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  • 涼宮ハルヒのSS in VIP@Wiki(避難所)
  • 今夜はブギー・バック

涼宮ハルヒのSS in VIP@Wiki(避難所)

今夜はブギー・バック

最終更新:2020年03月18日 23:37

haruhi_vip2

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だれでも歓迎! 編集

鈴の音、響き渡る。
靴音。
近づいてくる。
この店は貸切。
ウェイタすらいない店で一人佇んでいた僕は侵入者に声を掛ける。
「お一人様ですか?」
「知らん。後から誰か来るのかも知っているのは俺じゃない。お前だ」
僕は微笑む。君も苦笑い。
「ご注文は?」
「何が有るんだよ」
「何でも有りますよ」
まるで手品の様に。
「望むなら、何だって。貴方の手に入るでしょう」
「そっか。そうだな。そんなつまらない生き方はお断りだが」
「相変わらず欲の無い人だ」
「俺が欲なんざ持ってたら、きっとお前は今でもあの制服を着てるだろうさ」
「貴方も、ね」
とりあえず、と僕はグラスを差し出す。氷が揺れる。硬質の音を立てる。
「ロックでよろしかったですか?」
「尋ねるまでも無いよな。望むものが出て来るだろ?」
「それが、この店の売りです」
二つのグラスを打ち鳴らす。
「お帰りなさい」
「遅いんだよ、迎えに来るのが」
彼は微笑む。僕も苦笑い。
「機関が解体した後の僕は、ちょっと貯金を持っているだけの一般人ですよ?」
「だったらどうやって俺の連絡先を突き止めたってんだ、馬鹿野郎」
「昔取った杵柄、とやらですか」
BGM、リピートワン。
「こっちはずっと待ってたっつーのによ」
「おや、待っていてくれたんですか?」
「前言撤回だ」
「つれないですね。そして、変わってない」
彼は顎を撫で擦る。
「変わっちまったよ」
「後悔は?」
「山ほど」
「戻りたいですか?」
「半々、ってトコか」
「幸せでしたか?」
「それも半々、ってトコだな」
「同じですね、僕と」
ウイスキを流し込む。喉の奥が焼けるような、心地よさ。
「幸せだったか?」
「半々、ってトコでどうでしょう?」
「戻りたいか?」
「それも半々、といったところで」
「後悔は?」
「だらけですよ」
「同じだな、俺と」
ウイスキが彼の喉奥へと滑り込む。喉仏を上下させる、その姿は変わらない。
「何の用だ?」
「おや? 用件が有ると思いますか?」
「用件も無いのに呼び出したのか?」
「一人で飲むのが寂しかったんですよ」
「似合わない台詞だな、元エスパー」
「そうですか? 昔の僕はこんな感じだったかな、なんて考えながら受け答えをしてるんですけどね」
「それだけの為に場末のバーを貸しきるのは、それだけはお前らしいと言えなくも無い」
彼が懐からシガレットを取り出す。僕はポケットからライタを取り出してカウンタを滑らせた。
「生憎、煙草じゃない。パイポだ。嫁が怖くてな。禁煙してる」
ライタが滑って手元に帰ってくる。
「吸っても良いですか、僕?」
「構わんさ」
「では、失礼して」
身体を蝕む紫煙を肺一杯に吸い込む。
「彼女は、息災ですか?」
「ああ。見せてやりたいくらいだよ。余りに変わってなくて腰抜かすぜ」
「既に驚かせて頂きましたよ」
「覗き見か。趣味が悪いな、ピーピングトム」
「お子さんを連れて、あの頃よりも一段と綺麗になっていらっしゃいました」
「綺麗に? 実感無いな」
喉の奥で笑う。肩を震わせて笑う。
「ああ、こんな風に笑うのは久しぶりですよ。こんなに愉快なのも」
「こんなに懐古に浸るのも、か」
「ええ。あ、もう知っているかも知れませんが一応。機関の決定だったんですよ」
「知ってる。ハルヒを刺激しないように、だったか」
「宇宙人、未来人、超能力者……その頃には『元超能力者』ですが」
「アイツが力を取り戻さないように、その全てはアイツの前から消える、か」
僕は二人分の空のグラスに琥珀を注いだ。
「彼女の望みでも有るのかも知れませんね」
「別れが?」
二本目に火を点ける。
「そうです」
「かもな」
彼はパイポを口に咥えて濁った空気を吸い込んだ。
「ようやく手に入れた、幸せが続くように」
「お前らが邪魔になった、ってか。ハルヒはそんな女じゃないぜ」
「分かっていますよ」
煙草の箱とライタがカウンタテーブルを滑る。彼の手にコツリと当たった。
「優しいのでしょう。だから、叶えてくれた」
「何を?」
「僕らが貴方達の幸せを見なくても済むように、してくれたんです」
「そんなもんか」
