犠牲無き世界など ありはしない

 気付かないのか

 我々は

 血の海に 灰を浮かべた地獄の名を

 仮に世界と

 呼んでいるのだ








 悪しき魂は、正しき魂の全てと共存出来ない。何故ならば、一方が悪であるから。
 悪しき魂と悪しき魂の間ですら、共存は叶わない。何故ならば、一方が弱者であるから。
 虚(ホロウ)とはこの世界における悪であり、異種も同種も喰らって強さを得る怪物だ。その在り方の到達点の一つが最上級大虚(ヴァストローデ)であり、ティア・ハリベルという名の虚(ホロウ)もまた最上級大虚(ヴァストローデ)の一体であった。
 数え切れぬ魂を犠牲にして確立された彼女の自我が、無為な犠牲を生む行為への忌避感などという自らのアイデンティティに反するに等しい思考を何時、何故抱くようになったのかは定かでない。
 ただ事実として言えるのは、彼女はある時期から仲間を作り、無用な争いを避けるようになり、統率者として模範的な姿となったということだ。
 しかし、それは決して彼女が恒久的平和や博愛の素晴らしさに目覚めたことを示すのではない。
 彼女は知っている。犠牲無き世界など存在しないことを。
 己と、己の愛する者達を犠牲としないためにはより強大な力が必要であり、それは犠牲を生み出す結果を容易に招く。己を中心とする小さな集団の外側に位置する大多数の者達からすれば、唾棄すべき蛮行だ。
 その事実を理解していながら、しかしティア・ハリベルは犠牲を否定しない道を選択した。
 彼女の愛する者達を護るため。護られる者達から愛された彼女自身を、護るために。
 それが、彼女の意志。虚(ホロウ)としては実に正当な力の使い方。齎されたのは、清らかさとは対極と言うべき、血と死に塗れた永い記憶。

――奏さん……同僚の子に言われたことがあるんです。「あなたが優しいから、みんなが優しくしてくれるのよ」って。
――自分では当たり前のことをしているつもりだったんですけど、こうして誰かから大切に想われているんだって改めて伝えられると、嬉しいですよね。
――だから思うんです。こういう私の一面も、大事にしていきたいなって。

 ティア・ハリベルを僕として呼び出した少女と交わした、何気ない会話の一端を思い起こす。
 一時の主となった少女――新田美波は温かな情の持ち主であり、それ故に周囲からの思慕を獲得しているという点では、新田美波とティア・ハリベルは近しい性質を持っているのかもしれない。
 しかし、同じではない。
 人々の夢と理想を演じる新田美波の愛が万人へと向けられるのに対し、ティア・ハリベルの愛が向けられる範囲は有限だ。
 新田美波が「可能な限り犠牲を避けたい」と考えているのに対し、ティア・ハリベルの思考は「犠牲は避けられるなら避けるに越したことはない、しかし避けられない場合において自らの手で犠牲を生み出すことに臆する気など無い」という段階へと踏み込んでいる。
 何より、虚(ホロウ)は人間を斬り伏せたところでいちいち心を痛めはしない。人間の習慣に例えれば、雑草を刈り取るか羽虫を叩き潰すのと同程度の行いでしかないのだから。
 ティア・ハリベルは正義の味方ではない。世界に求められた守護者でもない。新田美波の愛する世界を、ティア・ハリベルは愛していない。己の意思一つ次第で何時でも無辜の者達に害を、悪を為せる。
 それでも、ティア・ハリベルは民衆に刃を向けない。魂魄を喰らい尽くすことによって持てる力を際限なく高められる己の性質を理解しながら、それを実行に移さない。
 理由は一つ。世界における二者の立場の隔絶を知った上で、ティア・ハリベルが剣を手に取った動機への共感と敬意を示した新田美波の人間性が好ましかったから。
 新田美波のため、彼女の愛する者達のためならば、再び剣を振るうのも悪くないと思えたのだ。
 かくして『悪霊』ティア・ハリベルはこの戦争において守護者たらんとする。己が虚(ホロウ)であることを否定はせず、しかし虚の敵を守らんとする。
 守護するべきは、新田美波。新田美波を取り囲む世界。新田美波に慕われたティア・ハリベル自身。

「セイバーのサーヴァントで合っているな」

 彼女のためにも、選択を誤ってはならない。
 避けられる限りで犠牲を避けようとした、遠い記憶の中の己へと再び近づかねばならない。

「答えろ、お前は『悪い奴』か」

 民衆が崇める希望の象徴が、正しき魂と言うべき英霊の写し身が、目の前で敵意をむき出しにしている。
 その名はロボット超人・アースちゃん
 可能ならば、彼女とも敵対せずに済ませたいものであるのだが、どうにも難しそうだ。






 昭和の街を生きる上での困り事の一つが、記憶の混濁であった。
 美波が本来の記憶を取り戻したのは、確か2週間ほど前のこと。その後、美波が本来生きていた21世紀の時代の中で染み着いた癖が、美波自身を悩ませたのである。
 例えば、冬木に突如現れた「安土城」について大衆がどのような印象を抱き、考察しているのか知ろうと考えた時、まず「インターネット上のSNSを調べてみよう」という発想に至る。勿論、昭和の時代にそんな物は無かったんだっけと数秒後に気付かされた。
 例えば、約束を取り付けた友人との合流のために現在位置を知らせようとする時、鞄からごく自然とスマートフォンを取り出そうとしてしまい、その仕草が不自然では無かったかとそっと周囲に目配せする羽目となった。
 こういった時代錯誤が直接的な原因となる例に留まらない。冬木市民としての肩書きもまた同様だ。
 この昭和の世界における364プロダクションは、まだ老舗と言えるほどの歴史は無くとも芸能事務所としては既に大手と言えるほどに成長しており、さらなる事業展開のために東京都内の本社とは別に支社を設立している。その活動拠点として選ばれたのが、西日本においてある程度の隆盛を見せている冬木市であった。
 加えて、346プロは本来であれば確か21世紀に入ってからアイドル事業に着手していたはずだったが、この世界ではどういった経緯からか昭和におけるアイドル黄金期到来前の段階で既にアイドル事業に着目していたようだ。そして既にアイドルのスカウトとメディア展開を行っており、346プロ冬木支社を中心に活動する新田美波もその一人であった。
 この事実がどう厄介なのかと言えば、人間関係が様変わりしてしまっていることだった。
 「346プロで出会えるアイドル」と言われて連想する顔触れは、元の世界ではおよそ200人近くに上っていた。それが昭和の冬木では精々が20人以下と言った程度。アイドル文化が21世紀の頃ほど定着していないせいか頭数自体が美波の記憶よりも少なくなっていて、そしてその殆どが東京都内の本社に所属している状態であった。確か、神谷奈緒や北条加蓮などは向こうの本社所属だったか。
 当然、ユニット活動の様相も別物だ。「ニュージェネレーションズ」と言われたら島村卯月・渋谷凛・本田未央の3名を思い浮かべるのが当然で、しかし実際にはこの世界のアイドル業界に本田未央はいないらしい。
 「ラブライカ」や「≪蒼ノ楽団≫」のように美波の関係するユニットは結成自体が最初から無かったものとなっており、美波はデビューから今日までずっとソロ活動のアイドルという経歴の持ち主ということになっていた。「アインフェリア」で共演したこともあったはずの鷺沢文香にしても、今はアイドルではない単なる学友だ。
 事務所のスタッフと交わす会話で、存在していないはずのアイドルの名前をうっかり口に出さないようにと情報を整理し直すことに少しの時間を要したものであった。
 人間関係の話で言えば、アイドル業界以外も同様だ。家族はともかくとして、大学で出会う友人の半分以上が、元の世界では全く会ったことの無かった人物だ。彼等と友人として一緒に過ごした“こととなっている”記憶は脳内に残されているからまだ良いものの、どうにも違和感が拭えないのも事実だ。
 しかし、だからと言って冬木市内限定の人間関係に対して嫌悪感があるというわけでは無い。人間として好感を持っているのは事実であり、たとえ別世界の人間であったとしても彼等には犠牲になってほしくないとも思っている。

