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I am…

「……何がどうなっているんだ」

アルソンズ・ベイルは橋の上で自分の置かれた状況を考えていた。
自分は死んだはずだった。発狂した男に謎の薬品を投与され、人ならざる物へと変貌する、
その前に、自分で自分の人生に幕を引いた筈、だった。
だが、現に今こうして生きている。

「…分からない、何なんだこれは! いくら何でも、非現実的過ぎる!
私はあの時死んだんじゃないのか? 夢でも見ているのか? ……夢ではない、な……」

ひとしきりまくし立てた後、冷静になってアルソンズは考え始める。

(…とにかくなぜかは知らないが私は生きている。なぜ生き返ったのか考えるのはやめにしよう。
恐らく私には理解不能の何かがある。それより…ああ、まずは支給品だな……)

デイパックを拾い上げ近くに停まっていた車の陰に座り、中身を確認する。
名簿を開くと、何人か知っている名前があった。
早野正昭、中村アヤ、石川清隆、リーヴァイ
この四人は以前の殺し合いの時の名簿でも見かけた。但し何れも実際には会っていない。
他は知らない名前ばかりである。

ランダム支給品は何なのか見てみる。
旧式のリボルバー拳銃、コルトM1917と、フルムーンクリップと言う金具に込められた予備弾を発見する。
他にもう一つランダム支給品らしき物があったがこちらは武器にはなりそうにない。
コルトM1917を装備し、デイパックを引っ提げ、アルソンズは地図に目を通す。

(ここは……橋だな、となると、D-1か…東の方に渡ってみるか…)

現在位置を確認したアルソンズは橋を東の方に渡ってみる事にした。




少女がいた。
その少女は楽しそうな笑みを浮かべていた。
殺し合いの最中、楽しそうに笑っているのは、怖さを紛らわすためか、それとも狂ってるのか。
どれでもない。

愉しんでいた――――殺し合いを。

「別の殺し合いに来ちゃったみたいだけど、まあいいや、しーちゃんの為に頑張ろうっと」

しーちゃんと言うのは、柳詩織と言う少女の事。
その柳詩織と言うのは彼女自身である。
一人称で自分の名前を使うのはそう珍しくは無いが彼女の場合事情が違った。

今の「柳詩織」は「アイ」と言う、全く別の人格に成り変わり、別人と化している。
「柳詩織」はとある「才能」を持っていた。
夢の中の仮想人格と自分を取り替える「夢画夢中(ドリームチェンジャー)」と言う「才能」。
しかしこれを使うには条件があった、それは「柳詩織」が「壊れる」事。
以前の殺し合いで、「柳詩織」は壊された。
そして「アイ」が現れた――――その状態のまま、今回の殺し合いに呼ばれたのだ。

「大丈夫だよ…ボクがみんな殺して助けてあげるからね、『しーちゃん』…あはははっ」

楽しげな、狂ったような声をあげる「柳詩織」こと「アイ」。

「…ねえ、そこにいるんでしょ? 出てきてよ?」

そして、とある車の方に向かって言う。
車の陰から和服姿の少女が現れた。
手には脇差と思しき短刀が握られている。

「それでボクを殺すつもりだったの?」
「ち、違うわ……私は殺し合いをする気は無い。私は菊池やと…貴方の名前を教えて欲しい」
「ボク…? ボクは…『アイ』だよ…しーちゃんの友達だよ」

「アイ」などと言う名前の参加者がいただろうか、とやとは心の中で思った。

「貴方…この殺し合いに乗るつもりなの?」
「そうだよ? どうして?」
「…馬鹿な真似はやめなさい、あんな得体の知れない二人の言いなりになるなんてどうかしてるわ」

穏やかに、やとは「アイ」と名乗る少女に語り掛ける。
危険な雰囲気は感じ取っていたが、自分よりも何十歳も若いはずの少女が今から人を殺しに行くのを、
黙って見ている事は彼女には出来なかった。
出来る事なら改心して欲しい。殺し合いに乗るなんて馬鹿な事はやめて欲しい。
やとはそう願いながら「アイ」を説得した。

「何か勘違いしているかもしれないけどボクは別にあの二人の言いなりになってる訳じゃないよ。
ただ『しーちゃん』を助けたいんだ」
「…『しーちゃん』…? この殺し合いに呼ばれてるの? 貴方の友達?」
「しーちゃんはとても可哀想なんだよ、いつもみんなに虐められて、ボクしかいないんだ、
ボクが守ってあげなきゃ、しーちゃんが傷つかないように、みんなを殺さないと」
「ま、待って…そんなのおかしいよ!」
「…おかしい?」

やとの言葉に、「アイ」は首を傾げた。

「そうよ、その、えと…その『しーちゃん』を貴方が守ってあげたいのは分かる。
だけどだからってこの殺し合いに呼ばれてる人達を殺すなんて、そんなのきっと、
『しーちゃん』だって望んで無いと思う」

