感情は液体である。
…………よくもまあそんな怖い事が言えるもんですよね。
感情が昂ぶって燃えあがって蒸発して気化でもしたらどうするんでしょう。
それこそ無です。
なにもありませんし、何も残りません。
質量保存と言う法則というものがあるというのをお母さんから聞いたことがありますが、
人間と言う蓋があったところで、涙とか、叫びとか、別に隙間なんていっぱいありますからね。
感情が無くなるなんてそれこそ、悲しいことです。
それは機械とおんなじで、何も感じず、何も思わず、何も迷わない。
気持ち悪いだけですね。そんな人生きている意味あるんでしょうか。
そう言う意味では私にはちゃんと感情だってありますよ。
ちゃんとあります。たんとあります。えへん。
喜びだってありますし、恨みだってありますし。
怒りだってありますし、憤りだってありますし。
なにかをすれば、相応の何かを得て。
なにかをすれば、対等の何かを失う。
等価交換、と言えば聞こえはいいのでしょうが。
ですが実質は、等価ではなく、不平等。
気体となって、沈んでいくその『感情』という液体は、なにかをすれば、その分だけ、隙間から出ていく。
喜びの後には虚無が待っています。
楽しみの後には絶無があり、いずれにしても消えていく。私と言うコップから、気化して消えてく。
喜び、楽しみという熱に晒されて、温められて、熱されて、蒸発して、消えていく。
たとえ、怒りだとか、悲しみだとか、凍えるような冷たさに中てられても、
一度私と言うコップから離れてしまえば、十分に返ってくることは叶いませんしね。
どこかそのへんのスポンジの地面にでも氷となって落ちているかもしれません。
はいりすくろーりたーん。
この感情の状態変化とは、そう言うことなんでしょう。
結局のところ感情は有限であり、程度はあれど朽ちていく。
たとえばとしてこのバトルロワイアル。
これは、生と死が主題に置かれて、そればかりに目を奪いがちですが、一概にそうとは言い切れないところももちろんあります。
それが先ほどから上げている、感情。
感情が尽きた人は、暴走します。感情が漲る人は、戦えます。
他人の液体を譲り受けて、戦っているんでしょう。……たとえば、死んだ人から。
言わばそれは、感情の奪い合いであり、受け渡しなんでしょう。
生と死なんて、付属的なものであり、他人の死に影響が出るのは結局のところ私です。
自らの死に影響が出るのは、私の知る由ではありません。もう自分なんていませんから。
お母さんが悲しもうとも、お父さんが悲しもうとも、かずみんが悲しもうとも、それは終末的に考えれば、関係のないこと。
そりゃあ、私だって。今の生きている私にとっては、私のせいで誰かが悲しむのは辛いことです。
ですがやはり死んだ私にとっては、それは何も感じませんし、何も考えれませんし、何も迷えない。
傾いたコップには、液体は残らないですからね。液体はばら撒かれ、スポンジが吸収して、代わりに誰かが吸い上げるんでしょう。
そうして、感情と言う液体は、満たされていき、また減っていき、満たされる。こんな繰返しを、私たちは日頃やっているんですね。
まあ。
私がこうしてかったるい一人称から入ったのは、私の目の前に現れた少女、いえまあ私より年上ですからお姉さんとでもいいますか。
そのお姉さん、
勇気凛々さんを見ていたら、ふとして思ったので、考えてみました。
こうして考えるというのも、また感情が消えていないかの証となりますしね。たまにはいいでしょう。
いいでしょう。
それでは私の物語を始めましょう。
榎本瞳の物語、はじまりはじまり……なのです。
☆
ちゃぽん。
わたし、勇気凛々が――というのもおかしいですが、「勇気凛々」という言葉しか思い出せない以上、そう言っておきますか。
ともあれわたしがゲームスタート直後に聞いた音は、そう表すが相応しい。
聞いてもらえれば分かると思いますが、それは水の音。水になにかが投じられたかのような音。
けれどそれは、大きな岩のように質量をもったものが、勢い良く入ってきたかのような音ではありません。それなら、ばっしゃーん、です。
