天の道を継ぎ、輝く勇気を宿す男
「ああああああああ!」
雄叫びが聞こえた途端、
門矢士は反射的にバイクを止めてしまう。
視界の先からは、体躯を緑色に染めた異形の怪人……カブトの世界で人類に牙を剥いたワームが迫っていた。頭部より角が盛り上がっている差違はあるが、骸骨を彷彿とさせる顔面はサナギワームに違いない。
ワームは鋭い爪を掲げて、勢いよく振り下ろしてくる。しかし士がただで喰らう訳がなく、跳躍することで回避した。
「ワームだと!? こんな時に……!」
現れたワームに対して士は悪態をつく。
逃亡したキングを追いかけるため、病院に向かうはずだった士にとって致命的なロスタイムになる。まさか、キングの悪事を後押しするため、大ショッカーはワームを新たな刺客として差し向けたのか。
だが、思案に耽る時間などなかった。ワームの猛攻は止まることがなく、我武者羅に振るわれる爪を避け続けるしかない。ライダーに変身すれば脅威にならないが、生身で受けては致命傷になる。
バックステップでワームの攻撃を回避し、距離を取る。すぐさまデイバッグに手をかけて、今は亡き
海東大樹の愛銃であるディエンドライバーを構えた。
(海東、今はこいつを使わせてもらうぞ)
病院での戦いにて散った彼に向けて、士は心の中で呟く。
暴れまわるワームに銃口を向けて、トリガーを引き、無数の弾丸を放った。ワームの体躯より火花が飛び散り、その巨体が微かに揺らぐ。
もちろん、これだけで負けるわけがなく、ワームは健在だ。ディエンドに変身すれば容易に倒せるだろうが、ここで変身手段を浪費するのは得策ではない。カッシスワームとの戦いによる消耗が残した上で、ディケイドとディエンドの両方に制限がかけられては、肝心のキング撃破は叶わなかった。
故に、ディエンドライバーのみでワームと戦う必要がある。だが、ワームの方が優位だった。
「があああああああっ!」
弾丸のダメージなど存在しないかのように、ワームは咆哮を続けている。その分厚い巨体を貫くには相応の攻撃が必要だが、今の士に余裕はない。ワームは爪を掲げながら再び走り出したからだ。
士は回避行動に移るが、ワームのリーチの長さによって衣服が微かに切られてしまう。もしも、ほんの少しでも遅れていたら両断されていた。
迫りくる爪の一振りを回避するが、反撃には踏み込めない。ここでもし、ワームが脱皮をして成虫となれば、クロックアップによって士は一瞬で殺害されるだろう。
「うがあっ!」
絶対的な優位を示すかのように、ワームは攻撃を続ける。
士には回避以外の行動はできなかった。ディエンドに変身する余裕はなく、かといって生身での攻撃は牽制にもならないだろう。しかし、ここでいたずらに時間だけを経過されるのも得策ではない。
(こいつ……一体なんなんだ?)
そして、もう1つだけ気がかりなことがある。
目の前のワームが、まるで獣のように攻撃を仕掛けていることだ。乃木や麗奈を始めとしたワームは人間の姿と記憶をコピーして、擬態元の人間のように振る舞っている。だが、このワームはただ一方的に暴れているだけで、誰に擬態しているのかが推測できない。
しかし、ミラーモンスターのように本能で暴れている訳でもなく、まるで自暴自棄になっているようにも見えた。
だが、このワームをここで放置しては、いずれ真司たちにも遭遇する可能性がある。
まずはこのワームを止めることが最優先だ。己を奮い立たせる士は、ディエンドライバーをワームに向けて引き金に指をかけようとしたが……
「グアアアアアアアッ!」
新たなる叫び声が響き渡り、士は振り向く。
すると、白虎を彷彿とさせる巨大な怪物・デストワイルダーが窓ガラスの中より飛び出してくるのが見えた。
士は反射的に横に飛んで、岩をも凌駕する巨体を紙一重の差で回避する。次の瞬間、デストワイルダーが降り立った地面は轟音と共に沈んでしまった。
そして、現れた獣は獰猛な視線を士に向ける。
「ワームの次は、ミラーモンスターかよ!? 最悪だ……!」
鏡から来る怪人はミラーモンスター以外にあり得ない。士の不運を嘲笑うかのように、デストワイルダーの爪が迫り来る。
襲撃に対応しきれず、ディエンドライバーを弾かれてしまった。肉体に深刻なダメージは負ってないが、これで完全な丸腰になる。
「ギャオッ!」
そして、デストワイルダーの爪が縦に振るわれる。士は横に跳躍することで回避したが、ディエンドライバーからますます離れてしまった。
士自身も、既に壁際まで追い込まれてしまい、絶体絶命の状況に陥ってしまった。
「グルルルルルル……」
「てめえ……俺をなぶり殺しにするつもりか!」
せめてもの抵抗として士はデストワイルダーを睨むが、デストワイルダーは唸り声と共にじりじりと迫る。
デストワイルダーは空腹に苦しんでいた。
このライダー大戦が始まって以来、
東條悟が契約するミラーモンスターとして戦っていたが、獲物を食らうことができないまま12時間以上が経過している。
浅倉威が取り込んだテラーメモリの恐怖も加わり、自分から獲物を狙う戦意すらも失い、多大な精神的な疲労だけが蓄積された。浅倉の死によって恐怖からは解放されたが、ストレスによって正常な判断力を失ってしまい、ただ獲物のみを求めてさ迷っていた。
そして、ようやく士とネイティブワームを発見して、デストワイルダーは生身の士を喰らおうと襲いかかったのだ。
今の士にはこの場を切り抜ける切り札を持っていなかった。
ディケイドの変身制限は解除されておらず、ディエンドライバーはデストワイルダーの後ろだ。士がキバーラに変身できるとは限らず、何よりもそんな隙をデストワイルダーが与えるとは思えない。
だが、こんな所で、理性を持たない凶暴な怪人に殺されるつもりはなかった。
(……仕方がない。こうなったら、なんとしてでもディエンドに変身するしかなさそうだな!)
