リヴォとロウさんは、このカバリア島でも有名な二人組でした。
勿論、白銀も有名なギルドだった。
今も、有名ですけどね。
何が有名って、仲の良いことで有名だったんです。
今では想像つかないでしょう。
仲が良いと言ったって、ベッタリではありませんよ。
≪仲が良い≫というより≪相性が良い≫とでも言うのでしょうか。
遠征狩りの時なんかはよく二人で狩りに行ってたのを覚えています。
ギルドバトルの時も先陣を切っていったのはリヴォさんとロウさん。
・・・だったのですが
やはり、能力の優劣はありましたよ。
俺らの目じゃ、どちらも同じくらいすごい人でしたから
比べるなんて出来なかったんです。
それでも、ロウさんは気にしていたようで。
ロウさんは自身が劣っていると考えていたんでしょう。
それに気づいたのはある時の会話でした。
「僕は気にしていませんよ。ロウ」
「リヴォが気にしなくても僕は気にする!」
「いつも・・・ いつもだ。一歩貴方の方が上にいた・・・リヴォ・・・!」
「今更何を言うんです。ロウが上の時もあったじゃないですか。」
「いつも上にいる人にはわかりませんよね。解る筈がないんだ。」
そりゃ、驚きました。
テルさんが知っているように、ロウさんはそうそう激する人じゃない。
なんでも争うような人でもなかった。
それが、その人が、ムキになっている。
気まぐれだと思うでしょう。
次の日になればおさまると思うでしょう。
俺も、そう思った。
でも、次の日、白銀の建物の中にロウさんの姿はなかった。
掲示板も、部屋も、ロウ・レヴィの文字はなかった。
それから、白銀内で、「ロウ・レヴィ」を口にするものはいなくなった。
ロウさんがいなくなっても、ギルドバトルは何度も行いました。
が、二人いた主力が一人になると、白銀の勢いも半減しました。
負けに負けを重ねる状況が続いたんです。
流石にリヴォさんも、ロウさんに連絡をとったんです。
返信はありませんでしたよ。
不幸は、それだけではなかった。
それに苛立ちを感じたギルドメンバーが数人・・・
いや、十数人ギルドをやめていったんです。
白銀は衰退の道をたどりつつあった。
すぐに、マスターやリヴォさん、それに俺やあっつん、イチヤにブリュさんも加わって
白銀は元に戻りました。
でも、白銀が暗闇の中にいたときも、ロウさんからの連絡は何もなかった。
その時で、リヴォさんの「ロウ・レヴィ」という人物への仲間意識はぷっつり切れたんですね。
「ロ」の字が聞こえようとでもあれば、リヴォさんの瞳は別人のようでしたよ。
それから、白銀は数か月してからある大会に参加したんです。
ギルドバトルの。
カバリア島でも屈指のギルドが集まりました。
そこにいたのが、ロウ・レヴィ率いる【仮面】というギルドでした。
ギルド名のように、メンバーが皆仮面・・・をしているのです。
ロウさんも含め、強豪ぞろいで、決勝まで上り詰めていきました。
白銀ですか?
白銀とて、負けてはいられぬと決勝まで行きましたよ。
その勝負のことは今も鮮やかに覚えています。
ルールは、デスマッチ。
「デス」と言っても殺すわけではありません。
相手メンバー全員が白旗を・・・つまり、降参した場合負けとなるのです。
ここからが二人の過去の中で一番重要な部分となったんでしょう。
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『はじめ』の合図で試合は始りまった。
その合図が言い終わるかどうかのタイミングで
俺の前にいたのは・・・女性だった。
兎の耳をつけたチャンピオン。
でも、俺と彼女の間には10メートルぐらいの距離があった。
彼女は、数秒でその10メートルの距離を詰めたんだ。
そして彼女の武器は、拳。
彼女は武器を持たずに拳でぶつかってくる。
勝負といえど、相手は女性。
そして俺がもっていたのは大剣だった。
彼女の拳を避けながらそんなことを考えていると
「あんさん、その剣使っていいっすよ。」
彼女が言ったんだ。
彼女の腕を守るものといえば、金具だけだった。
俺とて、腕力に自信が無い訳ではない。
剣を地面に突き立てて、拳でたたかうことにした。
俺の行動に驚いた顔をしたが、ニヤリ と笑うと拳にスピードと威力が加わった。
仮面をしているからすぐには解らなかった・・・
声で気付いたんだ。
彼女は有名なチャンピオン。
名前は・・・コウ・・・だったかな。
拳を交えながら、彼女に聞いた。
「貴方は、かの有名なコウさん・・・ですかね?」
「なんだ、あんさん知ってるんすか。あたい有名っすね」
ニコニコと嬉しそうに笑いながら彼女が答える。
「どうして貴方がロウさんのギルドに?」
本気で戦いながらも、口をきく余裕が双方にはあった。
「あたいがロウさんを気に入ったんっす。」
あの人は、強い。
そう聞こえた。
「もう口をきく余裕はないっすよ。」
彼女がそういうと、拳の威力が格段に上がった。
俺の回復薬も底をつき始めていた。
降参しようとしたとき、声が聞こえたんだ。