そう、それはとても静かな音。
静かで、それでいて強かな、水の音。
「とんだ傍迷惑な始め方もあったもんです」
愚痴る。
まあ、ここまで言えば、お分かりになる通り。
わたしのスタート地点は、海の上。――――いえ、空から落ちてきたわけではありませんから、水面下、とでもいいましょうか。
おかげさまで、何時の間にか着替えさせられていてあんま深く考えてはいけない制服までびしょびしょです。おまけに、下着も。
そりゃあもう驚きです。わたしの人生に置いてベストスリーの衝撃事件に入るんじゃないでしょうか。
壱にこのこと、弐に殺し合いのこと、参にわたしの記憶のこと。
不思議ですね、どのことも今だに覚えている衝撃出来事ばかりです。……冗談はその辺にして。
後者二つ。現在進行形で起こっているこの二つは、正直笑いごとじゃあございません。
とりあえず、陸に向かって泳ぎながら、考えてみましょう。
まず、殺し合い。
夢と言うには、あまりに悪夢で。
地獄と言うには、あまりに身に覚えのないイベントです。
けれどそれでも、夢みたい、という言葉しか浮かばない残念なわたしの語彙力では、それ以外にどうしようもないです。
しかしこの案件に関しては、わたしの思案ではどれもうまく噛みあうものが出て来ず。
どう考えても見たところで、こんなことをさせられる義理も、なかったはずです。
考えても、どうしようもない、そういうことです。
なので一旦置いときましょう。
次に後者、わたしの記憶について。
これについては本当に訳が分かりません。記憶が、所々虫食い問題のように抜けているんですから。
思い出そうとしても、頭を痛めるだけで、それ以上のことは、何も分かりません。――――それがたとえ、「自分の名前」であろうとも。
しかし、それにしては、記憶は妙に整理されすぎてました。
(わたしは××中学三年、二組出席番号××番の××××です。生徒会に入っていました、と)
心の中で、思ってみる。きっと言葉にしても、同じなのでしょう。
言うと、わたしはどうやら中学三年生だったということを、思い出してきます。
けれども、「在学中学××中学校」、「出席番号××番」、「名前××××」。
ここになると、どう足掻いたところで、言えませんし、思えませんし、思い出せません。
理不尽だ。そうは思いますが、思ったところで虚しいだけと感じたので、そろそろいい加減現実を見ましょう。
しかし不思議なこともあるものです。何故わたしは、「中学三年生」と、「二組に所属」、そして「生徒会に入っていた」。
この三つは何故こうも鮮明に覚えているんでしょうか。
加え、「最後、普通の生活をしていた時に覚えている、枕の下に在った四字熟語の書いてあった紙」のことも、異様なぐらい
鮮烈に、記憶に刻み込まれているようです。
夢にしては、設定が凝り過ぎです。現実にしては、謎すぎます。
ですが、これをわたしは夢だとは思えません。少なくともわたしは夢で見知らぬ人を殺すような、捻くれた人ではないと自負してます。
現実です。受け止めましょう、××××。
実情です。受け入れましょう、××××――――もとい、「勇気凛々」。
だからわたしは、あの、ちいさな生徒会長の時でさえも、憧れて、実行していた、
弱きを助け悪を挫く、ヒーローのような存在のような、スタンスを取らなければならないのでしょう。
人を助けるのには、理由なんか要りません。
要らないゴミは、排除すべきです。自分でも分からない自分を行使して、何が悪いのでしょう。
感情的になってはいけないという「ルール」なんて、この場には無いのです。
感情は、液体です。
溢れるものだから。
そう、確かに今、わたしは、「正義感」という蛇口を捻り続けているのでしょう。
「勇気」というラベルを見て、確かにわたしは、勇気に漲っているのでした。
――――凛として、参りましょう。
…………とりあえず、泳ぎ切りますか。
☆
ふわぁー。
……あり、また私の出番ですか、そうですか。
完全に気を抜いてました。
まあともあれとして、今私は特にあてもなく、ひたすら海辺を眺めているんです。