デストワイルダーが攻撃を仕掛けるのと同時に、奴の死角に回り込んで、ディエンドに変身する。変身制限については棚にあげて、今はこの場を切り抜けることが最優先だ。出し惜しみが原因で殺されては、元も子もない。
デストワイルダーが構えるのを見て、士もまた覚悟を決める。だが。
「うわああああああああああっ!」
叫び声が発せられた瞬間、デストワイルダーの巨体が横凪ぎに吹き飛ばされる。唐突な出来事に、両者は反応できない。
だが、士は見た。先程、士を襲っていたはずのワームが、その鋭利な爪でデストワイルダーに攻撃を仕掛けたことを。そして、士に背を向けながら、ワームはデストワイルダーと睨み合っていた。
まるで、士を守ろうとしているかのように。
「お前……!?」
「あああああああっ!」
困惑する士には目もくれず、ワームはデストワイルダーに走り出した。
そのままデストワイルダーの巨体に爪を振るい、突き刺し、再び後退させる。デストワイルダーの巨体を打ち砕こうと、一心不乱に攻撃を続けていた。しかし、それだけでミラーモンスターが倒れることはなく、ワームに反撃の一閃を繰り出す。
悲鳴と共にワームは地面に転がるが、次の瞬間には再び立ち上がり、戦いを仕掛けていた。そうしてワームはデストワイルダーの巨体を掴み、勢いよく放り投げる。放射線を描きながらデストワイルダーは地面に叩きつけられたので、確かなダメージを与えたはずだ。
◆
(僕が……彼を……ディケイドを、守らないと!)
本当なら、仮面ライダーであるディケイドに殺されるつもりだった。
剣崎だけでなく、翔一までをも殺してしまった化け物である自分を破壊してくれるのは、破壊者を自称したディケイドだけだ。だから、
天道総司の名前と姿を捨てて、ただのワームとして命を捨てようとした。
だけど、こんな時に鏡より現れた怪物がディケイドに襲い始めた。生身を晒している今の彼では、怪物に殺されてしまう……そんなことを認められるわけがない。この場で戦えるのは、ワームである自分だけだった。
だから、ワームの力の矛先を怪物に向ける。そうすれば、彼は仮面ライダーに再び変身することができるし、この怪物もろとも自分を殺してくれるはず。ディケイドのためにも、少しでも時間稼ぎをする必要があった。
(剣崎は、もっと痛かったはずだった……だけど、剣崎は苦しさなんかに負けないで……僕からみんなを守ろうと頑張ってた!)
不意に、剣崎を殺してしまった時のことを思い出す。
仮面ライダーに変身できず、どれだけ深い傷を負わされようとも、最期までダークカブトに抗っていた。そんな剣崎に報いるのであれば、この命はディケイドに捧げることが義務だ。
ディケイドから受けた弾丸による傷が痛むけど、関係ない。怪物の鋭い爪が突き刺さり、体を抉られるけど、耐えるべきだ。剣崎や翔一はもっと痛がっていたし、何よりも楽に死ぬことなど許されるはずがない。
(ごめん、剣崎……
ごめん、海堂……
ごめん、翔一……
ごめん、名護さんに翔太郎……みんな……
僕は取り返しのつかないことばかりしたし、僕はまた化け物になって、誰かを傷付けるかもしれない。でも、今だけは……今だけは……)
自分を支えてくれた仮面ライダー達の優しさと、自分の手にかかって命を散らせた仮面ライダー達の勇姿を、ネイティブワームは思い出す。
虫のいい話であることはわかっている。こんなことを頼める資格がないことは理解している。心の奥底にいる自分は、今だって誰かを殺そうとしている可能性だって、充分にある。
それでも、今だけは……
(今だけは、僕に力を……ディケイドを守るための、力と勇気を貸して!)
今だけは、ディケイドを守ることだけを、考えていた。この苦しみや痛みを無視してでも、力を振るわなければいけなかった。
剣崎のブレイラウザーや天道のクナイガンと比較したら、ワームの爪は劣るかもしれない。ブレイドやカブト、そしてアギトたち仮面ライダーのような優れた能力を持たないまま、怪人に立ち向かっても勝てる保証などない。
「ギャオッ!」
事実、次第に劣勢となっていた。
デストワイルダーの攻撃はネイティブワームの骨格だろうと無視できず、ましてや病院を襲撃したキングやアンデッドの大群による心身のダメージが癒えてない状態だ。加えて、あえてディエンドライバーの弾丸を受け続けた彼が、力を発揮しきれるはずがない。
まるで、弾痕を狙うかのように、デストワイルダーの爪が振るわれ続けていた。死に最後の希望を賭けた総司の絶望を尊重し、それでいてディケイドを守りたいという総司の願いを踏み躙るかのように。
「うわっ!」
やがて、何度目になるのかわからない一振りの後、ネイティブワームの巨体は壁に叩きつけられてしまう。ガドルやダグバのような強敵に比べれば弱々しい一撃だが、今の彼には確かなダメージになっていた。
今度はネイティブワームを標的にしたのか、デストワイルダーが距離を詰めてくる。食事を邪魔された怒りからか、デストワイルダーから放たれる殺意は更に強くなるが、これで良かった。
鼓膜を大きく振るわせるほどの銃声が聞こえた瞬間、デストワイルダーの体表より火花が飛び散る。視界の外より暴風雨の如く放たれた光弾によって、デストワイルダーは大きく吹き飛ばされた。
ネイティブワームが振り向くと、ディケイドがディエンドライバーを構えている姿が見える。
「よそ見をするな! 戦いはまだ終わってない!」
ディケイドの叱咤によって、ネイティブワームの中で困惑が生まれた。
何故、こんな自分を狙わずに虎の怪物だけに攻撃を集中したのか? 変身して、自分もろとも怪人を倒してくれるのではなかったのか?
