兄さんが……死んだ?」
セレーネ「ウソでしょ、兄さん!!」
マイ「ショックが大きすぎたんだ。一生かかっても返せっこない、天文学的な借金のケタに……!」

 アムロの亡骸に身を寄せ、号泣するガンダム兄弟たち。

 その輪に入れず、深い後悔の中でリタは思った。
 この事件さえ起こらなければ、アムロとシャアは死なずに済んだのにと。
 いや、この事件が起こった切っ掛け、アムロの分裂さえなければ……
 いやいや、そもそもリタが兄弟スレPart98 >>931でパンケーキを作らなければ……!

278オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2021/08/16(月) 01:54:21.61ID:3KfH35zO0

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄○ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
           O 。
                 , ─ヽ
________    /,/\ヾ\   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|__|__|__|_   __((´∀`\ )< という未来が視えたのよ
|_|__|__|__ /ノへゝ/'''  )ヽ  \_________
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|_|_| 从.从从  | \__ ̄ ̄⊂|丿/
|__|| 从人人从. | /\__/::::::|||
|_|_|///ヽヾ\  /   ::::::::::::ゝ/||
────────(~~ヽ::::::::::::|/    ←リタ


シン「夢ぇぇぇ!? 今の全部リタ義姉さんが見た夢ぇぇぇ!?」
キラ「こ、恐い……二年以上もダラダラ長々とやってきて」
ウッソ「最後が夢オチって、一番ブッ叩かれるヤツじゃないですか……!」
リタ「失礼ね。夢じゃなくて刻が見えたっていってよ」プンプン
イオ「それで夕飯がパンケーキじゃなくて流しソーメンになったのか」
ガロード「ま、ただの流しソーメンじゃないけどね」
ジュドー「そうそう。俺たちがリタ義姉さんに頼まれて作ったMSサイズの流しソーメンだし」
コウ「というか大きすぎてもはやウォータースライダー?」
アムロ「しかし信じられないな。俺とシャアが分裂したあげく、日登町を滅ぼす大事件が起こるなんて」
セレーネ「しかも最後兄さん死ぬんでしょ? 賠償金のデカさに驚きすぎて」
フリット「信じられないのはロラン兄さんもだよ。まさかフロンタルさんに協力して、全人類を全裸にしようとするなんて」
キオ「そうだよね。いつも優しいロラン兄ちゃんに限ってそんなこと……」
ロラン「ユニヴァアアアアアス!!」
アル「も~ロラン兄ちゃん!」
シュウト「いくら流しソーメンが大きいからって、ソーメンと一緒に全裸で流れてこないでよ、汚いなあ」
カミーユ「やらないとは言い切れないんだよなあ、夏のロランだったら」
シーブック「同感」
シロー「やっぱりあの露出癖、どうにかしないとな……」
ヨナ「な、なあリタ」
リタ「ん? なあにヨナ」
ヨナ「その、本当なのか? 君が視た未来の中で俺がアムロ兄さんに勝ったっていうのは……」
リタ「うん。とってもかっこよかったよ、ヨナ」

 そういってリタはにっこりと微笑んだ。
 こうして、ガンダム兄弟の夏の一日は、何事もなく無事に終わったのだった。

 オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟 完


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最終更新:2023年05月16日 10:54