ALIEN(異邦の人) ◆Sick/MS5Jw
「……これは、駄目かも知れないわね」
豪奢な家具の並ぶ空間に、折原志乃の落胆したような声が響く。
「真っ暗なの……」
「この先は電気が来てねえってことか?」
呼応するように天井を見上げた一ノ瀬ことみが不安気に呟くのへ、木田時紀の声が重なる。
一行が視線を向ける先には、ぽっかりと闇が口を開けていた。
「故障、なのかな……」
「それならまだいいのだけれど……」
春原芽衣が不安気に漏らした言葉に、志乃が眉根を顰める。
4F、図書室。吹き抜けとなっている船首階段を登り切ると、そこは階下からの明かりと
眼前の闇が混じり合う、奇妙に薄暗い空間だった。
図書室といっても本棚の林立するようなものではない。
剥製やきらびやかな小物の並んだ壁際に二竿、三竿の飾り棚が据え付けられ、その硝子張りの中に
優美な装丁の洋書が並べられている程度のものだった。
吹き抜けの最上部である空間は天井こそ高くないものの間取りは広く取られ、瀟洒なテーブルやソファー、
細やかな装飾の施された椅子が数組置いてある、それは一種のサロンとでも呼ぶべき空間である。
志乃の話では図書室の向こうにラウンジが、そしてブリッジのある5Fへと続く階段があるという。
しかしその道に蓋をするように横たわる闇は一行にひどく不吉なものを予感させ、足を止めさせていた。
「……どうするの?」
「ま、まあ、たとえ船が動いたって、こいつがある限りここから逃げられるわけじゃねーし……」
ことみの問いに、時紀が困ったように自らの首に巻かれた枷を撫でる。
その様子を見た芽衣が、じっとりとした視線を時紀に向けてぼそりと呟く。
「怖いんだ」
「うるせえ! そんなわけねえだろ!」
「夫婦漫才なの」
「誰がこんなちんちくりんと夫婦だ!?」
「むー! なんですかその言い方ー!」
「……まあ、冗談はともかくとして」
時紀たちの騒がしいやり取りに苦笑しながら、志乃がしかし、何かを考えるように真剣な眼差しで
眼前の闇を見つめる。
「たとえ照明設備が故障していたとしても、ブリッジの電装系は別の回路を使っているわ。
様子を見に行く必要はある……だけど、」
「―――誰かが意図的に電気系統を操作、あるいは破壊したのだとしたら」
自らの思考に沈むような、静かな志乃の言葉を引き取ったのは、聞き覚えのない声だった。
「……ッ!?」
一斉に振り返った、四対の視線を一身に受けて立っていたのは、少女である。
長い黒髪に切れ長の瞳。
纏う制服はこの島で最初に見せられた映像の中で殺された、あの少女の着ていたものと同じだと時紀は思う。
そして片手に下げていたのは、
「銃!?」
「やあ、こんにちは」
拳銃とは明らかに一線を画す、物々しいフォルム。
咄嗟に身構えた時紀の前で、少女の上げた手は突撃銃と呼ばれるそれを下げた方とは逆。
挨拶でもするように、空の手を挙げて、小さく振ってみせている。
実際、それは挨拶のつもりらしかった。
毒気を抜かれて沈黙した一行を前に、少女は笑みすら浮かべながら言う。
「君たちも操舵室の様子を見に来たのかね。それはまた奇遇だな」
少女の口から出てきたのは奇妙に時代がかった男言葉だったが、その凛と整った容姿には
その違和感を強い個性と思わせるだけの何かがあった。
「……何だ、あんた」
薄暗い空間にそぐわない朗らかな笑顔を浮かべた少女を前に、時紀はいまだ身構えながら訊ねる。
その刺々しい物言いに、しかし少女は顔色を変えることなく一つ頷くと、口を開く。
「人に名を訊くときは以下略というやつだよ、少年。礼儀というのはいつだって大切だ。
特にこういった、互いの信頼関係を醸成することが困難な状況下では」
