「ブログ~♪ブログ~♪」
奈良県のとある家の一室で俺はパソコンの前に立ちながらキーボードをかち鳴らす。
本日はバイトもなく休日、一日中暇だったから俺は自分のブログを立てようと思い自分のプロフィールを打っていたのである。
俺はその内容をブツブツと読みながら打ち込んでいくことにした。
「俺の名前は
弾箱壬(だん はこみ)、十七歳のピチピチの男子だぜ。
でも高校には通って無いし、職も無いし、そして両親は既に他界してるので居ないし……
家賃払えないから家もうっぱらっちゃったんだ。
こんな俺でも二年前は甲子園優勝投手とか騒がれてたんだぜ?、それがいまじゃあこんな感じだよ、あはは笑ってくれ……
高校一年の秋に親父が他界してさ、生きるために高校を辞めてバイト生活を開始したんだ
でも俺にはまだ野球に対する未練が残っ「あらあら、はこみんはまた独り言ですかね?」
俺がせっかく一人で自己紹介をしている最中にとある女性が乱入してくる。
彼女は俺が家を売っ払った時からお宅に住まわせてお世話までしてもらってる“
芦原家”の奥さん、
芦原亜樹(あしはら あき)さんである。
年はまだ30代前半らしくかなり美人である、とだけは言っておこう。
亜樹さんはその長く美しい髪をちらつかせながら俺に対して言葉を掛ける。
「あまり独り言をつぶやくのはよろしくないですよ」
「は~い」
あ~、なんか怒られちゃった、テヘッ☆
そんなこんなで亜樹さんは俺に麦茶を持ってきてくれたようである。
――そういえばのどがカラカラだ、もう何時間画面と向き合っていたのだろうか?
それに机の下のゴミ箱には濡れたティッシュがたくさん捨てられている、一体何枚使ったことやら。
「ほらほら、もう辺りは暗くなってきましたよ、電気をつけましょうね」
そう言って亜樹さんが部屋の電気をつけてくれた時、俺はようやく時計の針で時刻を確認した。
時刻は……既に六時を回っている、もう日は落ちているし暗くなり始めているのに電気をつけてくれた事で気づく。
――そういえば、まだ“あいつ”は帰ってこないなあ
俺はそれが気になりふと亜樹さんに聞いてみた。
「亜樹さん、“アイツ”はまだ帰って来てないですか?」
「ああ、“あの子”ならいつも
河川敷を走ってるから多分そこにいるとおもいますよ、
もうすぐ試合があるからと言って張り切ってるみたいです、ふふふ」
そうか……そうだよな、アイツそういえば試合があるから練習に付き合ってって言ってたしなあ……
でもあいつがこんな六時を回ってまで走ってるなんて珍しいなぁ、いあちょっと心配だ。
俺は椅子から立ち上がり亜樹さんに「ちょっと探してきます」と言い探しに行こうとする。
亜樹さんは落ち着いた面持ちを浮かべながらも俺に対してゆっくりとした口調で話す。
「はこみんもいつもバイト忙しいんでしょう?
なあに心配要りませんよ、あの子ならそのうち帰ってきますでしょうに」
しかし、何となく俺はその亜樹さんの言葉を聞いても行動を止める気にはなれなかった。
「いえ、何かあってからじゃ遅いですからねっ!」
「あらそう? じゃあお願いしますね」
亜樹さんの確認を取った後、俺はこの家から数十メートル離れた河川敷へと向かうことにした。
俺は玄関を出て道路を早歩きで向かっていく――、アイツ大丈夫かな……
その時、俺の向かってる方向とは反対方向から一人の少女が走ってくるのを確認する。
あれは間違いない――あいつだ。
「は~こ~み~ん!!」
その声にはどことなく嬉しそうな気持ちが溢れているのかとても俺の耳に良く聞こえてくる。
一直線に俺の方へと向かうサイドテールの少女。
そう、彼女こそが芦原家唯一のお子さんのあ「ええ~ぃ! タックル~!!」
「ぐふぇっ!?」
俺に一直線に向かってきた彼女は勢いを殺すことなくそのまま体当たりしてきやがった、
その勢いに押され地面へと叩きつけられた俺、とてつもない痛みにしばらく声を出すことができなかった。
タックルしてきた彼女こそ、芦原家唯一のお子さんである芦原由姫(あしはら ゆめ)ちゃん、
大分前から同じ部屋同士で暮らしていて、今では自分からしてみれば妹のような存在である――
野球と走る事が大好きな少女で今日も自らの野球を磨くために一人でトレーニングをしていたのだろう。
そんな由姫はそんな俺の様子を見て、あろうことか喜びながら言う。
「わーい! これで乱闘を極めたぞ~!!」
「て、てめぇ!! そんなトラブルになるこたぁ極めなくていいんだよこの野朗!!」
……ったく、洋服の肩口がボロボロになるまで練習しやがって、
いくつの木をなぎ倒してきたんだ?この怪物少女めが!と心の中で突っ込んでやった。
しかし物凄い威力のタックルだ、
この俺様が12メートルも吹っ飛ばされるとは……他の人が食らったら死者がでるぞ、こりゃあ。
俺はそんな事を考えながらため息をつく、
由姫は俺の気持ちを知ってか知らずか、いつも通りの明るい笑みを浮かばせて俺に話し掛けてきた。
「かえろっ♡、はこみん」
ハァ、全く――反省してねえな?コイツ。
そう思いながらも俺は一瞬小さく息を吐いた後、優しく微笑み返し由姫の頭を撫でてあげた。
――そんなおかしな俺らの物語が、スタートする。
最終更新:2010年02月10日 01:23