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何遍でも迷って、行き止まって

市街地。とある民家の中の、居間と思しき部屋。

「……」

難しい顔をしながら鬼一樹月は、ソファーに座ったまま沈黙している少女の方を見ていた。

「……そろそろ話してくれませんか、もう落ち着いた頃だと思うんですが」
「……」
「別に貴方を責めたてようと言う気では無いんです、ただ、どうして殺し合いに乗ろうとしたのか、
その理由を知りたいんですよ」
「……」
「理由次第では、私にも何か出来る、手助けする事も可能だと思いまして……」
「……あなたの助けなんかいらない」

やれやれ、と言った様子で樹月が被りを振る。
先刻、市街地内で樹月はソファーに座らせている少女に襲われた。
しかし、多少「脅し」をかけただけで少女は戦意を喪失し、呆然自失となってしまった。
放っておく訳にもいかず樹月は少女を引き連れ適当な民家へ忍び込んだ。
少女がなぜ殺し合いをやる気になったのかその辺りの事情を知りたかった事もある。
しかし、現在。呆然自失の状態は脱したようだがこれでは全く会話にならない。

「私の荷物返して」
「それはちょっと……」

安全確保のため、少女の持っていた短機関銃と荷物は樹月が預かっていた。

「……せめて名前だけでも教えて欲しいんですが」
「……天王寺、深雪」
「ありがとうございます」
「鬼一さん……だったっけ……どうして私を、助けたの? 私はあなたを殺そうとしたんだよ? なのに」

警戒心を剥き出しにしてはいたが、深雪は樹月に尋ねる。
樹月は少し笑みを浮かべた後、答えた。

「……戦う気を無くした貴方を、どうも放っておけませんでした。
どうして殺し合いをやる気になったのか、事情を知りたかったのもあります」
「……」
「……話して頂けますか、殺し合いをしようと思った理由を」

深雪は悩む。
武器は樹月が預かっており、また、先刻のあの樹月の「脅し」から察するに、樹月はただの一般人では無い。
かなりの戦闘力を秘めた、常人ならざる存在であると推測出来た。
下手な事をすれば今度は本当に殺される可能性も有り得る。
それに、殺し合いに乗った理由をこの男に話した所で一体何になると言うのか。
殺し合いを手伝ってくれる事は無いだろう、恐らくそんな事はやめろ、と言う感じの事を言われるだけだ。
もしかしたら強硬手段に出るかもしれない。
ここで崇拝する阿見音弘之のために何も出来ぬまま死ぬのだけは、深雪は嫌だった。

「……私は……」

何か適当な事を言ってお茶を濁そうかと思い深雪が口を開いた、時だった。

ガチャッ……。

「!」
「!!」

玄関の方から扉の開く音が聞こえた。




須牙襲禅は市街地のとある民家の玄関扉を開けた。
適当に選んで開けた訳では無い、この民家の前を通りかかった時、微かに民家の中から人の声が聞こえたためだ。
狼獣人である彼の聴力は普通の人間よりは良い。
そして玄関扉を開け、微かに人間二人の匂いを嗅ぎ取り、襲禅は確信を持つ。

(誰かいやがるな)

装備しているイングラムM11短機関銃のグリップを握り締め、
ゆっくり民家の奥へと進む。
そして居間へ続いていると思われる扉のノブに手を掛け、開けた。

「止まって下さい」
「!」

居間に足を踏み入れた瞬間、頭に銃を突き付けられる。
チッ、と舌打ちをし、襲禅は持っていたイングラムを床に放り、両手を上げた。
視線を横にやると、20代ぐらいの青年が自分に向け、短機関銃の銃口を向けているのが見えた。

(イングラム……M10の方だな)

どうやら自分が装備していた短機関銃と同系統の物らしいが今はそんな事はどうでも良い。
周囲に視線を映すと、離れた所で少女が身構えていた。何も装備はしていないようだったが。

「貴方は……警官、ですか? 妙な面を被っていますね」

襲禅の格好を見て思ったのだろう、青年が尋ねてきた。

「……ああ、そうだよ」

特に隠すつもりも無いと、襲禅は素直に認める。
青年の言った「面」の事が良く分からなかったが面倒なので触れない事にした。

「そうですか……しかし……貴方から感じる気配は、警官のそれとは思えませんね」
「……」
「警官と言うよりも……人を殺める事に喜びを感じる『殺人犯』の気配がしますよ、貴方からは」

青年の声のトーンが少し落ちたような気がした。

「……うるせェな、だったら、何だよ?」

苛立ちを込めた声色で、青年を睨み付けながら襲禅が言った。

「……殺し合いに乗っているのなら、貴様を殺す」
「……ッ!?」

今度は襲禅も少したじろぐ。
青年の様子が明らかに一変した。
穏やかそうな雰囲気が消し飛び殺気と憤怒に満ちた様相へ変貌した。
しかしたじろいだからと言って大人しくされるがままにされる襲禅では無い。

「……ヘッ、やってみろ、よ!!」
「!」

イングラムを構えていた青年の腕を掴み銃を奪い取ろうとする。
そのまま二人は激しく揉み合いになる。

ダンッ! ダダダダッ!!

