…………

………

……

キョン「カリカリカリカリカリカリ……」

ハルヒ「……あんたがノロマすぎるからばれちゃったじゃないの…!」

キョン「すまんすまん」

 


ハルヒ「……………」

キョン「カリカリカリカリカリカリ……」

ハルヒ「……どうなの?」

キョン「ん?なにが?」

ハルヒ「…勉強よ。最近どうなの?」

キョン「……?順調だぞ」

ハルヒ「……。ふーん。ひょっとすると、ひょっとするかもしれないわね」

キョン「なにが?」

ハルヒ「うちから、SOS団から有名なお医者さんが出ちゃうかもね!」

キョン「…………」


キョン「……いや、俺は有名になるとかならないとか、そんなのには興味ないんだ」

ハルヒ「………どうして?」

キョン「俺にとって医者になることは手段でしかない」

ハルヒ「………?」

キョン「ハルヒ、お前を救うための手段だ」

ハルヒ「……………」


ハルヒ「…………そっか、ありがとう。素直に嬉しいわ」

キョン「な、なんだよ気持ち悪い。素直なハルヒなんてハルヒじゃないだろうが」

ハルヒ「なんですって!?」


キョン「冗談だって、怒るなよ(パタン)…じゃ、そろそろ寝るか」

ハルヒ「あ、待って」

キョン「ん?どうした?トイレか?」

ハルヒ「違うわよ!……今日は帰ってほしいの」

キョン「え?何故?」

ハルヒ「……最近ちょっと病室が散らかって来たから掃除でもしようかと思って」

キョン「ほう、突然だな。で、何故俺は帰らなくちゃならん?」

ハルヒ「…そりゃ、掃除してる課程で見られたくないものがあるからでしょ…!」

キョン「なるほど」


キョン「明日掃除するのか?」

ハルヒ「うん」

キョン「………ま、そう言われたら仕方ないか。……俺もちょっと物理見直したいとこあったし、今日は帰るとするかね」

ハルヒ「………うん、お願い」


キョン「おう、じゃあまた明後日来るからな」

ハルヒ「………………」

キョン「……ハルヒ?」

ハルヒ「え?あ、あぁ……うん」

 

キョン「じゃあ……次俺が来るのは明後日でいいのか?」

ハルヒ「……うん、そうね」

キョン「わかった。んじゃ、早く寝ろよ」
ガラガラガラ…


ハルヒ「………ま、待って!!」

キョン「…?なんだ?」

ハルヒ「……やっぱりもう少し話そ?」

キョン「もう時間的にも遅い」

ハルヒ「お願い!」

キョン「……うーん、
……少しだけだぞ?


………

ハルヒ「もう高校生活も終わりね」

キョン「そうだな。あと半年……もないか」

ハルヒ「……名残惜しいわね」

キョン「あぁ」

ハルヒ「……最後の最後でみんなちりぢりになっちゃってさ、それもちょっと残念」

キョン「………お前が望んだら、みんな帰ってきてくれるさ。きっと」

ハルヒ「あはは、そうだといいわね」

キョン「………」

ハルヒ「……最高の高校生活だったわ」


キョン「…………あのさ」

ハルヒ「何?」

キョン「……こんなときでもなかったら多分言えないだろうから、言っておく」

ハルヒ「何よ?」

キョン「『約束破って、すまなかった』」

ハルヒ「約束?」

キョン「………図書館の」

ハルヒ「え?あ、あぁ……あれね」

キョン「……お前、俺のために色々データを…」

ハルヒ「そ、そんなことしたっけ?覚えてないわそんなこと!!」

キョン「………ありがとうな」

ハルヒ「………!
べ、別にどおってことないわよ、あんなの……」


ハルヒ「…別に事故のことも謝らなくったっていいわ」

キョン「なんで?」

ハルヒ「あんたはその分、ずっとあたしのそばにいてくれたじゃない」

キョン「そ、そうなのか?」

ハルヒ「今だって、最後までこうやって私のそばにいてくれてる」

キョン「あ、あいつらは仕方ないんだ。急な事情で引越しを……」

ハルヒ「そ、そうなんだけどね。それでもあんたが最後まで残ってくれてて嬉しかった」

キョン「………そうか」

ハルヒ「………。
ねぇキョン、ちょっとへんなこと聞いていい?」

キョン「……?あぁ」

 


