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  • 涼宮ハルヒのSS in VIP@Wiki(避難所)
  • 間違いだらけの文化祭 Scene3

涼宮ハルヒのSS in VIP@Wiki(避難所)

間違いだらけの文化祭 Scene3

最終更新:2020年03月13日 23:04

haruhi_vip2

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だれでも歓迎! 編集

 演劇ロミオとジュリエットの準備は全体的に見れば順調に進んだ。
 一番セリフが多いやつはさっさと覚えたし、全員の衣装は出来上がり、宣伝のポスターも校内中に貼られた。
 ポスターは画用紙に開催時刻とクラス名を書いた適当なものだ。
 わざわざポスターなんて貼らなくても強制的に体育館に集められることになっている。
 サボることもできるが点呼時にいないと欠席扱いになってしまう。
 だいたいは大人しく体育館で出し物を見るか、居眠りをするのが通例だ。
 そんなわけで、クラスの準備は整って来ていた。一部を除いて。
 
 体育館で衣装を着ての練習が始まった15分後、いきなり中断が入った。
「キョンくん、まだセリフ覚えてないの!?」
 眼鏡をかけた女子が金切り声で非難を口にした。
 文化祭実行委員の彼女は自分のことのように眉を吊り上げている。
 受験生だってのに余裕のあることだ。そういや学年10位以内だったか、彼女は。
 こういう情報はどこからともなく流れてくる。
「あんなセリフ、脳が拒絶して覚えられねぇよ」
「録音して寝てる間に流しておいたら? 少しは入るかもしれないわよ」
 ムチャクチャ言いやがる。
 そんなことして妹に聞かれたら面倒だ。万一親に見つかってこっそりダビング取られた日には首を吊るね。
「キョン、キミの行動でクラス全体の評価が決まることを忘れないように」
 佐々木が俺を見上げる。
「本番でも台本を手に持ってやるかい?」
 全校生徒の前でその醜態は避けたい。
 しかしだな佐々木、俺をここまで追い詰めたのはお前だと思うんだが。
「くくっ、責任転嫁は見苦しいよ」
 台本を書き換えたのは誰の仕業だってんだ。
 実行委員を始めとした女子全員が佐々木案を支持し、男子も面白がってか俺の味方をしてくれるやつは皆無だった。この世は無情だ。
 
「……そういや、ずっと思ってたんだが……」
 俺はロミオの衣装を着ている佐々木を見下ろした。
「何でお前ドレスなんだ?」
 佐々木は何故かジュリエットと間違えそうなドレス衣装だった。
 ちなみに俺は普通に考えてロミオの衣装である。
 えぇー、と子供っぽい答えを返したのは衣装作成係の女子だ。
 練習が中断したのでステージに上がっていた。
「このドレス、キョンくんの希望でしょ?」
 待て。俺はそんなこと言った覚えはない。微塵もない。
 まあ、佐々木の外見を引き立てていると思わなくもないのは認めてやっていい気がするが、断じて俺は言っていない。
 佐々木がそんな無駄な嘘をついたとも思えん。
「おい、佐々木。何を言ったんだ?」
「キョンが女装を嫌がってること、ジュリエットの衣装が男性的だと同性愛に見えるとキミが言ってたこと。この2点を伝えただけさ」
 そのままだな。なぜ変な誤解が発生しているんだ?
 衣装作成係の女子はケタケタ笑った。
「キョンくんの衣装を男物に変えて、同性愛に見えないようにするなら手段はひとつ!
佐々木さんのを変えるっきゃないっしょ。
カノジョのドレス姿が見たいなら最初から素直に言えばいいのに」
 ……誤解だ。おかしな解釈をするな。
 俺は純粋に劇の心配をしてだな……。
「じゃあキョンくんの希望じゃないってことにしても、可愛いでしょ?」
 どうよ、と言わんばかりに胸を張る女子。衣装の出来に自信があるのだろう。
 