「あら、アイラちゃん。おはよ」
「おはようございます、美波さん。ここにいたんですね」
「うん。ちょっとね。あ、前の席空いてるよ」

 久々に訪れたオフの日、大学構内の大食堂で朝の時間を過ごしていた美波の前を、一人の少女が通りかかる。冬木における美波の学友の一人、アイラだった。
 椅子に座ると共に微かに揺れた鮮やかな銀髪と、数年前に海外から日本に移住しているという経歴を持つ彼女は、改めて見るとこの街にいないアナスタシアを思わせる。

「新聞……何か気になるニュースでもあったでしょうか?」

 アイラが持っていたのは一部の新聞紙。美波がテーブルの上に広げているのもまた、数部の新聞紙。二人が考えていることは奇しくも同じであるようだ。
 いや、同じということにしなければ。

「うん。ほら、この前の社会学の講義でレポートの課題出されたじゃない? それに関係しそうなニュースを見てたの」
「じゃあ、その付箋を付けてるのは」
「これ? アースちゃんの活動について、ってテーマにしようと思ってて。関係しそうな記事のチェック」

 語った言葉の半分が真実で、残り半分は嘘だ。
 レポートの課題を出されたのは事実であるが、アースちゃんを対象として情報を集めていたのは大学生では無く聖杯戦争のマスターとしての方針故のことだった。
 爆発事故、大火災、殺人事件、正体不明の建造物と、この冬木市では既に幾つもの異常事態が発生している。これらの中には人間社会では決して起こり得ない、人間を超越した力による凶行も含まれていることは想像に難くない。
 こうした負の方向へと力を向ける者達がいる一方、アースちゃんという少女は別方向で異端な存在だった。
 その人間離れした容姿や身体能力だけを指しているのではない。大衆が何の抵抗も無く彼女を受け入れていることこそが特異なのだ。
 誰がどう見ても普通の人間では無いどころか、自分がロボット超人であると公言している彼女に対して、誰もが奇異の視線を向けないのだ。少数ならともかく全くのゼロというのは、彼女が讃えられるべき善行を積んでいるからというだけでは説明が付かない。
 それこそが彼女の持つ異能の力の一端なのだろうと、セイバーがいつか美波に語っていたのを覚えている。暗示か、或いは一種のカリスマか。
 しかし、そういった事情を知って尚、美波はアースちゃんに対して特に疑いの目を向けているわけでは無い。
 彼女が善意によって人助けに勤しんでいるのは決して嘘ではなく、それならば聖杯戦争で生じる犠牲を可能な限り避けようとしている美波と協力体制を敷くことも可能であると考えられた。
 ……尤も、アースちゃんのパートナーとなる人物の人柄までは把握していないし、そもそもこうして美波がアースちゃんに対して肯定的評価を下していること自体が彼女の異能の影響ではないかと言われたら、完全に否定することも出来ないが。
 それでも、美波は出来ることなら人の善意を信じていたい。人々を救うアースちゃんのエネルギー源が、嘘偽りの無い想いであるのだと。

「何か法則性でも見つかればレポートの方向も定まるんだけど、なかなか見つかりそうになくて」
「苦労しそうですね……」

 だから。
 新田美波は、平気な顔で嘘を吐く。

「何かヒントになりそうなもの貰えたら嬉しいけど」
「……すみません。私もアースちゃんについてはよく知らないので」
「そっか。ううん、いいの」

 聖杯戦争における敵対者になるかもしれず、そうでなかったとしても巻き込んで被害者にしてしまうかもしれない相手を無闇に関わらせるわけにはいかない。そんな理由で、美波は自らの抱えた事情をアイラに隠している。
 記憶の混濁には、既に再度の適応を済ませている。演技だって、それなりに出来る方だと思っている。
 だから、怪しまれること無く嘘を吐くことが出来る。
 嘘の無い善意によって人の希望となるアースちゃん。彼女と手を取り合うために、新田美波は希望を胸に、人に嘘を吐く。
 たとえ、少しの後ろめたさがあろうとも。

「あの、」
「アイラちゃんは」
「……お先にどうぞ」
「ううん、アイラちゃんから」
「はい、では……美波さん、きちんと休めているのでしょうか」

 ぎくり、と一瞬だけ身体が固まった。

「って言うと……?」

 実の所、昨晩は普段と比べると明らかに睡眠時間が足りていなかった。
 無理も無い。ルーラーを名乗る白黒の熊から告げられた聖杯戦争の本選開始、そして討伐令の内容が内容だ。倒すべきとされた数名のマスターとサーヴァントの中に、あの渋谷凛の顔があったのだ。それも、マスターでは無くサーヴァントとして、だ。
 この冬木市でも渋谷凛が高校生兼アイドルとして生活していることは既に把握している。その彼女との関係がいかなるものであるか、今の美波には知る由も無い。無いということは、万が一にも「渋谷凛」という少女の身が脅かされる可能性も否定出来ないということであった。
 露骨なまでの悪意を振る舞いから感じさせるルーラーの甘言に乗せられる者が、いないとは限らない。そもそもが奇跡の成就を懸けた争いの渦中なのだ、誰もが美波と同様の倫理感だけで己を律するなどと言い切れない。
 ……どうにかして、「渋谷凛」を守らなければ。
 同僚として、年長者として自然と浮かぶ発想は次に打つべき行動への思案となり、それには仲間を想うがための心労も伴う。結果として、それは睡眠不足という負担を生むこととなってしまった。
 まさか、この僅かなコンディションの違いをアイラに見透かされたのか。そうだとしたら、これ以上を下手に勘ぐられないようにしなければ。

「近頃はずっと働き詰めで、休みもなかなか取れていないと聞いたので」
「え? あ、そういう……」
「昨日の講義で隣に座っていた人達が話しているのを聞きました。たぶん、美波さんのファンクラブの会員の人達です」

 ……というのは、杞憂だったようだ。
 アイラは単に美波の多忙さを憂えていただけであった。

「あまりに根を詰め過ぎて、身体を壊してしまっては元も子も無いと思います」
「……うん。気を付けてはいるんだけどね」
「すみません。出過ぎたことかもしれませんが、仕事と勉学でそうして忙しくしているのを見てると、どうしても気になってしまうので」
「ありがとうね。アイラちゃん。でも」

