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  • 涼宮ハルヒの経営I 5章

涼宮ハルヒのSS in VIP@Wiki(避難所)

涼宮ハルヒの経営I 5章

最終更新:2020年03月18日 21:48

haruhi_vip2

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だれでも歓迎! 編集

 
5 章
 


 
 それから数日、長門は会社を留守にしていた。物理学の学会で発表があるとかで遠方に出張していて、今日帰ってくるはずだ。
 俺は駅前のケーキ屋でスイス風ケーキを買って長門のマンションを訪ねた。入り口でインターホンを押すと、もう帰ってきているらしくいつもの無言でドアを開けてくれた。エレベータで七階まで上がり、踊り場まで来ると七〇八号のドアだけが少しだけ開いているのが見える。長門はいつも、俺が来るのをドアの前でじっと待ってくれている。
「おう、おかえり」
「……ただいま、おかえり」
「研究会はどうだった」
「……いつもどおり」
「そうか。おつかれさん」
こいつなら四年も五年も待たずにさっさと博士号を取ってしまえそうなのだが、大学院にいるのはハカセくんのためで、本人はさほど学歴を必要とは感じてないらしい。まあ人間の作った称号だか。将来は長門博士と呼ばないといけないかもな。
 
 キッチンに入ると、だいぶ様変わりした雰囲気だった。前は小さな冷蔵庫しかなかったが、三ドアの大型冷蔵庫とか水蒸気で調理するオーブンレンジなんかが揃っていた。食器棚に積まれた食器もカラフルなものが増えたし、コーヒーメーカーやフードカッターなんかも並んでいる。
 
 俺がたびたび来るようになってから料理のレパートリーも増えた。キッチンの棚にフレンチにイタリアンに洋風一式、京料理に中華、メキシカンからハワイアン、アフリカンのレシピ本が並んでいる。すべてをマスターしたのかどうかは分からないが、イボイノシシのケニア風ソテーだといって食卓に出されればポレポレ言いながら食ってしまいそうだ。
 
 俺は棚の上から紅茶の缶を取った。そんなに高いブレンドでもないが、北口デパートの専門店で二人で買ったものだ。その隣にペットのエサの缶詰が積んであるのに気が付いた。キッチンの床に小さな皿が二つ並んでいて、星の形をしたペットフードが入っていた。
「長門、犬か猫か飼ってるのか」
「……猫」
見回してみたが、その気配はない。確かに、シャミセンと同じ猫独特の匂いがする。
「どこにいるんだ?」
「……いつもはいない。ときどき、現れる」
「って、もしかして野良猫?」
「……そう」
マンションの七階の部屋まで登ってくる野良猫って、どんなやつだろう。たぶん他所んちの猫がたまに紛れ込んでくるのだろう、と、俺は勝手に解釈した。だいぶ前にメガネの長門に猫を飼えと勧めたことはあるが、この長門はそれを知らないはずで、それはそうとこのマンションってペット禁止じゃなかったっけ。
 
 紅茶のポットにお湯を注いでいると足元でミャーと鳴き声がした。見ると、小さな黒い仔猫が足にまとわりついている。しっぽをピンと立てて俺の足に体をこすりつけるようにしてぐるぐる回っていた。鼻のまわりと両方の前足だけが白い。
「おう、こいつか」俺は仔猫を抱き上げた。「名前、なんて言うんだ?」
「……言えない」
「言えない?まだつけてないのか」
「名前はある。……でも、言えない」
「なんだクイズか?えーっとだな」
俺は冷蔵庫から牛乳のパックを取り出して猫の皿に少し注いでやった。小さなピンクの舌がチロチロとミルクをなめはじめた。皿の底が見えるまでなめ回し、満足したらしく毛づくろいをはじめた。その仕草がかわいくて、俺は海産物ファミリー的アニメな猫の名前で呼んでみた。
「おい、タマ」
仔猫は耳の後ろを二度ほどかいて、消えた。俺は目の前でなにが起こったのか理解できず、長門の顔を見た。
「今の、見たよな?」
俺が言う、この“消えた”というのはどこかに行ったとかいうんじゃなくて、本当にスッと消えたのだ。
「……この子は、ふつうの猫じゃない」
次の瞬間、仔猫は長門の腕の中にいた。
 
