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  • 消えていく日々、いつもの風景・第八章

涼宮ハルヒのSS in VIP@Wiki(避難所)

消えていく日々、いつもの風景・第八章

最終更新:2020年03月18日 07:10

haruhi_vip2

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だれでも歓迎! 編集
§第八章§
 
――20――
警戒心を煽る声。聞き覚えのあるトーン……間違いない。
俺は振り向いた。歩道にいたのは、あいつに他ならなかった。
名前すら知らない、朝比奈さんとは別の未来人。二月に朝比奈さんを誘拐しやがった時以来だ。
「お前は!」
叫ぶ俺に野郎はまたも敵意ある目を俺に向けていた。大人版朝比奈さんの話では、こいつらの勢力が朝倉の突然の奇行に一枚噛んでいるとのことだった。
「どうだ、楽しんでるか? 既定事項を脱した突然のハプニングを」
そいつは腕を組んで俺に笑いかけた。笑いと言っても古泉のような微笑ではなく、嘲笑の部類に含まれる笑みだ。
俺と奴の距離は四メートルほどだった。仮に殴りかかっても、十分に避ける余裕がある。それにこいつならばためらいなく時間跳躍の瞬間を俺に見せて逃げおおせるかもしれない。
「これがお前の仕業だってのは本当か」
俺はつとめて冷静に言った。いけ好かない未来人は、嫌な感じに口の端を歪めて、
「あんまり僕たちをなめてもらっちゃ困るからな。今回は仕掛けさせてもらった。無論、僕だけの力ではないが」
ここで一度顔を横向け、目の端で俺を見ると言った演出じみた仕草をして、
「僕個人にしてみれば、朝比奈みくるが困る事態ならば何でもいいんだよ。お前には分からないだろうがな」
こいつ……。腹に力が入ってくる。だが、こんな奴に構っている場合ではない。俺は部室に行き朝倉を止める必要がある。
「何の用だ」
今回は俺一人で朝比奈さんはここにいない。矛先を俺に変更したのか?
「ふん」
未来人は片手の平を上向けて嘆息し、
「広域宇宙体のインターフェースが暴れようが、僕にはどうでもいいことだ」
だったら今すぐ帰れ、俺にとってお前は邪魔以外の何者でもない。
「なぁ、あんた」
そいつは顎を引いて俺を上目がちに睨み、
「こっちに着く気はないか?」
咄嗟に意味を測りかね、俺は訊き返す。
「何を言ってるんだ?」
未来人は邪悪な笑みを緩和させた。それで友好的な表情のつもりか。もう少し練習した方がいいぜ。
「既定事項を満たすことに疑問を持ったりしないのか? お前は。朝比奈みくるが固定しようとしている未来がどんな物かも知らないで、よく言いつけを守れるものだな」
この言葉に、俺はわずかばかり動揺した。確かに、誘拐事件が終わった後大人版朝比奈さんから受けた説明は、肝心なところが不明瞭で、俺はまだ配って歩けるほど疑問を抱えている。なるほど。そりゃ主人の言いつけを守る忠犬のように見られても仕方ない。
……だがな、
「他の人間が傷つくことを平気でできる奴のところに行くつもりなんかねーよ」
俺は言った。こんな状況じゃなきゃ出てこない言葉だ。だが本心でもある。俺が凍りついちまった時の朝比奈さん(小)と、夜中に訪ねて来た朝比奈さん(大)の涙は、そう簡単に忘れられそうにないしな。
未来人は十秒ほど無感動な目を俺に向けていたが、やがて、
「ふん、そうかい。そう言うだろうと思ったが訊くだけ訊いてみたんだ。まぁいい、あんたがどう答えようが変わりはない」
何がだ。俺が意味の分からないことを延々喋るのはやめろ。古泉が消えちまっててもお前の出番はねぇぜ。
「ならせいぜいあの宇宙人と地球防衛に躍起になるんだな。……お前とはまた会うこともあるだろう。だが、もうさっきの質問はしない。それを覚えておけ」
どうでもいい、さっさと失せろ。
「じゃぁな。キョンくん?」
最後に俺のあだ名を言ってそいつは歩道を歩いていった。こんなに嫌味ったらしくこの名を呼ばれたこともまたない。
だが今はぐだぐだ考えている場合ではない、時間に余裕を持って来たが、思わぬところで余計な茶々が入った。
 