「行け!」
しかし、奮起させるような叫びによって、ネイティブワームの闘志が蘇る。
そうだ、誓ったはずだ。ディケイドを守るために、この怪人を倒すと。今の彼が戦えないなら、代わりに僕が戦わなければいけない。何よりも、ディケイドが僕に力を貸してくれたのだから、その想いに応えるべきだ。
ネイティブワームはデストワイルダーに鋭い視線を向ける。この眼光にたじろいだのか、デストワイルダーはほんの少しだけ後ずさるものの、逃がすつもりはない。
「うわあああああああああああああああっ!」
ネイティブワームは全力の叫び声をあげながら走り出し、鋭く伸びた爪を掲げた。
当然ながらデストワイルダーは吼える。だが、その進行はディケイドが弾丸を放つことで阻害され、ネイティブワームの突撃を許してしまう。
例え傷付いていようとも、今のネイティブワームを止めることなど誰にもできなかった。彼の胸に宿る輝く勇気を証明するかのように放たれた一撃は、デストワイルダーの巨体を確かに貫いた。
「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
断末魔の叫びに手ごたえを感じて、ネイティブワームは勢いよく爪を引き抜く。
血しぶきの代わりに、大量の火花が傷口より飛び散っていき、デストワイルダーはよろよろと後ずさった。もう、デストワイルダーに戦う力は残っておらず、後はただ最期の時を待つだけ。
そのまま爆発するかと思われたが、しかし突如としてデストワイルダーは消滅してしまう。デストワイルダーが致命傷を負うと同時に、ミラーモンスターに課せられた1分の時間制限が訪れたのだが、ネイティブワームがそれを知ることはない。
(ディケイド……怪我はなさそうだ。よかった……)
ただ、ネイティブワームは一人の男の身を案じていた。
ネイティブワームがデストワイルダーの相手をしたおかげで、ディケイドは傷を負うことのないまま、銃を取り戻している。後は、邪悪な怪物であるネイティブワームを葬ってくれれば、それで全てが終わりだ。
誰も、自分が殺されたことに気付くことなどない。ディケイドだって、凶悪な怪人たちを倒したと思い込んでくれる。この胸の中に宿る怪人の悪意に、誰かが苦しむことだってなかった。
(あとは頼んだよ、ディケイド……剣崎や翔一たち、仮面ライダーのためにも……戦って。
君なら、僕たちの世界を……みんなが生きる世界を、救えるはずだから)
誰の耳にも届かない願いと共に、すべての咎めから解放される瞬間を待つ。
彼が仮面ライダーに変身して、自分たちを倒してくれれば万々歳だ。そう考えた瞬間、一気に眠気が襲いかかる。ディケイドの無事を確認して気が緩んだのか、体に力が入らず、もうこれ以上は意識を保つことが難しそうだった。
(だ、ダメだ……僕にはまだ、やるべきことが……)
せめて、少しでも凶悪な怪人らしく振る舞おうとしたが、倦怠感によって阻害されてしまい、まともに体が動かせない。
一歩前に踏み出した瞬間、ネイティブワームは崩れ落ちるように倒れてしまい、意識が闇に飲み込まれた。
【デストワイルダー@仮面ライダー龍騎 消滅】
「おい、しっかりしろ!」
市街地の静寂を破壊するように士は叫ぶ。
デストワイルダーは既にいない。ディエンドライバーの弾丸とワームの爪でデストワイルダーにダメージを与えたが、その直後にミラーワールドに引きずり込まれていた。そのままデストワイルダーは爆発したが、このワームは気付いていないだろう。
そして、ワームも倒れてしまうが、恐らく気を失っただけ。だが、このまま放置することもできなかった。
例え怪人でも、士のことを命がけで守ろうとしたから、一方的に殺すことなどできるわけがない。だが、ワームがミラーモンスターと戦った理由について見当がつかなかった。
どうしたものかと、思案した瞬間……
「…………待て待て待てええええええぇぇっ!」
どこからともなく、野太い叫び声が聞こえてくる。
顔を上げた瞬間、遠くより白いコウモリが猛スピードで迫っていた。赤い双眸を輝かせながら、士の目前で止まる。少し遅れて、カブトムシを連想させる小型のメカも現れた。
そのカブトムシには見覚えがあった。太陽の如く輝きを放ち、そして世界のすべてを手にするほどの圧倒的な風格を醸しながら、大切な人を守るために戦った男の相棒だ。
士は彼の名前を知っている。カブトの世界にとって象徴とも呼べる太陽の神・カブトゼクターだ。
「お前は……」
「おおっと! それ以上は何も言うなよ? こいつは絶対に、この俺……レイキバット様が殺させねえ!」
「何?」
「お前は勘違いをしているかもしれねえが、この男は……総司は俺たちが相棒と認めた男だ! だから、手出しはさせん!」
白いコウモリ・レイキバットの叫びに士は瞠目した。
彼は今、何といったか。このワームは、俺たちの相棒であると……そして……
「ソウジ、だと? まさか、こいつは……
天道総司……仮面ライダーカブト、なのか!?」
士の問いかけを肯定するように、カブトゼクターはボディを上下させる。
すると、ワームの巨体は発光し、瞬く間に人間の男へと姿を変えた。先程の戦いの影響で気を失ったままだ。変身制限か、あるいは多大なダメージによってワームの姿を維持できなくなったのか。
だが、その腰にはカブトに変身するためのベルトは存在しない。何故、カブトである彼がワームとなって一方的に襲いかかったのか。何故、カブトゼクターたちを放置して、凶行に走ったのか。
何よりも、
天道総司の名前は2度目の放送で呼ばれている。だが、カブトゼクターはこの男を
天道総司と認めた。まさか、巧が最期に話した黒いカブトとはこの男なのか?
