特命


「ここが北海道ですか」
「ロストグラウンド以外にも、このような未開の地があったとは」
「ああ、お姉さま。無事でいらして下さいですの!」

ヒグマたちがヘリコプターに気を取られているなか、奇妙な三人組が崖から会場に上がっていた。

「それにしても、我々以外はたったのヘリコプター一機だけとは。
 マナさんと山岡さんが役不足という訳ではありませんが、万全を期す為に最低でもプリキュアオールスター全員を呼ぶべきだと言ったんですがねぇ」

三人組の内の一人。壮年の紳士、杉下右京は呟く。

実はこれまでのあまりにも速い政府の対応。
本土の鷲頭襲来の際、右京がその天才的頭脳により一見何の関係性も無い鷲頭とヒグマとの関連を見抜き、それを政府に進言した事によりこれ程迅速に事が運んだのだ。
かわりに右京は政府直々の特命として、この地まで派遣される羽目になってしまったのだが。

「政府も、未だ重い腰を完全には上げていないという事でしょう」

白と青の制服を着た青年、劉鳳。
人類最後の秘境ロストグランドにて本土側に介入に抵抗していた際、本土側から介入を取り止めるとの条件で至急、警視庁陸の孤島こと特命係へと移籍。
期間限定の右京の相棒として、今回の騒動に関わる事となった。

「ところで白井さん、さっきお姉さまと言いましたが。あのヘリにはまさか御坂美琴さんが乗っているのですか?」
「そ、それは……」

白井と呼ばれたツインテールの少女、白井黒子
学園都市から派遣されたレベル4の大能力者であり、御坂をヘリへと手引きした張本人である。

(言えませんわ。断りきれなくてお姉さまをヘリに乗せただなんて)

「よくありませんねぇ」
「二人とも静かに!」

その時、小さな人影が三人の前を過ぎった。

「あれは?
「おやおや」

最初は迷子かと思った。
体格だけで見れば、小学生かそこらの少年にしか見えなかったからだ。
この場に居る三人は立場は違えど常に世の平和を守る仕事をしており、その事による責任感と正義感は持ち合わせている。
ならば、目の前で迷子の少年が居れば声の一つは二つは掛けようというものだ。
黒子は空間移動で少年の前に立った時、異変に気付いた。
単刀直入に言えば、その少年は人間ではなく熊だったのだ。
二本足で立ち、服も着ていたので気付くのが遅れてしまったが紛れもなく熊だ。

「肉体変化の能力者でしょうか? 一体こんなところで何を……」

黒子の失態はただ一つ、目の前に熊をなんらかの能力者だと認識してしまったこと。
一般人であるなら警戒して近づかなかったかも分からないそれを、黒子は逆に異能に慣れた冷静な思考のせいで油断してしまった。
故にその失態はあまりにも致命的な命取りとなる。

「僕はね、変態という名の紳士なんだ」
「え? しま―――」

その熊は小柄ながらも、それを生かした速さで黒子の懐へと飛び込む。
瞬時にスカートを捲りパンツを脱がそうと手を伸ばし……突如横から割り込んできた青色の触鞭に捕らえられ拘束された。

「ふむ、食欲や戦闘ではなく性欲の為だけに動く熊か」
「熊にも色々居るようですねぇ。興味深い事ですよ」

触鞭の主、劉鳳の持つアルター絶影に絡め取られたクマ吉くんは必死に振りほどこうともがくが絶影はびくともしない。

「喋るクマとは面妖ですわね。どうなってますのこの島は」
「僕もこの目で見るまでは信じられませんでしたが、この場はやはり熊による熊の為の狩場のようですね
 少なくともこの場では人間が餌であり、それを屠り貪るのが熊という事なのでしょう」

事態はどうやら尋常ではなくなってきているらしい。
所詮、学園都市外の出来事と甘く見ていたが考えを改める必要がありそうだ。
何としてでも早急に初春、佐天と合流しなければなるまいと黒子は思った。

「一先ずこのクマは逮捕しましょう」
「止めてよ! 僕は人は殺してないんだ!!」

右京が懐から手錠を取り出しそのクマにはめた時。
同時に黒子の髪留めが消えた。

「?」

二つに分かれツインテールを作っていた髪は下り、分解された髪飾りは虹色の粒子に変わっていく。
この現象に劉鳳は見覚えがある。
アルター使いがアルターを出現させる際に見られる、物質の分解とその再構築である。
粒子は徐々に人型を形作り姿を見せていく。黒と灰色を基調とした稲妻を操るアルター。
近くに本体の姿は見られない。
劉鳳の脳裏をかつて倒した筈のあのアルターが過ぎった。