朝日に煌く早朝の海! なんとロマンチックなんでしょう。
はじめてこんな景色見ましたよ。素晴らしいもんです。こんなところで告白されたら私はきっとイチコロですね。
吊り橋効果って恐ろしいですから……って海の称賛じゃなくなってました。ぼーっとしてると怖い怖い。
正直今私は眠たいんですよ、こんな朝っぱらからドンパチと。もっと自重出来ないんでしょうか。
それに大抵のロワイアルは深夜スタートでしょう。私は基本的に夜型ですから、深夜にしてほしかったですよ。
わかってませんねえ、あのお二人。……にゃー、海風が冷たくて気持ちいいですね。
「はぁー……」
どうしようもないぐらい力が湧きません。
これが夜スタートでしたら殺し合いに乗ろうかな、とは思ったかもしれませんが朝ですよ朝。
やる気なんて起きるわけないじゃないですか。早朝は子供たちの敵です。学校が待ってますからね。ふわぁ…。まあ私には関係ないですが。
それに夜って言えば、なんだかいつまでも起きていると悪いことしているんではないか、みたいなワクワク感がありますからね。
たまりません。
ひゅぅぅ……、脱力系女子の誕生です。
何故だか今なら何の後悔もなく死んでいけそうです。ああ……眠たいです。いっそのこと眠ってしまいましょうかね。
けれどさすがにこれが私の一生を締め括るとなるとあまりに呆気なさすぎますからね。もう少しぐらい起きてましょう。
そんな中でした。
わたしは海の方から、小さな人影が見えてきました。
せっせと泳ぐ姿。
うわ……。もしかしてあの人スタート地点が海の向こう側だったんでしょうか。南無ですね。
見るところ、セーラー服、女の子です。結構小柄な。
私と同じぐらい……とは言いませんがけれど下手したら小六と見られてもおかしくないぐらい、小さい人ですね。言い過ぎですが。
ここに来てから私全然自称悪者のはずなのに、全然悪くなってませんからね、毒舌や暴言の一つぐらい言ってみませんと。
キャラ作りをする必要もないんですけれども。
しかしどうしましょうか。
……うーん。ま、確かに私も暇していたところなので、会いに行ってみるのもいいかもしれませんね。
悪い人じゃないといいんですが、まあ私がそもそも善人とは遠い様な存在ですし。我儘は言いません。言いっこなしです。
まあ、そんな感じで、しばらく待ってみましょうか。
いーち。
にー。
さーん。……にゅぅ。
……よんー。
ごー。
ろくー。
……ねむ……にゃなー。
はち。
きゅー。
じゅー。
…………。
さんじゅー。
いーち……。
にー……。
…………。
さんびゃくろくじゅー……………。
ふう。
………飽きました。
数字のげしゅたると崩壊です。
三分ですよ、三分。もしかしたら羊を数えるよりかも睡眠より適してますよ。
おかげさまで私すっかり眠くなりました。
とはいえども、あの人ももうすぐ近くにいますし。
精々起きておきましょうか……。眠いです。
ここまで待っていてあげたので、少々あの方には意地悪でもしましょうか。
因果応報ですよ、人を待たせておいて。……いえまあ、わたしが勝手に待ってただけなんですけど。
お、来ました来ました。
改めてみると、明るい茶髪で、大きな鈴の髪止めをつけたおさげ。まあ今は水で張り付いてますけど、きっとそうなんでしょう、て髪型ですね。
背はやっぱり近くで見ても小さいです。ふ、見ましたかかずみん、世の中にはこの様な人もいるんですよ。子の様な、でも可です。
まあ、ともあれ、その人は、ようやく陸に手を付ける程度の距離まで来て、
何とも失礼なことに、その時やっと私に気付いたみたいです。まったく私の心は傷つきました。
よって罰です。どうせなら「キリッ」って感じの擬音を付けたいところではありますが。
「ん? あなたは……?」
おさげの女の人は、陸に両手を付け、起き上がるかのようにしながら、私に問う。
故に私も質問に答えながらなりません。
「私ですか? 私は榎本瞳です。通称ひとみんです、よろしく」
女の人の肩を押しながら、ですが。
おおー、気を抜いていたのか、いとも簡単に再度海に落ちていきます。
ばっしゃーん、です。ばっしゃーん。
