The sun rises again ◆JOKER/0r3g



「やあ、ディケイドにダークカブト。さっきぶりだね」

士と総司の憎しみを込めた視線を前に、キングは一切動じることなく挨拶を飛ばす。
その声音にはまるで旧友に出会ったかのような気安さが滲み出ていて、彼の今までに行ってきた所行とのアンバランスさが妙に心地悪かった。
だが、直視にすら耐えうるような醜悪な感性を持つ男を前に、門矢士は引くことなくその足を踏み出す。

「あぁ、久しぶりだな、キング。お前の悪趣味も相変わらずみたいで安心したぜ」

「ん?ダークカブトのこと?やだなぁ、あれは僕のせいじゃないって――って言っても、無駄っぽいかな」

見え透いたような演技をやめて、キングは溜息をつく。
とはいえその顔に浮かんでいるのは、落胆と言うより遊ぼうとしていた玩具が売り切れていた子供のような退屈を噛み砕くようなものであったが。

「はぁ、ホントに台無しにしてくれるよね。折角僕が色々準備してダークカブトを“前みたい”にしようとしてたのにさ」

「そんなことをして、一体何の意味がある?」

「……意味?そんなの決まってるでしょ、その方が楽しいからだよ」

ヘラヘラと。ニヤニヤと。
薄気味悪い笑みを浮かべながら、キングは変わることなく悪意を吐き続ける。
色褪せることのない邪悪を相手にして拳を握りしめた士を横目に、総司は一歩前に足を踏み出した。

「……なんで、そんな簡単に誰かを傷つけられるの?本当にそれが楽しいって、心から思ってるの……?」

総司の声に宿っているのは、憎しみというより深い困惑と焦燥だった。
人と人との関わりを得て仮面ライダーとして戦う決意をし、そして今また士と言葉を交わし道を踏み外さずに済んだ総司だからこその疑問。
キングは以前、正義の味方としての生き方など愚かで下らないと宣った。

その裏にある、薄汚い人間の本性を知れば必ず失望するとも。
無論キングの口八丁である可能性も捨てきれない。
だがそれでも、聞いてみたかった。

過去の自分のように世界を全て滅ぼそうとする男が、なぜこうまで人を憎み誰かを嘲る存在に成り果てたのか、その理由を。
そして同時にこの問いを投げることは、総司が最早自分勝手に世界を憎み誰かの救いを待つだけの子羊ではなくなったことを意味していた。
もしも分かり合える可能性があるのなら……もしもただ道がわからず喚いているだけなのだとしたら、諸悪の根源たるキングとて見捨てるわけにはいかない。

それは師匠譲りの暑苦しく泥臭い、しかし確かな正義の意思が見せた総司の善意であった。

「……うーん、そうだね。やっぱり君にはちゃんと話しておくべきだったよね。僕がなんでこんな世界滅んだ方がいいと思ったのかって、その理由を」

果たして真摯な総司の瞳に対し、暫しの思考の後キングは口を開いた。
意外にも総司の疑問を嘲るものではなく、その問いを受け止め応えるために。
自身に怪訝な表情を向ける士を気にすることもせず、キングは総司に向けて一歩進む。

「実は僕が世界を滅ぼそうとしたのはね――人間の本性を知ったからなんだよ」

「人間の本性……?」

先の戦いでもキングが述べていた不穏なワードを、総司は繰り返す。

「そうさ、僕は封印から解放された後、ヒューマンの作った世界がどんなものか、学ぼうとしたんだ。
――彼らの作った、インターネットっていう便利なものを使ってね」

言いながら彼は、懐から既に使い古された感触のある二つ折りの携帯電話を取り出した。
恐らくはこの場では電波が通っていないために大した使用方法もないだろうそれをしかし愛おしげに手で弄んでから、彼はそれを大切そうにしまい込む。

「これは本当に色んな事を教えてくれたよ。人間の犯した罪や、いつまでも続く戦いの歴史、それから他の種族を滅ぼそうとする傲慢さも」

「……だからお前はそんな世界は間違ってるって言いたいのか?」

「違うよ、そんな大層な話じゃない。僕が本当に人間の本性を知ったのは……掲示板でだった」

「掲示板……?」

疑問符を浮かべた士に対し、キングは自身の携帯電話を慣れた手つきで操作して、小さな画面にとあるサイトを表示する。
字は細かく大した内容は読み取れなかったが、キングは満足げな表情で再び携帯を操作する。

「ここには、誰の名前も顔も存在しない。みんな同じ『どこかの誰か』になって、自分の本心をぶちまけるんだ。
あいつに死んでほしい、あいつより俺の方が出来る、それから――『こんな世界なんて滅んじゃえ』、とかね」

ニヤリ、とキングの笑顔が不気味に歪む。
目にする誰もを不快にさせるような邪悪な笑みを浮かべながら、しかしキングの言葉は止まることを知らない。

「お前らは結局、人の上っ面しか見てないんだよ。ネットを見れば、どこにでも悪意は転がってる。
誰にでも、なんにでもなれるネットの中でそんな言葉を吐くのが人間だっていうなら、それが人間の本性ってことでしょ?」