 純粋に美波を労わっての言葉であることも、声色に心配の感情が宿されていることも十分に理解出来て、その優しさが身に染みるようだ。
 しかし、いや、だからと言うべきか。

「ファンの人達の声が嬉しいから、どうしても応えなきゃって思っちゃうの」

 それは、美波が平常通りに過ごすための重要なファクターであった。
 新田美波は、己がどのような人間であるかをいつも気にかけていると言っても良い。そして、どんなことも万全にこなせる人間でありたいと絶えず心掛けている。
 それ故だろう。新田美波の活躍を望む声が聞こえてくるなら、それに応じるのが美波の務め。時代の違いのために歌や衣装の傾向が違ってしまっていても、求められる姿に合わせて、適応して、自分の物とする。
 こうして立ち振る舞う自分自身を見つめて、変わらぬ己を再確認する。
 勿論、突然に生活スタイルを一変させることで周囲から下手に疑われないように、という懸念が普段通りの生活を続ける第一の理由ではあるが、こういった動機があることもまた事実ではあった。

「……それに、最近物騒なことが続いてるから、尚更アイドルの私が頑張らなきゃなって」

 だから、そんな美波を見つめてくれた人達のために、美波なりに手を尽くしたい。
 大きすぎる脅威が皆に迫っているなら、美波の得た剣の力で被害を食い止めたい。どうしようも無い暴威で皆が傷付いてしまったなら、美波の培った魅了の技術で励ましたい。
 聖杯に懸ける願いの全てを否定しようだなんて思い上がるつもりは無い。美波はただ生きて帰りたいだけ。それと同時に、望んだわけでも無い誰かが争いの炎に晒される未来は防ぎたいと思っただけのこと。
 だって、新田美波はアイドルだから。一人のマスターである前に、皆の希望で憧れだから。

「凄いです」
「そうかな」
「はい。でも、だからこそ美波さんは自分のことを大事にしてください。もし大学を休むにしても、その間の講義ノートくらいなら私が貸しますので」
「ふふ。ありがとう、アイラちゃん……実はね、もしかしたらこれからはちょっと大学を欠席するかもしれないって思ってた頃なの」
「そうなんですか……だとしたら、少し寂しいですね」
「うん。色々あるだろうから、ね。あ、今話してたレポートは勿論ちゃんと完成させるけどね?」

 現実的な問題として、これまで通りの日常を過ごすことは最早難しくなっているだろうということは理解している。現に犠牲者が出てしまっている今、そう言わざるを得ない。
 聖杯戦争で発生した事態への対応のためにも、それ以外の事柄に費やす時間は減らさざるを得ないだろう。まずは大学への出席を減らし、可能ならば事務所の人間にもアイドル活動の仕事量の減少……場合によっては一時的な活動休止も頼んでおきたいところである。
 美波が今日大学の敷地内に訪れたことにしても、元はと言えばその旨を知人の誰かに伝えておきたかったという事情もあってのことだったのだ。

「だからアイラちゃん。さっきの言葉に甘えさせてもらってもいいかな?」
「はい、勿論ですよ」
「ありがとう。それと、嬉しかったよ。私のこと気遣ってくれて」

 やはり今日こうして大学を訪れたのは正解であった。
 失いたくないと思える人と、こうして言葉を交わせたのだから。

「伝えたいことを伝えられるうちに伝えておかないと、後悔しそうだと思ったので」
「……ふふ。アイラちゃんのそういうところ、すごく立派」
「そう、でしょうか」
「うん」

 彼女にとっては至極当然の行いだったのかもしれないし、もしかしたら何らかの経験に基づいての考えだったのかもしれない。
 その辺りの事情まで知らないにしても、大切なのは彼女が美波に意思を伝えてくれたこと。ならば当然、こちらも伝えたいことを伝えるまで。
 僅かに頬に朱が差すアイラの姿が、なんとも愛らしい。こう思っていることも、いっそ伝えてあげようかな。

「――……ん?」
「今、何か音がしなかった? 地震、なのかな……?」

 そんな思考は、周囲が妙に騒がしくなり始めたことで隅に追いやらざるを得なくなった。

「おい、なんか落ちて……」「……あれ、人か……」「ヤバそうな武器持って……」

 聞き取りづらい雑言の数々の中、その一言はやけにはっきりと聞こえた。

「アースちゃんだ、アースちゃんが戦ってるんだ!」
「…………え」

 美波が探し求めていた正義の超人との対面の時は、美波の想像よりも遥かに速く訪れたようだ。







 ライダーのサーヴァント、アースちゃんは正義の味方だ。困っている人を助け、困らせるような人を退治する。
 そのためには物事を『善』と『悪』に二分する必要があり、そしてアースちゃんはいかなる状況でも『悪』の判定を速やかに下してきた。己の経験と価値観に裏打ちされた見識に基づいて、である。
 ……その判定基準の精度はともかくとして。少なくとも、一切の非の無い者を『悪』と判定することは基本的に無いと言えた。
 そんなアースちゃんであるから、彼女は今回の聖杯戦争の関係者の何名かを既に『悪』と見なしている。
 ふざけた態度で人の正義感を逆撫でするルーラーは、『悪』だ。来訪者を生きて帰さないと評判の奇妙な城の主も、『悪』だ。目に見える『悪』がこうも揃っているとなれば、目に見えない『悪』はその何倍も蠢いているに違いない。
 ならば、速やかに対処しなければならない。そして出会う者達の悉くが『悪』に手を染めているとなれば、最早聖杯戦争そのものを『悪』と見なす以外に道が無い。
 そして、今回の『悪』はアースちゃんが過去に対峙してきたそれらと比べてもあまりに異質であった。
 その代表的な例が、奇妙な城、もとい「安土城」の存在だ。
 アースちゃんは一度だけ、観察または鎮圧のために「安土城」への入城を試みたことがあった。しかし、結論を言えばその土を踏むことも無く退却する羽目になった。

 ――これは、駄目だ。

 理由など、その時アースちゃんの感性を刺激した気配だけで十分に過ぎた。
 「安土城」から、その城壁を介して発せられる城主の存在感、魔力の性質から察せられるそれが。重く、どす黒く、あまりにも禍々しい異質なそれが。アースちゃんに搭載されたレーダーを強く刺激し、鋼鉄のボディにすら“悪寒”などというものを感じさせるほどであったのだ。
 同時に、それは神化の時代を生きたアースちゃんにとって未知の体験であった。
 アースちゃんがこれまで成敗してきた『悪』は、ただの人間か超人、或いは怪獣であった。いずれも社会を揺るがすことはあるが、それだけだ。
 姿を晒しただけで迫力によって弱者を卒倒させるだとか、国一つを容易く破滅させらせる実力を持つだとか、そんな芸当を可能とする大悪党など所詮は子供騙しの創作物の中にしかいないものとされていた。
 人知を超えた力を持つ超人が、怪獣が存在する。彼等の持つ異様さに、しかし人々は、社会は慣れてしまう。その結果、人類史に刻まれるべき英雄譚など有り得ないと冷笑されるのみとなった。怪獣は超人によって排斥され、やがて超人もまた人間によって淘汰されていく。
 神化とはそういう時代、そういう世界であった。
 しかし、「安土城」は違う。数多の超人達とは最早別格と言える真の『悪』、存在それ自体が既に邪悪。神化にはいるわけがない、しかし昭和では甦ってしまった、正真正銘の絶対悪。

 ――あまりにも、違う!

