【1】
何をすればいいのか分からず、彼女は歩いていた。
その理由は、先ほど会った男――――
阿見音弘之。
その阿見音の別れ際の言葉が彼女の頭から、しみついて離れない。
『貴女が最悪の方法を執ったとしても、きっと丹羽君は《憎まない》』
最悪の方法、それはこの場で言うと殺し合いに乗ると言う事だろう。
でも、それを
丹羽雄二は許すのだろうか。
本当に、本当に短い間ではあった。
それでも彼女は心の奥では分かっているようであった。
自分が殺し合いに乗れば、彼は許してはくれないだろうと。
どこか無気力で、どこか適当で、どこか抜けてて。
死してなお、彼は河田遥を守ったのだ。
好きな人――――それを超えたようなものであると言っても、彼女にとっては過言ではないだろう。
そんな大事な人に嫌われる、それほど辛い事はあるだろうか。
いいや――――ないであろう。
そこが、彼女を最悪への道へと堕ちることを難儀とさせている。
最後の命綱、といったところであろうか。
その命綱がなければ彼女は殺し合いに乗っていたのかもしれない。
それ以前に阿見音弘之は彼女をこういう風にしなかったかもしれない。
だが、他の結果がどうであろうが、今の彼女には関係ない。
関係はあるかもしれないが、彼女には考えがつかないだろう。
今、彼女は自分自身と戦っているのだから。
敵は自分、味方も自分。
敵はいないのかもしれない。
味方もいないのかもしれない。
実は、戦ってなどいないのかもしれない。
ただ自分が暴れまわっているだけかもしれない。
本当は最初から何もしていないのかもしれない。
「丹羽、君――――」
彼女の口から出た、彼の名前。
彼が傍にいてくれれば、すぐに答えは出たのだろうか。
彼女はこんなにも苦しまずに済んでいるのだろうのか。
そんな事、わかるわけがない。
今この場――――彼女の傍に、彼がいないからだ。
彼は今、生きているかもわからないと言う状態である。
「――――私、如何?」
彼女の苦悩は――――続く。
【2】
さて、僕のターンが来たようだ。
世で言うショックの状態から立ち直った僕はただ道を歩いていた。
目的はただ一つ、人を探す事だ。
そういえばこの殺し合いが始まってから何時間経っただろうか。
デイバックの中に入っていた懐中時計を取りだす。
8時24分、G-4エリアとの事らしい。
この殺し合いが始まって2時間強と言ったところだ。
やはり、殺し合いと言うのは長く感じられるものだ。
あの時僕が巻き込まれた時はあっという間だった気がする。
当時の僕からしたらとても長かったかもしれないけれども。
さて、話は変わるけれども、かれこれ僕は数十分くらい歩いている気がする。
何故いきなりそう言いだしたかと言えば、人と会う気配がないからである。
エリアが広いからというのもあるだろう。
だが参加者は69人……いや、
佐々木竜也とかもいたからな。
それ以上いるとみていいだろう。
その中でここまで参加者に会わないと言うのもおかしい話だ。
ここら辺に人を連れてこないように仕向けられているのではないかと疑うほどだ。
まあ、あの主催者ならやりかねなさそうだが。
何を考えているか分からないあの顔だ。
参加者に何かを仕掛けるとかしててもおかしくはないだろう。
いや……この場合はエリアに仕掛けると言うのか?
どっちにしろ、早く参加者を見つけれればいいんだけどな。
「――――そういえば」
殺し合いが開始してからすぐの事を思い出す。
この付近にいる可能性がある人間の事をだ。
まず一人は、
浅井きららさん。
僕が最初に会った人で、甘さが残っているような人だ。
殺す事は、造作もない事だろう。
そしてもう一人、名前は知らないが自分たちを狙ったあの人影だ。
相手は弓矢を持っていて、背後を取られればかなり不利である。
しかし、それは逆もありえるのだ。
背後を取れば勝てるのは僕も同じ。
バッタリと会ったとしても、僕の方が有利だろう。
相手は弓矢を持って、こっちはダーツだ。
威力的には心許ないが、接近戦だったらこちらの方に分がある。
とりあえず、見つけない事には始まらないけれども。
「――――噂をすればなんとやら、かな」
そう言っていたところ、早速発見した。
小柄な少女と言った感じだろう。
怪我をしていないところを見ると、先ほど襲撃してきた少女とは違うようだ。
見つけたら、どうするかなんて簡単だ。
ダーツを一本取りだす。
少しづつ近づき、投げた。
そして投げると同時に僕は走りだした。
その子は音に気付いて僕の方を見た。
そして、向いた瞬間その子の肩にダーツがグサリと刺さった。
傷の部分から少しづつ血液がにじみ出ている。
痛がる素振り(実際痛いのだろうが)を見せるが、僕はそこから追い打ちをかける。
俗に言うマウントポジションと言うやつを取り、左手で首を押さえる。
右手でもう一本ダーツを取りだし、喉に刺そうとする。
だが、暴れられて狙いが定まらない。
無理に刺そうとして失敗して僕の左手に刺されば、それはそれで死にはしないけれど面倒なことになる。