「――」

「僕はただ、人間の真似をしてるだけだよ。醜い醜い、君たちの中にある本性の真似をさ。
だから僕を倒そうとするなら、君たちは人間の本性を否定することになるんだよ。
人間を守ろうとして人間の本性を否定するなんて、これ以上に面白いことなんてないと思わない?
……ねぇこれでも、正義の味方って本当に正しいなんて本当に言えるの?世界は守るべきなんて、本当に言えるの?」

ケラケラと。クスクスと。
引きつったような笑みを浮かべながら、キングは問う。
総司に対して、彼がどう在るべきなのかと。

「――君は分かってるはずだよ、ダークカブト。
自分の顔も名前も知らない君は、なりふり構わず世界を滅ぼそうとしたじゃないか。
君は人間の本性の体現、だから僕は君を堕としたいんだよ」

俯いた総司を前にして、最後の駄目押しとでも言うようにキングは吐き捨てる。
これで総司が、正義の味方などという幻想を捨ててまた世界を滅ぼすために戦うというならこれ以上に面白いことはないと、そう期待を込めて。
だが、彼の期待は容易く打ち砕かれることとなる。

長い沈黙を破りその口を開いた、もう一人の男の為に。

「――やっぱりお前は、何も分かってないらしいな」

「士……」

それは、呆れの様な感情を多分に含んだ、門矢士の声だった。
一切の迷いもなく、揺ぎ無い意志で以てキングを否定したその言葉に、総司も思わず目を奪われてしまう。

「……確かにお前の言う通り、人は自分勝手に、見知らぬ誰かを傷つけることもある」

「じゃあやっぱり――」

「――だがそれと同じくらいに、俺たちは見知らぬ誰かを気遣い、守ることだってできる」

嘲笑するかのようなキングの言葉を、士は断ち切るように言い切る。

「こいつは、他人の優しさを知り、変わった。ボロボロになってでも、誰かを守るため戦おうとした。
……お前がこいつを人間の本質を体現した存在だというのなら、それも紛れもなく、人の本質だ。
それを無視して誰かを傷つける事しか考えないお前に、人を語る資格はない!」

「士……」

強く、真っ直ぐにキングに対し今の総司が変わったと宣言する士。
その雄姿を前に、キングはただ苛立たし気に眉を吊り上げる。

「お前……いったい何者だ」

キングの問いに、士は僅かに口角を上げる。
告げるべき言葉は、ただ一つ。
力なきものを苦しめる悪に、破壊者たる自分が宣言する変わらぬ名前――。

「――通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ!」

真っ直ぐに伸ばされた士の人差し指を真っ向から受け、キングは大きな溜息と共にその身を怪人のそれへと変化させる。

「はぁ、ほんっとウザイなぁ。もういいや、お前らどっちも……ここで死んでいいよ」

コーカサスアンデッドの姿となり殺気を漲らせるキングに対し、士と総司は並び立つ。
その手に己の力を持って、これ以上この男に傷つけられる誰かを生まないために。

「変身!」

叫んだ男たちの身体は、一瞬で鎧に包まれていく。
士の身体は、全てのライダーを模倣する力を持つ世界の破壊者、ディケイドのものに。
総司の身体は、今は亡き男から継いだ、太陽の神、カブトのものに。

それはまさしく、以前は敵同士として敵対した二人が、今度は共に戦う仲間として並び立った瞬間であった。
そしてその瞬間を待ち望んだように、ライドブッカーよりディケイドの手に飛び出す三枚のカード。
色を取り戻したそれは、士が総司と心を通わせたことでカブトの力を取り戻したことを意味する。

この場で七つ目に取り戻したその力を再びブッカーに戻しながら、ディケイドは目の前の敵に対し構えなおす。
横で同じく構えたカブトと同時に、彼は勢いよく剣へと変形させたブッカーをコーカサスに対して振り下ろした。
だが、挟み撃ちの形で左右から放たれた二人の攻撃は、それぞれ彼の持つ剣と盾に阻まれその身には届かない。

片手でそれぞれの仮面ライダーを良いように押さえつけるコーカサスの怪力に驚愕しつつも、しかし攻めの手を緩めはしない。
こちらを弾くように敵が力を込めたその瞬間、二人はその勢いさえ利用して思い切り後ろへと跳んだ。
コーカサスから距離を取った場所で着地した彼らはそのまま、それぞれの得物を銃へと変形させて高エネルギーの弾丸を敵へ一斉に放つ。

それぞれ凄まじい連射性を誇るゼクトクナイガンとライドブッカーの弾丸の雨を受けて、さしものコーカサスも蜂の巣に……ならない。
明らかに彼の持つ盾のみでは庇いきれないはずの範囲に放たれた弾丸をも、なぜかコーカサスの前で弾かれ彼の身体に到達しないのである。

「なに……ッ!?」

「無理無理、そんなんじゃ無駄だって――フン!」

その違和感に思わず攻撃をやめたディケイドに対し、コーカサスは嘲笑するように手をぶらつかせた。
真面目に戦う気さえないようなそのふざけた態度にディケイドが一瞬気を取られたその瞬間に、唐突に彼はその手に持つ剣を振るい衝撃波を放っていた。

「――危ない!」

だがその一撃もまた、ディケイドのもとに届くことはなかった。
横から勢いよく彼の前に飛び出したカブトが、衝撃をその身を盾にして受け切っていたからだ。

「総司!」

ディケイドが叫ぶが、カブトは返事をすることも出来ぬままその巨体を大きく吹き飛ばされていく。
瞬間強く地面に激突したカブトは、未だ変身を保ってこそいるもののすぐに立ちあがることは出来ないようであった。
無理もない。先の病院でもキングと戦い、その後に間髪入れず自分やデストワイルダーとの戦闘をこなした直後だ。

カブトの装甲に守られているからといっても、体の疲労は隠しきれるはずもなかった。
だが、そんな泣き言を言ってもキングが止まるはずもない。
一人きりになったからと言って、ディケイドにこの場から逃げることなど許されるはずがなかった。

「固い盾……それならこいつだ」

――KAMENRIDE……HIBIKI!