「貴様だというのか? 馬鹿な……!」

そのアルターに名は無い。強いて言うなら、アルターの結晶体ともいうべき存在。
時として万物を破壊し、時として新たな力を授け、進化を促す。
未だに謎の多い存在だが一つ分かっているのは、この結晶体は向こう側と呼ばれる世界に帰りたがっているということ。
人間の住むこの世界へと自主的にやってくる事は無い。つまり迷い込んできたのだ。

(何者かが、向こう側の世界の扉を開けたのか?)

心当たりはある。
この場に来る前にあった政府からの報告。
それは不自然な火山の噴火、更に北西では昔カズマがダース部隊を蹴散らした際に発動させたシェルブリット第二形態に似た輝きも見られたというものだ。
どれかが、向こう側に通じてもおかしくはない。

「劉鳳さん?」
「来るぞ、気をつけろ!
 杉下さんは安全な場所へ!!」
「分かりました!」

右京はクマを連れ、戦闘に巻き込まれないよう安全な場所へと駆け出す。
劉鳳は腕を手刀の形に構えそれを合図に自らのアルター絶影を出す。
見計らったかのように結晶体が手を翳し黒い球弾を放つ。
雷を纏い球弾自身もまた高エネルギーで出来ている為、食らえばただではすまない。
劉鳳は一撃目を絶影の触鞭で相殺し、二撃目を横に飛んでかわす。黒子もすかさず空間移動(テレポート)で回避。

「絶影!!」

触鞭を撓らせ結晶体へと近づく絶影。
結晶体は翳した手のひらを螺旋状へと変化させ向かえ撃つ。
拮抗する結晶体と絶影。
絶影は僅かに腰を落とし、結晶体の足元めがけ蹴りを放つ。

「柔らかなる拳・烈迅!!」 

拮抗は崩れ絶影の触鞭が結晶体を貫き引き裂く。
縦に二つに別れた結晶体の体は不安定ながらも直立し佇んでいる。
だが既に動きは無く、ただその場に居るだけ。

「帰れ、再び向こう側へ」

絶影が光に包まれ姿を変える。
拘束された両腕は開放され、地を踏みしめていた両足は龍の尾へと変形し空を舞う。
隠れていた片眼を開き絶影は真の姿を現す。

「剛なる右拳・伏龍、臥龍!!」

絶影の両脇にある二基のミサイルが射出される。
並みのアルターならば一撃で粉々に粉砕し、カズマのシェルブリットと同等威力を持つ伏龍、臥龍。
更に以前、結晶体と戦った時よりも、劉鳳は絶影は強くなり成長している。
如何に結晶体といえども無事で済む道理はない。

「―――なん……だと?」

結晶体へと一直線に進む伏龍、臥龍が分解された。
虹色の粒子へと変換し、結晶体へと集まる。
二つに裂けた結晶体は粒子を繋ぎとして再び元の姿を形成していく。
いや、正確には新たに別の姿へと再形成している。

「まさか、貴様も成長しているというのか……」

カズマ、劉鳳のアルターに幾つもの形態が存在するのならば、また結晶体にも同じく複数の姿があってもおかしくはない。
全身を茶色の体毛が包み、体毛の下には強靭な皮膚。
その姿は結晶体としての特徴を残しながらも野生的な爪、牙、耳を新たに増やす。

「熊……ですの?」

かつて結晶体はカズマとの戦闘の際、アルターの森で殺害した野生の熊をアルター化し吸収した事がある。
今までは眠れる野生の力を目覚めさせる事が無かった結晶体だが、この野生の世界において内に存在する熊の力が呼び起こされたのだ。
それこそがアルター結晶体第二形態。

「ならば―――!」

絶影が分解され劉鳳を包む。
全てを捨てただ勝利のみを望み、辿り着き手に入れた究極の極地。
絶影最終形態。
残像を残し劉鳳が絶影が消える。
かつては影すら追い付かぬとまで言われた絶影が、今や劉鳳と一体化する事でその何倍もの速度を誇る。
テレポーターの黒子ですら瞬間移動かと見紛うた程だ。

