さて、今現在俺はとある病院のベッドに寝ている。
左腕と左足はガッチリとギプスで固められており、当たり前だが全く動かせない。ある意味左半身不随である。
と、ここまで表現すればもう俺が左腕と左足の骨を折ってしまったということは理解していただけるだろう。
とりあえずここまでの経緯を簡単に説明することにする。
事の始まりはハルヒが階段で足を滑らせたことだった。
ハルヒより数段下にいた俺はハルヒの悲鳴に驚いて後ろを見た瞬間に足をすくわれ、
そしてハルヒもろとも下の階まで転がり落ち、気付けば腕と足がポッキリと逝っていたというわけさ。
そりゃまあ、怒りの感情も少しは湧き出てきたが、あのハルヒに泣いて謝られたら誰だって許さざるを得ないだろう。
ただ、ハルヒも右足を折ってしまい、同じ病院に入院している。いや、同じ病院と言うと範囲が広すぎるだろうか。
「ねぇキョン、暇なんだけど、なんかおもしろいことない?」
何故か同じ”病室”の隣りのベッドにいるわけだからな。
~キョンとハルヒの入院生活~
不定期保守連載始まるよー\(^o^)/
***
「ところでさ、あたしたちが一緒の病室にいるのっておかしくない?」
そう言われてみるとそうだよな。
「男女を同じ病室に入れておくなんて普通じゃ考えられないわ。この病院PTAに目つけられるわよ」
PTAはどうか知らんが普通じゃないってのには同意見だ。とりあえずナースコールでもして抗議するか。
「えっ・・・・・・ちょっちょっと待って!」
どうした?お前だって俺なんかと一緒の部屋に入ってるのは嫌だろ。
「えっと、あのー、うーんとわざわざナースコールしてまで部屋分けなくてもなーって」
じゃあ次に誰か来たら言うか。
「いやいいの!別にこのままでいいから!キョンも言うのめんどくさいでしょ」
別にめんどくさくは・・・・・・
「だーかーら!このままでいいって言ってんの!」
結局ハルヒのよくわからない意見に強引に賛同させられることとなった。やれやれ。
キョンとハルヒの入院生活保守
***
「きつね」「ねこ」「古泉」「人の名前もいいの?みくる」「ルーマニア」
さてハルヒが暇だ暇だとうるさいので定番のしりとりをやっているわけである。
「アジア」「アイス」「ス?・・・・・・ス・・・す・・・」
スは悩む所じゃないだろ。スイカでも酢昆布でもなんでもあるだろうに。
「す・・・・・・す・・・・・・すき・・・・・・」
あ、悪い、聞こえなかった。
「・・・・・・スキー!スキーって言ったの!」
急に大声を出されて驚いた。ハルヒ、聞き取れなかったのは悪かったが、何もそんなに怒らなくても。
「いいから早く次!」
あー、この場合キなのかイなのかどっちなんだ?
「あーもう!バカキョン!飽きた!寝る!」
いや、まだ夕方の5時なんですけど・・・・・・
キョンとハルヒの入院生活保守
***
本当に5時から寝てしまったハルヒは案の定夜中に眠れないとか言い始めた。
そして結局またしりとりをやっているのである。もう就寝時間は過ぎてるし寝たいんだが・・・・・・
「タンス」「スイカ」「傘」「酒」
「け」か・・・・・・うーんなんだろうな。眠いから頭がちゃんと働いていないな。
「・・・・・・そうだなハルヒ、『結婚しよう』でどうだ。」
「え?ちょっちょっとキョン、いきなりなに言うのよ!」
「本気だぞ?」
「・・・・・・」
「ほらしりとりの続きだ。『う』からな。」
「・・・・・・『うん』・・・・・・」
「『ん』が付いたぞ。俺の勝ちだ。言ったもん勝ちってとこだな」
「・・・・・・負けたわよ。キョンの優しさにね」
・・・・・・毛糸。ほら『と』だハルヒ。・・・・・・ハルヒ?