ブッカーからカードを取り出したディケイドはそのままドライバーへとカードを投げ入れて装填する。
ドライバーがカードを認識すれば、瞬間彼の身体は紫の炎に包まれその身を変える。
炎を振り払い現れるは、音撃を武器に戦う戦士、仮面ライダー響鬼そのもの。

原型さえ留めないフォームチェンジに、コーカサスはしかし一切関心を見せることもなく悠然と向かっていく。
だが、相当の圧迫感を伴うその歩みに対してディケイド響鬼は迷うことなく一枚のカードをブッカーから取り出しそのままドライバーへと投げ入れた。

――FINAL ATTACKRIDE……HI・HI・HI・HIBIKI!

ドライバーが高らかに必殺の一撃を宣告すれば、バックルに浮かぶ響鬼のライダーズクレストが象るそれ――音撃鼓が具現化され、コーカサスに向かって射出される。
振り払うこともしないままコーカサスがそれを受け容れれば、音撃鼓は彼の目前でソリッドシールドに吸着し、巨大化した。

「何のつもり?ディケイド。こんなの意味がないことくらい、分かってるでしょ?」

「さぁ、そいつはどうかな!」

威勢よく挑発に返しながら、ディケイド響鬼はその手に音撃棒を構える。
だが鬼気迫る勢いで駆け寄ってくるディケイドを前にしてもなお、相対するコーカサスの目は著しく冷めたものであった。
何故ならその程度の攻撃であれば、自分の盾を壊すことなど到底かなわないと知っていたからだ。

それに響鬼の必殺技はどれも長い時間のかかる隙の多い技である。
盾の防御力に身を任せ目の前で隙を晒すディケイドを攻撃すれば自分の勝利は決まったも同然ではないか。
世界の破壊者を名乗る歴戦のディケイドがこのような安易な策に出たことに些か失望しながらも彼はディケイドの接近を待って。

「ヤァ!」

掛け声と共に振り下ろされた音撃棒が伝えた衝撃に、思わずその身を硬直させた。

(なッ……!?)

ビリビリと、空気が震える。
ソリッドシールドで純粋な音撃打の威力は死んでいるはずだというのに、なお伝わるこの衝撃。
一体どういうことだと思案に沈んだ次の瞬間には、コーカサスの身体はその怪力を以てしても指一本たりとして動かせなくなっていた。

(フッ、思った通り引っ掛かりやがった)

困惑を露わにするコーカサスの一方で、ディケイドは内心で自身の策の成功を実感していた。
ディケイドがこの状況で響鬼のカードを切ったのは、この瞬間の為であった。
つまりはこの音撃打が今のコーカサスに対して最も効果的にダメージを与えられる一撃であると判断したのである。

響鬼の必殺技である音撃打の特徴は、その特異性にある。
その特異性とは――カブトの回復までの時間を稼げるだけの拘束時間を持つというのもそうだが――音撃打は他の必殺技と違い単純な破壊力だけではない攻撃が出来るということだ。
その攻撃とは、音撃鼓を叩いた時に発生する空気の振動、聴覚さえなくとも伝わるほどの音の波。

音撃打で発生する衝撃が全て盾に阻まれるとしても、そこから生じる音は盾越しにコーカサスへと伝わる。
コーカサスの盾などよりよほど強固な甲殻を持つ魔化魍でさえ怯むような爆音だ、聴覚を麻痺させて動きを封じることなど、容易いことだ。
清めの音としては十分に伝わらなくとも、単純な空気振動のみでコーカサスの動きを封じることが可能だと、ディケイドは考えたのである。

そしてその目論見は成功する。
まともな回避行動もとらず、恐らくは自分が自ら死にに来たのだと勘違いして攻撃を受け容れたコーカサスの身体は、今まんじりと動くことさえ出来ず音撃に晒されている。
恐らくは想像を絶するような爆音に身を包まれているのだろう彼を前に、しかしディケイドはいい気味だと感じていた。

今までキングが行ってきた数々の悪行を考えればまだ足りないとさえ思うが、しかしこれ以上冗長に音撃打を続けても“型”が崩れ散漫な攻撃になってしまうだけ。
故にディケイド響鬼は今一度音撃棒を大きく空に向け掲げて――。

「ヤァァァァァ!!!」

――一層大きな掛け声と共に、音撃鼓を強かに叩きつけた。
攻撃を行っていたディケイドにさえ跳ね返るような振動を受けてもなお、コーカサスの盾には罅一つさえ入らない。
とはいえその盾に守られていたコーカサスは凄まじい音圧に晒された為に前後不覚を起こしたか、ディケイドに反撃することも出来ず呻き苦しみに身を捩っていた。