考えることはすべてが終わってからでいい。
今はすべきと分かっていることを実行するだけだ。

 
難しいのはタイミングだった。朝倉が部室に入った直後にドアの前に立てるくらいが望ましい。
朝倉は部室に入った後、わずかな時間ではあるが俺たちと会話していたはずだ。つまり、最低でもその時間の範囲内に侵入し修正プログラムを撃つ必要がある。かなりタイトだ。もしもしくじったらどうなるかとか、そんなことを思い悩むのも後回しで構わない。俺は朝比奈さんから借り受けた電波時計を見た。午後三時二十七分……四十秒。
 
俺は待機場所を決めると、校舎に向かって歩き出した。

 
「……君さぁ、何でうちの部室にいるわけ?」
「すいません、ちょっと黙っててもらえますか」
俺が身を潜めておく場所に選んだのはコンピ研の部室であった。ここからならば渡り廊下の様子が一望できるし、頃合いを見計らってすぐにふたつ隣の文芸部部室へ駆け込める。
もしかして入部希望かい? とか、新しいゲームができたんだけどテストプレイに付き合って、とか言う部長氏の方を見ずに、かつやんわりとレトリックによる拒否をしつつ、俺はベテランの現場刑事による張り込みばりに集中して廊下の監視を続行していた。うーん、双眼鏡と牛乳とあんぱんが欲しくなるね。視力悪くなくてよかったな。
時計をチラチラと眺め、一階と二階の廊下を睨み、十分ほどが過ぎようとした頃……。
「……あれだ」
間違いない、俺が歩いている。何つう足取りだ。一歩、また一歩、何かに引っ張られるようにして奇妙な挙動で前進している。確か部室にどうしても行かなきゃならない気がして、朝倉を振り払って走ったつもりだった。
だが実際はどうだろう。何とも情けない体たらくである。あれが俺なのか。谷口も真っ青のマヌケっぷりだ。
などと考えている間に過去の『俺』はこちら側、旧館部室棟校舎にふらふらと吸い込まれて消えた。まもなく階段を上って文芸部部室に到着するはずだが、まだ俺が向かうのは早計だろう。続けて朝倉が現れるはずだ。
窓から外を見て奇矯なリアクションを取り続ける俺に、コンピ研の面々が痛い人に対する視線を送っている気配がしたが、振り返っている余裕はない。
朝比奈さんの時計で午後三時四十五分になろう頃――、
 
「来たか――」
 
朝倉である。二階の渡り廊下を悠然と歩いている。その姿はさながら文化部の友人に会いに行く道中といった風情だ。
俺は朝倉がこちらの校舎に入るのを見届けると、急いでコンピュータ研究部部室のドアに走り寄った。わずかにドアを開けて様子を伺う。ここで俺が飛び出しちまうようなことになれば最悪である。階段を上るとすぐに部室が並んだ廊下に突き当たるから、俺の姿は即座に目撃されてしまう。ナノマシンがどこまで効くかは分からないしな。
俺はコンピ研の部員全員の動きを目で制しておいて、床に這うようにしてドアの下方から片目を覗かせた。
間もなく朝倉が何食わぬ顔で階段を登ってきた。一歩、一歩……。朝倉はSOS団のアジトたる文芸部部室前で足を止め、一呼吸置いてからドアを開け……中に入る。
直後、俺は起き上がってコンピ研の部室内を睥睨し、
「どうもお騒がせしました。それじゃ失礼します」
と誰を見るでもなく言って再度廊下の様子を確認し、誰もいないと分かると外に出た。扉を閉める。
 