次々と疑問が湧き上がるが、士だけでは答えを得ることはできない。
『――時間だ。これより、第三回の定時放送を開始する』
そして、士の困惑を破壊するように、けたたましいパイプオルガンの演奏と共に第3回放送が始まった。
◆
何もない暗闇の中に落ちていくのを感じる。
誰の手も届かず、そして声が聞こえることもない、ひとりぼっちの世界だ。一筋の光すらも差し込まず、コンクリート特有の無機質な香りすらも漂ってこない。かつて、自分の姿すらも弄られた挙句、地下深くの牢獄に閉じ込められたかのように、不安で胸が押しつぶされそうだ。
だけど、今の自分にとってはふさわしい世界だ。八つ当たりのように他者の命を奪い続け、信念を踏み躙り、大切な人を裏切った。こんな自分が、陽の光を浴びる資格などあるわけがない。
だから自分から化け物になり、正義の仮面ライダーに倒されることを選んだ。
自分が望んだはずだった。また誰かを傷つける前に、正しい力によって罰を受ける以外に方法はない。そう決めたのに、この心は全く満たされない。そんな資格などないのに、未練を抱いていた。
けれど、今更どうすることもできない。
剣崎や翔一の死を嘆いても、彼らが戻ってくるわけがない。あがいたところで、居場所などあるはずがない。名護さんや翔太郎たちの元に戻っても、いつ彼らに対して殺人衝動がわき上がるのかわからない。
だから、自分から闇の中に落ちていくこと以外に道はなかった。
――大丈夫。僕がそばにいる。
だけど、どこからともなく少女の優しい声が聞こえる。
この声を僕は知っている。懐かしくて、心が暖かくなるのを感じた瞬間、この手が掴まれていく。
――大丈夫だ。俺がそばにいる。
続くように、力強くて輝きに満ちた男の声が聞こえる。
この声も僕は知っている。彼の声に、心が強くなっていくのを感じた瞬間、もう片方の手が握りしめられていく。
――もう大丈夫だ。俺たちがそばにいる!
そして、迷える誰かを救ってくれそうな男の声が、胸に響いた。
この声だって僕は知っている。重く閉ざされていた瞼を開けた瞬間、太陽のように眩い光が世界を照らし、誰かが微笑んでいる光景が見えた。
そのまま、僕の体は引き上げられていく。僕はそれに抵抗するけど、この手を掴んでくれるみんなを振り解くこともしたくない。怖いけど、また誰かを裏切ることになるのはもっと嫌だ。
そんな躊躇の間に、この体はどんどん光に照らされていく。まるで僕のすべてを受け入れて、そして罪を許してくれるかのように。だけど僕は許されていい訳がないし、みんなの所に戻る資格だってなかった。
やめて、と拒絶する暇もなく、眩さに思わず目を細めてしまい、意識すらも飲み込まれた……
気が付くと、白い天井が視界に飛び込んできた。
体を起こした途端、全身を駆け巡る疲労と激痛によって表情を顰めてしまう。同時に、自分に何が起こったのかという疑問もわき上がり、そして見知らぬ部屋で寝かされていたことに気付く。
「ようやく起きたみたいだな」
聞き覚えのある男の声に、意識が急激に覚醒した。
振り向くと、堂々と腕を組みながら椅子に座る男の姿が見えて、目を見開く。剣崎からディケイドと呼ばれたあの男が、すぐ目の前にいた。彼の両隣には、カブトゼクターとレイキバットも佇んでいる。
「君は……どうして、ここに……? それに、どうして僕が……!?」
「それはこっちの台詞……と、言いたいところだが、事情は大体わかった。お前の身に起きたことも」
「ッ!? じゃあ、まさか……」
「ああ、こいつらから大体聞いた」
「それじゃあ、僕のことも……知っているの?」
「当たり前だ。お前はかつて一真を殺した黒いカブトだった……
しかし、
天道総司の遺志を継ぎ、ガドルやダグバたちと戦って、剣崎のブレイバックルを取り返している。今のお前が、仮面ライダーとして戦おうとしたことも、俺は聞いた。
そして、病院のことについても……全てだ」
ディケイドの真摯な声色は、心に深く突き刺さった。
同時に、翔一たちの怨恨が脳裏に過ぎってしまい、体が大きく震えてしまう。もう、ディケイドの前にもいられない。彼にすら最期の願いを託せなくなった今、後は人殺しの化け物になるしか残されていなかった。
いてもたってもいられなくなり、この場から逃げ出そうとしたけれど。
「だが、お前がお前の意志で翔一を殺したのは、キングのデタラメだ」
そんな衝動を抑えようとしたかのように、ディケイドは言葉を紡いでくれた。
「あいつはお前を罠にはめて、妙な毒を体に流し込んだらしい。そしてお前は正常な判断力を奪われてしまい、
津上翔一を傷付けた……そうだろ? レイキバット」
「ああ!