「…………」
おさげの女の人……何時までも鬱陶しいので、少女Aさんは一瞬困ったような表情を私に見せ、
次の瞬間には、呆れたような表情を見せ、再度とらい。ですが私はまた突き飛ばす。……中々面白いですね。
「えーと榎本瞳さんでしたか」
「はい、御指名の榎本瞳です」
「何をするのですか」
「突き落としています」
「何故ですか?」
「中々に面白いからですね」
嘘のつかない純朴無垢な小学生、なんて素敵な響きでしょう。
すると少女Aさんは、疲れた表情を見せて、
「やめてくれませんかね」
「別に嫌ですけど」
「…………仕方がありませんね」
言うが否や、衝撃映像です。
なんと、少女Aさんの手から《剣》、火を見るよりも明らかに、《剣》が握られていました。
どんな錬金術師さんですか。鋼ですか。鋼なんですね。
少女Aなんていうモブキャラみたいなふざけた名前の少女の癖してなんという優遇ですか。私にもその力分けてほしいぐらいです。
といいますか、海に《剣》ってどこのモンスターハンターですか。ラギアクルスでも倒すのでしょうか。是非海竜の蒼玉でもわけてほしい感じですね。
まあ、実際はそんなのんきなこと言ってる場合ではなく、正直面倒そうな人に手を出したな、て絶賛公開中です。やー、困ったもんですね。
「少々乱暴となりますが、許して下さいね」
瞬間、私が見た光景と、聞いた光景は、とても異様な、そんな光景でした。
すぱっ、と、さながら豆腐を斬るかのような、そんな手軽さと、身軽さを含んだ、動作、そして結果。
陸、決して脆くはないであろう陸を、ルパンの石川五右ェ門の如く、てんで現実味を帯びない、斬撃で、小さな欠片と化し、
挙句の果てには、
「きゃっ」
地面と言う、私の立つ足場が失われてしまいました。
…………結論。私まで、海へと転落してしまいましたとさ。
なんですかこの子、卑怯です。ていうかどこまで子供じみているんですか。たかだか小学生のやることでしょうよ。
一方、少女Aさんは、悠々と、陸へと上がり、自身の制服を絞ってました。
う、うぅぅ。まさかこんな結果になるなんて。
あの余裕綽々の態度うざいです。もうなんていうか滅しないでしょうかね。
拝啓警察様、あれ倒せ。敬具。
小学生に実力行使とかやってて恥ずかしくないんでしょうか。人類の恥なんじゃないですか。
ふん、私が善良な一小学生で助かりましたね、そこの少女Aさん。
「はあ、疲れました」
それはこっちの台詞です。
ああ、海水が冷たい……。ぶるぶるしてきました。とと、ディパックが流されてしまうところでした。
はあ。
「それで、榎本瞳さん。あなた、陸に上がりたいですか?」
「ええ、勿論」
「別に嫌だ、と言ったら?」
意趣返しのつもりですか、このやろー。
無駄に笑顔がお綺麗ですね、舐めてるんでしょうか。
全くもって趣味が悪いです。
とはいえ、私には。
「え? 別にいいですよ? 早くどっか行けばいいんじゃないでしょうか? その後私は一人で上がっておきますから」
乗る義理なんてさらさらないですからね。
さっさとどっか行けばいいんですよ。しっしっ。
「…………そう言われると困りますね、……ふう、まあもういいですよ、わたしも子供過ぎました。ほら、手を掴んで下さい」
少女Aさんが手を私に差し出す。
…………。
まあ、一応は私もこんな水の中は嫌ですし、握り返すとしましょうか。
……身体が重たいですし、べたべたします。
なんか気持ち悪いですよ、何でこんな目に私はあっているのでしょう、
拝啓神様、死ね。
ちくしょう、ですね。
…………くしゅん。
☆
情報交換の時間です。
目の前の小学生、榎本瞳さんからここまでの成り行きと、これからの行動についての事情聴取です。
悪は斬るもの、そうは言いますがさすがに小学生。
悪戯心と見れば可愛いものでしょう。そもそも小学生が悪に染まるのなんて、それこそ二次元の話ぐらいですよ。
幾ら汚れようとも、大抵の小学生は健気なものですからね。すぐに悪と決め付けるのも早計でしょう。
聞くと彼女の行動指針は、
マーダー、所謂殺し合いに乗る人の通称の事言うらしいのですが、そのマーダーさんらしいです。