だが、傍から見れば無防備とはいえ、今のコーカサスはなおも自動防御の盾に身を守られている状態。
故にその盾を破壊できる確証も持たないディケイドはその身を響鬼から通常のものへと戻しながら未だ地に這いずるカブトのもとへ足を進める。

「立てるか、総司」

「士……ごめん、足引っ張っちゃって」

ディケイドが差し伸べる手を、カブトは強く握りしめ立ち上がる。
戦いの場では長すぎるほどの回復時間を与えられたとはいえ、そもそも今の総司は満身創痍だ。
ハイパーカブトへの変身も、正直に言えばクロックアップさえも満足に出来るか怪しい。

先ほどまで天道を継ぐと大言壮語を吐いておきながら、そんな有り体の自分を恥じ、謝罪するカブト。
だが対するディケイドは、茶化す様子もなく真っ直ぐに彼を見据える。

「いや、奴を倒すにはお前の力が必要だ、総司。……やれるか?」

それは、どこか不思議な声音だった。
期待を込めているようでもあり、同時に自分を試すようでもあり、そしてまた自分がどう答えるか確信をもって知っているかのような声音であった。
そしてそんな“仲間”の問いかけに対して、総司が答えるべき言葉はただ一つだった。

「――あぁ、やれるよ」

「そうか」

短い返答に、ディケイドは満足したように再びコーカサスへと向き直る。
再起不能になってもおかしくない爆音を受けてもなお、やはり人外の範疇であるコーカサスはこの短時間で回復し殺意を込めた視線をこちらに向けていた。
恐らくはもう余裕も見せずに自分たちを殺しに来るのだろうが、奴の不快な無駄口が減ったと考えればこれで随分とやりやすくなったともいえる。

「グオオオオオオオ!!!」

理性さえかなぐり捨てた咆哮を吐いて突進するコーカサス。
だが既にディケイドの……いやディケイドとカブト、二人の切り札は、発動していた。

――FINAL FORMRIDE……KA・KA・KA・KABUTO!

「なら……ちょっとくすぐったいぞ!」

「え、ちょ……!?」

カブトが電子音声の内容に意識を向けるより早く、ディケイドは彼の背中を緩く撫で上げる。
そその瞬間、カブトの身体は眩い光を放ち変わっていく。
刹那の後、物理法則など無視するような無茶な変形を終えたカブトの身体は、既に人型のそれではなく。

まさしく総司を仮面ライダーカブトとして認めた新たな相棒を模した新形態、ゼクターカブトのものへと、彼の身体は変わっていたのであった。

「これは、カブトゼクター……?」

「ガアアアア!」

「――!」

自分の姿に一瞬困惑するカブトだが、迫りくるコーカサスを前に自分のやるべきことを理解する。
言葉さえ失った黄金のコーカサスに対し、迎え撃つは赤い一本角。
バーニアを吹かし思い切り突撃すれば、ソリッドシールドに阻まれつつも彼の進行を阻むことに成功する。

――FINAL ATTACKRIDE……KA・KA・KA・KABUTO!

一瞬の均衡の後、ディケイドが新たに装填したカードによって漲ったエネルギーで、ゼクターカブトはコーカサスを高く空に放り上げる。
そして彼が放り投げられた先にあるのは、合わせたようにそこに出現した、バーコードを意匠に刻んだディケイドの足裏であった。

「ハアァァァァ!」

「グッ、ガッ……!」

鋭くタイミングのぴったりと合ったそのキックは、しかしまだコーカサスには届かない。
ソリッドシールドの中心に大きく罅を刻み込みながら、しかしまだ一歩コーカサスを倒すには足りなかったのである。
これで自分の勝ちはやはり揺るがない、とコーカサスは勝利を確信しようとして。

――ONE・TWO・THREE
――RIDER KICK

自身の背後、ディケイドのキックが導く先で待ち受ける無慈悲な電子音声を、聞いた。
どういうことだと首だけで振り返れば、そこにはファイナルフォームライドを解除し自身のゼクターを操作するカブトの姿。
迷いや躊躇など一切見られない、悪を砕いて誰かを守る為力を行使する正義の味方の姿が、そこにはあった。

そして瞬間、カブトは思い切り振り返り渾身の回し蹴りを放った。
ライダーキック。あらゆる世界の仮面ライダーが連綿と受け継いできたその名前にこれまでにないほどの重みを、総司は感じる。
だがその重みに耐えられるだけの強さを、総司は既に持っていた。

天道だけではない、あらゆるライダーを継ぐ決意を固めた彼のその蹴りは、確かに許されざる悪を守る盾を打ち砕く。
そして同時、ディケイドの足もコーカサスの身体に深く突き刺さって――。
――瞬間生じた爆発と共に、彼らはようやくこの悪意の化身に一矢報いたのであった。




「逃げられた……か」

爆風が止んだ時、ディケイドは悔しさを滲ませながらそう呟いた。
自慢の盾が破壊されたと見るやすぐさま逃走に思考を切り替えられるというのは、ある意味で言えば逞しいことだ。
吐き気しか感じないような邪悪を逃してしまったことには勿論口惜しさを感じるが、今は取りあえず奴にリベンジを果たしたという事実を喜ぶべきなのだろう。

