信じられない事が起こっている。
自分はあの時確実に死んだはずなのに、今こうして生き返っているのは何故だ?
人間、死んだら終わりなのは間違い無い事実だろうに。
しかし、現に自分がこうして生き返っている以上、それを覆さざるを得ない。
「……まあ、生き返ったものはどうしようもないわよね」
細かいことはともかく、再度殺し合いの地に降り立ったのだ。
やることと言えば、1つしかないだろう。
……前と同じように、ゲームに乗って参加者を殺害する。
今まで、幾度と無く手を血で濡らして来た自分にとって、これ以外の選択は無い。
見ず知らずの人間とも仲良しゴッコをする気も無いし、組む気も無い。
単独行動で十分だ。誰かと行動するなんて、自分からリスクを増やすだけ。
……複数の利点も、一応理解はしているが。
(……とりあえず、天は私に味方してくれてるようだし)
自分に支給されたのはナイフ……と言うより、包丁だ。
とはいえ、これも立派なナイフの一種だ。使い慣れないモノが出るよりマシだ。
まあ、元々人を殺傷する目的で作られた訳じゃないので、使うにはコツが必要だ。
……さて、武器は何とか入手したし、後は方法だ。
道具が道具なだけに、普通のやり方では上手く行かないだろう。
とりあえず包丁を握ってみるが、やはりイマイチ感触がしっくり来ない。
色んな持ち方を試してみるも、やはりイマイチ来ない。
まあ、戦闘中に手から滑って飛んで行く恐れはあまりないだろう。
……欲を出すのは良いことでは無いが、やっぱりこういう物よりちゃんとした武器の方が良い。
「……さて、どこに行くべきかしら」
見た所、ここは…………どこだろうか?
なにしろ、特に目印になるようなモノが、特に無いのだ。辺り一面、木だらけだし。
とりあえず、現在地確認をしてみると、どうやらここは「G-6」らしい。
これを、地図と照らし合わせてみたが……やっぱりと言うべきか、何と、と言うべきか。
自分は、見事に会場の端にいる。
(……面倒ね)
こんな森の中では、当然視界は遮られる。
となると、やはり不意の戦闘が起こる可能性が高まるだろう。
そんなときに、こう言った取り回しのいい武器は役に立つ……が。
取り回しが良いのはナイフだけじゃない。拳銃だって、同じだ。
使いこなせる人間でなければ、森の中で目標に当てるのは難しいかもしれない。
だが「下手な鉄砲数撃ちゃ当たる」と言った言葉もあるように、乱射でもされれば……。
(銃が危険なのは、森の中に限ったことじゃないけど……)
いろいろマイナスの事ばかり考えてきたが、森の中と言うのもなかなか悪い場所じゃない。
まず、身を隠して人が通るのを待ち伏せ出来ると言う利点がある。
待ち伏せと言うと、姑息な手段と思われがちだが、これだって立派な戦法だ。
「……考えてるだけじゃダメね。行動しなきゃ」
とは言っても、一体どこに行けばいいのやら。
大抵、人の多い場所に向かいそうな物だが、それをするには武器に一抹の不安が。
多人数を相手にするかもしれない可能性がある以上、これでは厳しいだろう。
だからと言って、人の少ない所に行くのもおかしな話だ。
人が少なければ、必然的に誰かと遭遇する確率も下がる。これでは、数を減らせない。
全く出来ないと言う訳では無いが、それでも……。
(…………気配?)
ふと、人の気配を感じる。
この感じだと、そう遠くない場所にいるようだ。
(一旦、隠れて様子を伺いましょ)
そそくさと近くの茂みに身を隠す。
一応、気配を気取られないようにはしているが、見つからないかどうかは分からない。
もし見つかれば、戦闘は避けられないかもしれない。
もっとも、それは相手が自分と同じように殺し合いをする気があったらの話だが……。
「全く、不思議なこともあるものじゃ……まさか、1度死んだはずのわしが生き返るとは……」
……生き返ったのは、自分だけじゃなかったようだ。
しかし、そんなことは大した問題じゃない。生き返っても、どうせ殺してしまえば同じだ。
「ふむ……さっきから、異様な気配がするのう」
(……!)
「はて、どこから来るのやら」
……見抜かれている?それとも、ただの揺さぶり?