「……この子は、量子的存在を保持している」
ええとつまり、もっと分かりやすく教えてくれ。
「……名前を呼ぶと、居場所が分からなくなる」
「名前はなんて言うんだ?」
「……ミミ」
ちょっとためらってから長門がその名前を口にすると、仔猫は腕の中から消えた。
「また消えたな」
「……名前を呼ぶと存在が曖昧になる」
「じゃあ、呼ぶときはどうするんだ?」
「イメージを想像すれば現れる。あるいは、この子が自分が気が向いたときに」
試しに姿を思い浮かべてみた。すると、再び長門の腕の中に現れた。まん丸い目が二つ、なにごともなかったかのようにこっちを見ている。
「名前を言っちゃいけないのか」
「……そう」
うちに来て七年になるシャミもかなり妙な猫だが、こいつもまた変な猫だ。
 耳の後ろをほりほりしてやると喉をゴロゴロと鳴らした。目の前で指を回すと、前足の爪を出して後を追う。この辺はふつうに猫だな。
 
 ポットの紅茶を持ってリビングのこたつに移った。ミミは長門の膝の上に前足を乗せ、もじもじと足を動かした。長門の細い指がミミを抱えて膝の上に載せ、つやのある毛をなでた。たまに喉を鳴らす音がする。
「生まれて三ヵ月くらいだろうか」
「……それは分からない。さっき見たときは大人だった」
「よくわからんのだが、朝比奈さんとかハカセくんの亀みたいなタイムトラベルか」
「……あれとは理論的に異なる。この子は最初から、時空に対して曖昧な存在」
「もしかしたら十一人、いや十一匹が突然現れたりする?」
「……分からない。ゼロ匹とも、無数に存在するとも言える」
それを聞いて不安になった。どこぞの星の丸っこい動物みたいに増殖しだしたらどうしよう。
 
 ミミは長門の指にじゃれていた。仔猫と遊ぶ長門を見ていると、ほのぼのしていていい絵になると思う。うちのシャミは、最近はもう昼寝をしているだけの肥満猫になってしまった。あれよりはこの子のほうが似合う。
 
 仰向けになってじゃれついていたミミが、何かの気配を感じたのか起き上がって耳をピンと立てた。一心に壁を見つめ、漆黒の瞳孔がまん丸に開いている。長門が手を離すと、ミミは立てたしっぽを左右に振りながら壁に向かって歩き、そのまま壁の向こうへと消えた。
 俺は目をしばたいた。
「いま、壁を通り抜けたように見えたが」
「……そう。どこにでも現れる」
ということは、隣の家に忍び込んでサンマを奪ってそのまま逃げることもできるわけだ。便利なやつだな。
 
 俺と長門は、ミミが消えた壁を眺めながらケーキを食った。
「そのうち帰ってくるんだろうか」
「……気が向けば」
静かに紅茶をすすっていた長門が、ふっと呟いた。
「……わたしも、同じことができる」
「その、量子的なんとか?」
「……そう」
そういえば高校のときマラソンで同じようなことを言ってたな。長門はすくっと立ち上がって、バレリーナのようにつま先で立ち、くるりと回った。スカートの裾が舞った。回りながら消えた。俺はしばらくポカンとしていた。数秒後、同じところに現れた。
 
「思い出した。量子飛躍だったな」
「……そう」
「消えている間はどこにいるんだ?」
「……同じ空間にいる。あなたからは見えないだけ」
長門はそう言って、また消えた。数秒たっても現れなかったので不安になって呼んだ。
「おい……長門?」
気配を感じて振り向くと、真後ろにいた。
「あ、そこにいたのか」
「……捕まえてみて」
ニヤリと笑ったりはしないが、右の眉毛を上げてみせる長門はそんな雰囲気だった。なるほど、こういう遊びは好きだ。俺は笑いながら立ち上がった。
「よーし、捕まえてやるぜ」
俺は部屋の中をむやみやたらに走り回って長門が現れた場所を追いかけた。
「つっかまえた!ってあれそっちかよ」
ゼイゼイと息を切らせながら部屋のあちこちを手探りしていたが、こりゃ作戦がいるな。消えたり現れたりする長門を見ていると、現れるのは正確に三秒後だ。俺は消えた場所と現れた場所に、予測できそうな関係がありそうかどうか考えた。
「……こっち」
微笑を浮かべた長門が、さっきミミが消えたあたりに現れた。これ、かなり高度なもぐら叩きだよな。
 