散らばった盾のパーツにはもう目もくれず変身を解除した士は、そのまま同じく変身を解除した総司のもとへと駆け寄る。

「やったな、総司」

「……うん!」

言いながら、総司はようやく士に対し憑き物が取れたような笑みを浮かべた。
自分が成してしまったことに対する罪悪感や後悔は消え切ってはいないのだろうが、それでも。
強敵を仲間と共に乗り越えたという実感が齎したのだろうその満足感に満ちた表情に、士は思わず手癖で胸元に手を伸ばしかける。

(……っと、まだカメラは手元にないんだったな。ったく、大ショッカーの野郎め)

どんなぶれ方をしていても、きっと素晴らしい写真が撮れただろうにと口惜しさを覚えながら、しかし士はただ総司の笑みをその瞳に焼き付けていた。

「――総司君!どこだ、返事をしてくれ!総司君!」

そんな折、どこか遠くから男の声が聞こえてきて、二人は思わずそちらを振り返った。
その声自体に士は聞き覚えがないが、呼ばれているのは十中八九間違いなく目の前にいる総司その人だ。

「総司、この声が誰か分かるか?」

「うん、この声、名護さんだよ……僕の師匠なんだ」

「師匠……?」

総司が弟子入りしたのか、それとも名護という男が自分を師とするように言ったのか。
どちらにせよこの殺し合いの場では中々珍しい関係の形成に困惑を示した士を尻目に、総司はしかし彼を呼ぶその声に答えようとしなかった。
出会いたがっていた仲間との遭遇に何を戸惑うことがあるのだという士の怪訝な表情を受けて、総司は気まずさからかその視線を下ろした。

「総司、どうしたんだ?翔一を殺したことに後ろめたさを感じてるなら――」

「ううん、違うんだ士。僕は正直、分からないんだ。名護さんの……仲間のもとに戻るべきなのかどうか」

「なに?」

総司の言葉に、士は思わず聞き返す。
後ろめたさからでなく、仲間との合流を望まない理由とは一体何だというのか。
士から先ほどとは違う困惑を受け、些かばつの悪さを感じたか、ゆっくりと、言葉を選ぶように総司は口を開く。

「……ごめん、変だよね。自分でも分かってるんだ。
でも何となく、このまま名護さんのもとに戻るだけじゃ、駄目なんじゃないかって……」

自分自身の感情が分からないという様に、視線を迷わせる総司。
だがそれを見て、むしろ士は納得したように溜息をついた。

「いや……大体わかった。お前もまた、旅の途中だってことか」

「旅……?」

「そうだ、お前は今、ただ誰かに頼るだけの自分から成長しようとしている。
人は誰も旅をする……お前のそれも、その一つだってことだ」

したり顔で述べた士に対して、総司は未だ彼が言いたいことを理解できていなかった。
だが、先ほどとは反対に自身に満ち溢れた士は、彼の疑問の声を待つことなく言葉を紡ぐ。

「まぁ、そういうことなら仕方ない。名護って奴には俺から言っておく。
どっちみち、音也の件も話しておかなきゃいけなかったしな」

「ちょ、ちょっと待ってよ士!旅がどうとか、どういうことなの?僕は、一体どうすればいいの……?」

自分だけが全てを理解したような顔をしながら、踵を返し総司を呼び続ける声のもとに向かおうとする士。
だがそれを引き留めるのは、やはり総司のすがるような声だった。
自分から名護との合流を渋ったというのに都合のいいことだと思うが、しかし総司はやはり自分の感情と理性との折り合いが取れていないままだった。

「何をするべきか……それは、お前が決めろ。それが、旅ってもんだ」

「自分で……」

士の言葉を復唱しながら、総司は士の言う“旅”というものをひどく恐ろしいもののように感じた。
何が正しいかもわからない道筋を自分で探し、自分自身で切り開き、突き進む行為。
今までのように導いてくれる師もいないそんな行為を、果たして今の自分が一人で行っていいものなのだろうか。

先のように悪意を持つものに利用され、誤った道に進んでしまうのではないか。
そんな不安が、急激に押し寄せてくる。
だが、総司のそんな不安そうな表情を察したか、士は振り返り宥めるように口を開いた。

「大丈夫だ。お前は、自分が帰るべき場所ってのを持っている。
這ってでも帰りたいと思える、誰かが自分を待っている場所……それさえあれば、人は道を間違えたりしない。
お前の旅は確かに苦しいものになるかもしれない。だが――お前の帰る場所は、俺が守っておいてやる」

「士……」

「まぁそれでももし、お前がまた道を誤ったら……その時は今度こそ俺がお前を破壊してやるさ」

ニヒルに笑いながら、士は締めくくる。
字面だけ見れば、決して優しくはない言葉。
だがそれでも、その士の言葉は今の総司にとって染み入る様にすら感じられた。

自分の我儘を聞いてくれる仲間は、今までだってたくさんいた。
自分がやりたいといったら、仲間たちはいつだってそれを尊重し支えてくれた。
だが士のように、別々の道を進むために協力をしてくれる仲間は、初めてだったのだ。

だからだろうか。自分を破壊するなどと宣った目の前の男を、これ以上なく信頼している自分がいることを、総司は感じていた。
彼になら師を、そして友を任せられる。
彼がいてくれるなら、何があってももう自分を見失わないだけの何かを、何の憂いもなく探しに行くことが出来る。