 その時アースちゃんが一目散に撤退を選んだのも無理からぬ話であった。過去に類を見ない強大な『悪』を前に、無策で突撃する程アースちゃんは愚かではない。理性の上では、アースちゃんは自らの判断を正しいものであったと考えている。理性の上では、だ。
 しかし、アースちゃんの正義感は己を許さない。放置すればどんな被害を生み出すかも分からない『悪』を前に、おめおめと逃げ帰った自分自身が情けなくて堪らない。
 その屈辱は根深い。マスターであるアイラに出迎えられて帰宅した時も、「安土城」は危険だから近付くなと警告するしか出来なかった時も、ただ耳を傾けて「そうですか」と相槌を打つのみで、未だに何かを隠し続けるアイラに歯痒さを感じた瞬間も。ずっと、心に巣食っていた。

「……あれは」

 そして、今日も。
 市内の偵察の最中、いかなる原理かブースターの装着も無しに空中で佇んで人々の喧騒を見下ろす、白装束に褐色の肌の女を捕捉した今この時だって、アースちゃんはあの日の屈辱と怒りを忘れていない。
 だから、それは無理も無い話であった。
 白装束の女の発していた魔力――或いは、霊圧と言うべきだろうか――の質が、「安土城」のそれと近しい物であったがために。
 本人の価値観の如何以前の問題、存在すること自体が『悪』。サーヴァントが霊であるなら、その中でも奴は紛れも無く悪霊であると悟ったために。
 アースちゃんは、正義の遂行のための行動へと移ったのだ。

「『悪い奴』か!?」

 本能が告げる。
 正義の使者としての直感が訴えている。
 この女は正義の反対側にいるのだと、強く訴えかけている!

「……お前は、っ……!?」
「おおおおぉぉっ!!」

 標的へと向かって、ジェット噴射でひとっ飛び。
 白装束の女の腰には、一振りの剣を納めた鞘。クラスは恐らくセイバーか。その得物を抜かせる暇など、アースちゃんは与えない。
 両拳を突き出す。咄嗟に肢体を庇った女の両腕へと、ぶち当てる。
 突撃の勢いはまだ死んでいない。さらに加速、そして二人揃って下方へと直行。地面へと墜落した。






 アイラと美波が学生達の集まる中庭へと駆けつけた時に目にしたのは、二人のサーヴァントが睨み合う姿だった。
 一人はアイラのよく知るアースちゃん。もう一人の白装束の女は初めて見る。見て、思わず目を背ける。
 何も彼女の姿が醜悪だったというわけでは無い。ただ、本能的に恐怖を感じたのだ。ただの印象だけで人を竦ませるあのサーヴァントは、いったい何者だというのか。
 周囲へと目を配れば、大抵の者が声も上げずに事の行く末を見守っている。いや、アースちゃんの雄姿を前にしても尚、白装束の女が恐ろしくて声も上げられないのか。アイラと同じく、皆が恐れているのだ。
 ただ一人の、例外を除いて。

「……美波さん?」

 隣に立つ新田美波は、真っ直ぐに二人のサーヴァントを見つめていた。
 その顔は、どういうわけなのだろう、他の者達と比べれば恐怖心を強く抱いていないようにも見えた。
 まるで、白装束の女の発するプレッシャーに既に慣れているかのように。ただの小市民が持つはずの無い何か強い心構えを、既に得ているかのように。
 そのことを不思議に思った瞬間、白装束の女がちらりと目配せし、美波の視線と交錯したような気がした。






 激突と共に巻き上がる土煙の中、女の姿を再び捉えるよりも先に腹部に衝撃を感じた。視界が晴れるにつれて、アースちゃんは自分が蹴飛ばされたのだと理解する。
 周囲には既に人々が集まり始めている。十代の若者ばかりであることから察するに、どうやらアイラが通っているらしい大学の庭にでも落下したらしい。
 彼等の向ける恐怖の視線にも構うことなく、アースちゃんから一度距離を取った白装束の女からの視線がアースちゃんに刺さる。

「随分な挨拶だな」

 不遜に、臆さず、女はアースちゃんを睨む。その眼に込められた敵意は、アースちゃんにも劣らない。
 ボディをひりつかせる威圧感は、未だ消えない。自らの直感の正しさを再確認するに十分だ。

「セイバーのサーヴァントで合っているな。答えろ、お前は『悪い奴』か」

 投げつけた詰問は、決まりきった答えの再確認を目的としているようなものだ。
 ……いきなり殴りつけられたことを責めることから返答を始め、自分の悪性を誤魔化すための理屈をこねる可能性も考えられた。その場合、確かにアースちゃんが責められる謂れが無いとも言えないため多少は困ったことになるのだが。
 しかし、セイバーらしい白装束の女からの返答はまた別種の問い掛けであった。

「人目に付く場所で殺り合うなど……という話を聞く気は無いか」
「今すぐにお前を倒せば済む話だ」
「……アースちゃん、だったか。お前にとっての『悪』とは何だ」
「人を困らせたり苦しめたりする奴のことだ。他に何がある」
「ならば、今は『悪』ではないのだろう。見ての通り、人々を苦しめるような真似には及んでいない」

 淡々と答えるセイバーは、次の瞬間には自らの右手を振り上げていた。音速を超える動きでセイバーに掴みかかったアースちゃんの左手を制するためにだ。

「先に言っておくが、私のマスターはこの聖杯戦争に対して否定的だ。志はお前とかけ離れてはいない」
「だったらお前はどうだ? お前自身は、お前のマスターと同じく正義の人間なのか」
「……少なくとも、人間ではないな」
「私には分かるぞ。今までやっつけてきたどんな悪者よりも、お前が恐ろしい奴だってことが」
「随分と乱暴な理屈だな。子供の見識と同程度だ」
「正義の超人だから当然だ……いや、私だってお前みたいな奴には会ったことが無い。そのくらいお前はおかしい奴なんだ」

 片腕をアースちゃんの五指でぎりぎりと固く握られ、膠着状態になりながらも互いの目は怯まない。冷めた目つきでこちらを見つめ返すセイバーを、焼き殺さんばかりに目で射抜く。
 その痩身に反し、セイバーの筋力はロボット超人の誇る剛腕にも決して負けていない。こんな力を、無力な人々に暴威としてふるったらどうなるか、想像するまでもない。
 アースちゃんの運動性にも対応出来る瞬発力ならば、僅かな時間で一体何人を切り伏せられることが可能なのだろうか。そして、彼女は何度それを実践したのだろうか。

「たくさん悪いことをしてきた奴を、私が信じると思うのか」
「……」
「沈黙は否定と同じだ」
「そう言われてもな」
「……気に入らないな」
「私が『悪』であることを否定しないことか?」

 ああ、気に入らない。お前のその態度が、全く気に入らない。
 怒りのまま、先程のお返しとばかりにセイバーを蹴り飛ばした。数メートルは弾き飛ばされてなお、生意気にもその剣を抜く素振りを見せない。

