残酷なアリアを歌え、壊れモノよ ◆auiI.USnCE
――――壊れたモノは、結局どんな処でも、壊れたままだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ふむ……」
ざあざあと流れる波の音が延々と響いている。
灼熱の太陽に照らされている眼前の海は何処までも蒼かった。
強く吹き付ける潮風が肌に感じて、妙に心地よい。
水平線は何処までも続いているように感じて、何か癪だった。
水平線の彼方にあるモノは何だろうかと、ふと思う。
何となく手を伸ばして、そして無駄な事と直ぐに気付いて興味を失う。
暫く、深い蒼を見続け、やがて
「飽きた」
彼女はふわあと大きな欠伸を上げる。
大きく腕を伸ばして伸びをするが、バランスを崩しそうになってしまう。
すこし、慌てながら、改めて彼女は座りなおす。
自分が座っている場所、灯台の天辺のてすりの上の危うさにようやく気付くが、でも、それもどうでもよかった。
このまま、落ちるのもある意味面白いかとくくっと笑う。
扉を開けてみたら、其処がこの場所であった。
島を一望できそうな高さもある灯台の展望台が、彼女の始まりだった。
とはいえ、だからと言って彼女が特別に何かをすると言う訳でもない。
何となく、そのまま手すりに腰掛けて、広がる海を眺め始めただけ。
でも、それも、もう飽きた。
ただ、ひたすらに退屈だった。
「ふむ……やっぱり私は人形でしかないのだな」
そして、感慨も無しに彼女はぽつりと呟いた。
自身の欠陥を再確認して、自嘲するような笑みを作る。
所詮コワレモノだったなと思いながら、視線を雲が流れる空を見た。
先程見知った顔の首が飛んだ。
でも、それに何か動く事がなかった。
そんな自分はやはり人形でしかないと思う。
ああ、死んだんだなと当たり前の事しか考えなかった。
そして、自分の欠陥を改めて感じ、それで終わった。
彼女には感情を認識する事が無い。
無機質な人形のように、プログラムで動く機械のように、心が無かった。
嬉しいと思う感情も、怒りという感情も、哀しいと感じる事も、楽しいと思った事も、一度も無い。
感情の表現の仕方が、さっぱりわからなかった。
ああ、こんなものだろうなと思うのを演じるだけで。
実感と言うものはありはしない。
そんな、自分はきっと壊れているのだろう。
彼女は、そう思い、だからと言って何か変える訳も無かった。
「……まあ、もうどうでもいいか」
そして、またつまらなそうに。
くだらないと思った思考を打ち切って、次を考える。
終わってしまった夢を。
「……しかし、此処に居るという実感があるというのはそういう事なんだろうな」
あの二人を成長させる夢は、唐突に終わった。
殺し合いという現実によって。
どうしてこうなったという仕組みや理屈は気になるが、まあそういうものなんだろうなと解釈する。
だから、今此処で動くのは彼女の意志だ。
自分自身はどうしたらいいのかと考えて
「………………どっちにしろつまらんな」
乗るか反るか。
彼女が出した結論は結局どっちもつまらないという事だけで。
退屈そうに、彼女は欠伸をする。
支給されたモノは恐らく大当たりだろう。
これがあれば色々有利になれることは間違いはない。
間違いは無いが、対して面白いものも出ない。
好奇心を満たしてくれるものだったらよかったのにと一人愚痴る。
「ここが面白い場所だったら良かったのに」
例えば、沢山の遊具が溢れる遊園地とか。
未知の技術に溢れた場所とか。
世界的にも貴重な建造物、例えば大聖堂とか。
そんな場所であったら、暇潰しにはなっただろう。
「もしくは面白い人間でもいいぞ。理樹君みたいな」
やったら熱い女の子でもいい。
純朴そうな少年でもいい。
若しくは自分と同じ欠陥を持ってるようなヒトとかでもいい。
そんな人間と行動したら実に面白そうだ。
「最も……そんな人間が居たら、色々大変な事になりそうだが」
また一人で彼女は笑い、馬鹿な事だなと思う。
そんな事が起きないから今、とてもつまらない事になっているというのに。
一頻り、自分ひとりで何が可笑しいか解らないのに笑って。
笑って、笑い続けて。
「まぁ、いい加減、決めるか」
取り出したのは一枚のコイン。
表だったら乗る。
裏だったら乗らない。
とてもシンプルかつ簡単に自分の生きる道を運命に任せる。
どうでもよかった。
自分が進む、何もかもが。
だから、運命に身を委ね、コインをトスする。
コインはクルクルと舞い、太陽の光に反射して。
一瞬、空と海の蒼に解けて。
そして、彼女の手元に落ちてくる。
コインが示した、彼女の未来は――――
「――――なあんだ。結局それか。つまらんな」
退屈そうに、その結果を受け止め、つまらなそうに笑う。
そして、彼女は、何も変わらない海と空を眺めて。
手すりから、くるりと宙返りをしながら、飛び降りて、出口に向かう。
壊れた人形が、とても面白くなさそうに、ゆっくりと、歩き出した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その壊れたモノの名は、来ヶ谷唯湖といった。
【時間:1日目午後1時00分ごろ】
【場所:H-8 灯台 展望台】
来ヶ谷唯湖
【持ち物:FN F2000(30/30)、予備弾×150、水・食料一日分】
【状況:健康】
最終更新:2011年08月30日 18:23