だから総司の出すべき答えはもう、決まっていた。

「――ありがとう士。名護さんたちのこと、頼んだよ」

「あぁ」

先ほどとは違う、満足げな笑みを浮かべる士。
それを見やり自分も釣られて口角が上がるのを感じながら、総司は思う。
――こんな笑顔を、自分が守っていきたいと。

そのために必要なものが何なのか、未だ総司にはわからない。
強さなのか、優しさなのか、信念なのか、或いはそのどれでもないのか。
見つけられるかもわからないそれを探すには今与えられた時間だけでは足りないかもしれないが、少なくともそれを探した後に帰る場所の心配をする必要はなくなった。

他でもない世界の破壊者が、胸を張って守ると言ってくれたのだから。
何の悔いもなく自身を呼ぶ声に背を向けた総司にはもう、迷いはなかった。


【二日目 朝】
【D-2 市街地】


【擬態天道総司(ダークカブト)@仮面ライダーカブト】
【時間軸】第47話 カブトとの戦闘前(三島に自分の真実を聞いてはいません)
【状態】疲労(大)、ダメージ(大)、不安と安堵、仮面ライダーブレイドに1時間10分変身不能、サナギ態に1時間30分変身不能、仮面ライダーカブトに1時間50分変身不能
【装備】ライダーベルト(ダークカブト)+カブトゼクター+ハイパーゼクター@仮面ライダーカブト、レイキバット@仮面ライダーキバ
【道具】支給品一式×2、753Tシャツセット@仮面ライダーキバ、魔皇龍タツロット@仮面ライダーキバ
【思考・状況】
基本行動方針:天の道を継ぎ、正義の仮面ライダーとして生きていきたい。
0:もう迷わない強さを見つけるために、“旅”をしてみる。
1:剣崎と海堂、天道や翔一の分まで生きて、みんなのために頑張る。
2:間宮麗奈が心配。
3:放送のあの人(三島)はネイティブ……?
4:士が世界の破壊者とは思わない。
5:元の世界に戻ったら、本当の自分のお父さん、お母さんを探してみたい。
6:剣崎、翔一、ごめんなさい。
【備考】
※自分が翔一を殺したのはキングの罠であることに気付きました。
※渡より『ディケイドを破壊することが仮面ライダーの使命』という言葉を受けましたが、信じていません。




「総司君!どこだ、返事をしてくれ!」

男が無人の市街地全体に響き渡るような声を響かせて、自身の弟子を探している。
身体中は汗だくのまま、喉が枯れることなど厭わないようなその様相は、必死そのもの。
今のこの場の状況を考えれば危険人物がその声を頼りにやってくる可能性もあったが、しかし彼はそれでも構わないとさえ感じていた。

愛する弟子を守るためならば、今の自分が代わりに盾となって悪と戦おう。
例え信頼するイクサの力が使えなくても、それでも今の総司と悪が接触する危険性を考えれば自分が戦う方がましだと感じていた。
彼がそうまで総司の為に戦おうとする理由が、最早記憶さえないかつての一番弟子が非道の道に堕ちたという経験から来るものなのかどうかは、定かではなかったが。

ともかくそうして走り続け叫び続けた故に、戦士として洗練された名護の肉体も悲鳴を上げ始め、いよいよもってその足と声は止まってしまう。
だが、足を止めている時間などないと、軋む体に鞭打って今一度走り出そうとしたその瞬間、彼の耳にずんと響くような重低音が届く。
だんだんと近づいてくるそれは、まず間違いなく総司のそれではないだろう。

彼はバイクを持たずに走り去っていったのだし、この街の中でバイクを偶然見つける可能性など、決して高くはない。
懐からスイーツのガイアメモリを取り出して、すぐさま反撃が出来るよう準備を整える。
来るなら来いと言わんばかりに、往来の中心で迫りくるエンジン音を迎え入れる名護の前に、間もなく一台のバイクが停車する。

見覚えのない男、見覚えのないバイク。
自身の知る危険人物の特徴とは一致しないようだが、警戒は解くべきではない。
だが一方で、名護の貫くような視線を受けてもなお動じることなく男はカウルを跨ぎバイクを降りて地に降り立つ。

「――お前が、名護啓介だな」

「何故俺の名を知っている……、お前は何者だ」

ただ自分の名を呼びヘルメットを脱ぎ捨てる男。
名護の疑問に対して、しかし彼はただニヤリと笑って。

「俺か?俺は……通りすがりの仮面ライダーだ」

ただ、それだけ短く吐き捨てた。


【二日目 朝】
【D-1 市街地】

【門矢士@仮面ライダーディケイド】
【時間軸】MOVIE大戦終了後
【状態】ダメージ(中)、疲労(大)、決意、仮面ライダーディケイドに1時間50分変身不能
【装備】ディケイドライバー@仮面ライダーディケイド、ライダーカード一式@仮面ライダーディケイド、ディエンドライバー+ライダーカード(G3、王蛇、サイガ、歌舞鬼、コーカサス)+ディエンド用ケータッチ@仮面ライダーディケイド、トライチェイサー2000@仮面ライダークウガ
【道具】支給品一式×2、ケータッチ@仮面ライダーディケイド、キバーラ@仮面ライダーディケイド、 桜井の懐中時計@仮面ライダー電王 首輪探知機@オリジナル
【思考・状況】
基本行動方針:大ショッカーは、俺が潰す!
0:どんな状況だろうと、自分の信じる仮面ライダーとして戦う。
1:名護と話す。
2:巧に託された夢を果たす。
3:友好的な仮面ライダーと協力する。
4:ユウスケを見つけたらとっちめる。
5:ダグバへの強い関心。
6:音也への借りがあるので、紅渡を元に戻す。
7:仲間との合流。
8:涼、ヒビキへの感謝。
【備考】
※現在、ライダーカードはディケイド、クウガ、龍騎~電王の力を使う事が出来ます。
※該当するライダーと出会い、互いに信頼を得ればカードは力を取り戻します。
※ダグバが死んだことに対しては半信半疑です。