「速い……これなら」

だが、劉鳳が動きそのスピードで撹乱し攻撃を放つよりも速く、結晶体は劉鳳の背後へと周りその爪を振りかぶっていた。
瞬時に後ろを向き、振り向かいざまに身に着けた絶影の甲冑を剣と化させ結晶体へと叩き付ける。
爪と剣が鬩ぎ合う。
亀裂が走り罅割れていく爪と剣。
その度に新たに再構成し亀裂を埋めていく。辺り一面は虹色に包まれ存在する物質は生物を除き、全てアルター化されていく。

「ちっ」

最初に退いたのは劉鳳。
結晶体のパワーに耐え切れなくなり、溜まらず一歩退いたのだ。
その時、生まれた隙を結晶体は攻める。
今の劉鳳すら凌ぐスピードで牙を立て、噛み砕かんと迫る。
劉鳳は罅割れ碌に再構成しきれていない絶影の甲冑を構える。
正面からぶつかっても勝ち目は無いが、ここで臆せば待つのは死だ。
覚悟を決め最後の大勝負へと劉鳳は躍り出る。

「?」

無から現れた岩が結晶体の牙を遮り、劉鳳へ触れるまでのタイムラグを生む。
劉鳳の絶影にはこの様な能力は無く劉鳳が持つアルターは絶影一つ。
無論、結晶体がやった事でもない。
この岩を空間移動させたのは、他の誰でもない白井黒子だ。
近くにあった手頃な岩に触れ座標を計算し能力を発動。
結晶体の猛攻を止めるとまでは行かなくとも、それにより生じた僅かな時間を劉鳳は無駄にはしない。
身を屈め結晶体の牙を交わし胴へと甲冑の剣を振るう。
白銀の一閃が走り、結晶体を後方へと吹き飛ばす。

「テレポート……白井、お前の能力だったな」
「それよりも、来ますわよ」

劉鳳から受けた傷を再々構成により癒し、結晶体は立ち上がりこちらへ向かってくる。
黒子は劉鳳が回避運動を起こす前に劉鳳に触れ空間移動を発動する。
二人は消え結晶体の爪が空を切る。
すかさず劉鳳の甲冑が結晶体を貫く。
消えた劉鳳と黒子は空間移動により、結晶体の背後に回っていた。
結晶体は爪を螺旋状に回転させながら劉鳳を刺し殺さんとするが、再び劉鳳と黒子は消え今度は結晶体から数メートル離れた地点に現れた。

「速い、あの結晶体をも置き去りにする程なのか、テレポートとやらは」
「ええ、これならあの熊の速度に対抗できますわ」
「なるほどな。だが、これ以上は危険だお前も早く安全な場所へ」
「お断りしますわ。こんな場所で退いていては、友達を救う事など出来ませんもの」
「そこまでして貫きたい信念か……。良いだろう、行くぞ!」

結晶体から放たれる黒の球弾。
一発ではなく十、二十、いやそれ以上の弾幕が張られ劉鳳達を追い詰める。
だがそのどれも、たったの一撃すら掠ることなく無傷のまま劉鳳は結晶体を切り刻む。
ダメージを追いながらも結晶体も応戦するが、黒子の空間移動により全ては外れ指一本触れることすら出来ない。

「いけるぞ。これなら―――」

速さを黒子が補い、火力を劉鳳が補う。
足りない部分をカバーしあうコンビネーション。それは確実に結晶体を追い詰めている。
だが結晶体も、まだ全ての力を見せた訳ではない。
その内には、まだ見ぬ新たな力が隠されている。
結晶体を両腕を広げ、また物質を分解し始める。
虹色の輝きから生みだれる存在は熊。アルターにより、無数の熊を生成し始めたのだ。
一匹一匹が範馬勇次郎を凌駕し得る存在。

「この程度、切り開く!!」

無尽蔵に沸く熊を切り裂き突き進む劉鳳。
元よりこの熊たちは熊を模したアルターであり、正式なヒグマではない。
ようは模造品、信念無きたかが模造品如きがこの男を止められる道理など無い。
結晶体が天高く舞い上がる。劉鳳の接近を恐れ、上空へと逃げて行く。

「逃がしませんわ」

結晶体より更に上空へと移動する劉鳳と黒子。
蒼穹の一閃が迸り結晶体を切り裂く。
閃光が爆ぜ結晶体が粒子へと還る。
決着は着いた、勝敗は着いた。この戦い―――勝者は