ロウさんの。
「なぜだ!なぜなんだ!」
という怒鳴り声。
今までに聞いたことのない声。
声しか聞こえなかったが、何かを察知したコウは
最初、俺の前にいきなり現れたように、忽然と姿を消していた。
彼女が姿を消す前にこんな一言が聞こえた。
「ロウさん、何をするつもりで!」
おそらく、彼女はロウさんの元へ行ったのだろう。
そこからその方向で何が起こったのは俺にはわからない。
ただ、その怒鳴り声が聞こえた直後に、試合は終わっていた。
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「・・・っと。俺が覚えてるのはこんなところかな・・・」
話に夢中になりすぎて、珈琲は冷めてしまっていた。
無糖だったから、というのもあるんだけど。
「俺だけの話じゃ全部わからないだろうから、他にも聞くといいですよ。」
そういうと一弥さんはズズーッと珈琲を飲む。
私のカップを覗き込んで一言。
「無糖は苦かったかな?」
次は砂糖も用意しなきゃな とつぶやく声が聞こえた。
「さて・・・整理がつきしだい、次へどうぞ。」
「ありがとうございましたっ。」
冷めきった珈琲を返すと、テルは部屋を出た。
自分の過去なんかより、他人の過去の方がダンゼン気になるのね。
一弥さんの部屋の扉を閉めて、ふう とため息をつく。
私はロウさんに連れられてきただけ・・・。
過去は関係ないはずなのに、どうしても。
何となく歩いていた足を止めてふと考える。
「そういえば、私の隣の部屋・・・」
一弥さんの言っていた、ネームプレートのない部屋。
もしかしたら、と廊下の奥へ向かう。
「・・・あった。」
鍵がかかっていないことを願いながらドアノブに手をかける。
カチャリ。
扉の開く音。
あけると、少し埃っぽく、むせ返る。
多少は汚れているけれど、どこかロウさんの雰囲気が残る・・・
「あれれれれ?なぁにしてるのかなあ?」
「!?」
間の抜けた声に、慌てて振り返る。
- と、そこにいたのは
「ば、ばけもの・・・」
「うわあー 失礼だなあ。ぽぷりだよ。ぽ ぷ りっ」
「ぽぷり?」
声の主は、イチヤさん。
変な仮面をかぶっている。
遊園地にいるきぐるみ―の頭だけ?
「で、何してんの?テルちゃん。」
「何もしてませんよ―」
言い訳を考えながら語尾を伸ばすと、後ろからもうひとつの顔。
「ふうん?」
「!?」
あらわれたのは・・・また仮面。
「お。あっつん何してんのさー」
「ポプリこそ。」
「うんとね、物音がしたから覗いたらテルちゃんがねー」
「ふうん。」
あっつんこと、敦眞さん。
何となく冷たく見えるから私としては苦手な人―
「で、あっつん何してんの?」
「そうそう。一弥に頼まれたからテルさん探し。」
「えー。何頼まれたのー」
「昔話。」
「なにそれえ!僕聞いてないよ!」
「ふーん。」
「あっつんのいじわるー!」
「まあ多くても悪くないだろうし。。。ポプリもおいで」
「わーい!テルちゃんテルちゃん、行くよー」
「・・・は はい?」
もう少し、ロウさんの部屋にいたかったのだけれど、あの話をしてくれるなら・・・。
「ほらー!テルちゃんってばー!」
少し先でイチヤさんの声がする。
「あ。今行きますね!」
ロウさんの部屋の扉を閉めると、テルは駆け出す。
追いつくと、二人は何か話をしている―
「なんで僕は頼まれなかったんだろーねえ?あっつんー?」
「さあ」
「ねえってばー。」
「忘れられてたんじゃないかな?」
フ と敦眞さんが鼻で笑う。
「ひっどーい!一弥にあとで聞くから!」
「どうぞどうぞ。」
ほとんど正反対の二人の会話がどうにも面白い。
気づけば、さっき出たばかりの一弥さんの部屋―の隣。
「おっじゃましまーす♪」
イチヤさんの声。
「どぞー。」
敦眞さんの声。
「あ、どうも。」
一弥さんの部屋のように統一性はないけれど、キチンとしている。
「―さて」
「お話を始めましょうか。」
「ねー。何のお話?」
「すぐわかるさ。」
沈黙が流れる。
「飲み物、何がいいかな?」
「あ!僕ココアね!だーすさんが作ったやつが飲みたい!」
「ういうい。テルさんは?」
「あー・・・なんでもいいですー」
ブラックを少し貰ったのでいっぱいいっぱいだった。
それでも貰わないのは失礼かと思い・・・
出されたのはブラック。
「ん。」
「・・・どうも。」
「ねーねー!だーすさんのココアはどうしたのー!」
イチヤさんが喚きたてる。
「だーすさんから貰っておいで。」
ぷー と頬を膨らませると、イチヤさんは黙りこんでしまった。
いつものことさ、と敦眞さんが付け加え。
「それじゃあ―」
一呼吸置いてから続ける。
「何が聞きたい?」
「ええと・・・白銀と仮面とのギルドバトルの様子・・・でしょうか」
「あんまり覚えてないけどなあ」
どこからか持ち出したお菓子を食べながらイチヤさんが言う。
「・・・レーさんとの?」
「聞かせてもらえませんか・・・」
「僕も覚えてる限り教えてあげるー!」
「ポプリは後で。」
「むー・・・」