「私に罪を突き付けられても、そうやって涼しい顔を崩さない、自分の悪行を全く悔いていないお前の態度がだ!」

 吠えるアースちゃんの記憶を過るのは、ジュダスという名の少年だった。とある事情により悪事に手を染めることとなってしまったが、そのことを反省して自らの力を正義のために役立てようと決めた超人だった。
 彼の場合は、やむを得ず『悪』の側に立ってしまったこと、そんな自分を否定的に見ることが出来ていたから、アースちゃんも信用してみようかという気になれた。
 一方で、このセイバーはどうだ?
 アースちゃんの知るどんな悪党共とも比べ物にならない、悪辣な存在感。その性分に従って引き起こしただろう非道を責められても、まるで罪悪感を抱いていないのがよく分かるその冷血な目。
 ……ああ、分かっている。お前は確かに、嘘を吐いてはいないのだろう。
 だから、お前を信じろと?
 もう絶対に悪いことをしませんだなんて「嘘」を?
 悪いことをするのに何の抵抗も無いような、生まれながらの怪獣を?

「今更正義のために戦うなんて私は信じない、信じたくも無い。お前みたいな奴は、結局何かあったら平気で人間を切り捨てるに決まってる!」

 展開させていた外部パーツのスティックを両手に取る。このスティックは、人型形態時には『悪』を成敗するための武器にもなるのだ。
 尤も、全ての『悪』を根絶するまで折れること無く使い続けられる保証も無いのだが。
 目につく連中が『悪』ばかり。監督役もまともじゃない。『悪』ではないと期待出来そうな人吉璽朗と魔女っ娘は、行方知れずで助けにも行けやしない。マスターの少女は、理由も告げずに「嘘」を吐いてこちらを悩ませる。
 頭を悩ませる事案ばかりでふつふつと募った怒りが、セイバーという絶対的な『悪』のせいでいよいよ暴発寸前だ。
 ……結局は、単なるタイミングの問題だったのだろう。『善』と出会うことなく『悪』ばかりを認識してしまったことで、達成感や安堵感よりも怒りが勝ることとなっただけのこと。
 しかし、アースちゃんには最早些細なことだ。『悪』を許さず、『悪』に屈することを許さないアースちゃんが、目の前の『悪』を前に落ち着いてなどいられようか。
 そうだ、最早語り合う間すら惜しい。
 どうせ決まっている。
 この女は『悪』だ。
 いいや、それだけじゃない。こんな奴を従えている時点で――

「お前なんかと一緒にいるマスターだって、どうせお前と同じくらいの嘘つきで卑怯者な――」

 追撃しようとブースターを働かせると同時、激情のまま罵倒の言葉を吐き出したその瞬間。
 アースちゃんの頭部の僅か1センチ左側の空間が、ごう、と灼けた。

「――ん……だ……」

 はらり、と。アースちゃんの頭髪が焦げ付き舞い落ちる気配。ざらざら、と。風圧の余波だけで木々が揺れる音。一瞬の内に完全に静まり返った空間一帯を満たす、死の気配。
 齎されたのは、セイバーの片手から瞬時に放たれた極光であった。
 放たれた一閃は、単なる威嚇だったのだろう。それだけの行動でありながらアースちゃんの思考を一瞬でもホワイトアウトさせるまでに、疾く、重く。
 思わず、セイバーへの敵意によって固く握られていた拳も弛緩する。
 観衆と化していた人々が堪らず恐怖の悲鳴を上げる。その中でも、セイバーの声は怜悧な響きでアースちゃんへの聴覚へと届く。

「私が敢えてお前に虚閃(セロ)を撃った理由が分かるか。自分が何を言ったか、誰を侮辱したのか、思い返せ」
「あ……」
「他人を侮るのも大概にしろ、堅物の機械人形が」

 すうと細められたその双眸が。ただ佇んでいた時とは異なる、刺々しい激昂を纏った威圧感が、アースちゃんへと突き刺さる。
 次は確実に撃ち落とすと、言外に訴えている。
 鋼鉄のボディが、また強張ったのを自覚する。
 しかし、二人の間の緊張感が炸裂することは無く。

「……場所を変えるぞ」

 ちらりと、大衆の方を一瞥して。次の瞬間、セイバーの姿は消えていた。
 どこへ行ったのかと見回せば、いつの間にかセイバーは学舎の上に立っているではないか。そう思った瞬間、またセイバーが消える。
 気配は感知出来る。追うことは十分可能だ。
 周囲の人間を巻き込まない場所へと移動するからついて来いというところか。
 ……彼女がそんな判断基準を持っていると思われたことが、今更ながら意外だった。






 人の敵が、人と容易に分かり合えるわけが無いことは理解していた。ただ、第一歩の時点でここまで不都合な状況に陥るというのは流石に予想外であった。
 恐怖に呑まれる無力な大衆、怒れるのは猪突猛進を地で行くような正義の使者。ハリベルの言葉で場を収めるのは困難に過ぎる。
 ……本心を言えば、沈静化のために自らを取り巻く生命全てをいっそ殲滅してしまっても構わないとは思っていた。まさしくアースちゃんに糾弾された内容そのもののやり方だ。
 アースちゃんの見識は正しい。ハリベルは『悪』だ。
 しかし、新田美波という人間はそうではない。
 あの善良な気質の少女は、人の死を悲しむだろう。人が物言わぬ骸と成り果てることを、彼女は望まないだろう。
 そして、美波の心が傷を負うことをハリベルは望まない。だから、ハリベルは殺人を選ばない。
 敵意を向けるアースちゃんに可能な限りで対話を持ちかけたのは、偏に美波のため。
 そして力の片鱗を見せたのも、やはり美波のため。
 怒りによる一撃は、アースちゃんに多少の落ち着きを取り戻させた。不本意な形であったが、改めて対話を持ちかけることは可能だ。

「……やはり、難しいか……」

 護衛のために美波の通う大学の敷地内で待機していたのは、不運と言うべきか幸運と言うべきか。ともかく、結果的には美波が事態の把握をするのにそう時間を要さずに済んだ。ならば、取るべき次の一手はこうなる。
 響転(ソニード)の連続によって喧騒の中を離脱し、アースちゃんを適当な場へと誘導する。しかし、あまり遠ざかるわけにもいかない。アースちゃんが追いつけるのは当然として、念話で交信できる彼女が辿り着ける程度の距離にある場所にしなければ。






 セイバーによって誘導されたのは、人気の無い一棟のビルの屋内であった。辿り着くまでに要した時間は、一分弱程度であっただろうか。
 壁に背を預けて立ちながらアースちゃんの到着を待っていたセイバーは、腕を組んだまま佇む。刀は、やはり鞘に収められたままだ。

「戦うんじゃないのか」
「こちらの話を聞く余裕くらい持て」
「……私と、何を話すことがあるんだ」
「人類にとっての守護者なのだろうお前と、人類からすれば悪性の怪物に違いない私との間の隔絶について、今更認識を改めろと言うつもりは無い。私の存在自体を『悪』と見なすのは、お前の勝手だ。好きにすればいい」