総司は気付いてないだろうが、総司がキングってヤローと戦っていた時、サソリのようなアンデッドが隠れているのが見えた。
俺は総司にそれを伝えようとしたんだが、アンデッドの方が早く……すぐに、お前はアンデッドに刺されちまった。恐らく、その時に意識を奪われちまったんだろう。
……すまねえ、総司。このレイキバット様、一生の不覚だ!」
「そういうことだ。お前の中に、人殺しを楽しむ別の人格がいるのは、キングの作り話だろう。
大ショッカーの怪人にでもさせるために、お前を罠にはめて絶望させた……あの野郎が考えそうな悪趣味な話だ」
ディケイドとレイキバットの表情は徐々に暗くなっていく。
二人から伝えられた真実に、愕然とした。翔一を殺してしまい、絶望のまま病院から逃げ出した……その全てがキングによって仕組まれた罠であり、ディケイドまでもが巻き込まれてしまったのか?
そして、キングの罠のことを知ったとしても、こんな自分がやり直せるわけがなかった。
「……関係ないよ」
自分でも信じられないほど、声が冷めているのを感じる。
「今更、どうだろうと関係ない……僕が、翔一を殺したことには変わらないよ」
「おいおい、だからそいつはキングのヤローが……」
「僕がキングの言葉に惑わされていなければ、翔一を殺されることはなかったし、剣崎の遺志だって踏み躙ることはなかった!
結局僕みたいな化け物に、剣崎の遺志を継ぐなんてできっこなかったんだよ!」
レイキバットの言葉を遮るように激高した。
真実なんて問題ではない。剣崎にとって、誰かを守るための力としていたブレイドを纏って、翔一を殺した事実が変わるわけがなかった。
プライドにしがみついてキングの挑発に乗らなければ、翔一が殺されることもなかったし、剣崎がディケイドに託したであろう最期の願いだって踏み躙られることもない。
「元を辿れば、すべては僕が原因なんだ! 剣崎が死んだのも、海堂が死んだのも、翔一が死んだのも……全部僕のせいだ!
たった一つしかない命を奪い続けて、仮面ライダーになるという言い訳を並べながら自分の罪を棚に上げて天道の居場所すらも奪って、挙句の果てには僕を信じてくれた翔一の命を奪った!
……人殺しを望む化け物、それが本当の僕だ!」
キングの侮蔑を認めたくなかったけど、それだけの罪を重ねてきた。
強く叫び声をあげているけど、本当は今だって怖い。こうして苦しんでいる今でも、心のどこかには破壊を楽しむ自分がいて、ディケイドたちに牙を剥こうとしていると考えると、不安に押し潰されそうだ。ディケイドの後は真司や麗奈たちをも傷付けて、最後には大ショッカーの怪人にされるだろう。
恐怖のあまりに、カブトゼクターとレイキバットからの視線が重く感じて、思わず目を逸らしそうになるけど。
「人殺しを望む化け物……お前、そう言ったな」
そう、ディケイドは口にしてきた。
わかりきったことを蒸し返してくる彼の態度に、苛立ちが湧き上がってくる。
「……そうだよ。君も聞いただろう? 僕はたくさんの人を殺してきたことを。
そんな僕が、今更仮面ライダーになんてなれる訳がないじゃないか!」
「なら、俺はとっくに仮面ライダーの資格を失っているな。俺も、誰かのために戦う仮面ライダーの命を奪ったからな」
憤怒の叫びに対するディケイドの答えは、あまりにも予想外だった。
彼の言葉は到底信じられる訳がなく、一瞬だけ呼吸が止まってしまい、幻聴ではないかと疑ってしまう。
今、彼は何と言ったのか? 仮面ライダーの命を奪った……そう、口にしたのか?