こういう場面での些細な怪我はのちに大きなミスにつながるかもしれない。
杞憂だと考えようが、何が起こっても不思議ではないのがこの殺し合いだ。
「ッ、暴れるな!」
とりあえず僕は、定番の台詞を吐く。
これで静かになるとは到底思えないけれど。
「――――拒否、私――――」
変な喋り方だな、とどうでもいいが考えた。
もう僕はダーツをしまい、両手を彼女の首に置いた。
少しづつ、力を込めていく。
それとともに手に感じられる彼女のわずかな呼吸の感触。
必死に、少しでも酸素を体に取り入れようとあがいている。
無駄だと言うのに、そう思いながら僕は一気に力を入れようとした。
――――その時だった。
何か右頬側に衝撃を感じ、吹き飛ばされた。
頭が揺れ、何が起きたのか理解できないでいる。
少しづつ視界が戻って、何が起きたのかやっと理解した。
「――――少年、君が何をしたか、自分自身で理解しているのか」
なんか、老人が立っていたのであった。
【3】
いきなりこんな話をするのは何じゃが、この子が助かっているのは正直奇跡と言っていいじゃろう。
もしわしが違う方向に向かおうとしていれば、この子は死んでいたかもしれぬ。
あの目の前の青髪の少年の手によって。
「ええ、わかっているつもりですよ――――殺人ですが」
「何故人を殺そうとするのじゃ、人を殺めると言うのは悪行なのじゃぞ」
「勿論知っていますよ、でも――――これが『僕』だから仕方ないんですよ」
ハハハ、と少年は笑った。
普通の人間と感覚が違うと言うのだろうか。
この場で言う普通の人間がどんなものかなんてわからない。
だがこの少年は、壊れている。
それだけはわしの感覚で理解できた。
「――――どいてください、邪魔をするなら……容赦はしませんよ」
「どかない、目の前で人を殺めさせるわけにはいかぬ」
「そうですか、それじゃあ――――ッ!」
少年はポケットから突起物を取りだして投擲してくる。
それをわしは木刀で受け止める。
突起物は木刀に深々と刺さっている。
もし受け止める事を失敗していれば、大変なことになっていたかもしれぬ。
「へぇ……なかなかすごいじゃないですか」
「頼む、考えを改めてほしい……君がやろうとしているのは」
「だから、殺人ですよ――――ハハッ」
少年はなおも同じ態度を取り続ける。
ずっと、顔をゆがめて笑い続けていた。
だが、しばらくすると笑いも収まり少年の顔は冷めていた。
何も言わずに振り返り、立ち去ろうとした。
「待つのじゃ、少年!」
「――――今は分が悪いので、退きます……次に会った時、僕が態勢を整えてないといいですね」
最後は失笑気味にほほ笑んだ少年は今度こそ去っていった。
わしはそれを追いかける事はしなかった。
何よりもいま大事なのは、この倒れている女の子をどうにかする事なのじゃから。
【午前/野原/一日目/G-4】
【
額賀甲子太郎@俺のオリキャラでバトルロワイアル2nd】
[状態]:健康
[服装]:特筆事項なし
[装備]:木刀(ダーツが刺さっている)
[道具]:基本支給品一式、15人前の冷やし中華@需要無し3rd、包丁
[思考]
基本:殺し合う気は無い。脱出を目指したい
1:この女の子に応急処置をする
2:先ほどの少年は……
[備考]
※俺のオリキャラでバトルロワイアル2nd死亡後からの参加です
※緑川美沙子、
相川友の容姿を記憶しましたが、名前は分かっていません
【河田遥@DOLオリジナルキャラバトルロワイアル】
[状態]疲労(極大)、困惑、気絶、左肩にダーツが刺さっている(未処置)
[服装]特筆事項なし
[装備]なし
[道具]基本支給品一式、ランダム支給品×3
[思考・行動]
基本:丹羽君、捜索。
1:……
[備考]
※DOLオリジナルキャラバトルロワイアル、優勝直後からの参加です
【4】
さて、ラストは僕が締めるようだ。
とは言ってもここまで来たら面白味もないからね。
さっさと簡単に締めさせてもらおうとするよ。
「――――さて、ダーツも減っちゃったからな……武器が欲しいよね」
ダーツもこれで残り2本となった。
下手に誰かと接触すると不利な状況となる。
まず今やるべき事は武器の調達だ。
近くに市街地があるようだから、そこから包丁ぐらいは持ってこれるだろう。
刃物があるだけでも戦況は全く違う。
もしかしたら、何かもっと大きな収穫があるかもしれないからね。
僕は歩く足を速めた。
少しでも早く、武器を手に入れるために。
【午前/野原/一日目/G-4】
【相川友@DOLバトルロワイアル】
[状態]健康
[服装]特筆事項なし
[装備]ダーツの矢×2
[道具]基本支給品一式、インスタントカメラ、ジッポライター
[思考・行動]
基本:優勝するため殺し合いに乗る
1:武器の調達、それまで戦闘などは避ける
2:あいつ(佐々木竜也)とはしばらく会いたくない
[備考]
※DOLバトルロワイアル生還後数ヶ月後からの参加です
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最終更新:2012年06月19日 14:35