「……なんで、私は……?」
神谷茜は驚愕を超えて呆然としていた。
あの時自分は死んだはずだったのに。
今この地に、間違いなく立っていた。
間違いはない、確かに生きている。
「なんで……?」
確かにあの時、
◆VxAX.uhVsMに看取られて死んでいった。
泣きそうになっていた彼の顔も思い出せる。
だけど、何故生き返っているのか。
しかも、今いるのは――――殺し合いの場だ。
あのときとまったく同じ、殺し合い。
いや、まったく同じではない。
参加している人間が違う。
彼女が信頼している◆VxAX.uhVsMはいない。
その代わり、たくさんの知らない人。
それは彼女にとって重圧だった。
恐怖と言う重圧――――。
それが絶え間なく襲ってくる。
「う…うぅ……怖いよぉ……助けて…………」
「……そうね、怖いわよね、1人は」
前から声が聞こえて、急いで顔を上げる。
そこにいたのは、凛とした態度のお嬢様のような人だった。
ただし、その目は悲しげだった。
「私もね……1人だったの、それはそれは悲しかったわ。
誰もいてくれなくて、悲しくて、怖くて、辛くて……。
その気持ちは分かるわ、でもね……誰か大事な人がいてくれる。
その人のためなら何でもしてあげてもいいと思えるのよ」
「…………?」
「ごめんなさいね、貴方には分からなかったかしら?」
そのお嬢様のようの人を見つめる。
どこか凛としているようで、儚げで、苦しそうで。
彼女は私にあるものを突き付けてきた。
それは、よく公園で皆が使っている物だ。
『金属バット』――――自分であっても知っているものだ。
それは普段遊ぶために使うもの。
だが、今は殺し合い。
人が死んで、殺されていく場所。
そこで、これが突き出されたという事は――――。
「ひ、きゃああああああああ!!」
「……ごめんなさい、私より小さい子を殺すのは気が引けるけど、それでも」
彼女――――
瀬戸麗華は目に少しだけ涙をためながら。
肺から吐き出すように、声を出した。
「大事な人のためだから――――ごめんね?」
金属バットが振りあげられる。
再び死んでしまうんだ、そう神谷茜は思った。
死にたくない――――。
あの時の痛みが腹に思い出させられる。
怖い、助けて――――誰か。
死にたくない。
誰か――――――――誰かっ!
「おいっ!何やってんだよ!あんた!」
バットが振り下ろされることはなく、声が響いた。
私の視線はそちらに向けられる。
そこに立っていたのは、黒い髪の制服の人だった。
青木林――――元居た殺し合いにて良くも悪くも重要な人物となった少年だ。
「……何って、見ればわかるでしょう?」
「そんな小さい子を殺そうとする事をか?分かるわけねぇよ!」
「……そうよね、でも……大事な人を守るんだから―――」
「大事な人を守るから殺す!?そんなのダメだ!
その子は何も悪くない!悪いのはあの主催だ!それくらい分かれよ!」
「……無理だから、言ってるんじゃない」
「無理なんかじゃない!希望はあるはずだ!どこかに…」
「無理よ!絶対無理―――!この首輪を解除できる人が都合良くいるとでも思ってるの!?
それこそ馬鹿らしい妄想なのよ!妄言なのよ!絶対に無理、出来るはずない…!だから私は―――殺さなくちゃいけないの!」
バットが今度こそ振り下ろされる。
恐怖のあまり目を閉じてうずくまってしまう。
ゴン、と言う轟音が聞こえた。
だけれど――――神谷茜の体に痛みはなかった。
「……何やってるんですか、貴方」
「見ての、通りだよ…」
右腕を突き出し、金属バットが振り下ろされるのを阻止している。
だが、その右手はあり得ない方向に曲がっている。
その男の人は顔をゆがませている。
その状態を見て信じられないように見る瀬戸麗華は青木林に対して叫ぶ。
「知らない女の子を守って何があるっていうのですか、貴方にも大事な人はいるのでしょう!?
その人のためならとは思わないのですか?そんな強い人間なんていなるわけないのです!