 話題の中心の佐々木は黙っている。
 相も変わらずクールだが、その表情は「答えろ」と言ってるようだ。勘だけどな。
 そりゃ当然素材がいいんだから鑑賞会を開きたくなる出来栄えに決まっている。
 しかしだな、好奇の視線に晒されて率直に褒めるのは辛いのだ。
 くそ、まわりのやつらニヤニヤするな。特に男子。野郎のニヤケ面は余計に腹が立つ。
「……悪くはないんじゃないか」
 女子たちが揃って呆れ顔になった。なんだよ。
「はぁ……。佐々木さんも彼氏がこれじゃ大変だよね~」
 いや、だから待て。なんでみんな一斉に頷いてるんだ。
 佐々木からも注意してくれ。
「あのね、わたしとキョンは付き合ってなんかいないの。ただの友達よ」
 女子には普通に喋るんだよな、こいつ。
「ん~キョンくんも佐々木さんも素直じゃないんだから。
2人とも相手役が違う人だったらもっと手を抜いてると思うんだよね。
そろそろ認めちゃえばいいのに」
 一番親しい友達に迷惑かけたくないと思うのは当たり前だろ。
 なんでもかんでも恋愛に結びつけるな。
「くだらない話は止めて練習再開しようぜ」
「一番の懸念事項はキミなんだけどね、キョン」
 悪かったな。
 なんか声にトゲが感じられる。周りの誤解は今に始まったことじゃないだろ。
 
 
 
 ここしばらく俺の精神力は赤信号が点灯し続けている。
 HPも赤い。回復用の薬草を投げてくれるやつが原因なのだから、何を恨めばいいのやら。
 ぐるぐる回った思考は5分ほどで答えを導き出した。
 文化祭を設定したやつらが悪い。
 こんな劇に決めたやつらが悪い。
 一応佐々木も気が進まないことに巻き込まれた側だ、俺への振る舞いに悪意はない……と思いたい。
 最も仲良く付き合ってる友達に実は嫌われてたら、さすがの俺もショックだぜ。
 まあ、普通は嫌いな人間を一番時間を長く共有する相手に選ばないだろう。大丈夫だ。
 無機質な体育館の天井を見ながら俺はそう結論を出した。
 
 体育館を支える金属の骨格は、ところどころにバドミントンの羽やテニスボールといった異物を挟んでいる。
 この学校にバドミントン部はないのだが。
 軽いお遊びで天井に羽を固定するとはバイタリティを無駄に発揮するやつもいるもんだ。
「正式名称はシャトルだ」
「おわっ!?」
 声と一緒に頬に冷たい感触が生まれた。
 ちょこんとしゃがみ込んだ佐々木が俺の頬にコーヒー牛乳を当てている。
 頭がオーバーヒートして体育館のステージにひっくり返っていたので心地良い。
 他の演劇メンバーはさっさと帰って、佐々木が来るまで俺一人だった。
 ステージ外では、部活動で残っている生徒が器具の片付けをしているけどな。
「現在キミはかなりの疲労状態にある。
疲労をおしてする考え事はどのような重大案件かな。
僕が不覚にも競技に欠かせない物を紛失と同義の位置に貶めてしまった状態に興味があるようだが、キミが最優先で案じるべき事は別だと僕は考えている」
 あの羽は佐々木がやったのか。それなら納得だ。
 お前が何でもできるのはお前を知ってるやつの共通認識だぜ。
「買いかぶりだ。僕にもできないことはある。
たとえば、天井に引っ掛けないよう加減してシャトルやテニスボールを打つこととかね」
 テニスボールもお前の仕業かよ。
 狙ってもいないのに軟式の球があそこまで飛ぶものなのか?
 
 佐々木はそこらへんの男子より運動神経が良い。
 何でもこなす性能となかなかの社交性で、男女から人気がある。
 最近知ったが、誰もが認める美少女なせいか、2年までは告白されることも珍しくなかったようだ。
 それが3年になってから激減したとは本人の談。
 原因は……聞くな。俺からは多大な誤解のためだと言っておこう。
 
