涼宮ハルヒのSS in VIP@Wiki(避難所)
女古泉’ちゃん’の憂鬱 第5話「私の狼さん。 THE OTHER SIDE OF TDDN (第二版)」
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「はぁ・・・」
部屋で僕は彼の写真を抱きながら溜息を吐いた。
叶わない恋なんてしたくない。けど日に日に膨らむ恋心。
「・・・キョンくん・・・」
いつの間にか、僕の部屋には彼の等身大抱き枕の他にいろいろ増えた。
彼の等身大の人形や、彼の等身大毛布。等身大かけ布団。等身大敷布団など。
立派なストーカーまがいっていうか変質者だ。
でも僕はそれだけ好きなのです。彼が本当に好きなのです。
もし、こんな境遇じゃない普通の女の子だったら僕は彼と手を繋げたでしょうか。
どうして僕は僕なんだろう。どうして男装する破目になったのだろう。
どうして超能力者なんかになってしまったのだろう。選ばれてしまったのだろう。
ただの女の子だったら。
―――こんなに苦しくなることも無かったのに・・・。
第5話「私の狼さん。 THE OTHER SIDE OF TDDN (第二版)」
「はぁ・・・」
このまま溜息ばっかりついていても埒が明かない。
僕は私服に着替えようと思いタンスを開いた。
「・・・あれ?」
ゴスロリ、ゴスロリ、ゴスロリ、甘ロリ、ゴスロリ、ゴスロリ、蒼星石、ゴスロリ・・・以下略。
私服が無い。全部ロリータファッションやコスプレ衣装になってる。
これでは外にも出れないじゃないですか!!
こんな事する人は僕の知る限りたった一人しかいない。
「・・・絶対森さんですね・・・」
僕はズカズカと森さんの部屋まで大またでパジャマ姿で突撃した。
特攻服でもあったらそれを纏ってバイクで突撃していたかもしれませんね。
「森さん! 居るんでしょう! 開けてください! 森さーん!!」
しばらく扉をドカドカと蹴りまくってみましたが一向に開く気配が無い。
居留守でしょうか? 無駄な事をしてくれますね。
イライラとしながら最終手段として手榴弾を手にした時でした。
ガチャッ。
扉がいきなり開きました。急いでさっとポケットにしまいましたよ、当然。
栓は・・・抜いてない筈なので大丈夫・・・な筈。
「ん~? あ~、いっちゃんだ☆ どうしたの?」
いつものように実年齢[禁則事項]歳とは思えない童顔ロリータの森さんが出迎えてくれましたよ、笑顔で。
「僕の私服をどこにのけましたかー!?」
「私が買い揃え直したけど不満かな?」
「あんなので外出歩けるわけないでしょうがッ!!」
「ぐすっ・・・うぇ~ん。。。いっちゃんがいじめるぅ~」
「いじめてないですよ」
「いっちゃんは私が買った服を着たらいいの~ッ!むぅー」
「・・・仕方ないですね。森さん、覚悟」
*しばらく音声のみでお楽しみ下さい。
わわわ!?いっちゃん何をするの!?
貴女の服を着させてもらいます!!
や、やめてー!んっ・・・勝手にタンス開けたららめぇぇぇ!!
では貴女の着ている服を・・・奪うのみです!!
きゃっ・・・んぅ・・・あっ!ひゃんっ!そこはらめぇなのぉ!あんっ!触ったららめぇなのぉぉぉおおおっ!!
