学校を出てから、
瀬戸麗華は森の中を歩いていた。
朝だと言うのに、森の中は薄暗く、不気味な雰囲気だった。
人工的な物が一つも見当たらない、ゴミさえも。まるっきり人の手が入っていないと思われる。
(森から、出られなくなるなんて事は無いよね? まさか、ね)
麗華は少し不安になっていた。
このまま森から抜け出せなくなったら――――。
学校で一人の少年を手に掛け、大切な友人のために殺し合いに乗る決意を固めたはいいが、
森で迷った挙句衰弱死、と言う間抜けにも程がある結末は何が何でも避けたい所だった。
「……あ」
麗華が足を止める。
そしてすぐ近くの木の陰に隠れた。
「……人……!」
前方に、人がいた。
こちらには気付いていないようだが。
(参加者……なら、やる事は決まってる)
麗華は所持品から、スモークグレネードを一つ取り出した。
◆
たまにな、興味本位でグーグル画像検索とかで、車に轢かれて身体がぐちゃぐちゃになって死んだ、
無惨な轢死体の写真なんかを見るんだけども。
脳味噌が飛び出して路面一杯に広がっていたり、身体が腰から両断されていたり、
はらわたが飛び出していたりする本当に気分の悪くなるような死体。
俺は至って平気なんだが。
そういった死体の写真を見るたび、俺はその死体が身に着けている衣服や装飾品に目をやるんだ。
靴下、ズボン、シャツ、スニーカー、ピアス……。
それらを身に着けた時、その当人は、まさか自分がこんな無惨な死に方をするとは、
恐らく夢にも思っていなかっただろうって、な。
そして、俺は何の前触れも無く殺し合いに参加させられて、柴犬獣人の男に撃ち殺された。
そして、何故か分からないが、生き返ってまた殺し合いに参加させられていた。
――――何言っているか分からないかもしれないが俺は至って普通だし言っている事も事実だ。
「ふぅん……」
周囲は森だ。
どう見てもあの世とは思えない。
やっぱり俺は生き返ったらしい、どういう原理かは全く分からないけどな。
「また殺し合いしないといけないのか……やれやれだよ」
とは言っても前回の俺は殺し合いなんかする間も無く瞬殺された訳だが。
デイパックの中にあった名簿を見ると、大勢の名前が書かれている。
前回の殺し合いにもあった名前が幾つか見受けられた、が、肝心の俺の名前「
永久修康」が見当たらない。
どう言う事だと思ったが、名簿には載っていなくても首輪をはめられデイパックまで渡されてるのだから、
俺は間違い無く参加者の内には入っているはず。
名前が無い理由は後で考えよう、そう言う事にして、ランダム支給品の方を見た。
一つ目。特殊ハリセン。説明書には「一定確率で相手の行動を封じる」とあった。本当かよ。嘘くせーよ。
二つ目。いちごオレ。まあ、市販されてる至って普通のいちごオレ。だが俺は余りこういう甘い乳製品は好きじゃない。
三つ目。ねずみ花火。しかし使用期限を見ると10年も前。第一火を付ける道具が無い。
結論。外れだ。
これでどうしろって言うんだ、全く。
「何かもうこれ、今回も早々にやられそうな……」
愚痴をこぼそうとした時、前方に何か落ちてきた。
次の瞬間、そいつから凄まじい量の煙が発せられ、たちまち辺りに立ち込め始める。
「! な、何だ、オイ!」
何だと言うか、あれは多分スモークグレネードとかそう言う類の物だ。
それが投げられてきたと言う事は。
「!!」
背後から殺気を感じ振り向く。
俺に向かって何か棒のような物を振り被る人影が――――――!