見ると、さっきまで眠れん暇だと騒いでいた団長様がすやすやと寝息を立てているではないか。
しかもどんな夢を見ているのか知らんが、ニヤニヤと笑いつつ涙を流して寝るという曲芸を披露している。
まったく、わがままなお姫様だこと。
おやすみ、ハルヒ。
キョンとハルヒの入院生活保守
***
さっきからハルヒのベッドから聞こえてくるカチャカチャという音は、さっき古泉が持ってきた
ルービックキューブの音である。確かに暇つぶしには丁度いいだろう。他人に迷惑をかけないしな。
たまには褒めてやろうじゃないか。グッジョブ古泉。
・・・・・・まさか1時間やって1面もできないとは思わなかったが。
こりゃ相当イライラしてるな。古泉も計算外だっただろう。・・・・・・閉鎖空間が発生してないといいが。
しょうがない。実はルービックキューブを40秒で6面完成させられる俺が助け舟を出してやろう。
どうやら1面のうち8つは揃っているようだ。こうなりゃ後は簡単だな。
ハルヒ、まずはその右の面を奥に回すんだ。
「・・・・・・」
お、回した。今日はやけに素直だな。じゃあ次は前後の真ん中の奴を右に回す。
で、さっきどかした奴をそこに入れて、あとは戻せば
「できたー!!!!! キョン、ありがと!」
今一瞬ドキッとしたのはハルヒの反応が思ったのと違ったからだぞ。
間違ってもその100Wの笑顔にときめいたわけじゃないからな。
「・・・・・・ねえ、キョンってもしかしてこれ得意?」
ああ、実は得意なんだなこれが。
「・・・・・・だったらもっと早く教えてくれたっていいじゃない・・・・・・」
すまんな。また詰まったら言ってくれよ。
「今日はこれはもういいわ。なんかおもしろいことない?」
やれやれ、結局俺が話し相手になるのか。
キョンとハルヒの入院生活保守
***
次の日、どうにか片手でルービックキューブができないだろうかと思っていると谷口がやってきた。
来なくていいのに。
「お前せっかく人が心配して来てやったというのにそれはないだろ」
冗談だ冗談。
しばらく3人で適当に世間話をした後、谷口は俺に耳打ちしてきた。
「ところでお前アッチのほうはどうなってる?」
アッチ?
「そろそろ溜まってきた頃じゃねえか?」
溜まる?ああストレスか。
別に溜まってはいない。ハルヒが相手してくれるしな。
「・・・・・・お前、今何と言った?」
いやだからハルヒが相手してくれてるから問題ない、と。
「お前らいつの間にそこまで・・・・・・しかも病院で・・・・・・ナントカ病棟みたいな名前のゲームのやりすぎじゃねえのか?」
何のことだ。
「ちょっと涼宮にも話聞くわ・・・・・・」
と、谷口は向こうのベッドに近づいた。なにやらボソボソと話しているのが聞こえる。
「はあ!?アンタバカじゃないの!?」
「あっちょっと痛い痛いちょっやめルービックキューブは痛いってやめろって角は危ないって」
ガンガンという音が生々しい。
「ちょっとバカキョン!谷口に何喋ったのよ!」
そもそも俺はたいしたことは話していない。谷口はどんな勘違いをしたんだ? ハルヒは顔真っ赤だしさ。
谷口がこぶだらけになって帰ったあと、俺はトマトのように真っ赤になって怒っているハルヒを眺めつつ、
無残にもバラバラになってしまったルービックキューブをどうやって修復しようかと考えていた。
キョンとハルヒの入院生活保守
***
「どうもこんにちは。元気にしてるかな」
今日はなんかどっかで見たような気がする男がノートパソコンを抱えて来た。
「アンタ誰だっけ?どっかで見たことあるんだけど」
「コンピ研の新部長になった者でして」
ああ、どうりで見たことあるわけだ。なんだかんだで関わりはあったからな。
「で、コンピ研があたしたちに何の用?」
「そ、そんな怒らないでくれよ。暇してるって言うからこれを持ってきてあげたんだ」
そう言うと、新部長殿は持っていたノートパソコンを一台ずつベッドの横の棚に置いた。
「長門さん直々に頼まれちゃこっちも断れなくて。あとこの病院無線LAN付いてるらしいね、珍しい」
「有希が?ふーん・・・・・・まあ、アンタもSOS団コンピ研支部のメンバーなんだからね。
これからも団長に気を遣うようにね」
こらハルヒ、また先輩に向かってそんな態度で・・・・・・いやなんかもう本当すいません。
「いや、いいんだよ。もう慣れたからね。でも本当に素直じゃないね、君の彼女」
場の空気が凍った。
「なななななんであたしがキョンなんかの彼女なのよ!!!」
「えってっきりそうだとばかり」
「この!オタク!オタク!」
「いやオタクは否定しないけど、痛っ痛いなんだこれ!?」
それはバラバラになったルービックキューブです。片付けるのは俺です。
「こここここはひとまずたいさーん」
最後まですいません。今度謝らせます。
ハルヒもそんな顔真っ赤にして怒らなくてもいいじゃないか。
「・・・・・・バカキョン」
何がだ。
キョンとハルヒの入院生活保守
***
今日は俺とハルヒが入院してから最初の土曜日である。自分がこんな状況にあるにも関わらず当たり前のように
SOS団を招集するハルヒはどういう思考をしているのであろうか。たまにはメンバーを休ませるなり
自分も休んだりすればいいものを。 まあいいか。古泉と話したいこともあったしな。
「んーなにこれ?ウォーリーを探さないで?」
「あのキャラを探すゲームですか?やってみましょうよ」
とりあえず女子3人組をパソコンで遊ばせてる間に古泉とこっそり話すことにした。
「この状況では電話でも込み入ったことは話せませんしね。メールも危険ですし」
そうだな。さて本題だが、気になることが一つある。
「なんでしょう」
ハルヒの骨折は例の能力で治ったりしないのか?