「違う、こいつは!?」

ずぶりと生々しい気色の悪い音が耳を鳴らす。
鮮血が劉鳳を濡らし、生暖かい感触が皮膚を伝う。

「あっ……ぐ」

消え去った筈の結晶体が劉鳳につかっまっていた黒子を貫いている。
そして劉鳳が倒した筈の結晶体はみるみる虹色の粒子へと変わり空中分解していく。

「熊のアルターを変質させ身代わりにしたのか!」

結晶体を振り払い、黒子を抱きかかえ劉鳳は即座に高速移動。
自身の怪我ならば、アルターで強引に回復出来るが黒子はそうはいかない。
不本意ながらも、ここは人命を優先し撤退を選ぶしかない。
だが、黒子の空間移動無しの劉鳳の純粋なスピードでは到底、結晶体第二形態には及ばない

「今、貴様に構っている暇など……!?」

例えスピードが適わずとも、結晶体一体ならば強引に押し通る事も不可能ではなかった。
通ることだけを考え、多少のダメージを覚悟の上ならば。
そう『一体』ならば。
劉鳳の眼前に広がったのは、百を超える無数の結晶体が両手を翳し球弾を生み出している絶望的光景。
いくら絶影最終形態であろうとも、これだけの数は捌ききれない。
劉鳳は今まで勘違いをしていた。
『熊のアルターを変質させ身代わりにした』これは正確には『自らを更に無限に増殖させ身代わりにした』のが正しい。
つまり、今の結晶体は際限なく自分自身を増やすことが出来る。
恐らくは熊の繁殖能力を更に過大進化させた末に得た能力。
これぞ、野生の繁殖パワー。

「劉鳳さん……」
「安心しろ。俺の正義に掛け、能力者だろうが一般市民であるお前には、これ以上指一本触れさせはしない!」
「そう、なら安心ですわ、ね……」

劉鳳は拳を握り締め眼前を睨む。
何処か突破口を何か手立ては無いか……。

「だって、私はジャッジメントですもの。貴方に守ってもらう必要はありませんわね」

ふっと黒子は笑みを浮かべ

「御坂美琴、初春飾利佐天涙子。私のお友達をお願いしますわ」
「まさか、止め―――」

劉鳳の視界は一瞬にして切り替わり。
腕の中で抱いていた温もりは一瞬の内に消えた。

まるで世界の終焉のような暗黒の閃光。
黒と雷が爆ぜ大地がを揺らし地盤を巻き上げる。
生きとし生ける者全てを滅するかのごとく、全ては無に消え塵一つ残らない。
ただ、一つだけ。風紀委員と書かれた腕章が一つ、その場にゆっくりと地へと向かって落ちていく。
それは白井黒子という、一つの生命の消滅を意味していた。

「……」

結晶体は対象物の消滅を確認し、―――一気に百対近くあった結晶体の半数が消滅した。
否、消滅したのではない。切り裂かれただの粒子へと還っていったのだ。
それを成した者は、その蒼穹の刃は絶対の正義と信念を持ち腕を振るう。
瞬間、物理法則をいや時間すら超越した超高速移動により、結晶体の群れを次々と蹴散らしていく。
その速度、結晶体の自身の精製すらも間に合わない。

「すまない……。また俺は命を、―――だが!」

その刃は、劉鳳は無意識の内に黒子のAIM拡散力場をアルター化させていた。
とはいえ『An_Involuntary_Movement』直訳して『無意識の動き』 と言われているように、精密機械がなければそれは本当に微弱なもの。
だが、アルターとはその名の通り進化の力。
そうかつては、佐天涙子が進化し第四波動を会得した時のように。カズマがエイジャパワーにより究極のアルター使いになった時のように。
また劉鳳も絶影の影すら追い付かぬその速度を、瞬間移動にまで昇華させた。
そして、何よりも。