「……そんな事無いよ」

「アイ」は、腰の辺りから何かを取り出した。
やとにはそれが何なのか良く見えなかった。

「……しーちゃんが、そうして欲しいって言ってるんだから」

次の瞬間。

やとの懐に「アイ」が飛び込んだ。
そして、やとは腹が急速に熱くなっていくのを感じる。

「アイ」の持ったアイスピックがやとの腹に根元まで刺さっていた。

「あ゛……!」
「ねえ、やとさんはどうして『しーちゃん』の事全部分かってるような口を聞くの?」

グリ。

「アイ」はやとの腹に刺したアイスピックを、やとの腹を抉るように動かした。

「うぎ、ぁ、ごふっ」
「やとさん、ボクと『しーちゃん』の事、全部理解してるつもりなの? 違うでしょ?
偉そうな口聞かないでよ……凄く、むかつくよ」
「ち、が……私は、ただ……」

血を吐き、激痛に耐えながらやとが必死で言葉を紡ごうとする。

――ただ、自分は、少女に殺し合いに乗らないで欲しかった。
――ただ、自分は、少女に人を殺して欲しくなかった。

それだけだったのに。

「アイ」は一度、アイスピックをやとの腹から引き抜き、

「むかつくから、死んでよ、やとさん」

やとの首を、刺し貫いた。
そして、菊池やとの命は、消えた。

「……ばーか」

血溜まりを作って地面に倒れ伏すやとの死体に向け、「アイ」は悪態をついた。
そして、やとの持っていた脇差、デイパックの中に入っていた糸鋸、工事用ヘルメットを入手し、
ヘルメットを被る。

「まずは一人目だね、『しーちゃん』、ボクがんばるよ」

「アイ」となった「柳詩織」は、笑みを浮かべながら、橋を東の方に渡って行った。


【菊池やと@俺のオリキャラでバトルロワイアル  死亡】




和服の少女の死体に、アルソンズは近付く。
血がまだ固まり切っていない所を見ると殺害されてからそう時間は経っていないようだ。

「可哀想に……」

もっと早く来ていればもしかしたら助けられたかもしれないと、アルソンズは悔やむ。
目が開いたままだったので、閉じさせた。
傍にはこの少女のものと思われるデイパックが転がっている。
中身を見てもランダム支給品らしい物は入っていない、抜き取られたのだろう。

「この子を殺した奴は…東の方に行ったのか…?」

ここは橋の上である。
この死体がある場所に来るまで誰ともすれ違っていないので、少女を殺した下手人は東へ向かったと推測出来た。
東は、アルソンズも目指している方向である。
このまま行くと少女を殺害した人物に遭遇するかもしれない。

(戻るか…? いや、戻っても結局、何にもならん。ここは殺し合いの場だ、安全な場所なんてどこにもなかろう)

結局、アルソンズは予定通り東へ進む事にした。

(すまんな、埋葬でもしてやりたいがどうにも出来ん)

少女の無惨な死体を放っておくのは忍び無かったが自分の命の方が優先である。
冥福を祈るように十字を切ると、アルソンズは再び進み始めた。


【D-1/鉄橋/一日目/朝】

【柳詩織@才能ロワ】
[状態]:健康、「アイ」の人格
[服装]:少し血塗れ
[装備]:アイスピック、工事用ヘルメット
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品(1~2)、、脇差、糸鋸
[思考]
基本:しーちゃんのために優勝する。
1:殺しちゃえ☆
[備考]
※才能ロワ1話「創造世界」以後からの参戦です。

【アルソンズ・ベイル@個人趣味ロワ】
[状態]:健康
[服装]:特筆事項無し
[装備]:コルトM1917(6/6)
[道具]:基本支給品一式、フルムーンクリップ(.45ACP弾6発×3)、ランダム支給品(武器では無い)
[思考]
基本:殺し合いを止める。
1:同じ志の仲間が欲しい所だが……。
[備考]
※個人趣味ロワ本編死亡後からの参戦です。
※柳詩織からは離れた場所にいます。


※D-1鉄橋上に菊池やとの死体及びデイパック(基本支給品一式入り)が放置されています。


≪支給品紹介≫
【コルトM1917】
アルソンズ・ベイルに予備弾入りフルムーンクリップ3個とセットで支給。
第一次世界大戦時に米軍からの依頼により開発された.45ACP弾を使用する回転式拳銃。
同じコンセプトで開発元の異なる「S&WM1917」も存在する。

【脇差】
菊池やとに支給。
主兵装(本差)が破損などにより使えない時に使用される予備の武器を指す。
現在は日本刀の打刀(うちがたな)の大小拵えの小刀(しょうとう)をいうことが多い。

【糸鋸】
菊池やとに支給。
鍛金の道具。 鋸(のこぎり)の一種。糸のように細い鋸の歯を半円形の金具枠の両端に取り付けたもの。
板の中を切り抜くときや、曲線状に板を切るときなどに用いる。

【工事用ヘルメット】
菊池やとに支給。
工事の際に使われる黄色いヘルメット。

【アイスピック】
柳詩織に支給。
氷を割るための調理道具。主としてカクテル、オン・ザ・ロックなど酒やジュースなど飲み物に入れるための
氷やクラッシュドアイスを作るために使う。


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最終更新:2013年01月24日 21:07