二秒でふたつ隣の扉の前に移動して、聞き耳を立てる。
 
「……と早く効果が切れちゃったのね。所詮テストプログラムだったかぁ」
 
朝倉の声だ。間違いない、俺の聴覚と思考だけがおぼろに復活した頃だ。
「キョ……キョンくん! だ、大丈夫ですかぁ~、うぅぅぅ、しっかり、ふえっ、えっ」
朝比奈さんの声。突然俺がやって来てぶっ倒れりゃパニックにもなろう。
「朝倉、あんた一体」
「下がっていて」
ハルヒと長門の声だ。今気付いたが、長門の声は普段のこいつからは考えられないくらい大きく、はっきりしている。
「キョンくん……うぇぇぇぇえええん」
朝比奈さんが泣いている。悔しいが、今の俺に彼女を慰めることはできない。
「彼に何をした」
長門の声が響く。この音量ならドアに耳をつけていなくても聴こえるかもしれない。
「何て言ったらいいかしらね。端的に言えば幻覚を見ていてもらったんだけど、どう? 涼宮さん、彼が心配? 大丈夫よ。死にはしないから」
朝倉が言う。あの薄笑いが見えるようだ。俺は人通りがないことを確認して、懐から白銀に輝く短針銃を取り出した。
「朝倉……これ、あんたがやったの!? ねぇ、有希! これって一体……」
ハルヒが当惑した声を上げる。この時のこいつはまだ、まったく何にも分からないのだ。
「あなたは黙っていて。彼の傍を離れないこと。朝比奈みくるも離さないこと」
鋭く研いだ金属のような長門の声。
「キョン、しっかりして! 目を覚まして! ねぇ、キョン!」
「無駄よ。そいつは完全に意識も神経機能も失ってる。分かりやすく言えば植物状態かしらね」
記憶にある通りの台詞を聞きながら、俺は銃の安全装置を解除する。これの扱いは長門に繰り返し説明されたからな。
「さ、決着をつけましょうか。今回は絶対に負けないからね」
朝倉の冷たい声。俺は状態を確認する。……廊下に人はいない。大丈夫だ。
銃を持つ手に汗が滲む。
 
「長門さん、よろしくお願いします」
 
これまで一度もしなかった大人版朝比奈さんの声だ。これから俺とハルヒと朝比奈さん(小)を連れて四年前に遡行するはずである。
 
――。
 
一瞬、静寂が室内を支配した。少なくとも俺の耳には何も届かない。
俺が固唾を飲むと間もなく、
「ふふふ……。そっか、そういうことなの。へぇ。……長門さん? あなた、この一年でずいぶんお友達が増えたのね」
朝倉の声。今やはっきりと分かる。これは、裏の顔。
「わたしが時間跳躍できないって知ってたの? それともただの偶然かしら」
「あなたの異時間同位体は昨年五月二十五日の異常動作までは問題を起こさない。ヒューマノイドインターフェースに時間跳躍能力を持たせることは不可能。この二点により彼らを時間移動させることが最善と判断した」
長門は淡々と語ったが、かつての長門のような機械的側面は影をひそめていた。声だけでも分かる。
 
今、長門有希は怒っている。
 
「さすがね。あなた、この部室にも防衛プログラムを施したでしょう。おかげで空間封鎖と情報封鎖ができなかったじゃない」
朝倉は相変わらずの優等生口調だ。俺はタイミングを計っていた。……長門が特定の単語を言ったら、それが合図だ。
「でももう大丈夫。あと一分足らずでこの部屋には誰も出入りできなくなるから。ね?」
朝倉の言葉に俺は動揺した。……何だって?
「今度こそあなたを葬ってあげる。再構成もできないように」
汗が伝う感覚。脊髄を通るような悪寒。
「わたしは必ずあなたの情報結合を解除する」
長門の声だ。……だが何だ? 何か妙な感じがする。先ほどまでとは長門の声に表れる色が違っているような。それに朝倉の話が本当なら、そろそろ合図がないとまずい。