 だが、と。セイバーはそこで一呼吸置いた。

「私のマスターの志を嘘と貶めることまで認めるつもりは無い。私の話を聞くつもりが無くとも、私のマスターの話にくらい耳を傾けろと言っている」
「お前の、マスター?」
「そこにいる」

 セイバーの瞳がちらりと動く。その先を目で追ってみると、そこにはセイバーでもアースちゃんでも無い第三者がいた。
 いた、と言うよりも現れたというべきか。十代にしては大人びていて、しかし二十代にしてはまだ顔に幼さの残る一人の女性が、額に僅かな汗を滲ませ、ぜえぜえと荒く呼吸する姿があった。
 ……まさか、二人を追ってここまで全速力で走って来たのだろうか。

「あ、のっ。あなた、アースちゃんさん……で合ってます、よね?」
「……お前は?」

 息も切れ切れのまま、しかし疲労感への弱音なんかを吐くよりも先にその女性はアースちゃんに問う。
 「アースちゃんさん」なんて妙に畏まったその呼び方は、在りし日の魔女っ娘を思い出させた。

「私、新田美波っていいます。そこのセイバーさんのマスターで……出来れば、あなたの味方でありたいと思っています」
「お前が……」
「お前の信念とやらにそぐわずとも、私は私のマスターの道を切り開き、犠牲を避けるためにこの力を振るうと決めている」

 真っ直ぐに、アースちゃんへと向けられる眼差し。籠っているのは、きっと誠意。
 それに合わせるように、彼女の側へと立ったセイバーからの視線にも不思議と敵意が感じられなくなっていた。

「たとえ私がお前にとっての『悪』だろうとも、私は……『私』が、マスターに願われた。この願いさえ否定するなら、それこそが私にとっての『悪』だ」

 正義の側にいるのは自分であるはずなのに、今の状況はどこか居心地の悪いもののように思えた。






 アースちゃんが、空の彼方へと飛び去って行く。
 その様を見届けてようやく、全力疾走の疲れと交渉の気疲れで美波の身体は脱力し、地面に尻餅をつく。
 一先ず、落ち着く時間は得られたようだ。

「大丈夫か?」
「私の方は全然平気ですよ。それよりセイバーさんの方こそ、怪我とかしてないですか?」
「あの程度で傷を負うほど弱い肉体ではない。案ずるな」
「なら、良かったです」

 唐突に接触することとなったアースちゃんがいきなり敵対心をぶつけてきたことは、その対象とされたハリベルから見ても流石に短慮が過ぎないかとは思ったが、残念ながらそれを責めたところで通じる相手にも見えない。
 ならばこのまま応戦してやるべきかと思考したハリベルは、騒ぎを聞き付けたのだろう美波の姿を捉えると共に方針を転換、アースちゃんとの対話を試みた。
 正確には、美波とアースちゃんの対話だ。そのために大学敷地内から離脱しつつ念話にて美波に合流地点を伝え、その場に美波が到着した時点でいよいよ交渉ということであった。
 その結果、アースちゃんが現時点で美波達を標的としないとこと、確実に害悪であると見なせる相手が現れた場合には共闘も視野に入れること等が取り決められた。
 アースちゃんは美波の提案を呑んだのだ。あれだけハリベルを目の敵にしていたこととは不釣り合いなほどに、あっさりと。

「一体どういう気の変わり方をしたんだ、あのアースという奴は」
「でも、いいじゃないですか。このまま仲間になってくれるなら、良いことです。この街のヒーローが一緒に戦ってくれるなら、心強いことですよ」
「ヒーロー、か」
「……セイバーさん?」

 暫くの間、何かを思案していたハリベルはやがて口を開く。

「大切なことだから先に言っておく。マスター。万が一の時には、私を切り捨てることを考えろ」

 それは、自らの死を予見したも同然の発言であった。

「……………………それ、どういう意味ですか」
「生まれながらの『悪』である私は、今回のように無条件で敵意を向けられてもおかしくない立場にある。その私と行動を共にすること自体が、お前の立場を悪くすることだって有り得る。今回にしても、運が悪ければお前があのアースちゃんとやらに殴り掛かられていたかもしれないんだ」

 アースちゃんとの交渉の中で、覚悟の表明として言わざるを得なかったことがある。
 もしもハリベルが『悪』であると本心から確信したら、美波諸共討伐されても決して文句は言わない。だから、じっくりと見極めてほしい。
 こうして美波が自分の身を危険にさらしたのを、ハリベルは面白く思わなかったのだろう。

「だから、必要ならセイバーさんとは別れてほしいって……私に、セイバーさんを見捨てろって言うんですか?」
「言っておくが、お前が気に病むことではない。サーヴァントなど所詮は並み居る英霊の複製のようなもの、遅かれ早かれ消え去る運命が定められている幻想の産物だ。私の消滅は決して『悪』ではないし、お前の負うべき責任でもない」

 またも、ハリベルは美波を突き放す。
 人間と共存出来ない自分自身の性質を理解しているがために、美波との別離を全く躊躇わない。
 ハリベルはただ、美波の損得のみで物を言っている。

「元より虚(ホロウ)としての自己の死など惨めなものだ。だから」
「嫌です」
「……拒絶を口に出すのは簡単だろうな。しかし、本当に必要な局面となったらもう一度私の言葉を」
「嫌ですって言ってるじゃないですか……!」

 体力がまだ戻らない身体の、それでも出せる限りで反発の声を上げる。
 地面に腰を下ろしたままの美波をハリベルが立ったまま見下ろしている構図は、まるで我儘を言う子供に呆れる親のようにも思えた。

「そうやって私を気遣ってくれる人だから尚更見捨てたくないって、セイバーさんも分かってますよね。だから、そういうことをもう言わないでください」
「もし言ったら?」
「怒ります。いっぱい!」

 でも、我儘だから何だというのだろうか。
 本当の気持ちを誤魔化さなければならないくらいなら、子供みたいな態度と揶揄されて十分だ。

「……………………マスター。お前、意外と強情なんだな……いや、負けず嫌いか?」
「それも、たまに言われます」
「……まあ、覚えておく」

 それきりこの悲嘆しか生まない会話を続けようとはせず、代わりにセイバーは美波に手を差し伸べた。
 その手を掴み、なんとか立ち上がる。脚にも少しずつ力が戻りつつあるから、ゆっくり歩くくらいなら支障はない。肩を貸そうかとの提案は、やんわりと断った。
 こんな風に何のことはないただのお喋りが出来なくなるのは、やっぱり嫌だなと思いながら。

「そうだ、セイバーさん」

 忘れてはいけない、悲しい別れを迎えたくない相手がもう一人いる。

「あの、私の体力が戻ったら凛ちゃん達のロケ地に行きませんか? もう少しすれば凛ちゃん達も現場入りするでしょうし」
「そうだな。急ぐか」
「え? はい、出来れば……」
「そうか」
「へ? ひゃっ!?」

 言うが早いが、美波の身体はハリベルに抱え上げられた。いわゆる、世の中の少女達が憧れるというあの体勢であった。
 突然の狼藉への意見とか抗議とかそういう感じの色々なものを唱えるよりも先に、ハリベルが美波と共に空へと駆け出す。
 僅かに火照りの残る肌を叩く冷風が妙に心地良く感じられて、やっぱり今はこのまま身を委ねることにした。






――ごめんねアイラちゃん。私、ちょっと見てくる。
――美波さん、もしかしてあの二人を追うんですか? 危ないですよ! というか、追いつけるわけが……
――うん、分かってる。でも、ちょっとどうしても気になることがあるの。大丈夫、変に深入りはしないから。じゃ、また今度ね!