「ああ、そのことですか。きっと彼女が望めばすぐにでも治ると思いますよ」
じゃあ何で治ってないんだ、おかしいだろう。
「理由は至極簡単なものですよ。つまり彼女はそれを望んでいないのです」
・・・・・・もうハルヒの思考について考えるのをやめていいか?まったくついて行けん。
「いい加減にあなたにもわかっていただきたいものですね。ちなみに僕や機関のほとんどのメンバーの予想は
あなたが退院すると同時に彼女も退院するというものですが、どうでしょう?」
いやどうでしょうと言われても。どこにその根拠があるのかわからん。
「まったく、あなたらs「っひゃああああああああああ!!!!!!」
突然のハルヒの悲鳴に驚きつつ女子3人組の方を見てみると、相当動揺している様子のハルヒと、
普段と変わらずポーカーフェイスの長門と、・・・・・・そんなハルヒを見て微笑んでいる朝比奈さんがいた。
「・・・・・・な、なによこれ・・・・・・」
「涼宮さんって思ったより怖がりなんですね。ふふふ」
・・・・・・何があったんだろうか。
キョンとハルヒの入院生活保守with若干黒いみくる
「・・・・・・わたしだけセリフがなかったのでここで言う。『ウォーリーを探さないで』を見るのは危険。気をつけて」
***
「ほら、これもおもしろそうですよー。見ましょうよー」
「いや、あのねみくるちゃん、そういうのはもういいから、ね?ギャーとか、ね?」
「じゃあ・・・・・・あ、この『信じようと、信じまいと―』っていうの面白そうですね」
「ねえ、なんかそれ怪しくない?ねえってば」
珍しくハルヒが朝比奈さんに主導権を握られている。なんだろう、日頃の復讐だろうか。
「これはちょっと・・・・・・反応に困りますね」
閉鎖空間が出なきゃいいがな。
朝比奈ミクルの復讐~Episode00はかなりの時間続き、その結果ここには相当やつれたハルヒがいる。
結局閉鎖空間が出てしまったらしい。・・・・・・今回は俺は関係ないよな?
ちなみに正気に戻った朝比奈さんは謝ってそそくさと帰っていった。まあハルヒにもたまにはいい薬だろ。
その日の夜中のことである。
「ねえキョン、怖い話してあげよっか」
んー?もう俺は眠いんだが。まあ話したければ勝手に話せ。
その後ハルヒは朝比奈さんに無理矢理読ませられたと思われる数々の話を俺に聞かせた。
「どう、怖いでしょ?」
話し手が声震わせてどうする。あと俺はそういうのには耐性あるからまず効かないな。じゃ、俺は寝るぞ。
「えっ・・・・・・」
それともなんだ。まさか怖くて寝れないとかそんなんじゃないだろ?
「・・・・・・っ!そっそんなわけないでしょバカキョン!あたしも寝るから!別に構わなくてもいいからね!」
図星だったようだ。
キョンとハルヒの入院生活保守with若干黒いみくる
「・・・・・・『信じようと、信じまいと―』は怖い話が苦手な人には推奨しない。気をつけて」
***
「すーすー」
そんなわかりやすい狸寝入りしなくても。ハルヒ、怖いなら別に無理しなくてもいいんだぞ?
返事が無い。ハルヒー、ハルヒさーん、ハールヒさーん、ハルハルー。
「・・・・・・」
・・・・・・逃げろ!ベッドの下に刃物を持った男が!
「ふぇっ!?きゃっ!!」
飛び起きた反動でハルヒはベッドから落ちてしまった。やはりあの話も読んでたか。てかやりすぎたか。
「・・・・・・誰もいないじゃないのバカキョン・・・・・・いや嘘だってのはわかってた、わかってたのよ」
ハルヒは起き上がると俺をキッと睨んだ。いや暗いから見えないんだけどこうなんというか眼光を感じるんだ。
こりゃ相当怒ってるだろう。ハルヒを怒らせると後が怖いからな・・・・・・謝っておこうか。
ハルヒ、なんというかその、スマン。
「いい」
そんな無愛想な返事しないで・・・・・・えーとハルヒさん?あなたのベッドはこっちじゃなくてあっちですよ?