「……君が、仮面ライダーを殺した? 何を、言っているの? ディケイドが、そんなことをするはずが……」
「いいや、嘘じゃない。2度目の放送では、
五代雄介という男の名前が呼ばれた。その理由は……俺が、雄介の命を奪ったからだ。
雄介だけじゃない。お前が気絶している間に、
野上良太郎という仮面ライダーの名前も呼ばれている。良太郎も、お前が憧れるような仮面ライダーの一人だったが……俺のせいで、死んでしまった」
「君の、せいで? そ、それは……違う……」
「何も違わないさ、俺は世界の破壊者。
この際だから、言っておこう。俺はかつて、多くの仮面ライダーを破壊してきた……俺の手にかかり、犠牲になった仮面ライダーの数はもう覚えていない。
確か、破壊した仮面ライダーの中には、カブトとブレイドだって含まれていたかな」
微塵のためらいも見せないまま、ディケイドは堂々と宣言する。
声色には得体の知れない迫力が込められていて、言葉を失ってしまう。だけど、それ以上にあのディケイドが仮面ライダーを犠牲にしたということが、受け入られなかった。
でも、彼が嘘を言っているようには見えない。だから、カブトとブレイドを犠牲にしたことも、本当かもしれなかった。
「お前の言い分なら、俺も仮面ライダーの資格がないようだな。そして、俺の心の中には破壊を楽しんでいるもう一人の俺が、どこかに隠れている……
このままだと、いつかもう一人の俺が誰かを……」
「違うっ!」
淡々としたディケイドの言葉を、心からの叫びで遮った。
意識した訳ではない。何か特別な理由があるのでもなく、反射的な行動だった。自分でも信じられなかったが、彼の言葉を続けさせてはいけない気がした。
「違うよ……君は、そんな奴じゃない!」
「何が違うんだ? 俺が仮面ライダーを破壊し、命を奪ったのは事実だ。そんな俺が、仮面ライダーとして戦う資格などないだろう?」
「例え、そうだったとしても……君が誰かの死を望むような奴じゃないことは、僕はよく知っている!
だって君は剣崎と一緒に戦ってくれたし……僕の命だって、救おうとしてくれたじゃないか! そんな君が破壊者だなんて、ありえないよ!」
必死の叫びが狭い空間で響き渡る。
今でも鮮明に思い出せるのは、病院で繰り広げたディケイドとの戦いだ。彼は瀕死の剣崎と力を合わせて、ダークカブトだった自分に立ち向かっている。あの時のディケイドは破壊を望んでいるようには見えなかったし、何よりも剣崎の勇姿を心から認めていた。
先の戦いだってそうだ。ワームとなって一方的に襲いかかった自分を助けるため、怪人に攻撃を加えている。破壊ではなく、誰かを守ろうという勇気がそこにあった。
だから、殺戮を望む化け物がディケイドの中にいるわけがなく、何か止むを得ない理由があるはずだ。
「そうか……だが、俺が一真を助けて、そしてお前の命が救われたとしても、死んだ奴らはもう帰ってこない。やり直すことだって、できないんだぞ?」
「そ、それでも……それでも、君には仲間になってくれる人がいる!
名護さんや翔太郎に一条さん、真司や麗奈、修二にリュウタ……みんな、話せばわかってくれるよ!
今だって、君の隣にはレイキバットやカブトゼクターがいるじゃないか!」
「それは、お前だってそうじゃないのか?」
「えっ?」
「お前のそばには、お前を認めてくれた奴らがたくさんいる。このレイキバットとカブトゼクターだって、お前のことを必死に探して、そしてお前を守った。
何よりも、お前は俺を助けようと戦った……違うか?」
そう、ディケイドはしたり顔で口にした。
彼と入れ替わるように、今度はレイキバットが前に出る。
「総司。お前はカブトゼクターに言ったよなぁ? 死んでいった仮面ライダーたちの遺志は、この僕が継ぐ! と……あの時の言葉は、嘘だったのか?」
「う、嘘じゃないよ! 天道やダークカブトゼクターのために、そしてみんなを守るために戦いたいって、思ってた!
でも、怖い……また、誰かを喪うことが……自分に負けて、仮面ライダーの力で誰かを傷付けてしまうことが、怖いんだよ!」
言葉を紡ぐたびに胸の奥が締め付けられていき、気が付くと大粒の涙が溢れ出ていた。
ダークカブトゼクターはこんな自分を守るため、ガドルを相手に意地を見せた。名護さんとの絆を信じてくれた天道だって、こんな自分にカブトゼクターを託してくれた。彼らのためを想うのならば、立ち上がるべきであることはわかっている。
だけど、この体は動かない。今の自分に、カブトにふさわしい勇気を背負えるとは思えなかった。
「……俺は、お前が一真を殺したことを許すつもりはない」
恐怖に震える心を咎めるように、ディケイドは呟く。
顔をあげて、ディケイドと目を合わせる。拒絶するような言葉だったが、その瞳からは……どこか温かさが見えた。
「お前がどう変わろうとも、お前が一真を殺したという事実は変わらない。お前が誰かを殺そうとするなら、俺はお前を破壊するつもりだ」
「……そうだよね。やっぱり、君も僕のことを……」
「だが、一真は言っていた」
失意に沈みそうになった途端、ディケイドは窓から差し込んでくる太陽の光を目がけて、己の指をかざす。その姿は、まるで本物の
天道総司のように、天の道を歩むに相応しい強さと勇気で溢れていた。
「ブレイドの、仮面ライダーの力で……みんなを守ってくれ、と。あいつは、最期までお前のことを憎もうとせず、俺にすべての願いを託していた」
「仮面ライダーの力で、みんなを護って……? 剣崎は、本当にそう言ってたの?」
「ああ。そして、お前が出会った仮面ライダーファイズ……乾巧という男は、天道からのメッセージを託されている。
アメンボから人間まで、全ての命を平等に守る……そんな天道の夢を、天道と同じ顔をした黒いカブトに変身する男に伝えてくれと、巧は言っていた。
そして、巧も死んだ……けれど、巧はきっと笑っていたはずだ」
「天道たちが、僕に……!?」
驚愕と同時に、この部屋に太陽の光が更に注がれていき、思わず目を細めてしまう。
天道と巧は自分に夢を託していた。二人の遺志を継いで、全ての命を守ってくれると信じていた。カブトゼクターだけでなく、彼らの夢だって背負っていたのだ。
その途端、涙で濡れた頬を触れられるのを感じる。
いつの間にか、カブトゼクターが目前にまで迫り、その角で涙を拭ってくれていた。力強さをそのままにしながら、この顔を傷つけないようにゆっくりと。
「カブトゼクター……君は、まだ僕と一緒にいてくれるの?」
問いかけると、カブトゼクターは頷いてくれた。ガドルとの決着をつけるため、初めてカブトゼクターを手に取った時のように。
「おっと、俺様を忘れるなよ! 総司、お前はまだまだ見込みがある男だ! この俺様が認めたのだから、もっと堂々としてもいいんだぜ?
