「チッ……一足遅かったか」
見るも無残な姿になった病院の周辺を見渡しながら、舌打ち交じりに吐き捨てる。
まだ誰か残っていないかと大柄な体をグルリと回転させ辺りを見渡してみるのだが、人の気配は感じない。
どうやら、ここで戦闘をおこなっていた人物達はどこかへ移動してしまったようだ。
いきなり出鼻を挫かれた形になってしまい、ステイルは不機嫌そうに眉を寄せながら戦場跡を観察する。
「道路は罅割れ、その射線上のものは一つ残らず溶解している、か。これは中々厄介な相手になりそうだね」
その表情を殊更険しくしながらそんな言葉を漏らす。
酷い有様だった。
コンクリートの道路は抉り取られたかのようになっており、所々破片が隆起している。これでは人が歩くのすら厄介だ。
更にその流れに沿って見ていけば、射線上にある電柱が一本残らず溶解し、その役割を完全に失っていた。
高くそびえたっていた筈が根元からぐにゃりと折れ曲がり、かろうじて機能を残している明かりの部分には虫が群がっている。
ジジジジと音をたてているそれらを眺めながら、これからどうしようかと思案を巡らせつつ病院内へと歩みを進める。
これだけの戦闘の後、当然無傷ですまないだろう。もしかしたらここで治療をおこなっている可能性もある。
頭の中でそう結論付けると、砕けたガラスを踏み躙りながら既に入り口としての意味を成していない扉をくぐって院内へと進む。
まず最初に向かったのは、入ってすぐに見えるナースステーションだった。
誰もいないことはわかりきっている為、ズカズカと遠慮無しに入っていく。
ナース達が一同に集まり働く場とあってか室内は広く、様々なものが存在していた。
コツ、コツと深夜の静寂を切り裂きながら、何か役にたちそうな物はないかと室内を物色していく。
「ふぅ……これだけあれば大丈夫だろう」
数10分後、ステイルの手には幾つかの戦利品が抱えられていた。
まずは、ナース達の机の上に置かれていた睡眠薬。
……彼女達も連日連夜の仕事で疲れているのだろうか? などと考えながらそれをデイバッグにしまう。
これは中々役にたちそうだった。
単純に殺して回るだけでは自分も疲弊する。何より、顔を覚えられて警戒されては仕事がやりにくくなる。
となれば、愚かな羊のフリをして紛れ込む事も必要になるだろう。
いずれ殺すもの達と馴れ合うのは気が進まないが――それも仕方が無い。
本来なら劇物のようなものが欲しかったのだが、ナースステーション内には存在しなかった。
(まぁ、そこまで都合良くとは思っちゃいないさ。多少殺す手間は増えるけど……食事の中にでも混ぜてしまえば後は一緒だしね)
続いての戦利品は、包帯や絆創膏といった治療用具。
医者がいないこの舞台で、これらは必須とも言えよう。
ステイル自身に医療知識は無いが、それでも無いよりはマシと言える。
加えて、どうやらこの舞台には医療施設がここしかないらしい。
ステイルがここに存在する治療用具を全て回収してしまえば、必然的に他の参加者達は治療方法を失う事となる。
参加者の中には、インデックスのような治療魔術をもつ者や、支給品として治療用具を得た者もいるかもしれないが、それでも大多数は治療方法を得られないままこの殺し合いを生き抜かなくてはならないだろう。
普段ならまだしも、この状況下で治療が出来ないというのはかなり厳しいだろう。
少しでもダメージを負えば動きが鈍くなる。その結果更に傷を負いまた動きが鈍くなる。
そうして削り取られていった結果、待っているのは死だ。
そんな奴らに、治療方法を差し出せばどうなる?
中には疑うものもいるだろうが、大半は信用という名の対価を寄越してくるだろう。
そうなれば――余計な力を使わず殺すことが出来る。
ステイルにとって、長期戦となるこの殺し合いは鬼門とも言える。
本気を出せば参加者全てを焼きつくせるであろう力を持っているのだが、その代価として彼にはスタミナが無い。
無駄に真正面から戦っていては、すぐにガス欠になってしまうだろう。
だからこそ、いい取引材料となりそうな物を得られたのは良かった。
「取引材料か……こんなものでも欲しがる人がいればいいんだが……」
はぁ、と重苦しい息を吐き出しながら、自身に支給された品を机の上に並べてみる。
一つ目は、ウィンチェスターM1897とか言う名前の拳銃。
本来ならこれは当たりのうちに入るだろう。だが、この拳銃には銃弾が装備されていなかった。
銃弾が無い拳銃を渡されてどうしろというのだろうか。一応鈍器としては使えるだろうが、こんな重いものを振り回しながら戦うのはステイルの性にあってはいない。
何より、そんな無駄な戦い方をせずとも彼には炎剣という便利な魔術があった。
二つ目は、『ハリーポッターと賢者の石』と題された分厚い本。
軽く目を通してみただけだが、どうやら魔法使いの少年の話らしい。
こんな場所で無ければ読んでみたいところだが、生憎とそんな余裕は無い。
ここで集めたものと共に支給品をデイバッグにしまうと、ナースステーションにある椅子に腰掛ける。
(さて、これからどうしようか)
魔力反応を感じてここに来たは良いものの、現在は誰もいないらしい。
最愛の彼女をを救うためにも早く人を見つけたいのだが、闇雲に歩き回って悪戯に大体力を消耗するのは避けたい。
とは言え、歩き回らなくては殺して回れないのもまた事実だ。
メリットとデメリットが頭の中を交錯する。
果たして、ステイルが選ぶのは一体。
【B-5 病院内/1日目・深夜】
【ステイル=マグヌス@とある魔術の禁書目録】
[状態]:健康、インデックスのためにすべてを壊す決意
[装備]:ルーンのカード多数
[道具]:支給品一式、睡眠薬、治療用具一式、ウィンチェスターM1897残算数0、ハリーポッターと賢者の石
[思考・状況]
基本:インデックスの生存最優先。
1 これからどうするか考える。
2 魔力反応の持ち主を殺す。
3 2の後死体を燃やして獲物を集める
4 神裂にであったら彼女にインデックスを任せる。
[備考]
カエル顔の医者に手紙を渡して「必要悪の教会」に戻る最中からの参戦。(アニメ第6話の後半開始より前)
支給品の確認はしていますがステイルの役に立つものはありません。
【睡眠薬@現実】
不眠症の人に処方される薬。2、3粒でぐっすり眠れるがあまり飲みすぎると死の危険性あり。
【治療用具一式@現実】
包帯や絆創膏、消毒液やメスなど治療に必要なもの一式。
麻酔等もあるためかなり便利。
【ウィンチェスターM1897@現実】
正式名称は「Winchester Model 1897」
アメリカのウィンチェスター(Winchester)社が開発したポンプアクション式散弾銃。
3発以上の装弾数を持つ散弾銃の元祖といわれ、民間はもちろんのこと軍隊や警察などでも使用された。
全長は985mmで重量は3.3kg、口径は12ゲージ。装弾数は5発である。
【ハリーポッターと賢者の石@現実】
ご存知大人気作品。
暇つぶしに役立つかも?
最終更新:2009年08月17日 22:26