 長門が消える。三、二、一。「……こっち」声がして振り向くと、また消える。三、二、一。「……あなたの、後ろ」また消える。
 手を述べようとするが間に合わず、何度か空振りして俺は宙をにらんだ。ぜったい捕まえてやる。こういうときはもう直感に頼るしかない。そう、頼りになるのは気配だけだ。
 現れる直前に空気が少しだけゆれるはずだ、なんて格好つけて考えてみたがまったく分からない。俺は宙を飛ぶ羽虫を捕まえるかのように耳をそばだてた。
 
 長門が再び現れる一秒くらい前だろうか。なんとなく、そこに、いる、ような気がしたのだ。俺は両手を広げ、なにもない空中を大きく囲んだ。
「……あ」
「捕まえたぜ」
背中から俺の腕の中に閉じ込められた長門がいた。
「……どうして、分かった」
少し驚いていた。
「ただの直感さ」
「……興味深い」
ふ。人間には第六感とかヤマ勘とかいう非論理的未来予測機能があるのさ。長門が、ほんとに?という顔をして横目でこっちを見た。ほんとに勘だったのかどうか自分でも分からん。ただの偶然だろう。
 
 俺はじっとそのまま、長門を背中から抱きすくめていた。せっかく捕まえたのを手放すのはなんだか惜しい気がした。このままキスをしようかとふと誘惑にかられそうになったが、足元でミャーミャーと声がした。ミミが俺のズボンに爪を立ててよじ登ろうとしている。仔猫というのは他人が遊んでいると寄ってくるものだ。
「この子を呼ぶ方法がひとつ分かった。俺たちが遊んでいればいいんだ」
「……ときどき、わたしと遊んで」
おう、いつでも遊んでやるさ。俺が遊ばれてる気もするが。
 
 それからミミと長門を追い掛け回す、超高度なかくれんぼに付き合った。ミミには名前を呼んで消えてもらった。壁抜けをする長門より、ミミを捕まえることのほうが存外難しかった。この子には直感が通用しないようだ。
 
 遊び飽きて眠くなった仔猫をなでまわし、俺も時計を見て、そろそろ帰ることにした。長門の膝の上でスヤスヤと眠るミミを起こしたくなかったので、俺は見送らなくていいと言った。
 マンションの外に出ると冷たい風が頬を刺した。そろそろ夜が寒い季節だ。帰りの道すがら、俺が長門を捕まえたのは本当に偶然だったのか、それとも長門が狙って現れたのか、ずっと考えていた。
 
 自宅に戻り、部屋に入るとベットに太ったシャミセンが寝そべっていた。
「おい、デブ猫。どいてくれ」
シャミはしぶしぶ場所を空けた。
「今日な、長門んちにかわいい猫がいたぞ。お前も昔はあれくらい器量がよかったのにな」
シャミはいらぬ世話だというように、しっぽを一振りしただけだった。ほとんど家から出ないで食っては寝るだけの生活なんで、まるで歩くハムみたいなありさまだ。もうネズミすら追いかけないだろう。
「少しはダイエットしたらどうだ。肥満は心臓に悪いらしいぞ」
眠そうな目をしたシャミは、腹のたるんできたお前に言われたかねーよという感じなので、俺もどうでもいい感じに放っておいた。
 
 毛布を広げようとしたところ、突然シャミが飛び上がった。ドアに向かって歯をむき出して唸り声をあげている。俺は向こう側に誰かいるのかと思い、ドアを開けてみたが、誰もいない。
「ほら、誰もいないだろ。なにをそんなに怒ってんだ」
なだめてみるが、シャミの戦闘態勢はいっこうに治まらない。しっぽがクリーニング後のセーターみたいにふわふわに毛立って膨らんでいる。
 
 突如、閉まったドアを通り抜けて、一匹の猫が現れた。ミミだった。
「ミミ、お前、ついて来ちまったのか」
ミミはふっと姿を消した。長門に名前を呼ぶと消えてしまうと言われていたことを忘れていた。再びイメージを呼び起こすと、また現れた。あいつの説明によるなら、ついて来たというより直接やってきたというほうが正しいかもしれない。
「シャミ、こいつが長門んちの猫だ。仲良くしろ」
俺がミミを抱いてやると、シャミは警戒しつつ匂いをかいだ。
「ほら、友達だから」
ミミはシャミの鼻先をなめた。猫社会のしきたりは一応知っているみたいだな。
 俺は携帯を取り出して、部屋にミミが現れたと長門にメールしてみた。すると返事には「こっちではまだ膝の上で眠っている」と書いてあった。
 