「べ、別にいいじゃない、あんたは黙って寝てりゃいいのよ」
そう言うとハルヒは俺のベッドに潜りこんできた。そのため俺は反射的にハルヒの分のスペースを空けるように
左に寄ってしまった。なんとまあ流されやすいことだろう。
狭いベッドに完全に二人が乗っかった状態になると、ハルヒは向こうの方を向いてしまった。本当にハルヒの行動は
よくわからんが、今俺の右手をハルヒが左手でしっかりと握っているため、もう逃げられないということだけはわかる。
俺のベッドに入ってからすぐに、ハルヒは狸寝入りではない寝息を立て始めた。
逆にこの状況だと俺が寝るに寝られないわけだが・・・・・・やれやれ。
キョンとハルヒの入院生活保守
***
結局一睡もできなかった。
急に寝返り打って顔が近いとか寝息が顔にかかるとか抱きついてくるとか寝息がかかるとか顔が近いとかかかるとか
とにかくそんな状況に置かれて冷静に寝られるほど俺は人間(男?)ができていなかったということだ。
さて朝6時。そろそろハルヒを戻さないと看護士さんが来ていろいろアレなことになるから起こそう、うん。
ハールーヒー起きろー。
「・・・・・・うん・・・・・・うーん・・・あ、おはよ」
やあおはよう。すがすがしい朝だね。俺は睡眠不足で倒れそうだよ。
「ねえねえ、んー」
何だそれは。
「おはようのキス」
夢の相手が誰かは知らんが目を覚ませ。
俺はいつかの消失騒動の時のようにハルヒの頬をつねってやった。
「むぐ・・・・・・う・・・・・・え!? きゃっ!」
ようやく起きたか。ハルヒは一度ベッドから落ちそうになったがなんとか立て直した。
「えーっと・・・・・・えー・・・あー・・・・・・なんで・・・・・・キョンの・・・・・・?」
混乱してるようだ。いや昨日お前から入ってきたんだろうが。
「嘘!?・・・・・・あー・・・・・・あー!」
思い出したか。あとそれからな、夢の中でもおはようのキスはないだろ。
「え!?え!?あたしなんか言ってた!?」
そりゃあもうな、どんな夢かは知らんが現実では俺にねだってたぞ。
「うああああああああバカバカあたしのバカ」
ハルヒは顔を真っ赤にして騒ぎながら自分のベッドに飛び込んでいった。片足折ってるのになんという機動力だろう。
とりあえず何とかハルヒを引き離すことには成功したから俺は一眠りしよう。おやすみ。
キョンとハルヒの入院生活保守
***
そして昼の12時頃俺は起きた。
「あ、キョン起きた?ところで何でそんなに寝てるの?」
いやお前が昨日俺のベッドに入ってきたからだよ。
「・・・・・・ふふーん、あたしがそばにいるからドキドキしちゃって眠れなかったんだ?」
認めたくはないがそういうことになるんじゃなかろうか。
「結構ウブなのね」
うるせーやい。てかお前も話してて顔赤くなってるじゃねえか。
「べ、別に赤くなってなんかないわよ!」
おはようのキス。
「うああああああああ」
キョンとハルヒの入院生活保守
***
「ところでキョンってこの前のテストどんなだったっけ?」
急に俺の古傷を掘り返すようなこと言うな。特に話すことはない。
「戦わなきゃ現実と」
・・・・・・わかったよ。8教科で*72点だ。(本人の名誉のため一部を伏せています)
「・・・・・・あんたどこの大学入るつもりなのよ・・・・・・しかもこの大切な時期なのに学校休んでるし」
休んでるのはお前が原因だろうが。
「・・・・・・ごめん・・・」
しまった、と思った時にはもう遅く、この病室内にはなんとも居心地の悪い空気が充満していた。
なんとかこの状況を打破する画期的な一言を考えようとするも、慣れてないからか全く思いつかない。
こんなとき古泉がいれば何とかしてくれるんだよな。初めてあいつを頼りたいと思ったよ。
しかし先に口を開いたのはハルヒだった。
「・・・・・・じゃあさ、きっとあたしの方が早く退院するから、そのあと毎日来てキョンに勉強教えてあげる」
え? いやいいよ、大変だろ?
「成績上げないととどこの大学にも入れないで落ちぶれちゃうわ。だからあたしが伸ばしてあげる。決まりね!」
聞いてないようだ。しかし空気は戻ったのでまあいいか。古泉がハルヒと俺の退院は同時とか言ってたしな。
次の日にはハルヒの右足は完治し、その日のうちにハルヒは退院した。なんてこったい。
キョンとハルヒの入院生活保守(ハルヒの入院は終わり)
***
今日はハルヒが学校に行ったのだろう。古泉からすぐに電話が掛かってきた。
『何かあったんですか? 機関はまるで大騒ぎですよ』
いや、一応心当たりはあるんだが・・・・・・
『教えてください。授業が始まるまでに』
えーと、一昨日ハルヒが俺が成績悪いから退院したら勉強教えてあげるとか言ってたんだ。
『なるほど。ありがとうございます。全て納得しました』
え?納得できたのか?
『やはりあなたはわかっていないようですね。すいません時間がないので。ではまた』
切れた。・・・・・・なんだってんだもう。
キョンの入院生活保守
***
その日の夕方ハルヒは律儀にもやってきた。来なくていいのに・・・・・・とは言わないが。
「毎日来るって言ったでしょ」
そこまで俺の成績悪いことが気に入らないか?
「気に入らないっていうか・・・・・・あんたの将来を考えてあげてるのよ」
将来って、例えば?
「だから・・・・・・成績悪いとろくな大学入れないでしょ? そしたらまともな会社に就職できないじゃない?