いやまあ嘘でしょうけど、それができたらさっきの突き落としとかはもっと可愛げのないものですし。
そもそも敵意と言うものがありません。あるのはただただ深い怠惰感です。
なんていいますか、それこそ小学生になら大抵はありそうな活発さと言いますか。
全体的な明るさに欠けると言いますか。それこそ、悪に、近い、なにか。
まあ。
それこそ、これからこの子と共に行動を行動し、見極めればいいことです。
小学生に何度も手を出すというのは気も引けますが、それは仕方のないことなんですから。
悪は切り捨てるべき。――――悪即斬。
わたしのモットーであり、生き甲斐であり、到達点。
故にわたしは凛として、ヒーローとして。英雄として、戦いましょう。
「わたしの名前は勇気凛々。某中学三年。生徒会長をやっておりました。
わたしは、ヒーローになります。こんな場所であっても、凛として。
善を守り、悪を倒し。
この殺し合いにおいても、知らない人であっても、誰もが本質的にはいい人なんだと考えて接し。
絶対に誰も殺しなどしない、どこまでも真っ直ぐな愚者に、わたしはなるんです」
繰り返す。
榎本瞳さんを前にして、わたしの英傑を、再び掲げる。
それは揺るぎないもので、動かざるもので、美しきもの。
理想論?
確かにそうでしょう、これ以上なき理想郷。ユートピア。
ですが、そんなことは、些細な問題に過ぎません。
創り上げて、立証すればいいのですから。
「はあ、そうですか、頑張ってください」
榎本瞳さんの反応はいまいちです。
しかしそれもまた、いいでしょう。
「ときに少女Aさん」
「……わたしのことでしょうか?」
驚きです。耳を疑いました。
今勇気凛々と名乗ったはずですが。
「ええ、あなたのことです。少女Aさん。
勇気凛々とかふざけた偽名……まあ名簿に書いてある以上もしかしたら本名かもしれませんが、
それでもそんな表面上の薄っぺらい名前、少女Aと大差ないでしょう。だから私は、少女Aさんと呼称しました」
「…………」
反論したいのも山々ではありますが、反論できません。
なにせわたしは、「本名」すらも思い出せないのですから、反論するに、至れません。
直接的に言うと、図星に近いです。
そんな言葉のないわたしを見て、榎本瞳さんは、抑揚のない、棒読みに近い口調で、わたしに言います。
「ともあれ少女Aさん。訊きますがあなたのその正義は、自己選択ですか?」
「え?」
最近の小学生は自己選択なんて難しい言葉知ってるんですね、驚きです。
……まあ、そんなことはさておきながら。自己選択。
ふむ。
「ええ、勿論ですよ。わたしがそれをよしとし、わたしがそれを貫きたいから、この正義を行使するんです。
誰も死なない世界、誰も殺し合わない世界、素晴らしいじゃないですか」
悩むまでもありませんね。
きっぱりと、榎本瞳さんにわたしは言い切りました。
小学生に言うことじゃないかもしれませんが、それでもこの人はやけに大人びているから。
背伸びをしているのではなくて、大人びている。大人でもなく、大人しいわけでもなく、大人びていますから。
まあ肝心なところでは少々子供じみているかもしれませんが。
榎本瞳さんは続ける。
「では、あなたの正義は、自己犠牲ですか?」
「……あの、質問返しで申し訳ないんですが、あなたはなにがしたいんですか」
「え、意地悪ですけど」
悪びれもなくそう言う。
……だろうと思いましたよ。
さておいて。
「自己犠牲、ええ、自己犠牲でしょうね。まあそんな傲慢なこと本来であれば言うつもりもありませんが、
そう言う風に問われたのであれば、そう言う風に応えるべきでしょう、このわたしの正義は自己犠牲です」
「ふーん、そりゃあご立派なこったですね」
ご立派、なのでしょうか。
まあ、褒め言葉には、甘んじて受けてるべきでしょう。
軽んじてはいけません。
榎本瞳さんは、言葉をまだ繋げるようだ。
「……こほん、では、気分によっては最後にしましょう。正義は、あなたの自己満足ですか?」
できれば断言して欲しいところではありますが、まあいいでしょう。
