ボルケーノコロシアム。
恐ろしく熱い。
暑いではない。熱いのだ。
そこで獲物を探す、ミント・クライスの姿があった。
ギルド内では最大火力を誇る、魔王。そしてマスターを兼ねている。
その瞳は、獲物を探す獣のようで。
彼女がみつけたのは、ヴィル・バーリー。
明らかにやる気のない様子だが、そんなことは構わない。
フェアーウィンドをかけると、大あくびをしているヴィルのもとへ走りだす。
何も言わずに、アローを撃ちだす。
「!?」
突然の襲撃に驚いた獲物は、あわてて盾を構える。
魔法を防ぎきると、大剣を持ちだして構えた。
「・・・俺は手加減しないぜ?」
鼻から上は仮面で見えないが、余裕をかましているのはよくわかる。
「その余裕が死を招く。」
ミントはそれだけ言うと数多の魔法を発動させる。
風・水・風・風・水。
不規則なリズムで風と水を打ち出す。
詠唱時間の長い無属性魔法はあまり使わない。
何もかもを切り裂く四人のアネモイ、ボレアス・ノトス・ゼピュロス・エウロスの風と
すべてを飲み込むポセイドンの海と水。
風と水、二つの精霊に認められたミントには、あらゆる風と水が味方する。
その風に触れたものは、木端微塵になり、その水にのまれたものは跡形もなくなるという。
そんなものにはうかつに近寄ることができない。
ヴィルは、手も足も出ないのだ。
逃れるだけで精一杯になってしまう。
チッと舌打ちをすると、ヴィルは仮面を剥いで地面に投げ捨てた。
「わりぃわりぃ!降参だ!敵わねーよ!」
その様子をじっと見据えると、ミントはこう吐き捨てた。
「私は、手加減したんだけれど」
そう言って、姿をくらました。
そこからさほど遠くないところ。
敦眞とユエノが火花を散らしていた。
「久しぶりね」
「ん」
「前回の続きをする準備はできていて?」
「ああ。」
そう言うと敦眞はランスを召喚させ、ユエノの頭上から降らせた。
が、ユエノの頭上にはマジックバリア。
鏡はそのランスを飲み込み、そのまま敦眞の方向へ吐き出した。
多少ダメージが減って向かってくるとはいえ、自分が放ったものが戻ってくるというのは、どうにも気に食わない。
ユエノは物理攻撃を仕掛けてくるが、ダークエレメントを張っている敦眞にはなかなかダメージが通らない。
そんな攻防戦が何分も続く。
とうとうユエノは痺れを切らし、何かを唱え始めた。
「不死とうたわれた砂漠のファラオよ、今こそ私に変化の時を―!」
何事かと盾を構えてみていると、煙に包まれたユエノの姿は一瞬にして化け猫になった。
見とれている場合ではない。
ユエノはものすごい速さでこちらへ来る。
敏捷が下がり、攻撃速度の上がったユエノにはすきがなく、自分の身を守るだけで精一杯だった。
それでも、と防御力を上昇させて耐えようとしていた。
突然、ユエノが奇声を発した。
キイイイイイイイ、という金切り声であろうか。
プリマドンナが習得できる、シャープスクリーム・・・。
まともに聞いては耳が壊れてしまう、と耳をふさぐ。
そのすきを見つけたユエノの目つきが変わり、そのまま爪を突き立てた。
「痛っ・・・」
一度懐に入られては、追い出すのも厄介で。
このままでは耳どころの騒ぎではなくなってしまう。
自分の命までもを落としかねない。
あわてて白旗を持ち出す。
白旗は降参の意。
それを見たとたんにユエノの変身は解け、座り込んでいる敦眞を見下ろしていた。
「・・・降参だ降参」
「そう。あなたの力はその程度だったのね」
嘲笑うかのようにニャアと猫の鳴きまねをして、ユエノは立ち去った。
「・・・っくそ。」
傷だらけの体は言うことをきかず、拳を地面にたたきつていることしかできなかった。
周りの様子など見えていない、とでも言うように刃をぶつける約二名。
コウは、前回と同じようにあらわれた。
同じように、いつの間にか一弥の近くにいた。
しかも、背後に。
ちょいちょい、と肩をつつかれて初めて気づいたのだ。
「あんさん、久し振りっす」
半分からのぞかせる口元からニッと白い歯が見えた。
相当鈍くなってしまったようだ、と頭をかきながら返す。
「やあ。コウさん。お久しぶりですね」
ふと、コウの両手に目が行った。
彼女の両手には剣が握られていた。
それも、片手に一振りずつ。
紅い瞳と、ピンクの髪、そしてピンクの服に似合わない、コバルトブルー。
いや、もう少し鮮やかな・・・ターコイズブルー?
色の問題ではない。
どうして彼女は二刀なんかを?
それに気づいたコウは答えた。
「こいつ、かっこいいっすよね。トルコ石の色っす」
嬉しそうに話す。
「んじゃ」
そう言うと間髪容れずに剣を振りかざした。
二刀だからと言って威力が増すわけではない。
よほどの使い手でない限り、利き手だけに力が入り逆の手は使い物にならない。
大剣で攻撃を受け流しながらコウに聞く。
「なぜ、刀を?」
ああ、とコウは答える。
「だって、こうしたら、あんさんも剣がつかえるっす!」
キラキラと顔を輝かせて言う。
「んでんで、あたいが勝ったら剣術を教えてもらうっす!」
無茶苦茶なことを言い始めた。
それならば、と一弥は提案する。
「引き分けにして、今から少し教えましょうか」
毎度おなじみ牛紳士の営業スマイル0円つけて。
コウが跳ね上がる
「まじっすか!じ、じゃあ早く教えてほしいっす!」
その場から少し離れて、二人は腰をおろした。
と、するとそこに現れたのはポプリの仮面のイチヤ。
「あー。一弥ずるい!僕ってば相手が見つからなくて退屈してるから、いーれて!」
コウはなぜかイチヤをにらんでいる。
いいや、見据えている。
そして、見据えているのはイチヤではなく、その後ろ。
「おい、そこのバケモン、あんたの相手は後ろっすよ」
バケモンじゃない、と訂正したかったがさすがに危機感を感じ振り返る。
「どーも。」
後ろにいたのはセクシークイーン。
一弥がひゅう、と声をあげる。
「なっ。ななななな。だ 誰っ」
「そんな驚かなくてもええのに~・・・
ちとだけ、お手合せねがえます?」
変な抑揚のある言葉。
「あのー・・・はっきり喋ってくれないと・・・」
「なんや、知らんの?関西弁。親しみやすくてええよお」
「カンサイベン?」
「そや。」
「・・・。」
「・・・。」
「だあ。もおええ!はよういきまっせ!」
「わっわわっ・・・」
腕を掴まれて引きずられるイチヤ。
と、それに向かって笑顔で手を振る一弥。
「・・・にしてもあんさん、こんまいなあ。今年でいくつ?」
「せ、成人してますー!」
「そうは見えんけどなあ。んじゃあ、一戦いきまひょか・・・と言いたいところなんやけどー
わて、日頃のうっぷんがたまりまくってんねんー
ちょっと、愚痴に付き合ってくれへんー?」
「ぐ、愚痴?かまわないけど・・・」
「おお!ほんまに?おおきにっ。聞いてくれたら勝ちはあんさんにプレゼントしますわ。ロウさんてば何を言ってもニコニコしてはるだけやし
同感してくれる人がおらんと困るわあー。
ほな、さっきのところ戻りまひょ?」
今度は来た道を引きずられる。
困ったギルドバトルがあったもんだ。とイチヤはため息をつく。