【名護啓介@仮面ライダーキバ】
【時間軸】本編終了後
【状態】疲労(大)、ダメージ(大)、精神疲労(大)、左目に痣、決意、仮面ライダーイクサに1時間変身不能、仮面ライダーブレイドに1時間5分変身不能
【装備】イクサナックル(ver.XI)@仮面ライダーキバ、ガイアメモリ(スイーツ)@仮面ライダーW 、ファンガイアバスター@仮面ライダーキバ
【道具】支給品一式×2(名護、ガドル)
【思考・状況】
基本行動方針:悪魔の集団 大ショッカー……その命、神に返しなさい!
0:なんだ、この男は……?
1:直也君の正義は絶対に忘れてはならない。
2:総司君のコーチになる。
3:紅渡……か。
4:例え記憶を失っても、俺は俺だ。
5:どんな罪を犯したとしても、総司君は俺の弟子だ。
6:一条が遊び心を身に着けるのが楽しみ。
7:最悪の場合スイーツメモリを使うことも考慮しなくては。
【備考】
※ゼロノスのカードの効果で、『紅渡』に関する記憶を忘却しました。これはあくまで渡の存在を忘却したのみで、彼の父である紅音也との交流や、渡と関わった事によって間接的に発生した出来事や成長などは残っています(ただし過程を思い出せなかったり、別の過程を記憶していたりします)。
※「ディケイドを倒す事が仮面ライダーの使命」だと聞かされましたが、渡との会話を忘却した為にその意味がわかっていません。ただ、気には留めています。
※自身の渡に対する記憶の忘却について把握しました。




「はぁ……はぁ……ッ!」

その身体から緑の血を流しながら、キングは草原を歩いている。
最も、腹を押さえ、片足を引きずるようにして何とか身体を動かしているその状態を、“歩く”と形容できるのであれば、だが。

「あいつら……絶対に許さない」

折角取り戻したソリッドシールドを破壊されたことは別にいい。
だが自分の楽しみをぶち壊した挙句、こんな風にダメージを負わせたことは、これ以上なく気に食わない。
自分は常に最強なのだ、正義の味方がどれだけ自分を間違っていると吠えても、奴らは負け続ける。

そうして最終的には全てを滅茶苦茶にして、奴らが間違っていることを思い知らせなければならないのだ。
だが自分は……負けた。
ダークカブトを堕とすことも出来ず、誰かを死なせることも叶わなかった。

これでは、何も面白く出来ていない。
この殺し合いをより刺激的にかき回す自分の役割を、何も果たせていないではないか。

「クソッ、ほんとむかつく……!あいつら次に会ったときは――」

苛立ちの言葉を吐いた直後、しかしキングの表情は唐突に歪んでいく。
苦痛にではない。いつも彼が浮かべる不気味な、そして嫌悪感さえ覚えさせるような、愉悦の表情に。

「そうだ、ならあいつを使おうかな。カッシスの為に取っておこうかと思ったけど……」

おもむろにデイパックに手を突っ込んだキングは、そのまま小さな箱のようなものを取り出す。
それはまさしく、彼が大ショッカーより持ってきたカッシスワームと直接の戦いになっても揺ぎ無い勝利をもたらすと確信できるほどの代物。
それを解き放った時に起こり得る惨状を想像して一層不気味に笑みを深めながら、キングはその箱から蓋を取り払った。

「ん……なに?アンデッド君、もしかして僕の力が借りたいの?」

「あぁそうだよ。お前の力で、この場を滅茶苦茶にしてくれよ。――ネオ生命体」

果たしてその箱の中に“いた”のは、緑の液体の中で蠢く赤目の少年だった。
ネオ生命体と呼ばれたそれは、まさしく大ショッカーの後進であるスーパーショッカーの切り札。
かつてディケイドがその死力を尽くして破壊した最強の存在であった。

子供のような言動をしながら破壊に満ちた思考を持つその怪物は、キングの呼びかけにしかし渋るように顔を背けた。

「でも、僕お腹空いたよ。ご飯はないの?」

「何だよ、さっき食わせてやったろ?たらふくさ」

言いながら、キングの表情はその時のことを思い出し再び口角を上げた。
ギルス、カリスと戦った後、自分はゾーンメモリの力でE-4エリアに潜伏した。
勿論その狙いは休息が必要だと判断したからであったし、また同時病院で籠城する仮面ライダーたちを襲撃できると考えたからだったが、実は狙いはそれだけではなかった。

彼がE-4エリアに向かった、明かされていなかった最後の理由。
それは、そこには先の戦いで散った仮面ライダーたちの死体が山ほど存在していたからだ。
物言わぬ死体の山と、エネルギーを貪欲に求めるネオ生命体、ここまで言えば、彼の狙いはもうわかるだろう。