KYON> もしかして異時間同位体みたいなやつ?
YUKI.N> 厳密には同位体ではなく、量子収束の一形態。
KYON> よく分からんのだが。これもミミってことでいいのか?
YUKI.N> いい。存在が曖昧なだけで、同じ個体。
 
なるほど。量子世界の話はちょっと理解できん。
「シャミ、そういうことだそうだ。仲良くな」
なにがそういうことなのか俺にも分からんが。シャミは理解したのかしなかったのか、ミミの顔をなめて毛づくろいをはじめた。
 
 オス猫を飼っている人は知っていると思うが、オスというのは季節によっては妙な行動を起こす。二三日ぷいっといなくなったり、傷だらけで帰ってきたり、丁寧に何度もマーキングをやったりする。シャミも若い頃はよく喧嘩傷を残して帰ってきたものだったが。
 毛づくろいしていたシャミがミミに向かって嗄れ声で鳴きはじめた。
「おいシャミ、初対面で盛ってんじゃない。この子は長門んちの娘だぞ」
ミミはツンとすました顔で、やって来たのと同じにドアを通り抜けて消えた。まさか夏へと消えていったのではないだろうが。シャミは慌てて後を追いかけ、閉まったままのドアに激突した。鼻を思い切りぶつけたようだ。
「ふられたみたいだな」
俺はくっくっくと笑いを抑えられなかった。
 
 ミミがなぜ長門の部屋に現れたのかを知ることになるのは、数日後のことだ。
 
 何往復かは知らないが、あれから何度か未来とやり取りがあったようだ。分厚い大理石で蓋をしちゃ壊しを繰り返していた。向こうのハルヒからは相変わらず差し障りのない映像くらいしか送られてきてないようだが。
「そろそろ生き物を送ってもいいかもねぇ」
「俺はぜったい行かんぞ。死んでも行かんぞ」
時間移動中に分子レベルまで分解でもしたらコトだ。
「バカね、あんたがこの穴に入るわけないじゃない。もっと小さい、植物とかハムスターとかよ」
それを聞いて安心した。人体実験をやるときには社長自ら志願してくれ。
 
 ハルヒは花束と鉢植えのサボテンを持ち出してきた。このサボテン……。
「あの、長門。ちょっと心配ごとがあるんだが」
「……なに」
「ハエ男って知ってるか」
「……知っている」
「転送中に分子が入り乱れてバケモンになっちまう話なんだが、まさかあんな事故は起こらないよな」
長門は笑いをこらえているようだった。
「……大丈夫。あれとはエネルギー媒体が異なる」
だったらいいんだが。タイムトラベルしてみたらサボテンがハエとかクモと合体してたなんていやだぞ。
「まずはこれ、送ってみましょう。あたし宛にね」
「自分に花束贈るなんて、ちょっと虚しくないか」
「なによ、あんたが贈ってくれるっていうの?」
「ううっ」
「僕が贈って差し上げましょう」
古泉が割って入った。
「うれしいわ、古泉くん。乙女心が分かってるわね。キョンも少しは見習いなさいよね」
よけいなお世話だっつの。
「では、未来の涼宮さんに」
古泉はメモ書きをメッセージカードにして花に添えた。崇高な科学実験だってのになにやってんだこいつらは。
 
 またもや同じように分厚い石の板でフタをしてパテで埋めた。
「思ったんだが、この大理石のフタって意味あんのか」
「蝶番を取り付けて金属製のドアにしてはどうでしょう。毎回壊すのもコストが上がってしまうと思うので」
大量注文した大理石の板で会議室が埋まっている。高く積まれた石が二十枚ほどあり、もし地震でもきたら下敷きになるやつが出そうだ。
「……」
長門がなにか言いたそうだった。後で教えてくれたことだが、ハルヒのかしわ手と、この大理石の分子構造が微妙なマッチングにあり、このワームホールの機能を稼動させているらしい。かしわ手のエネルギーの波が大理石の一部をクォークまで分解して反粒子を生み出している、とか、ふつうにはあり得ないデタラメな現象らしいが。
「手間を惜しんでは科学の進歩はないわ。最初の手順どおりやってちょうだい」
ハルヒの一声で現状継続が決定した。まあ社長自ら肉体労働をやってくれるってんなら止めはしないが。
 