「俺は引かん、背負ったものの為にも!!」

それは黒子に救われた命であり、託された三人の友人達であり。
何よりも、あの男との喧嘩の決着すらまだ着いていないのだ。

「―――!」

声にならない悲鳴を上げ残り一体となった結晶体が牙を立てる。
形振り構わず劉鳳を噛み砕く為に加速する。

「見せてやる。これが唯一無二の―――託された力!」

劉鳳が消え結晶体の懐へと姿を現す。
装備されている甲冑を刃へと変え結晶体へと振り上げる。

「絶影・断罪者(ジャッジメント)武装だ!!」





――――――――――――――



会場を浸す海水。
流れる建物に丸太。
その内の丸太の一つに劉鳳は立っていた。
流石、丸太だけあってどんな荒波だろうと軽々乗り越える。

「逃がしてしまったか」

結晶体に止めを刺す寸前、突如覆いかぶさる津波により結晶体と劉鳳は流されてしまった。
劉鳳は元より結晶体は生物でなく神出鬼没な存在でもある為、まだこの世界を彷徨っているはずだ。
次会った時こそは必ず倒し、向こう側へと送り返すと劉鳳は決意する。

「……妙だったな」

熊の力を得たこともさることながら、今回の結晶体の戦いにおいて劉鳳は結晶体から知能を感じたのだ。
策を練り、知恵を絞り、工夫して戦う存在。
まるで人間のような……熊だが。

「それにだ。今は熊は冬眠の時期の筈だ、何故こんなにも活動的になっている……。
 まさか、地球温暖化の影響だとでもいうのか!?」

確か、南極や北極の氷が溶け海のかさが増しているとも聞いたことがある。
とすれば、熊の異常発生やこの津波もそれが原因なのだろうか。
疑問は疑問を呼び劉鳳を困惑させていく。
だが思考を変え、すぐに辺りを見回す。
まず自分がやるべきことは、勇敢なる少女に託された三人の友人を見つけ保護すること。
そして悪は何であれ断罪する。

「御坂美琴、初春飾利、佐天涙子か……無事で居てくれ。 
 そして杉下さんとも早く合流しなければ」

近くの手ごろな別の丸太をうまい具合にアルターで精製オールにし、丸太に乗りながらそれを漕ぎ始めた。


【白井黒子@とある科学の超電磁砲】死亡
【アルター結晶体@スクライド】行方不明


【会場の何処か/朝】

【劉鳳@スクライド】
状態:疲労(大)、ダメージ(大)
装備:絶影
道具:丸太、丸太製オール
基本思考:この異常事態を解決し主催者を断罪する。
1:御坂美琴、初春飾利、佐天涙子を見つけ保護する。
2:結晶体を見つけ次第向こう側へ返す。
3:地球温暖化の影響がここまで……。
4:一体誰が向こう側を開いたんだ?
[備考]
※空間移動を会得しました
※ヒグマロワと津波を地球温暖化によるものだと思っています


【会場の何処か/朝】

【アルター結晶体@スクライド】
状態:熊化
装備:不明
道具:なし
基本思考:???









「流石は丸太製の筏ですね。劉鳳くんと白井さんも無事だと良いのですが」

津波に飲まれた会場にて水上に筏を浮かべ、右京とクマ吉くんは難を逃れていた。
津波に飲まれる寸前右京の咄嗟の判断で作ったので、あまり完成度の高いものとは言えないが、それでも水上を浮かぶくらいならばなんら問題は無い。

「確か貴方の名はクマ吉くんでしたね」
「それが、どうしたのさ?」
「ええ、貴方の罪状は強姦未遂という事でしたが」

クマ吉くんはそっぽを向きながら静かに頷く。

「いいさ。強姦未遂は慣れてるよ。
 罪を認める」
「いいえ。貴方は強姦未遂に、もう一つ罪状が付け加えられますよ?」
「え? 何、言ってるんだい!!」

予想外の返答にクマ吉くんそっぽを向いた顔を右京へと向ける。
一体、この男は何を言っているのだ。
自分は強姦未遂の容疑者として、取調べを受けるのではないのか。
だというのに、もう一つの罪状など想像もつかない。

「貴方を殺人の……いえ、殺獣の容疑で逮捕します」
「なん……だと?」

殺、獣……?
馬鹿な、有り得ない。
何で何を言おうとしてるんだこの男は……。
一体、何で!?