ぴくぴくして可愛いですね・・・じゃあ、この服借りますね。
ぐすっ・・・お嫁にいけないよぉ。。。責任取ってよぉ。。。ぐすっ。
何を言ってるんですか。私服を貸せと言ってるだけですよ。
いっちゃんのパジャマ貸してくれるなら。。。
解りました。では帰ってくるまで、どうぞ。
わ~い☆ なら良いよ♪
「ふぅ・・・」
やっと服を奪うという形で借りて外に出た僕。
川辺には前に行って偉い目にあってるので今度は違う道を散歩してみた。
人通りの多い商店街に入ってみると色々と店が並んでいる。
その人並みを見るだけでも面白くて、随分と良い暇つぶしになりますね・・・。
行き交う人は様々。
何を思って通り過ぎて、何を思って歩くのか。
「・・・・・」
僕は何を思ってここに居て。何を思ってここを歩くのか。
「・・・・・」
ただ一つ。彼に会いたい。
そんな心情のままふらふらと僕はイトーヨーカ堂へと入っていった。
別にやりたい事があるわけじゃない。
ただ無意味に歩いて頭を冷やしたいだけだ。
「・・・あ」
そして、見つけた。彼を。何て出来すぎたストーリーでしょうか。
「ん? あぁ、この前川辺で不良に絡まれてた人か」
「はい、あの時はお世話になりました」
「別に俺はただ当然の事をしたまでだ。そうとも、気にする事は無いさ」
「ふふっ。そうですか。そう言って下さると僕も助かります。あ、そうだ。お名前なんて言うんですか?」
「何でだ?」
「いえ、助けて貰ったのも何かの縁かと思いまして」
「なるほどな。俺は、みんなからはキョンって呼ばれてるが、本名は―――」
彼は自分の名前を口にした。どうしようかな。ちょっと考える。
彼の名前を呼ぶのも良い。けど、やっぱり彼はキョン氏じゃないと何か落ち着かない。
「じゃあ、キョンくんって呼ばせて下さい」
「俺はキョンって呼ばれる運命なわけね、やれやれ。で、お前の名前は?」
んー、どうしよう。
本名は古泉一樹に相違ないけど、彼の知ってる古泉一樹は男だし、
今彼の前に立っている本当の僕は女だし、身長は低いし、童顔だし、
かと言って古泉一樹を名乗ったら色々と彼の事だから考えるだろうし、
んー・・・良い偽名は無いかな・・・偽名、偽名・・・んー・・・。
古泉一子? なんか駄目だ・・・えっと・・・えっと・・・・・。
こいずみいつき、だから・・・こいずみ・・・いずみ。あぁ、いずみって苗字良いなぁ・・・。
あとは名前・・・名前・・・んーと・・・いつき、だから、みつき。何か違う・・・えっと・・・えっと・・・。
こなた・・・じゃ駄目か。えっとえっと・・・。
うん、よし、そうだ。
「泉かなたって言います」
・・・何だろう。
口に出してから色々と聞いた事あるような気がしてきた・・・。
頭の中に泣きボクロがないバカデカいアホ毛のない小さな可愛い女の子の姿が・・・。
「へぇー・・・俺の友達と名前似てるな」
・・・あ、そうか。彼の知り合いに居ましたね、泉こなたさんが。
その母親の名前が泉かなたさんでしたっけ。もう死んでしまいましたけど。
これは大失態ですね・・・いや、もう名乗った以上は仕方がありませんか。
「そうなんですか。まぁ、名前が似てるって事はよくある話ですよ」
「あぁ、そうだな」
「えっと、これから暇ですか? 良ければ、この前の恩返しをしたいのですが・・・」
「いや、気を使わなくて良いよ。あれは俺達が勝手にやった事だ」
「でも・・・」
「気にしなくて良いさ。いや、本当に。それに俺、おつかい頼まれてる最中だから」
「そうですか・・・」
「あぁ、すまないな」
彼はそう言ってすっと身を翻す。その後姿に、
「あ、あの!」
あぅ、つい大声が出てしまった。ちょっとばかりの失態ですね。
「なんだ?」
「また。。。会ってくれますか?」
「・・・ふっ。面白い奴だな。あぁ、いつでもどうぞ。じゃあな」
彼はそう言って颯爽と駆け足でエスカレーターを上り、立ち去った。
その姿を見て思う。素の僕で彼に出会えて良かった。素の僕で彼とお話出来て良かった。