その大仰な言い回しを耳にして、時紀が露骨に舌打ちをしてみせる。
「チッ……嫌味な喋り方だな」
「おや、気に入らないかね」
「先公を思い出すんだよ」
言ってそっぽを向いた時紀の様子を見て、少女の笑みに苦笑が混じる。
「教師は嫌いかね。まあ年功序列を否定するのも若者の特権かな。……あー、」
あからさまに言葉の接ぎ穂を探して自分を見やる少女の視線に、仕方なく時紀が答える。
「ふん……木田だ。木田と、」
「ああ、もういい。木田時紀君だろう」
「な……!?」
名乗りを遮られ、あまつさえフルネームを先に言われた時紀が絶句するのへ、
少女が何でもない顔をして答えてみせる。
「名簿くらいは頭に入っているさ。その中に木田姓は二人。
君は恵美梨くんという顔ではなからな、ならば時紀君だろうと考えたまでだ」
「……名簿って、百人以上いるんだぞ……?」
出立直後にちらりと見ただけの名簿を思い出しながら呟く時紀を無視して、少女が視線を動かす。
「で、そちらは?」
「……春原、芽衣です」
「芽衣くんか、いい名前だ」
おずおずと答える芽衣に、笑みを明るくして少女がうんうんと頷く。
「おい、そいつにはもういいとか言わねえのか」
「さて、ではそちらの君は?」
「スルーかよ!」
「ひらがなみっつでことみ。呼ぶときはことみちゃん」
「お前も平然と答えるな!」
「一ノ瀬ことみくん、だな。ふむ」
「もういい……」
悄然とする時紀をよそに、少女が最後に志乃へと目を向ける。
だが志乃はどこか怯えたように視線を逸らし、すぐには口を開かない。
「……志乃さん?」
「志乃。……折原志乃女史、で宜しかったかな?」
「……ええ」
心配気に覗き込む芽衣の言葉を拾い上げて訊ねる少女の問いに、志乃が小さく頷く。
「となると、折原明乃さんはご家族か何かかな」
「……」
「どうしたんだよ、志乃さん」
「嫌われてしまったかな」
それきり沈黙する志乃に、少女が一瞬、苦笑する。
しかしすぐに明るい表情を作ると胸を張り、薄暗い空間に染み渡るような声で言葉を紡いだ。
「申し遅れたな。私は来ヶ谷唯湖という。皆、よろしく頼むよ」
唯湖と名乗った少女が、ふむ、よろしく頼む、ともう一度言って、はっはっは、と鷹揚に笑う。
全員に握手すら求めそうな風情だった。
「ときに、あれだな」
警戒も緊張もどこかに放り投げたような声で、唯湖が切り出す。
「自己紹介も済んだところで、すぐにこんなことを言うのも何なのだが、」
楽しそうな笑みを浮かべて、弛緩しきった和やかな空気を醸し出しながら、
その表情に一片の曇りすら滲ませないままに、
「―――君たち、少し危機感に欠けてやしないかね」
手にした突撃銃を、すう、と。
時紀たちに、向けていた。
誰も、何も、反応できなかった。
あまりにも、自然で。
あまりにも、あっさりと。
少女は引き金を、引いていた。
「―――」
木田時紀の世界から一瞬だけ音が消えた。
色も消えた。
そうしてすぐに何もかもが、いっぺんに戻ってきた。
目の前に少女がいた。
手にした小銃からは陽炎が立っていた。
薄暗い空間があった。
鹿の頭の剥製が見えた。
ぱらぱらと埃が降っていた。
弾丸が天井に穴を空けたようだった。
何もかもが戻ってきて、戻ってきたはずで、しかし時紀は、違和感を覚える。
何かが足りない。何が足りない。
考えたら、すぐに分かった。
そうだ。すぐ隣に、存在していたはずのモノが、ない。
存在していたはずのモノ。それって、何だ。
それはひどく唐突で、時紀は、だから、そこに何があったのか思い出せずに、
―――違う。
じわじわと、何かが脳髄の表面を這い回るように、言葉が浮かんでくる。
何が、ではない。
誰が、だ。
あった、ではない。
いた、だ。