「……自己満足、ですか。ええ確かにこれはわたしの自己満足かもしれませんね。
これで誰もが幸せになる、そう言うわけにもいけないでしょう。これは独りよがりの、一人芝居かもしれません。
ですが、わたしはもう一度言いますが、これをよしとし、これをモットーに、戦っているんです。
文句を言われる筋合いこそあれど、批判される筋合いはありません。自己満足に甘えて、何が悪いですか」
「とても中学生の台詞ではありませんね、まるで創作人物です」
「それこそあなたに文句言われる筋合いないですよ」
そっくりそのまま打ち返してあげたい気分というのはこういうことを言うのでしょうか。
「へえ、自己選択で、自己犠牲で、自己満足。……とんだエゴもあったもんですねえ
あなたそんなんでよく正義のヒーローやってけますねえ。まあ、私には関係なから勝手にやっちゃいといてください」
「は……? ……っ」
突飛な榎本瞳さんの不条理な言い分に異論の意を唱えようとして、言葉に詰まる。
エゴ。――――エゴ。
わたしの心に、嫌に反響する、残響。
ええ、確かにわたしは云いました。独りよがりの一人芝居、と。
エゴ。
それが意味するのは、まさしく、独りよがりの一人芝居。
言葉を入れ替えただけなのに、どうしてか変にイラッっとさせられます。
そう。
ただ、言葉を入れ替えただけなのに。
「……ふわぁ」
暢気に、欠伸をする榎本瞳さん。さながら猫みたいです。
あ、そんな事思ってると、ブルブルと猫みたいに身体や服に浸みた海水を飛ばしました。
子供っぽい。さっきまでとは一変して、とても、子供っぽい。
人畜無害な、少女の様。いや、実際そうなんでしょう。極めて平和的な、無害な少女。
そう、わたしはなにを勝手にこの子を「悪役」――――「悪者」扱いしていたのでしょう。
人は生まれながらにして、本質的に善人。
そんな志を掲げておいて、そりゃあ残酷な話でしょう。この子を、「人間」扱いしていないことになる。
それは駄目です。
初心を思い返すのです。
わたしは、恥知らずの愚者(セイギのヒーロー)になるんです。
すこし歯車が狂ってしまい、マーダーになった人でも、わたしは真摯に説得し、元の善人に孵してあげるんです。
それこそわたし。
××××――――勇気凛々。
勇気を以て、凛として、凛と尽くす。
落ち着きましょう、勇気凛々。
なにを焦って、戸惑って、困惑して、怒って、イラついているのかは知りませんが、落ち着きましょう。
冷静に、行きましょう、活きましょう、生きましょう。
今、目の前には、「善人」の榎本瞳さんがいるんです。
ここで守ってあげなくて、なにが正義のヒーローですか。
そう、みんなが、笑顔になるような、そんな世界にしたいのです。
まずは、小さな一歩から。
「ところで、少女Aさん」
「――――はい」
「
正義の味方と言うのなら、もちろん、ことのついでに、私を守ってくださいね。……頼りに、してますから」
明らかに、わたしを利用しようとしている、言葉。
けれども、それでも。そうであったとしても!
「はい、任してください! わたしは必ずあなたを生きて還すよう、戦って見せましょう!」
笑顔で、わたしは返す。
そう、わたしは愚者(ヒーロー)。利用したければ、してればいい。
でも、わたしは、「正義」を。「わたしの正義(エゴ)」を貫くから。
――――みんなの救われるハッピーエンドへ。
「ふにゃ、では改めてよろしくお願いしますね、少女Aさん」
「ええ、こちらこそ全力で、悪者を、退治――――いえ、対処致しましょう」
わたしは手を差し出す。
若干渋って、榎本瞳さんも手を差し出して、握手をする。
なんて、平和な世界。
そう、わたしは、こんな世界を、夢見ているんです。
それを壊そうとする、あの二人組。
許すわけには、参りません。
この《不思議な力》――――そう、《りんりんソード》とでも名付けましょうこれ。
なにを思って主催勢がこんな力をオプションとして付けたのかは、定かではありませんが、
思う存分、震わせてもらいましょう、使わせてもらいましょう。
さあ、勇気凛々。
歩みの時です。勇みの刻です。
いざ、参りましょう――――ッ!