彼はそれ以上の追及はせず、煙草に火を点けた。
「そんなものです」
「この再会も、アイツの手の上か?」
「恐らくは。実は僕、今、結構泣きそうなんですよ」
「奇遇だな」
二人分の紫煙が視界を曇らせる。
「俺もだ」
「それはまた……奇遇ですね」
「泣いても、誰も見てないぜ。煙草の煙が目に沁みたとか、言い訳も出来るだろ」
「その為に禁煙の誓いを破ったんですか?」
「まさか。隣で煙草吸ってる奴が居て、まだ我慢が出来るならソイツは人間じゃねぇよ」
「言い付けますよ?」
「よく言うぜ。アイツの前には二度と出れないくせに」
小さな店に煙が充満するのにはそう時間が掛からなかった。
だから、視界が定まらないのは、きっと、そのせいで。
「会いたいか?」
「残酷な質問ですね」
「悪かった。撤回する。聞かなかった事にしといてくれ。得意だろ、そういうの」
「幸か不幸か、得意です」
「きっと、不幸だ、そりゃ。……いや、不器用、だな」
「貴方には言われたくありませんよ」
「ははっ。違いない」
「別のにしますか?」
グラスが手元に滑ってくる。僕はそれに杏子酒を注いだ。
「会いたいですよ、ずっと。今も」
「そうかい」
「どの面下げて、って感じですよね」
「会えば良いじゃないか」
「貴方の生活が一変しますよ。そう、それこそ高校時代に舞い戻りかねません」
「そうなっても、今度の主人公は俺達じゃないさ」
「お子さんがどうなっても良いんですか?」
「可愛い子には何とやら、さ。それにな、古泉」
「はい」
「俺はお前達を信じてる。……この酒、甘すぎるな」
「そこで、その台詞は卑怯でしょう。ああ、炭酸で割りますか?」
「そうしてくれ」
冷蔵庫を開ける。そこにはキンキンに冷えたドリンクが並んでいた。
あの頃、ずっと渡せなかった小箱がそこで一緒に冷やされている。
「好きな分量で割って下さい」
「客に手酌させるのかよ、この店は」
「残念ながら、今日は店員が居ないんですよ」
笑いたいのに、笑い声が出て来ない。ただ、笑顔だけを浮かべられたのが……ああ、僕は本当に不器用になってしまったのだな。
「そうか。ソイツは仕方ない」
「僕が貴方の前に出てくるのすら、協定ギリギリなんですよ」
「お前らの内情なんざ知ったこっちゃないね」
「おや? それにしては頬が緩んでませんか?」
「目が悪くなったんじゃないか、お前」
彼の言う通り。今夜の僕は目が悪くなっているらしい。
何もかも、曇りガラスの向こうに有るような視界。
「視力検査なんて免許の更新ぐらいでしかやりませんからね」
「ああ、俺もだ」
「少し、酔っているのもあるようです」
「お前、こんなに酒に弱かったか?」
「いえ、夜が悪いんですよ」
「そういう台詞は異性相手に言え」
「女性が相手なら、貴女の瞳に酔ってしまいました、でしょう」
「俺が言ったらぶん殴られる台詞だ」
「棘の有る言い方ですね」
「棘が無いように聞こえたら、お前は耳も悪いよな」
杏子酒は、少し塩味がした。
口の中は鉄錆びた味。唇が破れていた。
「貴方に、会いたかった」
「そうか。俺はいつかこんな日が来るだろうな、とは思っていたが」
「彼女に、会いたい」
「そうか。俺はいつかそんな日も来るだろうな、とは思っているが」
「来ますかね?」
「来るだろうよ。アイツが優しいなら。きっと。お前の思いだって汲んでくれる」
「想いは汲んではくれないでしょうけど」
「俺の前でそういう事言うか、お前?」
「恨み言くらい、言わせて下さいよ」
新しい氷を二つのグラスに躍らせる。
「あまり強いのは勘弁してくれ。帰れなくなる」
「では、ジンジャーエールで割りましょうか」
「辛い方が好みだ」
「カナダドライは置いてません。貴方が望まなかったので」
この再会は、彼女の掌の上。望めば全て手に入る彼に、この場が与えられたのは。
彼が望んだから。僕が望んだから。そして、もう一人。
「元気だったか?」
「聞くの、遅くありません? その手の質問は最初にするべきでしょう?」
「忘れてたんだよ」
「元気でしたよ。貴方は?」
「見れば分かるだろ」
「残念ながら、今日の僕は目が悪いのですよ」
「元気だった。お前らの事を忘れた事は無かったけどな」
「忘れられる、訳は無いでしょう。あの日々は、僕の一番大切な時間だった。貴方にとって忘れられる記憶だったら、悲しくていっちゃん泣いちゃいますよ」
「もう、泣いてんじゃねぇか」
「煙草が目に沁みたんです」
「もう少し上手い言い訳を考えたらどうだ。らしくない」
「貴方が知っている僕というのは、何年前だと思っているんですか」
何年前だっただろう。あの日々は。なのに、今でも僕の心の中心を支配している、輝かしい思い出。