ハルヒ「もしあたしが………ずうーっと遠くの場所に行ったら、どうする?」


キョン「遠く?………もう今日みたいに病院抜け出したりは…」

ハルヒ「違う。あたしだけ、ずっとずっと……遠い場所に行っちゃうの」

キョン「遠い場所ってどこだよ?」

ハルヒ「え?ぁ、あー……うーんと……。
あああっ!もう!!とにかく遠い場所」

キョン「……………」

ハルヒ「……あんたは、どうする?」

キョン「……もうおいてけぼりはたくさんだ」

ハルヒ「…………」

キョン「……俺もついていく」

ハルヒ「…………」


ハルヒ「……それは駄目よ」

キョン「………」

ハルヒ「あんたはあんたのやることがあるでしょ」

キョン「………」

ハルヒ「……医者になりたいんじゃないの?」

キョン「だからそれはお前を助ける……!」

ハルヒ「そんなのいらない」

キョン「……え?」

ハルヒ「そんなの、あたしにはいらない」

 

ハルヒ「……それじゃあんたがあたしのために何でもやってるみたいじゃない」

キョン「お前の為だ。こうやって勉強してるのも全部」

ハルヒ「……あんたはあたしのために人生棒にふんの?」

キョン「ああ。やろうと思えば」

ハルヒ「絶対駄目。そんなの嬉しくない」

キョン「……?なんで?」

ハルヒ「そしたらあんたが不幸になるでしょ」


ハルヒ「あんたが不幸なら、あたしも嬉しくない」


キョン「……何が言いたいんだ?」

ハルヒ「……医者ってね、そうそうなれる職業じゃないのよ」

キョン「そうだな」

ハルヒ「でもあんたはこの短時間で、大きな一歩を踏み出せた」

キョン「…………」

ハルヒ「……大学ももうほとんど合格確実なんでしょ?」

キョン「……あぁ」

ハルヒ「……気持ちはうれしいわ。だけどあんたのその可能性をあたしで潰して欲しくない」

キョン「…………」

ハルヒ「……あたしの話はそれだけ。だから」

 


ハルヒ「あたしについてくるなんて言うのはやめて」

 

ハルヒ「ご、ごめん暗い話しちゃって!……あはは、なにやってるんだろ」

キョン「………」

ハルヒ「ふ、深い意味はないのよ!あんたが医者になったら団長であるあたしも鼻が高いんだから頑張りなさいってこと!」

キョン「……あ、あぁ」

ハルヒ「話はそんだけ!!はい、終わったから暗い顔はナシね」

キョン「………」

ハルヒ「暗い顔はナ・シ!!」バシッ

キョン「うぉあ!」


…………

ガラガラガラ…

キョン「見送りサンキュー」

ハルヒ「とは言っても、病室のドア出ただけだけどね」

キョン「はは、そうだな。……んじゃ、帰るな」

ハルヒ「………う、うん」

キョン「どうした?」

ハルヒ「な、なんでもないわよ!!」

キョン「……じゃあまた明後日来る。それまで大人しくしてろよ」

ハルヒ「……………」

キョン「じゃあな」

ハルヒ「………………」


ハルヒ「ま、待ちなさい!」

キョン「…まだ何かあんのか?」

ハルヒ「そ、そのっ………!あ、あたしに………キっ………」

キョン「………?」

 


ハルヒ「キ、キスしても……い、いいわよ…?」


キョン「………は?」

ハルヒ「だっ……だから、キス……していいって……言ってんのよ……!」

キョン「な、何言って……」

ハルヒ「目瞑るわ」

キョン「!?」

ハルヒ「…………」

キョン「な、なにやってんださっきから」

ハルヒ「……早く」

キョン「!?」

ハルヒ「……早くして」

キョン「…………!」


ドクン……


キョン(ゴクリ……)


ドクン…!


ハルヒ「………っ……!」


ドクン…!


キョン「………」


ドクン…!

………


……

 

 


ナデナデ…

ハルヒ「……!??」

キョン「……馬鹿。するわけないだろ」


ハルヒ「………ぇ…?」

キョン「……キスってのは恋人どうしがするもんさ、それに」

キョン「雰囲気も大事だ。こんなとこでキスなんて俺にはできん」

ハルヒ「……………」

キョン「………ハルヒ?」

ハルヒ「かっ、勝ち誇った顔してんじゃないわよ!あ、あたしだってあんたが鼻のした延ばして顔近付けてきたところをからかってやろうと思ってたんだから!!」

キョン「ははは、そりゃ危なかった!
んじゃ、ほんとに帰るから。ちゃんと寝るんだぞ」

ハルヒ「……ぇ?…あ、う、うん……」


キョン「また、明後日な」

ハルヒ「う、うん。バイバイ…」

 

キョン「……お前は」

ハルヒ「…………うん?」

キョン「どこにも行かないでくれ」

ハルヒ「……………」

 

 


ハルヒ「………わかった」

 

 

 

 

ハルヒ「だから、頑張んなさい」

最終更新:2008年05月27日 01:30