 
「空間封鎖、情報封鎖」

 
「……!」

 
その言葉を告げたのは朝倉ではなく長門だった。
 
俺は気付くと同時にドアノブを思い切りひねった。
「くそ!」
開かない。
「長門! バカやろう!」
俺はドアをガンガンと叩いた。
「何やってやがるんだ。無茶するなってあれほど言ったのに!」 
 
長門は自分と朝倉だけを部室に閉じこめて、例の封鎖行為を行ったのだ。
 
叩こうが、体当たりしようが、押そうが引こうが、ドアは開かない。
「どうして気付かなかったんだ……。どうしてもっと早く中に入らなかった……」
自分を叱責するように、俺は自分の頭を部室のドアに打ちつけた。
 
「どうして……」

 
「……」
 
思い出したのは、渡り廊下での会話だ。
 
あの日、長門は自分のことを責めていた。
古泉がいなくなってしまったのは自分のせいだと言っていた。
 
あの時に、何としても言ってやるべきだったのだ。

 
……お前は悪くないさ。自分を責めるのは、やめにしようぜ。

 
たったそれだけでよかったはずだ。
だが、もう遅い。

 
「長門……」
 
大人版朝比奈さんは言った。この時間に介入の手が入っている、と。
それを証明するかのように、未来人野郎が現れやがった。
 
そして、結果がこれか……?
 
長門は、朝倉に勝てるだろうか。
 
俺は、また何にもできないのか。

 
「キョン!」

 
……誰かが俺を呼んでいる。
 
俺は顔を上げて、声のしたほうを見た。
その姿を視認する直前に、声が誰のものであったかに気がついた。
 
「ハルヒ?」
 
ハルヒが息を切らせて階段を駆け上がり、俺の元までやって来た。
 
どうしてお前がここにいる。朝比奈さんの家にいろって言ったじゃないか。
「……はぁっ、はぁ。あたし、あんたと有希が……心配で」
俺はお前が心配なんだよ。いいから帰ってろ。頼むから……。
ハルヒはむっとして眉を怒らせ、
「あたしはね、キョン。もう知ることを恐れない。あんたや有希が何者なのかは分からない。けど、どんなことになってもあんたたちはあたしの大事な団員であることに変わりはない!」
俺はハルヒを見た。
「お前……」
「ねぇ……有希はどこに行ったのよ?」
俺は心臓を叩かれた気になる。長門は、この中で……。
 
「……」 
 
「なぁ、ハルヒ」
俺はハルヒの肩をつかんだ。
「何よ」
ハルヒは俺と視線を交わす。
「お前、さっきの言葉にウソはないか?」
「さっきの言葉って?」
俺は一瞬間を取って、言った。
「もう知ることを恐れない、ってやつだ」
ハルヒは小さく口を開き、また元の表情に戻って、
「えぇ。でも、どうして?」
俺はドアノブに視線を落とした。
「ハルヒ、このドアを開けてみてくれ。どうしても開かないんだ」
ハルヒは俺を先鋭芸術作品を鑑賞するような不可解な眼差しで見て、
「何で? カギかかってるの?」
「いや、別の理由で閉ざされてる。ものは試しだ、お前が開けてみてくれないか」
ハルヒは解せない顔のままドアノブに手をかける。ひねる――。
 
カチャ
 
直後に轟音が響いた。
 
「長門!」
開け放たれたドアから長門が飛ばされてきた。廊下の壁に当たって床に崩れ――、
「!」
窓がない。光が射していない。まったくの灰色。振り返ると、そこに並んでいるべき部室の扉はまったくない。
「有希!」
ハルヒは長門の元にしゃがみ込んだ。長門は外傷こそ見当たらないが肌や制服が灰や焦げだらけになっている。壁に打ち付けられた衝撃からか気を失っていて、文芸部部室からは噴煙が立ち昇っている。
 
