明日に輝かせる
天高く聳える巨大な廃墟ビルの中には悪党達が根城としていてそこには近辺から盗んだ宝や攫った子供と女達。
男たちの下衆な声と泣き叫ぶ子供の声、そしてすすり泣く女の声が混じる混沌の空間。
ここに満たされているのは欲望と欲望と欲望。
その欲望を満たすために金と時間と身体が費やされる不毛な世界。
こんな状況を誰か助けては――。
「毒虫が――俺が断罪する!!」
「か、頭ァ!!こいつはあのHOLYの親玉ァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」
それは!それは一瞬の瞬間!
ムービーが入ったからコントローラーを置いた瞬間のQTEの如く素早さで。
ナイフをチラつかせ鼻に出来物が付いていたボサボサ金髪は鋭利な触手のような物体に飛ばされ壁に激突した。
毒虫が。この緑川ボイスで再生余裕であろうセリフの持ち主など一人しかいない。
見た目はクールだが心に熱き正義を抱く悪の断罪者を我々は知っているはずだ。
「絶影の劉鳳だとぉーーーー!?クッソテメェら全員でこいつを潰すぞぉぉお!!」
この賊どもはアルター犯罪者である。そうここは無法地帯のロストグラウンドだ。
再隆起現象が起きてしまい姿を変えた神奈川の成れの果てがこの荒野の正体だ。
今では当初と比べるほどにならない程治安は安泰しているがそれでもアルターの犯罪は後を絶たない。
だからこそ彼は先頭に立って悪を断罪するのだ。それが己の使命であり天命である。
四方八方から襲いかかる賊どもだが手にはナイフやバットといった野蛮な物である。
銃などの火気類は一切なくこれで一つのビルを支配した事実はにわかに信じがたいものである。
故に劉鳳に触れることも出来ずに――。
縦横無尽に暴れまわる絶影の触手は二本しかない。
自立稼働型アルター絶影はたった二本の触手のみで少なくとも五十はいるであろう賊を吹き飛ばした。
「話にもならん。さぁ次はお前たちの番だ」
奥に聳える第二陣を見つめ言葉を吐き捨てる劉鳳は絶影の対象を定める。
十中八九奥に居るのはアルター使い、その数は三十から四十と言ったところか。
しかし数など関係ない。奴らが劉鳳の信念を崩せるとは思えない。
動物型のアルターが劉鳳を囲い込み逃げ場を無くす。
ライオンや豹など獰猛な獣が多いが何故か熊だけが見当たらない。
正直日本人にとってはライオンよりも熊の方が身近な存在でありより恐怖感を与える。
「おいお前らのアルターに熊はいないのか?」
気になって仕方がない劉鳳が問いかける。
「……あの悪夢を俺たちに再び思い出させるつもりかあああああああああああ」
熊の単語に反応して急に男たちが豹変したのだ。
我も忘れて怒り狂い襲いかかる大量のアルター使い。
「熊のアルター使いは全員連れて行かれてもう……戻ってきてないんだよおおおおおおおおお」
どうやらかつての無常のようにアルター使いを攫っている輩がいるようだ。しかし。
「今は関係ないがな……絶影!!」
劉鳳が光に包まれたとき一つの影が乱入する。
そして閃光が消えた時には全ての賊が倒れていた。
異形な右腕を天高く捧げる男が一人、その名を反逆者カズマ。
「面白いことをやってんなら俺も混ぜろよォ絶影の劉鳳さんよぉ?」
「どうやら貴様とは決着をつけなくてはいけないようだな……!」
「いいぜ……あん時の続きをここでなァ!」
「ダメだよカズ君!」
「か、かなみ!?」
「貴方もよ劉鳳!」
「み、水守!?」
「カズ君今日はパーティーでしょ?」
「あ?」
「せっかく橘さんの会社でこれから皆で集まるのに……」
「そうか……今日は橘の会社で……しかし今からでは到底間に合わん」
「仕方ねえ……さっさとテメェを片付けて」
「カズ君!表には君島さんとあやせさんが車を回してくれているんだよ!?」
「あのボロ車じゃ間に合わないだろ?だったら――」
「だったらこの俺が最速でパーティーに連れて行ってやろう!!カズヤ!!」
「カズマだ!何でアンタがここにいるんだよ!?」
「ご都合主義ってやつさ「おい、意味が「ラディカル・グット・スピィィィィド!!」
「ふざけんじゃねぇぞ!!」
「全く良い夢だ……反吐が出る位にふざけていて、それでも求めてる……でもこれは夢なんだよぉ……」
火山の河口付近で目を覚ますカズマ。
そうだ、あれは夢だ。
死んだ君島やあやせがいた。それにあのストレイト・クーガーもいた。
決して二度と絶対に。奇跡や魔法でも起きない限り体験することの出来ない甘えた理想郷。