そこにいた、誰かは、モノでは、ない。
それは、ヒトだ。
「あ……」
すぐ左隣の、少し動けば肩だってぶつかりそうな距離にいたはずの、
一ノ瀬ことみが、そこにはもう、いなかった。
壁と、床と、時紀の頬に、ぱしゃりと飛んだ何かが、垂れ落ちた。
生温かい、鮮血だった。
「いちの、せ……?」
振り返りたくはなかった。
それでも、不安と想像とが、時紀を振り返らせていた。
そこに、現実があった。
そこに顔はない。
手を伸ばす。
そこに腕はない。
手で触れる。
そこには片足も、腹も胸も、ない。
ぐにゃりと歪む。
そこにあるのは、血と、肉だった。
べちゃりと、手が汚れた。
「……ふむ、これだけの反動があるのか。横薙ぎのつもりが縦一文字だ。
フルオートで弾切れまではおおよそ二秒。実践はなかなか難しいものだな」
固く冷たい何かに手が触れたとき、背後から落ち着き払った声がした。
それは、一ノ瀬ことみの左半身を、ヒトの残骸に変えた女の、声だった。
「てめ、ぇ……」
振り向けば、少女はにやにやと、ひどく嫌らしい笑みを浮かべて、そこに立っている。
その表情も、纏う空気も、先刻から何一つとして変わっていない。
この笑みを前に、なぜ油断した。なぜ弛緩した。なぜ、そんなことを、自分に許した。
自戒と自責とが、一瞬にして時紀の中に噴き出してくる。
それほどに、唯湖と名乗る少女の目には悪意が満ちていた。
少なくとも、木田時紀には、そう見えた。
「どうした少年。……見ての通り、私の銃は弾切れだ。かかってくるなら今だぞ」
くい、と空いた手で呼び寄せるような仕草。
これ以上ないほどに露骨な挑発に、時紀の中で何かが弾けた。
血を見た興奮の捌け口と、死を見た恐怖からの逃げ道が、そこにあった。
「ざっ、けんな……!」
ぎり、と折れるほどに奥歯を噛みしめると同時、拳を固めて駆け出す。
否、駆け出そうと、した。
耳を劈くような悲鳴が背後で上がったのは、その瞬間だった。
「ぃ……ぃ、いやぁぁぁああああああああぁぁぁぁっっっ!!」
「志乃さん!?」
それは悲鳴というよりは、絶叫に近い。
理性を吹き飛ばし感情を蹂躙して迸る、動物的な咆哮。
人としての箍を明らかに外した叫びに、踏み出そうとした時紀が思わず振り返る。
そこには、果たして人間の尊厳を放棄した、女の姿があった。
「あ、あ、ああああ、ああああっッッ! ああああっ!」
「志乃さん! 志乃さん!? きゃあっ!」
駆け寄った芽衣を、志乃が全身で弾き飛ばす。
喉も裂けよと絶叫しながら、四つ足でずるずると血に濡れた床を這いずる志乃の顔には、
学者の理知も、年長者の威厳も、母としての強さも何もない。
涙と涎と鼻水と、切れた唇と噛んだ舌から滲む血と、獣のような吐息だけが溢れ出している。
その瞳は明らかに眼前の光景を映してはいない。
自らの味わった、名状しがたい恐怖の記憶だけを繰り返し網膜に再現しているようだった。
「……こんなときに!」
緊縛され、男の欲望に塗れていた志乃の姿を思い浮かべてなお、時紀はそう口走る。
そう言えてしまうのが男という性の無理解だと気づけぬまま舌打ちした時紀に答えるように、
来ヶ谷唯湖の声がした。
「その通り。目の前の敵に猶予を与えてはいけないぞ」
はっとした時紀の眼前で、呆れたように肩をすくめた唯湖が一動作で空のマガジンを落とし、
袖口から滑り出させた予備弾倉を、流れるように叩き込む。
息を飲むような手捌きに、時紀が気づいたときにはもう、銃口がぴたりと向けられていた。
「現実感が持てないのは昨今の若者の特徴らしいが……この場ではあまり得策とは言えんな。
……こうして、何もできないまま死ぬことになる」
その言い方が気に入らなかった。