けれど、それはやはり過去で。
けれど、それはやはり懐古で。
「何年前でしたっけ?」
「さぁな。自分の年齢すら管理してるのは嫁と役所くらいだ」
「明日は彼女の誕生日ですよ」
「それくらいは覚えてる。ああ、後数時間だな」
「ええ。このタイミングで貴方に連絡を入れたのは、偶然ではありません」
「流石に日付が変わるまでには家に帰らせろよ」
「良い旦那さんですね、貴方は」
「ハルヒが五月蝿いだけだ。後、ガキ共もな」
誕生日午前零時。貴方はきっと彼女に、誰よりも早い「ハッピーバースデー」を告げているのでしょう、ずっと。
ずっと。僕と道を別れた後も。
彼女の傍には、貴方が居た。
既定事項。きっと未来人ならそう言うに違いない。
「幸せですね、貴方は」
「言ったな、半々ってトコだ。お陰様でな」
「そうでないと、困ります」
「古泉」
「はい」
「お前は? 幸せなのか?」
「ええ。彼女が幸せなら。僕はそれだけで幸せですよ」
「嘘吐け」
「半々、ってところですか」
「幸せには、なれそうか?」
「少なくとも、今夜は愉快です」
それは本音。アルコールのせいで、口に蓋が出来なかったようだ。そう。僕は今、愉快で、愉快で、そしてとても切ない。
「そうか。俺で良ければまた付き合ってやらんでもないが」
「言ったでしょう。この再会はギリギリなんですよ」
「その割には、ゆったりとしてないか?」
「用件が無いと、会ってはいけませんでしたか?」
「からかうな、古泉」
「これは、失礼しました」
紫煙が、喉に痛い。今夜の為に用意した煙草は吸い慣れず、少しキツかったかも知れない。
「お気付きで?」
「気付かない振りをしていた方が、お前の事だ。どうせ良いんだろ」
「あの鈍感だった貴方が、こうも変わられるとは。これは驚きを通り越してちょっとしたスペクタクルですよ」
「大袈裟が過ぎるし、それに昔もそこまで鈍感だった訳じゃねぇよ」
「では、気付いていない振りをしていただけだ、と。驚愕の真相ですね」
「確信は無かったからな。臆病者だったし。いや、今もだが。演技と地と、半々ってトコだ」
「それでも。貴方が大人になられた事を実感しました」
彼はグラスの中の氷を揺らして笑った。
「いつまでも子供じゃ居られないだろ」
「流石。『パパ』が言われると重みが有ります」
「おい、茶化すなら俺は帰るぞ?」
「申し訳ありません。タクシーがこの店に来る時間は指定済みなんですよ」
「抜け目無いな。ああ、褒め言葉だ」
「ありがたき幸せ。皮肉が上手くなりましたね」
「その台詞も皮肉だな」
この空間だけが、時間から取り残されているみたいだった。いや、もしかしたら本当に切り離されている可能性も有る。
彼女に出来ない、行為ではそれは無い。
「グラス、空ですよ。何を飲まれますか?」
「何が有るんだ?」
「貴方が望むものなら、なんだって中空から取り出しましょう」
「流石だな、超能力者」
「そこは手品師にでも鞍替えしたのか、と言って欲しかったですね」
「お前に先回りされるような台詞を吐いてたのは、昔の俺だよ」
「前言撤回です。貴方は変わられていらっしゃらない」
「それも……そうだな……」
「半々ってところ、でしょうか?」
「そうだ。半々ってトコだ」
何年も経っている。変わっていない訳が無いのに。時折、見せる仕草の中に君が変わっていないような錯覚を覚えるのは。
君が僕に合わせてくれているからだろうか。
それとも、神が会いたい人に会わせてくれたのだろうか。
考えても、答えなどは出る筈も無く。
「変わらないモノなんて無いさ」
「妙に実感の有る言い方ですね。何か、有りました?」
「いや、ウチのガキ二人な。昨日生まれたと思ったら、もう上は小学生だとよ」
「お父さんは大変だ」
「全くな。願いが叶うなら、もう少しマシな労働環境を俺に与えて欲しかったね」
「おや。幸せでは、ないんですか?」
「皆まで言わせるな。察しろ。頭の回転まで悪くなったか?」
グラスになみなみとアイスコーヒー。ウイスキを少しだけ混ぜて。
夜を溶かしたような味がする。
苦く、芳しく。少しだけ、頭を狂わす。
「古泉、結婚は?」
「秘密、としておきましょう」
「のくせに薬指に日焼け跡が有るんだな」
「そんなに目敏かったですか、貴方」
「人間は成長する生き物だろ」
「成長なんてしませんよ。人間はただ、忘却するのみです」
「へぇ。言うようになったな。何か有ったか、超能力者?」
「元、ですよ、その呼称も」
君が薬指に光る銀を弄る姿なんて、見たくは無かった。
……駄目ですね、僕は。
「今はどう呼べば良い?」
「お好きなように」
「だったら、決まってるな」
彼はニヤリと笑った。あの頃みたいに、意地悪く、笑った。
 