そしたら稼ぎが少なくなってあたしが――あたしじゃない、あんたの将来の嫁さんが大変じゃない」
嫁?まさか俺に嫁ぎたいなんて思ってる奴いないだろうよ。
「・・・・・・きっといるわよ、あんたを好きになる人」
そうかい、じゃあ現れるまで気長に待つとしますか。
「・・・・・・バカキョン」
はいはいバカですよー平均点*4点ですよー。
「そういうのじゃなくてね・・・・・・」
バカキョンの入院生活とハルヒのお見舞い保守
***
「どうせあんたは忘れてるだろうから1年の内容から復習ね」
へいへい。・・・・・・えーと、シン60度「サイン」サイン60度が・・・・・・えー・・・・・・
「・・・・・・わかんないの?」
はい。
「お母様、ハルヒは課せられた使命を遂げることができません、お許しくださいませ」
なんかほんとごめん。
その後のハルヒのスパルタ指導により俺はなんとか三角比を思い出した。
「むしろこれで*4点も取れてたことが凄いわよ」
取れてないぞ。現代文で稼いでたから数学はIIとB合わせて2*点だったな。
「・・・・・・あたしが養うしかないのかなぁ・・・・・・」
バカキョン(学力的な意味で)の入院生活とハルヒの熱血指導保守
***
さらに2時間にも及ぶマンツーマン(男女間でもこれでいいのか?)レッスンにより、何とか中学卒業レベルの
数学を思い出すことができた。これだけ頭使ったのは受験シーズン以来だぜ。
・・・・・・ってハルヒ、何やってるんだ。
「ギプスに落書きしてんの。定番でしょ」
見ると、よくわからん絵やらSOS団エンブレムやら「私はバカです」やら「平均点*4点」やら書いてある。やめろ。
「足の裏にも書いてあげる。見えないでしょ?」
見えないな。てかやめろ。
「よしっと。じゃ、あたし帰るからね。明日も来るから覚悟しときなさい!」
完全に聞く耳持たずモードに突入した団長様は嵐が過ぎ去るかのように去っていった。やれやれ。
なぜかその後谷口が来た。来なくていいのに。
「その性格何とかしろよお前」
悪い。昔からなんだ。
「とにかく俺はお前らがあれだけ一緒にいたのに少しも進展してなかったのが気になって・・・・・・」
谷口はさっきハルヒが何かを描いたであろう足の裏を見て固まった。
「・・・・・・なんだよしっかり進んでるじゃねえか。あー心配して損したぜ。お前ももう少し鈍感じゃなければな」
何の話だ。お前よりは鈍感じゃないだろう。
「いや、確実にお前の方が鈍感だ。神に誓ってな。俺は気付いてるがお前は気付いてないのが立派な証拠だ」
そう言うとその絵を携帯で撮って帰っていった。あ、病院なのに携帯オフにしてないじゃんあいつ。
・・・・・・気付く気付かないって、一体何の話だ?
そのあと看護士さんにもやたらニコニコされるし、ハルヒは一体何を描いたんだろう。
キョンの入院生活とハルヒの見舞いwith谷口保守
***
「おはよう、キョンの様子どうだった?」
「どうだったも何も、これ見てくれよ。きっと涼宮が描いたんだ」
「・・・・・・確実に進展してるんじゃない?これ」
「そう思うだろ?でもキョンの野郎が鈍すぎて結局何も進んでないんだよな」
「涼宮さんもかわいそうだね」
「なーに、そのうち涼宮が折れるさ」
「そしたらくっつくね」
「ああああああああうぜええええええええええええ」
「落ち着きなよ谷口にもいつか春は来るよ正直同意見だけど」
キョンの入院生活とハルヒの見舞い保守~谷口と国木田編~
***
「ハルヒちゃん、今日もキョンくんのお見舞い?」
「あ、はい、あのバカキョンに勉強教えてやらないといけなくて」
「女の勘だけど、きっとあの子にはハッキリ言ってあげないとわかってくれないと思うのよ。
遠まわしに言っても伝わらないというか」
「え?」
「こんなにかわいいんだからもっと自信を持って言っちゃいなさい。はい、ファイト!」
「あっ、えっ?は、はい」
ハルヒは病室に入ってくるなり、足の裏の絵?を黒く塗りつぶし始めた。
「そうよねー、看護婦さんは普通に見れるわよねー、不覚だったわ」
何かぶつぶつ言っている。確かに見てたぞ。そのあと俺の顔を見てニコニコしてたが。あと今は看護士な。
なぜか学校でハルヒにボコボコにされる谷口、という情景が浮かんできたので谷口のことは言わないでおこう。
それくらい人を労わる気持ちは俺にもあるのさ。前回も俺の勘違い?のせいでボコボコだったしな。
「自信を持って・・・・・・自信・・・・・・」
まだ何か言っている。気色悪いぞ。
「キョン」
と思っていた矢先、ハルヒは意を決したように俺の方を向いた。 何だ。
「んー・・・・・・うー・・・・・・」
だんだん顔が赤くなってきた。熱でもあるのだろうか。
「ああダメ!言えない!言えないって!」
何が言えないのかは知らんがそこはもうお前のベッドじゃないんだから暴れるのはよしなさい。
キョンの入院生活とハルヒの見舞い保守
***
「じゃあ今日は古典ね。予習してた?」
全然。
「ペナルティで一発ビンタね」
聞いてないぞ。
ハルヒが腕を振り上げたので俺は思わず目を閉じた。
叩かれると思ったがいつまで経っても打撃がこない。目を開けてみると顔の横数cmのところで手が止まっている。
「・・・・・・手が動かない」
はい?