「貴方の服」

右京が指を刺しクマ吉くんの服を示す。
クマ吉くんは釣られて服の異常を探すが何も見つからない。
あるのは青い布地と自分の茶色い毛がいくつか着いている事くらいだ。

「な、なんだ……これが一体何だと言うんだ?」
「ではなく、その口」

だらりと猫の手がクマ吉くんの口から垂れ下がる。
ふっと観念したかのようにクマ吉くんは口の中に手を突っ込み、中から人型の猫を吐き出した。
中からドロドロの液体に包まれたニャン美ちゃんの遺体が姿を現した。

「……窒息死ですね」
「そうさ。ニャン美ちゃんを口の中に入れたいという衝動を僕は抑え切れなかったんだ……」
「やはり、僕の思ったとおりでしたか」

クマ吉くんは乾いた笑いを浮かべる。

「それだけではありません。恐らく貴方はもう一匹殺していますね?」
「まだ、僕に罪を着せる気かい?」
「貴方の口内が血に濡れていました。
 誰かを捕食したのでしょう。しかし、その口の中にはニャン美さんが居ます。
 更に貴方は食欲よりも性欲を優先する。故にその口を凶器として使うとすれば、何らかの止むを得ない場合」

ごくりとクマ吉くんは喉を鳴らした。
この全てを見透かされ晒されるような感触、とても不快だ。
曝け出すのは嫌いじゃないが、晒されるのはまた別だ。

「貴方はニャン美さんの殺害を何者かに知られたんですよ。
 その口封じの為に、貴方はその人物、いえ動物を殺した。
 ここの熊の中にもある程度の秩序があるのでしょう。ニャン美さんへの殺害動機が動機です。
 明るみに出ては熊の中で相当不利になる。違いますか?」
「……続けて」
「では。
 万が一の場合にそれが明るみに出る事を避けた貴方はある死体の隠し場所を思いついた。
 それが、捕食です……。
 貴方の歯に着いてる血から判断して、猫であるニャン美さんの物ともう一つ桃色掛かったこれはうさぎの―――」
「もう良い、もう良いよ!!」

クマ吉くんは我を忘れて叫んだ。

「流石だよ。
 ニャン美ちゃんの事に関しては既に一度看破されたんだけどね。
 この事実まで明かされるまで夢にも思わなかったよ。
 その調子じゃ僕がニャン美ちゃんを殺した事をうさ美ちゃんに暴かれて、それを隠すためにうさ美ちゃんを殺したって事まで分かってるんだろう?」
「はい」
「とんだ名探偵だね。ははっ……僕は何の為に彼女を……」

クマ吉くんは両手を突き崩れ落ちた。
右京は表情一つ崩さず静かに、だが力強くクマ吉くんを見る。

「何時だい? 何時気付いたんだい?」
「最初からですよ」
「!?」
「さっきも言った貴方の服、……女性もののスクール水着なんですよ」

盲点だった。
クマ吉くんは自身の服装を見て溜息を着く。

「うさ美さんを殺害した時に返り血を浴びすぎたのでしょう。
 服を処分したのは良いものの、下にスクール水着を着ていたのを忘れていた。
 それが貴方の犯した最大のミスですよ」

もう言い逃れは出来ない。
いや元よりもうする気は無い。
疲れた。もう終わりにしよう。

「素晴らしい名推理だった。
 でも、一つ杉下さんは見落としているよ」
「何でしょう?」
「僕もまたヒグマロワにおどらされただけの犠牲者の一人にすぎないってことさ」

右京は体を僅かに震わせながら強く言い放つ。

「確かに貴方は被害者なのでしょう。
 ですが、だからといって加害者になっていい理由など、何処にもありませんよ……!!」
「……行きましょうか、警察へ。
 まあここから脱出出来れば、だけどね」



【うさ美@ギャグマンガ日和】死亡
【ニャン美@ギャグマンガ日和】死亡


【会場の何処か/朝】

【杉下右京@相棒】
状態:健康
装備:筏 
道具:手錠×何個も
基本思考:この異常事態を解決し主催者を逮捕する。
1:クマ吉くんを署まで連れて行き法の裁きを受けさせる。

【クマ吉@ギャグマンガ日和(ヒグマ)】
状態:ダメージ(大)
装備:スク水、手錠(拘束)
道具:ニャン美ちゃんのパンツとか色々
基本思考:生きて帰れたら署まで行く。生きて帰れたなら。
1:……。


No.100:死のない男 本編SS目次・投下順 No.102:海上の戦い
No.108:老兵の挽歌 本編SS目次・時系列順
  劉鳳 No.116:水嶋水獣
杉下右京
クマ吉
アルター結晶体
白井黒子 死亡
ウサ美
ニャン美

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最終更新:2015年11月18日 13:30