 美波は大丈夫と言っていたが、それでアイラが納得出来るわけではない。
 大学の中庭からぱたぱたと駆けていく美波を見送ってから、やっぱり放っておけないと追いかけることにしたのはただ単純に美波の身を案じてのことであった。
 走り出して暫く経ってから息が上がり始め、体育会系人間との体力の差を痛感させられたこともあったりしたが。天運が味方してくれたのか、どうにか美波の姿をその目に捉えることは出来た。身体機能が衰え始めているギフティアのアイラからすれば、最早奇跡と言っても良い成果だ。
 勿論、その時その瞬間までアイラは予想していなかった。あの二人のサーヴァントの対峙した場面で美波が無意識に見せていた表情に、こんな意味があったなんてことは。

「――美波さんが、マスター……?」

 どこかの廃ビルの中から姿を見せたのは、白装束の女のサーヴァントだった。その時ようやく、彼女のクラスがセイバーであることをアイラは視認した。
 そして、セイバーのサーヴァントの隣を歩いていたのは他でも無い新田美波であった。柔和な表情で何かを話す様は、美波とセイバーが良好な関係を築いていることの表れとしか思えなかった。
 思わぬ光景に言葉を失うアイラの前で、美波はセイバーに抱きかかえられたまま空へと消えていった。距離が空いていたためだろうか、アイラがいたことには最後まで気付かなかったようだった。
 そして一人置いてけぼりとなったアイラの嗜好は、程なくして新田美波が抱えている秘密へと辿り着いた。

「美波さんも、私と同じなんですね」

 新田美波がマスターであるとして、彼女もまた聖杯を求めているのだろうか。アイラのように、どうしても掴み取りたい未来があるのだろうか。そのためならばと、他者と敵対することを躊躇わない程の願いというものが、彼女にもあるのだろうか。
 ……いや、どうにもアイラの知る彼女の人物像とは結びつかない。
 美波が無欲な人間であるという話ではない。人々を笑顔にすることが彼女の望みであり、そのための手段として彼女は今日まで多様な技術を磨き上げていて、そして彼女は彼女の出来る限りでの行いをしようと心がけている。
 アイドルとしての新田美波を鑑みれば、そもそも願望器としての聖杯を欲する理由が無いのではないかと思わされるのだ。
 彼女が無害な人間であることは、アイラの右手首に刻まれた令呪が未だ消えていないこと――美波の従えるセイバーのサーヴァントが結局アースちゃんを倒すことは無く、恐らくはそもそも交戦すらしなかったことからも察することが出来た。
 つまり、美波はアイラと同じスタンスを持つことを意味する。正確に言えば、アイラの“表向きの”スタンスと一致しているに過ぎないのだが。

「なら、私は……?」

 聖杯戦争のマスターとしてのアイラは、新田美波と敵対しなければならない。
 マスターであることを一方的に把握したアドバンテージを活かすなら、このまま彼女を欺き続け、貶めなければならない。
 綺麗事も誤魔化しも許されない。戦争に勝つとは、汚泥に塗れた忌まわしい記憶を頭に刻むことを意味しているのだと、アイラだって理解している。
 ……可能、なのか?
 アイラは知っている。誰かの人生に残された時間を、少しでも長く幸福で彩ろうとすることの素晴らしさを。大切な人との別れに嘆き悲しむ人々の心を癒そうとすることの尊さを。
 アイラは知っている。知っているだけではない、今も鮮明に覚えているのだ。
 ターミナルサービス課の一員として培った大切な記憶が、新田美波のアイドルとして成し遂げようとすることの価値を知らしめる。立場は違えど、目指すものは近しいのだと訴えかける。
 ツカサと。ミチルと。カヅキと。皆と共に歩んだ『過去』の続きを、『未来』をアイラは欲している。そのために誰かを傷付けて泣かせようとする『現在』のアイラの姿を、他でも無いアイラの『過去』が否定する。この齟齬がアイラを苦しめて悩ませる。
 ……もう、迷うための時間すら、満足に残されていないというのに。
 決断を遅らせた先の末路など、全ての幸福を忘れ去った徘徊者(ワンダラー)への変貌だけだというのに……!

「アースちゃん……私、困ってますよ」

 今もどこかで人々を救わんと奮闘しているのだろうアースちゃんへと、呼びかける。
 その声はアースちゃんへと届かず、アースちゃんは今のアイラを救いに駆けつけたりはしない。
 二人の間には、遠い距離があった。
 悲しいのと同じくらい、ほっとしている自分がいた。






 新田美波という少女と交わした会話は、特に拗れるようなものでもなかった。
 美波がマスターであると同時に、アイドルと呼ばれる職業に就いていること。聖杯戦争には乗り気でなく、平和的なやり方で生還出来れば十分と考えていること。セイバーの素性は理解しているが、美波の方針に従う意思を既に確認していることを聞き出した。
 その上で、アースちゃんは美波に頼まれた。自分達と協力し、害意のある者達から身を守る手助けをしてほしいこと。悪の属性を持つセイバーを信じられなくとも、美波のサーヴァントとしてのセイバーを見定める時間を設けてほしいこと。
 そして。

――アースちゃん……でいいですよね。貴方のマスターにも伝えてもらえませんか。一緒に、皆の希望を守りませんかって。それと、よしよかったら一度会いたいということも。
――私のマスターに?
――だって、アースちゃんのマスターだっていうくらいなら、その人も私達やアースちゃんと同じように、この戦争にも否定的なんですよね?

 新田美波は、アースちゃんとアイラの主従が共に聖杯を求めていないのだろうと予想していた。
 その予想が真実であるならば、美波とアイラを対面させることには何の問題も無いことであった。
 そう考えようとして、アースちゃんはアイラの「嘘」に秘められた可能性の一つに思い至った。
 彼女は、願いはあるが人を傷つけてまで聖杯を求める気は無いと言った。その言葉こそが「嘘」で、本当はどうしても聖杯を獲得しなければならないほどの切迫した事情を抱えているのだとしたら――?