素の僕が貴方に会える可能性は低いから。また今度からは男のフリをした素ではない僕が貴方の前に立つから。
「・・・っ」
だからこそ余計に思ってしまう。
「・・・ぐすっ」
彼とどうして普通に会えなかったのでしょうか・・・って。
普通に会って、普通に友達になって、普通に告白出来たならどんなに良かったんだろう。
なんで僕は超能力者として選ばれてしまったんだろう。
なんで僕は男の子のフリをしなきゃいけないんだろう。
もう結構長い間耐えた事なのに考えるとなんか寂しくなった。
それで何となく、屋上に出る。
子供達がキャッキャッと遊びまわるのを見て、一人空を見上げる。
あの雲はどうして雲なのか。空はどうして空なのか。彼はどうして彼なのか。
どうでも良い思考が飛び回るからだろう、
「・・・・・うぅっ・・・」
自然と流れ出る涙を堪えられなくて、
ひやっ、
「んひゃっ!?」
不意に首筋へと来た冷たい刺激に思わず悲鳴を上げた。
振り向くと彼がそこに居た。
「あぁ、すまん。泣く程に驚かれるとは思わなかった。これ、やるよ」
そう言って彼は僕にカルピスを渡してくれた。
「・・・ありがとうございます」
「気にする事はない。たまたま見かけたからさ」
「あ・・・また借りが出来てしまいました」
「やれやれ。律儀だな。ま、次会った時に缶コーヒーでもくれればそれで良いさ」
「・・・そうですか」
そう言って彼は僕の横に座った。
「若干暇だ。少し、話をしないか?」
「はい。喜んで!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
それから少し時間が過ぎた。不意に彼が時計を見て立ち上がった。
もう帰るんだ。
悲しいのは山々だけど、楽しい時間はずっとは続かない。
ここにずっと二人で座る事なんて出来ない。解ってる。
明日から、また僕は男の子の格好をして仮面越しに彼と会う事になる。
素の僕として彼に接する機会は当分の間は来ないだろう。
心を暗くするそれらの真実。だけど、僕の心が暗くなる事はなかった。
「そろそろ帰らないと親に怒られちまう。また会おうな」
また会おうな。
その言葉に少しだけ胸がキュンとしたからだ。
「はい。またいつか」
自然に頬が緩んでしまう。
貴方と、素の私が会えるから、またねと言ったのですよね。
男の古泉一樹としてではなく、女の古泉一樹として。泉かなたって偽名使ってるけど。
いつか、全てを打ち明けれるかな。僕が古泉一樹だって。
古泉一樹は実はこんな小さな女の子なんだよって。
彼が去ってしばらく、その場に座っていた。
夕陽が沈んでいくのをただただゆっくり見つめて。
「・・・僕も帰ろうかな」
ふと手に持っているカルピスに気付いた。そう言えば貰ったんだっけ。
ぷしゅ、という音と共に開いたそれを一口飲む。
彼から貰ったカルピスは、甘酸っぱかった。
・・・・・・・。
『機関』に戻り、森さんに服を返すべく森さんの部屋を訪ねました。
「森さーん。返しに来ました」
「はーいなの☆」
ガチャッ。
開いた扉の隙間から僕のパジャマを着ている森さんが出てきて、
絶句。
ぼ、僕のパジャマが・・・僕の、僕のパジャマに・・・・・。
「変なフリフリのレースが付いてる!?」
「ロリータっぽくしなきゃ駄目りゅん☆」
な、何て事を・・・! それが唯一最後の普通のパジャマだったのに・・・!
あとでユニク□に出かけましょう。
そして買ったパジャマは金庫に大切に保管しましょう。
じゃないとこの人に全てとられて改造されてしまいます。
普通こそが一番なのです!
「森ー」「生物(なまもの)が逃げたぞー」
「あ、こらー! 待てなのですぅう~!!」
「真祖ビーム!」
「いたいたい~。だけど、おもちかえりぃ~☆」
「ふにゃー!!」
・・・・・・・。あぁ、そうか。
この『機関』に居る限りは普通なんてありえないですね・・・。
「古泉」
「何でしょうか、新川さん」
「・・・大事な話がある」
「・・・大事な話?」
「生徒会長のアナルを掘りたいから手伝え」
「死ね」