「叩けない」
・・・・・・お前らしくないぞ?コンピ研の部長にドロップキック食らわしたお前はどこ行った?
「っ・・・・・・もういいわ!古典古典!」
何だったんだ。
キョンの入院生活とハルヒの見舞い保守
***
「そうね、この小テストで高得点出したらご褒美あげるとかしたらあんたもやる気出るかしらね」
出るかもな。
「えーと・・・・・・じゃあ8割以上であたしがほっぺにキ、キスしてあげるとか!」
じゃあそれで頼む。
「えっ!?ちょっと・・・・・・いいの?じゃなくて、突っ込みなさいよ!」
あいにく今は突っ込む気力が無い。というか自分の冗談で自分で照れるな。
「いやだってまさか肯定されるなんて・・・・・・」
それにどうせ8割なんて取れるわけないんだから変わらん。
「・・・・・・じゃあ3割以下で罰ゲームでキス・・・・・・」
うん、まあそれならほぼ確実だろうが・・・・・・なんかお前にメリットあるか?
「・・・いやだから突っ込みなさいよ・・・・・・」
だから照れるなら言うなって。
キョンの入院生活とハルヒの見舞い保守
***
「涼宮!キョンが大変だ!」
「えっ!?本当!?」
「今電話が掛かってきて・・・・・・容態が急変してちゅうちゅ、集中治療室に運び込まれたって」
「・・・・・・あたし行ってくる!」
「え?あ、ちょっと」
「どうしよう国木田、涼宮の奴冗談本気にして授業ほっぽらかして行っちゃったぜ」
「流石に言って良い冗談と悪い冗談があると思うよ。噛んでたし」
「キョンにメールしとかないとな・・・・・・」
キョンの入院生活とハルヒの見舞いと谷口氏ね保守
***
ん?谷口からメールだ。
『今から行く奴に「全部冗談だった」と伝えてくれ(^o^)/~~ 後は頼んだm(_ _)m
俺の命はお前に懸かっている(^ー゚)b』
顔文字がうざい。
「キョン!!!・・・・・・え?え?」
うわビックリした。ってハルヒ、授業はどうしたんだ。
「え・・・・・・だって容態が・・・集中治療室・・・・・・って谷口が・・・」
ああ、そういうことか。とりあえずこのメールを見てくれ。顔文字うざいが。
「・・・・・・冗談・・・・・・はあぁ」
するとハルヒは俺のベッドに力が抜けたようにもたれてしまった。
「わざわざこの寒い中この格好のまま走ってきたのに・・・・・・授業もサボっちゃったし」
そりゃご苦労さんだったな。でも俺を心配してくれてたってことだろ?ありがとうな。
「・・・・・・でも逆に嘘で良かったわ。本当にキョンが死にかけてたら大変だし」
そうそう、お前はそういう前向きな考えが似合ってるぞ。ところで授業はいいのか?
「・・・もう学校に帰るわ。あたしが大学行けなくなったら本末転倒だしね。谷口もボコボコにしてやらないと」
あ、ごめん谷口。お前の命守れそうにないや。自業自得だけど。
「・・・・・・キョンは急にいなくなったりしないわよね」
帰り際にこんなことをを訊いてきた。
まあ、そう簡単にぽっくり逝ったりはしないだろうよ。俺みたいな幸の薄い人間は長生きするものさ。
「・・・・・・そうよね、ありがと。また学校が終わったら来るわ」
キョンの入院生活とハルヒの見舞い保守
***
「こぉんのバカ!!!」
「うおわっ!!」
「あんたのせいで授業サボっちゃったじゃないの!!」
「いやだっていくらキョンが重体でも授業を抜けるのはないだろうよ」
榊「いや、あの状況は行くだろ」
阪中「行くのね」
由良「行きますよね」
山根「行くだろ・・・・・・常識的に考えて」
~中略~
岡部「あれは行かない方がおかしい」
「29対1で谷口の負けだね」
「というわけで責任持ってボコボコになりなさい」
「アッー!」
自業自得谷口保守
***
さて、と。今日は物理だったか?少しは予習しておかないと。
・・・・・・点数が悪かったときのハルヒのこれ以上ないくらいの悲しそうな顔を見たくないしな。
なぜ俺のためにそんな悲しむのかはわからんが。
「キョン!ちゃんと予習して・・・・・・してる・・・・・・?」
なんだそのUFOを見るような目は。俺が勉強してるのがそんなに珍しいか。
「も、もちろんいいことよ。やる気出してくれたみたいでうれしいわ!じゃ、小テストね」
「予習しても結局これなのね」
お許しください団長様。
「こんなんでT大行けると思ってるの?」
いや行けませ・・・・・・T大?T大と言ったか?俺にそんな大学行けるわけが・・・・・・
「あたしが行くんだからあんたも行くのよ!そうじゃなきゃSOS団がバラバラになっちゃうじゃない!」
お前T大行く気だったのか。いやそれでも俺は無理だし朝比奈さんは・・・・・・
「あら、みくるちゃんもT大行くのよ。鶴屋さんと一緒に」
マジですか。
「マジよ」
そういや最近来ないことが多かったような・・・・・・長門はまあいいとしてやはり古泉も?