揉み合う内にイングラムの引き金が引かれ天井や壁に銃弾が撃ち込まれた。

「このっ、舐めるな!!」
「ぬおお!?」

青年が襲禅を投げ飛ばす。
不意を突かれたため受け身も取れず、背中を強か打ち付け襲禅は一時的に呼吸困難に陥った。
倒れた襲禅に向け、青年がイングラムの銃口を向ける。

「獣風情が……調子に乗るな」
「ゲホッ、ゲホッ……て、てめぇ……人間じゃ、ねぇな?」

直感と言うべきものだろうか。
襲禅は青年と相まみえて感じた事を述べた。

「……詳しく言うつもりは無いが、まあ、その通りだ」
「……ハハハハハッ、で、俺を殺すのかよ? いたいけな少女見てる前で?」
「命乞いか」
「そうだなァ、まだ死にたくはねぇよ、折角生き返ったんだ、まだ撃ち足りねぇんだよ。
もっと、もっと、もっとな! 俺は撃ちたいんだよなァ」

薄ら笑いを浮かべながら言う狼面の男を見下ろし、青年は溜息をつく。
もうこれ以上、この男と話す事は何も無い。
青年が銃口を、襲禅の顔に向け直す。
これまでか。と、襲禅の心に諦念が生まれ始めていた。

「貴様は危険だ、ここで」

ザクッ。

青年の腹の辺りから血に塗れた刃が飛び出た。
血が襲禅の顔に降り掛かる。
青年も襲禅も何が起きたのか分からなかったが、青年の方はより深刻だった。
口から赤い液体が溢れ、襲禅にもたれかかるように崩れ落ちる。

「何、だ?」

崩れ落ちた青年の身体をどけようとした襲禅の目に飛び込んできたのは、
刀身が血塗れの短剣を両手で持った少女の姿。

「うああああぁあああ!!」

少女は絶叫し、次は襲禅に狙いを変え襲い掛かった。

「チィッ!!」

振り下ろされた刃を、襲禅は横に転がり避ける。
そして少女の細い身体に渾身の体当たりを食らわせた。

「ぎゃふっ……!!」

少女は衝撃で短刀を手放してしまい、床に叩き付けられる。
襲禅は少女に背後から襲い掛かり腕で少女の首を絞め上げた。

「か……あ……!」
「悪ィなお嬢ちゃん、寝てろや」

程無くして、少女は気を失う。
脱力した少女の身体を放り出すと、襲禅は自分のイングラムM11短機関銃を拾い上げ民家の裏口へと向かった。
先程の銃声で誰かが来るかもしれない。
余り大勢に来られても分が悪い、弾は限りがある。
長居は無用だと襲禅は判断した。

(男の方はもう助からねぇだろ……ガキの方は……まあ良いか、放っておいても死ぬな、
死ななくても俺の敵じゃねぇ……他当たるか)

裏口の扉を抜け、襲禅は市街地へ消えて行った。


【C-6/市街地/一日目/午前】

【須牙襲禅@俺のオリキャラでバトルロワイアル】
[状態]:健康
[服装]:特筆事項なし
[装備]:イングラムM11(32/32)
[道具]:基本支給品一式、イングラムM11のマガジン(3)、ランダム支給品×2
[思考]
基本:人を撃つ事を楽しむ。
1:市街地を歩いて回る。
2:化物みたいなやつは相手にしない。
[備考]
※ロワ死亡後からの参加です。
※鬼一樹月、天王寺深雪の外見のみ記憶しました。また、鬼一は死んだと判断しました。




血は止まりそうにない。
床のフローリングが赤い液体で汚れて行く。
もはや意識も朦朧としている中、鬼一樹月は呆気無い自分の幕切れを嘲笑う。

「ハァ……ハァ……残念だ……ここで……終わるか……」

誰が自分を刺したのか、深く考えずとも分かる。
視線を別方向に移せば、気を失っている天王寺深雪の姿が。
あの狼の面を被った警官の男は殺し合いに乗っているようだったが、どうやら深雪は気絶させられるだけで済んだらしい。
樹月は安堵していた。自分を刺した本人だと言うのに。

「ガハッ! ……だ……誰でも……良い……」

どんどん遠退いていく意識の中、樹月は誰にとも知れない願いを言った。

「誰……でも……良い……誰か…………この殺し合いを……人無を……潰……し……て…………く…………れ…………」

言い終わるのとほぼ同時に、樹月は目を閉じた。
そして、その目が開かれる事は、二度と無かった。



【鬼一樹月@オリキャラで俺得バトルロワイアル  死亡】



【C-6/市街地・民家/一日目/午前】

【天王寺深雪@愛好作品バトルロワイアル】
[状態]:胴体と首にダメージ、気絶中
[服装]:特筆事項なし
[装備]:アンテニー・ダガー
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1
[思考]
基本:???
1:(気絶中)
[備考]
※ロワ参加前からの参加です。
※須牙襲禅の外見のみ記憶しました。
※いつ頃気絶から目覚めるのかは次の書き手さんにお任せします。


※天王寺深雪の傍に、アンテニー・ダガー、鬼一樹月の死体、イングラムM10(28/40)、天王寺深雪と鬼一樹月の荷物が放置されています。
※銃声が若干、C-6に響いたようです。


≪支給品紹介≫
【アンテニー・ダガー】
天王寺深雪に支給。
13~14世紀に欧州で使われていた短剣。
ポメルの部分が特徴的であり、 カタツムリの触覚や完全に閉じていない輪のような形をしている。
その為、antenna(触覚)と呼ばれた。


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005:oath sign 天王寺深雪 068:疾走する思春期のパラベラム『みんな大好き戦争』
005:oath sign 鬼一樹月 GAME OVER
007:信頼できるヒト 須牙襲禅 053:死逢わせ

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最終更新:2012年12月17日 18:01