その視線が気に入らなかった。
耳障りな志乃の絶叫が気に入らなかった。
必死に宥めているらしい芽衣の涙声が気に入らなかった。
背後の暗闇と階下の明かりのコントラストが気に入らなかった。
銃口と、その向こうの弾丸は目に入らなかった。
苛立ちと興奮と混乱とが、恐怖を凌駕した。
「―――クソッタレがっ!!」
志乃の絶叫を塗り潰すように吠えると同時、手にしていたものを投げる。
それが何であるのか、何故そんなものを握っていたのか、時紀自身にも分からない。
分からないから意識もせず、意識しないから牽制もなく躊躇もなく予備動作もなく、
ただ、全力で、それを投げた。
「……ッ!?」
瞬間、来ヶ谷唯湖の顔から笑みが消え、瞳に鋭い光が宿る。
引き金を引く間もなく飛来するそれを、手にした小銃の銃底で本能的に叩き落とそうとするのが
時紀には見えた。
軽く小さく、硬い音がした。
硝子の割れる音だった。
同時に、おそろしいほどの異臭が、辺りを包み込んでいた。
「ぐっ……!?」
「なに、これ……アンモニア!?」
鼻の奥に突き刺すような痛みが走り、目を開けていられないほどの臭気が、
時紀の投げたものから、解き放たれていた。
それは、小さな瓶だった。
一ノ瀬ことみの持っていたはずの、アンモニア水の入った、硝子瓶。
生温かい肉の中で触れた、固い手触り。
時紀の無意識に握っていた、手札だった。
「……! ……ッ! ……ッッ!!」
涙に霞む視界の向こうで、頭からアンモニア水を浴びたらしい来ヶ谷唯湖が床にのたうつのが見えた。
怒りのままに駆け寄ろうとして、滅茶苦茶に暴れる銃口が四方へと向けられるのを目にした時紀が
芽衣の方へと叫ぶ。
「今だ! 逃げるぞ!」
慌てて頷く芽衣に首肯を返すと、いまだに絶叫を上げる志乃を無理矢理に抱えるようにして、
時紀が大階段へと走り出す。
「おいッ! 暴れんな!」
「志乃さん! 落ち着いて!」
何度も転がり落ちそうになりながら階段を駆け下りる時紀たちの頭上から、ひどく嗄れた声が響く。
「……やってくれたな! だがすぐに追いつくぞ! 次があるとは思わんことだ、少年!」
咳き込みながら紡がれる呪詛の声音に追い立てられるように、時紀たちは吹き抜けの大階段を降りていく。
「クソ……ッ! なんなんだ、あいつは!」
「いや……やあああ! ああああ! あああああ!」
「いい加減にしろよ!」
「木田さん! そういう言い方って!」
「じゃあどうしろってんだ!」
大階段を降りきった、2F船首ロビー。
狭い廊下へと走り出そうとしたところで、志乃が再び暴れ出していた。
両手両足、爪に歯、全体重を使って抵抗する志乃に、思わず時紀が手を離す。
途端、弱々しい悲鳴を漏らしながら志乃がずるずるとカーペットの上を這いずっていく。
「チッ……! こう大声出されてちゃ隠れるにも逃げるにも……!」
その様子を忌々しげに見やって、一度だけ頭上を見上げると時紀が唾を吐き棄てる。
「木田さん……!」
「だってそうだろ!? いっそ、こいつの方が撃たれてりゃ……!」
「……っ!」
ぺちん、と。
小さな音がして、時紀の頬に熱い感触が走った。
春原芽衣の平手が、時紀の言葉を遮っていた。
「てめえ、何しやが―――」
反射的に怒鳴り返そうとして、言葉に詰まる。
目の前にあるのは、ひどく小さな、顔だった。
瞳に涙をいっぱいにためて、それでも嗚咽を漏らすことなく、ただ喉の奥で必死に何かを堪えるような、
そういう、泣き顔だった。
「……」
そんな顔を、ずっと昔に、見たような気がした。
ずっと昔から、すぐ近くで、見ていたような、気がした。
「……だから、ガキは嫌なんだ」
ぼそりと漏れた声を補うように、大きく息を吸って、もう一度吐き出す。