「そうよ」
あれ?もしかしてSOS団って勤勉クラブ?
キョンの入院生活とハルヒの見舞い保守
***
そういや明日には腕のギプス取れるってさ。
「ほんと!?良かったじゃない!」
この調子で行けばもうじき退院できるだろ。
「・・・・・・ごめんねキョン、あたしのせいで・・・・・・」
だからそれはもう十分謝ってもらったからいいって。それよりも俺は元気なハルヒが見たい。
「え?」
おっと、要らないことまで口走ってしまった。気にするな、お前はいつでも十分輝いてるからそれでいい。
「え?え?」
あれ?何で俺こんなことを? 今日のテンションはなんかおかしいな。何だろう、T大のショックか?
「わかったわ!これからもずっと責任持って輝いてあげるから感謝しなさい!」
まあ、ハルヒの機嫌がいいみたいだし何でもいいか。
キョンの入院生活もそろそろ終わり保守(ぶっちゃけ骨折がどのくらいで治るのかわからない)
***
「・・・・・・」
久々にハルヒはルービックキューブを回している。とは言っても完成させるためではなく、ひたすら崩すためだ。
俺の両手が自由になったから実力を見せろ、ということらしい。
いくらやっても大して違いは無いのに、ハルヒはこれでもかと言うくらい崩している。まあ、満足するまでやればいいさ。
「・・・・・・もういいかしらね」
はいはいっと。
「5分でできたら褒めてあげるわ」
そりゃまた結構な余裕があるな。はいスタート。
はい完成。今日は調子良かった。
「はやっ! 32秒って・・・・・・」
世界レベルだと10秒台とかザラだぞ。
「1面に苦労してたあたしって一体・・・・・・」
それより褒めてくれないのか?
「え?あー、うん、えーっとね・・・・・・」
どうやら5分でできるわけがないと思っていたらしく、褒め言葉を賢明に探しているようだ。
「・・・・・・うーん、惚れそうになった?・・・・・・違う違う違う!」
勝手に一人突っ込みを始めた。ルービックキューブで惚れられてもねえ。
「ま、まああんたにしては上出来じゃない!?」
そんなもんだろうと思ったよ。
キョンの入院生活とハルヒの見舞い保守
***
「・・・・・・へっくし!・・・・・・うー」
おいどうした?風邪か?
「昨日のアレで体冷しちゃって・・・・・・スカートがこんな短いのが悪いのよ」
最近寒いもんな。しかし女子は大変だよな、こんな寒いのにスカート穿かなくちゃいけないし。
「女は辛いのよ。というわけで布団を貸しなさい。足が冷えてるの」
嫌だ。俺だって寒い。
「じゃあこ、こっちから行くわよ」
そう言うとハルヒはいつかのように勝手にベッドに潜りこんできた。またか・・・・・・
その瞬間である。
「キョンくーん、おみまいだよー!あっハルにゃん!」
「あ」
あ。
「い、妹ちゃん!これはね?違うの、だからね?寒かっただけなのよ!わかる?寒くてね」
「あたしもはいるー!」
言うまでも無く俺は妹のボディプレスを食らった。
現在俺のベッドは3人がひしめくというなんとも定員オーバーな状況にある。
実際妹だけで良かった。親も来てたら何言われるかわからないしな。
「ねえハルにゃんはリンゴのかわむけるー?」
「もちろんよ。女ならできなくちゃダメよ」
「やってやってー」
ハルヒの皮むきは相当上手かった。きっといい嫁さんになれるよ。
「なんとなく素直に喜べないのよね」
なんでだよ。
キョンの入院生活とハルヒと妹の見舞い保守
***
そんなこんなありつつもようやく足のギプスを外して退院できる日がやってきた。
それにしてもあの電動ノコギリは怖いな。いつかテレビで新型のカッターが開発されたとか見たが・・・・・・
足の裏の絵の解読を試みるもしっかりと塗りつぶされていて無理だった。永遠の謎となったか。
「キョン!退院おめでと!」
お、迎えにきてくれたのか。ありがとな。
「さ、行くわよ」
どこにだ。
「学校よ、学校。今日もSOS団の活動はあるのよ!」
まさかこの病み上がりの身体であの坂を登れと?
「いいから文句言わずについてきなさい!」
やれやれ。
キョンの退院とハルヒのお迎え保守
***
入院で衰えた足で坂を登るのは流石に堪えたが、なんとか部室まで這ってたどり着いた。
「はい、入りなさい!」
勧められるがままに俺はドアを開けた。そこで俺が見たものとは!
「「「「「退院おめでとー!!」」」」」
華やかに装飾された部室と団員三人、名誉顧問になぜか俺の妹、そしてクラッカー。
これは・・・・・・?