 すぐにメモリカードで返事が来た。今度は小さな包みも一緒に来た。なんだろうこれ。映像には花束を抱えるハルヒが映っていた。
『古泉くん!花束ありがとう。もうあたしったら感激しちゃって(ここで涙を拭く真似)。花もサボテンも、DNA分析してもらったけど異常はないわ。あと、木のタネを送っといたわ。それ、どっか広い場所に、そうね、北高のグラウンドの隅にでも植えといて。あんたが植えてくれたら、あたしが成長した木を見に行けるってわけよ。キョン、これ何のタネだっけ?ああ、そうそう、バオバブ』
 
「大成功ね」ハルヒがにんまり笑った。
「バオバブって、幹が太いでっかい木じゃないか?」
「アフリカのサバンナに生えてるやつね」
「でかくなりすぎて星を食いつぶしてしまうとかじゃなかったか」
「それは絵本の話でしょ」
相変わらず妙なことを考えつくやつだ。セコイアとか屋久杉じゃなくてよかった。
 
 翌日、ハルヒはペットの移動用ケージを抱えてきていた。中からミャーミャーと鳴く声がする。
「いよいよ動物実験をやるわよ」
「おい、ちょっと待て。大丈夫かそんなことやって」
「植物が大丈夫なんだから、問題ないでしょ」
とは言ってもなぁ。一抹の不安が拭いきれん。
「向こうでバケ猫になって出てきたらどうする」
言ってみて、我ながらバカだと後悔した。
「そんときは送り返してもらえば元に戻るんじゃないの?」
「戻るどころか巨大化したりしないか」
 
ケージを開けて出てきた猫には、確かに見覚えがあった。ミミだった。俺は長門に目配せをした。
「これ、あの仔猫だよな」
消えてしまうというので、名前は口に出さなかった。
「……DNAは同じ。でも、量子状態が異なる」
「というと?」
長門は仔猫に向かって名前を呼んだ。
「ミミ」
仔猫の姿は消えなかった。
「……この子はふつうの猫。もしくは、量子的変異を起こす前の猫」
「ということは、ハルヒの実験であんな姿になっちまったのか」
「……その可能性が高い」
これはやめさせるべきだ。いくら科学の進歩のためとはいえ、そんな残酷なまねができるか。俺がハルヒにやめろと言おうとすると、長門が袖を引いた。
「……実験を阻止すると、この子の因果律に関わる」
「因果律?」
「この子の未来は、すでにわたしの過去に存在する」
「だとしても、宇宙をふらふらとさまよう姿になっちまうのはかわいそうじゃないか」
「……わたしたちが、面倒を見る」
まあ長門がそう言うなら、命に別状がなければいいか。って今、わたしたちって言ったか。
「わたしたちって、長門と俺?」
「……」
長門は答えなかった。うっかり口がすべったとでもいうような表情をした。ともあれ、物質電送器みたいに細胞が分解したりバケモンになったりするのでなければいいが。
 
「やってもいいがハルヒ、ひとつだけ条件がある」
「なによ、言ってみなさい」
「時間移動中の心拍と脳波の状態をきちんと記録してくれ」
「なるほどね。あんたもたまにはいいこと言うわね」
たまには余計だ。
 ハルヒの命令で獣医が呼ばれた。古泉が連れてきたという獣医のタマゴなんだが、どう見ても機関の人だ。ミミは包帯のようなもので胴体をぐるぐる巻きにされ、そこからコードが出ていた。かわいそうに。俺は自分で提案していて後悔した。しかし異常があったら向こうで治療してくれるだろう。そのための医療用モニタだ。
「そういえばこの子、名前付けてなかったわね」
「……ミミ」
「有希がつけたの?じゃ、ミミ、未来のあたしによろしく」
ミミはケージに入れられたまま、タイムカプセルに押し込まれた。フタが閉められるまでミャーミャー鳴いていた。ハルヒがかしわ手を打ってから数分間は鳴き声が聞こえていたが、突然静かになった。
「おい、そこのマイナスドライバーよこせ!」
俺はまだ乾いていないパテの隙間にドライバを押し込んで、大理石のフタをこじ開けた。
 そこには何もなかった。
 
 数分して、メモリカードが返ってきた。
『あんた、いったい何を送ろうとしたの?これくらいの医療機器ならこっちの時代にもあるわ。もっと性能がよくて小型だけど。いちおう残っていた心拍数と脳波のデータをメモリに入れとくわ。次はもっとましなものをよこしなさいよね』
映像のハルヒはコードがぶらんと垂れ下がった医療モニタを持っていた。ケージもそのままだ。
 