いや。どちらにしても、下手に動けば相手に無駄に情報を与えてしまうだけだ。
とは言え、もし既にこっちに気づいていたなら……。
どうした、何を迷っているんだ?自分は。
今更、殺しに恐れを抱く訳もないのに、こんなに躊躇って、考え込んでいる。
(……そうだ。様子を見てみなきゃ)
チラッ、と草の隙間から様子を伺ってみる。
……見えたのは、結構年齢を重ねていると思われる老人。
見た目だけ見れば、すぐにでも殺せそうだ。……とんでもない殺気を、放っていなければ。
これさえ無ければ。これさえ無ければ、今すぐにでも飛び出して殺していただろう。
……これほどの相手とは、今まで戦ったことがないのだ。
どんな結果になるか、予想も付かない。
一太刀でやられるかもしれないし、案外あっさり勝てるかもしれないし。
冷や汗が、頬を伝い、地面に落ちる。
「どうやら、ここは空気が悪いようじゃ。立ち去るとするか」
……そう言って、小さくなって行く足音。
だが、相手は立ち去ってはいない。見えているのだ。その場で足踏みをする相手が。
こんな小細工で、自分を騙せると思っているのだろうか?
(……今がチャンス!)
◇
信じられない、の一言だ。
まさか、1度命を落とした自分が、今こうして生き返ったなんて。
しかし、こんな状況に再度巻き込まれると言うのは、気分のいい物ではない。
「困ったものだのう……」
前回は何とか生き残って来れたが、今回はどうなることやら。
未来への道は暗雲に包まれ、一寸先も見えない。
しかし、その先にある未来を掴むためには、暗雲をかき分けてでも進まなけれなならない。
未来は、何もせずに与えられる物ではないのだ。
より良い未来を得たいなら、それ相応の努力が必要なのだ。
(武器もそれなりじゃったし……訳の分からぬ物も、あったがのう)
自身の武器は、木刀と……かなりの量の冷やし中華。……まぁ、気にすることもない。
欲を言えば、真剣の方が良かったのだが……まあ、無い物をねだっても仕方がない。
この、木刀だって使い方によっては立派な武器になり得るのだ。
持った感じや、重さから中に何か仕込まれているようだが、仕込み刀の類ではないようだ。
おそらく、殺傷力を上げるために鉄線でも仕込まれているのかもしれない。
つばぜり合いすれば容易く押し負けるかもしれないが、たぶん刀と同じ感覚でいけるだろう。
(……ふむ。ここから先は森のようだな……)
森。
このような、森の中での戦闘は、必然と難易度が上がってしまうものだ。
取り回しの悪い武器はおいそれと使えなくなるし、視認性も落ちる。
これで、時間帯が夜だったなら、森に入ろうとすらしなかったろう。
時間が時間だけに、森の中はそれなりに明るい。お陰で、いくらかの視界が確保できている。
これならば、不意の戦闘にも対応できる可能性が上がる。
……まあ、できることなら戦闘は避けたいのだが。
こんな状況だ、いつ戦いに巻き込まれるか分かったものではない。
自分の戦いやすい場所に誘導してもいいが、それだと手間が掛かるのが難点だ。
(一か八か、進んでみるかのう)
覚悟を決め、森の中に足を踏み入れる。
見た所、特に変わった所はない…………1か所から、異様な殺気を感じる事以外は。
おそらく、殺し合いに乗ってしまった者が、隠れているのだろう。
この分だと、結構な強さかもしれない。……おびき出してみよう。
「全く、不思議なこともあるものじゃ……まさか、1度死んだはずのわしが生き返るとは……」
あえて、聞こえるくらいの声量で。
「ふむ……さっきから、異様な気配がするのう。はて、どこから来るのやら」
相手を煽るように、呟く。
「どうやら、ここは空気が悪いようじゃ。立ち去るとするか」
その場で、だんだん音が小さくなるように足踏みをくり返す。
上手く行けば、これで出てくるはずだ。絶対、と言う訳ではないが……。
飛び出して、すぐこちらに飛びかかってくるかもしれない。
一見そうとは見えないが、いつでも迎撃できる体勢に入る。
「……むっ!」
茂みから飛び出してきた「誰か」は、一直線にこちらに向かって来ている。
その手に握られているのは、包丁。
その目は、人を殺す「覚悟」の籠った目。
思わず、少し戦慄してしまう。