「副団長、息災かい?」
 
僕は、ついに滂沱の涙を堪える事が出来なかった。
 
この夜は、僕が望んだ通りの再会になっているのかも知れない。
「卑怯ですよ、貴方は」
「お互い様だろ」
「一番弱いところを、狙い澄まして刺すのですから」
「言ったろ。成長したのさ。やられっ放しだった頃とは違う」
「いいえ、全然」
僕は首を振った。カウンタに滴が落ちる。
「貴方はまるであの時のままだ。あの時の、あの貴方だ」
「誰よりもお前には言われたくないね」
「ははっ。違いありません」
「だろうよ」
僕は、変わってない。変わって、変わってない。
君は、変わった。変わらないままに、変わった。
違うのは、手の中の飲み物に残らずアルコールが入っている事と……。
「幸せ、なんですよね、僕」
「そうか。奇遇だな。俺もだ」
「でも、少しだけチクリと刺す、この思いはなんて名前でしたかね?」
「俺は語彙が少ないからな。間違ってるかも知れんが、それで良ければ答えてやろうか?」
「お願いします」
「センチメンタリズム、ってんだ、そりゃ」
懐古主義(センチメンタリズム)。
「モラトリアムの続き、でしょうか」
「残滓、だな。俺もお前も、モラトリアムなんて言ってられる年齢でも、立場でも無いだろうよ」
責任猶予期間(モラトリアム)。
「そうですね。ああ、メランコリック、なんてどうです?」
「ちょいと情感的過ぎるぜ、その言葉は。お前はともかく、相方が俺なのを考慮してくれ」
憂鬱(メランコリック)。
「センチメンタルの方が余程恥ずかしいかと」
「それもそうか。なぁ、古泉。言葉にする事に意味は有るのか?」
「貴方が僕と同じ時間と感傷を共有してくれる助けになるでしょう?」
「大分前から、共感してるつもりだったんだけどな」
「おや、これは嬉しい誤算だ」
「言ってろ」
「良いんですか? 許可を貰ってしまうと、僕は際限無く喋り続けますよ?」
「ああ、良いぜ」
彼はグラスを揺らして氷を鳴らした。そんな仕草が、けれどよく似合っていた。
昔の彼なら、きっと似合わなかっただろう、そんな仕草が。
「悪くない気分だ。今なら付き合ってやれる」
「今夜しか、無いんですよ、僕達には」
「まるで未来を見てきたように言うな、お前」
煙草が彼の手元と僕の手元を行き来する。灰皿に積まれていく吸殻だけが、時間の経過をしっかりと僕に伝えていた。
「協定、ですよ。言ったでしょう」
「悪いが俺はその内容を知らんし、知る気も無い。俺が知ってるのはたった一つさ」
「一つ、とは?」
「俺達の女神はツンデレだが、慈悲深い」
彼が口にして、これほど似合う台詞も無い。
「再会を、お約束しても?」
「約束したら、守らなきゃならんからな。そんなのが無くても、俺達はきっとまたこうして酒を酌み交わせるさ」
「僕は信じてしまいますよ、その言葉」
「ああ、信じちまえ。信じる者は救われたりするらしい」
君は。僕は。変わった。変わってない。
どちらなのか、なんて意味は無い。
きっと、半々といったところなのだろうから。
「この場は、誰が用意してくれたんだ?」
「僕と、彼女と、彼女が。いえ、神様が望んでくれたのでしょうね」
「そうか」
彼は煙草を深く一度吸って、そして大きく煙を吐き出した。
溜息を、吐くように。
「朝比奈さんと、長門によろしく言っておいてくれ」
「承りました」
「ああ、後、元超能力者の変態にも、一応な」
「……必ず、伝えますよ」
「なんか有ったら……何も無くても、俺の方はカムカムウェルカムだ」
「そんな事を言っていると、非常識が大挙して押し寄せてきますよ?」
「言ったろ。ウェルカムだ。酒くらいなら出してやっても良いぜ」
彼が微笑む。僕も苦笑した。
そんな「いつか」は決してやってこない。知っている。
宇宙人が、未来人が、機関が。彼と彼女を今でも取り囲む全てがそれを許さない。
でも、僕はその真実を決して君に告げない。
告げては、ならない。
希望は、届かなくとも輝いているだけで価値が有る。
それが分からない子供では、僕はもうない。
「では、いずれ」
「ああ。いつでも来い。ハルヒも喜ぶ」
「開口一番、怒られそうですよ。どこに行っていたのだと」
「それくらいは、甘んじて受けろ」
「ええ」
BGM、リピートワン。空気を、気だるく染めていく。
「古泉」
「はい」
「だから、別れ際に『さよなら』は無しだ」
「臭い台詞ですね。しかし、よくお似合いで」
「茶化すな、って言っただろ」
「ならば、何と言って別れましょうか?」
「決まってる」
 
