死を想え、生を謳え ◆auiI.USnCE
――――それが、死っていうものさ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「…………」
一歩、一歩ずつ。
重い身体を引き摺りながらも。
確実に、確実に歩いていた。
その足取りに、『生きている』事を感じながら。
私達は、歩いていたんだ。
隣に歩く由真の肩を借りながら、私――椎名枝里も肩を貸しつつ、歩いている。
一歩、一歩ずつ。
――――私は、逃げていた。
そう、これはただの遁走。
悪意の牙を曝け出した相楽美佐枝に対して逃げているのだ。
私は、私達は。
大切な仲間であった伊吹風子を犠牲にして。
ただ、遁走を続けてる。
ああ、逃げていてるのだ、私は。
誘ってくれた仲間を置いて。
自分を信じてくれた人を置いて。
……何を、やっているのだろうか。
神に従う相楽美佐枝が許せなくて。
彼女が神に従って未練を叶えようとするのが、許せなくて。
だから、討とうと誓ったのに。
なのに、自分は逃げ出す事しか出来なかった。
そして、風子を犠牲に……したんだろう。
……あさはかだ……自分は。
「ねえ、椎名……風子は……やっぱり……」
「………………」
由真の問いに無言で返す事しか、私は出来なかった。
言わなくても……理解できている。
風子とまた会う約束したとはいえ。いや、だからこそ。
伊吹風子は、死んだのだ。
「うん……やっぱり死んだのよね…………風……子」
ああ、死んだのだ。
出来ない、約束をして。
私達に精一杯の感謝をして。
たった一人で、相楽美佐枝に立ち向かって。
伊吹風子は、死んでしまった。
…………なんだ。
なんなのだ、この心を支配するものは。
「あんなに笑っていたのに……風子」
胸が締め付けられてくる。
息が出来なくなってしまう。
心がとても、とても重い。
「………………私を慰めてくれたのに」
哀しい?
寂しい?
苦しい?
何故、何故?
こんなにも、心を支配する。
死なんて、いつも傍にあったのに。
いつも、私自身が死んで。
いつも、仲間達が死んで。
当たり前のように誰かが死んで。
だから、死なんて、当たり前の筈なのに。
何で、何で。
「死んじゃった…………」
何で、こんなにも、『死』が重たい?
苦しくて、哀しくて、寂しくて。
心が軋んでしまう。
仲間が死んだだけなのに。
それだけのはずなのに。
こんなにも、こんなにも、感情が溢れる?
こんなにも、こんなにも、心が壊れそうになる?
「風子…………風子……」
由真の涙が見えた。
とても哀しそうで。
とても悔しそうで。
ああ、ああ。
これが、本当の『死』なのか。
死というものは、本当はとても重たくて。
死というものは、人の心を大きく軋ませて。
そして、こんなにも、沢山の感情を溢れさせるのか。
「……あさはかなり……あさはかなり……椎名枝里」
ああ、本当にあさはかだ。
私は、私は、本当の死の事を全然知らなかった。
人一人の命の重さを受け止める事は、こんなにも、重たくて。
そして、こんなにも苦しい。
「椎名……私達は……弱いっ!」
「……ああ……」
由真の言葉が響く。
それは悔しさの篭った言葉で。
私達の無力を訴える言葉だった。
私達が強ければ、風子は助かった。
私達が強ければ、きっと、きっと。
「力が欲しいっ!」
「ああ……自分達で勝ち取る強さが欲しい!」
出来るならば、この悔しさを解く力を。
神などに頼らないで、自分自身で力を受け取って。
そして、強くなりたい。
こんなにも、重い死を抱えながら。
もう二度とこんなものを経験したくないから。
伊吹風子の『死』を背負いながら。
「強くなりたいっ!!!」
私達は、歩いていた。
私達は、確かに、一歩、一歩ずつ歩いていたんだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
――――それが、生きるっていうものさ。
【時間:1日目午後7時20分ごろ】
【場所:C-6 南部】
十波由真
【持ち物:木彫りのヒトデ(1個)、水・食料一日分】
【状況:健康】
椎名枝里
【持ち物:トウカの刀、
五方手裏剣、木彫りのヒトデ(1個)、水・食料一日分】
【状況:健康】
最終更新:2015年03月15日 09:22