 ……普通の喋り方してたらどれだけモテたんだろうな、こいつ。
 勿体無い。一般的な中学生の青春を謳歌するのは簡単なはずだ。
 しかし彼氏を作って普通の女の子をやる佐々木というのも俺には想像できなかった。
「キョン、また余計なことを考えてるだろう」
 佐々木は対男用の喋り方で俺に語りかけた。
 右手のコーヒー牛乳は既に俺の顔を離れている。
 早いとこ飲ませてくれ……。佐々木は甘ったるい物を好まないから、俺に買って来てくれたんだとわかるさ。
「僕としては、体育館の屋根とシャトルよりもクラス全員が連帯責任を負う演劇を憂いて欲しい」
 それはちょっと古いぜ佐々木。
 俺は横でしかめ面してるヤツのことを考えてるんだ。
 小言が増えるから言わないでおこう。
「説教で追い討ちは止めてくれ。ギリギリなんだ」
「そのようだね。糖分を摂取するといい」
「ああ、サンキュ」
 俺は上半身を起こして紙パックを受け取った。床に足を投げ出したまま一気に飲む。
 ん、甘いな。疲れてるから美味いぜ。
 佐々木の手にはお茶が握られている。カロリーほぼゼロで大丈夫なのかね。
 俺が青色吐息で登山してる気分な演劇も、佐々木にとっては消耗することじゃないのかもしれん。
「佐々木、セリフ全部覚えてるんだよな。お前が一番多いってのに」
「何も見ないで全員分言える」
 さすがだ。俺とは頭の出来が根本的に違う。
 人間はなぜここまで不公平に出来ているのか。
 地球全体で不満の署名を集めれば軽く過半数を越える自信があるが、あいにく俺は結果を叩きつける相手……神に会ったことはない。
「代わらなくて良かっただろう? ジュリエット」
 やかましい、それで呼ぶな。
 俺は今でも役を降りたいと思ってるんだ。
 
 ジュリエット役の問題点は佐々木が潰してくれたが、それ以上の災厄を作られちゃ困るぜ。
 しかし俺の希望通りに役を交代していたら俺の頭はもたなかった。
 ロミオはジュリエットよりセリフが多い。
 ジュリエットのセリフを覚えきれない俺には絶対務まらない。
 2人が出会った以降の場面はそれほど差がないが、その前にロミオはロザラインという女への片思いで悩み苦しむシーンが入っている。
 意外なことに最初他の女が好きだったんだな、ロミオは。
 ジュリエットに一目惚れして恋心を切り替える。
 恋愛経験の少ない俺には未知の領域だ。
「一目惚れってどういうもんかな」
「突然だな、キョン。まあ、キミがその問いに到るまでの思考は読めるよ。
ロミオの心境が理解できないのだろうね。僕もだ。
僕は経験したことがないから伝聞以上の回答を与えれない」
 佐々木は苦笑して俺を眺める。
 その目はわずかな感情のゆらぎを見せた。
「人伝にしたってあまり聞かない」
 ふーん、『あまり』ね……。
 ドラマや小説の世界でしか聞いたことがないなら、こいつはそう言う。
「僕には理解できない。恋の中でも一目惚れという現象は特にね。
視覚情報をわずかに得ただけで過剰な好意を発生させる。理由の無い好意は不気味だ。
……でも恋愛する自由を奪う気はないさ。僕の価値観が絶対正しいと言うほど傲慢ではない。
ヴォルテールじゃないが、僕にとって嫌な意見でも表明する権利は守られるべきだ。
他人に押し付けることなく生きてくれれば文句は無い。
それが破られるから僕は常々困っているのだけどね」
 饒舌だな。
 
 ちなみに、ヴォルテールは信教と言論の自由を求めたフランスの哲学者だ。
『私はあなたが何を言っても賛成しないが、あなたがそれを言う権利を死んでも護るだろう』という言葉は有名だ。
 自由主義の理念を端的に表した名文句である。
 ヴォルテール自身の言葉ではないとされているが。
 ……以上、前に佐々木が言ってたことの受け売り。
 
「お前に惚れたやつはどこまでしていいんだ?」
「僕に恋愛感情を抱かないのが最善だ。だが、心まで否定はしない。
僕としては気づかれないように黙っていてくれると助かるよ」
「告白する権利はないのか?」
「そこは難しい問題だ。僕の精神状態に少し影響するから、僕の立場で言えば控えて欲しい。
しかし書物や伝聞によると、昇華して次に進むために重大な事らしいね。
嫌だと感じるが強制はしない。僕が拒絶するのは相手の行動や精神を思い通りにしようとする傲慢な人間だ」
 そうか。お前も大変だな。
 ところで、さっきから気になってることがある。
 ……なあ佐々木。
「お前、一目惚れしましたってしつこく告白されたことでもあるのか?」
 ほぼ確信を持って俺は尋ねた。
 その彼には気の毒だが、佐々木の様子からして、嫌な思い出ベスト10にランクインしてると思われる。
「…キミは時々、妙に鋭いな」
 いやなに、お前の様子と外見をもとに考えれば難しくない。
「まあ、そんなことより、だ」
 この話題は打ち切ったほうがいいだろう。
 