☆
ほへ?
え? まだ続きますか。
締めということですか。いいでしょう、じゃあやってあげますよ。
以上、これにて私が疲れたためこの話は終了です!
勇気凛々先生の次回作にご期待ください!
……え? ダメ。
はい……少しハイテンションでやってこの結果とはしょんぼりせざるを得ませんね。うぅ……。
まあじゃあちゃんと閉めてあげましょう。
開いた物語は、閉じるべきですから。
では、そんな感じで。
まあ私、榎本瞳はこの雄気堂々……じゃありませんでした。素で間違えました。
えーと確か……そう、勇気凛々と言う人と同行することになった訳ですが。
正直あんま乗り気じゃありませんが、まあ守護や監視の意味でも一緒にいたほうがお得そうですし。
かずみんが暴走してたらこの頭ガッチガチそうな少女Aさんならボコボコにしかねませんからね。
はっきり申しとくと、この方不気味です。
自主性がないと言いますか。
他人のために動き過ぎて気持ち悪いですよ、なんていうか、「彼女」が見えない。
名前からして、奥底が、淀んでいて、見えない。深し不可視。
偽善者も、ここまでくれば同情の至りって感じです。
……とはいえども。
私も正直どっこいどっこいですからねー。どうでもいいっちゃどうでもいいです。
利用するとかそれ以前に彼女は、それしか能がないみたいですからねー。
誰かが犠牲になる時点で、それは幸福ではないことに、何故気付かないのでしょうか。
まあ私はとっても優しい……ごめんなさい、想像以上に気持ち悪かったです。
とはいえ親切にもちゃんと「使ってあげている」のですから、本来は感謝して欲しい限りなのですが。
我儘は言いません。
しっかりこのお方を「使って」あげましょう。利害の一致と言う奴です。
万歳、ですね。
やほー。いえー!
はい、自重ですね。
…………くしゅん!
うう……冷えて来ました。
まずは二人で決めた結果、ショッピングモール(っぽいの)に行くことになりました。着替えが欲しいんですよ。
この水に濡れた下着とかとってもやな感じです。ふんだ。
拗ねてなんかいませんよ。私は子供っぽくありません。いくら服が割とお気に入りのだからって、拗ねてなんていませんよーだ。
まったく、勘違いしないでほしいです。ツンデレの時代は既に去ったのです。
ああ……うう、なんかもう一周回ってだるくなって来ました。
なんか完全に眠気再来ですよ、これ。
ああ、少女Aさんの歩みが早い。
待ってくださいよ、小学生に気も使えないんですか。役立たずなのですか。このチビ!
……なんか少女Aさんに睨まれた気がしたので、止めましょうか。怖いです。
と。
まあこんな感じです。
それでは次の人にバトンを渡しましょう。
これにて一旦。
まあもう来なくていいですが私の出番は終了です。
では、次また会えるその日まで…………私はだらけてます。
…………ふみゅう
【G-2/海岸/一日目/朝】
【勇気凛々@四字熟語ロワ】
[状態]:健康
[服装]:水浸しのセーラー服
[装備]:《りんりんソード》
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品(1~3)
[思考]
基本:殺し合いの打倒
1:榎本瞳と行動し、守る
2:自分の名前など情報について得たい
3:できればおなじ四字熟語の名前の人に会ってみる……?
[備考]
※四字熟語ロワ参戦前よりの参戦です(正確に言うと前日の就寝後)
※《りんりんソード》に制限はありません
【榎本瞳@数だけロワ】
[状態]:健康、眠気
[服装]:水浸しの私服
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品(1~3)
[思考]
基本:だるいので、殺し合いには乗らない
1:寒い……
2:少女Aさん(勇気凛々)と行動
3:早く変えの服に着替えたいです
4:かずみん(
愛崎一美)に会う
5:……ふわぁ
[備考]
※数だけロワ参戦前よりの参戦です
時系列順で読む
投下順で読む
最終更新:2012年03月16日 14:52