「あら、また邪魔する気なの?」
煙の向こうに人影。声からしても間違いない。
「朝倉!」
もうもうと上がり続ける煙の向こう側を見つめ続ける。
「有希! しっかりして! 有希!」
ハルヒは長門に呼びかけ続けている。俺は長門製の銃を握り直す。
「ふふ。長門さんもいつの間にそんな情にもろい子になっちゃったのかしらね?」
煙の中から朝倉涼子が姿を現した。傷ひとつ、汚れひとつない。
「朝倉! あんた有希に何をしたの!? どうしてこんな……」
朝倉は愉快でしょうがないかのように笑みを浮かべつつ、
「本当ならとどめを刺すところだったのよ? あとは結合解除するだけだったのに、あなたたちときたらやっぱり邪魔するのね。助けてもらったお礼のつもりかしら? お互いがお互いをかばい合うなんて、美談のつもり? わたしにはそうする理由がさっぱりだけど」
やはりインターフェースには本当の意味での感情がないのだろうか。ただ、設定としての性格があるだけで。でなきゃこんなことはできないはずだ。長門……。
 
「ちょっと、有希っ!」
ハルヒの声に長門を見ると、頭部から赤い液体が滴り始めている。
「無駄よ。呼びかけても。言ってみれば瀕死の状態だから。もともとわたしに敵うわけなかったのよ。長門さんも分かっていたはずなのに。わざわざ二人きりになるような状況を自分から作るなんて、バカな子よね」
その言葉に俺は腹の底が熱くなるのを感じる。
「……朝倉。満足か」
「キョン?」
ハルヒが俺に呼びかけているが振り向かない。朝倉は俺に流し目のような視線をよこし、
「えぇ。そうね。おかげでこれまでより随分事態が進展したと思わない? 現に、涼宮さんがこの場にいるでしょう? 急進派は喜んでいるわ」
「てめぇ……」
今すぐ殴りかかりたいところだったが、長門すら片付けちまったこいつに生身の人間が勝てるはずもない。
俺が拳を震わせていると、
「朝倉、……あんたが有希をこんな目に遭わせたの?」
ハルヒの声が飛んだ。朝倉はハルヒに視線を移す。
「そうよ? でもそんなことはどうでもいいの。わたしが見たいのはあなたの今後だから」
ハルヒは無言で長門をそっと壁に預けた。
 
立ち上がって朝倉に近寄り――、
 
「ハルヒよせっ!」

 
「バカ!」

 
バシッ!

 
ハルヒは朝倉の頬をひっぱたいた。思いきり。

 
「…………」
 
唖然として頬を押さえているのは朝倉である。
 
「…………痛い」
 
「当たりまえよ! ぶたれれば誰でも痛いのよ! あんたはそんなこともわからないの!」
 
俺は呆気に取られてハルヒを見た。ハルヒは凄まじい形相で朝倉を真っすぐ見据えている。
俺の見間違いではなく、その目はうるんでいた。
 
「どうして、わたしが……?」
「有希を傷つけたからよ! あたしは自分の団員を傷つける奴は、例え相手が宇宙人だろうが異世界人だろうが許さない!」
 
ハルヒが怒る姿はこれまでだって数え切れないほど見てきた。大体その矛先や捌け口は俺であり、それがゆえに俺が一番こいつの怒る姿を見ているかもしれない。だが、そんな俺でも今回のハルヒの怒り方は圧巻だ。
 
ハルヒは、本気で怒っていた。
 
こんなのを初めて見た。もしかしたら、こいつ自身今までこんなに怒ったことはなかったのかもしれない。
ハルヒは両手を握って全身を震わせたままで、
「有希の痛みはこんなものじゃないわ! あんたにはどうしてそれが分からないの!? どうしてこんなことをするの!」
一番驚いているのは俺ではなく朝倉のようだった。まだ片手で頬を押さえている。まるで今、『痛み』という感覚を初めて知ったかのように。
「どう……して……?」
「朝倉」
ハルヒが鋭く言った。
「……なに?」
朝倉は呆然として、かろうじてハルヒの方に首だけ向けた。
 