 俺は少なくなってきたコーヒー牛乳を一気に飲み干した。ズズズと品のない音がする。
「本番に間に合う気がしねえよ」
「僕の見立てでは辛うじて間に合う」
 ちょくちょく俺の勉強を見てくれる佐々木先生のお言葉だが、今回は信じられないぜ。
 学校授業と塾と演劇の3つを掛け持ちするのは無理だ。
「やる気が足りないな。学習意欲がなければどんな勉強法も効果が薄い」
 罪を咎める目つきだった。
 物覚えが悪い上にやる気がなくて悪かったな。
「キョン、日曜日は空いているね」
 質問ですらないのかよ。
 ああ、朝から晩までフリーだぜ。お前が空けとけって言ったんだろ。
 うるさい妹は春休みになったらまとめて遊んでやると約束した。
「またうちでやるのか?」
 演劇練習が始まってからは、日曜のたびに佐々木がうちに来て俺に練習をさせている。
 必要だと思うから俺も渋々やるわけだが、お袋と妹の邪推には参るのだ。
「僕の家はどうだい?」
「いいのか?」
「ちょうど両親が不在だ」
「そうか」
 佐々木の親を見てみたい気もするが、顔を合わせなくて済むに越したことはない。
 娘が連れてきた異性の友人を見てどう思うのか気になっちまいそうだしな。
 うちの親みたいに変な誤解をしたら気まずいどころじゃない。
「じゃ、お前の家で頼む」
「了解」
 やれやれ、ここしばらく佐々木の顔を見ない日がないな。
 
 
 
 来たる日曜日の朝。
 俺は招かれた佐々木の部屋でテディベアを発見して動きを止めた。驚いたのだ。
 テディベアとはもちろんあれだ。超有名な可愛らしいクマのぬいぐるみである。
 何とコメントするべきだろう。
 初めて佐々木の部屋に入る緊張もあって、相応しい言葉を探すという無駄なことを頭が始めてしまう。
 緊張する必要は全然ないんだがな。ただ友達の部屋に入るだけだ。
 わかっていても意識してしまうのが思春期ってやつだろうか。
 相手にその緊張を知られたくないから表面上は普段通りでいようとして、余計に緊張する。
 この奇妙な感覚は、同級生の女の子の部屋に入ったことがある不慣れな男子なら結構わかってくれると思う。
 しかし佐々木は友達なんだ。リラックスしろ俺。
「キョン、そう固くなられると僕も気になる」
 ……はい、思いっきりバレてます。
 観察眼に優れた佐々木を誤魔化せるとは俺も思ってなかったさ。
「キミにも異性の部屋に対して身構える精神があったとはね。驚きに値する。
この場合はキョンに女性と認識されていた事を喜ぶべきかな?」
 なんだ一体。お前の性別はしっかり覚えてるぞ。
「そう。ならいいんだ」
 佐々木は蛙が鳴くように喉を鳴らした。
 普通の女の子から程遠い笑い方だが、校内上位の容姿は変わらない。
 それを意識した俺の奇妙な感覚は今もなお消えてくれなかった。
 まあ、きっとそのうち慣れるだろう。慣れないと演劇練習なぞできん。
 俺は佐々木から視線を外して、机に飾られた物体を見た。
「……テディベアだな」
 人間の頭ほどの大きさのスタンダードなクマが鎮座している。
 その隣では、白と茶色の小さいクマが1つのハートを半分ずつ持っている状態だ。
 クマがバックに背負っている経済誌や孫子やクトゥルフ神話がシュールといえよう。
 明日発売のファッション雑誌もあるじゃねえか。フライング発売多いよな。
 まあ、ずらっと並んでる奇怪な本さえなければ普通の女の子の部屋だ。
 