僕は、昔、彼女に渡せなかった小箱を、彼女の連れ合いに渡した。
「また会おう」
「またお会いしましょう」
その別れの言葉も小箱の中身と同じで、きっと半々。
 
靴音。
近づいてくる。
この店は貸切。
ウェイタすらいない店で一人佇んでいた僕はずっとテーブルに着いていた彼女に声を掛ける。
「お一人様ですか?」
 
返答は無かった。いや、三点リーダは何よりも雄弁だったと言うべきか。
「朝比奈さんは?」
「帰った」
「そうですか」
背後を見ると、そのテーブルでは誰かの涙が水溜りを作っていた。
「これで良かったですか、長門さん」
彼女は何も答えない。
「一目見るだけ。声を聞くだけ。ストイックですね」
違う。
彼女達は声を掛ける事すら出来なかった。
不可侵協定が、彼女達を雁字搦めに縛り付けていたから。
「……古泉一樹」
「はい」
「ありがとう」
「その言葉は向ける相手が大分的外れです」
彼女の前にグラスを差し出す。アルコールが彼女を酩酊させてはくれない事を、僕は知っている。
だから、戯れにそこへウイスキを注ぐ。
「一緒に、飲みませんか?」
「構わない」
「ありがとうございます」
「その言葉は私に向けるべきではない」
宇宙人がジョークを言える事を、久しぶりに思い出した。
数年振りに。
「長門さん」
「何?」
「いつか、五人で飲みに誘いますから、その時は良い返事をくれませんか?」
だから、戯れにそこへ繰り言を告ぐ。
 
「喜んで」
前言撤回。アルコールは、宇宙人からも笑顔と涙を引きずり出す事が出来るらしい。
 
「望むなら、何だって。貴女の手に入るでしょう」
「変化の無い時間はもう過ごさないと決めた」
「相変わらず欲の無い人ですね」
「わたしが欲求を所持していたら、きっとわたし達は今でもあの制服を着てる」
「ああ、それは願ってもない。そしてお断りです」
「……半々で」
「ええ。半々で」
 
 
こうして、誰かと誰かと誰かの、初恋が幕を閉じた。
甘い、苦い、芳しい。ウイスキを飲み干すように。少しだけ喉と思い出を焼いて。
まるで、ミルクに蜂蜜を溶かし込んだような、少しだけ特別な夜のお話。
 
 
今夜はブギー・バック 笹mix

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