◆
外れた。
渾身の力で振り下ろした金属バットの一撃は、相手に寸での所で躱されてしまった。
焦らず、瀬戸麗華は追い打ちを掛けようとする。
「そんな、何回も瞬殺されて、たまるかよ!」
相手の男が叫ぶ。
何回も――――男の言葉に麗華は頭の中で引っ掛かる物があった。
この男は以前にも殺し合いの経験があるのだろうか。
だが、もしそうだとしてもそれを考慮する必要は自分には無い。
友人のために目の前の男を殺すだけだと、麗華は自分自身に言い聞かせた。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「ゼェ、ゼェ……」
スモークグレネードによる煙が晴れ掛けてきた時、決着はまだ着いていなかった。
互いに距離を取った状態で息を切らしている。
改めて互いの顔を認識した。
「……お前さん」
「……何です?」
「可愛い顔してんのな」
「はっ?」
突然男から掛けられた思いも寄らない一言に麗華は驚く。
「俺を背後から殺そうとした奴がどんな奴かと思えば……こんな可愛い子がね……嫌だね殺し合いは」
「ふ、ふざけてるのですか」
「ふざけてこんな事は言わないさ……お前さん、名前何て言うの」
「今から死ぬ人に名乗る気はありません」
「俺が死ぬ前提かよ、勘弁して欲しいな、そうだとしても名前ぐらい良いだろう」
「……瀬戸麗華」
「へえ、俺は永久修康だ。何故か名簿には名前が載っていないんだけどな……んで、麗華ちゃん。
お前さんが殺し合いに乗ってる理由は別に俺は聞くつもりも無いし、大して興味も無いけど」
「……」
「俺も死にたく無いからな、精一杯抵抗はさせて貰うよ」
「どうする気ですか、そのハリセンで私を殺そうとでも言うんですか」
「……ハハッ、どうだかねぇ」
「……無駄に話し過ぎました、そろそろ本当に死んで貰います!」
これ以上この男と話す事は何も無い。
麗華は金属バットを構えて男に向かって行く。
とにかく身体のどこかに一撃を食らわせれば、ほぼ間違い無く相手は卒倒するはず。
そうすれば後は一方的だ、学校の時のように。
「あぁああぁあぁあああ!!」
雄叫びをあげバットを振り被る麗華。
しかし、それよりも修康のハリセンの一撃が、麗華の顔を襲った。
バシィッ!!
「おぶっ!!」
割かし強い衝撃に麗華は仰向けに倒れ込んでしまう。
倒れた麗華に向かって修康は何度もハリセンの攻撃を食らわせた。
「こ、の、ふざけるのも大概にして……あ、あれ」
怒った麗華が立ち上がろうとしたが、身体が言う事を聞かない。
「……このハリセン、一定確率で相手の行動を封じれるんだと。嘘臭いと思ったけど、本当だったみたいだな。
不思議なハリセンだな」
「なっ……!?」
麗華にとって最大の誤算だった。
まさか、一見本当にただのハリセンに見えない代物にそんな効果があったとは。
何とか身動きを取ろうとするが、全く上手く行かなかった。
「うご、いて……動け、動け動け動け、動いてよ……!」
「……」
「ここで動かなきゃ、殺さなきゃ、私、あの子を助けられないんだよ……そんなの嫌なんだよ……だから、動いてよぉっ!」
必死にもがく麗華の目には涙が滲んでいた。
それを見ていた修康は、麗華に語り掛ける。
「成程な、お前さんが殺し合いに乗ったのは誰かのためだったのか」
「……っ」
「……まあ、精々がんばんなさいよ」
修康は麗華に背を向けると歩き始める。
「私を、殺さないの?」
「……殺され掛けたとは言え、女の子を殺す気にはなれないからな」
「……情けなんて」
「情け? そんなんじゃない……とも言い切れないけど……少なくとも俺は人殺しにはなりたくないしな……」
「……」
「だけど、この殺し合いには俺の知り合いもいないし、お前さんが何人殺そうが知った事でも無いよ。
だから、頑張ってその人のために殺すと良いよ――――じゃあな」