「有希に謝りなさい」
 
「……?」
朝倉は言われた言葉の意味が分からないかのように立ちすくんでいる。
「…………どうして?」
「有希を傷つけたからよ!」
ハルヒは朝倉に再度歩み寄って胸ぐらをつかんだ。一方の俺は目の前の光景が今だ信じられず、またハルヒを止めようと思いもしなかった。朝倉は両腕を完全に弛緩させてハルヒにされるがままになっている。
「あや……まる……の? わたしが……?」
俺はここでようやく長門のことを思い出した。振り向くと長門は壁にもたれて、首にも力が入らずくたっとしている。頭部から流れた紅色は、頬を長々と伝って今や首に至っている。即座に俺は長門の傍に寄った。
「長門! 大丈夫か、しっかりしろ!」
長門はぴくりとも動かない。両目は閉じられ、白い肌はあちこちが黒くすすけている。
「長門……」
何の表情もない長門に俺は呼びかける。
「しっかりしろ。目を覚ましてくれ……」
どうしていつも傷つくのは俺じゃなくてこいつなのだろう。なぜ俺はのうのうとしてて、こいつは動かないのだろう。
「頑張りすぎなんだよ、いつも、いつも」
 
俺は長門の小さな顔を抱き寄せた。
 
たくさんの出来事が蘇ってくる。俺が初めてこいつと会った部室での横顔。最初の市内探索で図書館に連れて行ったこと。その後に聴かされた長い話。野球。七夕。カマドウマに孤島。夏の浴衣姿。映画撮影での魔女姿。そして年末に見せた幻の笑み……。
 
「ちくしょう……」
 
長門、死ぬなよな。絶対に五人揃ってSOS団を元の状態に戻すんだからな。
お前は、元通り部室で本を読むんだからな。
なぁ長門。俺はまだお前に借りてない本が山脈ほどもあるんだよ。
一生かかっても読みきれないくらいだ。
そうだ、図書館にも行こう。しばらく行ってなかったもんな。
何万時間だって付き合ってやる。
だから……だから。頼むから、目を開けてくれよ。返事は無言だって構わないから。
目を閉じたままでいるのだけはシャレになってないぜ。長門……。
 
「ご……めん、なさ、い」
 
途切れ途切れの声が微かに耳に届いた。長門じゃない、朝倉の声だ。見ると、ハルヒが後ろで眼光を飛ばしている。
直後、朝倉は膝から力を抜かして床に手をついた。
 
「ごめん……なさ、ごめんなさい……!」
 
声が震えていた。これまで俺は朝倉の二面性をさんざん見てきたが……こんなのは初めてだ。
 
「わたしは……。わたしは……っ」
朝倉は片手で長い髪をかき上げるようにして押さえる。一体何が起きたのだろうか。ハルヒが朝倉をひっぱたいてから、こいつは明らかに様子が違う。
 
「ごめんなさい……」
 
朝倉涼子は、泣いていた。
 
「長門さんに、わたし……何てこと……」
床にうずくまるようにして朝倉は顔を両手で覆った。ハルヒはそれを複雑な表情で見守っていた。さっきまでの止められない火山噴火のような烈火の如き怒りは、もうそこにはないようだった。
 
「……分かってくれたのね」
ようやくハルヒが言った言葉だった。
 
「本当に、ごめんなさい……」
 
俺が見とれている中、ハルヒは素早く朝倉に近寄ると片手を差し出した。
「さ、立ち上がって。有希を病院に連れて行かなくちゃ。急いで」
朝倉はハルヒを忘我の面持ちで見上げていた。
「え……?」
「ほら、早く!」
朝倉は言われるままハルヒの手を取った。ハルヒは朝倉の手を引くと立ち上がらせる。
 
その瞬間――、
 
「これは……」
 
廊下が元通りになっていた。
部室のドアも窓も元通りに整列している。文芸部室の窓には夕陽が射している。
「キョン、救急車お願い」
「あ? ……おう」
俺は半ば無意識のうちに119番をプッシュしていた。
 
「長門さん……ごめんね……。ごめん」
 
朝倉は夕方の廊下で、ひとり泣き続けていた。

 
  • 第九章

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