つまり彼は、大ショッカーより連れ出してきたネオ生命の腹を満たすために、東病院で散った者たちの死体を利用したのである。
彼が今持つ海東大樹五代雄介の首輪も、その“食事”で生まれた副産物だ。
それを使えばより面白く奴らを刺激できると考えて取っておいただけの、記念品。

彼らは自分が首輪の為に死体を弄んだと考えていたようだが、それはただの食べ残しに過ぎなかったのである。
何も知らない彼らの間抜けな顔を思い出して、キングはようやくいつものような邪悪な笑みを取り戻したのだった。

「でも、皆死んでたし。正直全然満足できてないんだけど」

「そう言うなって。今のお前でも、あいつらをぶっ殺すのに十分なくらいの力はあるだろ?」

ニヤニヤと笑いながら、キングはネオ生命体に問いかける。
それはどちらかと言えば頼み事というより挑発のようにも感じられたが、一方のネオ生命体もまた、それに特段気を悪くした様子はなかった。

「……まぁ、いいよ。そろそろ遊びに行きたいなって思ってたところだったから」

「そうこなくっちゃ」

瞬間、キングが持つ箱から、質量を無視して突如として巨体が吐き出されてくる。
鈍くぬらぬらと光と照り返すそれを、生物と呼ぶべきか機械と呼ぶべきか。
ともかくネオ生命体が生み出したその新たな命の名は、ドラスと言った。

かつて12人ものライダーを前にして一歩も退かなかったそれに比べれば、姿こそ同じなれど力は相当に落ちている。
だが、それでもキングにとっては構わなかった。
どっちみち、この会場にいる全員をドラスが嬲り殺すなどというワンサイドゲームは望んでいない。

場をかき回すというキングの目的からすれば、寧ろ相応しい強さを持っているのだから、文句など言うはずもなかった。

「じゃあ、適当に遊んで来なよ。僕はこっちに行くつもりだから、お前は――」

「……」

先ほどまでと打って変わって、無口になったネオ生命体改めドラスは、キングの言葉に振り向くこともなくゆっくりと進行を開始する。
その内心には、自身を大ショッカー本部から持ち出したキングという男への興味など微塵も存在していない。
先ほど腹が減っていたのにキングを食べなかったのも、情などではなく不老不死足る彼を食べるのに気が乗らなかっただけのこと。

お腹の中で暴れられたら嫌だなという程度の下らない食わず嫌いから来る、キングにとっての小さな奇跡であった。

「なんだよ、つまんない奴だな」

そんなことは露程も思い至らずに、キングはごちる。
だが次の瞬間、彼はもうドラスを特段気にする様子もなく自身もまた新たな遊び場を探す為に歩き出すのだった。


【二日目 朝】
【C-2 平原】

【キング@仮面ライダー剣】
【時間軸】本編34話終了より後
【状態】疲労(大)、ダメージ(大)、苛立ち、ドラスへの期待
【装備】破壊剣オールオーバー@仮面ライダー剣、ベルデのデッキ@仮面ライダー龍騎、T2ゾーンメモリ@仮面ライダーW、グレイブバックル@仮面ライダー剣、
【道具】デンオウベルト&ライダーパス@仮面ライダー電王、首輪(五代、海東)
【思考・状況】
基本行動方針:面白おかしくバトルロワイアルを楽しみ、世界を壊す。
1:このデスゲームを楽しんだ末、全ての世界をメチャクチャにする。
2:カッシスワームの復活を警戒。
3:ディケイドとダークカブトは次あったら絶対に殺す。
4:ドラスの引き起こす惨状に期待。
【備考】
※参加者ではないため、首輪はしていません。そのため制限が架されておらず、基本的には封印されない限り活動可能です。
※カッシスワームが復活した場合に備え持ってきた物は『ネオ生命体@仮面ライダーディケイド完結編』でした。
※ソリッドシールドは再度破壊されました。
※T2ゾーンメモリは会場内どこでも飛べますが、マキシマムドライブでの使用などの場合も含め2時間に一度しか能力を使用できません。
※この会場内の情報は第二回放送とその直後までのものしか知りません。彼の性格上面白くなりそうなこと優先で細かいことを覚えていない可能性もあります。



【ネオ生命体@仮面ライダーディケイド完結編】
【時間軸】不明
【状態】健康、遊びたい、ドラスにコアを移している。
【装備】なし
【道具】なし
1:外に出て仮面ライダー達と遊ぶ。
2:アンデッド君(キング)はちょっと面白いかも?
【備考】
※キングが主催より持ち込んだ対カッシスワーム用支給品でした。
※E-4エリアで参加者の死体を食ったのでドラスとして実体化しましたが、死体しか食ってないので能力は完結編時に比べ相当落ちているようです。
※あくまでディケイド出典なので、ドラスになっても無口です。

138:そしてゴングは鳴り響く 投下順 140:夢に踊れ(前編)
時系列順
137:天の道を継ぎ、輝く勇気を宿す男 擬態天道 143:nameless
キング 147:Tを越えろ/苦悩
門矢士 144:フォルテ♪覚醒せよ、その魂
134:restart your engine 名護啓介
GAME START ネオ生命体 146:名もなき者に捧ぐ歌

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最終更新:2019年12月29日 17:34