――分かった。伝えておく。
――良かった。私達のこと、信じてくれるんですね。
――……。

 もしもアイラが『嘘つき』であり、もしも『悪い奴』になり得るのだと露呈したら、アースちゃんが取るべき道は一つしかなくなってしまう。

「何が、嘘つきは許さないだ」

 互いを信頼し、共に『善』を為そうとしている新田美波達との対話を続けるのが、正直に言ってしまえば、苦痛だった。
 後ろめたい事柄を抱えたまま、それを悟らせること無く自分達のことを信じさせ続けるだけの優れた弁舌をアースちゃんは持っていない。自分の主の隠された真意を放置したまま、得意顔で他人の害意の有無を問い詰められるほどの面の皮の厚さも持ち合わせていない。
 だから、会話を早々に切り上げた。決して嘘を吐くことなくアースちゃんに向き合おうとする美波達の姿に背を向けて、広大な空へと逃げ出した。
 美波達に本当のことを言わないままに。吐いた「嘘」を、そのままに。

「私の方が嘘つきじゃないか」

 人にはやむを得ず嘘を吐かなければならない局面もあるのだと学んだ。
 アイラがアースちゃんに嘘を吐くのも、彼女なりの理由があるのだろう。嘘を吐いているからと言って、決して彼女の気質は悪であるというわけでもないのだろう。そう考えたから、アースちゃんは未だアイラを討つべき敵と見做していない。
 そんなアイラの身を守る為に、アースちゃんは嘘を吐いた。仕方なく、やむを得ず。

 ……実の所、アースちゃんとて「美波達と交流させる方がアイラの真意をスムーズに聞き出せるのではないか」ということを考えなかったわけでもない。
 それでもアイラ一人で問題を抱え込むことを選んだのは、アースちゃんなりの責任感故か。或いは、助けを求める声に応えることを得意とする一方で、自分から助けを求める声を上げることには不慣れであったためか。
 その理由を明確化出来ないという苦悩すら、アースちゃんは美波達に打ち明けられないままだった。

「なあアイラ」

 美波達とは、いずれまた会うことになる。
 今日の夜、アースちゃんは自らのマスターを連れて改めて美波達との対面の場を設けることを約束した。その時間を迎えるまで、渋谷凛という少女の護衛をしたいという美波達とは別行動でアースちゃんは市内を巡回することとなっている。
 アイラとの合流は、巡回を終えた後だ。

「……もう、迷ってる時間は無いぞ」

 アースちゃんは正義の味方だ。より正確に言えば、アースちゃんは困っている人の味方だ。
 だから、困っている人の味方であろうとする新田美波に拳を振るいたくはない。
 同じくらい、未だ本心を誰にも打ち明けられず困っているアイラにも拳を振るいたくないのだ。

「助けを求める電波を、受信」

 また誰かの困っている心の声が聞こえた。声の主が誰かは知らないけれど、早く駆けつけなければ。
 それは、待ち受ける辛い現実と直面する時を少しだけ先延ばしにする口実としては十分だった。






 突如として大学構内に姿を現したアースちゃん、そして白装束の女の二名。彼女達が対決の現場から立ち去ってから少しの時間を要した後、学生達はようやく散り散りとなって去っていく。
 彼等が口々に語り合うのは、勿論アースちゃんとは険悪な関係にあったと思しき白装束の女であった。

 それにしても白装束は本当に恐ろしい奴だった。見ただけで震え上がりそうな雰囲気を出していただけでなく、光線まで発射していた。明らかに人間ではない。
 アースちゃんが白装束に掴みかかって何かを言っていた。言葉の意味は俺にはさっぱり分からないが、何かを責め立てていることは何となく理解出来た。白装束は、大方アースちゃんに突き付けられた正論に逆上したというところなのだろう。

 ああ、つまりあの白装束はアースちゃんの敵か。アースちゃんの敵ということは、つまりあの白装束は『悪いやつ』なのか。
 そうに決まっている。だってアースちゃんは正義の体現者で、白装束はアースちゃんの反対側。いつもボク達を助けてくれるアースちゃんこそ、ボク達を正しい方向へと導いてくれるんだ。

 こうして、あたしの中の善悪の判定はアースちゃんのおかげですんなりと決まってくれた。
 だったら次は、力の無いあたしなりに声の限りアースちゃんを応援しよう。そうだ、まずはあの白装束がどんなに危険な奴なのかをみんなに伝えなきゃ。

 俺が/ボクが/あたしが、アースちゃんを助けるんだ。あの白装束の女を、一緒にやっつけるんだ!



 ……アースちゃんの持つ宝具、『奇準点』。
 対世論宝具とも称されるそれは、「アースちゃんの側に正義があるのだ」と大衆に無条件で信じ込ませる力を持つ。
 「アースちゃんと敵対していた人物がいた」という事実があれば、「どういう事情があってのことかは知らないが、アースちゃんの敵であるならば当然そちらが悪者なのだろう」という結論へと導かれ、誰も異を唱えたりはしない。
 故に、ティア・ハリベルの存在は恐怖心と正義感を推進力として冬木の市民達の間で早急に知れ渡る。たった一度、たった数分間のアースちゃんとの衝突だけを根拠として、ティア・ハリベルという化物は絶対的な『悪』へと貶められることとなる。
 ティア・ハリベルの誓いも、新田美波の想いも、アイラの願いも、そしてアースちゃんの迷いすらも問うこと無く。



 彼女達はいずれ知ることになる。
 時間は、もう残されていないのだ。



【一日目・午前(10:00)/C-10・大学付近】

【新田美波@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[令呪] 残り三画
[状態] 健康
[装備] なし
[道具] 鞄(私物一式入り)
[所持金] 数万円程度
[思考・状況]
基本:冬木から生還する方法を探す。
1:協力出来そうな相手を見つけたい。
2:凛ちゃんのことが心配。守らなければ。
[備考]
ライダー(アースちゃん)と接触しました。今日の夜にどこかで改めて合う約束をしています。
渋谷凛(NPC)のロケの仕事現場に向かうつもりです。今回は一緒の仕事というわけではないため、あくまで観衆の一人です。

【セイバー(ティア・ハリベル)@BLEACH】
[状態] 健康
[装備] 斬魄刀
[道具] なし
[所持金] なし
[思考・状況]
基本:マスターを守る。
1:聖杯戦争に潜む危険因子を取り除く。
2:渋谷凛を監視し、聖杯戦争との関係性の有無を見極める。危険が及ぶなら保護する。
[備考]
美波と共に渋谷凛(NPC)のロケの仕事現場に向かうつもりです。

【アイラ@プラスティック・メモリーズ】
[令呪] 残り三画
[状態] 健康、疲労(小)、活動限界まで残り■■時間
[装備] なし
[道具] 鞄(私物一式入り)
[所持金] 数万円程度
[思考・状況]
基本:聖杯戦争に勝ち残る――?
1:早く、決めなければ。
[備考]
新田美波がセイバー(ティア・ハリベル)のマスターであることを知りました。
ギフティアとしての活動限界がいつ訪れるかは不明です。アイラ自身も把握していません。

【ライダー(アースちゃん)@コンクリート・レボルティオ~超人幻想~】
[状態] 健康
[装備] なし
[道具] なし
[所持金] なし
[思考・状況]
基本:聖杯戦争の善悪を見極める。
1:当面は市内を巡回し、危険因子が無いか確認する。
2:安土城に対する強い警戒。いずれ制圧しなければならない。
3:アイラの「嘘」に隠された真実を知りたいけど……
[備考]
宝具『奇準点』の保有を自覚していません。
新田美波及びセイバー(ティア・ハリベル)と接触しました。今日の夜にどこかで改めて合う約束をしています。


[全体備考]
市内の大学構内にて、ハリベルとアースちゃんとの衝突が学生達に目撃されました。
『奇準点』の効果により、ハリベルの目撃情報は強い否定的なイメージを伴って伝播されていくことになると思われます。

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最終更新:2017年10月23日 22:29