段々と遠ざかっていく修康の姿を、麗華は見届ける事しか出来ない。
身体の痺れのようなものは少しずつ薄れてはいたが完全に動けるようになるまでにはまだ時間が掛かりそうだった。
(……何やってるの私……情けない……)
既に一人殺害していると言うのに、大切な友人のために殺し合いに乗る決意をしたと言うのにこの様だ。
おまけに情けまで掛けられ見逃された。不甲斐無い。惨め。悔しい。
(……私は……雪子のために……殺さないといけないのに……)
もどかしい思いを抱きながら、麗華は身体が回復するのをただ待つしか無かった。
◆
どうにか、再び瞬殺、は避けられたな。
しかしあんな可愛い子が殺し合いとはな。
それに、誰かのために殺し合いにする、か……そんな事して、その誰かが喜ぶとも思えないが。
でもあの――――麗華ちゃんだったか。麗華ちゃんにとっては、
この殺し合いにおいての自分の行動を決める重要な要素なんだろう。
正直知り合いなんてこの殺し合いにはいないし、俺は誰が誰に殺されようが知った事じゃない。
だから麗華ちゃんがこの先何人殺そうと俺の気にする問題じゃないと言う事だ。
殺し合いをやめるよう説得しなかったのも、動けなくなった麗華ちゃんに止めを刺さなかったのもそれが理由。
いや、止めなんて元から刺す気は無かったけども。
「全く、面倒だな」
折角生き返ってもまた殺し合いじゃあ、いっその事あのまま死んでいた方がマシだったかもしれん。
いや、本当に。
俺はこれからどうなるんでしょうか、神様仏様、いや、人無のお二方?
【E-5/森/一日目/朝】
【永久修康@俺のオリキャラでバトルロワイアル2nd】
[状態]:健康
[服装]:特筆事項無し
[装備]:特殊ハリセン
[道具]:基本支給品一式、いちごオレ@DOLバトルロワイアル(3)、古いねずみ花火(3)
[思考]
基本:殺し合う気は無い。生き残る事を優先する。
1:瀬戸麗華には注意。
[備考]
※俺オリロワ2nd死亡後からの参戦です。
※瀬戸麗華の名前と容姿を記憶しました。
【瀬戸麗華@変哲もないオリキャラでバトルロワイアル】
[状態]:肉体的疲労(中)、精神的疲労(中)、返り血、身体の麻痺(回復中)
[服装]:特筆事項無し
[装備]:金属バット(凹みあり、血濡れ)
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品(0~1)、スモークグレネード×1
[思考]
基本:雪子を優勝させるために殺し合いに乗る。
1:動けるようになるまで待つ。
2:後悔はしない――――。
3:クラスメイトにあっても容赦しない。
4:自分より強い人は無理に戦わない。
[備考]
※変哲もないオリキャラでバトルロワイアルにてバスで眠ったところからの参戦です。
※永久修康の名前と容姿を記憶しました。
※身体の麻痺は少なくとも次の話に登場するまでには完全に治ります。
≪支給品紹介≫
【特殊ハリセン】
永久修康に支給。
とある気まぐれの魔法使いが麻痺系の魔法を市販のハリセンに込めたもの。
相手を殴りつけることによって一定確立で相手の行動を封じる効果がある。
【いちごオレ@DOLバトルロワイアル】
永久修康に3本セットで支給。
市販されている普通のいちごオレ。元ロワにおいては坂田銀時に支給された。
【古いねずみ花火】
永久修康に支給。
炎を吹き出すタイプのひも状の花火を、円形に組んだもの。
火を点けて炎が吹き出すと重心に対して回転を与える向きの力がかかるため、
地面に置かれた場合、高速に回転してその勢いで地面をはい回る。
本ロワの物は使用期限が10年も前の古い物で使えるかどうか不明。
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最終更新:2013年01月02日 19:43