「ミミが消えちまってるぞ」
ハルヒは唖然としていた。
「もしかして、抜け出たんじゃないの」
ケージに入れられるところは全員が見ていたし、それがあり得ないことは分かっている。
「どうしよう……」
ハルヒは真っ青になった。安易に動物なんか使うからだ。
「時間移動中に横穴とか脇道があるんじゃないか」
長門に尋ねてみたが、考え込んでいた。
「……説明がつかない」
長門はメモリ上のファイルを開いて心拍数と脳波の数値を見ていた。
「……大理石のフタを閉じた時間、手を打った時間までは一致している。さらに十三秒後、測定値にエラーを記録。それ以降、データ不詳」
「どこに消えたんだろう」
俺と長門は目を見合わせた。俺はミミが消えたときのことをふと思い出して、試しに姿をイメージしてみた。足元に、やわらかい毛玉がミャーと鳴いて現れた。
「あらっ、ここにいたわ。今、ここに現れた、キョンの足元に」
ハルヒがミミを抱きかかえて頬ずりした。どこも異常はなさそうだ。
「猫ちゃん、ごめんね」
「無事帰ってきてよかったな」
 
 そのとき、返事がもう一通届いた。メモリは手元にあるはずなんだが。封筒を開けると、新品のメモリカードが入っていた。だが容量が俺たちのより千倍以上ある。技術的には向こうのほうが上なんだから、こっちのレベルに合わせてくれないと困るんだがな。
「長門、これ容量が俺たちのよりでかいんだが、読み出せそうか?」
「……やってみる」
長門の超高速タイピングで、いくつかプログラムをいじった後、映像が再生された。
 
『ごめんごめん、猫ちゃん、後から届いたわよ。いきなり現れたから驚いたわ。今までどこにいたのかしら』
映像の中で、ハルヒの隣で長門がミミを抱えていた。それは届いたんじゃなくて、たぶんそっちにいる長門に会いに行ったんだろう。こっちのハルヒが、自分が抱えた仔猫と、画面に映った仔猫を見比べて、唖然としていた。
「これ、どういうこと?」
「俺には分からん」
「……」
長門はどう説明したものが迷っているようだった。考え込んでいると古泉が分かりやすい答えを披露した。
「未来と過去のエネルギーの総量を保つためにそうなったのでしょう」
つまり、この宇宙にある物質とエネルギーの全体量は決まっている。時間移動したときに勝手に減ったり増えたりするのはおかしい、と。現在でマイナスになった分を埋め合わせるために過去と未来で二匹の猫が生まれた、というのだが、どうやればそういう答えにたどり着くのか俺には分からない。
「なんだ、そういうことなの」
今の説明でほんとに分かったのか、ハルヒ。もし未来に一匹、過去に一匹が行ったんだとしたら、過去と現在の総和は二匹になるんじゃ……いや、やめよう。頭痛くなってきた。俺には長門の言う、曖昧な存在の猫ってのがいちばんしっくりくる。
「これが解決するまで動物実験は中止するわ。それからこの実験結果は社外秘よ、いいわね?」
異議ナシで全員賛成した。こんなことが動物愛護協会にでも知られたらえらいことだ。
 
 ミミは長門が預かることになった。ハルヒのアパートはペット禁止らしい。まあ長門マンションも禁止なんだが。
 ハルヒが帰った後、長門と朝比奈さんに尋ねた。
「ひとつ疑問があるんだが、未来のハルヒはなぜ猫が送られてくることを知らなかったんだろう?そのときの記憶がないんだろうか」
「これは別の時間軸が交差しているんじゃないかしら」
「……わたしたちのいる現時点が、別の分岐を生み出している」
「ということは、僕たちが新しい未来を作っているのでしょうか」古泉が口を挟んだ。
「……そう」
「それって、既定事項を真っ向から書き換えてるってことか?」
長門は非常に難しい質問をされたように顔を曇らせた。
「……おそらく、そう。すでにはじまっている」
「わたしが危惧していたのはこれだったの。未来の涼宮さんが知らない歴史が始まっているわ」
「どういうことでしょうか」
「今の涼宮さんが未来の情報を得て、新しい歴史の流れを作ってしまうということなの」
これがどういう状況なのか、俺にはまだピンと来ていなかった。


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