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枯れ尾花、正体見えねば幽霊か ◆nRUoz4HsLY



「ち、ちょっと待ってくださ~い!」
「ヲフ! ヲフ!」

昼なお薄暗い遺跡の内部に、二つの声が響く。
片方はまだ若い女性の声であり、もう片方は明らかに人で無い生き物の声。
前者は切羽詰った響きを帯びていて、後者は勇ましさを感じさせる。

ところどころ朽ち、苔に覆われてはいるものの、未だにその外観の大部分を留めている遺跡。
僅かに欠けた屋根から陽光が差し込んではいるものの、それでも一人と一匹の細かい外見まではわからない。
ただ、僅かに見える少女の影は小さく、まだ少女の領域にあると感じさせ、それと対象的に獣の身体は猪を連想させるほど大きい。
だが、少女は別に獣に追われているという訳ではないようだ。
むしろぼんやりと見えるところでは、むしろ少女が獣を追っているかのようにすら見える。
いや、追っているというよりは、引っ張られているというべきか。
それともより正確に、引きずられているというべきか。
猪というよりは、むしろ牛か馬かというほどの勢いで走っているのは、おそらくは犬。
長い毛と、垂れ下がった耳が特徴的な大型犬が、首に巻かれた散歩紐を握る少女を引きずっている。
散歩したりない犬が、飼い主にせがんでいる、という表現であらわすには、激しすぎる状況であろうか。

引っ張られている少女、両耳の上に巻かれたピンクのリボンが特徴的な、短い茶の髪の少女。
彼女の名は塚本千紗、発育が遅い事と、実家が困窮気味であることが悩みな、見た目通り何の変哲も無い少女である。
このような殺し合いになど何のかかわりも無い、本当に普通の少女である。
その彼女は何の因果か一方的に殺し合いという事象を告げられ、しかも最初に現れたのが薄暗い遺跡の中である。
何処をどう通るどころか、足元すらおぼつかない空間で二回ほど転倒し、にっちもさっちも行かない状況に追い込まれた。
そんな彼女が、転んだ拍子に存在を思い出したディパックを開けようとしたのは必然的な流れであろう。
そしてその中から明らかに入りきらない大きさの犬が出てきたという事実に気づくことなく、一見頼もしそうな子に歓声を上げたのもつかの間。
実家の印刷屋の手伝いで鍛えていようと少女は少女、大型犬の圧倒的な力に抗える筈もなく。
むしろ、ここまで手を離していない彼女の握力を褒めるべきだろう。

だが、そんな少女の苦行にも終わりが近づいてきたようだ。
少女の眼前に見えるのは暖かな光。
お迎え的な意味ではなく、遮られることのない陽光である。
何時止まるのかも判らぬ暴走列車の旅、千紗はどうなってしまうのでしょう~という旅もこれで終わりである。
そう、そして栄光の光に、もうゴールしたよ、という所。

「ひっ、ひぇ!?」

響いたのはファンファーレではなく女性の悲鳴であった。

一瞬、時が止まる。
さて、冷静に状況を整理してみよう。
山間の森の中に築かれ、入り口付近しかまでしか全景の見渡せない遺跡。
その、入り口付近すらほとんど見ることの出来ない暗い空間から、突如現れた大きな獣。
先ほどから犬の鳴き声と千紗の悲鳴とが混じり合い反響し合い、まるで魔物のうなり声のように響いており、
さらに不幸なことに、その状況に鉢合わせた女性は犬という動物を知らなかった。

さて、時が止まったのは一瞬。

状況がほとんど掴めないものの、目の前には見たことの無い獣。
大型の獣を相手に出来るとうな戦闘能力などない女性は一歩退き、二歩退き、
それに興味を引かれた犬が僅かに女性に近寄り、
逃げるのが先か追いかけるのが先か、最早どちらも止まることは出来ず。

「ヲヲーーーン!!」
「にゃあ~!?」
「な、何々~~~!?」

こうして、よくわからない鬼ごっこが開始された。


 【時間:1日目午後1時ごろ】
 【場所:E-5 遺跡付近】

 塚本千紗
 【持ち物:ゲンジマル、水・食料一日分】
 【状況:健康、服だけ割りとボロボロ】

 サクヤ
 【持ち物:不明支給品、水・食料一日分】
 【状況:健康】



045:ボケまくりの完全無敵少女 時系列順 012:私が本編で出番の少なかった理由
048:M134(ムイミなシ) 投下順 050:少女綺想曲~そして全てはゼロになる~
GAME START 塚本千紗 073:イキカエル
サクヤ



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最終更新:2011年08月30日 20:19