結局は、こうするしか、ないんですから…っ!」
「そうかも、しれないけどさ…それでそいつが喜ぶかって言ったら別なんだよ。
俺の場合は妹がいてよ……ずっと面倒見てやってんだよ。
小さい頃に親が死んで、苦しんでいるときからずっとだ。
だから、分かるんだよ――――あいつは人を殺してまで生きても喜ばない。
いや、それよりは人を助けたほうが喜ぶだろうからさ。
だから俺は――――そんな感じに動くつもりだ」
「大した愛し方ですね、素晴らしいと思います」
「そりゃあありがとうな…」
「でも――――――私にはできません」
瀬戸麗華は、悲しそうに言った。
青木林もそれを聞き少しかなそうな表情になる。
「私は、1人である事を強いられてきました、だから他の方の考えに賛同するようなことがあまりできないのです。
だから、どいてくれませんか、貴方は助けてあげますから、だから……そこをどいてください」
「それをしたら、この子を殺すのか?」
「無論――――そういう事になりますね」
「ああ、じゃあお断りだな」
青木林は、神谷茜の前に立った。
両手を水平になるまで、上げる。
眼には、決意をもって。
「どいてください、お願いします」
「嫌だ」
瀬戸麗華が金属バットを振りかぶり、わき腹に当てる。
ミシィ、と言う気味の悪い音が金属バットが当たった場所から鳴った。
青木林は勢いに倒れそうになるが、倒れない。
「なんで、逃げてくれないんですか――――!」
「自分のせいで、誰かが死ぬのは、もう嫌なんだよ―――。
二三也は俺のせいで死んだんだよ……アイツ見たいに死んでいってしまうのが嫌なんだ。
だから、俺は絶対にあきらめない、諦めたくないんだよ――――君が退くまで」
「そうですか――――では、貴方も殺します」
金属バットが青木林の頭に向かっていく。
このまま行けば死んでしまう事は分かる。
金属バットが頭に当たれば、運が良くても重症だ。
それでも、青木林はそこをどかなかった。
避けてしまえば、後ろにいる女の子が死んでしまう。
ただそれだけの理由で、だ。
(ごめん、百合――――俺、生きて帰れそうに――――)
頭頂部への衝撃とともに、彼の意識は闇へと消えた。
「あ、ぁ……きゃああああああああああああああああああ!!!」
目の前に転がった先ほどまで守ってくれていた彼を見て、神谷茜は絶叫する。
彼女は、元居た殺し合いでも死体を『見て』いないのだ。
彼女自身が死体とはなった、だがそれを見ていない。
それをいきなり目の前に見せつけられる事は、8歳の少女には重すぎた。
「………ッ」
瀬戸麗華の表情に曇りが生まれた。
人を殺すという感触を覚えてしまったからだ。
人を『殺した』という過去形となり、落ち着いた今だから分かる。
取り返しのつかない事をしたのだ、と。
「はぁ……はぁ……」
殺した、人殺しとなったのだ。
もう後戻りはできない、最後まで修羅の道を走るしかなくなった。
彼女はもう一度金属バットを握り締める。
狙いはただ一つ――――目の前で叫んでいる少女だ。
これを殺せば、終わり。
「おい!そこのあんた!」
声が聞こえる。
再び、いや……今度は逆の位置からだが、誰か人が来た。
そこに立っていたのは先ほどとまったくと言っていいほど同じような状況だった。
ただ一つ、そばに死体がある事以外は。
「そこに死んでいる人に、血濡れの金属バット……悪いが、あんたを疑わざるを得ない…。
と言う事で一つ聞かせてもらうが、あんたはそいつを殺したのか?」
「そう、この人は私が殺しました、確かに、この手で」
「分かった……そうだな、それじゃあ」
その男、
佐原裕二は構えを取った。
父親に叩き込まれた拳法の型である。
それに対し、瀬戸麗華も金属バットを捨てて拳法の構えをとる。
瀬戸家の当主となるために叩き込まれた拳法である。
まず、動いたのは瀬戸麗華だ。
先手必勝、その言葉の通りに腹部へ強烈な拳を叩きこもうとする。
だが――――それはあたかも知っていたかのように避けられる。
続いてリーチの長い蹴りを顔面に対して繰り出す。
しかし、これも避けられる。
「――――――?」
ここで瀬戸麗華は若干の疑問を浮かべる。
あまりにもきれいに避けられすぎている。
まるで攻撃手段が分かっているかのように。
すでに読まれているかのように。
「どうした?動きが遅いぜ?」
「……不利、ですね」
「何がだ?」