深い、溜息だった。
小さく首を振って、まだ熱い頬を撫でる。
「……おい、ちんちくりん」
「……」
芽衣は答えない。
ふるふると、今にも溢れそうな涙を堪えるように時紀を見上げている。
構わずに、続ける。
「いつまでもむくれてんじゃねえ。……おまえ、ご大層な銃持ってたろ、それ寄越せ」
「え……?」
「こいつだよ、ほら」
「ちょ、ちょっと……」
芽衣が呆気にとられている内に、手にした玩具の杖を取り上げる。
先端には、実弾の込められた拳銃が括りつけられている。
「いいか、乗船口はこの先だ、とにかく走れ」
「木田、さん……?」
「これ以上のお守りはゴメンだ、って言ってんだ。……志乃さんはお前に任せたぜ」
そう言って玩具の杖から紐を解き始める時紀を驚いたように見つめる芽衣が、
ようやくその言葉の意味を理解して大きな声を上げる。
「どうして!? 木田さんは一緒に行かないんですか!?」
「アホか」
紐の結び目に苦労しながら、時紀が素っ気無く返す。
「ガキにはわかんねーかも知れねえが、相手はあんなゴツいもん持ってんだぞ。
船から出たところで後ろから狙われたらまとめてお陀仏だ。……っと、これでよし」
「だけど、木田さん!」
「こいつはどうする? 持ってくか、何せお似合いだしな」
言い募ろうとする芽衣を茶化すように玩具の杖を押し付けながら、時紀が悪戯っぽく笑う。
「こんなの……!」
「ウダウダ言ってる時間はねえみたいだぜ」
気がつけば、周囲が静かになっていた。
聴こえるのはロビーの隅で弱々しく何事かを呟く志乃の声だけだった。
頭上からの呻き声が、やんでいた。
「立ち直りやがったみたいだな」
「……! なら、木田さんも……」
「何度も言わせんな、早く行け!」
怒鳴った直後、頭上に何かの気配がした。
咄嗟に時紀が芽衣の小さな身体を突き飛ばす。
「……!」
同時に時紀自身も飛び退いたその瞬間、今まで立っていた場所に何かが落ちて、砕けた。
轟音が響き、精緻な装飾が、一瞬にして無数の木片と化した。
落ちてきたのは、図書室にあった椅子のようだった。
「宣戦布告ってか……!? 黙って狙い撃ちすりゃいいものを、余裕こいてんじゃねえぞ……!」
「木田さん……」
呟いた芽衣が、しかしさすがに事態を理解し、身を低くしながら志乃の方へと駆け寄っていく。
芽衣一人であることを察したのか、今度は志乃も暴れることもないようだった。
のろのろと立ち上がると、ゆっくりと芽衣に手を引かれて歩いて行く。
「心配しなくても、すぐに追いついてやるよ」
「……待ってますから!」
最後にそれだけを言い残して廊下へと消えていく二人の後ろ姿を見ながら、時紀が苦笑する。
「……待ち合わせの場所も時間も決めてねえじゃねえかよ」
呟いた途端、ぱん、と頭上から小さな発砲音。
音は単発。セミオートに切り替えたようだった。
「ああクソ、実際ガラじゃねえ……!」
悪態をつきながら、身を起こす。
苦々しげなその顔は、しかしどこか、晴れ晴れとしているようでも、あった。
【時間:1日目16:00ごろ】
【場所:G-7 バジリスク号船内】
木田時紀
【持ち物:フェイファー・ツェリザカ(5/5)、予備弾×50、不明支給品、水・食料一日分】
【状況:健康】
春原芽衣
【持ち物:DX星杖おしゃべりRH、水・食料一日分】
【状況:健康】
折原志乃
【持ち物:不明支給品、水・食料一日分】
【状況:錯乱、精神に極めて深い傷】
来ヶ谷唯湖
【持ち物:FN F2000(29/30)、予備弾×120、水・食料一日分】
【状況:強烈なアンモニア臭、被害不明】
一ノ瀬ことみ
【持ち物:なし】
【状況:死亡】
最終更新:2011年09月06日 18:16