「はい!主役も来たことだし、『ハルにゃんキョンくん退院記念”ラブラブ”パーティー』を始めるよっ!」
「えっ!?ちょっと鶴屋さん、あたしラブラブなんて入れてないわよ!?」
「いーのいーの気にしない!ちょっとの遊び心は必要にょろよ?」
どうやら俺たちのためにパーティーを開いてくれたらしい。なんて皆優しいんだろう。
手書きの看板を良く見るとパーティーの前に赤ペンで小さくラブラブと書いてある。きっと鶴屋さんだろうな。
キョンとハルヒの退院パーティー保守
***
「じゃあ僭越ながらあたしが乾杯の音頭を取らせていただくにょろ!
ハルにゃんキョンくん、お見舞いにいけなくてホントごめんね!受験近くてちょっと忙しくてさー」
なんてったってT大ですもんね。
「ありゃ?知ってたのかい?そうなんだよねえ。しかもみくるもだよ?イメージと違うよね!
おっと話がずれちゃったにょろ。ま、あたしが行けなくても毎日二人でお楽しみだったみたいだったからねー。
で、どこまで行っちゃったのかな?」
「つ、鶴屋さん、あたしとキョンは別になにも・・・・・・」
「おんやー?そいつはもったいないねえ。若い男女が一つの部屋にしかもベッドまで用意されてたってのに。
おっとまた脱線。まあとにかく、ハルにゃんとキョンくんの全快を祝いまして、かんぱーい!!」
「「「「「「かんぱーい!!」」」」」」
おいどうしたハルヒ、酒も入ってないのに真っ赤だぞ。
「う、うるさい!気にしなくていいのよ!」
キョンとハルヒの退院パーティー保守
***
「涼宮さん、ちょっといいですか?」
「なに?みくるちゃん」
「素直に好きと 言えない君も 勇気を出して Hey Attack」
「・・・・・・それ・・・・・・」
「これ、涼宮さんが書いた詞じゃないですか」
「そうだけど・・・・・・」
「勇気を出してアタックすればきっとキョンくんだって振り向いてくれますよ!ファイトです!」
「・・・・・・ありがとうみくるちゃん。あたし頑張る」
パーティーの片隅での出来事保守
***
そんなこんなで(今日使うの二回目か?)パーティーもお開きの時間となった。
受験生もいるしハルヒにしては早めの時間設定だったな。
「みんなお疲れ!今日はありがとう。後片付けはあたしがするからみんな帰っていいわ」
「いや、僕も手伝いますよ?」
「あたしも手伝います」
「わたしも」
「勉強なんて1日サボっても変わんないにょろよ」
ちなみに妹は寝た。いや、流石にお前だけってのは・・・・・・
「何言ってるの?キョンもやるに決まってるじゃない。雑用係が休んでどうするのよ」
結局そういうことですか。まあ皆も手伝ってくれるみたいだし・・・・・・
「それならば、僕は帰らせていただきますね」
「あたしも帰ります。あ、妹さんはあたしが送ってあげますね」
「帰る」
「そういうことなら帰らせてもらうよっ!」
あれ?さっきと話が違ってません?そういうことならって・・・・・・
キョンとハルヒのパーティー後保守
***
やっぱりあの量を二人で片付けるのは辛いものがあった。
「でもこういうのって 仕事したっ! って感じにならない?」
まあな、たまにはこういうのもいいかもしれんな。
って雨降ってるじゃねえか。傘持ってきてないぞ?
「あたしのが一本あるからそれでいいじゃない」
あのときみたいにか?
「うん・・・・・・ダメ?」
いやいいけどさ。お前はいいのか?
「べっ別に相合傘はカップルがやるものとかそんなんはどうでもいいのよ!意識するから恥ずかしいの!」
なんか話が飛躍したな。
キョンとハルヒのパーティー後保守
***
やることも終わったので俺たちは帰ることにした。
そして適当に雑談をしつつ部室棟の階段を下りた、その時だった。
「きゃっ!」
俺の隣りでハルヒはまたも足を滑らせた。このままいつぞやの悪夢が繰り返されるのだろうか。
結果として繰り返しはしなかった。なぜかって? 俺がハルヒをしっかりと抱きかかえていたからさ。
「キョン・・・・・・あ、ありがと・・・・・・」
お前にもうケガなんてさせねえよ。
と、上の気障なセリフを喋ったのは誰だ。俺か。俺なのか。またこの前みたいなテンションなのか俺は。
しょうがない、このテンションのまま最後までいっちまえ。
「え?ちょ、ちょっとキョン!な、なにするのよ!」
何って背中と膝裏を支えて抱きかかえてるだけだぜ?世間的にはお姫様抱っこと言うらしいが。
降ろしてほしいか?
「・・・・・・別にこのままでもいいけど・・・・・・」
ダイヤモンドは大事に運ばないとな。
「・・・・・・」
ありゃ、流石に今のはクサすぎたか?
「・・・・・・前から言おうと思ってた大事な話があるんだけどいい?」
ああ、いいぞ。聞いてやろうじゃないか。
そう返すとハルヒは俺の首に腕を回してきた。
「あたしね、ずっとキョンのことが・・・・・・」
二人は階段から落ちたが、そのおかげで――
新たな階段を一段上ることができたのかもしれない。
キョンとハルヒの入院生活保守 fin
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