「わざわざ負けるかもしれない相手と戦うのは避けたいので……それでは、私はここで」
右ポケットから取りだされた物体。
それの先端についてたピンを引いて地面に投げる。
そこから煙が大量に出てきて視界が一気に悪いものとなる。
「な、クソッ……待て!」
叫ぶが、返答などはあるはずもない。
煙が晴れたころには、その女性はいなくなっていた。
「…………まぁいいか」
彼は近くで倒れている死体を見る。
右腕は折れて、腹部にも痕がある。
そして、頭からは今も血が流れ続けている。
傷の間から大脳のようなものが見え、気分が悪くなる。
だが、それよりも大事な事がある。
「大丈夫かい?えーっと…俺は佐原裕二、君は?」
「―――――――――」
眼を虚ろにしながらも、口で何かを話そうとしている。
何を話そうとしているのか、なんとか聞こうと顔を近くに寄せてみる。
だが、声が発されている様子はない。
口は動いているのに、声が発されていない。
「……保健室に運んだ方がいいな、背負うけど、いいかい?」
「――――――」
こくり、と頷いた。
それを見て背中に背負って保健室に向かおうとする。
だが、彼の眼にはあるものが残った。
青木林の死体――――それは放っておくには可哀想で、ヒーローらしくないと彼は思った。
「ごめんね、茜ちゃん……しっかりつかまってて」
語らへんを握る力が強くなったのを感じて、両手で青木林の死体とデイバッグを持ち上げる。
死体に人としての暖かさはなく、もはや『物』と化していた。
「………人も救えずにヒーローか、まぁ……もうこれ以上死ぬ人が増えなければいい」
≪ヒーロー≫と言うにはあまりにも遠いセリフ。
しかし、彼にとってはそれがヒーローだ。
背中に感じる暖かさと手に感じる冷たさを感じながら、≪ヒーロー≫を目指す少年は保健室に急いだ。
【青木林@DOLバトルロワイアル2nd:死亡】
【F-5/学校/一日目/朝】
【佐原裕二@サイキッカーバトルロワイアル】
[状態]:健康、神谷茜を背負っている、青木林の死体を両手で持っている
[服装]:特筆事項無し
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3、青木林の死体、青木林の支給品一式
[思考]
基本:≪ヒーロー≫としてこの殺し合いをハッピーエンドで終わらせる
1:この女の子(神谷茜)を保健室に連れていく
2:これ以上人は死なせたくない
[備考]
※サイキッカーバトルロワイアル開始前からの参戦です
【神谷茜@需要なし、むしろ-の自己満足ロワ3rd】
[状態]:ショック(極大)、声が出ない、佐原裕二に背負われている
[服装]:特筆事項無し
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考]
基本:……
1:……
[備考]
※需要なし、むしろ-の自己満足ロワ3rd死亡後からの参戦です
「…………私は、後悔はしない」
学校を出てすぐそばにある森の中に瀬戸麗華はいた。
服にかかっている乾いた血を見る。
それは、自分が愚行を犯した証だ。
それを私は否定する気はない。
肯定する気だってない。
だってこれは、雪子のためなんだから。
「優勝させてあげなくちゃいけない……優しい雪子のために」
彼女は森の中を歩きだした。
その目に、希望の光などなかった。
【F-5/森/一日目/朝】
【瀬戸麗華@変哲もないオリキャラでバトルロワイアル】
[状態]:肉体的疲労(小)、精神的疲労(中)、返り血
[服装]:特筆事項無し
[装備]:金属バット(凹みあり、血濡れ)
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~1、スモークグレネード×2
[思考]
基本:雪子を優勝させるために殺し合いに乗る
1:後悔はしない――――
2:クラスメイトにあっても容赦しない
3:自分より強い人は無理に戦わない
[備考]
※変哲もないオリキャラでバトルロワイアルにてバスで眠ったところからの参戦です
≪支給品≫
【金属バット】
高校野球などで使われる物である。
野球から撲殺まで幅広く使える。
【スモークグレネード】
煙幕手榴弾ともいう。
殺傷能力はないが、視界阻害の効果がある。
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最終更新:2012年05月05日 05:05