「奇跡?魔法?そんな誰かに頭下げて貰う現実に価値なんてねぇよ――そう思うだろ劉鳳オオオオオオオオオオオオオ!!」
今は今。過去を振り返って一一後悔する女々しい時間はとっくに終わっている。
目の前に。今目の前にあの男がいるのだ。血が騒ぐ。遂に、遂にこの時が来たと身体が震え上がる。
「だからよォ――突き進む!この自慢の拳でなァ!!」
「ちょっと!アンタ待ちなって!あたしは
佐倉杏子!その劉鳳って人でもない!!」
「あァ!?テメェは誰だ!!劉鳳の奴はどうした!?」
「だからここに劉鳳って人はいなし、あたしは佐倉杏子だって言ってんだろ!!」
佐倉杏子――赤い戦闘服を纏った彼女は叫ぶ。戦闘服と言っても族ではなく彼女の魔法少女としての衣装である。
今更だがアルターや魔法少女の説明については割愛してもらいます。
カズマは一度アルターを解き杏子の説明を一通り聞いた。
「つまりどっかの野郎が俺達に殺し合いをさせてその強いアルター使いが殺されて、それよりも強いヒグマ?がうろついてんだな?」
「あたしも自分で何言ってるか分かんないけどそれで合ってると思うぜ?」
状況は把握したが今の現状が混沌なのには変わりない。
それよりも劉鳳との戦いを邪魔した『ソイツ』が許せなく怒りが込み上げる。
「いいぜ――先にテメェをボコってやらァ!!」
そして男は再びアルターを構成する。
この腐った世界に叛逆する為に。
「な!?カズマが今出した『赤い石』から尋常じゃなない『力』が……!?
ソウルジェムが『共鳴』している……?この輝きは……?」
杏子はカズマのアルターを初めて見る。普段のカズマを知らないという事だ。
それでもこの輝きが尋常じゃないのは理解出来ている。この力は本来の物ではない、と。
「へっ……いいぜ。ならその輝きは……俺のモンだあああああああああああああ!!」
天高く伸ばした腕に叫びと共鳴した光が集まってゆく。
どこか懐かしいこの輝きは永遠に辺りを照らし始め杏子のソウルジェムもまた輝いている。
「そうか!赤石は――アルターを――魔法を――増幅させる力が!!」
赤石、アルター、そして魔法少女。
この決して交わる事のない三つの事象が何の因果がいざ知らず。この場に集まった。
それは未知への領域へアクセスであり誰もが見た事のない全開へ辿り着く布石。
その時!
溢れ出るアルターと魔法の共鳴!
強き意思と石が互いに混じり合い発生する超パワーは火山にも共鳴した!
そう!強烈な意思は火山を活性化させ『噴火』を起こしたのだ!
カズマと杏子は岩場に飛び移り噴火の影響で空高く運ばれていた。
「さすが地球のパワーだな……」
「まさかカズマ……アンタこれも計算の内なのかい!?」
「当たり前だ……俺はシェルブリッドのカズマだぜ?」
(よく分かんねぇけどこう言っとけばコイツも少しは安心するだろ)
流れに身を任せ。強がってはいるが杏子も見た限りではかなみより少し年上の少女だろう。
殺し合いが本当ならば巻き込まれていて精神が不安定かもしれない。
そしてこの噴火だ。イレギュラーが何度も続けば精神は大きく削られる。
ここで一つで想定した事象が起きれば少しは。そう考えたカズマなりの優しい嘘である。
「俺もまだやる事が残ってんだ――さっさと片付けるぞ!」
「ああ!あたしだって色々あるしね――叛逆の始まりだよ!」
こうして赤き戦士たちの叛逆の物語が今始まる。
そして噴火した火山はエリア周辺に降り注ぎ――。
ヒグマも参加者も容赦なく襲いかかるだろう――。
【E-5火山/黎明】
【カズマ@スクライド】
状態: 石と意思の共鳴による究極のアルター
装備: :基本
支給品、ランダム支給品×0~1
道具:エイジャの赤石@ジョジョの奇妙な冒険
基本思考:主催者をボコって劉鳳と決着を。
1:杏子と共に上空から怪しい奴を見つけてボコる
【備考】
※参戦時期は最終回で夢を見ている時期
【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ】
状態: 石と意思の共鳴による究極の魔法少女
装備: :基本支給品、ランダム支給品×0~1
道具:
基本思考:元の場所へ帰る――主催者をボコってから。
1:カズマと共に上空から怪しい奴を見つけてボコる
【備考】
※参戦時期は本編世界改変後以降。もしかしたら叛逆の可能性も……?
※E―5の火山が噴火しました。これにより周辺1エリアにマグマが降り注ぎます。
最終更新:2015年01月17日 11:39