 俺の部屋よりだいぶ広い。12畳ほどだろうか。
 でかい本棚が2つ並んでいて、様々なジャンルの本がぎっしり詰まっている。
 人間を撲殺できそうな厚さのSF小説はあまり読まないのだろう。手前にちっこいコアラが飾ってあった。
「意外だが、ハマってるかもしれん」
 我ながら微妙な感想だ。
 俺がよく見ている佐々木のイメージに少々そぐわないが、女子と話してる時の佐々木ならこの部屋に住んでいて何ら不思議はない。
「くく、ベアが僕の手作りだと言ったらキミはもっと驚くのかな」
「…ああ、驚いた」
 少女趣味と、あれが手作りできることの2つでな。
「素人の真似事さ。職人が作るものと比べれば質は悪い。毛並みが不揃いだろう?」
 すまん、わからん。
 ぬいぐるみの毛並みなんて気にしたことがない。
 佐々木お手製のクマも何処が悪いのかさっぱりだ。
 とりあえず、佐々木にぬいぐるみをプレゼントする時は質に気をつけるべきってことだけわかったぜ。
「手作業で毛並みを整えるのは至難だ。それに目の位置が1ミリ違うだけで印象が全く違う。
だからこそ職人が作成したテディベアは必然的に値段が高くなるんだ」
「いくらするんだ?」
「数万から百万以上さ」
 初耳だ。俺には遠い世界の話だ。
「好きな物が何十万もするとは佐々木と付き合う男は大変だな。仮の話だが」
「……つまらない仮定だ。僕は誰かと交際する気はないし、第一自分で買う。高い物は特にね」
 ところで、と佐々木は机に置いてあった劇の台本を手に取った。
「そろそろ演劇練習をしたいと思っている」
「ああ。そうだな」
「では早速始めようか。劇通り、僕の顔を見て話すように」
 お手柔らかに頼むぜ、佐々木。
 
 さて真面目にジュリエットをやるか。
 完全に暗記はしてないが、ほぼ毎日佐々木に鍛えられてるからそこそこ覚えているんだ。
「お前は俺を愛してくれる。でもいくらお前が誓っても、誓いを破るかもしれない。
神も笑っちまうだろうさ。優しいロミオ、もしも愛してくれるならはっきり言ってくれ。
それとな、俺があっけなくお前のものになると思ってるなら、俺は不機嫌に嫌だと言ってもいいんだぜ。
そうすることでお前が言い寄ってくれるのなら……」
 ……これは男としてダメダメじゃねえのか。いやジュリエットは女なんだが。
 この時代、女は男への好意を露わにしない。
 身持ちが固くて簡単には手に入らないと思わせ、求婚を長引かせる。
 時代的にそれが当然だったんだな。
 しかしジュリエットは独り言の求愛をロミオに聞かれてしまった。
「きっとお前は俺の振舞いを軽薄だと思うだろう。
だが、よそよそしく振舞うやつらより、俺のほうがずっと真実の恋人であることを証明してみせよう。
俺が好きなら一緒に生きて欲しい。愛してくれるか?」
 佐々木は部屋の天井を見上げた。
「あの木々の梢を美しく染めて輝く銀色の月にかけて誓います……」
「いや、月に誓わないでくれ。満ち欠けで形を変えてゆく不実な月にかけては駄目だ。お前の愛が同じように変わってしまうといけない」
「ふふっ、心配ですか?」
 優しく微笑む佐々木。
 2人きりの時にそんな風に笑わないで欲しいもんだ。
 情熱を持て余す前に、視界を手に持った台本へ切り替えた。
「それでは何に誓えばよいのです?」
「誓いの言葉なんか言うな。でも、もし言いたいなら、お前自身にかけて誓ってくれ。
お前こそが俺の崇拝する神だ。お前の言葉なら信じるぜ」
 くく、といつもの笑い声がした。
「台本を見ながらは駄目だよ、キョン」
「まだ暗記してねえよ」
「合間に確認してもいいから一括りは何も見ないで言うこと。さっきの長いセリフはできてたじゃないか」
 ……ひょっとしてまたバレてませんか。
 みんなの前での羞恥プレイも嫌だがこれはこれで困る……。
 
 練習を続けて昼になった頃、俺の疲れは富士山並に積もり積もっていた。
 あと1時間続ければエベレストに達するね。
「そろそろ限界だ。休もうぜ」
「仕方ないな。時間も丁度いいから昼食にしよう」
「ああ」
 俺は力なく床に腰を下ろした。

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