それに、例えお前の中にもう一人のお前ってヤツがいて、誰かを殺そうとしたのなら……この俺様が総司を救ってやろう!
大丈夫だ! 俺様もそばにいる! そして上を見ろ!」
今度はレイキバットが反対側の頬に翼を添えて、涙を拭いてくれる。
そんなレイキバットに促されて、首を上げた瞬間、見覚えのある優しい光が発せられ、ハイパーゼクターが現れた。
ハイパーゼクターはその小さな体で、いつの間にか手放してしまったデイバッグを運んでいる。ぶん、と音を鳴らしながらデイバッグを振るうと、銀色のベルトが目の前に落ちてきた。
今はもういない、心から信頼した相棒と繋がるためのベルト。そして今は、天道たちから託された遺志を成し遂げるため、正義の仮面ライダーに変身するためのベルトだった。
「これは、僕のベルト……! まさか、ハイパーゼクターは僕のために運んでくれたの!?」
時空の扉から放たれる輝きが収まった頃、ハイパーゼクターもまた頷く。その後ろで開かれた扉からは、多くの仮面ライダーの力強い笑顔が見えた気がした。
剣崎も、海堂も、天道も、翔一も……みんな、暖かい瞳で僕を見守ってくれている。そこに失望や憎悪など、一かけらも感じない。
なんてことだ。みんなはずっと僕に手を差し伸べてくれていた。キングの嘘に惑わされて、全てから逃げ出そうとしたにも関わらず、僕のことをこんなにも想ってくれていた。
「最後にもう一つだけ、伝えておこう」
やがて、ディケイドは椅子から立ち上がりながら、宣言する。
「生きている限り、大切な誰かと離れ離れになる時は必ず訪れる。しかし、互いを信頼しあえば、どれだけ遠くに離れていても……心はいつだってそばにいて、もう一度だけ巡り会わせてくれる。
そして、また新しい出会いが訪れて、人はもっと大きくなれる……生きて、道を歩く度に、絆はもっと大きくなっていく」
「それは、誰の言葉なの?」
「俺の言葉だ」
そして自分を指さす彼の姿は、どこまでも大きな自信に満ち溢れていた。きっと、天道に勝るとも劣らないだろう。
そんな彼には、どうしても聞きたいことがあった。
「君は、いったい何者なの?」
「言ったはずだ。俺は、通りすがりの仮面ライダーだと」
「そうじゃないよ。僕は君の名前が知りたいんだ……君の本当の名前を」
「……
門矢士だ、覚えておかなくていい」
かつてと違い、否定のニュアンスが含まれた言葉だ。
けれど、その名を胸に刻みたかった。剣崎たち仮面ライダーのために戦い、僕を救ってくれた男の本当の名前を。
ディケイド……
門矢士を前にして、僕はようやく立ち上がった。
「いいや、僕は君の名前を忘れないよ。士のことを、ずっと覚えているから。
本当にありがとう……カブトゼクター、レイキバット、ハイパーゼクター、そして士! 僕の名前は、
天道総司……またの名を、仮面ライダーカブト!」
そして、士たちへのお礼も込めて、僕もまた名乗りを上げる。
まだ、恐怖は拭い去れていない。キングと戦えるかどうかはわからないし、僕が見捨ててしまった名護さんや翔太郎たちの所に戻るのは、はっきり言って不安だった。
天道のような天の道を歩めるとは限らないし、剣崎のような輝く勇気だって持っている自信がない。だけど、きっと大丈夫だった。僕のことを信じて、そして守ってくれたみんながここにいるのだから。
だから、僕は
天道総司の名前を背負って生きていきたい。僕を信じてくれた人たちや、戦う力を持たない誰かを救うためにも。
士の声は、やっぱり頼もしく聞こえた。
◆
総司は立ち上がってくれたが、自分たちに猶予は残されていない。
東エリアの大半が禁止エリアとなり、そして大ショッカーからの刺客が新たに現れることが放送で告げられた。大ショッカーは殺し合いを確実に煽り、参加者を強引に減らしにかかっている。
東エリアに残してきたフィリップや涼たちが心配だし、また橘も散ってしまった。あの
ン・ダグバ・ゼバの名前が呼ばれたことが不幸中の幸いだが、微塵も喜べるわけがない。仮にダグバが死んだとしても、この殺し合いが終わることはないし、またダグバが簡単に死ぬような奴なのか? 乃木が復活したように、ダグバも何らかの手段で復活する可能性も0とは言い切れない。
だが、仲間を失った悲しみに沈み、そしてダグバの蘇生を警戒してもどうにもならなかった。東エリアの仲間たちも、無事に脱出してくれることを祈るしかない。
「士、ごめん……僕のせいで危ない目に遭って……」
「総司。それは、ここで話すようなことじゃない」
泣きそうな子どものように落ち込む総司を、士はぶっきらぼうに励ます。
今は一刻も早く病院に向かい、総司の仲間たちと合流することが最優先だ。戦闘と総司の回復で時間を取られたが、トライチェイサーを走らせればいいだけ。
名もなき民家から出て、病院を目指す。
だが、二人の足はすぐに止まった。
「まさか、お前の方から来てくれるとはな」