……しかし、うろたえることなく、かつ冷静に包丁を持つ手を狙って木刀を振り下ろす。
「ああっ!!」
「……まだまだ鍛錬が足らんぞ」
地面に転がる包丁を咄嗟に踏みつけ、拾わせないようにする。
……これで、一応は無力化に成功しただろう。
当の本人は、木刀の当たった場所を抑えて蹲っている。
一応、最低限の力でやったのだが……物が物なだけに、無傷とはいかないだろう。
酷くても、せいぜい打撲くらいだろう。
流石に、骨まで折れてはいないだろうが……。
「こんな殺し合いに、何故甘んじるのかね?」
「…………」
「……答えてはくれん、か。仕方無いのう。一応、これは取りあげさせてもらうぞ」
包丁を拾い上げ、自身のバッグに仕舞う。
……他に武器があるのなら、ついでに取りあげたい所だ。
「他に武器は?こちらに渡して貰えんかのう」
「…………」
(だんまりを決めこまれると、どうにもならんわい)
「渡して貰えんなら、潔く諦めさせてもらうよ」
改めて見てみれば、まだ年端もいかぬような少女ではないか。
このような者まで、巻き込むとは。
その上、あれほどの覚悟を強いるとは……。全く以て赦せない。
「……自分のしようとしたことを、良く考えるんじゃな」
そう言って、この場を立ち去った。
【G-6/森/一日目/朝】
【
額賀甲子太郎@俺のオリキャラでバトルロワイアル2nd】
[状態]:健康
[服装]:特筆事項なし
[装備]:木刀
[道具]:基本支給品一式、15人前の冷やし中華@需要無し3rd、包丁
[思考]
基本:殺し合う気は無い。脱出を目指したい
1:……これで、考えを改めてくれればいいんじゃが
2:どこに向かうべきかのう……
[備考]
※俺のオリキャラでバトルロワイアル2nd死亡後からの参加です
※緑川美沙子の容姿を記憶しましたが、名前は分かっていません
◇
何てことだ。
こんな、こんなことがあるか。
まさか、ああも簡単にやられて、武器も奪われるなんて。
こんな。
こんな事、あってはならない。
無性に、腹が立つ。
さっきの老人にも、手の痛みにも、武器を奪われた事にも腹は立つ。
だが、それらよりもっと。
もっと、腹が立つ事がある。
(――――情けない)
こんなに情けない、自分自身、だ。
あの老人も、何らかの鍛錬をしていたのかもしれない。
でも、自分はそれ以上に。
それ以上に、鍛えている自身がある。
なのに、負けた。
勝負は時の運、と言う事もあるが、そんな物はまやかしだ。
勝敗を決するのは、運でも環境でもない、自分自身の実力なのだ。
それを踏まえて考えると、自分は、あの老人に実力で負けた事になるのだ。
「……ううっ……」
頬を伝うのは、悔しさから溢れる涙。
「私は……私は……!」
今更悔やんでも、武器が戻ってくる訳じゃない。
あの老人を、倒せる訳でもない。
だが、今は。
何の役にも立たない、後悔をしていたかった。
【緑川美沙子@需要なし、むしろ-の自己満足ロワ3rd】
[状態]:健康、嗚咽、右手首打撲(軽度)
[服装]:特筆事項無し
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0~2(武器では無い)
[思考]
基本:参加者を殺害する
1:…………
[備考]
※需要なし、むしろ-の自己満足ロワ3rd死亡後からの参戦です
※額賀甲子太郎の容姿をぼんやりと記憶しました
≪支給品紹介≫
【木刀】
額賀甲子太郎に支給。
主に剣道での練習や、不良が持ち歩いたりする物。
また、修学旅行等で何故かおみやげとして買ってしまう物でもある。
本文中にもあるように、殺傷力を上げるために中に細い鉄を仕込んである。
【15人前の冷やし中華@需要無し3rd】
額賀甲子太郎に支給。
需要無しロワ3rdにて、滝沢佑馬に支給された、美味しい冷やし中華。
作中で計4人分消費された後、デイパックごと放置されてしまった。
【包丁】
緑川美沙子に支給。
主に、料理に使う物だが、一応刃物なので武器にならないこともない。
だが、そもそも武器として作られた物ではないので、使いこなすのは難しい……かも。
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最終更新:2012年05月04日 00:12