士が呟いた途端、新たなる足音が割り込んでくる。
振り向いた先には、この殺し合いで数え切れないほどの悲劇を生み出した仇敵の姿があった。
「……あーあ。その様子だと、ディケイドが余計なことをしてくれたみたいだね」
若干の落胆が混ざっているが、その声を忘れるわけがない。
「「キング……!」」
士と総司が叫んだ瞬間、現れた男……キングは薄気味悪い笑みを浮かべ始めた。
【二日目 朝】
【D-2 市街地】
【擬態
天道総司(ダークカブト)@仮面ライダーカブト】
【時間軸】第47話 カブトとの戦闘前(三島に自分の真実を聞いてはいません)
【状態】疲労(中)、ダメージ(大)、不安と安堵、仮面ライダーブレイドに1時間30分変身不能、サナギ態に1時間50分変身不能
【装備】ライダーベルト(ダークカブト)+カブトゼクター+ハイパーゼクター@仮面ライダーカブト、レイキバット@仮面ライダーキバ
【道具】支給品一式×2、753Tシャツセット@仮面ライダーキバ、魔皇龍タツロット@仮面ライダーキバ
【思考・状況】
基本行動方針:天の道を継ぎ、正義の仮面ライダーとして生きていきたい。
0:目の前のキングに対処する。
1:剣崎と海堂、天道や翔一の分まで生きて、みんなのために頑張る。
2:翔一、ごめんなさい……。
3:間宮麗奈が心配。
4:放送のあの人(三島)はネイティブ……?
5:士が世界の破壊者とは思わない。
6:元の世界に戻ったら、本当の自分のお父さん、お母さんを探してみたい。
7:剣崎、ごめんなさい。
【備考】
※自分が翔一を殺したのはキングの罠であることに気付きました。
※渡より『ディケイドを破壊することが仮面ライダーの使命』という言葉を受けましたが、現状では半信半疑です。
【
門矢士@仮面ライダーディケイド】
【時間軸】MOVIE大戦終了後
【状態】ダメージ(中)、疲労(大)、決意
【装備】ディケイドライバー@仮面ライダーディケイド、ライダーカード一式@仮面ライダーディケイド、ディエンドライバー+ライダーカード(G3、王蛇、サイガ、歌舞鬼、コーカサス)+ディエンド用ケータッチ@仮面ライダーディケイド、トライチェイサー2000@仮面ライダークウガ
【道具】支給品一式×2、ケータッチ@仮面ライダーディケイド、キバーラ@仮面ライダーディケイド、 桜井の懐中時計@仮面ライダー電王 首輪探知機@オリジナル
【思考・状況】
基本行動方針:大ショッカーは、俺が潰す!
0:どんな状況だろうと、自分の信じる仮面ライダーとして戦う。
1:目の前のキングに対処する。
2:総司のため、西側の病院を目指す。
3:巧に託された夢を果たす。
4:友好的な仮面ライダーと協力する。
5:ユウスケを見つけたらとっちめる。
6:ダグバへの強い関心。
7:音也への借りがあるので、紅渡を元に戻す。
8:仲間との合流。
9:涼、ヒビキへの感謝。
【備考】
※現在、ライダーカードはディケイド、クウガ、龍騎、ファイズ、ブレイド、響鬼、電王の力を使う事が出来ます。カブトの力については不明です。
※該当するライダーと出会い、互いに信頼を得ればカードは力を取り戻します。
※ダグバが死んだことに対しては半信半疑です。
【キング@仮面ライダー剣】
【時間軸】本編34話終了より後
【状態】疲労(大)、ダメージ(大)、愉悦
【装備】破壊剣オールオーバー+ソリッドシールド@仮面ライダー剣、ベルデのデッキ@仮面ライダー龍騎、T2ゾーンメモリ@仮面ライダーW、グレイブバックル@仮面ライダー剣、
【道具】デンオウベルト&ライダーパス@仮面ライダー電王、カッシスワーム・クリペウスとの対決用の持ち込み支給品@不明、首輪(五代、海東)
【思考・状況】
基本行動方針:面白おかしくバトルロワイアルを楽しみ、世界を壊す。
0:目の前のディケイド達に対処する。
1:このデスゲームを楽しんだ末、全ての世界をメチャクチャにする。
2:カッシスワームの復活を警戒……まぁホントに復活してたら会ったとき倒せばいいや。
3:僕はまだ本気出してないから負けてないし!
4:ダークカブト(擬態天道)は徹底的に堕とす。
【備考】
※参加者ではないため、首輪はしていません。そのため制限が架されておらず、基本的には封印されない限り活動可能です。
※カッシスワームが復活した場合に備え、彼との対決も想定していたようですが、詳細は後続の書き手さんにお任せします。
※他世界のコーカサスビートルアンデッドと一体化したためソリッドシールドが復活しました。
※T2ゾーンメモリは会場内どこでも飛べますが、マキシマムドライブでの使用などの場合も含め2時間に一度しか能力を使用できません。
※この会場内の情報は
第二回放送とその直後までのものしか知りません。彼の性格上面白くなりそうなこと優先で細かいことを覚えていない可能性もあります。
最終更新:2019年06月03日 19:57